説明

電動二輪車

【課題】バッテリ及び各種電装部品等を含むユニットを搭載することで、組み立てラインを短縮することができる電動二輪車を提供する。
【解決手段】バッテリユニット18及び電装部品を収容するユニットケース36と、ユニットケース36を下方に配置し、該ユニットケース36を固定する固定フレーム35とを一体化し、固定フレーム35に、車体フレームに固定される車体フレーム取付け部40,41と、スイングアーム16,17を揺動可能に支持するスイングアーム支持部44と、緩衝器の一端を固定する緩衝器取付部34とを有するスイングアーム一体型電装部品ユニット14を車体に着脱可能に搭載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータを駆動源として駆動する電動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、電動車両に関連する技術が種々提案されている。とりわけ、電動二輪車の分野では、比較的小型の車両構造等を配慮し、重量物であるバッテリや各種電装部品等の配置に関連する技術が多く見られる。
【0003】
例えば、特許文献1に開示された車両では、バッテリを車体フレームの最も低位置に配置して低重心化を図り、電動モータを制御するコントローラはバッテリの後方に位置する車体フレームに取り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−105143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術に係る電動二輪車では、バッテリやコントローラ等を車体フレームにそれぞれ別個に取付けているが、このような配置を採用する車両では、各種部品の取付けのための専用部品が増加し、組み立てに手間がかかってしまう。
【0006】
本発明は係る実情に鑑みてなされたものであり、バッテリ及び各種電装部品等を含むユニットを搭載することで、組み立てラインを短縮することができる電動二輪車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決手段として、請求項1に記載の発明は、電動モータ(27)に電力を供給するバッテリ(18)と、前記電動モータ(27)の制御及び/又は電力供給に係る電装部品と、前記バッテリ(18)及び前記電装部品を収容するユニットケース(36)と、前記ユニットケース(36)を下方に配置し、該ユニットケース(36)を固定する固定部材(35)と、前記固定部材(35)に設けられ、車体フレーム(2)に固定される車体フレーム取付け部(40,41)と、前記車体フレーム取付け部(40,41)よりも後方において前記固定部材(35)に設けられ、スイングアーム(16,17)を揺動可能に支持するスイングアーム支持部(44)と、前記スイングアーム支持部(44)に支持されたスイングアーム(16,17)と、前記スイングアーム(16,17)の後部に設けられ、前記電動モータ(27)を固定する電動モータ固定部(29)と、を有するスイングアーム一体型電装部品ユニット(14)を着脱可能に搭載したことを特徴とする電動二輪車を提供する。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電動二輪車において、前記スイングアーム(16,17)は中空構造であり、前記電装部品(21)に接続されたケーブルが前記スイングアーム(16,17)の内部を通って前記電動モータ固定部(29)まで導かれていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の電動二輪車において、前記車体フレーム(2)には、ヘッドパイプ(3)から後下方に延びるダウンフレーム(4)と、該ダウンフレーム(4)の後端から後方に延びるフロアフレーム(5,5)とが含まれ、前記フロアフレーム(5,5)には、上方に突出する固定ブラケット(42,43)が設けられ、前記スイングアーム一体型電装部品ユニット(14)は、前記車体フレーム取付け部(40,41)を前記固定ブラケット(42,43)に固定することで搭載されることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の電動二輪車において、前記車体フレーム(61)には、ヘッドパイプ(62)から後下方に延びるメインフレーム(63)と、該メインフレーム(63)の後部から後上方に延びるシートフレーム(64)とが含まれ、前記メインフレーム(63)には、下方に突出する固定ブラケット(66,67)が設けられ、前記スイングアーム一体型電装部品ユニット(14)は、前記車体フレーム取付け部(40,41)を前記固定ブラケット(66,67)に固定することで搭載されることