説明

電動パワーステアリング装置

【課題】入力軸側回転角センサ及び出力軸側回転角センサの異常を即座に検出することができる電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】車両の操舵系に設けられたトーションバー2bで連結した入力軸2a及び出力軸2cの回転角を個別に検出する入力軸回転角センサ15及び出力軸回転角センサ16を有するトルク検出手段14と、該トルク検出手段で検出したトルク検出値に基づいて制御され、前記操舵系に対して操舵補助力を発生する電動モータ12とを備え、前記入力軸の回転角を検出して前記操舵系の操舵角を検出する操舵角検出手段13と、前記電動モータのモータ回転角を検出するレゾルバ17と、前記入力軸回転角センサ及び前記出力軸回転角操舵角検出手段の異常を、前記操舵角検出手段で検出した操舵角検出値及び前記レゾルバで検出したモータ回転角検出値に基づいて検出するセンサ異常検出手段20bを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の操舵系に電動モータによる操舵補助力を付与するようにした電動パワーステアリング装置に関し、特にトーションバーで連結した入力軸及び出力軸の回転角差を検出してトルクを検出するトルク検出手段の異常を容易に検出できるようにした電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のステアリング装置を電動モータの回転力で操舵補助力を付与する電動パワーステアリング装置は、電動モータで発生する操舵補助力を、減速機を介してステアリングシャフト或いはラック軸等の操舵系に付与するようにしている。
このような電動パワーステアリング装置において、トーションバーと、入力軸側回転角センサと、出力軸側回転角センサとからなるツインレゾルバ式トルクセンサを備えた電動パワーステアリング装置において、入力軸側回転角センサ及び出力軸側回転角センサのいずれか一方による電気角演算結果が45°を含む第一の所定の角度範囲に一定時間以上含まれ、かつ、上記入力軸側回転角センサ及び上記出力軸側回転角センサの他方による電機角演算結果が45°を含む第二の所定の角度範囲外に一定時間以上含まれたときに、一方のセンサに相間ショートが発生していると判断するようにした電動パワーステアリング装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−43071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来例にあっては、入力軸側回転角センサ及び出力軸側回転角センサの一方のセンサに相間ショートが発生していることを検出することができるものであるが、異常を検出するために所定角度範囲に一定時間以上含まれていることが条件となり、一定時間が経過しないと異常が検出できないという未解決の課題がある。
そこで、本発明は上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、入力軸側回転角センサ及び出力軸側回転角センサの異常を即座に検出することができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る電動パワーステアリング装置は、車両の操舵系に設けられたトーションバーで連結した入力軸及び出力軸の回転角を個別に検出する入力軸回転角センサ及び出力軸回転角センサを有するトルク検出手段と、該トルク検出手段で検出したトルク検出値に基づいて制御され、前記操舵系に対して操舵補助力を発生する電動モータとを備えた電動パワーステアリング装置であって、前記入力軸の回転角を検出して前記操舵系の操舵角を検出する操舵角検出手段と、前記電動モータのモータ回転角を検出するレゾルバと、前記入力軸回転角センサ及び前記出力軸回転角操舵角検出手段の異常を、前記操舵角検出手段で検出した操舵角検出値及び前記レゾルバで検出したモータ回転角検出値に基づいて検出するセンサ異常検出手段を備えていることを特徴としている。
【0006】
この構成によると、トルクを検出するための入力軸回転角センサ及び出力軸回転角センサの異常を、操舵角検出手段で検出した操舵角検出値及び前記レゾルバで検出したモータ回転角検出値に基づいて検出するので、互いに相関のある回転信号に基づいて異常判断を行うことにより、短時間で正確に異常検出を行うことができる。
【0007】
また、本発明に係る電動パワーステアリング装置は、前記センサ異常検出手段が、互いに相関を有する回転角検出値同士の回転角偏差が所定値以上となったときに、センサ異常を検出することを特徴としている。
