説明

電動車両

【課題】簡単且つ経済的な構成で、水素の供給と電力の供給とが、同時に行われることを確実に阻止することを可能にする。
【解決手段】ハイブリッド自動車10は、車体12の一側面14に、水素を供給する水素供給接続部16及び電気を供給する電気供給接続部18が、互いに隣接し且つ外方に向かって設けられる。水素供給接続部16に接続される水素供給コネクタ20の中心軸と、電気供給接続部18に接続される電気供給コネクタ22の中心軸とは、互いに交差するとともに、前記水素供給コネクタ20と前記電気供給コネクタ22とは、互いに干渉していずれか一方のみの接続が許容される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給された燃料により発電する発電装置と、電気の充電及び放電を行う蓄電装置と、前記発電装置から供給される電力及び前記蓄電装置から放電される電力により駆動される電動機とを備える電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料ガス(主に水素を含有するガス)及び酸化剤ガス(主に酸素を含有するガス)をアノード側電極及びカソード側電極に供給して電気化学的に反応させることにより、直流の電気エネルギを得るシステムである。
【0003】
この種の燃料電池の用途としては、自動車等の車両に搭載した燃料電池車両の他、前記燃料電池と蓄電装置(二次電池やキャパシタ等)とを車両に搭載したハイブリッド車両等、種々の電動車両が注目されている。
【0004】
上記のハイブリッド車両では、燃料電池の発電に使用される水素と、蓄電装置に充電される電力の2つの異なるエネルギを供給する必要がある。その際、水素の供給作業と電力の供給作業とを同時に行おうとすると、作業者に短時間に複数の作業を強いることになり、作業が繁雑化するとともに、作業ミスが惹起し易いという問題がある。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1に開示されているハイブリッド車両が知られている。このハイブリッド車両は、図8に示すように、車両本体1のリアフェンダ2に供給部3が設けられている。供給部3は、給油部4の開口部を閉塞可能な蓋部5を備えており、この蓋部5の外表面には、充電・給電部6が設けられている。
【0006】
そして、充電・給電部6に外部コネクタ7が接続されると、前記外部コネクタ7と車両本体1とが接触し、蓋部5の回転が制限されている。このため、給油部4の前方領域には、蓋部5が位置しており、前記蓋部5と給油部4との間には、図示しない外部給油部が入り込むことが可能な程度の空間が形成されず、前記外部給油部を前記給油部4に接続することができない、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−162543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の特許文献1では、給油部4の開口部を閉塞可能な蓋部5を備えており、部品数が増加するという問題がある。しかも、蓋部5には、充電・給電部6が設けられており、前記蓋部5から車両本体1内に配線を設けなければならない。これにより、蓋部5の構成が相当に複雑化し、経済的ではないという問題がある。
【0009】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、簡単且つ経済的な構成で、燃料の供給と電力の供給とが、同時に行われることを確実に阻止することが可能な電動車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、供給された燃料により発電する発電装置と、電気の充電及び放電を行う蓄電装置と、前記発電装置から供給される電力及び前記蓄電装置から放電される電力により駆動される電動機とを備える電動車両に関するものである。
【0011】
この電動車両は、車体の一面には、燃料供給口及び電気を供給する電気供給口が、互いに隣接し且つ外方に向かって設けられるとともに、前記燃料供給口に接続される燃料供給コネクタの中心軸と、前記電気供給口に接続される電気供給コネクタの中心軸とは、互いに交差し且つ前記燃料供給コネクタと前記電気供給コネクタとが互いに干渉していずれか一方のみの接続を許容する位置に設定されている。
【0012】
また、この電動車両は、車体の一面には、互いに交差する方向に延在する第1及び第2面が設けられ、前記第1面に燃料供給口が形成される一方、前記第2面に電気供給口が形成されることが好ましい。
【0013】
