説明

電動パワーステアリング装置

【課題】軸長を短縮することができる電動パワーステアリング装置を提供すること。
【解決手段】電動パワーステアリング装置1は、同軸上に相対回転可能に連結された第2および第3のシャフト12,13と、トルクセンサ44と、操舵補助用のモータと、モータの動力を第3のシャフト13に伝達する減速機構26とを備えている。減速機構26は、モータにより駆動されるウォーム軸27と、ウォーム軸27に噛み合い、第3のシャフト13の外周に同行回転可能に連結された環状のウォームホイール28とを含み、トルクセンサ44は、ウォームホイール28の径方向R内方に配置された内方配置部94を含み、内方配置部94は、ウォームホイール28の一部である筒状突起71の内径部71bに同行回転可能に連結された連結部を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動パワーステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両に備えられる車両用操舵装置として、電動モータによって操舵を補助する電動パワーステアリング装置が知られている。また、電動パワーステアリング装置には、入力回転角に対する出力回転角の比(伝達比)を変化させることができる伝達比可変機構を備えるものがある(例えば特許文献1参照)。特許文献1に係る電動パワーステアリング装置では、伝達比可変機構がステアリングシャフトと同軸上に配置されている。
【特許文献1】特開2006−82718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
車両用操舵装置は、車両の限られた空間に配置されることから、その大きさを小さくすることが望まれている。特に、伝達比可変機構を備える電動パワーステアリング装置は、軸長(ステアリングシャフトの軸方向に沿う長さ)が長くなる傾向にあることから、その軸長を短縮することが望まれている。
この発明は、かかる背景のもとになされたものであり、軸長を短縮することができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するための本発明は、同軸上に相対回転可能に連結された第1および第2の軸(12,13)と、第1および第2の軸の相対回転量に基づいて第1の軸に入力されたトルクの大きさを検出するためのトルクセンサ(44)と、操舵補助用のモータ(25)と、上記モータの動力を第2の軸に伝達する伝達装置(26)とを備え、上記伝達装置は、上記モータにより駆動される第1の歯車(27)と、第1の歯車に噛み合い、第2の軸の外周に同行回転可能に連結された環状の第2の歯車(28)とを含み、トルクセンサは、第2の歯車の径方向(R)内方に配置された内方配置部(94)を含み、上記内方配置部は、第2の歯車の内径部(71b)に同行回転可能に連結された連結部(94a)を含むことを特徴とする電動パワーステアリング装置(1)である(請求項1)。
【0005】
本発明によれば、トルクセンサの一部(内方配置部)が第2の歯車の径方向内方に配置されているので、電動パワーステアリング装置の軸長(第1および第2の軸の軸方向に沿う長さ)を短縮することができる。
また、上記電動パワーステアリング装置は、上記第2の歯車を収容するハウジング(52,53)と、ハウジングによって保持され第2の歯車を回転可能に支持する軸受(82)とをさらに備え、上記トルクセンサの上記内方配置部は、上記軸受の径方向内方に配置された部分(95)を含む場合がある(請求項2)。この場合、内方配置部の一部が軸受の径方向内方に配置されているので、電動パワーステアリング装置の軸長をさらに短縮することができる。
【0006】
また、上記第2の歯車は、環状の本体(73)と、この本体の側面から側方に突出する筒状突起(71)とを含み、筒状突起の外径部(71a)に、上記軸受の内輪(83)が同行回転可能に連結され、上記第2の歯車の上記内径部としての、筒状突起の内径部(71b)に、上記内方配置部の連結部が同行回転可能に連結されている場合がある(請求項3)。この場合、内方配置部の連結部を筒状突起の内径部に同行回転可能に連結することにより、トルクセンサの一部(内方配置部)を第2の歯車の径方向内方に配置することができる。また、軸受の内輪を筒状突起の外径部に同行回転可能に連結することにより、内方配置部の一部を軸受の径方向内方に配置することができる。これにより、電動パワーステアリング装置の軸長を確実に短縮することができる。
