説明

電動圧縮機用の電子部品固定構造

【課題】電動圧縮機において、基板を取り付ける際の作業を容易にする電子部品固定構造を提供することを目的とする。
【解決手段】電子部品固定構造100のガイド部材30は、電子部品であるIGBT20のリード21の位置決めを行う。ガイド部材30は、出力端子32とともに出力端子構造の一部を構成する。ガイド部材30はガイド孔31を有する。ガイド孔31はリード21を通すための貫通孔である。ガイド孔31にリード21を通すことにより、リード21の位置決めが行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動圧縮機用の電子部品固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電動圧縮機は、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機構部と、圧縮機構部を駆動する電動モータと、電動モータを制御および駆動する駆動回路とを備えたものが知られている。従来、この種の電動圧縮機において、駆動回路に用いられるスイッチング素子等の電子部品を、支持部材を兼ねた冷却部材に固定する構成が用いられる。この固定構造には、ネジ等の螺合部材が用いられる。このような固定構造をもって電子部品を冷却部材に固定した後、上からかぶせるように基板を取り付ける。基板を取り付ける際には、基板に設けられた孔の下側から、電子部品のリードを上に向けて通す作業が必要となる。
このような作業に従って製造される構造の例として、特許文献1に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−184947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電子部品固定構造では、基板を取り付ける際の作業が困難であり作業効率に改善の余地があるという問題があった。とくに、基板の孔のサイズは限られているため、多数のリードをそれぞれ対応する孔に通す作業が困難である。
【0005】
この発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、電動圧縮機に基板を取り付ける際の作業を容易にする電子部品固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の問題点を解決するため、この発明に係る電動圧縮機用の電子部品固定構造は、電動圧縮機用の電子部品固定構造であって、電子部品固定構造は、複数のリードを有する電子部品と、リードの位置決めを行うガイド部材とを備え、ガイド部材は樹脂製であり、ガイド部材は、リードを通すガイド孔を有する。
【0007】
このような構成によれば、電子部品のリードを通すためのガイド孔が、リードの位置を規制する。
【0008】
ガイド孔は、電子部品に対向する内側開口と、他方の外側開口とを有し、内側開口の開口面積は、外側開口の開口面積より大きいものであってもよい。
ガイド孔は、ガイド孔の少なくとも一部においてテーパ面を有してもよい。
電子部品固定構造は、回路を含む基板を備え、基板は、リードを通すリード接続孔を有し、基板のリード接続孔と、ガイド部材のガイド孔とはそれぞれ対応する位置に設けられてもよい。
電子部品固定構造は、電子部品の熱を熱伝導によって放散させる冷却部材をさらに備え、電子部品は、ガイド部材と冷却部材との間に配置され、ガイド部材は冷却部材に固定されてもよい。
電子部品と冷却部材とは螺合されないものであってもよい。
ガイド部材および冷却部材によって、電子部品の全体が覆われてもよい。
電子部品固定構造は、ガイド部材と電子部品との間に配置される弾性体をさらに備え、ガイド部材は、弾性体を介し、電子部品を冷却部材に向けて付勢してもよい。
弾性体は板バネであってもよい。
弾性体は冷却部材に接触してもよい。
ガイド部材は、電子部品の移動を規制する突起を有してもよい。
ガイド部材は、電動圧縮機の出力端子構造の一部を構成してもよい。
電子部品は、IGBT、コンデンサおよびコイルのうち少なくとも1つを含んでもよい。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る電動圧縮機用の電子部品固定構造によれば、ガイド孔が電子部品のリードの位置を規制するので、その後に基板を取り付ける作業を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電子部品固定構造の構成を概略的に示す一部断面図である。
【図2】図1の電子部品固定構造の構成を概略的に示す斜視図である。
【図3】実施の形態1および2におけるガイド孔の形状の相違を示す図である