さらに、この電動車両は、燃料供給口と電気供給口とを選択的に開放する蓋部材を備え、前記蓋部材は、前記燃料供給口を開放する際、前記電気供給口に電気供給コネクタが接続されることを規制する一方、前記電気供給口を開放する際、前記燃料供給口に燃料供給コネクタが接続されることを規制することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、燃料供給口に接続される燃料供給コネクタの中心軸と、電気供給口に接続される電気供給コネクタの中心軸との相対的な位置関係を設定するだけで、前記燃料供給コネクタ又は前記電気供給コネクタのいずれか一方のみの接続が許容される。
【0015】
このため、燃料供給コネクタと電気供給コネクタとは、同時に接続されることがなく、簡単且つ経済的な構成で、燃料の供給と電力の供給とが、同時に行われることを確実に阻止することが可能になる。これにより、燃料及び電力の供給作業が簡素化され、作業性が良好に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電動車両であるハイブリッド自動車の側面説明図である。
【図2】前記ハイブリッド自動車の平面説明図である。
【図3】前記ハイブリッド自動車の要部斜視説明図である。
【図4】水素供給コネクタが水素供給接続部に接続された状態の説明図である。
【図5】電気供給コネクタが電気供給接続部に接続された状態の説明図である。
【図6】前記ハイブリッド自動車を構成する燃料電池及び蓄電装置の流路系及び電気回路系の説明図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る電動車両であるハイブリッド自動車の要部斜視説明図である。
【図8】特許文献1のハイブリッド車両の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る電動車両であるハイブリッド自動車10は、車体12の後部側一側面(一面)14に、水素(燃料)を供給する水素供給接続部(燃料供給口)16と、電気を供給する電気供給接続部(電気供給口)18とが、互いに隣接し且つ外方に向かって設けられる。
【0018】
図3に示すように、水素供給接続部16には、水素供給コネクタ(燃料供給コネクタ)20が接続されるとともに、電気供給接続部18には、電気供給コネクタ22が接続される。水素供給コネクタ20は、配管24を介して図示しない水素供給源に連通する一方、電気供給コネクタ22は、ケーブル26を介して図示しない電力供給源に接続される。
【0019】
水素供給接続部16に接続される水素供給コネクタ20の中心線O1と、電気供給接続部18に接続される電気供給コネクタ22の中心線O2とは、互いに交差し、且つ互いに干渉していずれか一方のみの接続を許容する位置に設定される。中心線O1、O2は、水平でなくてもよく、傾斜していてもよい。また、中心線O1、O2は、同一高さでもよく、水素供給コネクタ20と電気供給コネクタ22とが互いに干渉する程度にずれていてもよい。
【0020】
すなわち、図4に示すように、水素供給接続部16に水素供給コネクタ20が接続された状態では、電気供給接続部18に電気供給コネクタ22が接続されることがない。同様に、図5に示すように、電気供給接続部18に電気供給コネクタ22が接続された状態では、水素供給接続部16に水素供給コネクタ20が接続されることはない。
【0021】
車体12の一側面14には、互いに交差する方向に延在する第1及び第2面14a、14bが形成され、前記第1及び第2面14a、14bには、水素供給接続部16及び電気供給接続部18が取り付けられる。
【0022】
車体12内には、燃料電池30が配設される。図6に示すように、燃料電池30は、複数の発電セル32を積層して構成される。各発電セル32は、図示しないが、固体高分子電解質膜をアノード側電極とカソード側電極とで挟持した電解質膜・電極構造体を備え、前記電解質膜・電極構造体が一対のセパレータで挟持される。燃料電池30の積層方向一端部には、空気等の酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス入口連通孔34aと、前記酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス出口連通孔34bとが形成される。
【0023】
燃料電池30の積層方向他端部には、水素(燃料ガス)を供給するための燃料ガス入口連通孔36aと、前記水素を排出するための燃料ガス出口連通孔36bとが形成される。酸化剤ガス入口連通孔34a及び酸化剤ガス出口連通孔34bは、各発電セル32に空気を供給する酸化剤ガス流路38に連通する。燃料ガス入口連通孔36a及び燃料ガス出口連通孔36bは、各発電セル32に水素を供給する燃料ガス流路40に連通する。
【0024】
酸化剤ガス入口連通孔34aには、空気供給流路42の一端が接続され、前記空気供給流路42の他端には、大気からの空気を圧縮して供給するためのエアコンプレッサ44が接続される。酸化剤ガス出口連通孔34bには、空気排出流路46が接続されるとともに、この空気排出流路46には、背圧弁48が接続される。
