説明

電動圧縮機

【課題】電動圧縮機の組み立ての作業効率を向上すると共に、加熱かしめ方式で生じた絶縁被膜の溶融カスが圧縮機に悪影響を与えないようにする。
【解決手段】複数の相線35U,35V,35Wは、束ねられて相線束36を構成している。相線35U,35V,35Wの先端部は、加熱かしめされた導電リング37によって電気的に接続されており、相線束36の先端に各相を電気的に接続した結線接続部361が形成されている。クラスタブロック32には格納室38が貫設されている。格納室38には結線接続部361が挿入されている。結線接続部361は、格納室38の挿入口381から格納室38に挿入されて格納されている。挿入口381は、ゴム製の筒部材39によって閉鎖されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータが外殻の内部に収容されており、複数の相コイルからそれぞれ引き出された複数の相線が束ねられて相線束が形成されており、前記相線束の先端に各相を電気的に接続した結線接続部が形成されて中性点が構成されている電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の電動圧縮機では、複数の相コイルからそれぞれ引き出された複数の引き出し線がクラスタ内の複数の接続端子に別々に接続されている。又、中性点を構成する複数の相線を束ねた相線束は、各相線束の先端部が非接続端子(結線接続部)にまとめて連結されている。
【0003】
中性点がステータの内径側に入り込んだ場合には、本来はこの入り込み領域に配置される部材の組み付けが妨げられる。特許文献1では、中性点がふらつかないようにコイルエンドに縛り糸によって縛り付けられている。
【0004】
又、この種の電動圧縮機では、通常運転時には電動圧縮機内を冷媒ガスのみが循環しているが、運転を停止した際に、ハウジング内に残留した冷媒ガスが冷却されると、ハウジング内には液化した冷媒(液冷媒)が溜まることがある。
【0005】
このため、中性点における結線接続部がハウジング内に溜まった液冷媒に浸漬すると、液冷媒を介して結線接続部とハウジングとが導通してしまう。そして、この状態で電動圧縮機を運転開始すると、結線接続部に流れる電流が液冷媒を介してハウジングに漏洩してしまう虞がある。
【0006】
特許文献2では、回転電機の中性点線の先端部と巻線との短絡を防止するために、中性点線の先端部に嵌められた金属スリーブを通電と加圧とによってかしめて中性点端子を形成し、この中性点端子に絶縁キャップを被せた発明が開示されている。この電気式かしめ方式(加熱かしめ方式)では、中性点線の絶縁被膜(樹脂)が溶かされて中性点端子が形成されるため、絶縁被膜を予め取り除いておく必要がなく、中性点端子の形成が容易である。又、中性点端子(結線接続部)が絶縁キャップによって被覆されて電流漏洩が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平5−38368号公報
【特許文献2】特開2005−278289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、中性点のふらつきを防止するために、特許文献1に開示の縛り方式では、縛り付ける手間が掛かり、電動圧縮機の組み立ての作業効率が悪くなる。
又、特許文献2に開示の電気式かしめ方式では、溶かされた絶縁被膜が再凝固したり炭化したりして中性点端子(結線接続部)付近に溶融カスとして残り、この溶融カスが剥がれることがある。剥がれた溶融カスは、異物詰まり等をもたらして圧縮機に悪影響を与える。
【0009】
本発明は、電動圧縮機の組み立ての作業効率を向上すると共に、加熱かしめ方式で生じた絶縁被膜の溶融カスが圧縮機に悪影響を与えないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、電動モータ及び前記電動モータにより駆動されて冷媒の圧縮動作を行なう圧縮機構部が外殻の内部に収容されており、前記電動モータの固定子を構成する複数の相コイルからそれぞれ引き出された複数の引き出し線が前記外殻内に配置されたクラスタブロック内のコネクタに連結されており、前記コネクタは、前記外殻に固定された導電部材を経由して前記外殻の外部にある前記電動モータの駆動制御部と電気的に接続されており、前記複数の相コイルからそれぞれ引き出された複数の相線が束ねられて相線束が形成されており、前記相線束の先端に各相を電気的に接続した結線接続部が加熱かしめ方式によって形成されて中性点が構成されている電動圧縮機を対象とし、請求項1の発明では、前記クラスタブロックの外面に挿入口を有する格納室が形成されており、前記結線接続部は、前記挿入口から前記格納室に挿入されており、前記結線接続部を通された前記挿入口は、閉鎖部材によって閉鎖されている。