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1又は2に記載の電動二輪車において、前記車体フレーム(81)には、ヘッドパイプ(82)から後下方に延びる左右一対のメインフレーム(83,83)と、前記メインフレーム(83,83)の前部から後下方に延び、その後、折れ曲がって後方に延びて、前記メインフレーム(83,83)の後部に接続する左右一対のダウンフレーム(84,84)とが含まれ、前記ダウンフレーム(84,84)には、下方に突出する固定ブラケット(87,88)が設けられ、前記スイングアーム一体型電装部品ユニット(14)は、前記車体フレーム取付け部(40,41)を前記固定ブラケット(87,88)に固定することで搭載されることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電動二輪車において、前記電装部品には、前記電動モータ(27)の駆動を制御する部品(20)、前記バッテリ(18)の充放電状況を管理する部品(22)、及び前記バッテリ(18)の電圧を降圧する部品(24)のうちの少なくともいずれかが含まれていることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電動二輪車において、前記スイングアーム一体型電装部品ユニット(14)は、前記固定部材(35)に設けられ緩衝器(32)の一端を固定する緩衝器取付部(34)を有することを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の電動二輪車において、前記緩衝器取付部(34)は、前記スイングアーム支持部(44)よりも上方において前記固定部材(35)に設けられることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電動二輪車において、前記車体フレーム(2)は、シートフレーム(64)を備え、前記スイングアーム(16,17)と前記シートフレーム(64)との間には、前記緩衝器(32)が架設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、各種部品をユニット化することで、組み立てラインを短縮することができる。
請求項2に記載の発明によれば、ケーブルの為に別途特別な保護部材を設ける必要がなく、外観性を良好にすることができる。
請求項3〜5に記載の発明によれば、スイングアーム一体型電装部品ユニットを用いて、様々な種類の電動二輪車を構成することができる。
請求項6に記載の発明によれば、モータやバッテリの制御の為に必要な部品をスイングアーム一体型電動部品ユニットに取付けるので、これら電装部品と、スイングアーム一体型電装部品ユニットとを繋ぐ電装線を少なくすることができ、組み立てを容易にすることができる。
請求項7に記載の発明によれば、緩衝器もスイングアーム一体型電装部品ユニットにユニット化するので、組み立てラインを更に短くすることができる。
請求項8に記載の発明によれば、最低地上高を高くできる。
請求項9に記載の発明によれば、緩衝器をシートフレームに取り付けるので、設計の自由度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電動二輪車の左側面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る電動二輪車の上面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る電動二輪車に搭載されるスイングアーム一体型電装部品ユニットの側面図である。
【図4】スイングアーム一体型電装部品ユニットの分解斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る電動二輪車のシステム構成を示したブロック図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る電動二輪車の左側面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る電動二輪車の上面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る電動二輪車の左側面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る電動二輪車の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下で用いる図面において、矢印FRは車両の前方を示し、矢印UPは車両の上方を示し、矢印LHは車両の左方を示している。
【0019】
<第1の実施形態>