【図4】本発明の実施の形態3に係る電子部品固定構造の構成を概略的に示す斜視図である。
【図5】コンデンサおよびコイルを電子部品収容空間内で固定するための構成を概略的に示す一部断面図である。
【図6】図5の突起の形状を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態4に係る電子部品固定構造の構成を概略的に示す一部断面図である。
【図8】本発明の実施の形態5に係る電子部品固定構造の構成を概略的に示す一部断面図である。
【図9】本発明の実施の形態6に係る電子部品固定構造の構成を概略的に示す斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態7に係る電子部品固定構造の構成を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る電動圧縮機用の電子部品固定構造100の構成を概略的に示す一部断面図である。図2は、電子部品固定構造100の構成を概略的に示す斜視図である。(なお、図2では簡明のため、基板60の図示を省略している。また、出力端子32の形状も簡略化して平面的に示しているが、実際は通常のメス端子の形状を有する。)
【0012】
電動圧縮機用の電子部品固定構造100は、たとえば電動圧縮機の駆動回路に用いられる電子部品を固定する。電子部品固定構造100は、冷却部材10と、電子部品であるIGBT20(スイッチング素子)とを備えており、冷却部材10にIGBT20が固定されている。冷却部材10は、熱伝導率の比較的高い材料、たとえばアルミニウムからなり、IGBT20の動作に伴って発生する熱を、熱伝導によって放散させる。また、冷却部材10は、IGBT20を支持する支持部材としても機能する。IGBT20は複数のリード21を備える。
【0013】
なお、電子部品としては、複数のリードを有する電子部品であればIGBTでなくともよく、たとえばMOSFET等の他のスイッチング素子や、スイッチング素子を含むIPM(Intelligent Power Module)であってもよい。また、たとえばコンデンサやコイルであってもよい。
【0014】
電子部品固定構造100は、IGBT20のリード21の位置決めを行うガイド部材30を備える。ガイド部材30は樹脂製であり、IGBT20に対向する面に凹部が形成され、凹部内にIGBT20が配置され、螺合部材であるネジ70を介して冷却部材10に固定される。このような構成により、冷却部材10およびガイド部材30は、IGBT20を収容する空間である電子部品収容空間50を形成し、IGBT20の全体を覆う。ガイド部材30の表面のうち、電子部品収容空間50を構成する面(すなわちIGBT20に対向する面)を内表面34とし、これと反対側の面を外表面35とする。IGBT20は、電子部品収容空間50の内部において、ガイド部材30と冷却部材10との間に配置される。
【0015】
ガイド部材30は複数のガイド孔31を有する。ガイド孔31はリード21を通すための貫通孔であり、内表面34から外表面35へと貫通する。内表面34側の開口(すなわちIGBT20に対向する側の開口)を内側開口31aとし、他方の開口を外側開口31bとする。このようなガイド孔31にリード21を通すことにより、リード21の位置決めが行われる。
【0016】
実施の形態1においては、内側開口31aおよび外側開口31bはいずれも円形であり、ガイド孔31の内表面は等径の円筒面を構成する。すなわち、内側開口31aおよび外側開口31bは互いに等しい径を有し、かつ等しい開口面積を有する。また、ガイド孔31の軸方向に垂直な平面による断面の開口断面積は、断面の軸方向位置に関わらず一定である。
【0017】
ガイド部材30には出力端子32が固定されている。出力端子32はリード33を備える。出力端子32は、電動圧縮機の電動モータへの配線(図示せず)が接続される端子であり、U相、V相、W相のそれぞれについて設けられる。このように、ガイド部材30は各相の出力端子32を固定する固定部材としても機能しており、各相の出力端子32を含む出力端子構造の一部を構成する。すなわち、出力端子構造に含まれる樹脂部材が、IGBT20を覆うように拡大または延長されたものがガイド部材30であるということができる。
なお、出力端子32のリード33は、ガイド部材30が成形される際にガイド部材30に固定される。このため、出力端子32のリード33に対応するガイド孔は、ガイド部材30には設けられない。
【0018】
