説明

電動パワーステアリング装置

【課題】開閉手段の作動音をユーザに聞こえ難くすることができる技術を提供する。
【解決手段】ドアを有する乗り物の進行方向を変えるためのステアリングホイールの操作に対するアシスト力を付与する電動モータと、電動モータに流れる電流を通電/遮断するべく電動モータに流れる電流の経路を開閉するリレーと、リレーの作動を制御するリレー作動部と、を備え、リレー作動部は、乗り物のドアの開閉音と重なるように開閉手段を作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動パワーステアリング装置には、電動モータに流れる電流の経路を開閉し、電動モータに流れる電流を通電/遮断する開閉手段が設けられている。
例えば、特許文献1に記載の電動パワーステアリング装置の制御装置は、制御基板に搭載される回転位置センサ、CPU、駆動回路、電流検出手段と、三相ブリッジ構成の半導体スイッチング素子、リップル除去用コンデンサ、シャント抵抗、開閉手段などから構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−120739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
開閉手段は、この電動パワーステアリング装置が搭載された自動車のIGスイッチがオフにされた場合には、電流を通電させる閉(オン)状態から遮断する開(オフ)状態へと切り替えられるが、閉状態から開状態へと切り替えられる前に、フェイルセーフチェック処理などの規定の終了処理が行われる。それゆえ、IGスイッチがオフにされた後、自動車のエンジンの作動が停止した後に、開閉手段が閉状態から開状態へ切り替えられるおそれがある。
【0005】
開閉手段として、電磁石と、固定接点と、可動接点とを有し、電磁石に電流が供給されることにより発生する電磁力によって、可動接点と固定接点との間で機械的なスイッチのオン、オフ動作を行う電磁リレーが用いられる場合がある。かかる場合、閉状態から開状態への切り替わり時に、固定接点と可動接点とが機械的に接触することに起因して作動音が生じる。
それゆえ、IGスイッチがオフにされてエンジンの作動が停止した後の静寂な車室内に開閉手段の作動音が響き、ユーザに不快感を与えてしまうおそれがある。また、ユーザが車室内に響いた開閉手段の作動音を聞くことで、故障が発生したと勘違いするおそれがある。
【0006】
本発明は、開閉手段の作動音をユーザに聞こえ難くすることができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的のもと、本発明は、ドアを有する乗り物の進行方向を変えるためのステアリングホイールの操作に対するアシスト力を付与する電動モータと、前記電動モータに流れる電流を通電/遮断するべく当該電動モータに流れる電流の経路を開閉する開閉手段と、前記開閉手段の作動を制御する開閉制御手段と、を備え、前記開閉制御手段は、前記乗り物の前記ドアの開閉音と重なるように前記開閉手段を作動させることを特徴とする電動パワーステアリング装置である。
【0008】
ここで、前記開閉制御手段は、前記乗り物の前記ドアの開状態から閉状態への移行を認識した後に前記開閉手段を作動させるとよい。
また、前記開閉制御手段は、前記乗り物のイグニッションスイッチがオフされた後に前記ドアの開状態から閉状態への移行を認識したら前記開閉手段を作動させるとよい。
【0009】
他の観点から捉えると、本発明は、乗り物の進行方向を変えるためのステアリングホイールの操作に対するアシスト力を付与する電動モータと、前記電動モータに流れる電流を通電/遮断するべく当該電動モータに流れる電流の経路を開閉する開閉手段と、前記開閉手段の作動を制御する開閉制御手段と、を備え、前記開閉制御手段は、ユーザが前記乗り物の内部から外部へ移動したら前記開閉手段を作動させることを特徴とする電動パワーステアリング装置である。
【0010】
ここで、前記開閉制御手段は、前記乗り物のドアの開状態から閉状態への移行を認識した後に前記開閉手段を作動させるとよい。
また、前記開閉制御手段は、前記乗り物のドアのアンロック状態からロック状態への移行を認識した後に前記開閉手段を作動させるとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、開閉手段の作動音をユーザに聞こえ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態に係る電動パワーステアリング装置の概略構成を示す図である。
【図2】ステアリング装置が適用される自動車の概略構成とステアリング装置の制御装置の概略構成を示す図である。
【図3】モータ制御部の概略構成を示す図である。
【図4】モータ制御部のリレー作動部が行うリレーオフ制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】第1の実施例に係るリレーオフ制御処理による作用を示すタイミングチャートである。
