説明

電動アシスト過給機の冷却構造

【課題】ドロップインによる搭載を容易化できる電動アシスト過給機の冷却構造を提供する。
【解決手段】本発明の電動アシスト過給機の冷却構造30は、モータ冷却ジャケット31とタービン冷却ジャケット32と連通流路33とを備える。モータ冷却ジャケット31は、ハウジングの内部において電動機のステータを囲むように周方向に延び、ハウジング外部から冷却液を導入するための冷却液入口流路34と連通する。タービン冷却ジャケット32は、ハウジングの内部においてタービンインペラの背面側の位置に形成され回転軸を囲むように周方向に延び、冷却液をハウジング外部に排出するための冷却液出口流路35と連通する。連通流路33は、モータ冷却ジャケット31を通過した冷却液をタービン冷却ジャケット32に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機により回転駆動を補助し得るように構成された電動アシスト過給機の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関には、出力増大のために過給機(ターボチャージャ)を設置したものがある。かかる過給機は、排気ガスのエネルギーをタービンで回収し、回転軸を介してタービンと同軸に連結されたコンプレッサを作動させ、圧縮空気をエンジンに供給して出力増大を図る装置である。また、過給機の回転軸と同軸上に電動機を組み込み、コンプレッサの回転駆動を補助することにより、加速応答性等を改善した過給機も用いられている。このような電動機による電動アシスト機能をもつ過給機を電動アシスト過給機という。
【0003】
従来の電動アシスト過給機は、例えば、下記特許文献1に開示されている。図1は、特許文献1に開示された電動アシスト過給機の概略構成図である。図1において、タービンインペラ50とコンプレッサインペラ51が回転軸52で連結されている。タービンインペラ50、コンプレッサインペラ51及び回転軸52は、ハウジング53の内部に回転可能に配置されている。ハウジング53は、タービンハウジング54、コンプレッサハウジング55及びセンターハウジング56からなる。
【0004】
センターハウジング56の内部には電動機57が設けられている。電動機57は、回転軸52に取り付けられた永久磁石からなるロータ57rと、センターハウジング56の内部に固定されたコイルからなるステータ57sとからなる。タービンに導入される排気ガスは高温であるため、過給機の稼働中は、タービン側からの熱伝導によりセンターハウジング56のタービン寄りの部分が高温となる。このため、センターハウジング56のタービン寄りの部分には、冷却水を流すためのタービン冷却ジャケット58が設けられている。
【0005】
また、電動アシスト過給機では、過給機の稼働中、電動機57が高速回転し風損や渦電流損により自己発熱する。また、タービンには高温の排気ガスが流れるため、タービンインペラ50から回転軸52、回転軸52から電動機57のロータ57rへの熱伝導により電動機57が高温となる。電動機57が高温になると内部の永久磁石が減磁したり、電動機57の効率が低下したりするなどの悪影響がある。このような問題を軽減するため、センターハウジング56には、ステータ57sを囲むようにモータ冷却ジャケット59が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−130176号公報(図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来の電動アシスト過給機において、タービン冷却ジャケット58とモータ冷却ジャケット59は、並列に接続された流路、あるいは、互いに独立した流路として構成されている。このため、電動機57およびモータ冷却ジャケット59を持たないタイプの過給機(以下、非アシスト型の過給機という)に供給する冷却水の量と比較して、従来の電動アシスト過給機では、モータ冷却ジャケット59へ冷却水を供給する分、冷却水の量が増加する。しがたって、従来の電動アシスト過給機を車両に搭載しようとすると、周辺機器(ポンプなど)の仕様もそれに合わせる必要があり、電動アシスト過給機をドロップイン(簡単な置き換え)により搭載することが困難であった。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、ドロップインによる搭載を容易化できる電動アシスト過給機の冷却構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の問題を解決するため、本発明の電動アシスト過給機の冷却構造は、以下の技術的手段を採用する。
