説明

電圧制御発振器の基準電圧調整方法および電圧制御発振器

【課題】可変容量ダイオードのアノード電圧を調整して、制御電圧と周波数との関係の直線性を向上する電圧制御発振器の基準電圧調整方法および電圧制御発振器を提供する。
【解決手段】電圧制御発振器10は、圧電振動片12と、カソード側が圧電振動片12に接続した可変容量ダイオードCvと、この可変容量ダイオードCvのアノード側に接続した基準電圧発生源16と、可変容量ダイオードCvのアノード側に一方が接続するとともに、他方がパッド18に接続した抵抗とを備えている。また電圧制御発振器10は、圧電振動片12、可変容量ダイオードCv、基準電圧発生源16および前記抵抗を搭載するパッケージを備えている。そして、このパッケージは、パッド18と導通し又は導通しないグランド用のボンディング電極を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧制御発振器の基準電圧調整方法および電圧制御発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電圧制御発振器は、圧電振動片に可変容量ダイオードを接続し、制御端子から制御電圧を印加することにより可変容量ダイオードの容量を変化させて、発振周波数を変化させている。この可変容量ダイオードは、アノードとカソードの間に逆方向電圧をかけた場合に、この逆方向電圧の変化によってpn接合の空乏層容量が変化することを利用している。
【0003】
図7は従来技術の説明図である。ここで図7(A)は従来技術に係る電圧制御発振器の概略ブロック図、図7(B)は可変容量ダイオードにおける電圧と容量の関係を示す図である。電圧制御発振器1は、前述した圧電振動片2および可変容量ダイオードCvに加えて、圧電振動片2を発振させる回路(発振回路3)を備えている。この電圧制御発振器1の制御端子に補償電圧発生器4(制御回路)が接続している。この補償電圧発生器4は、制御端子に制御電圧Vsを出力しており、単電源の集積回路(IC)を使うことが多い。
【0004】
ところがこの場合では、補償電圧発生器4から出力される制御電圧Vsの最低電圧が0Vにならず、0.6V程度になっている。そして可変容量ダイオードCvのアノードとカソードとの間にかかる最低電圧が約0.6Vになるので、図7(B)において矢印Cで示す部分、すなわち電圧と容量の関係において容量変化が大きい領域を使用することができなかった。
【0005】
このため特許文献1に開示された発明は、可変容量ダイオードの電圧を零ボルトから使用するために、可変容量ダイオードに定電圧を印加してアノードの電圧を上げ、アノードとカソードの差電圧を零ボルトにして、可変容量ダイオードの最大容量値を得るとともに、差電圧が零近傍の直線性の高い部分をも制御できるようにしている。
【特許文献1】特開2000−151281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した可変容量ダイオードは、この素子毎にバラツキを有しているために、アノードとカソードの間に同じの電圧をかけても同じ容量値になるとは限らない。このため特許文献1に開示された発明では、可変容量ダイオードの容量変化の最も直線性の良い部分を使用するために、可変容量ダイオード毎のバラツキに応じて電圧制御発振器毎に定電圧値を設定しなければならない。ところが特許文献1に開示された発明では、この設定のために調整回路が必要になり、電圧制御発振器内の回路が複雑になってしまう。
【0007】
また発振回路には、電源電圧の仕様が異なるものがある。例えば電源電圧の仕様には、3.3V、2.5V、1.8Vがある。図8は従来技術に係る電圧制御発振器の周波数偏差と制御電圧の関係を示す図である。ここで図8(A)と図8(B)は同じ特性であるが、異なる電源電圧の仕様になっているので、制御電圧の可変範囲が異なっている。図8(A)に示すような制御電圧の可変範囲が広い(電源電圧が高い)電圧制御発振器では、制御電圧の中心値(中心電圧V0)よりも高電圧側の周波数可変範囲と、中心電圧よりも低電圧側の周波数可変範囲が同等になっている。他方、図8(B)に示すような制御電圧の可変範囲が狭い(電源電圧が低い)電圧制御発振器では、中心電圧V0よりも高電圧側の周波数可変範囲Dと、中心電圧V0よりも低電圧側の周波数可変範囲Eが異なってしまう。
