説明

電動機の制御装置

【課題】電動機の出力トルクに発生するトルクリップルを打ち消すトルク補償信号を補正信号発生テーブルを用いて作成しているため、運転を行う前に補正信号発生テーブルを作成するための事前の試験を必要としていたものを、事前の試験を行わずにトルク補償信号を作成することを実現する。
【解決手段】トルク補償信号を打ち消したい周波数成分の1周期を定数n個分のエリアに分けて各エリアに応じたトルク補償信号をバンドパスフィルタの出力とし、各エリアに応じたトルク補償信号を電動機を運転しながら随時更新させることで補正信号発生テーブルを作成するための事前の試験が必要なくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換器を用いて電動機を制御する制御装置のトルク制御および制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図2を用いて従来技術を説明する。
電力変換器1は永久磁石同期電動機3に電圧を印加する。位置検出器4は前記永久磁石同期電動機3の回転子の位置情報θを検出する。電流検出器2は前記永久磁石同期電動機3の入力電流iを検出するものである。電流成分変換器5は前記入力電流iと前記位置情報θから電流成分の変換を行い、d軸成分のd軸電流idと直交するq軸成分のq軸電流iqに分けて出力する。指令変換器6は第1トルク指令T′を入力して前記永久磁石同期電動機3の出力トルクが第1トルク指令T′に追従するようなd軸電流指令idおよびq軸電流指令iqを出力する。電流制御器7は前記電流成分変換器5の出力である電流成分id、iqが前記指令変換器6の出力である電流指令id、iqに追従するような電圧指令vを電力変換器1に出力する。補正信号発生テーブル18は前記永久磁石同期電動機3の回転子の位置情報θに応じて出力トルクに発生するトルクリップル成分の補償信号Tcrを前記位置情報θおよび前記第1トルク指令T′に応じて発生させるテーブルである。位相補正19は前記補償信号Tcrの位相補正を行ってトルク補償信号Tcomを出力する。前記トルク補償信号Tcomを加算器171によって第2トルク指令Tに加えて前記第1トルク指令T′とし、前記第1トルク指令T′を前記指令変換器6に出力して前記永久磁石同期電動機3の出力トルクのトルクリップルを打ち消すものである。この手法は特開2007−267465号公報に適用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−267465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は出力トルクに発生するトルクリップルを打ち消すトルク補償信号Tcomを得るために補正信号発生テーブルを参照するが、該補正信号発生テーブルを作成するために運転を行う前に事前の試験を行わなければならないという点である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上のような問題点を解決するために本発明の請求項1は、電動機に電圧を印加する電力変換器と、前記電動機の入力電流iを検出する電流検出器と、前記電動機の回転子の位置情報θを検出する位置検出器と、前記入力電流iと前記位置情報θから各軸の電流成分id、iqに変換する電流成分変換器と、第1トルク指令T′から電流指令id、iqを生成する指令変換器と、前記電流成分id、iqが前記電流指令id、iqに追従するような電圧指令vを出力する電流制御器と、前記位置情報θから回転角速度ωmを演算する回転角速度演算器と、前記回転角速度ωmと第2トルク指令Tを入力して前記電動機が出力するトルクリップルから前記電動機の負荷トルクを減算した値であるTrlを出力する負荷リップルトルク演算器と、前記第2トルク指令Tから前記電動機が出力するトルクリップルを打ち消すためのトルク補償信号Tcomを減算して前記第1トルク指令T′を出力する加減算器からなり、前記電力変換器に前記電圧指令vを与えて制御する電動機の制御装置において
前記Trlに含まれる前記電動機が出力するトルクリップルの周波数成分であるパス周波数fpを出力するパス周波数発生器と、
前記パス周波数fpと前記Trlを入力して前記Trlに含まれる前記パス周波数fpの周波数成分のみを抽出して前記トルク補償信号Tcomを出力するバンドパスフィルタを持つことを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2は、定数nと前記パス周波数fpを乗算したものを周波数とするパルス信号Pnを出力するパルス発生器と、
前記Trlと前記パルス信号Pnを入力して前記パルス信号Pnのパルス間の前記Trlの平均値であるTrlaveを演算して出力する平均処理器と、
前記パス周波数fpと前記パルス信号Pnと前記Trlaveを入力して前記パルス信号Pnのパルスを入力した時、前記Trlaveに含まれる前記パス周波数fpに依存したトルクリップル成分のみを抽出してパストルク信号Tpを出力するバンドパスフィルタ演算器と、
前記パストルク信号Tpと前記定数nと前記パルス信号Pnを入力して、前記パス周波数fpの1周期を1〜前記定数nのエリアに分けて各エリアに対応したパストルク記憶器を持ち、前記パルス信号Pnのパルスを入力した時、現在のエリアの1つ前のエリアに対応した前記パストルク記憶器に前記パストルク信号Tpを記憶して更新させると共に現在のエリアに対応した前記パストルク記憶器を選択して各エリアのトルク補償信号である補償信号Tcom′を出力するエリアパストルク生成器と、
前記補償信号Tcom′と定数Gを乗算して前記トルク補償信号Tcomを出力する乗算器を具備するバンドパスフィルタを持つことを特徴とする請求項1に記載の電動機の制御装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、トルク補償信号Tcomを打ち消したい周波数成分の1周期を定数n個分のエリアに分けて各エリアに応じたトルク補償信号Tcomをバンドパスフィルタの出力とし、各エリアに応じたトルク補償信号Tcomを電動機を運転しながら随時更新させることで補償信号発生テーブルを作成するための事前の試験が必要なくなる。
また、バンドパスフィルタのサンプリング周波数を打ち消したいトルクの周波数成分を定数n倍したパルス信号とすることで、サンプリング周波数が打ち消したいトルクの周波数成分の定数n倍となり、バンドパスフィルタの各変数を一定値として扱うことができ、バンドパスフィルタによって通過させる周波数が電動機の電気角周波数のように時々刻々と変化しても改めてバンドパスフィルタの各変数を計算する必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明による実施方法を示した図である。(実施例1)
【図2】従来技術を説明した図である。
【図3】トルク補償信号生成手順を示した図である。
【図4】本発明による実施方法を示した図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は本発明の1実施例を示す図であり、図1を用いて説明する。図2と同様の部分については説明を省略する。回転角速度演算器8は永久磁石同期電動機3の回転子の位置情報θから回転角速度ωmを演算するものである。
【0011】
加減算器17は第2トルク指令Tから前記永久磁石同期電動機3が出力するトルクリップルを打ち消すためのトルク補償信号Tcomを減算して第1トルク指令T′を出力するものである。
【0012】
負荷リップルトルク演算器9は前記回転角速度ωmと前記第2トルク指令Tを入力して前記永久磁石同期電動機3が出力するトルクリップルから前記永久磁石同期電動機3の負荷トルクを減算した値であるTrlを出力するものであるが、以下にその詳細を示す。
【0013】
一般に前記永久磁石同期電動機3の出力トルクには前記永久磁石同期電動機3の構造や前記電力変換器1のデッドタイム等から6倍電気角周波数成分のトルクリップル成分Trが含まれることが知られている。
【0014】
前記回転角速度ωmは一般に式1のように表される。
【0015】
【数1】