(1)本発明は、回転軸で連結されたコンプレッサインペラとタービンインペラがハウジング内で回転可能に配置され、前記回転軸の回転を電動機で補助し得るように構成された電動アシスト過給機の冷却構造であって、前記ハウジングの内部において前記電動機のステータを囲むように周方向に延び、前記ハウジング外部から冷却液を導入するための冷却液入口流路と連通するモータ冷却ジャケットと、前記ハウジングの内部において前記タービンインペラの背面側の位置に形成され前記回転軸を囲むように周方向に延び、冷却液を前記ハウジング外部に排出するための冷却液出口流路と連通するタービン冷却ジャケットと、前記モータ冷却ジャケットを通過した冷却液を前記タービン冷却ジャケットに供給する連通流路と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記の本発明の構成によれば、モータ冷却ジャケットとタービン冷却ジャケットが連通流路によって直列に接続されている。このため、冷却液入口から導入された冷却液は、モータ冷却ジャケットを流れる過程で電動機のステータを冷却し、モータ冷却ジャケットを通過した冷却液は、連通流路を通ってタービン冷却ジャケットに流入し、タービン冷却ジャケットを通過して冷却液出口から排出される。このようにモータ冷却ジャケットとタービン冷却ジャケットは直列の冷却系統として構成されているので、冷却液の流量は、非アシスト型の過給機に供給する冷却液流量と同じでよい。したがって、冷却液を供給するための周辺機器は、非アシスト型の過給機と同じでよく、電動アシスト過給機のドロップインでの搭載が簡単になる。
【0011】
(2)上記の電動アシスト過給機の冷却構造において、前記回転軸の軸心を含む平面を境界とする第1領域及び第2領域を定義したとき、前記冷却液入口流路は第1領域において前記モータ冷却ジャケットに接続されており、前記冷却液出口流路は第1領域において前記タービン冷却ジャケットに接続されており、前記連通流路の入口は第2領域において前記モータ冷却ジャケットに接続されており、前記連通流路の出口は第2領域において前記タービン冷却ジャケットに接続されており、前記冷却液出口流路の下流端は前記冷却液入口流路の上流端よりも高い位置に配置されている。
【0012】
上記の構成によれば、冷却液入口流路からモータ冷却ジャケットに導入された冷却液は、2方向に分岐して流れ、反対側に設けられた連通流路の入口で合流し、連通流路を通り、連通流路の出口からタービン冷却ジャケットに流入して2方向に分岐して流れ、冷却液出口流路で合流して排出される。このように、モータ冷却ジャケットの内部で冷却液の流れを分岐させることで電動機の冷却を効率的に行うことができ、タービン冷却ジャケットの内部で冷却液の流れを分岐させることでハウジングのタービン側の部位の冷却を効率的に行うことができる。
【0013】
(3)上記の電動アシスト過給機の冷却構造において、前記連通流路の入口は、前記モータ冷却ジャケットにおける前記冷却液入口流路との接続点から回転軸周りに180度転回した位置において前記モータ冷却ジャケットに接続しており、前記タービン冷却ジャケットは、前記連通流路の出口で分岐して前記冷却液出口流路に至る2つの流路のうち短い方の流路に、当該2つの流路の流量を均一化するための流量均一化手段を有する。
【0014】
上記の構成によれば、連通流路の入口がモータ冷却ジャケットにおける冷却液入口流路との接続点から回転軸周りに180度転回した位置においてモータ冷却ジャケットに接続しているので、モータ冷却ジャケットの内で分岐する2つの流路の流量を同等にすることができ、2つの流路の冷却能力をバランスさせることができる。また、タービン冷却ジャケットが、連通流路の出口で分岐して冷却液出口流路に至る2つの流路のうち短い方の流路に、当該2つの流路の流量を均一化するための流量均一化手段を有するので、タービン冷却ジャケットの内で分岐する2つの流路の冷却能力をバランスさせることができる。
【0015】
(4)上記の電動アシスト過給機の冷却構造において、前記連通流路の出口は、前記タービン冷却ジャケットにおける前記冷却液出口流路との接続点から回転軸周りに180度転回した位置において前記タービン冷却ジャケットに接続しており、前記モータ冷却ジャケットは、前記冷却液出口流路との接続点で分岐して前記連通流路の入口に至る2つの流路のうち短い方の流路に、当該2つの流路の流量を均一化するための流量均一化手段を有する。