この構成によると、互いに相関を有する回転角検出値同士を比較することにより、正確な異常検出を行うことができる。
【0008】
また、本発明に係る電動パワーステアリング装置は、前記入力軸回転角センサ及び前記出力軸回転角センサのそれぞれが、回転角に応じた角度値を算出して出力するように構成されていることを特徴としている。
この構成によると、入力軸回転角センサ及び出力軸回転センサが、共に角度値を算出して出力するように構成されているので、入力軸及び出力軸の回転角を回転センサの出力信号から演算する必要がない。
【0009】
また、本発明に係る電動パワーステアリング装置は、前記センサ異常検出手段は、前記入力軸回転角センサから出力される前記角度値と前記操舵角検出手段で検出した操舵角検出値との角度偏差を算出し、算出した角度偏差が所定値以上となったときに当該角度値が異常であると判断することを特徴としている。
この構成によると、入力軸回転角センサ及び操舵角検出手段はともに入力軸の回転角の角度値を検出しており、互いに相関を有するので、両者の角度偏差が所定値以上となった場合には直ちに入力軸回転角センサから出力される角度値の異常を検出することができる。
【0010】
また、本発明に係る電動パワーステアリング装置は、前記センサ異常検出手段は、前記出力軸回転角センサから出力される前記角度値と前記レゾルバで検出したモータ回転角検出値との角度偏差を算出し、算出した角度偏差が所定値以上となったときに当該角度値が異常であると判断することを特徴としている。
【0011】
さらに、本発明に係る電動パワーステアリング装置は、前記センサ異常検出手段は、前記出力軸回転角センサから出力される前記角度値と前記レゾルバで検出したモータ回転角検出値との角度偏差を算出し、算出した角度偏差が所定値以上となったときに当該角度値が異常であると判断することを特徴としている。
これらの構成によると、出力軸回転角センサ及びレゾルバはともに出力軸に連結されており、互いに相関を有するので、両者の角度偏差が所定値以上となった場合には直ちに出力軸回転角センサから出力される角度値の異常を検出することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、操舵トルクを検出するための入力軸回転角センサ及び出力軸回転角センサの異常検出を、これらに相関を有する入力軸の回転角を検出する操舵角検出センサで検出した操舵角検出値及び出力軸に連結された電動モータのモータ回転角を検出するレゾルバの回転角検出値に基づいて検出するので、入力軸回転角センサ及び出力軸回転角センサの異常を即座に検出することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による電動パワーステアリング装置を示す構成図である。
【図2】操舵補助制御装置で実行する操舵トルク検出処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図3】操舵補助制御装置で実行するセンサ異常検出処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】図3の入力軸回転角及び出力軸回転角算出処理を示すフローチャートである。
【図5】操舵補助制御装置で実行する操舵補助制御処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明による電動パワーステアリング装置の一実施形態を示す全体構成図であって、図中、1は、ステアリングホイールであり、このステアリングホイール1がステアリングシャフト2の車両後方側先端に取付けられている。このステアリングシャフト2は、運転者から作用される操舵力がステアリングホイール1を介して伝達される入力軸2aと、この入力軸2aにトーションバー2bを介して連結された出力軸2cとを備えている。
【0015】
そして、出力軸2cに伝達された操舵力は、ユニバーサルジョイント4を介してロアシャフト5に伝達され、さらに、ユニバーサルジョイント6を介してピニオンシャフト7に伝達される。このピニオンシャフト7に伝達された操舵力はステアリングギヤ機構8を介してタイロッド9に伝達され、図示しない転舵輪を転舵させる。ここで、ステアリングギヤ機構8は、ピニオンシャフト7に連結されたピニオン8aとこのピニオン8aに噛合するラック8bとを有するラックアンドピニオン形式に構成され、ピニオン8aに伝達された回転運動をラック8bで直進運動に変換している。
ステアリングシャフト2の出力軸2cには、操舵補助力を出力軸2cに伝達する操舵補助機構10が連結されている。この操舵補助機構10は、出力軸2cに連結した減速ギヤ機構11と、この減速ギヤ機構11に連結されて操舵補助力を発生するブラシ付き電動モータやブラシレス電動モータで構成される電動モータ12とを備えている。