【0007】
また、上記第2の軸および第2の歯車は、スプライン嵌合により同行回転可能に連結されている場合がある(請求項4)。この場合、短い嵌合長で第2の軸および第2の歯車を確実に同行回転可能に連結することができる。したがって、第2の軸および第2の歯車の嵌合長を短縮して、電動パワーステアリング装置の軸長を短縮することができる。
なお、上記において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の好ましい実施の形態を添付図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る電動パワーステアリング装置1の概略構成を示す模式図である。
図1を参照して、電動パワーステアリング装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2に付与された操舵トルクを、操舵軸としてのステアリングシャフト3等を介して左右の転舵輪4L,4Rのそれぞれに与えて転舵を行うものであり、操舵部材2の操舵角θ1に対する転舵輪の転舵角θ2の比としての伝達比θ2/θ1を変更することのできるVGR(Variable Gear Ratio)機能を有している。
【0009】
この電動パワーステアリング装置1は、操舵部材2と、操舵部材2に連なるステアリングシャフト3とを有している。ステアリングシャフト3は、同軸上に配置された第1〜第3のシャフト11〜13を含んでいる。第1〜第3のシャフト11〜13の中心軸線を通る第1の軸線Aは、当該第1〜第3のシャフト11〜13の回転軸線でもある。この実施形態では、第2のシャフト12および第3のシャフト13がそれぞれ第1の軸および第2の軸として機能する。
【0010】
なお、以下では、ステアリングシャフト3の軸方向Sを単に軸方向Sといい、ステアリングシャフト3の径方向Rを単に径方向Rといい、ステアリングシャフト3の周方向Cを単に周方向Cという。
第1のシャフト11の一端に操舵部材2が同行回転可能に連結されている。第1のシャフト11の他端部と第2のシャフト12の一端部とは、差動機構としての伝達比可変機構5を介して差動回転可能に連結されている。第2のシャフト12の他端と第3のシャフト13の一端とは、トーションバー14を介して所定の範囲内で弾性的に相対回転可能且つ動力伝達可能に連結されている。
【0011】
第3のシャフト14の他端は、自在継手7、中間軸8、自在継手9および転舵機構10等を介して、転舵輪4L,4Rと連なっている。
転舵機構10は、自在継手9に連なるピニオン軸15と、ピニオン軸15の先端のピニオン15aに噛み合うラック16aを有し車両の左右方向に延びる転舵軸としてのラック軸16とを有している。ラック軸16の一方の端部には、タイロッド17Lを介してナックルアーム18Lが連結されている。また、ラック軸16の他方の端部には、タイロッド17Rを介してナックルアーム18Rが連結されている。
【0012】
上記の構成により、操舵部材2の回転は、ステアリングシャフト3等を介して転舵機構10に伝達される。転舵機構10では、ピニオン15aの回転がラック軸16の軸方向の運動に変換される。ラック軸16の軸方向の運動は、各タイロッド17L,17Rを介して対応するナックルアーム18L,18Rに伝えられ、これらのナックルアーム18L,18Rがそれぞれ回動する。これにより、ナックルアーム18L,18Rにそれぞれ連結された転舵輪4L,4Rが操向する。
【0013】
伝達比可変機構5は、ステアリングシャフト3の第1および第2のシャフト11,12間の回転伝達比(伝達比θ2/θ1)を変更するためのものである。この伝達比可変機構5は、第1のシャフト11の他端部に設けられた入力部材20と、第2のシャフト12の一端部に設けられた出力部材22と、入力部材20と出力部材22との間に介在する軌道輪ユニット39とを含んでいる。
【0014】
入力部材20は、第1のシャフト11とは同軸的に且つ同行回転可能に連結されており、出力部材22は、第2のシャフト12とは同軸的に且つ同行回転可能に連結されている。出力部材22は、第2のシャフト12や転舵機構10等を介して転舵輪4L,4Rに連なっている。第1の軸線Aは、入力部材20および出力部材22の中心軸線および回転軸線でもある。