J:慣性モーメント
s:ラプラス演算子
ωm:永久磁石同期電動機の回転子の回転角速度
′:第1トルク指令
Tr:トルクリップル成分
Tl:負荷トルク成分
【0016】
ここで、速度変動に寄与するトルクTcalを式2のように定義する。
【0017】
【数2】

Tcal:速度変動に寄与するトルク
J:慣性モーメント
s:ラプラス演算子
ωm:永久磁石同期電動機の回転子の回転角速度
【0018】
ここで、前記第1トルク指令T′は前記加減算器17によって第2トルク指令Tから前記トルク補償信号Tcomを減算しているものであるから式1および式2から式3のようになる。
【0019】
【数3】

Tcal:速度変動に寄与するトルク
:第2トルク指令
Tcom:トルク補償信号
Tr:トルクリップル成分
Tl:負荷トルク成分
【0020】
前記トルク補償信号Tcomは前記トルクリップル成分Trを打ち消す信号である。式3より前記トルクリップル成分Trが打ち消されている状態ならば前記トルク補償信号Tcomは前記トルクリップル成分Trに等しくなり、前記トルクリップル成分Trが打ち消されていない状態ならば前記トルク補償信号Tcomは0である。
【0021】
式3から前記トルクリップル成分Trが打ち消されていなければ、前記速度に寄与するトルクTcalから第2トルク指令Tを減算することで前記永久磁石同期電動機3が出力するトルクリップル成分Trから前記永久磁石同期電動機3の負荷トルク成分Tlを減算した値であるTrlを得ることができる。
【0022】
パス周波数発生器10は、前記Trlに含まれる前記永久磁石同期電動機3が出力するトルクリップルの周波数成分であるパス周波数fpを出力するものである。
【0023】
今回は前記パス周波数発生器10において前記回転角速度ωmから式4より前記永久磁石同期電動機3の6倍電気角周波数を求めて前記パス周波数fpとする。
【0024】
【数4】