図1、図2に本発明の第1の実施形態に係るスクータ型の鞍乗型電動車両である電動二輪車1が示されている。電動二輪車1は複数のフレーム部材が溶接等で一体に構成された車体フレーム2を備えている。車体フレーム2は、ヘッドパイプ3と、ヘッドパイプ3から後下方に延びるダウンフレーム4と、ダウンフレーム4の下部から左右に分岐し、略水平方向に後方に延びる左右一対のフロアフレーム5,5と、フロアフレーム5,5の各後端から後上方に延び、その後、略水平方向に延びる左右一対のリヤフレーム6,6とで構成されている。各フレーム4〜6はアルミニウム合金製のパイプ材から構成されている。
【0020】
前輪7と後輪8との間に乗員が脚を載置する樹脂材料からなる板状のステップフロア9が設けられ、ステップフロア9の後上方に乗員着座用のシート10が設けられている。前輪7は、左右一対のフロントフォーク11,11の下部に回転可能に支持され、フロントフォーク11,11の上部には左右に跨るブリッジ12が架設されている。ブリッジ12の中央にステアリングシャフト13が立設され、ステアリングシャフト13の上端には操向ハンドル13Aが固定されている。ステアリングシャフト13がヘッドパイプ3に回転可能に支持され、フロントフォーク11,11が操向可能に支持されている。
【0021】
左右のフロアフレーム5,5の間には、スイングアーム一体型電装部品ユニット14(以下、ユニット14と呼ぶ)が配置され、このユニット14は、フロアフレーム5,5に固定されるユニット本体15と、ユニット本体15の後部に支持されて後方に延び、該ユニット本体15に対して上下方向に揺動可能な左スイングアーム16及び右スイングアーム17とを備えている。
【0022】
各スイングアーム16,17はアルミニウム合金製のパイプ材からなり、断面視矩形の中空構造を有している。ユニット本体15には、複数のリチウムイオンバッテリを含んで構成されたバッテリユニット18、ECU(Electrical Control Unit)19とPDU(Power Drive Unit)20とをユニット化した制御ユニット21、バッテリマネージメントユニット(以下、BMU;Battery Managing Unit)22、コンタクター23、及びDC−DCコンバータ24が収容されている。このように各種電装部品を集約することで、車体における電装線の削減が図られている。
【0023】
ECU19は、車両の各種制御を統括的に実行し、PDU20は、ECU19からの指令に応じて後述の駆動モータユニット25を駆動制御する。BMU22は、バッテリユニット18の充放電状況や温度等の管理を行い、コンタクター23は、バッテリユニット18と接続するとともにDC−DCコンバータ24及びPDU20と接続し、バッテリユニット18からの電力をDC−DCコンバータ24及びPDU20に供給する。DC−DCコンバータ24はバッテリユニット18からの電圧を降圧してECU19等に電力を供給する。
【0024】
左スイングアーム16の車幅方向内側に後輪8を駆動する駆動モータユニット25が着脱可能に固定され、駆動モータユニット25は、回転駆動するドライブシャフト26を有する電動モータ27と、該電動モータ27を覆う有底円筒状のハウジング28とを備えている。駆動モータユニット25は、ハウジング28が左スイングアーム16の車幅方向内側に設けられた電動モータ固定部29に固定されることで、左スイングアーム16に支持されている。電動モータ固定部29による固定態様としてはハウジング38をボルト締結するもの等であればよい。
【0025】
電動モータ27のドライブシャフト26は、右スイングアーム17に向けて延出し、右スイングアーム17後部に先端側をベアリング(図示略)を介して回転可能に支持されている。ドライブシャフト26は、左右スイングアーム16,17間において後輪8のホイール30を相対回転不能に支持し、これにより後輪8が駆動される。PDU20等に接続された電装系のケーブルは、左スイングアーム16の内部を通って電動モータ固定部29まで導かれ、駆動モータユニット25に接続される。
【0026】
ユニット本体15と駆動モータユニット25との間において左右スイングアーム16,17間には、左右一対の軸支持ブラケット31,31が上方に突出するように設けられている。このブラケット31,31間には、緩衝器であるクッションユニット32の後端(下端)を固定する緩衝器取付軸33が架設されている。クッションユニット32の後端(下端)は緩衝器取付軸33に取付けられ、クッションユニット32の前端(上端)は、ユニット本体15に一体に形成された緩衝器取付部34に取付けられている。
【0027】