【0011】
結線接続部がクラスタブロック内の格納室に格納されていると共に、格納室の挿入口が閉鎖部材によって閉鎖されているため、加熱かしめ方式によって生じた絶縁被膜の溶融カスが格納室から外部に出ることはなく、絶縁被膜の溶融カスが圧縮機に悪影響を与えることはない。又、格納室に結線接続部を格納するのは簡単であり、電動圧縮機の組み立ての作業効率が向上する。
【0012】
好適な例では、前記閉鎖部材は、前記結線接続部を挿通する筒孔を有する筒部材である。
相線束が筒孔に通された状態で結線接続部が格納室に格納される。
【0013】
好適な例では、前記筒部材は、第1凹片と第2凹片とを接合して構成されている。
筒部材の分割構造は、筒孔に相線束を通す作業を容易にする。
好適な例では、前記筒部材は、前記筒孔に達すると共に、前記筒部材の一端から他端に達する切れ目を備えており、前記筒部材は、前記切れ目から展開可能である。
【0014】
筒部材の展開可能な構造は、筒孔に相線束を通す作業を容易にする。
好適な例では、前記筒部材は、テーパ外周面を有し、前記テーパ外周面は、挿入方向に向かうにつれて縮径する。
【0015】
筒部材にテーパ外周面を設けた構成は、相線束を通した筒部材を挿入口に挿入する作業を容易にする。
好適な例では、前記閉鎖部材は、ゴム製である。
【0016】
ゴムは、挿入口を閉鎖する部材として最適である。
好適な例では、前記圧縮機構部と、前記電動モータと、前記電動モータの駆動制御部とがこれらの順に直列に配置されており、前記複数の相線は、前記圧縮機構部側の前記固定子の端面側から引き出されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電動圧縮機は、組み立ての作業効率を向上すると共に、加熱かしめ方式で生じた絶縁被膜の溶融カスが圧縮機に悪影響を与えないようにすることができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態を示す電動圧縮機全体の側断面図。
【図2】図1のA−A線拡大断面図。
【図3】(a)は、部分拡大平断面図。(b)は、筒部材39の斜視図。(c)は、凹片43,44の斜視図。
【図4】(a),(b),(c)は、加熱かしめ方式を説明するための説明図。
【図5】第2の実施形態を示し、(a)は、部分拡大平断面図。(b)は、筒部材39Aの斜視図。(c)は、凹片43A,44Aの斜視図。
【図6】第3の実施形態を示し、(a)は、部分拡大平断面図。(b)は、筒部材39Bの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。
図1に示す電動圧縮機10は、スクロール型電動圧縮機である。電動圧縮機10の外殻11は、モータハウジング12と、モータハウジング12の前端に連結されたフロントハウジング13とから構成されている。
【0020】
電動モータMを構成する回転子14は、回転軸33に止着されており、電動モータMを構成する固定子15は、モータハウジング12の内周面に嵌合して固定されている。固定スクロール17と支持ブロック34との間で旋回可能に収容されている可動スクロール16は、電動モータMを構成する回転軸33の回転によって旋回し、可動スクロール16と固定スクロール17との間の圧縮室18の容積が減少する。可動スクロール16及び固定スクロール17は、冷媒を吸入して吐出する圧縮機構部Pを構成する。
【0021】
モータハウジング12には導入ポート121が設けられている。導入ポート121は、外部冷媒回路19に接続されており、外部冷媒回路19から冷媒(ガス)が導入ポート121を介してモータハウジング12内へ導入される。モータハウジング12内へ導入された冷媒は、可動スクロール16の旋回(吸入動作)によって、モータハウジング12の内周面と固定子15の外周面との間の通路〔図示略〕及び吸入ポート20を経由して圧縮室18へ吸入される。圧縮室18内の冷媒は、可動スクロール16の旋回(吐出動作)によって、圧縮されながら吐出ポート171から吐出弁21を押し退けて、フロントハウジング13内の吐出室22へ吐出される。吐出室22内の冷媒は、フロントハウジング13に形成された排出ポート131から外部冷媒回路19へ流出してモータハウジング12内へ還流する。