【0016】
上記の構成によれば、連通流路の出口がタービン冷却ジャケットにおける冷却液出口流路との接続点から回転軸周りに180度転回した位置においてタービン冷却ジャケットに接続しているので、タービン冷却ジャケットの内で分岐する2つの流路の流量を同等にすることができ、2つの流路の冷却能力をバランスさせることができる。また、モータ冷却ジャケットが、冷却液出口流路との接続点で分岐して連通流路の入口に至る2つの流路のうち短い方の流路に、当該2つの流路の流量を均一化するための流量均一化手段を有するので、モータ冷却ジャケットの内で分岐する2つの流路の冷却能力をバランスさせることができる。
【0017】
(5)上記の電動アシスト過給機の冷却構造において、前記ハウジングの外面には、冷却液供給ラインと前記冷却液入口流路とを接続するための供給側接続部と、前記冷却液排出ラインと前記冷却液出口流路とを接続するための排出側接続部とが設けられており、前記排出側接続部は、前記タービン冷却ジャケットに対応する軸方向位置において前記ハウジングに設けられており、前記供給側接続部は、前記排出側接続部と同じ軸方向位置、または、前記排出側接続部と同じ軸方向位置から前記タービン冷却ジャケットと前記モータ冷却ジャケットの間の真ん中の軸方向位置までの範囲に設けられている。
【0018】
上記の構成によれば、供給側接続部(例えば、冷却水供給ラインを接続するためにハウジングに設けた冷却水入口フランジ)が排出側接続部(例えば、冷却水排出ラインを接続するためにハウジングに設けた冷却水出口フランジ)に近い位置に配置される。非アシスト型の過給機では冷却水入口フランジと冷却水出口フランジが近接して配置されているため、上記の構成を採用することにより、電動アシスト過給機のドロップインでの搭載がより簡単になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電動アシスト過給機の冷却構造によれば、ドロップインによる搭載を容易化できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】特許文献1に開示された電動アシスト過給機の概略構成図である。
【図2】本発明に係る冷却構造を備えた電動アシスト過給機の概略構成断面図である。
【図3】本発明に係る電動アシスト過給機の冷却構造の第1実施形態の概略斜視図である。
【図4】本発明に係る電動アシスト過給機の冷却構造の第1実施形態の、軸方向からの視点による概略図である。
【図5】本発明の第1実施形態の冷却構造の別の構成例を示す図である。
【図6】本発明に係る電動アシスト過給機の冷却構造の第2実施形態の概略斜視図である。
【図7】本発明の第2実施形態における排出側接続部を配置する範囲を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0022】
図2は、本発明に係る冷却構造を備えた電動アシスト過給機の概略構成断面図である。
図2において、タービンインペラ2とコンプレッサインペラ3が回転軸4で連結されている。タービンインペラ2、コンプレッサインペラ3及び回転軸4は、ハウジング6の内部に回転可能に配置されている。回転軸4は、図示例では、タービンインペラ2と一体成型された構成要素であり、一端側(図2で左端側)においてタービンインペラ2の背面側と結合しており、他端側(図2)で右端側においてナット5の締結によってコンプレッサインペラ3に固定されている。また回転軸4は、ハウジング6の内部において、軸受13により回転可能に支持されている。
【0023】
ハウジング6は、タービンハウジング7、コンプレッサハウジング8及びセンターハウジング9からなる。タービンハウジング7は、タービンインペラ2を囲み、スクロール11に導入された内燃機関からの排気ガスをタービンインペラ2に送る。コンプレッサハウジング8は、コンプレッサインペラ3を囲み、コンプレッサインペラ3からの圧縮空気をスクロール12に集めて内燃機関に供給する。センターハウジング9は、タービンハウジング7とコンプレッサハウジング8の間に配置され、タービンハウジング7とコンプレッサハウジング8に固定されている。
【0024】