図3にはユニット14の側面図が示され、図4にはユニット14の分解斜視図が示されている。上述したように、ユニット14は、ユニット本体15と、ユニット本体15の後部に支持されて後方に延び、該ユニット本体15に対して上下方向に揺動可能な左スイングアーム16及び右スイングアーム17とを備えている。ユニット本体15は、金属材料からなる上面視でコの字型形状を呈した固定フレーム35と、固定フレーム35の下方に配置され、バッテリユニット18等の各種電装部品を収容する樹脂材料からなるユニットケース36とで構成されている。
【0028】
固定フレーム35は断面矩形の部材であり、左フレーム部35Lと、右フレーム部35Rと、左右フレーム部35L、35Rの前部を結合する前側フレーム部38とで、車体取付け時に上面視で後方に開放するコの字型形状を呈している。ユニットケース36は、上方に開放する箱体であって、上面視で矩形の上壁39を備えている。固定フレーム35は、その下面をユニットケース36の上壁39に当接した状態で、ユニットケース36を固定する。ここで、固定フレーム35のユニットケース36の固定構造としてはボルト締結等が考えられる。また、固定フレーム35とユニットケース36とを一体化した後には、ユニットケース36の上方の開口が着脱可能な蓋体によって閉塞される。
【0029】
左右フレーム部35L、35Rの後部はそれぞれ斜め上方に屈曲して延びており、すなわち、左フレーム部35Lは後斜め上方に屈曲して延びる左側傾斜フレーム部37Lを一体に有し、右フレーム部35Rは後斜め上方に屈曲して延びる右側傾斜フレーム37Rを一体に有している。上記緩衝器取付部34には、左側傾斜フレーム部37L及び右側傾斜フレーム37Rを貫通する孔34H,34Hが含まれ、これら孔34H,34Hは左側傾斜フレーム部37L及び右側傾斜フレーム37Rの上部にそれぞれ形成されている。また、緩衝器取付部34にはクッション支持軸34Aが含まれており、このクッション支持軸34Aは孔34H,34Hに挿通されている。クッションユニット32の前端(上端)はクッション支持軸34Aに支持される。
【0030】
固定フレーム35の左右フレーム部35L、35Rにはそれぞれ、前後に並んで一対のボルト締結孔40,41が形成され、図1に示すように、左右のフロアフレーム5,5にはそれぞれ、上方に突出する前後一対の固定ブラケット42(左側),43(右側)が形成されている。ボルト締結孔40,41の形成位置は、固定フレーム35とユニットケース36とが一体となったユニット本体15の上下方向における中間位置よりも上方に位置付けられている。ユニット14は、左右のフロアフレーム5,5の間に配置され、ユニットケース36を一体とした固定フレーム35がボルト締結孔40,41を固定ブラケット42,43に沿わせてボルト締結されることで、フロアフレーム5,5の間に固定されている。
【0031】
ボルト締結孔40,41よりも後方において左右フレーム部35L、35Rの間には、左右スイングアーム16、17を揺動可能に支持するピボット軸44が設けられ、ピボット軸44は左右フレーム部35L、35Rそれぞれに形成された軸孔45,45に挿通されて設けられている。ピボット軸44の軸方向において左右スイングアーム16,17は離間して配置されている。左右スイングアーム16,17は別々にピボット軸44から取り外すことができる。
【0032】
図3を参照し、ユニットケース36内では、前側に制御ユニット21、バッテリマネージメントユニット22、コンタクター23、及びDC−DCコンバータ24が収容され、これらの後方にバッテリユニット18が収容されている。制御ユニット21、バッテリマネージメントユニット22、コンタクター23、及びDC−DCコンバータ24の前側には冷却ファン47が設けられている。図4に示すように、ユニットケース36の前壁48Aにはスリット状の複数の吸気口49が形成され、また、ユニットケース36の前壁48Aには円形の吸気側ダクト接続口50が形成され、ユニットケース36の後壁48Bには排気側ダクト接続口51が形成されている。
【0033】
図1を参照し、吸気側ダクト接続口50には吸気ダクト52が接続され、排気側ダクト接続口51には排気ダクト53が接続されている。吸気ダクト52及び排気ダクト53は、ジャバラ構造を有し伸縮可能なホースであり、吸気ダクト52はユニット14からダウンフレーム4に沿って前上方に導かれ、先端を屈曲されて前方に開口する。排気ダクト53は、ユニット14からリヤフレーム6に沿って後上方に導かれ、先端を屈曲されて下方に開口する。ユニット14内には吸気ダクト52から風が導かれ、排気ダクト53からユニット14内の空気が排気される。
【0034】