ガイド部材30とIGBT20との間には、弾性体として板バネ40が配置される。ガイド部材30は、この板バネ40を介して、IGBT20を冷却部材10に向けて付勢する。なお、実施の形態1では、IGBT20と冷却部材10とは螺合されておらず、また、IGBT20を冷却部材10に直接的に固定する他の部材も設けられない。しかしながら、板バネ40の付勢によってIGBT20が冷却部材10に押し付けられるので、IGBT20を冷却部材10およびガイド部材30に対して固定することができる。
【0019】
板バネ40がIGBT20に接触する位置または領域は、IGBT20を冷却部材10に押し付けることができる位置または領域であればどこであってもよいが、たとえばIGBT20の重心に対応する位置20aまたはその位置を含む領域とすれば、IGBT20をよりしっかりと固定することができる。ここで、「IGBT20の重心に対応する位置」とは、たとえばIGBT20の重心を通る直線のうち板バネ40がIGBT20に加える力の方向に平行な直線上の位置である。
【0020】
電子部品固定構造100はさらに基板60を備える。基板60は回路(図示せず)を含み、この回路に接続されるリードを通すための複数のリード接続孔61を有する。リード接続孔61はIGBT20のリード21または出力端子32のリード33を通すための貫通孔である。リード接続孔61の内表面は、たとえば等径の円筒面を構成する。なお、リード21はリード接続孔61の内部または周辺において基板60にはんだ付け等により接続されるが、これは図示を省略する。
【0021】
ガイド孔31は、それぞれ、基板60のリード接続孔61のうち1つと対応する位置に設けられる。たとえば図1の例では、2つのガイド孔31の中心軸と、これらのそれぞれに対応するリード接続孔61の中心軸とが一致するように設けられている。ただし、このように厳密に中心軸が一致しなくともよく、たとえば対応するガイド孔31およびリード接続孔61を通して外側(図1では基板60の上側)から電子部品収容空間50の内部が見えるような位置関係にあればよい(すなわち、対応するガイド孔31およびリード接続孔61を通過する直線が存在するような位置関係にあればよい)。
また、対応するガイド孔31およびリード接続孔61は、同一のリード21を通している。
【0022】
ガイド孔31の内側開口31aの径(または開口面積)は、リード接続孔61の径(または開口面積)よりも大きい。このため、従来のようにIGBT20のリード21に直接基板60を取り付ける作業よりも、本実施形態のようにリード21にガイド部材30を取り付ける作業のほうが容易である。また、まずガイド孔31にリード21を通すことによりガイド孔31がリード21の位置を規制するので、その後に基板60を取り付ける作業も容易となり、全体的に組み付け工数を削減して作業効率を向上させることができる。
【0023】
また、板バネ40を介してIGBT20を固定するので、IGBT20を固定するために用いられるネジ等の螺合部材を不要とすることができる。とくに、従来の構成では出力端子32を固定するために2本、IGBT20を固定するために2本、合計4本の螺合部材が必要であったが、本実施形態によれば図2に示すようにガイド部材30を固定するための3本の螺合部材で十分であり、強度を確保しつつ螺合部材の必要数を低減することができ、原価を低減できる。
【0024】
また、IGBT20の固定を螺合部材でなく板バネ40によって行うため、IGBT20全体により均等に面圧を与えて冷却部材10に押し付けることができ、冷却性が向上する。とくに、通常のIGBTでは素子中央に螺合孔を設けられないので、螺合部材を用いる場合はIGBT20の中央付近に直接的に圧力を加えることができないが、本実施形態ではIGBT20の重心またはその周辺に直接圧力を加えて効率的に冷却することができる。
【0025】
また、冷却性の向上に伴い、電動圧縮機をより広い負荷範囲で運転させることができ、運転領域が拡大する。また、低電圧・大電流の状態でも冷却効果を維持できるので、電圧守備範囲が拡大する。さらに、広い電圧範囲に対応できるため、将来のコストを低減することができる。
【0026】
また、上述のようにガイド部材30は出力端子構造の一部を構成するものであるが、このガイド部材30が出力端子32およびIGBT20双方の固定に用いられるので、出力端子32とIGBT20とを近い位置に配置することができ、これらの間のインダクタンス成分を低減することができる。
【0027】
また、板バネ40を金属で構成することにより、高温時でもIGBT20を固定する圧力を維持することができる。たとえば、板バネ40を用いずに樹脂製の部材のみでIGBT20を固定する場合、IGBT20が高温になると、高温部分に接触する部位において樹脂部材の強度が落ち、機器の振動によりIGBT20の位置がずれることがある(クリープ現象)が、本実施形態では板バネ40によってそのような事態を回避できる。
【0028】
実施の形態2.