【0016】
そして、ステアリングシャフト2の入力軸2aの回転角を検出してステアリングホイール2の操舵角θsを検出する操舵角検出手段としての操舵角センサ13が設けられていると共に、入力軸2a及び出力軸2c間に配設されたトーションバー2bの捩れ角変位を検出して操舵トルクを検出するトルク検出手段としてのトルクセンサ14が設けられている。
【0017】
トルクセンサ14は、図1に示すように、入力軸2aの回転角を検出する例えば二重化されたロータリエンコーダを含んで構成され、角度値を算出して出力する入力軸回転角センサ15と、出力軸2cの回転角を検出する例えば二重化されたロータリエンコーダを含んで構成され、角度値を算出して出力する出力軸回転角センサ16とを備えている。入力軸回転角センサ15は、入力軸2aの回転角を検出して2組の入力軸回転角検出値θ1a,θ1bを出力する。同様に、出力軸回転角センサ16も、出力軸2cの回転角を検出して2組の出力軸回転角検出値θ2a,θ2bを出力する。これら入力軸回転角センサ15から出力される入力軸回転角検出値θ1a及び出力軸回転角センサ16から出力される出力軸回転角検出値θ2aがマルチプレクサ(MUX)19Aに供給されて、このマルチプレクサ19Aによって時分割多重化されて伝送される。同様に、入力軸回転角センサ15から出力される入力軸回転角検出値θ1b及び出力軸回転角センサ16から出力される出力軸回転角検出値θ2bがマルチプレクサ(MUX)19Bに供給されて、このマルチプレクサ19Bによってよって時分割多重化されて伝送される。
【0018】
また、出力軸2cに減速ギヤ機構11を介して連結された電動モータ12のモータ回転角θmがレゾルバ17によって検出され、このレゾルバ17から正弦波信号Vsin及び余弦波信号Vcosが出力される。
そして、操舵角センサ13で検出した操舵角検出値θs、トルクセンサ14を構成する入力軸回転角センサ15及び出力軸回転角センサ16で検出した入力軸回転角検出値θ1a,θ1b及び出力軸回転角検出値θ2a,θ2b並びにレゾルバ17から出力される正弦波信号Vsin及び余弦波信号Vcosが操舵補助制御装置20に供給される。
【0019】
この操舵補助制御装置20には、車速センサ18で検出した車速検出値Vsも入力されている。
この操舵補助制御装置20は、トルクセンサ14を構成する入力軸回転角センサ15で検出した入力軸回転角検出値θ1a,θ1b及び出力軸回転角センサ16で検出した出力軸回転角検出値θ2a,θ2bに基づいてトルク検出値Tを演算するトルク検出値演算手段20aと、トルクセンサ14を構成する入力軸回転角センサ15及び出力軸回転角センサ16の異常を検出するセンサ異常検出手段20b及びトルク検出値T及び車速検出値Vsに基づいて操舵補助制御処理を行う操舵補助制御手段20cを備えている。
【0020】
この操舵補助制御装置20では、トルクセンサ14を構成する入力軸回転角センサ15で検出した入力軸回転角検出値θ1a,θ1b及び出力軸回転センサ16で検出した出力軸回転角検出信号θ2a,θ2bに基づいてトルク検出値Tを算出するトルク検出値演算手段20aに対応するトルク検出値演算処理を実行する。
このトルク検出値演算処理は、図2に示すように、所定時間(例えば10msec)毎のタイマ割込処理として実行され、先ず、ステップS1で、後述するRAM等の記憶装置に形成された入力軸回転角記憶領域及び出力軸回転角記憶領域に更新記憶されている入力軸回転角θ1及び出力軸回転角θ2を読込んでからステップS2に移行する。
【0021】
このステップS2では、後述するセンサ異常検出処理で設定された入力軸回転角θ1及び出力軸回転角θ2を読込んで、これらに基づいて下記(1)式の演算を行ってトルク検出値Tを算出する。
T=K(θ1−θ2) …………(1)
ここで、Kはトーションバー2bのバネ係数である。
【0022】
次いで、ステップS3に移行して、算出したトルク検出値TをRAM等のメモリに形成したトルク検出値記憶領域に更新記憶してからタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
また、操舵補助制御装置20は、トルクセンサ14を構成する入力軸回転角センサ15から入力される入力軸回転角検出値θ1a,θ1b及び出力軸回転角センサ16から入力される出力軸回転角検出値θ2a,θ2bの異常を検出するセンサ異常検出手段20bに対応するセンサ異常検出処理を実行する。
【0023】