センターハウジング9の内部には電動機14が設けられている。電動機14は、回転軸4に取り付けられた永久磁石等からなるロータ14rと、センターハウジング9の内部に固定されたコイル等からなるステータ14sとからなる。タービンに導入される排気ガスは高温であるため、過給機の稼働中は、タービン側からの熱伝導によりセンターハウジング9のタービン寄りの部分が高温となる。このため、センターハウジング9のタービン寄りの部分には、冷却液を流すためのタービン冷却ジャケット32が設けられている。タービン冷却ジャケット32は、回転軸4周りに周方向に延びるリング状の流路である。冷却液は、例えばラジエター水である。
【0025】
電動アシスト過給機では、過給機の稼働中、電動機14が高速回転し風損や渦電流損により自己発熱する。また、タービンには高温の排気ガスが流れるため、タービンインペラ2から回転軸4、回転軸4から電動機14のロータ14rへの熱伝導により電動機14が高温となる。電動機14が高温になると内部の永久磁石が減磁したり、電動機14の効率が低下したりするなどの悪影響がある。このような問題を軽減するため、センターハウジング9には、ステータ14sを囲むようにモータ冷却ジャケット31が設けられている。モータ冷却ジャケット31は、ステータ14sを囲むように周方向に延びるリング状の冷却水用の流路である。
【0026】
モータ冷却ジャケット31を構成する流路壁は、コンプレッサ側のセンターハウジング9の内面と、ジャケット形成スリーブ15の外周面により構成されている。ジャケット形成スリーブ15は、センターハウジング9の内側に挿入されたリング状の部材である。センターハウジング9のコンプレッサ側の端部には、モータ冷却ジャケット31の流路壁を構成する部分よりも外径が大きいフランジ部15aが形成され、このフランジ部15aがセンターハウジング9と円盤状のシールプレート21との間に挟まれることで、ジャケット形成スリーブ15がセンターハウジング9に固定されている。
【0027】
ジャケット形成スリーブ15は、アルミニウム合金等の熱伝導率の高い材料からなるのがよい。モータ冷却ジャケット31から冷却液が漏れるのを防止するため、ジャケット形成スリーブ15とセンターハウジング9との間にはシール部材18、19が配置されている。なお、本発明におけるモータ冷却ジャケット31の構成は図2に示した形態に限られない。例えば、モータ冷却ジャケット31は、鋳造によって形成した流路でもよい。
【0028】
図2の構成例において、電動機14のステータ14sは、ジャケット形成スリーブ15の内周面に密着して配置されている。図示例のステータ14sは、導線で形成されたコイル16と、コイル16を覆るモールド材17とからなる。モールド材17は高熱伝導性の樹脂からなり、外周面においてジャケット形成スリーブ15の内周面と密着している。このような構成により、ステータ14sからジャケット形成スリーブ15への伝熱性が良くなり、冷却性能が高まる。
【0029】
図3は、本発明に係る電動アシスト過給機の冷却構造30の第1実施形態の概略斜視図である。図3に示すように、第1実施形態の冷却構造30は、モータ冷却ジャケット31とタービン冷却ジャケット32と連通流路33を備えている。冷却構造30の流路中の矢印は、冷却液の流れる方向を示している。
【0030】
モータ冷却ジャケット31は、上述したように電動機14のステータ14s(図2参照)を囲むように周方向に延びる流路であり、ハウジング6外部から冷却液を導入するための冷却液入口流路34と連通している。冷却液入口流路34の上流端には、ハウジング6の外部に設けられた冷却液供給ライン(図示せず)と冷却液入口流路34とを接続するための供給側接続部36が設けられている。この供給側接続部36は、ハウジング6の外面に設けられた冷却液入口フランジであり、モータ冷却ジャケット31に対応する軸方向位置に設けられている。
【0031】
タービン冷却ジャケット32は、上述したようにタービンインペラ2(図2参照)の背面側の位置に形成され回転軸4を囲むように周方向に延びる流路であり、冷却液をハウジング6外部に排出するための冷却液出口流路35と連通している。冷却液出口流路35の下流端には、ハウジングの外部に設けられた冷却液排出ライン(図示せず)と冷却液出口流路35とを接続するための排出側接続部37が設けられている。この排出側接続部37は、ハウジングの外面に設けられた冷却液出口フランジであり、タービン冷却ジャケット32に対応する軸方向位置に設けられている。
【0032】