【図6】モータ制御部のリレー作動部が行うリレーオフ制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】第2の実施例に係るリレーオフ制御処理による作用を示すタイミングチャートである。
【図8】モータ制御部のリレー作動部が行うリレーオフ制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】第3の実施例に係るリレーオフ制御処理による作用を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、実施の形態に係る電動パワーステアリング装置100の概略構成を示す図である。
電動パワーステアリング装置100(以下、単に「ステアリング装置100」と称する場合もある。)は、乗り物の進行方向を任意に変えるためのかじ取り装置であり、本実施の形態においては自動車1に適用した構成を例示している。
【0014】
ステアリング装置100は、ドライバが操作する車輪(ホイール)状のステアリングホイール(ハンドル)101と、ステアリングホイール101に一体的に設けられたステアリングシャフト102とを備えている。また、ステアリング装置100は、ステアリングシャフト102と自在継手103aを介して連結された上部連結シャフト103と、この上部連結シャフト103と自在継手103bを介して連結された下部連結シャフト108とを備えている。下部連結シャフト108は、ステアリングホイール101の回転に連動して回転する。
【0015】
また、ステアリング装置100は、転動輪としての左右の前輪150のそれぞれに連結されたタイロッド104と、タイロッド104に連結されたラック軸105とを備えている。また、ステアリング装置100は、ラック軸105に形成されたラック歯105aとともにラック・ピニオン機構を構成するピニオン106aを備えている。ピニオン106aは、ピニオンシャフト106の下端部に形成されている。
【0016】
また、ステアリング装置100は、ピニオンシャフト106を収納するステアリングギアボックス107を有している。ピニオンシャフト106は、ステアリングギアボックス107にてトーションバーを介して下部連結シャフト108と連結されている。ステアリングギアボックス107の内部には、下部連結シャフト108とピニオンシャフト106との相対角度に基づいて、言い換えればトーションバーの捩れ量に基づいてステアリングホイール101の操舵トルクTを検出するトルクセンサ109が設けられている。
【0017】
また、ステアリング装置100は、ステアリングギアボックス107に支持された電動モータ110と、電動モータ110の駆動力を減速してピニオンシャフト106に伝達する減速機構111とを有している。本実施の形態に係る電動モータ110は、3相ブラシレスモータである。
【0018】
そして、ステアリング装置100は、電動モータ110の作動を制御する制御装置10を備えている。制御装置10は、電動モータ110の制御を行う際の演算処理を行うCPUと、CPUにて実行されるプログラムや各種データ等が記憶されたROMと、CPUの作業用メモリ等として用いられるRAMと、EEPROM(Electrically Erasable & Programmable Read Only Memory)と、を備えている。制御装置10には、上述したトルクセンサ109にて検出された操舵トルクTが出力信号に変換されたトルク信号Tdと、車速センサ170にて検出された、自動車1の移動速度である車速Vcが出力信号に変換された車速信号vなどが入力される。
【0019】
以上のように構成されたステアリング装置100は、ステアリングホイール101に加えられた操舵トルクTをトルクセンサ109にて検出し、その検出トルクに応じて制御装置10が電動モータ110を駆動制御し、電動モータ110の発生トルクをピニオンシャフト106に伝達する。これにより、電動モータ110の発生トルクが、ステアリングホイール101に加える運転者の操舵力をアシストする。
【0020】
図2は、ステアリング装置100が適用される自動車1の概略構成とステアリング装置100の制御装置10の概略構成を示す図である。
自動車1は、ステアリング装置100の他に、周知の、イグニッション(IG)スイッチ11と、発電機12と、バッテリー13と、を備えている。また、自動車1は、ドア14(図1参照)の開閉状態を検知するドア開閉センサ15と、ドア14の鍵のロック・アンロック状態を検知するドア鍵センサ16と、シート17に人が座っているか否かをシート17に加えられた圧力により検知するシート圧センサ18と、を備えている。シート圧センサ18は、圧力が加わっているときにはHighレベルの信号を出力し、圧力が加わっていないときにはLowレベルの信号を出力する。
【0021】
