説明

電圧制御発振回路

【課題】簡単な回路構成で応答性をよくし、切り替えられる発振信号の各周波数で同一電圧振幅を得られる電圧制御発振回路を提供する。
【解決手段】LCタンク回路1に第1及び第2のキャパシタ群11,12を備える、第1及び第2のキャパシタ群11,12はそれぞれ2つのキャパシタC1,C2を備える。負性コンダクタンス部2により、LCタンク回路1の共振信号をフィードバックして相互180°の位相差を有する2つの発振信号を生成し、2つの出力端out1,out2から出力する。電流源31,32からなる電流源3から負性コンダクタンス部2を介してLCタンク回路1に電流を供給する。制御信号を、CMOSスイッチからなる電流源スイッチ4,第1キャパシタスイッチ5及び第2キャパシタスイッチ6に与え、電流源群3から供給する電流とLCタンク回路1のキャパシタンスを切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流源を制御する電圧制御発振器に関し、特に簡単な構成で一定電圧振幅の発振信号を生成する電圧制御発振器に関する。
【0002】
従来、電圧制御発振機、電圧制御型発振回路あるいは電圧制御発振回路として、例えば特開2007−28613号公報(特許文献1)、特開2005−323286号公報(特許文献2)及び特開2005−245005号公報(特許文献3)に開示されたものがある。
【0003】
特許文献1のものは、共振回路の共振信号をフィードバックして相互180°の位相差を有する2つの発振信号を生成して2つの出力端から出力する差動増幅回路と、この発振信号の利得を制御するアクティブ負荷を含む電圧制御発振部と、2つの発振信号のピークを検出して整流するピーク検出器と、ピーク検出器で整流された信号を直流電圧に変換出力する低帯域通過フィルタと、低帯域通過フィルタの出力直流電圧を基準電圧を比較してその比較した結果に伴いアクティブ負荷の抵抗値を制御する制御電圧を出力する比較器を含む自動振幅制御部とを備え、低帯域通過フィルタの出力直流電圧が基準電圧より小さい場合、比較器がアクティブ負荷の抵抗値を増加させる制御電圧を出力して差動増幅機の利得を増加させ、低帯域通過フィルタの出力直流電圧が基準電圧より大きい場合、比較器がアクティブ負荷の抵抗値を減少させる制御電圧を差動増幅機の利得を減少させるようにした、自動振幅制御機能を有する電圧制御発振機である。
【0004】
特許文献2のものは、電圧制御発振回路(VCO)からの発振振幅を振幅検出回路(ADC)を介して振幅を検出し、比較回路(COP)で基準電圧と比較した時のバイアス電流に基き、一定に制御するような負帰還回路をバイアス回路のNMOSトランジスタに設け共振回路のインピーダンスの変化に応じてバイアス電流が適切な値に制御されるようにしてVCOから安定した発振が得られるようにした振幅制御付電圧制御型発振回路である。
【0005】
特許文献3の電圧制御発振回路の振幅制御回路は、振幅制御対象回路と、振幅制御の基準となる基準電圧を生成して出力する基準電圧生成回路と、この基準電圧と上記振幅制御対象回路の出力電圧が入力され、両者の電位差が無くなるように差動型ディレーセルの振幅制御部と振幅制御対象回路の振幅制御部を制御する制御電圧を出力する演算増幅回路とを備えたものである。そして、演算増幅回路から出力される制御電圧によって、AC動作している差動型ディレーセルの発振振幅の下限値と、DC動作している振幅制御対象回路の出力電圧との誤差を補正するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−28613号公報
【特許文献2】特開2005−323286号公報
【特許文献3】特開2005−245005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1〜3の従来の発振回路では、制御するための各種の付加回路が必要であるため回路構成が複雑、かつ、大規模になるという問題がある。また、特許文献1及び3のものでは電流源が1つでるため電流制御が困難で広帯域化が困難である。また、特許文献1のものでは、ピーク検出器、低帯域通過フィルタ及び比較器により制御電圧を出力している。また、特許文献2のものでは、共振回路のインピーダンスの変化に応じてバイアス電流を制御している。また、特許文献3のものでは振幅制御対象回路の出力電圧が基準電圧と等しくなるように制御電圧を出力している。すなわち、これらの技術はいずれもフィードバック制御であり、応答性が悪化するという問題がある。
【0008】