【0015】
軌道輪ユニット39は、第1の軸線Aに対して傾斜する中心軸線としての第2の軸線Bを有しており、第1の軌道輪としての内輪391と、第2の軌道輪としての外輪392と、内輪391および外輪392間に介在する玉等の転動体393とを含んでいる。
内輪391は、入力部材20と出力部材22とを差動回転可能に連結するものであり、入力部材20と出力部材22のそれぞれと回転伝達可能に係合している。内輪391は、転動体393を介して外輪392に回転可能に支持されていることにより、第2の軸線Bの回りを回転可能であり、また、外輪392を駆動するためのアクチュエータとしての電動モータである伝達比可変機構用モータ23が駆動されることに伴い、第1の軸線Aの回りを回転可能である。内輪391および外輪392は、第1の軸線A回りにコリオリ運動(首振り運動)可能である。
【0016】
伝達比可変機構用モータ23は、伝達比可変用モータを構成しており、伝達比可変機構5を駆動するために第1および第2のシャフト11,12とは同軸的に配置されている。第1の軸線Aは、伝達比可変機構用モータ23の中心軸線でもある。伝達比可変機構用モータ23は、第1の軸線A回りに関する外輪392の回転数を変更することにより、伝達比θ2/θ1を変更する。
【0017】
伝達比可変機構用モータ23は、ステアリングシャフト3とは同軸的に配置されたブラシレスモータからなり、軌道輪ユニット39を保持する筒状のロータ231と、ロータ231を取り囲むとともにハウジング24に固定されたステータ232とを含んでいる。
また、この電動パワーステアリング装置1は、ステアリングシャフト3に操舵補助力を付与するための操舵補助力付与機構19を備えている。操舵補助力付与機構19は、伝達比可変機構5の出力部材22に連なる入力軸としての上記第2のシャフト12と、転舵機構10に連なる出力軸としての上記第3のシャフト13と、第2のシャフト12に伝達されるトルクを検出するトルクセンサ44と、操舵補助用のモータ25と、モータ25と第3のシャフト13との間に介在する減速機構26とを含んでいる。
【0018】
モータ25は、ブラシレスモータ等の電動モータからなる。このモータ25の出力は、減速機構26を介して第3のシャフト13に伝達されるようになっている。
減速機構26は、例えばウォームギヤ機構からなり、モータ25の出力軸25aに連結された駆動歯車としてのウォーム軸27と、ウォーム軸27と噛み合い且つ第3のシャフト13に同行回転可能に連結された従動歯車としてのウォームホイール28とを含んでいる。この実施形態では、ウォーム軸27およびウォームホイール28がそれぞれ第1の歯車および第2の歯車としての機能する。
【0019】
上記伝達比可変機構用モータ23およびモータ25の駆動は、それぞれ、CPU、RAMおよびROMを含む制御部29によって制御される。制御部29は、駆動回路40を介して伝達比可変機構用モータ23に接続されているとともに、駆動回路41を介してモータ25に接続されている。
制御部29には、操舵角センサ42、伝達比可変機構用モータ23のロータ231の回転角を検出する回転角検出センサとしてのモータレゾルバ43、トルクセンサ44、転舵角センサ45、車速センサ46およびヨーレートセンサ47がそれぞれ接続されている。
【0020】
操舵角センサ42から制御部29には、操舵部材2の直進位置からの操作量である操舵角θ1に対応する値として、第1のシャフト11の回転角についての信号が入力される。
モータレゾルバ43から制御部29には、伝達比可変機構用モータ23のロータ231の回転角θrについての信号が入力される。
トルクセンサ44から制御部29には、操舵部材2に作用する操舵トルクTに対応する値として、第2のシャフト12に作用するトルクについての信号が入力される。
【0021】
転舵角センサ45から制御部29には、転舵角θ2に対応する値として第3のシャフト13の回転角についての信号が入力される。
車速センサ46から制御部29には、車速Vについての信号が入力される。
ヨーレートセンサ47から制御部29には、車両のヨーレートγについての信号が入力される。
【0022】
制御部29は、各上記センサ42〜47の信号等に基づいて、伝達比可変機構用モータ23およびモータ25の駆動を制御する。