次に図5は電動二輪車1のシステム構成を示している。図5に示すように、電動二輪車1では、バッテリユニット18からの電力は、不図示のメインスイッチと連動するコンタクター23を介してモータドライバたるPDU20に供給され、PDU20にて直流から3相交流に変換された後に、3相交流モータである電動モータ27に供給される。また、バッテリユニット18からの出力電圧は、DC−DCコンバータ24を介して降圧されて、例えば12Vのサブバッテリ55や計器類等の一般電装部品(図中「etc」)、並びにECU19等の制御系部品に供給される。なお、サブバッテリ55は車体の適所に設けられる。
【0035】
バッテリユニット18は、例えばAC100Vの電源に接続した充電器56により充電される。バッテリユニット18の充放電状況や温度等はBMU22が監視し、かつその情報はECU19と共有される。ECU19には、アクセルセンサ57からの出力要求情報が入力され、この出力要求情報に基づき、ECU19がPDU20を介して電動モータ27を駆動制御する。なお、充電器56は車体の適所に設けられるが、これが非搭載であってもよい。また、バッテリユニット18の種類によってはサブバッテリ55を無くした構成としてもよい。
【0036】
この電動二輪車1においては、操向ハンドル13Aに図示省略するアクセルグリップが設けられており、アクセルグリップのアクセル開度がアクセルセンサ57により検出されてECU19に出力される。そしてECU19がアクセル開度に応じてPDU20を制御することで、PDU20によって後輪8が駆動され、電動二輪車1が走行する。
【0037】
以上に説明した第1の実施形態に係る電動二輪車1は、電装部品を収容するユニット本体15や左右スイングアーム16、17等を一体化したユニット14を備えることで、部品点数が抑えるとともに、組み立てラインを短縮することができる。すなわち、電動二輪車1では、車体フレームにおいて、バッテリユニット18や制御ユニット21等の電装部品を設置するための取付部が削減されるので、車両構造の簡易化を図ることができ、更に、各種部品がユニット化されているため、組み立ての手間を省くことができる。また、本実施形態では、緩衝器取付部34をピボット軸44よりも上方において固定フレーム35に設けることで、スイングアーム一体型電装部品ユニット14搭載時の車体の最低地上高を高くできる。
【0038】
そして、本実施形態で説明したスイングアーム一体型電装部品ユニット14は、電動モータ27の制御や電力供給に係る電装部品(制御ユニット21、BMU22等)、左右スイングアーム16,17等をユニット化したものであるため、複数の車種で容易に流用が可能である。以下で説明する他の実施形態では、電動二輪車1と異なる車両にユニット14が搭載されている。
【0039】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態は、電動二輪車1と車両構造の異なる電動二輪車60においてユニット14を搭載したものである。なお、電動二輪車1と同様の部位については同一符号で示し、説明は省略する。
【0040】
図6、図7に示す電動二輪車60では、車体フレーム61が、ヘッドパイプ62から後下方に延びるメインフレーム63と、該メインフレーム63の後部から後上方に延び、その後、略水平方向に延びる左右一対のシートフレーム64,64とを備えている。メインフレーム63の前後方向略中央領域と、シートフレーム64,64の後上方に傾斜する部位の上下方向略中央領域には、左右一対のサブフレーム65,65が架設されている。
【0041】
メインフレーム63の前後方向略中央領域には、下方に突出する左右一対の前側固定ブラケット66,66が設けられ、前側固定ブラケット66,66の後方には左右一対の後側固定ブラケット67,67がメインフレーム63に設けられている。前側固定ブラケット66,66は後側固定ブラケット67,67よりも、上下方向で長く、双方の下端は上下方向と略同一位置に位置付けられている。
【0042】
ユニット14は、前側固定ブラケット66,66及び後側固定ブラケット67,67に締結されることで、電動二輪車60に搭載されている。ユニット14の右側傾斜フレーム部37L及び左側傾斜フレーム部37Rは、メインフレーム63の後端の後方に周り込んでいる。左のシートフレーム64の屈曲領域には、クッションユニット固定用の左右一対の固定プレート68,68が溶着され、固定プレート68,68にはクッションユニット69,69の上端が固定されている。
【0043】
本実施形態では、ユニット14の左右スイングアーム16,17の後部にクッションユニット69の下端が取付けられる緩衝器用取付ブラケット70,70が設けられている。ここで、左右のスイングアーム16、17には、第1の実施形態で説明した軸支持ブラケット31及び緩衝器取付軸33は設けられていない。
【0044】