連通流路33は、モータ冷却ジャケット31を通過した冷却液をタービン冷却ジャケット32に供給するための流路であり、入口33aがモータ冷却ジャケット31に接続され、出口33bがタービン冷却ジャケット32に接続されている。図示例では、連通流路33の入口33aは、モータ冷却ジャケット31の外周部に接続されているが、モータ冷却ジャケット31の内周部や側面部に接続されてもよい。また図示例では、連通流路33の出口33bは、タービン冷却ジャケット32の外周部に接続されているが、タービン冷却ジャケット32の内周部や側面部に接続されてもよい。
【0033】
上記のように構成された本発明の電動アシスト過給機の冷却構造30の第1実施形態によれば、モータ冷却ジャケット31とタービン冷却ジャケット32が連通流路33によって直列に接続されている。このため、冷却液入口流路34から導入された冷却液は、モータ冷却ジャケット31を流れる過程で電動機14のステータ14sを冷却し、モータ冷却ジャケット31を通過した冷却液は、連通流路33を通ってタービン冷却ジャケット32に流入し、タービン冷却ジャケット32を通過して冷却液出口流路35から排出される。このようにモータ冷却ジャケット31とタービン冷却ジャケット32は直列の冷却系統として構成されているので、冷却液の流量は、非アシスト型の過給機に供給する冷却液流量と同じでよい。したがって、冷却液を供給するための周辺機器は、非アシスト型の過給機と同じでよく、電動アシスト過給機のドロップインでの搭載が簡単になる。
【0034】
図4は、図3に示した第1実施形態に係る冷却構造30の、軸方向(矢印X方向)からの視点による概略図である。なお、図3において、連通流路33は、モータ冷却ジャケット31の内周部とタービン冷却ジャケット32の外周部を連結しているように示されているが、これはモータ冷却ジャケット31とタービン冷却ジャケット32をつなぐ流路としての連通流路33を機能的に図示したものであり、モータ冷却ジャケット31の内周部とタービン冷却ジャケット32の外周部を接続することを意図したものではない。
【0035】
ここで、回転軸4の軸心を含む平面を境界として分けた2つの領域を第1領域及び第2領域と定義する。図4では、上記の平面を回転軸4の軸心を含む鉛直面Sに設定し、鉛直面Sより右側の領域を第1領域、鉛直面より左側の領域を第2領域とする。
図3に示す冷却構造30において、冷却液入口流路34は第1領域においてモータ冷却ジャケット31に接続されている。冷却液出口流路35は第1領域においてタービン冷却ジャケット32に接続されている。連通流路33の入口は第2領域においてモータ冷却ジャケット31に接続されている。連通流路33の出口は第2領域においてタービン冷却ジャケット32に接続されている。冷却液出口流路35の下流端は冷却液入口流路34の上流端よりも高い位置に配置されている。図4中の符号hは、冷却液入口流路34の上流端と冷却液出口流路35の下流端の高低差を示している。
【0036】
このような構成によれば、図3及び図4に示すように、冷却液入口流路34からモータ冷却ジャケット31に導入された冷却液は、2方向に分岐して流れ、反対側に設けられた連通流路33の入口で合流し、連通流路33を通り、連通流路33の出口からタービン冷却ジャケット32に流入して2方向に分岐して流れ、冷却液出口流路35で合流して排出される。このように、モータ冷却ジャケット31の内部で冷却液の流れを分岐させることで電動機14の冷却を効率的に行うことができ、タービン冷却ジャケット32の内部で冷却液の流れを分岐させることでハウジングのタービン側の部位の冷却を効率的に行うことができる。
【0037】
また、図3及び図4に示す構成例において、連通流路33の入口は、モータ冷却ジャケット31における冷却液入口流路34との接続点から回転軸4周りに180度転回した位置においてモータ冷却ジャケット31に接続している。また、タービン冷却ジャケット32は、連通流路33の出口で分岐して冷却液出口流路35に至る2つの流路のうち短い方の流路に、当該2つの流路の流量を均一化するための流量均一化手段38を有する。図示例において、流量均一化手段38は、邪魔板(流路内に形成された突起)によって流路断面積を制限するものであるが、短い方の流路の全部または一部の断面積を、長い方の流路の断面積より小さくしてもよい。
【0038】