このセンサ異常検出処理は、図3に示すように、所定時間(例えば10msec)毎のタイマ割込処理として実行され、先ず、ステップS11で、操舵角センサ13で検出した操舵角検出値θs、入力軸回転角センサ15で検出した入力軸回転角検出値θ1a,θ1b、出力軸回転角センサ16で検出したθ2a,θ2b及びレゾルバ17から出力されるレゾルバ信号Vsin,Vcosを読込んでからステップS12に移行する。
【0024】
このステップS12では、レゾルバ17が正常であるか否かを判定する。このレゾルバ17が正常であるか否かの判定は、例えばレゾルバ17から出力される正弦波信号Vsin及び余弦波信号Vcosを読込み、両信号の二乗和が所定範囲V1及びV2内に入るか否かによってレゾルバ17が正常であるか否かを判定する。すなわち、V1≦Vsin+Vcos≦V2となるか否かによってレゾルバ17の正常異常を判定する。
レゾルバ17の判定は、上記に限定されるものではなく、正弦波信号Vsin及び余弦波信号Vcosの二乗和が所定範囲内となるか否かと、正弦波信号Vsin及び余弦波信号Vcosの加算値の絶対値が所定値V3未満となるか否かを加えるようにしてもよく、その他公知の種々のレゾルバの異常検出方法を適用することができる。
【0025】
そして、ステップS12の判定結果が、レゾルバ17が正常であるときにはステップS14に移行し、レゾルバ17が異常であるときには、ステップS13に移行して、後述する操舵補助制御処理を停止させてからタイマ割込処理を終了する。
ステップS14では、レゾルバ信号Vsin及びVcosに基づいてモータ回転角θmを算出し、次いでステップS15に移行して、操舵角センサ13が正常であるか否かを判定する。この操舵角センサ13が正常であるか否かの判定は、例えば操舵角θsからレゾルバ17の正弦波信号Vsin及び余弦波信号Vcosに基づいて算出されるモータ回転角検出値θmに減速ギヤ機構11のギヤ比を乗算して算出した操舵角推定値θseを減算した値の絶対値が設定値Δθsを超えているか否かを判定することにより行う(|θs−θse|>Δθs)。この操舵角センサ13の正否判定についても上記に限定されるものではなく、公知の種々の操舵角異常検出方法を適用することができる。
【0026】
そして、ステップS15の判定結果が操舵角センサ13が正常であるときにはステップS16に移行し、操舵角センサ13が異常であるときには前記ステップS13に移行する。
ステップS16では、入力軸回転角検出値θ1aから操舵角θsを減算した値の絶対値でなる角度偏差Δθ1a(=|θ1a−θs|)が予め設定された許容角度差Δθp1以上であるか否かを判定し、Δθ1a<Δθp1であるときには入力軸回転角検出値θ1aが正常であると判断して直接ステップS18に移行し、Δθ1a≧Δθp1であるときには入力軸回転角検出値θ1aが異常であると判断してステップS17に移行し、入力軸回転角検出値θ1aの異常を表す異常フラグF1aを“1”にセットしてからステップS18に移行する。
【0027】
ステップS18では、入力軸回転角検出値θ1bから操舵角θsを減算した値の絶対値でなる角度偏差Δθ1b(=|θ1b−θs|)が予め設定された許容角度差Δθp1以上であるか否かを判定し、Δθ1b<Δθp1であるときには入力軸回転角検出値θ1bが正常であると判断して直接ステップS20に移行し、Δθ1b≧Δθp1であるときには入力軸回転角検出値θ1bが異常であると判断してステップS19に移行し、入力軸回転角検出値θ1bの異常を表す異常フラグF1bを“1”にセットしてからステップS20に移行する。
【0028】
ステップS20では、出力軸回転角検出値θ2aからモータ回転角θmに基づいて減速ギヤ機構11のギヤ比を考慮して算出される出力軸回転角θ2mを減算した値の絶対値でなる角度偏差Δθ2a(=|θ2a−θ2m|)が予め設定された許容角度差Δθp2以上であるか否かを判定し、Δθ2a<Δθp2であるときには出力軸回転角検出値θ2aが正常であると判断して直接ステップS22に移行し、Δθ2a≧Δθp2であるときには出力軸回転角検出値θ2aが異常であると判断してステップS21に移行し、出力軸回転角検出値θ2bの異常を表す異常フラグF2aを“1”にセットしてからステップS22に移行する。
【0029】
ステップS22では、出力軸回転角検出値θ2bからモータ回転角θmに基づいて算出される出力軸回転角θ2mを減算した値の絶対値でなる角度偏差Δθ2b(=|θ2b−θ2m|)が予め設定された許容角度差Δθp2以上であるか否かを判定し、Δθ2b<Δθp2であるときには出力軸回転検出値θ2bが正常であると判断して直接ステップS24に移行し、Δθ2b≧Δθp2であるときには出力軸回転角検出値θ2bが異常であると判断してステップS23に移行し、出力軸回転角検出値θ2bの異常を表す異常フラグF2bを“1”にセットしてからステップS24に移行する。