制御装置10は、電動モータ110の駆動を制御するモータ制御部40を有している。このモータ制御部40は、主に上述したCPU、ROM、RAM、EEPROMから構成される。
また、制御装置10は、モータ制御部40からの制御信号に基づいて電動モータ110を駆動させるモータ駆動部50と、電動モータ110に実際に流れる実電流Imを検出するモータ電流検出部60と、を有している。
制御装置10には、上述したドア開閉センサ15、ドア鍵センサ16、シート圧センサ18からの出力信号が入力される。
【0022】
先ずは、モータ制御部40について説明する。
図3は、モータ制御部40の概略構成を示す図である。
モータ制御部40は、トルク信号Tdに基づいて目標補助トルクを算出し、この目標補助トルクを電動モータ110が供給するのに必要となる目標電流を算出する目標電流算出部20と、目標電流算出部20が算出した目標電流に基づいて電動モータ110の駆動を制御するモータ駆動制御部30と、を有している。
また、モータ制御部40は、後述するリレー72を作動させる、つまりリレー72をオフ(開状態)からオン(閉状態)へ切り替えたり、オンからオフへ切り替えたりするリレー作動部37を有している。
【0023】
目標電流算出部20は、目標電流を設定する上で基準となるベース電流を算出するベース電流算出部21と、電動モータ110の慣性モーメントを打ち消すための電流を算出するイナーシャ補償電流算出部22と、モータの回転を制限する電流を算出するダンパー補償電流算出部23とを備えている。また、目標電流算出部20は、ベース電流算出部21、イナーシャ補償電流算出部22、ダンパー補償電流算出部23などからの出力に基づいて目標電流を決定する目標電流決定部25を備えている。さらに、目標電流算出部20は、トルク信号Tdの位相補償を行う位相補償部26を備えている。
【0024】
なお、目標電流算出部20には、トルク信号Tdと、車速信号vと、電動モータ110の回転速度Nmが出力信号に変換された回転速度信号Nmsとが入力される。回転速度信号Nmsは、例えば3相ブラシレスモータである電動モータ110に設けられ、この電動モータ110の回転子(ロータ)の回転角度を検出するセンサ(例えば、回転子の回転位置を検出するレゾルバ、ロータリエンコーダ等で構成されるロータ位置検出回路)の出力信号が微分されることにより得られるものであることを例示することができる。
【0025】
ベース電流算出部21は、位相補償部26にてトルク信号Tdが位相補償されたトルク信号Tsと、車速センサからの車速信号vとに基づいてベース電流を算出し、このベース電流の情報を含むベース電流信号Imbを出力する。なお、ベース電流算出部21は、例えば、予め経験則に基づいて作成しROMに記憶しておいた、トルク信号Tsおよび車速信号vとベース電流との対応を示すマップに、検出されたトルク信号Tsおよび車速信号vを代入することによりベース電流を算出する。
【0026】
イナーシャ補償電流算出部22は、トルク信号Tdと車速信号vとに基づいて電動モータ110およびシステムの慣性モーメントを打ち消すためのイナーシャ補償電流を算出し、この電流の情報を含むイナーシャ補償電流信号Isを出力する。なお、イナーシャ補償電流算出部22は、例えば、予め経験則に基づいて作成しROMに記憶しておいた、トルク信号Tdおよび車速信号vとイナーシャ補償電流との対応を示すマップに、検出されたトルク信号Tdおよび車速信号vを代入することによりイナーシャ補償電流を算出する。
【0027】
ダンパー補償電流算出部23は、トルク信号Tdと、車速信号vと、電動モータ110の回転速度信号Nmsとに基づいて、電動モータ110の回転を制限するダンパー補償電流を算出し、この電流の情報を含むダンパー補償電流信号Idを出力する。なお、ダンパー補償電流算出部23は、例えば、予め経験則に基づいて作成しROMに記憶しておいた、トルク信号Td、車速信号vおよび回転速度信号Nmsと、ダンパー補償電流との対応を示すマップに、検出されたトルク信号Tdと車速信号vと回転速度信号Nmsとを代入することによりダンパー補償電流を算出する。
【0028】
目標電流決定部25は、ベース電流算出部21から出力されたベース電流信号Imb、イナーシャ補償電流算出部22から出力されたイナーシャ補償電流信号Isおよびダンパー補償電流算出部23から出力されたダンパー補償電流信号Idに基づいて目標電流を決定し、この電流の情報を含む目標電流信号ITを出力する。目標電流決定部25は、例えば、ベース電流に、イナーシャ補償電流を加算するとともにダンパー補償電流を減算して得た補償電流を、予め経験則に基づいて作成しROMに記憶しておいた、補償電流と目標電流との対応を示すマップに代入することにより目標電流を算出する。
【0029】
モータ駆動制御部30は、目標電流算出部20にて最終的に決定された目標電流と、モータ電流検出部60にて検出された電動モータ110へ供給される実電流Imとの偏差に基づいてフィードバック制御を行うフィードバック(F/B)制御部31と、電動モータ110をPWM駆動するためのPWM(パルス幅変調)信号を生成するPWM信号生成部35とを有している。