【0008】
そして図8(B)に示すような周波数可変範囲の違いを是正して、中心電圧よりも高電圧側と低電圧側の周波数可変範囲を同等にするためには、発振回路の電源電圧に応じて中心電圧V0を変更すればよい。すなわち電源電圧の仕様に応じて可変容量ダイオードのアノード側に電圧を印加し、中心電圧V0を変更すればよい。ところが特許文献1に開示された発明では、中心電圧を変更するために、可変容量ダイオードに定電圧を印加する回路を電源電圧の仕様に応じて複数設計し、用意しなければならず、製造コストが増大してしまう。
【0009】
本発明は、可変容量ダイオードに供給される基準電圧を分圧調整して、制御電圧と周波数との関係の直線性を向上する電圧制御発振器の基準電圧調整方法および電圧制御発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る電圧制御発振器の基準電圧調整方法は、カソード側が圧電振動片に接続した可変容量ダイオードのアノード側に、基準電圧発生源を接続するとともに、他方を開放した複数の抵抗を並列接続し、並列接続した複数の前記抵抗の他方を選択して接地したときの前記圧電振動片の周波数を測定し、この周波数測定結果に基づいて他方を接続する前記抵抗を決定することを特徴としている。
【0011】
すなわち本発明に係る電圧制御発振器の基準電圧調整方法は、可変容量ダイオードを介して圧電振動片に一方が接続する抵抗の他方を開放し、基準電圧を可変容量ダイオードに印加して、発振器出力信号の周波数を測定し、抵抗の他方をグランドに短絡し、この抵抗で分圧した基準電圧を可変容量ダイオードに印加して、発振器出力信号の周波数を測定し、これらの測定結果から可変容量ダイオードのアノード電圧を決定し、抵抗の他端をグランドに接続するか又は開放にするかを決め、この決定した前記抵抗の他端をグランドに接続することを特徴としている。また本発明に係る電圧制御発振器の基準電圧調整方法は、可変容量ダイオードを介して圧電振動片に一方が接続する抵抗の他方をグランドに短絡したときの発振器出力信号の周波数を予め求め、可変容量ダイオードを介して圧電振動片に一方が接続する抵抗の他方を開放し、基準電圧を可変容量ダイオードに印加して、発振器出力信号の周波数を測定し、予め求めた結果および測定結果から可変容量ダイオードのアノード電圧を決定し、抵抗の他端をグランドに接続するか又は開放にするかを決め、この決定した前記抵抗の他端をグランドに接続することを特徴としている。
【0012】
これにより抵抗に接続したパッドとグランドを接続又は開放するか決定でき、この決定に応じてパッドとグランドを接続又は開放すれば基準電圧を分圧調整でき、可変容量ダイオードのアノード電圧を変更できる。よって制御電圧と周波数との関係の直線性を向上できる。
【0013】
また本発明に係る電圧制御発振器は、カソード側が圧電振動片に接続した可変容量ダイオードと、可変容量ダイオードのアノード側に直列接続した抵抗と、可変容量ダイオードのアノード側に一方が接続し、他方がパッドに接続した抵抗と、を備えたことを特徴としている。この場合、電圧制御発振器は、可変容量ダイオードのアノード側に一方が接続するとともに、他方がパッドに接続した抵抗を複数備えることができる。抵抗に接続したパッドをグランドに短絡し又は開放することで分圧比を調整できるので、可変容量ダイオードのアノード電圧を変更でき、制御電圧と周波数との関係の直線性を向上できる。また抵抗にパッドを接続した簡単な回路で分圧比を調整できるので、電圧制御発振器の内部回路が複雑にならない。さらに発振回路の電源電圧の仕様にかかわらず同じ回路でアノード電圧を変更できるので、製造コストを低減できる。
【0014】
また本発明に係る電圧制御発振器は、圧電振動片と、圧電振動片に一端(カソード側)が接続した可変容量ダイオードと、可変容量ダイオードの他端(アノード側)に接続した基準電圧発生源と、可変容量ダイオードの他端に一方が接続するとともに、他方がパッドに接続した抵抗と、圧電振動片、可変容量ダイオード、基準電圧発生源および抵抗を搭載し、パッドと短絡し又は開放するグランド用のボンディング電極を備えたパッケージと、を備えたことを特徴としている。