上記の構成により、操舵部材2からのトルクおよび伝達比可変機構5からのトルクは、操舵補助力付与機構19を介して転舵機構10に伝達される。具体的には、操舵部材2に入力された操舵トルクは、第1のシャフト11を介して伝達比可変機構5の入力部材20に入力され、入力部材20から内輪391に入力される。内輪391には、操舵部材2からのトルクに加え、外輪392および転動体393を介して内輪391に伝わった伝達比可変機構用モータ5からのトルクが伝達され、これらのトルクが、出力部材22に伝達される。出力部材22に伝達されたトルクは、第2のシャフト12に伝達される。第2のシャフト12に伝達されたトルクは、トーションバー14および第3のシャフト13に伝わり、モータ25からの出力と合わさって、自在継手7、中間軸8、および自在継手9を介して、転舵機構10に伝達される。
【0023】
このように、操舵部材2のトルクを転舵機構10に伝える動力伝達経路Dが構成されている。この動力伝達経路Dは、第1のシャフト11、入力部材20、内輪391、出力部材22、第2のシャフト12、トーションバー14および第3のシャフト13、自在継手7、中間軸8ならびに自在継手9を通る経路である。
図2は、図1の要部のより具体的な構成を示す一部断面図である。
【0024】
図2を参照して、ハウジング24は、例えば、アルミニウム合金等の金属を用いて全体として筒状に形成されたものであり、第1〜第3のハウジング51〜53を含んでいる。
第1のハウジング51は筒状をなしており、差動機構としての伝達比可変機構5を収容する差動機構ハウジングと、伝達比可変機構用モータ23を収容するモータハウジングと、モータレゾルバ43を収容するレゾルバハウジングを構成している。また、図示はしないが、第1のハウジング51は、伝達比可変機構用モータ23に電力を供給するためのバスバーと、伝達比可変機構用モータ23のロータ231をロックするためのロック機構とを収容している。
【0025】
第1のハウジング51の一端は、端壁部材54によって覆われている。第1のハウジング51の一端と端壁部材54とは、ボルト等の締結部材55を用いて互いに固定されている。第1のハウジング51の他端の内周面56に、第2のハウジング52の一端の環状凸部57が嵌合されている。これら第1および第2のハウジング51,52は、ボルト等の締結部材58を用いて互いに固定されている。
【0026】
第2のハウジング52は筒状をなしており、トルクセンサ44を収容するセンサハウジングを構成している。第2のハウジング52の他端の外周面59に、第3のハウジング53の一端の内周面60が嵌合している。
第3のハウジング53は、筒状をなしており、減速機構26を収容する減速機構ハウジングを構成している。第3のハウジング53の他端には端壁部61が設けられている。端壁部61は環状をなしており、第3のハウジング53の他端を覆っている。
【0027】
図3は、図2の一部を拡大した図であり、減速機構26、トルクセンサ44、およびこれらの近傍を示している。以下では、図3を参照して、第2の歯車としてのウォームホイール28、およびトルクセンサ44について詳細に説明する。
ウォームホイール28は、外周に複数の歯72aが形成された円環状の合成樹脂部材72と、ウォームホイール28の本体を構成する芯金73と、芯金73の側面73a(図3では右側面)から側方に延びる円筒状の筒状突起71とを有している。ウォームホイール28は、第3のシャフト13に同軸的に連結されており、ウォームホイール28の径方向および軸方向は、それぞれ径方向Rおよび軸方向Sに一致されている。また、この実施形態では、芯金73と筒状突起71とが例えば単一の材料によって一体に形成されている。
【0028】
合成樹脂部材72は、芯金73の外周部に沿って設けられており、芯金73の周囲を取り囲んでいる。芯金73の少なくとも一部は、例えばインサート成形を用いて合成樹脂部材72内に埋設されており、合成樹脂部材72と芯金73とは、同行回転可能に連結されている。ウォーム軸27は、合成樹脂部材72の外周に噛み合わされており、モータ25(図1参照)の回転は、ウォーム軸27を介してウォームホイール28に伝達される。ウォーム軸27からウォームホイール28に回転が伝達されることで回転速度が減速される。また、ウォーム軸27からウォームホイール28に回転が伝達されることでトルクが増幅される。
【0029】