このような構成によれば、連通流路33の入口33aがモータ冷却ジャケット31における冷却液入口流路34との接続点から回転軸4周りに180度転回した位置においてモータ冷却ジャケット31に接続しているので、モータ冷却ジャケット31の内で分岐する2つの流路の流量を同等にすることができ、2つの流路の冷却能力をバランスさせることができる。また、タービン冷却ジャケット32が、連通流路33の出口33bで分岐して冷却液出口流路35に至る2つの流路のうち短い方の流路に、当該2つの流路の流量を均一化するための流量均一化手段38を有するので、タービン冷却ジャケット32の内で分岐する2つの流路の冷却能力をバランスさせることができる。
【0039】
図3に示した構成例において、連通流路33は回転軸4の軸心方向と平行に伸びてタービン冷却ジャケット32の外周部の位置で屈曲してタービン冷却ジャケット32に接続しているため、タービン冷却ジャケット32内の2つの流路の長さが異なっているが、代わりに、冷却流路33の入口33aの位置は図3のままで、連通流路33を回転軸4の軸心に対して傾斜させるか途中で屈曲する形状にすることで、タービン冷却ジャケット32における冷却液出口流路35との接続点から回転軸4周りに180度転回した位置に連通流路33の出口33bを接続すれば、タービン冷却ジャケット32内の2つの流路の長さを同じにすることができる。これにより、流量均一化手段38を省略してもよい。
【0040】
また、図4の構成例に代えて、図5に示す構成を採用してもよい。図5において、連通流路33の出口は、タービン冷却ジャケット32における冷却液出口流路35との接続点から回転軸周りに180度転回した位置において、タービン冷却ジャケット32に接続している。モータ冷却ジャケット31は、冷却液出口流路34との接続点で分岐して連通流路の入口に至る2つの流路のうち短い方の流路に、当該2つの流路の流量を均一化するための流量均一化手段38を有する。
【0041】
このような構成によれば、連通流路33の出口が、タービン冷却ジャケット32における冷却液出口流路35との接続点から回転軸4周りに180度転回した位置において、タービン冷却ジャケット32に接続しているので、タービン冷却ジャケット32の内で分岐する2つの流路の流量を同等にすることができ、2つの流路の冷却能力をバランスさせることができる。また、モータ冷却ジャケット31が、冷却液出口流路35との接続点で分岐して連通流路33の入口に至る2つの流路のうち短い方の流路に、当該2つの流路の流量を均一化するための流量均一化手段38を有するので、モータ冷却ジャケット31の内で分岐する2つの流路の冷却能力をバランスさせることができる。
【0042】
なお、センターハウジング9(図2参照)内の他の構造との関係で、モータ冷却ジャケット31における冷却液入口流路34との接続点から回転軸4周りに180度転回した位置に連通流路33の入口を接続することができず、かつ、タービン冷却ジャケット32における冷却液出口流路35との接続点から回転軸4周りに180度転回した位置に連通流路33の出口を接続することができない場合には、モータ冷却ジャケット31とタービン冷却ジャケット32の両方において流量均一化手段38を設け、各ジャケットにおいて2つの流路の流量を均一化してもよい。
【0043】
図6は、本発明に係る電動アシスト過給機の冷却構造30の第2実施形態の概略斜視図である。第2実施形態において、排出側接続部37は、タービン冷却ジャケット32に対応する軸方向位置においてハウジングに設けられている。供給側接続部36は、排出側接続部37とほぼ同じ軸方向位置に設けられている。このため、冷却液入口流路34は、モータ冷却ジャケット31から供給側接続部36の位置まで延びている。第2実施形態の他の構成については、第1実施形態と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0044】
上記の構成によれば、供給側接続部36が排出側接続部37に近い位置に配置される。非アシスト型の過給機では冷却水入口フランジと冷却水出口フランジが近接して配置されているため、上記の構成を採用することにより、電動アシスト過給機のドロップインでの搭載がより簡単になる。
【0045】
図6の構成と異なり、排出側接続部37を供給側接続部36とほぼ同じ軸方向位置に配置することが困難である場合、図7に示すように、排出側接続部37と同じ軸方向位置からタービン冷却ジャケット32とモータ冷却ジャケット31の間の真ん中の軸方向位置までの範囲に、排出側接続部37を配置してもよい。ここで、図7中、L1はタービン冷却ジャケット32(の軸方向中心位置)とモータ冷却ジャケット31(の軸方向中心位置)との距離であり、L2は供給側接続部36(の開口部中心)と排出側接続部37(の開口部中心)との距離である。すなわち、L2≦L1/2としてよい。このような構成によっても、排出側接続部37を供給側接続部36に対して比較的近い位置に配置することができるので、電動アシスト過給機のドロップインでの搭載を容易化するのに寄与できる。