ステップS24では、正常な回転角に基づいて入力軸回転角θ1及び出力軸回転角θ2を算出する回転角算出処理を実行してからタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
【0030】
この回転角算出処理は、図4に示すように、先ず、ステップS31で、異常フラグF1a及びF1bがともに“0”にリセットされているか否かを判定し、F1a=0且つF1b=0であるときには入力軸回転角検出値θ1a及びθ1bがともに正常であると判断してステップS32に移行する。このステップS32では、下記(2)式の平均値演算を行って入力軸回転角θ1を算出し、算出した入力軸回転角θ1をRAM等の記憶装置に形成した入力軸回転角記憶領域に更新記憶してからステップS38に移行する。
θ1=(θ1a+θ1b)/2 …………(2)
【0031】
また、前記ステップS31の判定結果が、F1a=0且つF1b=0でないときには、ステップS33に移行して、異常フラグF1a=0且つF1b=1であるか否かを判定し、入力軸回転角検出値θ1aが“0”にリセットされ、入力軸回転角検出値θ1bが“1”にセットされているときには、入力軸回転角検出値θ1aのみが正常であると判断してステップS34に移行する。
このステップS34では、正常な入力軸回転角検出値θaを入力軸回転角θ1として決定し、決定した入力軸回転角θ1を前述した入力軸回転角記憶領域に更新記憶してからステップS38に移行する。
【0032】
また、前記ステップS33の判定結果が、異常フラグF1a=0且つ異常フラグF1b=1ではないときには、ステップS35に移行し、異常フラグF1a=1且つF1b=0であるか否かを判定し、異常フラグF1aのみが“1”にセットされ、異常フラグF1bが“0”にリセットされているときには、入力軸回転角検出値θ1aのみが正常であると判断してステップS36に移行する。
このステップS36では、正常な入力軸回転角検出値θ1bを入力軸回転角θ1として決定し、決定した入力軸回転角θ1を前述した入力軸回転角記憶領域に更新記憶してから後述するステップS38に移行する。
【0033】
さらに、前記ステップS35の判定結果が異常フラグF1a=1且つ異常フラグF1b=0でないときには、入力軸回転角検出値θ1a及びθ1bがともに異常であるものと判断してステップS37に移行し、操舵角θsを入力軸回転角θ1として決定し、決定した入力軸回転角θ1を前述した入力軸記憶領域に更新記憶してから後述するステップS38に移行する。
【0034】
ステップS38では、異常フラグF2a及びF2bがともに“0”にリセットされているか否かを判定し、F2a=0且つF2b=0であるときには出力軸回転角検出値θ2a及びθ2bがともに正常であると判断してステップS39に移行する。このステップS39では、下記(3)式の平均値演算を行って出力軸回転角θ2を算出し、算出した出力軸回転角θ2をRAM等の記憶装置に形成した出力軸回転角記憶領域に更新記憶してからサブルーチン処理を終了して前記図3の処理に戻り、タイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
θ2=(θ2a+θ2b)/2 …………(3)
【0035】
また、前記ステップS38の判定結果が、F2a=0且つF2b=0でないときには、ステップS40に移行して、異常フラグF2a=0且つF2b=1であるか否かを判定し、異常フラグF2aが“0”にリセットされ、異常フラグF2bが“1”にセットされているときには、出力軸回転角検出値θ2のみが正常であると判断してステップS41に移行する。
このステップS41では、正常な出力軸回転角検出値θ2aを出力軸回転角θ2として決定し、決定した出力軸回転角θ2を前述した入力軸回転角記憶領域に更新記憶してからサブルーチン処理を終了して前記図3の処理に戻り、タイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
【0036】
また、前記ステップS40の判定結果が、異常フラグF2a=0且つ異常フラグF2b=1ではないときには、ステップS35に移行し、異常フラグF2a=1且つF2b=0であるか否かを判定し、異常フラグF2aが“1”にセットされ、異常フラグF2bが“0”にリセットされているときには、出力軸回転角検出値θ2bのみが正常であると判断されてステップS42に移行する。
このステップS42では、正常な出力軸回転角検出値θ2bを出力軸回転角θ2として決定し、決定した出力軸回転角θ2を前述した出力軸回転角記憶領域に更新記憶してからサブルーチン処理を終了して前記図3の処理に戻り、タイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