【0015】
抵抗に接続したパッドをグランドに短絡し又は開放することで、基準電圧発生源から出力される基準電圧を分圧調整でき、可変容量ダイオードのアノード電圧を変更できる。このため制御電圧と周波数との関係の直線性を向上できる。また抵抗にパッドを接続した簡単な回路で分圧比を調整できるので、電圧制御発振器の内部回路が複雑にならない。さらに発振回路の電源電圧の仕様にかかわらず同じ回路でアノード電圧を変更できるので、製造コストを低減できる。
【0016】
また本発明に係る電圧制御発振器は抵抗を複数備え、この各抵抗に接続したパッドのうちの少なくとも1つとグランド用のボンディング電極とをワイヤで導通し、または全てのパッドとグランド用のボンディング電極とをワイヤで導通せず開放にしたことを特徴としている。これにより可変容量ダイオードのアノード電圧を細かく設定できる。
【0017】
そして前述した基準電圧発生源は、入力端子、出力端子およびコントロール端子を備え、可変容量ダイオードの他端とコントロール端子との間に、前述した抵抗の一方を接続したことを特徴としている。この場合、この抵抗の他方はパッドに接続している。基準電圧発生源を飽和電圧型レギュレータとした場合であっても、抵抗に接続したパッドをグランドに短絡し又は開放することで分圧比を調整できるので、可変容量ダイオードのアノード電圧を変更できる。また抵抗にパッドを接続した簡単な回路で分圧比を調整できるので、電圧制御発振器の内部回路が複雑にならず、また発振回路の電源電圧の仕様にかかわらず同じ回路でアノード電圧を変更できるので、製造コストを低減できる。
【0018】
また本発明に係る電圧制御発振器は、可変容量ダイオード、基準電圧発生源および抵抗をICチップ内に搭載し、パッドをICチップの主面に設けたことを特徴としている。これらの可変容量ダイオード等の回路を容易にパッケージに搭載でき、またこれらの可変容量ダイオード等の回路を小型化できる。よって電圧制御発振器の平面サイズを小型化でき、また低背化できる。
【0019】
また本発明に係る電圧制御発振器は、可変容量ダイオードを複数備えたことを特徴としている。これにより制御電圧の可変範囲を広げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明に係る電圧制御発振器の基準電圧調整方法および電圧制御発振器の最良の実施形態について説明する。図1は電圧制御発振器のブロック図である。電圧制御発振器10は、圧電振動片12、可変容量ダイオードCv、発振回路14、基準電圧発生源16、複数の抵抗R1,R2,R3,R4,R5、バイパスコンデンサC、電源電圧端子Vdd、制御端子Vcおよびグランド端子22を備えている。
【0021】
圧電振動片12は一定の周波数で発振する素子であり、例えばATカット圧電基板等を用いた圧電振動片、音叉型圧電振動片または弾性表面波共振片であればよい。この圧電振動片12に可変容量ダイオードCvのカソード側が接続するとともに、制御端子Vcが接続している。また圧電振動片12は、発振回路14に接続している。この発振回路14は、圧電振動片12を発振させるものである。また電源電圧端子Vddは、基準電圧発生源16の入力側に接続している。この基準電圧発生源16は、電源電圧を入力して基準電圧Vrを出力する。
【0022】
基準電圧発生源16の出力側は、可変容量ダイオードCvのアノードに接続している。この基準電圧発生源16と可変容量ダイオードCvの間には、第1抵抗R1が直列に接続している。また基準電圧発生源16と可変容量ダイオードCvの間には、第2抵抗R2、第3抵抗R3、第4抵抗R4、第5抵抗R5およびバイパスコンデンサCが並列接続している。すなわち可変容量ダイオードCvのアノードは、第2抵抗R2、第3抵抗R3、第4抵抗R4、第5抵抗R5およびバイパスコンデンサCの各一方と接続している。そして第2抵抗R2、第3抵抗R3および第4抵抗R4の各他方はパッド18に接続している。この第1ないし第4抵抗R1〜R4は、基準電圧発生源16から出力する基準電圧Vrを分圧して、可変容量ダイオードCvのアノード側の電圧(アノード電圧Va)を調整するために設けてある。また第5抵抗R5およびバイパスコンデンサCの各他方はグランド(GND)に接続している。