この第2の実施形態に係る電動二輪車60においても、ユニット14を備えることで、部品点数が抑えられて車両構造の簡易化が図られている。なお、本実施形態に係るユニット14は、左右のスイングアーム16,17において、緩衝器の取付け部の構成は異なるが、その他の部位に関しては同一であり、車種の決定の段階で緩衝器の取付け部の構成を変更するだけで異なる車種間で容易に流用できる。また、この実施形態では、シートフレーム64,64にクッションユニット69,69を取付けるので、設計の自由度が向上する。
【0045】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態は、上述した電動二輪車1及び電動二輪車60と車両構造の異なる電動二輪車80においてユニット14を搭載したものである。なお、電動二輪車1と同様の部位については同一符号で示し、説明は省略する。
【0046】
図8、図9に示す電動二輪車80では、車体フレーム81が、ヘッドパイプ82から後下方に延びる左右一対のメインフレーム83,83と、メインフレーム83,83の前部から後下方に延び、その後、折れ曲がって後方に延びて、メインフレーム83,83の後部に接続する左右一対のダウンフレーム84,84と、メインフレーム83,83の後部から後上方に延びる左右一対のシートフレーム85,85と、シートフレーム85,85の下方において、該シートフレーム85,85とメインフレーム83,83の後部との間に架設された左右一対のサブフレーム86,86とを備えている。
【0047】
左右のダウンフレーム84,84の略水平領域にはそれぞれ、下方に突出する前後一対の固定ブラケット87(左側),88(右側)が形成されている。ユニット14は、固定ブラケット87,88に締結されることで、電動二輪車60に搭載されている。
【0048】
左右スイングアーム16,17間には、第1の実施形態で説明したように左右一対の軸支持ブラケット31が上方に突出するように設けられている。このブラケット31間には、緩衝器であるクッションユニット32の後端(下端)を固定する緩衝器取付軸33が架設されている。クッションユニット32の後端(下端)は緩衝器取付軸33に取付けられ、クッションユニット32の前端(上端)は、ユニット本体15に一体に形成された緩衝器取付部34に取付けられている。
【0049】
このような第3の実施形態に係る電動二輪車80においても、ユニット14を備えることで、部品点数が抑えられて車両構造の簡易化が図られている。なお、駆動モータユニット25は着脱可能に左スイングアーム16に取付けられているため、車種によっては異なる出力の電動モータを備える駆動モータユニットを取付けてもよい。
【0050】
以上で本発明の第1〜第3の実施形態を説明したが、上記実施形態の構成は適宜変更して構わない。例えば、上記各実施形態では、バッテリユニット18を複数のリチウムイオン電池を含むものとして構成したが、これに代えて、ニッケル水素バッテリや鉛バッテリを用いたものとしてもよい。また、本実施形態では、スイングアーム一体型電装部品ユニット14において、緩衝器取付部34をスイングアーム支持部であるピボット軸44よりも上方に設けたが、緩衝器取付部34をピボット軸44よりも下方に設ける構成としてもよい。
【0051】
また、図5で示したように第2の実施形態では、クッションユニット69をシートフレーム64とスイングアーム16(17)との間に設けたが、同図の二点鎖線に示すように、クッションユニット69を緩衝器取付部34に支持してもよい。さらに、図7で示したように第3の実施形態では、クッションユニット32を緩衝器取付部34とスイングアーム16(17)との間に設けたが、同図の二点鎖線に示すように、クッションユニット32の上端をシートフレーム85で支持してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1,60,80 電動二輪車
2,61,81 車体フレーム
3,62,82 ヘッドパイプ
4 ダウンフレーム
5 フロアフレーム
14 スイングアーム一体型電装部品ユニット
16 左スイングアーム(スイングアーム)
17 右スイングアーム(スイングアーム)
18 バッテリ
20 パワードライブユニと
22 バッテリマネージメントユニット
24 DC−DCコンバータ
27 電動モータ
29 (電動モータ固定部)
34 (緩衝器取付部)
35 固定フレーム(固定部材)
36 ユニットケース
40,41 (車体フレーム取付け部)
42,43,66,67,87,88 固定ブラケット
44 スイングアーム支持部
63,83 メインフレーム
64 シートフレーム
84 ダウンフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータ(27)に電力を供給するバッテリ(18)と、
前記電動モータ(27)の制御及び/又は電力供給に係る電装部品と、