【0030】
フィードバック制御部31は、目標電流算出部20にて最終的に決定された目標電流とモータ電流検出部60にて検出された実電流Imとの偏差を求める偏差演算部32と、その偏差がゼロとなるようにフィードバック処理を行うフィードバック(F/B)処理部33とを有している。
偏差演算部32は、目標電流算出部20からの出力値である目標電流信号ITとモータ電流検出部60からの出力値であるモータ電流信号Imsとの偏差の値を偏差信号32aとして出力する。モータ電流信号Imsは、モータ電流検出部60にて検出された実電流Imが出力信号に変換された信号である。
【0031】
フィードバック(F/B)処理部33は、目標電流と実電流Imとが一致するようにフィードバック制御を行うものであり、例えば、入力された偏差信号32aに対して、比例要素で比例処理した信号を出力し、積分要素で積分処理した信号を出力し、加算演算部でこれらの信号を加算してフィードバック処理信号33aを生成・出力する。
PWM信号生成部35は、フィードバック制御部31からの出力値に基づいてPWM信号を生成し、生成したPWM信号をモータ駆動部50に向けて出力する。
リレー作動部37については後で詳述する。
【0032】
次に、モータ駆動部50について説明する。
モータ駆動部50は、所謂インバータであり、スイッチング素子として6個の独立したトランジスタ(FET)を備え、6個の内の3個のトランジスタは電源の正極側ラインと各相の電気コイルとの間に接続され、他の3個のトランジスタは各相の電気コイルと電源の負極側(アース)ラインと接続されている。そして、6個の中から選択した2個のトランジスタのゲートを駆動してこれらのトランジスタをスイッチング動作させることにより、電動モータ110の駆動を制御する。
【0033】
次に、モータ電流検出部60について説明する。
モータ電流検出部60は、モータ駆動部50に接続されたシャント抵抗の両端に生じる電圧から電動モータ110に流れる実電流Imの値を検出して、検出した実電流Imをモータ電流信号Imsに変換して出力する。
【0034】
次に、制御装置10が備えるその他の部品について説明する。
制御装置10は、図2に示すように、電動モータ110に流れる電流のリップル成分を吸収するための大容量のコンデンサ71と、電流を通電したり遮断したりする各種のリレー72と、を備えている。このリレー72としては、モータ駆動部50への電流を通電・遮断するパワーリレー721と、3つの経路が並列に配置されたモータ端子の内の2つの経路に各々直列に接続されて、モータ駆動部50から電動モータ110に供給される電流を通電・遮断するモータリレー722とが設けられている。このように、リレー72は、電動モータ110に流れる電流を通電/遮断するべく電動モータ110に流れる電流の経路を開閉する開閉手段の一例として機能する。
その他、制御装置10は、安定した電流制御を行うために、図2に示すように、ダイオードD1、D2、D3、D4、抵抗R1、R2およびスイッチング素子S1、S2を有している。
【0035】
次に、リレー作動部37について説明する。
リレー作動部37は、IGスイッチ11がオンである場合には、リレー72を、通常の使用状態では閉状態(オン)とし、異常時には開状態(オフ)とする。また、リレー作動部37は、IGスイッチ11がオフされた場合には、後述するリレーオフ制御を行い、リレー72を閉状態(オン)から開状態(オフ)へ切り替える。また、リレー作動部37は、リレー72を閉状態から開状態へ切り替えた後に、モータ制御部40自体への電力供給を停止する。このように、リレー作動部37は、電動モータ110に流れる電流の経路を開閉するリレー72の作動を制御する開閉制御手段の一例として機能する。
【0036】
以上のように構成されたステアリング装置100においては、IGスイッチ11がオンにされると、バッテリー13からの電力が制御装置10のモータ制御部40に供給される。また、自動車1のエンジン(不図示)が作動すると、発電機12およびバッテリー13からの電力がモータ制御部40に供給される。そして、モータ制御部40のリレー作動部37がパワーリレー721をオンすることでモータ駆動部50に電力が供給される。また、リレー作動部37がモータリレー722をオンにすることで、モータ駆動部50から電動モータ110に電流が供給され、電動モータ110が駆動される。
【0037】
他方、IGスイッチ11がオフにされると、自動車1のエンジン(不図示)の作動が停止し、モータ制御部40のリレー作動部37がモータリレー722を開状態(オフ)にし、モータ駆動部50から電動モータ110への電流供給を停止する。また、リレー作動部37がパワーリレー721を開状態(オフ)にすることでモータ駆動部50への電力供給を停止する。その後、モータ制御部40は自身への電力供給も停止する。