実施の形態2は、実施の形態1においてガイド孔31の形状を変更するものである。
図3に、実施の形態1および2におけるガイド孔の形状の相違を示す。図3(a)は実施の形態1のガイド孔31であり、図1に示すものと同一の形状である。
【0029】
図3(b)は、本発明の実施の形態2に係るガイド部材130に設けられたガイド孔131の構成を示す断面図である。ガイド孔131の内表面は円筒面ではなく、内側開口131aから外側開口131bに向けて狭まるテーパ面131cとなっている。すなわち、内側開口131aの径(または開口面積)は、外側開口131bの径(または開口面積)よりも大きい。また、ガイド孔131の断面積は、内側開口131aから外側開口131bに向けて狭くなる。
【0030】
このような構成とすれば、内側開口131aの径をより大きくすることができるので、IGBT20のリード21にガイド部材130を取り付ける作業をさらに容易にすることができる。一方で、外側開口131bの径をより小さくすることができるので、リード21の位置をより厳密に規制することができ、リード21に基板60を取り付ける作業をさらに容易にすることができる。
【0031】
図3(c)は、実施の形態2の変形例に係るガイド部材230に設けられたガイド孔231の構成を示す断面図である。ガイド孔231の内表面は、内側開口231a側に形成されるテーパ面231dと、外側開口231b側に形成される円筒面231eとによって構成され、テーパ面231dおよび円筒面231eは接続部231cにおいて接続されている。テーパ面231dは、内側開口231aから接続部231cに向けて(すなわち外側開口231bに向けて)狭まる。また、内側開口231aの径(または開口面積)は、外側開口231bの径(または開口面積)よりも大きい。
【0032】
このような構成においても、図3(b)に示す構成と同様に、内側開口231aの径をより大きく、外側開口231bの径をより小さくすることができるので、ガイド部材230および基板60を取り付ける作業を容易にすることができる。
【0033】
実施の形態3.
実施の形態3は、実施の形態1において、固定される電子部品を複数とするものである。
図4は、本発明の実施の形態3に係る電子部品固定構造300の構成を概略的に示す斜視図である。図4は実施の形態1の図2に相当する。図4では簡明のため、基板60および突起335〜338(図5参照)の図示を省略している。
実施の形態3では、電子部品収容空間350の内部に、IGBT20だけでなく、他の電子部品としてコンデンサ320およびコイル325も収容される。IGBT20は実施の形態1と同様に板バネ40によって固定される。
【0034】
図5は、コンデンサ320およびコイル325を電子部品収容空間350内で固定するための構成を概略的に示す一部断面図であり、図1と平行な断面によるものである。ガイド部材330は、4本の突起335〜338を有する。突起は2本で一対となり、対応する電子部品をガイド部材330に固定する。図5の例では、突起335および突起336がコンデンサホルダを構成してコンデンサ320を固定する。また、突起337および突起338がコイルケースを構成してコイル325を固定する。
【0035】
図6は、突起の形状を示す斜視図である。図6には突起335および336のみを示すが、突起337および338も同様の形状を有する。突起335は、ガイド部材330の内表面334から電子部品収容空間350内に向かって(すなわち冷却部材10に向かって)延びる軸部335aと、軸部335aの先端から対となる突起336に向かって延びる爪部335bとを含む。また、対となる突起336も同様に、内表面334から延びる軸部336aと、軸部336aの先端から突起335に向かって延びる爪部336bとを含む。
【0036】
突起335〜338はコンデンサ320およびコイル325を固定する。とくに、突起335の軸部335aは、コンデンサ320の、水平方向(内表面334と平行な方向)かつ突起336から離れる方向への移動を規制する。同様に、突起336の軸部336aは、コンデンサ320の、水平方向かつ突起335から離れる方向への移動を規制する。また、爪部335bおよび336bは、ともに内表面334との間にコンデンサ320を挟持し、これによってコンデンサ320の鉛直方向(内表面334と垂直な方向)への移動を規制する。
突起337および338も、上述の突起335および336と同様にしてコイル325の移動を規制する。
【0037】
また、コンデンサ320のリード321およびコイル325のリード326も、実施の形態1(図1)におけるIGBT20のリード21と同様に、ガイド部材330のガイド孔331および基板60のリード接続孔(図示せず)を通して基板60に接続されている。
【0038】
このような構成によれば、単一の部材であるガイド部材330によって、複数の電子部品を相対的に固定するので、基板60を取り付ける作業をさらに容易にすることができる。
とくに、従来のように螺合部材等を用いて複数の電子部品を個別に固定する構成では、それぞれの電子部品の位置が多少ずれる場合があり、各電子部品の相対的な位置関係が一定しないため、すべてのリードを基板のリード接続孔に通す作業が困難であった。これに対し、本実施形態では、固定された位置にガイド孔331を有するガイド部材330によって複数の電子部品を固定するので、各電子部品のリードをすべて相対的に決められた位置に精密に位置決めすることができ、基板60を取り付ける作業をさらに容易にすることができる。
【0039】
実施の形態3において、次のような変形を施すことができる。
実施の形態3では、IGBT20の固定を板バネ40によって行うが、これはコンデンサ320等と同様に突起によって行ってもよい。また、コンデンサ320およびコイル325の固定を突起でなく板バネによって行ってもよい。さらに、同一の電子部品に対して板バネと突起との双方を用いて固定してもよい。
【0040】
また、1つの電子部品に対応する突起の数は、実施の形態3では2本であるが、これは異なる数であってもよい。たとえば3本の突起が1つの電子部品を3方向から囲んでもよい。
【0041】
実施の形態4.