芯金73は、例えばスプライン嵌合により、第3のシャフト13に同行回転可能に連結されている。すなわち、芯金73の内周には、雌スプライン部74と、雌スプライン部74に隣接して配置された円筒面からなる被嵌合面75aとが設けられている。芯金73は、第3のシャフト13に形成された雄スプライン部76が雌スプライン部74に噛み合わされることにより、第3のシャフト13に同行回転可能に連結されている。また、第3のシャフト13の端部には、被嵌合面75aに例えば軽圧入された嵌合面75bが設けられており、被嵌合面75aおよび嵌合面75bの軽圧入によって第3のシャフト13に対するウォームホイール28の軸方向Sおよび径方向Rへの移動が規制されている。さらに、被嵌合面75aおよび嵌合面75bの軽圧入によって第3のシャフト13とウォームホイール28との同軸度が確保されている。すなわち、被嵌合面75aおよび嵌合面75bがなければ、第3のシャフト13とウォームホイール28との位置決めは、雌スプライン部74と雄スプライン76との圧入になり、第3のシャフト13とウォームホイール28との同軸度を確保できないおそれがある。この場合、第3のシャフト13の振れ回りが生じ、その結果、ステアリングコラムとして回転トルクが不良となるおそれがある。したがって、被嵌合面75aおよび嵌合面75bの軽圧入によって第3のシャフト13とウォームホイール28との同軸度を確保することにより、第3のシャフト13の振れ回りを防止でき、ひいては回転トルクの不良を防止することができる。
【0030】
第3のシャフト13の端部に設けられた嵌合面75bのなす円筒面の外径は、ウォームホイール28の雌スプライン部74の内接円の直径よりも小さくされている。第3のシャフト13にウォームホイール28を取り付けるときは、両スプライン部74,76の嵌合に先立って、第3のシャフト13の嵌合面75bが、ウォームホイール28の被嵌合面75aに嵌合する。これにより、第3のシャフト13およびウォームホイール28が心合わせされるので、両スプライン部74,76をスムーズに嵌合させることができる。すなわち、嵌合面75bは、両スプライン部74,76の嵌合を案内する案内面として機能する。
【0031】
また、芯金73は、円環状をなす厚肉の部材に形成されている。上記筒状突起71は、芯金73の側面73a中央部から側方に突出している。筒状突起71は、外径および内径が一定の円筒状をなしている。筒状突起71の外径部71aおよび内径部71bは同心である。芯金73は、その内周面の中心軸線が筒状突起71の中心軸線と一致している。また、芯金73の側面73a中央部には、筒状突起71を同軸的に取り囲む環状段部81が形成されている。
【0032】
また、筒状突起71には、軸受82が同軸的に外嵌されている。より具体的には、先端部を除く筒状突起71の外径部71aの一部に軸受82が同軸的に外嵌されている。ウォームホイール28は、この軸受82によって回転可能に支持されている。軸受82は、例えばラジアル玉軸受であり、内輪83および外輪84と、複数の転動体85とを有している。内輪83は、筒状突起71の外径部71aに例えば圧入され、同行回転可能に連結されている。内輪83の一方の端面(図3では左端面)は環状段部81に係合しており、この環状段部81によって内輪83が軸方向Sに関する一方側(図3では左側)に位置決めされている。また、外輪84は、第2のハウジング52に形成された軸受保持孔86内で保持されており、第2のハウジング52に同行回転可能に連結されている。ウォームホイール28は、軸受82を介して第2のハウジング52に保持されている。
【0033】
一方、トルクセンサ44は、多極磁石87と、多極磁石87が発生する磁界内に配置されて磁気回路を形成する一対の軟磁性体としての磁気ヨーク88,89と、磁気ヨーク88,89からの磁束を誘導する一対の集磁リング90,91と、これらの集磁リング90,91に誘導された磁束密度を検出する磁気センサとしてのホールIC92とを含む。
多極磁石87は、円筒状の永久磁石であり、その周方向にN極とS極とが等間隔で交互に複数回入れ替わるように着磁されている。多極磁石87は、第2のシャフト12の中間部に同行回転可能に連結されている。したがって、第2のシャフト12および第3のシャフト13が相対回転すると、多極磁石87と第3のシャフト13とが相対回転するようになっている。
【0034】