【0022】
図2に示すように、電動モータMを構成する固定子15は、環状のステータコア23と、ステータコア23に施されたU相コイル24Uと、V相コイル24VとW相コイル24Wとからなる。
【0023】
図1にはフロント側のコイルエンド241とリヤ側のコイルエンド242とが示されている。コイルエンド241は、ステータコア23のフロント側の端面231上にあり、コイルエンド242は、ステータコア23のリヤ側の端面232上にある。
【0024】
電動モータMを構成する回転子14は、ロータコア25と、ロータコア25内に埋設された複数の永久磁石26とからなる。ロータコア25の中心部には軸孔251が貫設されており、軸孔251には回転軸33が通されて固定されている。
【0025】
モータハウジング12の後端面にはカバー27が止着されている。カバー27内には電動モータMの駆動制御部であるインバータ28が取り付けられている。カバー27によって被覆されるモータハウジング12の被覆端面には挿入孔29が貫設されている。挿入孔29には保持具30が嵌合して固定されている。
【0026】
図3(a)に示すように、保持具30には複数本の導電ピン31U,31V,31Wが挿通して保持されており導電部材を形成している。外殻11(モータハウジング12)の外部における導電ピン31U,31V,31Wの外部端部は、図示しない導電線を介してインバータ28〔図1参照〕に電気的に接続されている。
【0027】
図1に示すように、電動圧縮機10は、冷媒を吸入して吐出する圧縮機構部Pと、電動モータMと、電動モータMの駆動制御部としてのインバータ28とをこれらの順に直列に配置して構成されている。
【0028】
図2に示すように、ステータコア23の外周面230上には絶縁樹脂製のクラスタブロック32が止着されている。クラスタブロック32には円周面形状の凹部320が凹み形成されている。クラスタブロック32は、図示しない取り付け手段によってステータコア23の外周面230に取り付けられており、この取り付け状態では凹部320は、ステータコア23の円周面形状の外周面230に接合している。
【0029】
図3(a)に示すように、クラスタブロック32内にはU相コネクタ321U、V相コネクタ321V及びW相コネクタ321Wが互いに並列状態で収容されており、各コネクタ321U,321V,321Wには導電ピン31U,31V,31Wが1対1に接続されている。
【0030】
図2に示すように、U相コイル24Uに連なる引き出し線240Uは、ステータコア23のフロント側のコイルエンド241から引き出されてU相コネクタ321Uに接続されている。V相コイル24Vに連なる引き出し線240Vは、コイルエンド241から引き出されてV相コネクタ321Vに接続されている。W相コイル24Wに連なる引き出し線240Wは、コイルエンド241から引き出されてW相コネクタ321Wに接続されている。各コイルの導線は、複線構造(本実施形態では二重線構造)であり、複線の各単線は、エナメル樹脂で被覆されている。各コイルの導線の複線構造は、低電圧化を図るためのものである。
【0031】
図3(a)に示すように、引き出し線240Uと導電ピン31Uとは、U相コネクタ321Uを介して電気的に接続されている。引き出し線240Vと導電ピン31Vとは、V相コネクタ321Vを介して電気的に接続されており、引き出し線240Wと導電ピン31Wとは、W相コネクタ321Wを介して電気的に接続されている。
【0032】
図1に示すインバータ28から導電ピン31U,31V,31W〔導電ピン31V,31Wは図3(a)参照〕、コネクタ321U,321V,321W及び引き出し線240U,240V,240Wを介してコイル24U,24V,24W〔図2参照〕へ電力供給が行なわれると、回転子14及び回転軸33がステータコア23の内径内(ステータコア23の内周面233より内側)で一体的に回転する。
【0033】
図2に示すように、U相コイル24Uから引き出された相線35U、V相コイル24Vから引き出された相線35V、及びW相コイル24Wから引き出された相線35Wは、束ねられて相線束36を構成している。複数の相線35U,35V,35Wは、圧縮機構部P〔図1参照〕側のステータコア23の端面231側のコイルエンド241から引き出されている。