前記バッテリ(18)及び前記電装部品を収容するユニットケース(36)と、
前記ユニットケース(36)を下方に配置し、該ユニットケース(36)を固定する固定部材(35)と、
前記固定部材(35)に設けられ、車体フレーム(2)に固定される車体フレーム取付け部(40,41)と、
前記車体フレーム取付け部(40,41)よりも後方において前記固定部材(35)に設けられ、スイングアーム(16,17)を揺動可能に支持するスイングアーム支持部(44)と、
前記スイングアーム支持部(44)に支持されたスイングアーム(16,17)と、
前記スイングアーム(16,17)の後部に設けられ、前記電動モータ(27)を固定する電動モータ固定部(29)と、を有するスイングアーム一体型電装部品ユニット(14)を着脱可能に搭載したことを特徴とする電動二輪車。
【請求項2】
前記スイングアーム(16,17)は中空構造であり、前記電装部品(21)に接続されたケーブルが前記スイングアーム(16,17)の内部を通って前記電動モータ固定部(29)まで導かれていることを特徴とする請求項1に記載の電動二輪車。
【請求項3】
前記車体フレーム(2)には、ヘッドパイプ(3)から後下方に延びるダウンフレーム(4)と、該ダウンフレーム(4)の後端から後方に延びるフロアフレーム(5,5)とが含まれ、
前記フロアフレーム(5,5)には、上方に突出する固定ブラケット(42,43)が設けられ、
前記スイングアーム一体型電装部品ユニット(14)は、前記車体フレーム取付け部(40,41)を前記固定ブラケット(42,43)に固定することで搭載されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動二輪車。
【請求項4】
前記車体フレーム(61)には、ヘッドパイプ(62)から後下方に延びるメインフレーム(63)と、該メインフレーム(63)の後部から後上方に延びるシートフレーム(64)とが含まれ、
前記メインフレーム(63)には、下方に突出する固定ブラケット(66,67)が設けられ、
前記スイングアーム一体型電装部品ユニット(14)は、前記車体フレーム取付け部(40,41)を前記固定ブラケット(66,67)に固定することで搭載されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動二輪車。
【請求項5】
前記車体フレーム(81)には、ヘッドパイプ(82)から後下方に延びる左右一対のメインフレーム(83,83)と、前記メインフレーム(83,83)の前部から後下方に延び、その後、折れ曲がって後方に延びて、前記メインフレーム(83,83)の後部に接続する左右一対のダウンフレーム(84,84)とが含まれ、
前記ダウンフレーム(84,84)には、下方に突出する固定ブラケット(87,88)が設けられ、
前記スイングアーム一体型電装部品ユニット(14)は、前記車体フレーム取付け部(40,41)を前記固定ブラケット(87,88)に固定することで搭載されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動二輪車。
【請求項6】
前記電装部品には、前記電動モータ(27)の駆動を制御する部品(20)、前記バッテリ(18)の充放電状況を管理する部品(22)、及び前記バッテリ(18)の電圧を降圧する部品(24)のうちの少なくともいずれかが含まれていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電動二輪車。
【請求項7】
前記スイングアーム一体型電装部品ユニット(14)は、前記固定部材(35)に設けられ緩衝器(32)の一端を固定する緩衝器取付部(34)を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電動二輪車。
【請求項8】
前記緩衝器取付部(34)は、前記スイングアーム支持部(44)よりも上方において前記固定部材(35)に設けられることを特徴とする請求項7に記載の電動二輪車。
【請求項9】
前記車体フレーム(2)は、シートフレーム(64)を備え、
前記スイングアーム(16,17)と前記シートフレーム(64)との間には、前記緩衝器(32)が架設されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電動二輪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−91689(P2012−91689A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241020(P2010−241020)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】