【0023】
なお可変容量ダイオードCv、発振回路14、基準電圧発生源16、第1ないし第5抵抗R1〜R5およびバイパスコンデンサCは、集積化されてICチップ20にすることができる。そしてICチップ20にした場合、第2ないし第4抵抗R2〜R4に接続した各パッド18、制御端子Vc、電源電圧端子Vdd、グランド端子22および圧電振動片12と導通する端子(図示せず)をICチップ20の主面に設ければよい。
【0024】
図2は電圧制御発振器の平面図である。なお図2では、パッケージベースの上面に接合する蓋体や、パッケージベースに固着した圧電振動片の記載を省略している。電圧制御発振器10は、パッケージ30を備えている。このパッケージ30は、パッケージベース32と前記蓋体を備えている。パッケージベース32は、圧電振動片12やICチップ20を搭載するために、上方に向けて開口した凹陥部34を備えている。この凹陥部34は、側面を階段状に形成した階段部を備えている。この階段部は2段あり、下側が第1階段部36、上側が第2階段部38になっている。この第1階段部36の上面にボンディング電極40を複数設けている。そして複数のボンディング電極40のうちの1つ(グランド用のボンディング電極40a)は、パッケージベース32の裏面に設けたグランド用の外部端子(図示せず)に導通している。またボンディング電極40には、このグランド機能の他に、圧電振動片12に電気信号を供給する機能や圧電振動片12から出力された信号を入力する機能、電源電圧をICチップ20に供給する機能、ICチップ20から出力された信号を受ける機能、制御電圧をICチップ20に供給する機能等が割り当てられている。
【0025】
また第2階段部38の上面にマウント電極42を複数設けている。このマウント電極42は、圧電振動片12をパッケージベース32に搭載したときに、圧電振動片12と接合する箇所である。そしてマウント電極42は、ボンディング電極40とそれぞれ導通している。すなわちマウント電極42は、圧電振動片12に電気信号を供給する機能が割り当てられたボンディング電極40、および圧電振動片12から出力された信号を入力する機能が割り当てられたボンディング電極40と1対1に導通している。
【0026】
このようなパッケージベース32の底面にICチップ20が固着している。ICチップ20の主面は上方に向いており、ICチップ20に設けられた前述した各端子とボンディング電極40にワイヤ44が接合して、これらが導通している。なおワイヤ44は、ICチップ20に設けられた各端子の機能とボンディング電極40に割り当てられた機能とが一致するようにボンディングされている。例えば、ICチップ20の制御端子Vcと、ICチップ20に制御電圧を供給する機能が割り当てられたボンディング電極40bとにワイヤ44をボンディングして、これらが導通している。
【0027】
また少なくともいずれか1つのパッド18とグランド用のボンディング電極40aとにワイヤ44をボンディングすることで、基準電圧Vrを分圧してアノード電圧Vaを設定し、または全てのパッド18にワイヤ44をボンディングしないで、基準電圧Vrを分圧してアノード電圧Vaを設定している。すなわち第2ないし第4抵抗R2〜R4の他端をグランドに適宜接続することにより、またはグランドに接続しないことにより、第1ないし第4抵抗R1〜R4で分圧比を調整して、アノード電圧Vaを変更している。
【0028】