fp:パス周波数
ωm:永久磁石同期電動機の回転角速度
p:永久磁石同期電動機の極対数
【0025】
バンドパスフィルタ11は前記パス周波数fpと前記Trlを入力して前記Trlに含まれる前記パス周波数fpの周波数成分を抽出して前記トルク補償信号Tcomとし、該トルク補償信号Tcomを出力するものである。以下に前記バンドパスフィルタ11の構成を詳細に説明する。
【0026】
前記バンドパスフィルタ11はパルス発生器12、平均処理器13、バンドパスフィルタ演算器14、エリアパストルク生成器15、乗算器16から構成されている。
【0027】
パルス発生器12は定数nと前記パス周波数fpを乗算したものを周波数とするパルス信号Pnを出力する。ここで前記定数nを10と設定する。
【0028】
平均処理器13は前記Trlと前記パルス信号Pnを入力して前記パルス信号Pnのパルス間の前記Trlの平均値であるTrlaveを演算して出力するものである。
【0029】
バンドパスフィルタ演算器14は前記パルス信号Pnと前記Trlaveを入力して前記パルス信号Pnのパルスを入力した時、前記Trlaveに含まれる前記パス周波数fpに依存した周波数成分のみを抽出してパストルク信号Tpを出力するものである。ここで前記バンドパスフィルタ演算器14の入出力の関係を式5に示す。
【0030】
【数5】

Tp:パストルク信号
Tp(n−1):1サンプリング前のパストルク信号
Tp(n−2):2サンプリング前のパストルク信号
Trlave:現在のTrlの平均値
Trlave(n−2):2サンプリング前のTrlの平均値
h,b1,b2:バンドパスフィルタの各変数
【0031】
ここで式5のh、b1、b2の各変数は式6で与えられるものである。
【0032】
【数6】

fbp:バンドパスフィルタ演算器によって通過させる周波数
fs:サンプリング周波数
Q:クオリティファクタ
【0033】
ここで式6のQはクオリティファクタであり、例えば5と設定する。サンプリング周波数fsは前記パルス信号Pnとしているので前記パス周波数fpの前記定数n倍となる(fs=n・fp)。今回は前記定数nを10としている。また、前記バンドパスフィルタ演算器14によって通過させる周波数fbpは前記パス周波数fpである(fbp=fp)。以上の条件で式6を書き換えると式7になる。
【0034】
【数7】