【0046】
なお、上記において、本発明の実施形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0047】
1 電動アシスト過給機
2 タービンインペラ
3 コンプレッサインペラ
4 回転軸
14 電動機
14r ロータ
14s ステータ
6 ハウジング
7 タービンハウジング
8 コンプレッサハウジング
9 センターハウジング
30 冷却構造
31 モータ冷却ジャケット
32 タービン冷却ジャケット
33 連通流路
34 冷却液入口流路
35 冷却液出口流路
36 供給側接続部
37 排出側接続部
38 流量均一化手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸で連結されたコンプレッサインペラとタービンインペラがハウジング内で回転可能に配置され、前記回転軸の回転を電動機で補助し得るように構成された電動アシスト過給機の冷却構造であって、
前記ハウジングの内部において前記電動機のステータを囲むように周方向に延び、前記ハウジング外部から冷却液を導入するための冷却液入口流路と連通するモータ冷却ジャケットと、
前記ハウジングの内部において前記タービンインペラの背面側の位置に形成され前記回転軸を囲むように周方向に延び、冷却液を前記ハウジング外部に排出するための冷却液出口流路と連通するタービン冷却ジャケットと、
前記モータ冷却ジャケットを通過した冷却液を前記タービン冷却ジャケットに供給する連通流路と、を備えることを特徴とする電動アシスト過給機の冷却構造。
【請求項2】
前記回転軸の軸心を含む平面を境界とする第1領域及び第2領域を定義したとき、
前記冷却液入口流路は第1領域において前記モータ冷却ジャケットに接続されており、
前記冷却液出口流路は第1領域において前記タービン冷却ジャケットに接続されており、
前記連通流路の入口は第2領域において前記モータ冷却ジャケットに接続されており、
前記連通流路の出口は第2領域において前記タービン冷却ジャケットに接続されており、
前記冷却液出口流路の下流端は前記冷却液入口流路の上流端よりも高い位置に配置されている、請求項1記載の電動アシスト過給機の冷却構造。
【請求項3】
前記連通流路の入口は、前記モータ冷却ジャケットにおける前記冷却液入口流路との接続点から回転軸周りに180度転回した位置において前記モータ冷却ジャケットに接続しており、
前記タービン冷却ジャケットは、前記連通流路の出口で分岐して前記冷却液出口流路に至る2つの流路のうち短い方の流路に、当該2つの流路の流量を均一化するための流量均一化手段を有する、請求項2記載の電動アシスト過給機の冷却構造。
【請求項4】
前記連通流路の出口は、前記タービン冷却ジャケットにおける前記冷却液出口流路との接続点から回転軸周りに180度転回した位置において前記タービン冷却ジャケットに接続しており、
前記モータ冷却ジャケットは、前記冷却液出口流路との接続点で分岐して前記連通流路の入口に至る2つの流路のうち短い方の流路に、当該2つの流路の流量を均一化するための流量均一化手段を有する、請求項2記載の電動アシスト過給機の冷却構造。
【請求項5】
前記ハウジングの外面には、冷却液供給ラインと前記冷却液入口流路とを接続するための供給側接続部と、前記冷却液排出ラインと前記冷却液出口流路とを接続するための排出側接続部とが設けられており、
前記排出側接続部は、前記タービン冷却ジャケットに対応する軸方向位置において前記ハウジングに設けられており、
前記供給側接続部は、前記排出側接続部と同じ軸方向位置、または、前記排出側接続部と同じ軸方向位置から前記タービン冷却ジャケットと前記モータ冷却ジャケットの間の真ん中の軸方向位置までの範囲に設けられている、請求項2乃至3のいずれか1項に記載の電動アシスト過給機の冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−196478(P2010−196478A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39117(P2009−39117)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】