実施の形態4は、実施の形態1において、板バネ40の形状を変更するものである。
図7は、本発明の実施の形態4に係る電子部品固定構造400の構成を概略的に示す一部断面図であり、図1に対応する。
【0042】
弾性体440は、板バネ部440aと、冷却部440bとを備える。板バネ部440aは実施の形態1(図1)の板バネ40と同様の構成および作用を有し、IGBT20を冷却部材10に押し付ける。冷却部440bは、板バネ部440aの周縁部から冷却部材10に向かって延び、冷却部材10に接触する。なお、冷却部440bはリード21に接触しない構成であればどのような形状であってもよいが、たとえば所定の幅を持つ脚状の構造とすることができる。
【0043】
このような構成によれば、IGBT20で発生した熱のうち一部は、実施の形態1と同様にIGBT20から直接冷却部材10に伝わり、他の一部は、板バネ部440aから冷却部440bを介して冷却部材10に伝わる。したがって、複数の経路でIGBT20の熱を放散させることができ、より効率的に冷却を行うことができる。
【0044】
実施の形態5.
実施の形態5は、実施の形態1において、ガイド部材30の内表面34に放熱層を設けるものである。
図8は、本発明の実施の形態5に係る電子部品固定構造500の構成を概略的に示す一部断面図であり、図1に対応する。
【0045】
ガイド部材530の内表面534には、放熱層536が設けられている。放熱層536は金属を含む。放熱層536は、たとえば接着によってガイド部材530に固定され接触するが、これは接触さえしていれば接着されないものであってもよい。放熱層536は、板バネ40と、冷却部材10との双方に接触する。また、放熱層536には、ガイド部材530のガイド孔531と整合する位置に、リード21を通す孔536aが設けられている。
なお、図8の例では放熱層536は内表面534の全体を覆うが、必ずしも内表面534の全体を覆う必要はなく、板バネ40と冷却部材10との双方に接触する形状であればどのようなものであってもよい。
【0046】
このような構成によれば、IGBT20で発生した熱のうち一部は、実施の形態1と同様にIGBT20から直接冷却部材10に伝わり、他の一部は、板バネ40から放熱層536を介して冷却部材10に伝わる。したがって、複数の経路でIGBT20の熱を放散させることができ、より効率的に冷却を行うことができる。
【0047】
実施の形態6.
実施の形態6は、実施の形態1において、ガイド孔の構成を変更するものである。
図9は、実施の形態6に係る電子部品固定構造600の構成を概略的に示す斜視図である。図9は実施の形態1における図2に対応するものであるが、簡明のため破線部分を省略する。
【0048】
ガイド部材630は2つのガイド孔631を有する。図9の例では、ガイド孔631はガイド部材630の表面において互いに平行に直線状に延びる開口を有し、開口の長さは互いに等しい。ただし、開口の形状は、リード21の位置決めをある程度行える形状であればこれに限らない。また、ガイド孔631はそれぞれ複数のリード21を通す。図9の例では、それぞれ3本のリード21を通している。このような構成により、リード21の位置決めが行われる。実施の形態1と比較すると、複数のリード21をまとめて1つのガイド孔631に通すことができるので、リード21にガイド部材630を取り付ける作業がさらに容易になる。また、ガイド孔631の数が少ないので、ガイド部材630の製造工程を簡素にすることができる。
【0049】
実施の形態7.