【0038】
次に、リレー72(パワーリレー721、モータリレー722)をオンからオフへ切り替える制御について説明する。
リレー72(パワーリレー721、モータリレー722)は、電磁石と、固定接点と、可動接点とを有し、電磁石に電流が供給されることにより発生する電磁力によって、可動接点と固定接点との間で機械的なスイッチのオン、オフ動作を行う電磁リレーであることを例示することができる。リレー72が電磁リレーである場合、オフからオンへの切り替わり時およびオンからオフへの切り替わり時に、固定接点と可動接点とが機械的に接触することに起因して作動音が生じる。
【0039】
モータ制御部40は、IGスイッチ11がオフにされた場合、リレー72をオンからオフへ切り替える前に、電動モータ110のパワーダウン処理、リレー72が正常に作動可能か否か確かめるためのフェイルセーフチェック処理などの規定の終了処理を行う。それゆえ、IGスイッチ11がオフにされた後、自動車1のエンジン(不図示)の作動が停止した後に、リレー72がオンからオフへ切り替えられるおそれがある。かかる場合、エンジンの作動が停止した後の静寂な車室内にリレー72の作動音が響き、ユーザにとって耳障りな音となり不快感を与えてしまうおそれがある。また、ユーザが車室内に響いたリレー72の作動音を聞くことで、故障が発生したと勘違いするおそれがある。
これに対して、リレー72の作動音自体を低下させるために、リレー72の構造を変更するなど音性能を向上させることも考えられるが、リレー72の音性能を向上させるとリレー72の部品コストが高価となってしまうおそれがある。
【0040】
かかる事項に鑑み、本実施の形態に係るステアリング装置100の制御装置10においては、以下に説明する、リレー72をオンからオフへ切り替えるタイミングを制御するリレーオフ制御を行う。
【0041】
<リレーオフ制御の第1の実施例>
第1の実施例に係るリレーオフ制御では、制御装置10のモータ制御部40のリレー作動部37は、リレー72の作動音が自動車1のドア14の開閉音と重なるように、リレー72をオンからオフへ切り替える点に特徴がある。
モータ制御部40のリレー作動部37は、ドア開閉センサ15からの出力信号に基づいてリレー72をオンからオフへ切り替える。より具体的には、リレー作動部37は、IGスイッチ11がオフにされ、ドア開閉センサ15からドア14が開状態から閉状態へ移行した旨の信号を取得した後、フェイルセーフチェック処理などの終了処理を行った後に、リレー72をオンからオフへ切り替える。
【0042】
次に、フローチャートを用いて、第1の実施例に係るリレーオフ制御処理の手順について説明する。
図4は、モータ制御部40のリレー作動部37が行うリレーオフ制御処理の手順を示すフローチャートである。リレー作動部37は、このリレーオフ制御処理を予め定めた期間毎に繰り返し実行する。
リレー作動部37は、先ず、IGスイッチ11がオフにされたか否かを判別する(ステップ(以下、単に、「S」と記す。)101)。そして、IGスイッチ11がオフにされた場合(S101でYes)、ドア14が開状態から閉状態となったか否かを判別する(S102)。これは、ドア開閉センサ15からドア14が開状態から閉状態へ移行した旨の信号を取得したか否かで判別する処理であり、この信号を取得したら閉状態となったと判定し、この信号を取得していなければIGスイッチ11がオフにされた後もドア14が閉状態のままか、ドア14が開いた状態であると判定する。そして、ドア14が開状態から閉状態となっていない場合(S102でNo)、ドア14が開状態から閉状態へ移行するまで待機する。他方、ドア14が開状態から閉状態となった場合(S102でYes)、上述した終了処理を実行する(S103)。そして、その後、リレー72をオンからオフへ切り替える(S104)。
【0043】
ここで、ドア開閉センサ15は、周知のフォトインターラプタセンサであることを例示することができる。つまり、ドア開閉センサ15は、自動車1の車体側に設けられて、センサ本体に形成された2つの突出部と、突出部のそれぞれに設けられた発光素子(不図示)と受光素子(不図示)とを有する。そして、発光素子から発光された光を受光素子が受けるか否かで、発光素子と受光素子とが対向する部位における物体の通過や存在を読み取る。他方、ドア14が閉状態のときに、ドア開閉センサ15の2つの突出部が対向する部位に、ドア14に設けられた遮光板が存在するように配置されている。そして、ドア開閉センサ15の発光素子から発光された光を受光素子が受けなくなることで、ドア14の閉状態を検知し、その旨の信号をモータ制御部40へ出力する。他方、ドア開閉センサ15の発光素子から発光された光を受光素子が受けることで、ドア14の開状態を検知し、その旨の信号をモータ制御部40へ出力する。
【0044】