【0034】
図3(a)に示すように、相線束36を構成する相線35U,35V,35Wの先端部は、金属製の導電リング37のかしめ変形によって電気的に結合されている。これにより、相線束36の先端に各相を電気的に接続した結線接続部361が形成されて中性点が構成されている。
【0035】
図4(a)は、エナメル樹脂製の絶縁被膜を施されている相線35U,35V,35Wを束ねた相線束36を示し、図4(b)は、相線束36の先端部を導電リング37に通した状態を示す。図4(c)は、加熱かしめ方式によって導電リング37をかしめ変形した状態を示す。これにより、かしめ変形した導電リング37によって締め付けられた相線束36の部位における絶縁被膜が溶けて相線35U,35V,35W同士が電気的に接続される。
【0036】
図3(a)に示すように、クラスタブロック32には袋小路形状の格納室38がコネクタ321U,321V,321Wと並列状態に形成されている。格納室38は、クラスタブロック32の外面である端面322に開口する挿入口381を有している。格納室38には結線接続部361が挿入されている。結線接続部361は、挿入口381から挿入されている。
【0037】
挿入口381にはゴム製の筒部材39が嵌め込まれている。筒部材39は、挿入口381の周面と相線束36との間の隙間を無くすように挿入口381を閉鎖している。筒部材39は、筒方向の中央部に形成されたフランジ40と、テーパ外周面41と、フランジ40から見てテーパ外周面41とは反対側に円周面42とを有する。テーパ外周面41は、挿入方向Rに向かうにつれて縮径する。
【0038】
格納室38の内周面には環状溝382が形成されており、環状溝382にはフランジ40が嵌め込まれている。
図3(b)に示すように、閉鎖部材である筒部材39は、横断面形状が半円弧形状の第1凹片43と、横断面形状が半円弧形状の第2凹片44とを接合して構成されている。第1凹片43と第2凹片44とは同形同大であり、図3(c)は、接合前の凹片43,44を示す。
【0039】
次に、第1の実施形態の作用を説明する。
第1凹片43と第2凹片44とは、導電リング37の加熱かしめによって結線接続部361を形成された相線束36を間に挟んで結合されて筒部材39に構成される。筒部材39の筒孔391に相線束36を通した状態で結線接続部361が挿入口381から格納室38へ挿入されると共に、筒部材39が挿入口381に嵌入される。
【0040】
格納室38に挿入された結線接続部361は、格納室38の挿入口381から可及的に遠くへ差し込まれる。格納室38の挿入口381から可及的に遠くへ結線接続部361を挿入することにより、相線35U,35V,35Wが途中で弛むことなく引き延ばされ、相線35U,35V,35Wがステータコア23の内径側に位置ずれすることが防止される。相線35U,35V,35Wがコイルエンド241から引き出されているため、引き出し線240U,240V,240Wがステータコア23の内径内に入り込むようなことはない。
【0041】
又、結線接続部361が格納室38に挿入されて挿入口381が筒部材39によって閉鎖されているため、加熱かしめ方式によって結線接続部361に生じた絶縁被膜の溶融カスが格納室38から外部へ出てくることはない。
【0042】
第1の実施形態では以下の効果が得られる。
(1)結線接続部361が格納室38に格納され、且つ挿入口381が筒部材39によって閉鎖されている状態では、一度溶融した絶縁被膜の溶融カスが格納室38から外部へ出てくることはない。そのため、絶縁被膜の溶融カスが圧縮機に悪影響を与えることはない。
【0043】
(2)結線接続部361が格納室38に格納された状態では、相線束36がステータコア23の内径側に入り込むことはなく、この入り込み領域に配置される部材(本実施形態では例えば支持ブロック34)の組み付けが妨げられることはない。
【0044】
(3)結線接続部361を格納室38に挿入すると共に、挿入口381に筒部材39を嵌入するだけでクラスタブロック32に結線接続部361を止着することができる。このような挿入及び嵌入の操作は簡単であり、電動圧縮機10の組み立ての作業効率が向上する。
【0045】