実施の形態7は、実施の形態6において、さらにガイド孔の構成を変更するものである。
図10は、実施の形態7に係る電子部品固定構造700の構成を概略的に示す斜視図である。
【0050】
ガイド部材730は単一のガイド孔731を有し、このガイド孔731がすべてのリード21を通す。図10の例では、ガイド孔731は、実施の形態6(図9)に示す2つのガイド孔631の中央部分を連結した形状(すなわちH字形状)の開口を有する。ただし、開口の形状は、リード21の位置決めをある程度行える形状であればこれに限らない。
このような構成により、リード21の位置決めが行われる。実施の形態1と比較すると、すべてのリード21をまとめて1つのガイド孔731に通すことができるので、リード21にガイド部材730を取り付ける作業がさらに容易になる。また、ガイド孔731の数が少ないので、ガイド部材730の製造工程を簡素にすることができる。
【0051】
上述の実施の形態1〜7に係る構成は、任意の組合せで実施することが可能である。たとえば、実施の形態2のようにガイド孔の内表面をテーパ面とし、実施の形態3のように複数の電子部品を収容してもよい。あるいは、実施の形態3のように複数の電子部品を収容し、ある電子部品については実施の形態1の板バネ40を用い、別の電子部品については実施の形態4の弾性体440を用いてもよい。
【0052】
さらに、実施の形態3(図4)のように複数の電子部品を収容する構成において、IGBT20に対しては実施の形態6(図9)のように2つのガイド孔を設け、コンデンサ320およびコイル325に対してはそれぞれ1つのガイド孔を設けてもよく、また実施の形態7(図10)のようにすべてのガイド孔を連結し、IGBT20、コンデンサ320およびコイル325のリードをすべて単一のガイド孔に通してもよい。
【0053】
また、実施の形態1〜7において、ガイド部材および冷却部材は電子部品の全体を覆うが、これは全体を覆わないものであってもよい。たとえば、実施の形態1において、電子部品収容空間50は、ガイド孔31と比較して開口面積の大きい外部開口をさらに有してもよい。
【符号の説明】
【0054】
10 冷却部材、20 IGBT(電子部品)、21 IGBTのリード、
30、130、230、330、530、630、730 ガイド部材(34、334、534 内表面;35 外表面)、
31、131、231、331、531、631、731 ガイド孔(31a、131a、231a 内側開口;31b、131b、231b 外側開口;131c、231d テーパ面;231c 接続部;231e 円筒面)、
32 出力端子、33 出力端子のリード、
40、440 板バネ(弾性体)(440a 板バネ部、440b 冷却部)、
50、350 電子部品収容空間、60 基板、61 リード接続孔、70 ネジ、
100、300、400、500、600、700 電子部品固定構造、
320 コンデンサ(電子部品)、321 コンデンサのリード、325 コイル(電子部品)、326 コイルのリード、335〜338 突起(335a、336a 軸部;335b、336b 爪部)、536 放熱層、536a リードを通す孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動圧縮機用の電子部品固定構造であって、
前記電子部品固定構造は、複数のリードを有する電子部品と、前記リードの位置決めを行うガイド部材とを備え、
前記ガイド部材は樹脂製であり、
前記ガイド部材は、前記リードを通すガイド孔を有する
電動圧縮機用の電子部品固定構造。
【請求項2】
前記ガイド孔は、前記電子部品に対向する内側開口と、他方の外側開口とを有し、
前記内側開口の開口面積は、前記外側開口の開口面積より大きい
請求項1に記載の電子部品固定構造。
【請求項3】
前記ガイド孔は、前記ガイド孔の少なくとも一部においてテーパ面を有する、請求項2に記載の電子部品固定構造。
【請求項4】
前記電子部品固定構造は、回路を含む基板を備え、
前記基板は、前記リードを通すリード接続孔を有し、
前記基板の前記リード接続孔と、前記ガイド部材の前記ガイド孔とはそれぞれ対応する位置に設けられる
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子部品固定構造。
【請求項5】
前記電子部品固定構造は、前記電子部品の熱を熱伝導によって放散させる冷却部材をさらに備え、
前記電子部品は、前記ガイド部材と前記冷却部材との間に配置され、
前記ガイド部材は前記冷却部材に固定される
請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子部品固定構造。
【請求項6】
前記電子部品と前記冷却部材とは螺合されない、請求項5に記載の電子部品固定構造。
【請求項7】
前記ガイド部材および前記冷却部材によって、前記電子部品の全体が覆われる、請求項5または6に記載の電子部品固定構造。
【請求項8】
前記電子部品固定構造は、前記ガイド部材と前記電子部品との間に配置される弾性体をさらに備え、
前記ガイド部材は、前記弾性体を介し、前記電子部品を前記冷却部材に向けて付勢する
請求項5〜7のいずれか一項に記載の電子部品固定構造。
【請求項9】
前記弾性体は板バネである、請求項8に記載の電子部品固定構造。
【請求項10】
前記弾性体は前記冷却部材に接触する、請求項8または9に記載の電子部品固定構造。
【請求項11】
前記ガイド部材は、前記電子部品の移動を規制する突起を有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の電子部品固定構造。
【請求項12】
前記ガイド部材は、前記電動圧縮機の出力端子構造の一部を構成する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の電子部品固定構造。
【請求項13】
前記電子部品は、IGBT、コンデンサおよびコイルのうち少なくとも1つを含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の電子部品固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−26320(P2013−26320A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157841(P2011−157841)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】