そして、ドア14の「ドンッ」という開閉音と、リレー72がオンからオフへ切り替わるときに発生する「カチッ」という作動音とが重なるように、ドア開閉センサ15およびドア14の遮光板を配置する。つまり、ドア14の「ドンッ」という開閉音が鳴り始めてから鳴り終るまで間に、リレー72の「カチッ」という作動音が鳴り始めてから鳴り終るように、ドア開閉センサ15およびドア14の遮光板を配置する。例えば、ドア14の遮光板がドア開閉センサ15の発光素子と受光素子との間に存在し、ドア開閉センサ15が発光素子から発光された光を受光素子が受けなくなった旨の信号を出力してからドア14の開閉音が生じるまでの期間と、リレー作動部37が、ドア開閉センサ15が発光素子から発光された光を受光素子が受けなくなった旨の信号を出力してから終了処理を実行し、リレー72がオフへ切り替えられる際の作動音が生じるまでの期間とが同じになるように、ドア開閉センサ15およびドア14の遮光板を配置する。
【0045】
図5は、以上のようにして行われる第1の実施例に係るリレーオフ制御処理による作用を示すタイミングチャートである。
IGスイッチ11がオフされ、その後、ドア14が開状態から閉状態となった旨の信号が出力されると、終了処理が実行された後にリレー72がオフされる。そして、モータ制御部40は、リレー72がオフされた後に、自身への電力供給を停止して、オフ状態となる。
【0046】
なお、図5においては、リレー72のパワーリレー721とモータリレー722とがオフされるタイミングが同じであるが、パワーリレー721に対して行われる終了処理とモータリレー722に対して行われる終了処理とに要する時間が異なる場合には、それぞれがオフされるタイミングはずれる。かかる場合、モータ制御部40は、パワーリレー721とモータリレー722とがオフされた後に、自身への電力供給を停止し、オフ状態となる。
【0047】
以上のように構成されたステアリング装置100においては、ドア14の「ドンッ」という開閉音と、リレー72がオンからオフへ切り替わるときに発生する「カチッ」という作動音とが重なるので、エンジンの作動が停止した後の静寂な車室内にリレー72の作動音が響くことを抑制することができる。これにより、リレー72の音性能を向上させることなく、ユーザが不快に感じることや故障が発生したと勘違いすることを抑制することができる。
【0048】
<リレーオフ制御の第2の実施例>
第2の実施例に係るリレーオフ制御では、制御装置10のモータ制御部40のリレー作動部37は、ユーザが自動車1の外に出た後に、リレー72の作動音が鳴るようにリレー72をオンからオフへ切り替える点に特徴がある。
モータ制御部40のリレー作動部37は、ドア開閉センサ15およびシート圧センサ18からの出力信号に基づいてリレー72をオンからオフへ切り替える。より具体的には、リレー作動部37は、IGスイッチ11がオフにされた後、ドア開閉センサ15からドア14が開状態から閉状態へ移行した旨の信号を取得するとともにシート圧センサ18がLowレベルの信号を出力している場合には、終了処理を行った後に、リレー72をオンからオフへ切り替える。他方、リレー作動部37は、ドア開閉センサ15からドア14が開状態から閉状態へ移行した旨の信号を取得しても、シート圧センサ18がHighレベルの信号を出力している場合には、リレー72をオンからオフへ切り替えない。
【0049】
これは、IGスイッチ11がオフにされた後、ドア開閉センサ15からドア14が開状態から閉状態へ移行した旨の信号を取得したとしても、シート圧センサ18がHighレベルの信号を出力している場合には、未だユーザが車内に居ると考えられるからである。他方、IGスイッチ11がオフにされた後、ドア開閉センサ15からドア14が開状態から閉状態へ移行した旨の信号を取得するとともにシート圧センサ18がLowレベルの信号を出力している場合には、ユーザがドア14を開き、車外に出てドア14を閉めたと考えられるからである。
【0050】
次に、フローチャートを用いて、第2の実施例に係るリレーオフ制御処理の手順について説明する。
図6は、モータ制御部40のリレー作動部37が行うリレーオフ制御処理の手順を示すフローチャートである。リレー作動部37は、このリレーオフ制御処理を予め定めた期間毎に繰り返し実行する。
リレー作動部37は、先ず、IGスイッチ11がオフにされたか否かを判別する(S201)。そして、IGスイッチ11がオフにされた場合(S201でYes)、ドア14が開状態から閉状態となったか否かを判別する(S202)。これは、ドア開閉センサ15からドア14が開状態から閉状態へ移行した旨の信号を取得したか否かで判別する処理であり、この信号を取得したら開状態から閉状態へ移行したと判定し、この信号を取得していなければIGスイッチ11がオフにされた後もドア14が閉状態のままか、ドア14が開いた状態であると判定する。
【0051】