【0025】
燃料ガス入口連通孔36aには、水素供給流路50が接続され、前記水素供給流路50は、エゼクタ52を介して水素タンク54に接続される。水素タンク54には、水素供給接続部16が接続され、この水素供給接続部16を介して前記水素タンク54に水素が供給可能である。燃料ガス出口連通孔36bには、水素循環流路56の一端が接続され、この水素循環流路56は、エゼクタ52に接続され、前記燃料ガス出口連通孔36bから排出される水素を含む排ガスが燃料電池30に、再度、供給される。水素循環流路56は、弁(シャットバルブ)58を介して排出流路59に連通する。
【0026】
燃料電池30には、給電回路60を介してDC/DCコンバータ62が接続され、前記DC/DCコンバータ62を介して前記燃料電池30と蓄電装置64とが前記給電回路60上で接続可能である。
【0027】
蓄電装置64は、二次電池又はキャパシタ等で構成されており、AC/DCコンバータ66を介して電気供給接続部18に接続される。燃料電池30及びDC/DCコンバータ62は、給電回路60を介してインバータ68に接続可能であり、前記インバータ68を通じて車両走行用の駆動モータ(電動機)70に電力が供給される。図1及び図2に示すように、水素タンク54及び蓄電装置64は、車体12の後方側に配置される。
【0028】
このように構成されるハイブリッド自動車10の動作について、以下に説明する。
【0029】
先ず、燃料電池30による発電を行う際には、エアコンプレッサ44が駆動される。このエアコンプレッサ44から供給される圧縮空気は、空気供給流路42から燃料電池30の酸化剤ガス入口連通孔34aに供給される。一方、水素タンク54内の水素は、水素供給流路50に供給されると、エゼクタ52を通って燃料電池30の燃料ガス入口連通孔36aに供給される。
【0030】
燃料電池30を構成する各発電セル32では、酸化剤ガス入口連通孔34aに供給された空気は、酸化剤ガス流路38に導入される。この空気は、図示しないカソード側電極の電極面に沿って移動した後、酸化剤ガス出口連通孔34bに排出される。
【0031】
一方、燃料ガス入口連通孔36aに供給された水素ガスは、各発電セル32の図示しないアノード側電極の電極面に沿って移動した後、燃料ガス出口連通孔36bに排出される。従って、各発電セル32では、カソード側電極に供給される空気中の酸素と、アノード側電極に供給される水素とが反応して発電が行われる。
【0032】
なお、燃料ガス出口連通孔36bに排出された排ガスは、水素循環流路56を通ってエゼクタ52に吸引され、水素供給流路50の途上に戻された後、再度、燃料電池30に供給される。
【0033】
上記のように、燃料電池30で発電が行われることにより、給電回路60に発電電力が供給され、インバータ68を介して駆動モータ70に電力が供給され、ハイブリッド自動車10の走行が行われる。一方、蓄電装置64による電力供給を行う際には、この蓄電装置64からDC/DCコンバータ62を介して給電回路60に電力が供給され、この電力は、インバータ68を介して駆動モータ70に供給される。
【0034】
次いで、水素タンク54に水素を供給する際には、図3及び図4に示すように、水素供給コネクタ20が、車体12に設けられている水素供給接続部16に接続される。そして、図示しない水素供給源から配管24を介して水素供給接続部16に水素ガスが供給され、この水素は、水素タンク54に充填される。
【0035】
一方、蓄電装置64に充電する際には、図3及び図5に示すように、電気供給コネクタ22が、車体12に設けられている電気供給接続部18に接続される。そして、図示しない電力供給源から交流電流が供給され、この交流電流は、AC/DCコンバータ66を介して直流電流に返還された後、蓄電装置64に充電される。なお、電気供給接続部18には、直接、直流電流が供給されてもよく、その際、直流電流は、AC/DCコンバータ66を用いずに、蓄電装置64に充電される。
【0036】
この場合、第1の実施形態では、図4に示すように、水素供給コネクタ20が水素供給接続部16に接続された状態では、電気供給コネクタ22が電気供給接続部18に接続されることはない。
【0037】
一方、図5に示すように、電気供給コネクタ22が電気供給接続部18に接続された状態では、水素供給コネクタ20が水素供給接続部16に接続されることはない。
【0038】
すなわち、図3に示すように、水素供給コネクタ20の中心線O1と、電気供給コネクタ22の中心線O2との相対的な位置関係を設定するだけで、前記水素供給コネクタ20又は前記電気供給コネクタ22のいずれか一方のみの接続が許容されている。
【0039】