【0037】
さらに、前記ステップS42の判定結果が異常フラグF2a=1且つ異常フラグF2b=0でないときには、出力軸回転角検出値θ2a及びθ2bがともに異常であるものと判断してステップS44に移行し、モータ回転角θmに減速ギヤ機構11のギヤ比Grを乗算した値θm*Grを出力軸回転角θ2として決定し、決定した出力軸回転角θ2を前述した出力軸記憶領域に更新記憶してからサブルーチン処理を終了して前記図3の処理に戻り、タイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
【0038】
さらに、操舵補助制御装置は、操舵補助制御手段20cに対応する図5に示す操舵補助制御処理を実行する。この操舵補助制御処理はメインプログラムとして実行され、先ず、ステップS51で、前述したトルク検出処理で算出してメモリのトルク検出値記憶領域に記憶されているトルク検出値Tを読込み、次いでステップS52に移行して車速検出値Vsを読込む。次いで、ステップS53に移行して、トルク検出値T及び車速検出値Vに基づいて図示しない車速検出値Vをパラメータとしてトルク検出値と操舵補助指令値との関係を表す操舵補助指令値算出マップを参照して操舵補助電流指令値Irefを算出してからステップS54に移行する。
【0039】
このステップS54では、モータ電流検出回路21で検出したモータ電流検出値Imdを読込み、次いでステップS55に移行して、操舵補助電流指令値Irefからモータ電流検出値Imdを減算して電流偏差ΔIを算出してからステップS56に移行する。
このステップS56では、算出した電流偏差ΔIに基づいてPI制御処理を行なって、電圧指令値Vmtを算出し、次いでステップS57に移行して、電圧指令値Vmtに基づいてパルス幅変調処理を行ってスイッチング信号を形成し、次いでステップS58に移行して、スイッチング信号を、スイッチング素子を有するHブリッジ回路、インバータ等で構成されモータ駆動回路22に出力してから前記ステップS51に戻る。
【0040】
次に、上記実施形態の動作を説明する。
今、トルクセンサ14を構成する入力軸回転角センサ15で検出した入力軸回転角検出値θ1a,θ1b及び出力軸回転角センサ16で検出した出力軸回転角検出値θ2a,θ2bが正常であるとすると、操舵補助制御装置20で実行される図3のセンサ異常検出処理で、異常フラグF1a,F1b及びF2a,F2bがともに“0”にクリアされており、図4のサブルーチン処理で、ステップS32で(2)式の演算を行って入力軸回転角検出値θ1a及びθ1bの平均値を入力軸回転角θ1として算出し、算出した入力軸回転角θ1が入力軸回転角記憶領域に更新記憶される。また、ステップS39で(3)式の演算を行って出力軸回転角検出値θ2a及びθ2bの平均値を出力軸回転角θ2として算出し、算出した出力軸回転角下2が出力軸回転角記憶領域に更新記憶される。
【0041】
このため、図2のトルク検出処理で、入力軸回転角記憶領域に記憶されている入力軸回転角θ1及び出力軸回転角記憶領域に記憶されている出力軸回転角θ2を読込み(ステップS1)、次いで、入力軸回転角θ1及び出力軸回転角θ2に基づいて前記(1)式の演算を行ってトルク検出値Tを算出し(ステップS2)、算出した操舵トルクTをメモリの操舵トルク記憶領域に更新記憶する(ステップS3)。
【0042】
一方、操舵補助制御装置20では、図5に示す操舵補助制御処理を実行しており、メモリの操舵トルク記憶領域に更新記憶されたトルク検出値Tを読込むとともに、車速センサ18で検出した車速検出値Vsを読込み(ステップS51,S52)、これらトルク検出値T及び車速検出値Vsに基づいて操舵補助電流指令値算出マップを参照して操舵補助電流指令値Irefを算出し(ステップS53)、次いでモータ電流検出回路21で検出したモータ電流検出値Imdを読込み(ステップS54)、操舵補助電流指令値Irefからモータ電流検出値Imdを減算して電流偏差ΔIを算出する(ステップS55)。
【0043】
算出した電流偏差ΔIをPI制御処理して電圧指令値Vtを算出し(ステップS56)、算出した電圧指令値Vtに基づいてパルス幅変調処理を行ってスイッチング信号を形成し(ステップS57)、算出したスイッチング信号をモータ駆動回路22に出力することにより(ステップS58)、モータ駆動回路22で電動モータ12を回転駆動して、トルク検出値Tに応じた操舵補助力を発生させる。この電動モータ12で発生された操舵補助力は減速ギヤ機構11を介してステアリングシャフト2の出力軸2cに伝達されて、出力軸2cが補助操舵されるので、ステアリングホイール1を軽い操舵力で操舵することができる。