ドア14が開状態から閉状態となっていない場合(S202でNo)、ドア14が開状態から閉状態へ移行するまで待機する。他方、ドア14が開状態から閉状態となった場合(S202でYes)、シート圧センサ18がLowレベルの信号を出力しているか否かを判別する(S203)。そして、シート圧センサ18がLowレベルの信号を出力している場合(S203でYes)、上述した終了処理を実行する(S204)。そして、その後、リレー72をオンからオフへ切り替える(S205)。一方、シート圧センサ18がLowレベルの信号を出力していない場合(S203でNo)、S202以降の処理を実行する。
【0052】
図7は、以上のようにして行われる第2の実施例に係るリレーオフ制御処理による作用を示すタイミングチャートである。
IGスイッチ11がオフされ、その後、ドア14が開状態から閉状態となった旨の信号が出力されても、シート圧センサ18がHighレベルの信号を出力している場合には、リレー72はオンにされたままとなる。一方、IGスイッチ11がオフされ、その後、ドア14が開状態から閉状態となった旨の信号が出力され、シート圧センサ18がLowレベルの信号を出力している場合には、終了処理が実行された後にリレー72がオフされる。そして、モータ制御部40は、リレー72がオフされた後に、自身への電力供給を停止して、オフ状態となる。
【0053】
なお、図7においては、リレー72のパワーリレー721とモータリレー722とがオフされるタイミングが同じであるが、パワーリレー721に対して行われる終了処理とモータリレー722に対して行われる終了処理とに要する時間が異なる場合には、それぞれがオフされるタイミングはずれる。かかる場合、モータ制御部40は、パワーリレー721とモータリレー722とがオフされた後に、自身への電力供給を停止し、オフ状態となる。
【0054】
以上のように構成されたステアリング装置100においては、ユーザが車外にいるときにリレー72の作動音が鳴るので、ユーザにはリレー72の作動音が聞こえ難くなる。それゆえ、エンジンの作動が停止した後の静寂な車室内にリレー72の作動音が響くことを抑制することができる。これにより、リレー72の音性能を向上させることなく、ユーザが不快に感じることや故障が発生したと勘違いすることを抑制することができる。
【0055】
<リレーオフ制御の第3の実施例>
第3の実施例に係るリレーオフ制御では、制御装置10のモータ制御部40は、ユーザが自動車1の外に出た後に、リレー72の作動音が鳴るようにリレー72をオンからオフへ切り替える点に特徴があるのは第2の実施例とは同じである。ただ、第3の実施例では、リレー作動部37は、ドア鍵センサ16およびシート圧センサ18からの出力信号に基づいてリレー72をオンからオフへ切り替える。より具体的には、リレー作動部37は、IGスイッチ11がオフにされた後、ドア鍵センサ16からドア14がアンロック状態からロック状態へ移行した旨の信号を取得するとともにシート圧センサ18がLowレベルの信号を出力している場合には、終了処理を行った後に、リレー72をオンからオフへ切り替える。他方、リレー作動部37は、ドア鍵センサ16からドア14がアンロック状態からロック状態へ移行した旨の信号を取得しても、シート圧センサ18がHighレベルの信号を出力している場合には、リレー72をオンからオフへ切り替えない。
【0056】
これは、IGスイッチ11がオフにされた後、ドア鍵センサ16からドア14がアンロック状態からロック状態へ移行した旨の信号を取得するとともにシート圧センサ18がLowレベルの信号を出力している場合には、ユーザがドア14を開き、車外に出てドア14に鍵をかけたと考えられるからである。他方、ドア鍵センサ16からドア14がアンロック状態からロック状態へ移行した旨の信号を取得したとしてもシート圧センサ18がHighレベルの信号を出力している場合には、誰か車内に残った状態でドア14に鍵がかけられたと考えられるからである。
【0057】
次に、フローチャートを用いて、第3の実施例に係るリレーオフ制御処理の手順について説明する。
図8は、モータ制御部40のリレー作動部37が行うリレーオフ制御処理の手順を示すフローチャートである。リレー作動部37は、このリレーオフ制御処理を予め定めた期間毎に繰り返し実行する。
リレー作動部37は、先ず、IGスイッチ11がオフにされたか否かを判別する(ステップ(S301)。そして、IGスイッチ11がオフにされた場合(S301でYes)、ドア14がアンロック状態からロック状態となったか否かを判別する(S302)。これは、ドア鍵センサ16からドア14がアンロック状態からロック状態へ移行した旨の信号を取得したか否かで判別する処理である。ドア14がアンロック状態からロック状態となっていない場合(S302でNo)、ドア14がアンロック状態からロック状態となるまで待機する。他方、ドア14がアンロック状態からロック状態となった場合(S302でYes)、シート圧センサ18がLowレベルの信号を出力しているか否かを判別する(S303)。そして、シート圧センサ18がLowレベルの信号を出力している場合(S303でYes)、上述した終了処理を実行する(S304)。そして、その後、リレー72をオンからオフへ切り替える(S305)。一方、シート圧センサ18がLowレベルの信号を出力していない場合(S303でNo)、S302以降の処理を実行する。