そしてアノード電圧Vaが変わる範囲(設定範囲)の一例は、次のようになっている。図3はアノード電圧Vaの設定範囲の一例を示す説明図である。ここで図3(A)は電圧制御発振器の一部を示すブロック図であり、図3(B)は各パッドを選択してグランド用のボンディング電極と導通したときのアノード電圧Vaを示している。なお図3に例示する場合では、第1抵抗R1は50kΩ、第2抵抗R2は50kΩ、第3抵抗R3は20kΩ、第4抵抗R4は12kΩ、第5抵抗R5は1kΩ、基準電圧Vrは1Vとなっている。第2ないし第4抵抗R2〜R4に接続する全てのパッド18とグランド用のボンディング電極40aを導通しない(全て開放)場合は、図3(B)に示すようにアノード電圧Vaは0.02Vとなる。また図3(A)に示すように、第4抵抗R4に接続するパッド18とグランド用のボンディング電極40aをワイヤ44で導通し(短絡)、第2抵抗R2および第3抵抗R3に接続するパッド18とグランド用のボンディング電極40aを導通しない(開放)の場合は、図3(B)に示すようにアノード電圧Vaは0.2Vとなる。そして第2ないし第4抵抗R2〜R4に接続するパッド18とグランド用のボンディング電極40aを導通し又は導通しなかったときのアノード電圧Vaは、図3(B)に示すように0.02Vから0.62Vまでの範囲で変化する。このため、この設定範囲内でアノード電圧Vaを決定すればよい。
【0029】
なお各抵抗R1〜R5の抵抗値やアノード電圧Vaの設定範囲は、図3に例示する場合に限定されない。すなわち各抵抗R1〜R5の抵抗値を変えれば、アノード電圧Vaの設定範囲を任意に設定できる。またパッド18が接続した抵抗R2〜R4の数は3つに限定されない。すなわちパッド18が接続した抵抗の数を変えても、アノード電圧Vaの設定範囲を任意に設定できる。
【0030】
次に、電圧制御発振器10の製造方法およびアノード電圧Vaの決定方法について説明する。まずパッケージベース32(凹陥部34)の底面にICチップ20を搭載する。そして各端子22,Vc,Vddとボンディング電極40にワイヤ44をボンディングして、これらを導通する。またマウント電極42の上に圧電振動片12を搭載して、これらを導通する。この後、アノード電圧Vaを決定する。
【0031】
具体的には、まず第2ないし第4抵抗R2〜R4の他端を開放にした状態でICチップ20に電源電圧を供給し、電圧制御発振器10から出力する信号(発振器出力信号)の周波数を測定する。そしてグランドに接続している短絡用プローブを、第2ないし第4抵抗R2〜R4に接続したパッド18のうち少なくとも1つに接触させる。これにより第2ないし第4抵抗R2〜R4の少なくとも1つがグランドに接続するので、基準電圧発生源16から出力される基準電圧Vrが分圧されて、可変容量ダイオードCvのアノード電圧Vaが変化する。そしてICチップ20に電源電圧を供給し、発振器出力信号の周波数を測定する。これらの測定結果から、発振器出力信号の周波数変化がわかるので、グランド用のボンディング電極40aに接続すべきパッド18を決定する。なお場合によっては、測定の結果からグランド用のボンディング電極40aとパッド18を接続しないと決定することもできる。この後、この決定結果に基づいて接続すべきパッド18とグランド用のボンディング電極40aにワイヤ44をボンディングして導通し、またはワイヤ44をボンディングすることなくそのまま開放しておく。このようなアノード電圧Vaの決定方法により、アノード電圧Vaを微調整できる。
【0032】
そしてパッケージベース32の上面に前記蓋体を接合して、圧電振動片12やICチップ20を気密封止する。これにより圧電振動片12およびICチップ20等をパッケージ30に搭載した電圧制御発振器10が得られる。
【0033】
またアノード電圧Vaの決定方法には、前述した決定方法とは別の方法を用いることができる。まず各パッド18とグランド用のボンディング電極40aを導通したときの、発振器出力信号の周波数を予めシミュレーションしておく。そして電圧制御発振器10の製造時において、パッケージベース32(凹陥部34)の底面にICチップ20を搭載して、各端子22,Vc,Vddとボンディング電極40にワイヤ44をボンディングするとともに、マウント電極42の上に圧電振動片12を搭載した後、第2ないし第4抵抗R2〜R4の他端を開放にした状態でICチップ20に電源電圧を供給し、発振器出力信号の周波数を測定する。この測定の結果とシミュレーションの結果から、発振器出力信号の周波数変化を予測して、グランド用のボンディング電極40aに接続すべきパッド18を決定し、またはグランド用のボンディング電極40aにパッド18を接続しないと決定する。この後、この決定結果に基づいて接続すべきパッド18とグランド用のボンディング電極40aにワイヤ44をボンディングして導通し、またはワイヤ44をボンディングすることなくそのまま開放にしておく。このような調整方法により、アノード電圧Vaを調整できる。