【0044】
このように、操舵補助制御装置20でトルク検出値T及び車速検出値Vsに基づいて操舵補助制御を行っている状態で、図3に示すセンサ異常検出処理がタイマ割込処理として実行されており、トルクセンサ14を構成する入力軸回転角センサ15で検出した入力軸回転角検出値θ1a,θ1b及び出力軸回転角センサ16で検出した出力軸回転角検出値θ2a,θ2bとを読込む。
【0045】
そして、入力軸回転角センサ15で検出された入力軸回転角検出値θ1a及びθ1bと、入力軸回転角センサ15と同様に入力軸2aの回転角を検出する操舵角センサ13で検出した操舵角θsと比較することにより、入力軸回転角検出値θ1a及びθ1bの異常を検出することができる。すなわち、入力軸回転角センサ15及び操舵角センサ13とは同じ入力軸2aの回転角を検出しており、互いに相関関係を有するので、入力軸回転角検出値θ1a及びθ12と、操舵角θsとの間の回転角度差は取付誤差の範囲内に収まる。
【0046】
このため、入力軸回転角検出値θ1a(又は入力軸回転角検出値θ1b)から操舵角θsを減算した回転角度差の絶対値|θ1a−θs|(又は|θ1b−θs|)が予め設定した許容値Δθp1未満であるときには入力軸回転角検出値θ1a(又は入力軸回転角検出値θ1b)が正常と判断することができる。これに対して、前記絶対値|θ1a−θs|(又は|θ1b−θs|)が予め設定した許容値Δθp1以上であるときには入力軸回転角検出値θ1a(又は入力軸回転角検出値θ2a)にショート、断線等の異常が発生しているものと判断することができる。そして、入力軸回転角検出値θ1a(又はθ1b)の異常が検出されたときには、異常フラグFθ1a(又はFθ1b)が“1”にセットされる。
【0047】
同様に、出力軸回転角センサ16は出力軸2cの回転角を検出し、電動モータ12に内装したレゾルバ17から出力される正弦波信号Vsin及び余弦波信号Vcosに基づいて算出されるモータ回転角θmは電動モータ12が減速ギヤ機構11を介して出力軸2cに連結されていることから、モータ回転角θmに減速ギヤ機構11のギヤ比Grを考慮することにより、出力軸2cの出力軸回転角推定値θ2m(=θm*Gr)に変換することができる。
【0048】
したがって、出力軸回転角センサ16で検出された出力軸回転角検出値θ2a及びθ2bとレゾルバ17から出力されるモータ回転角検出値θmとは互いに相関関係を有し、出力軸回転角推定値θ2mと出力軸回転角センサ16から出力される出力軸回転角検出値θ2a及びθ2bとの間の回転角度差は取付誤差の範囲内に収まる。
このため、出力軸回転角検出値θ2a(又はθ2b)から出力軸回転角推定値θ2mを減算した回転角度差の絶対値|θ2a−θ2m|(又は|θ2b−θ2m|)が予め設定した許容値Δθp2未満であるときには出力軸回転角検出値θ2a(又はθ2b)が正常と判断することができる。これに対して、前記絶対値|θ2a−θ2m|(又は|θ2b−θ2m|)が予め設定した許容値Δθp2以上であるときには出力軸回転角検出値θ2a(又はθ2b)にショート、断線等の異常が発生しているものと判断することができる。
【0049】
そして、出力軸回転角検出値θ2a(又はθ2b)の異常が検出されたときには、異常フラグFθ2a(又はFθ2b)が“1”にセットされる。
そして、入力軸回転角センサ15で検出した入力軸回転角検出値θ1a,θ1b及び出力軸回転角センサ16で検出した出力軸回転角検出値θ2a,θ2bの何れかに異常が発生すると、対応する異常フラグFθ1a,Fθ1b,Fθ2a及びFθ2bの何れかが“1”にセットされるので、何れの回転角検出値に異常が発生したかを瞬時に判断することができる。このため、異常が検出された回転角検出値を使用することなく入力軸回転角θ1及び出力軸回転角θ2を算出することができ、これら入力軸回転角θ1及び出力軸回転角θ2を使用してトルク検出値Tを算出するので、正常なトルク検出値Tを算出することができる。
【0050】
このように、上記実施形態によると、入力軸回転角センサ15及び出力軸回転角センサ16の出力信号の異常を、これらに相関を有する操舵センサ13で検出した操舵角θs及び電動モータ12に内蔵されるレゾルバ17で検出したモータ回転角θmに基づく出力軸回転角推定値θ2mと、入力軸回転角センサ15で検出した入力軸回転角検出値θ1a,θ1b及び出力軸回転角センサ16で検出した出力軸回転角検出値θ2a,θ2bとを比較することにより、即座にかつ正確に検出することができる。
【0051】