【0035】
式7よりh、b1、b2の各変数は一定値として扱える。また、前記バンドパスフィルタ演算器14により前記永久磁石同期電動機3の回転角周波数ωmに応じて前記負荷トルク成分Tlに前記パス周波数fp成分を含んでいなければ前記トルクリップル成分Trに含まれる前記パス周波数fp成分のみを抽出することができ、前記パストルク信号Tpを算出することが可能になる。
【0036】
エリアパストルク生成器15は前記パルス信号Pnと前記パストルク信号Tpと前記定数nを入力して、前記パス周波数fpの1周期を1〜前記定数nのエリアに分けて各エリアに対応したパストルク記憶器を持ち、前記パルス信号Pnのパルスを入力した時、現在のエリアの1つ前のエリアに対応した前記パストルク記憶器に前記パストルク信号Tpを記憶して更新させると共に現在のエリアに対応した前記パストルク記憶器を選択して各エリアのトルク補償信号である補償信号Tcom′を出力するというものである。前記エリアパストルク生成器15の内部構成を図3を用いて説明する。
【0037】
パストルク生成器15はパストルク記憶器群1500と周波数エリア発生器1511とパストルク記憶器選択器1512とエリアパストルク選択器1513から構成されている。
【0038】
前記パストルク記憶器群1500は内部に前記定数n個分のパストルク記憶器を構成している。今回は前記定数nを10と設定したため、前記パストルク記憶器の数量は10個となり、パストルク記憶器1501〜1510の構成となる。
【0039】
前記周波数エリア発生器1511は前記パルス信号Pnのパルスを入力した時、1〜前記定数nまで加算することを繰り返し、周波数エリア値Afとして出力するものである。今回は前記定数nを10と設定したため、前記周波数エリア値Afの最大値は10である。また、前記パストルク記憶器1501〜1510は前記周波数エリア値Afの1〜10に対応している。
【0040】
前記パストルク記憶器選択器1512は、前記パルス信号Pnのパルスを入力した時、現在のエリアの1つ前のエリアに対応した前記パストルク記憶器1501〜1510のいずれか1つを選択する。前記パストルク記憶器選択器1512によって選択された前記パストルク記憶器1501〜1510のいずれか1つが前記パストルク信号Tpに記憶内容を更新する。例えば前記パルス信号Pnのパルスを入力した時、現在の前記周波数エリア値Afが2ならば、前記パストルク記憶器選択器1512は前記周波数エリア値Afの1に対応するパストルク記憶器1501を選択し、前記パストルク記憶器1501は記憶内容をTpに更新する。
【0041】
前記周波数エリア値Afの各エリアに含まれる前記トルクリップル成分Trの特性は同一であると考えられるため、前記エリアパストルク選択器1513は現在の前記周波数エリア値Afに対応した前記パストルク記憶器1501〜1510のいずれか1つを選択して各エリアのトルク補償信号である補償信号Tcom′として出力する。例えば前記周波数エリア値Afが2ならば、前記エリアパストルク選択器1513は前記周波数エリア値Afの2に対応するパストルク記憶器1502を選択して前記補償信号Tcom′として出力する。
【0042】
乗算器16は定数Gを前記補償信号Tcom′に乗算して前記トルク補償信号Tcomを出力するものである。ここで、前記定数Gについて以下に説明する。
【0043】
まず、前記回転角速度ωmに前記トルクリップル成分Trに起因する速度変動のみが現れるようにするため、式2および式3において前記負荷トルク成分Tlおよび第2トルク指令Tを0とし、さらに前記トルク補償信号Tcomを前記定数Gと前記補償信号Tcom′を乗算したもので表すと式8のようになる。
【0044】
【数8】

J:慣性モーメント
s:ラプラス演算子
ωm:永久磁石同期電動機の回転子の回転角速度
G:定数
Tcom′:補償信号
Tr:トルクリップル成分
【0045】
ここで前記補償信号Tcom′は前記トルクリップル成分Trに起因する速度変動に寄与するトルクである。式8では前記回転角速度ωmは前記トルクリップル成分Trに起因する速度変動であるから前記補償信号Tcom′は式2の前記速度変動に寄与するトルクTcalと等しくなり、式8を書き換えると式9が得られる。
【0046】
【数9】

J:慣性モーメント
s:ラプラス演算子
ωm:永久磁石同期電動機の回転子の回転角速度
G:定数
Tr:トルクリップル成分
【0047】
式9より前記定数Gを大きくすれば前記トルクリップル成分Trに起因する速度変動は小さくなり、前記永久磁石同期電動機3が出力するトルクリップルも小さくなることがわかる。
【0048】
以上のような構成にすることで6倍電気角周波数と設定したパス周波数fpに依存する永久磁石同期電動機が出力するトルクリップルを事前の試験をすることなく抑制することが可能になる。また、バンドパスフィルタのサンプリング周波数をパス周波数fpの定数倍とすることでバンドパスフィルタの各変数を一定値として扱うことができ、バンドパスフィルタによって通過させる周波数が永久磁石同期電動機の6倍電気角周波数のように時々刻々と変化しても改めてバンドパスフィルタの各変数を計算する必要がなくなる。
【実施例2】
【0049】
図4は本発明の1実施例を示す図であり、図4を用いて説明する。図1および図2と同様の部分については説明を省略する。誘導電動機31は前記電力変換器1によって電圧が印加されている。周波数検出器21は前記電力変換器1の出力周波数foを検出する。パス周波数発生器10は出力周波数foに定数倍したパス周波数fpを前記バンドパスフィルタ11に出力する。
【0050】
前記バンドパスフィルタ11は前記パス周波数fpと前記Trlを入力して前記Trlに含まれる前記パス周波数fpの周波数成分を抽出してトルク補償信号Tcomとし、該トルク補償信号Tcomを出力する。
【0051】
以上のような構成にすることで電力変換器の出力周波数の定数倍と設定したパス周波数fpに依存する誘導電動機が出力するトルクリップルを事前の試験をすることなく抑制することが可能になる。また、バンドパスフィルタのサンプリング周波数をパス周波数fpの定数倍とすることでバンドパスフィルタの各変数を一定値として扱うことができ、バンドパスフィルタによって通過させる周波数が電力変換器の出力周波数の定数倍のように時々刻々と変化しても改めてバンドパスフィルタの各変数を計算する必要がなくなる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、トルク補償信号Tcomを打ち消したいトルクの周波数成分の1周期を定数n個分のエリアに分けて各エリアに応じたトルク補償信号Tcomをバンドパスフィルタの出力とし、各エリアに応じたトルク補償信号Tcomを電動機を運転しながら随時更新させることで補償信号発生テーブルを作成するための事前の試験が必要なくなる点と、
バンドパスフィルタのサンプリング周波数を打ち消したいトルクの周波数成分の定数倍とすることでバンドパスフィルタの各変数を一定値として扱うことができ、バンドパスフィルタによって通過させる周波数が前記電動機の電気角周波数のように時々刻々と変化しても改めてバンドパスフィルタの各変数を計算する必要がなくなる点から産業上の利用の可能性は大いにある。
【符号の説明】
【0053】
1 電力変換器
2 電流検出器
21 周波数検出器
3 永久磁石同期電動機
31 誘導電動機
4 位置検出器
5 電流成分変換器
6 指令変換器
7 電流制御器
8 回転角速度演算器
9 負荷リップルトルク演算器
10 パス周波数発生器
11 バンドパスフィルタ
12 パルス発生器
13 平均処理器
14 バンドパスフィルタ演算器
15 エリアパストルク生成器
1500 パストルク記憶器群
1501〜1510 パストルク記憶器
1511 周波数エリア発生器
1512 パストルク記憶器選択器
1513 エリアパストルク選択器
16 乗算器
17 加減算器
171 加算器
18 補償信号発生テーブル
19 位相補正