このため、第1の実施形態では、水素供給コネクタ20と電気供給コネクタ22とは、同時に接続されることがなく、簡単且つ経済的な構成で、水素の供給と電力(電気)の供給とが同時に行われることを確実に阻止することが可能になる。これにより、水素及び電力の供給作業が簡素化され、作業性が良好に向上するという効果が得られる。
【0040】
さらに、車体12の一側面14には、互いに交差する方向に延在して第1及び第2面14a、14bが設けられ、前記第1及び第2面14a、14bに水素供給接続部16及び電気供給接続部18が設けられている。従って、簡単な構成で、各中心線O1、O2を互いに交差させることができる。
【0041】
なお、第1の実施形態では、燃料電池30と蓄電装置64とを組み込むハイブリッド自動車10を用いているが、これに限定されるものではない。例えば、内燃機関(エンジン)と蓄電装置とを組み込むハイブリッド自動車にも適用することができる。
【0042】
図7は、本発明の第2の実施形態に係るハイブリッド自動車の要部斜視説明図である。
【0043】
なお、第1の実施形態に係る電動車両であるハイブリッド自動車10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0044】
この第2の実施形態では、車体12の一側面14に、水素供給接続部16と電気供給接続部18とを選択的に開放する蓋部材80が設けられる。この蓋部材80は、支軸82を支点にして第1面14aと第2面14bとに近接及び離間可能であり、揺動先端側には、幅広なフランジ部84が設けられる。
【0045】
蓋部材80は、水素供給接続部16を開放してこの水素供給接続部16に水素供給コネクタ20を接続する際には、電気供給接続部18を閉塞する。この状態では、電気供給接続部18に電気供給コネクタ22を接続させることはできない。
【0046】
一方、電気供給接続部18を開放して、この電気供給接続部18に電気供給コネクタ22を接続する際には、前記蓋部材80は、水素供給接続部16を閉塞している。この状態では、水素供給接続部16に水素供給コネクタ20を接続することはできない。
【0047】
従って、第2の実施形態では、第1及び第2面14a、14bのなす角度を比較的大きく設定することができる他、水素供給コネクタ20と電気供給コネクタ22とが同時に接続されることを阻止することが可能になる等、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0048】
10…ハイブリッド自動車 12…車体
14…一側面 16…水素供給接続部
18…電気供給接続部 20…水素供給コネクタ
22…電気供給コネクタ 24…配管
26…ケーブル 30…燃料電池
32…発電セル 38…酸化剤ガス流路
40…燃料ガス流路 44…エアコンプレッサ
52…エゼクタ 54…水素タンク
60…給電回路 62…DC/DCコンバータ
64…蓄電装置 70…駆動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された燃料により発電する発電装置と、電気の充電及び放電を行う蓄電装置と、前記発電装置から供給される電力及び前記蓄電装置から放電される電力により駆動される電動機とを備える電動車両であって、
車体の一面には、燃料供給口及び前記電気を供給する電気供給口が、互いに隣接し且つ外方に向かって設けられるとともに、
前記燃料供給口に接続される燃料供給コネクタの中心軸と、前記電気供給口に接続される電気供給コネクタの中心軸とは、互いに交差し且つ前記燃料供給コネクタと前記電気供給コネクタとが互いに干渉していずれか一方のみの接続を許容する位置に設定されることを特徴とする電動車両。
【請求項2】
請求項1記載の電動車両において、前記車体の一面には、互いに交差する方向に延在する第1及び第2面が設けられ、
前記第1面に前記燃料供給口が形成される一方、前記第2面に前記電気供給口が形成されることを特徴とする電動車両。
【請求項3】
請求項1又は2記載の電動車両において、前記燃料供給口と前記電気供給口とを選択的に開放する蓋部材を備え、
前記蓋部材は、前記燃料供給口を開放する際、前記電気供給口に前記電気供給コネクタが接続されることを規制する一方、
前記電気供給口を開放する際、前記燃料供給口に前記燃料供給コネクタが接続されることを規制することを特徴とする電動車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−208529(P2010−208529A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57626(P2009−57626)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】