【0058】
図9は、以上のようにして行われる第3の実施例に係るリレーオフ制御処理による作用を示すタイミングチャートである。
IGスイッチ11がオフされ、その後、ドア14がアンロック状態からロック状態へ移行しても、シート圧センサ18がHighレベルの信号を出力している場合には、リレー72はオンにされたままとなる。一方、IGスイッチ11がオフされ、その後、ドア14がアンロック状態からロック状態へされた旨の信号が出力され、シート圧センサ18がLowレベルの信号を出力している場合には、終了処理が実行された後にリレー72がオフされる。そして、モータ制御部40は、リレー72がオフされた後に、自身への電力供給を停止して、オフ状態となる。
【0059】
なお、図9においては、リレー72のパワーリレー721とモータリレー722とがオフされるタイミングが同じであるが、パワーリレー721に対して行われる終了処理とモータリレー722に対して行われる終了処理とに要する時間が異なる場合には、それぞれがオフされるタイミングはずれる。かかる場合、モータ制御部40は、パワーリレー721とモータリレー722とがオフされた後に、自身への電力供給を停止し、オフ状態となる。
【0060】
以上のように構成されたステアリング装置100においては、ユーザが車外にいるときにリレー72の作動音が鳴るので、ユーザにはリレー72の作動音が聞こえ難くなる。それゆえ、エンジンの作動が停止した後の静寂な車室内にリレー72の作動音が響くことを抑制することができる。これにより、リレー72の音性能を向上させることなく、ユーザが不快に感じることや故障が発生したと勘違いすることを抑制することができる。
【符号の説明】
【0061】
1…自動車、10…制御装置、20…目標電流算出部、30…モータ駆動制御部、37…リレー作動部、40…モータ制御部、50…モータ駆動部、60…モータ電流検出部、72…リレー、100…電動パワーステアリング装置、101…ステアリングホイール(ハンドル)、110…電動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアを有する乗り物の進行方向を変えるためのステアリングホイールの操作に対するアシスト力を付与する電動モータと、
前記電動モータに流れる電流を通電/遮断するべく当該電動モータに流れる電流の経路を開閉する開閉手段と、
前記開閉手段の作動を制御する開閉制御手段と、
を備え、
前記開閉制御手段は、前記乗り物の前記ドアの開閉音と重なるように前記開閉手段を作動させることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
前記開閉制御手段は、前記乗り物の前記ドアの開状態から閉状態への移行を認識した後に前記開閉手段を作動させることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記開閉制御手段は、前記乗り物のイグニッションスイッチがオフされた後に前記ドアの開状態から閉状態への移行を認識したら前記開閉手段を作動させることを特徴とする請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
乗り物の進行方向を変えるためのステアリングホイールの操作に対するアシスト力を付与する電動モータと、
前記電動モータに流れる電流を通電/遮断するべく当該電動モータに流れる電流の経路を開閉する開閉手段と、
前記開閉手段の作動を制御する開閉制御手段と、
を備え、
前記開閉制御手段は、ユーザが前記乗り物の内部から外部へ移動したら前記開閉手段を作動させることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
前記開閉制御手段は、前記乗り物のドアの開状態から閉状態への移行を認識した後に前記開閉手段を作動させることを特徴とする請求項4に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項6】
前記開閉制御手段は、前記乗り物のドアのアンロック状態からロック状態への移行を認識した後に前記開閉手段を作動させることを特徴とする請求項4に記載の電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−10425(P2013−10425A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144380(P2011−144380)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000146010)株式会社ショーワ (715)
【Fターム(参考)】