【0034】
このようにして製造された電圧制御発振器10は、次のように動作する。電源電圧端子Vddから入力された電源電圧を基準電圧発生源16に供給する。基準電圧発生源16から出力する基準電圧Vrを第1ないし第4抵抗R1〜R4で分圧して、所定のアノード電圧Vaにする。そして制御端子Vcから前記Vaと均しい制御電圧を入力すれば、可変容量ダイオードCvのアノードとカソード間の電圧が零ボルトになる。これにより電圧と容量の関係においては、容量変化が大きくて直線性の高い領域も使用するので、中心電圧よりも高電圧側と中心電圧よりも低電圧側で容量変化をほぼ均等にすることができる。このことから、制御電圧と周波数偏差との関係を示す周波数可変特性においても、制御電圧の中心電圧付近において周波数偏差がほぼ直線的に変化し、可変バランスが良好になる。
【0035】
また可変容量ダイオードCvのアノード電圧Vaを調整すると、中心電圧も変化する。図4は周波数偏差と制御電圧との関係を示す図である。このため電源電圧の仕様が異なる電圧制御発振器10であっても、図4に示すようにアノード電圧Vaを調整すると中心電圧V0が高電圧側に移動して、電源電圧の仕様にかかわらず中心電圧V0よりも高電圧側の周波数可変範囲Aと、中心電圧V0よりも低電圧側の周波数可変範囲Bが同等になる。
【0036】
このような電圧制御発振器10及びこれの基準電圧調整方法によれば、第2ないし第4抵抗R2〜R4に接続したパッド18とグランド用のボンディング電極40aとを導通し又は導通しないことにより基準電圧Vrの分圧比を変え、アノード電圧Vaを変更できる。そしてパッド18が接続した抵抗R2〜R4は簡単な回路構成なので、電圧制御発振器10の内部回路が複雑になることはない。
【0037】
このアノード電圧Vaの変更は、可変容量ダイオードCvのバラツキや発振回路14の電源電圧の仕様にかかわらず同一の回路構成、すなわちパッド18が接続した抵抗回路で行える。このため発振回路14の電源電圧の仕様毎に定電圧値を設定した回路を設計し、用意する必要がないので、製造コストを低減できる。
【0038】
そしてアノード電圧Vaを変更することで制御電圧の可変範囲で変化する周波数の直線性を向上でき、中心電圧よりも高電圧側と中心電圧よりも低電圧側で良好な周波数の可変バランスが得られる。なお基準電圧Vrの分圧比の変更はワイヤボンディングにより容易に行えるので、外部からの複雑なICリモートが不要である。
【0039】
なお前述した実施形態では、圧電振動片12に1つの可変容量ダイオードCvが接続した形態であるが、本発明はこの形態に限定されることはない。図5は複数の可変容量ダイオードを備えた電圧制御発振器のブロック図である。すなわち図5に示すように、2つの可変容量ダイオードCv1,Cv2のカソードを圧電振動片12に接続するとともに、アノードを第1ないし第5抵抗R1〜R5等に接続すれば、制御電圧の可変範囲を広くできる。なお3つ以上の可変容量ダイオードを圧電振動片12に接続することもできる。また複数の可変容量ダイオードを並列接続するばかりでなく、直列接続してもよい。さらに可変容量ダイオードのアノードに接続する第5抵抗R5をコンデンサにしてもよい。
【0040】
また前述した実施形態の基準電圧発生源16を飽和電圧型レギュレータとしてもよい。図6は基準電圧発生源を飽和電圧型レギュレータとした場合の電圧制御発振器の説明図である。この基準電圧発生源16(飽和電圧型レギュレータ)の入力側は電源電圧端子Vddに接続するとともに、出力側は可変容量ダイオードCvのアノードに接続している。また基準電圧発生源16のコントロール端子48には、第6抵抗R6、第7抵抗R7、第8抵抗R8、第9抵抗R9、第10抵抗R10の一端が接続している。そして第7ないし第9抵抗R7〜R9の他端にパッド18がそれぞれ接続している。また第6抵抗R6の他端はグランドに接続している。さらに第10抵抗R10の他端は、基準電圧発生源16の出力側と可変容量ダイオードCvのアノードに接続している。そしてこのような形態であっても、複数のパッド18のうちの少なくとも1つにワイヤをボンディングしてグランドに接続し、または全てのパッド18にワイヤをボンディングしないで開放にして、可変容量ダイオードCvのアノード電圧Vaを変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】電圧制御発振器のブロック図である。