(4)フランジ40が環状溝382に嵌め込まれているため、筒部材39が挿入口381から脱落することはない。又、挿入口381に嵌入されたゴム製の筒部材39が弾性変形して相線束36を押さえているので、結線接続部361が格納室38から抜け落ちることはない。
【0046】
(5)筒部材39にテーパ外周面41を設けた構成は、相線束36を通した筒部材39を挿入口381に挿入する作業を容易にする。
(6)筒部材39の分割構造は、筒部材39の筒孔391への相線束36の挿通の作業を容易にする。
【0047】
(7)格納室38は、絶縁樹脂製のクラスタブロック32に簡単に形成することができる。格納室38に結線接続部361を格納すると共に、挿入口381に筒部材39を嵌入する構造は、クラスタブロック32に相線束36を止着する上で簡便な構造である。
【0048】
(8)相線束36の各単線の先端部のエナメル樹脂を予め剥いておき、剥き出された先端部を導電リング37のかしめによって結線することも可能である。しかし、各コイルの導線を複線とした構造では、相線束36の単線の本数が多くなる(本実施形態では6本)ため、エナメル樹脂を予め剥く作業が面倒であり、結線接続部361の形成作業が面倒になる。
【0049】
加熱かしめ方式では、エナメル樹脂を予め剥いておく必要がないため、結線接続部361の形成作業が容易である。
(9)電動圧縮機10は、圧縮機構部P、電動モータM及びインバータ28をこの順に直列に配置して構成されており、複数の引き出し線240U,240V,240Wは、圧縮機構部P側のステータコア23の端面231側から引き出されている。そのため、電動モータMとインバータ28とを両者間の狭い隙間(図示の例では端面232とモータハウジング12の後端壁との間)内で電気的に結線する必要がない。つまり、圧縮機構部P、電動モータM及びインバータ28をこの順に直列配置した電動圧縮機10では、結線作業を容易に行なうことができ、電動圧縮機10を組み立てるときの作業効率が向上する。
【0050】
従って、相線束36をクラスタブロック32に止着させる本発明は、作業効率の向上に優れた直列配置の電動圧縮機10への適用において特に好適である。
(10)相線束36は、挿入口381付近で弾性変形したゴム製の筒部材39によって包囲されていると共に、弾性変形したゴム製の筒部材39が挿入口381の内周面に密着している。そのため、電動圧縮機10内に液冷媒が溜まったとしても、格納室38に格納されている結線接続部361が液冷媒に浸漬されることが防止される。
【0051】
次に、図5(a),(b),(c)の第2の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合を用い、その詳細説明は省略する。
筒部材39Aは、一端に形成されたフランジ40Aと、円周面42とを有する。フランジ40Aは、格納室38の内周面に形成された環状溝382に嵌め込まれている。閉鎖部材である筒部材39Aは、横断面形状が半円弧形状の第1凹片43Aと、横断面形状が半円弧形状の第2凹片44Aとを接合して構成されている。第1凹片43Aと第2凹片44Aとは同形同大であり、図5(c)は、接合前の凹片43A,44Aを示す。
【0052】
第2の実施形態では、第1の実施形態における(1)〜(5),(7)〜(10)項と同様の効果が得られる。
次に、図6(a),(b)の第3の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合を用い、その詳細説明は省略する。
【0053】
筒部材39Bは、筒部材39と同様の形状に形成されているが、筒部材39Bは、筒孔391に達すると共に、筒部材39Bの一端から他端に達する切れ目45を備えており、筒部材39Bは、切れ目45<←図示願います>から展開可能である。相線束36は、筒部材39Bを展開した状態で筒孔391に通される。
【0054】
第3の実施形態では、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
本発明では以下のような実施形態も可能である。
○第1,2の実施形態において、第1凹片と第2凹片とを一体形成した筒部材を用いても良い。この場合、相線束36は、導電リング37をかしめて結線接続部361を形成する前に筒部材の筒孔に通される。
【0055】
○第1,2の実施形態において、接着剤を用いて挿入口381を閉じるようにしてもよい。