また、各磁気ヨーク88,89は、円環状をなしており、径方向Rに所定の隙間を隔てて多極磁石87を取り囲んでいる。各磁気ヨーク88,89は、径方向Rに所定の隙間を隔てて多極磁石87の外周面に対向している。各磁気ヨーク88,89は、絶縁体である共通の合成樹脂部材93にモールドされている。各磁気ヨーク88,89の一部は、合成樹脂部材93の内周面から露出されている。
【0035】
合成樹脂部材93は、内径および外径が一定の円筒状に形成されており、その軸長(軸方向Sに沿う長さ)が多極磁石87よりも長くされている。合成樹脂部材93は、軸方向Sに関するその一端(図3では右端)の位置が多極磁石87と揃えられており、その他端が多極磁石87よりもウォームホイール28側に突出している。合成樹脂部材93の他端は、筒状突起71の内側に達しており、筒状突起71よりも内側に位置する芯金73の側面73aの一部に近接した位置で、軸方向Sに所定の間隔を隔てて当該側面73aの一部に対向している。筒状突起71の径方向R内方に配置された合成樹脂部材93の一部が内方配置部94となっている。内方配置部94は、合成樹脂部材93において磁気ヨーク88,89がモールドされた部分から軸方向Sに沿ってウォームホイール28側に延設された軸方向延設部である。内方配置部94の一部95は、軸受82の径方向R内方に配置されている。
【0036】
また、合成樹脂部材93の他端部の外径部には、円筒状をなす金属(例えばS45Cなどの炭素鋼)製のカラー96が同行回転可能に連結されている。カラー96は、筒状突起71の内径部71bに例えば圧入されており、筒状突起71の内径部71bに同行回転可能に連結されている。内方配置部94は、カラー96を介して筒状突起71の内径部71bに同行回転可能に連結されている。すなわち、この実施形態では、内方配置部94の外径部94a全体が、筒状突起71の内径部71bに同行回転可能に連結された連結部になっている。
【0037】
ウォームホイール28がその中心軸線まわりに回転すると、カラー96および合成樹脂部材93がウォームホイール28の中心軸線まわりに回転する。したがって、第2のシャフト12および第3のシャフト13が相対回転すると、ウォームホイール28と第2のシャフト12とが相対回転し、合成樹脂部材93にモールドされた一対の磁気ヨーク88,89と、第3のシャフト13とが相対回転する。そのため、第2のシャフト12および第3のシャフト13が相対回転すると、多極磁石87と各磁気ヨーク88,89とが相対回転する。
【0038】
一対の集磁リング90,91は、軟磁性体を用いて形成された環状の部材であり、それぞれ磁気ヨーク88,89を取り囲んでいる。一対の集磁リング90,91は、軸方向Sに所定の間隔を隔てて配置されている。一対の集磁リング90,91は、それぞれ磁気ヨーク88,89に磁気的に結合されている。一対の集磁リング90,91は、それぞれ磁気ヨーク88,89からの磁束を誘導して集めることができる。一対の集磁リング90,91は、ホールIC92とともに筒状の合成樹脂部材97にモールドされている。ホールIC92は、一対の集磁リング90,91の間に配置されており、一対の集磁リング90,91間に生じる磁束密度を検出することができる。第2のシャフト12に入力されたトルクは、ホールIC92により検出された磁束密度に基づいて求められる。
【0039】
以上のように本実施形態では、トルクセンサ44の一部である内方配置部94が、第2の歯車としてのウォームホイール28の一部である筒状突起71の径方向R内方に配置されている。したがって、電動パワーステアリング装置1の軸長(軸方向Sに沿う長さ)を短縮することができる。また、内方配置部94の一部95が軸受82の径方向R内方に配置されているので、電動パワーステアリング装置1の軸長をさらに短縮することができる。
【0040】
また、この実施形態では、第3のシャフト13とウォームホイール28とがスプライン嵌合によって同行回転可能に連結されている。したがって、例えば圧入により第3のシャフト13とウォームホイール28とを同行回転可能に連結した場合に比べて、短い嵌合長で両者を確実に同行回転可能に連結することができる。そのため、第3のシャフト13とウォームホイール28とを圧入により連結した場合に比べて、両者の嵌合長を短縮することができる。これにより、電動パワーステアリング装置1の軸長を短縮することができる。
【0041】