【図2】電圧制御発振器の平面図である。
【図3】アノード電圧Vaの設定範囲の一例を示す説明図である。
【図4】周波数偏差と制御電圧との関係を示す図である。
【図5】複数の可変容量ダイオードを備えた電圧制御発振器のブロック図である。
【図6】基準電圧発生源を飽和電圧型レギュレータとした場合の電圧制御発振器の説明図である。
【図7】従来技術の説明図である。
【図8】従来技術に係る電圧制御発振器の周波数偏差と制御電圧の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
10………電圧制御発振器、12………圧電振動片、14………発振回路、16………基準電圧発生源、18………パッド、20………ICチップ、30………パッケージ、44………ワイヤ、Cv………可変容量ダイオード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード側が圧電振動片に接続した可変容量ダイオードのアノード側に、基準電圧発生源を接続するとともに、他方を開放した複数の抵抗を並列接続し、
並列接続した複数の前記抵抗の他方を選択して接地したときの前記圧電振動片の周波数を測定し、
この周波数測定結果に基づいて他方を接続する前記抵抗を決定する
ことを特徴とする電圧制御発振器の基準電圧調整方法。
【請求項2】
カソード側が圧電振動片に接続した可変容量ダイオードと、
前記可変容量ダイオードのアノード側に直列接続した抵抗と、
前記可変容量ダイオードのアノード側に一方が接続し、他方がパッドに接続した抵抗と、
を備えたことを特徴とする電圧制御発振器。
【請求項3】
圧電振動片と、
前記圧電振動片に一端が接続した可変容量ダイオードと、
前記可変容量ダイオードの他端に接続した基準電圧発生源と、
前記可変容量ダイオードの他端に一方が接続するとともに、他方がパッドに接続した抵抗と、
前記圧電振動片、前記可変容量ダイオード、前記基準電圧発生源および前記抵抗を搭載し、前記パッドと短絡し又は開放するグランド用のボンディング電極を備えたパッケージと、
を備えたことを特徴とする電圧制御発振器。
【請求項4】
前記抵抗を複数備え、この各抵抗に接続した前記パッドのうちの少なくとも1つとグランド用の前記ボンディング電極とをワイヤで導通し、または全ての前記パッドとグランド用の前記ボンディング電極とをワイヤで導通せず開放にしたことを特徴とする請求項3に記載の電圧制御発振器。
【請求項5】
前記基準電圧発生源は、入力端子、出力端子およびコントロール端子を備え、
前記可変容量ダイオードの他端と前記コントロール端子との間に、前記抵抗を接続したことを特徴とする請求項3または4に記載の電圧制御発振器。
【請求項6】
前記可変容量ダイオード、前記基準電圧発生源および前記抵抗をICチップ内に搭載し、前記パッドを前記ICチップの主面に設けたことを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載の電圧制御発振器。
【請求項7】
前記可変容量ダイオードを複数備えたことを特徴とする請求項2ないし6のいずれかに記載の電圧制御発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−300475(P2007−300475A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−127642(P2006−127642)
【出願日】平成18年5月1日(2006.5.1)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】