○閉鎖部材を合成樹脂製としてもよい。この場合、超音波溶着などによって合成樹脂製の閉鎖部材を溶融してクラスタブロック32及び相線束36に止着してもよい。
【0056】
○閉鎖部材は、相線束36に絶縁テープを巻いて形成してもよい。
○格納室は、貫通孔形状であってもよい。この場合、挿入口とは別の開口を栓で閉じておけばよい。
【0057】
○インバータ28(駆動制御部)は、電動モータMの軸方向側でなく径方向側にあってもよい。
前記した実施形態から把握できる技術思想について以下に記載する。
【0058】
(イ)前記格納室は、クラスタブロックを貫通しない袋小路形状に形成されている請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の電動圧縮機。
(ロ)前記格納室及び複数のコネクタは、並列状態に配設されている請求項1乃至請求項6、前記(イ)項のいずれか1項に記載の電動圧縮機。
【符号の説明】
【0059】
10…電動圧縮機。11…外殻。15…固定子。24U…U相コイル。24V…V相コイル。24W…W相コイル。23…ステータコア。231…端面。240U,240V,240W…引き出し線。28…駆動制御部としてのインバータ。32…クラスタブロック。321U…U相コネクタ。321V…V相コネクタ。321W…W相コネクタ。35U,35V,35W…相線。36…相線束。361…結線接続部。37…導電リング。38…格納室。381…挿入口。39,39A,39B…筒部材。391…筒孔。41…テーパ外周面。43,43A…第1凹片。44,44A…第2凹片。45…切れ目。P…圧縮機構部。M…電動モータ。R…挿入方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータ及び前記電動モータにより駆動されて冷媒の圧縮動作を行なう圧縮機構部が外殻の内部に収容されており、前記電動モータの固定子を構成する複数の相コイルからそれぞれ引き出された複数の引き出し線が前記外殻内に配置されたクラスタブロック内のコネクタに連結されており、前記コネクタは、前記外殻を貫通している導電部材を経由して前記外殻の外部にある前記電動モータの駆動制御部と電気的に接続されており、前記複数の相コイルからそれぞれ引き出された複数の相線が束ねられて相線束が形成されており、前記相線束の先端に各相を電気的に接続した結線接続部が加熱かしめ方式によって形成されて中性点が構成されている電動圧縮機において、
前記クラスタブロックの外面に挿入口を有する格納室が形成されており、
前記結線接続部は、前記挿入口から前記格納室に挿入されており、
前記結線接続部を通された前記挿入口は、閉鎖部材によって閉鎖されている電動圧縮機。
【請求項2】
前記閉鎖部材は、前記結線接続部を挿通する筒孔を有する筒部材である請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記筒部材は、第1凹片と第2凹片とを接合して構成されている請求項2に記載の電動圧縮機。
【請求項4】
前記筒部材は、前記筒孔に達すると共に、前記筒部材の一端から他端に達する切れ目を備えており、前記筒部材は、前記切れ目から展開可能である請求項2に記載の電動圧縮機。
【請求項5】
前記筒部材は、テーパ外周面を有し、前記テーパ外周面は、挿入方向に向かうにつれて縮径する請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の電動圧縮機。
【請求項6】
前記閉鎖部材は、ゴム製である請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の電動圧縮機。
【請求項7】
前記圧縮機構部と、前記電動モータと、前記駆動制御部とがこれらの順に直列に配置されており、前記複数の相線は、前記圧縮機構部側の前記固定子の端面側から引き出されている請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の電動圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−72338(P2013−72338A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211193(P2011−211193)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】