なお、上記実施形態においては、入力軸回転角θ1及び出力軸回転角θ2をそれぞれ入力軸回転角検出値θ1a,θ1b及び出力軸回転角検出値θ2a,θ2bの平均値で算出する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ステップS32で算出する入力軸回転角θ1をθ1=θ1a+θ1bとし、ステップS39で算出する出力軸回転角θ2をθ2=θ2a+θ2bとするようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、入力軸回転角センサ15及び出力軸回転角センサ16をロータリエンコーダを含んで構成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、レゾルバやポテンショメータ等の他の任意の回転角センサを適用することができる。
【0052】
また、上記実施形態においては、本発明をコラム式の電動パワーステアリング装置に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ラックアンドピニオン式ステアリングギヤ機構のピニオン軸に操舵補助力を伝達するピニオン式の電動パワーステアリング装置やラック軸に操舵補助力を伝達するラック式の電動パワーステアリング装置にも本発明を適用することができる。これらの場合には、ユニバーサルジョイント6とピニオンシャフト7との間にトーションバーを配置してトーションバーを挟むユニバーサルジョイント6とピニオンシャフト7との回転角差からトルク検出値Tを算出すればよい。
【符号の説明】
【0053】
1…ステアリングホイール、2…ステアリングシャフト、2a…入力軸、2b…トーションバー、2c…出力軸、8…ステアリングギヤ機構、10…操舵補助機構、11…減速ギヤ機構、12…電動モータ、13…操舵角センサ、14…トルクセンサ、15…入力軸回転角センサ、16…出力軸回転角センサ、17…レゾルバ、18…車速センサ、20…操舵補助制御装置、20a…トルク検出値演算手段、20b…センサ異常検出手段、20c…操舵補助制御手段、21…モータ電流検出回路、22…モータ駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の操舵系に設けられたトーションバーで連結した入力軸及び出力軸の回転角を個別に検出する入力軸回転角センサ及び出力軸回転角センサを有するトルク検出手段と、該トルク検出手段で検出したトルク検出値に基づいて制御され、前記操舵系に対して操舵補助力を発生する電動モータとを備えた電動パワーステアリング装置であって、
前記入力軸の回転角を検出して前記操舵系の操舵角を検出する操舵角検出手段と、
前記電動モータのモータ回転角を検出するレゾルバと、
前記入力軸回転角センサ及び前記出力軸回転角操舵角検出手段の異常を、前記操舵角検出手段で検出した操舵角検出値及び前記レゾルバで検出したモータ回転角検出値に基づいて検出するセンサ異常検出手段を備えていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
前記センサ異常検出手段は、互いに相関を有する回転角検出値同士の回転角偏差が所定値以上となったときに、センサ異常を検出することを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記入力軸回転角センサ及び前記出力軸回転角センサのそれぞれは、回転角に応じた角度値を算出して出力するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
前記センサ異常検出手段は、前記入力軸回転角センサから出力される角度値と前記操舵角検出手段で検出した操舵角検出値との角度偏差を算出し、算出した角度偏差が所定値以上となったときに当該角度値が異常であると判断することを特徴とする請求項3に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
前記センサ異常検出手段は、前記出力軸回転角センサから出力される前記角度値と前記レゾルバで検出したモータ回転角検出値との角度偏差を算出し、算出した角度偏差が所定値以上となったときに当該角度値が異常であると判断することを特徴とする請求項3に記載の電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−101691(P2012−101691A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252211(P2010−252211)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】