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機に電圧を印加する電力変換器と、前記電動機の入力電流iを検出する電流検出器と、前記電動機の回転子の位置情報θを検出する位置検出器と、前記入力電流iと前記位置情報θから各軸の電流成分id、iqに変換する電流成分変換器と、第1トルク指令T′から電流指令id、iqを生成する指令変換器と、前記電流成分id、iqが前記電流指令id、iqに追従するような電圧指令vを出力する電流制御器と、前記位置情報θから回転角速度ωmを演算する回転角速度演算器と、前記回転角速度ωmと第2トルク指令Tを入力して前記電動機が出力するトルクリップルから前記電動機の負荷トルクを減算した値であるTrlを出力する負荷リップルトルク演算器と、前記第2トルク指令Tから前記電動機が出力するトルクリップルを打ち消すためのトルク補償信号Tcomを減算して前記第1トルク指令T′を出力する加減算器からなり、前記電力変換器に前記電圧指令vを与えて制御する電動機の制御装置において、
前記Trlに含まれる前記電動機が出力するトルクリップルの周波数成分であるパス周波数fpを出力するパス周波数発生器と、
前記パス周波数fpと前記Trlを入力して前記Trlに含まれる前記パス周波数fpの周波数成分のみを抽出して前記トルク補償信号Tcomを出力するバンドパスフィルタを持つことを特徴とする電動機の制御装置。
【請求項2】
定数nと前記パス周波数fpを乗算したものを周波数とするパルス信号Pnを出力するパルス発生器と、
前記Trlと前記パルス信号Pnを入力して前記パルス信号Pnのパルス間の前記Trlの平均値であるTrlaveを演算して出力する平均処理器と、
前記パス周波数fpと前記パルス信号Pnと前記Trlaveを入力して前記パルス信号Pnのパルスを入力した時、前記Trlaveに含まれる前記パス周波数fpに依存したトルクリップル成分のみを抽出してパストルク信号Tpを出力するバンドパスフィルタ演算器と、
前記パストルク信号Tpと前記定数nと前記パルス信号Pnを入力して、前記パス周波数fpの1周期を1〜前記定数nのエリアに分けて各エリアに対応したパストルク記憶器を持ち、前記パルス信号Pnのパルスを入力した時、現在のエリアの1つ前のエリアに対応した前記パストルク記憶器に前記パストルク信号Tpを記憶して更新させると共に現在のエリアに対応した前記パストルク記憶器を選択して各エリアのトルク補償信号である補償信号Tcom′を出力するエリアパストルク生成器と、
前記補償信号Tcom′と定数Gを乗算して前記トルク補償信号Tcomを出力する乗算器を具備するバンドパスフィルタを持つことを特徴とする請求項1に記載の電動機の制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−110111(P2012−110111A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256424(P2010−256424)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000003115)東洋電機製造株式会社 (380)
【Fターム(参考)】