この発明の実施の形態の説明は以上であるが、この発明は、上述の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、上述の実施形態では、内方配置部94の外径部94a全体が連結部となっている場合について説明したが、外径部94aの一部が連結部となっていてもよい。
また、上述の実施形態では、内方配置部94がカラー96を介して筒状突起71の内径部71bに同行回転可能に連結されている場合について説明したが、カラー96を設けずに、内方配置部94を筒状突起71の内径部71bに直接同行回転可能に連結してもよい。
【0042】
また、図示はしていないが、筒状突起71を廃止し、芯金73の内径部に、内方配置部94を同行回転可能に連結するようにしてもよい。
また、上述の実施形態では、減速機構26がウォームギヤ機構である場合について説明したが、減速機構26は、ウォームギヤ機構に限らず、平歯車やはすば歯車を用いた平行軸歯車機構等の他の歯車機構を用いてもよい。
【0043】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施の形態に係る電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】図1の要部のより具体的な構成を示す一部断面図である。
【図3】図2の一部を拡大した図である。
【符号の説明】
【0045】
1・・・電動パワーステアリング装置、12・・・第2のシャフト(第1の軸)、13・・・第3のシャフト(第2の軸)、25・・・モータ、26・・・減速機構(伝達装置)、27・・・ウォーム軸(第1の歯車)、28・・・ウォームホイール(第2の歯車)、44・・・トルクセンサ、52・・・第2のハウジング(ハウジング)、53・・・第3のハウジング(ハウジング)、71・・・筒状突起、71a・・・外径部(筒状突起の外径部)、71b・・・内径部(筒状突起の内径部)、73・・・芯金(本体)、82・・・軸受、83・・・内輪、94・・・内方配置部、94a・・・外径部(連結部)、95・・・内方配置部の一部(軸受の径方向内方に配置された部分)、R・・・径方向(第2の歯車の径方向、軸受の径方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸上に相対回転可能に連結された第1および第2の軸と、
第1および第2の軸の相対回転量に基づいて第1の軸に入力されたトルクの大きさを検出するためのトルクセンサと、
操舵補助用のモータと、
上記モータの動力を第2の軸に伝達する伝達装置とを備え、
上記伝達装置は、上記モータにより駆動される第1の歯車と、第1の歯車に噛み合い、第2の軸の外周に同行回転可能に連結された環状の第2の歯車とを含み、
トルクセンサは、第2の歯車の径方向内方に配置された内方配置部を含み、
上記内方配置部は、第2の歯車の内径部に同行回転可能に連結された連結部を含むことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
請求項1において、上記第2の歯車を収容するハウジングと、ハウジングによって保持され第2の歯車を回転可能に支持する軸受とをさらに備え、
上記トルクセンサの上記内方配置部は、上記軸受の径方向内方に配置された部分を含むことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
請求項2において、上記第2の歯車は、環状の本体と、この本体の側面から側方に突出する筒状突起とを含み、
筒状突起の外径部に、上記軸受の内輪が同行回転可能に連結され、
上記第2の歯車の上記内径部としての、筒状突起の内径部に、上記内方配置部の連結部が同行回転可能に連結されていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項において、上記第2の軸および第2の歯車は、スプライン嵌合により同行回転可能に連結されていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−137817(P2010−137817A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318527(P2008−318527)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】