本発明は、電圧制御発振回路において、簡単な回路構成で応答性をよくし、切り替えられる発振信号の各周波数で同一電圧振幅を得られるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の電圧制御発振回路は、それぞれ複数のキャパシタからなる第1及び第2のキャパシタ群を有するLCタンク回路と、前記LCタンク回路の第1及び第2のキャパシタ群の間に接続され上記LCタンク回路の共振信号をフィードバックして相互180°の位相差を有する2つの発振信号を生成し、該発振信号を上記LCタンク回路に供給する負性コンダクタンス部と、複数の電流源からなり前記負性コンダクタンス部を介して前記LCタンク回路に電流を供給する電流源群と、該電流源群の一部の電流源と前記負性コンダクタンス部との接続を開閉する電流源スイッチと、前記第1及び第2のキャパシタ群のそれぞれ一部のキャパシタを等電位接地に対して開閉する第1キャパシタスイッチ及び第2キャパシタスイッチと、該第1キャパシタスイッチ及び第2キャパシタスイッチと前記電流源スイッチとの間に接続された遅延回路と、を備え、前記遅延回路と前記電流源スイッチとに制御信号を出力して前記電流源群が前記負性コンダクタンス部に供給する電流を切り替えるとともに、該制御信号を前記遅延回路を介して前記第1キャパシタスイッチ及び第2キャパシタスイッチに出力することにより、前記第1及び第2のキャパシタ群のキャパシタンスを変化させ、該キャパシタンスの変化量に応じて前記電流源群が前記負性コンダクタンス部を介して前記LCタンク回路に供給する電流を切り替えるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の電圧制御発振回路によれば、遅延回路、電流源スイッチ、第1キャパシタスイッチ及び第2キャパシタスイッチにより、LCタンク回路の第1及び第2のキャパシタ群におけるキャパシタンスを変化させて発振信号の周波数を切り替えるとともに、このキャパシタンスの変化量に応じて、電流源群から負性コンダクタンス部に供給される電流を切り替えるので、制御信号は切替え信号のみでくフィードバック制御を必要とせず、かつ、遅延回路と例えばCMOSトランジスのようなスイッチという構成でよいので、簡単な回路構成となる。また、フィードバンク制御を行っていないので応答性が良くなる。キャパシタンスの変化量に応じて供給する電流を切り替えるので、発振信号の各周波数で同一電圧振幅を得ることができる。また、各周波数に必要な電流のみを供給することができ、低消費電力となる。さらに、動作原理上、電圧振幅制御が発振周波数の帯域に影響を与えることはなく、この発振周波数の幅に制限がなく、広帯域の回路設計を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態の電圧制御発振回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は実施形態の電圧制御発振回路の回路図であり、この実施形態の電圧制御発信回路は、大別してLCタンク回路1と、負性コンダクタンス部2と、電流源群3と、電流源スイッチ4と、第1キャパシタスイッチ5と、第2キャパシタスイッチ6と、遅延回路7とから構成されている。電流源スイッチ4、第1キャパシタスイッチ5及び第2キャパシタスイッチ6はそれぞれCMOSスイッチである。
【0013】
LCタンク回路1は、2つの可変キャパシタVC,VC、抵抗R,R、キャパシタC,Cを介して抵抗R,Rに並列に接続された、インダクタンスL,L、第1のキャパシタ群11、第2のキャパシタ群12から構成されている。抵抗R,R、インダクタンスL,Lの他端は等電位接地されている。また、第1及び第2のキャパシタ群11,12は、それぞれ並列接続された複数のキャパシタC1,C2から構成されており、一方のキャパシタC1,C1は等電位接地され、他方のキャパシタC2,C2は第1キャパシタスイッチ5及び第2キャパシタスイッチ6を介して等電位接地されている。
【0014】
負性コンダクタンス部2は、ゲートとドレインが相互接続され各ドレインが出力端out1,out2にそれぞれ接続された2つのPMOSトランジスタT1、T2から構成されている。そして、ソース側に電流源群3が接続され、この電流源群3から電流が供給される。
【0015】
電流源群3は、並列接続される第1及び第2の電流源31,32を有しており、第1の電流源31の出力端は負性コンダクタンス部2のトランジスタT1,T2のソース側に接続され、第2の電流源32は電流源スイッチ4を介してトランジスタT1,T2のソース側に接続される。
【0016】
電流源スイッチ4と遅延回路7には、図示しない制御回路から出力される制御信号(切替え信号)が入力され、遅延回路7はこの制御信号を遅延して出力し、この遅延された制御信号が第1キャパシタスイッチ5と第2キャパシタスイッチ6に入力される。
【0017】
電流源スイッチ4は、制御信号がhighレベルのときは第2の電流源32を負性コンダクタンス部2(そのソース側)に接続しており、この電流源スイッチ4は制御信号がlowレベルのときは第2の電流源32を負性コンダクタンス部2から遮断する。第1キャパシタスイッチ5及び第2キャパシタスイッチ6は、制御信号がhighレベルのときは第1及び第2のキャパシタ群11,12の各キャパシタC2,C2を等電位接地に接続しており、この第1キャパシタスイッチ5及び第2キャパシタスイッチ6は制御信号がlowレベルになると上記各キャパシタC2,C2を等電位接地から遮断する。
【0018】
以上の構成により、制御信号がhighレベルのときは、電流源群3の第1及び第2の電流源31,32から負性コンダクタンス部2に電流が供給される。そして、可変キャパシタVC、VCの設定された容量と、第1及び第2のキャパシタ群11,12の4つのキャパシタC1,C1,C2,C2の容量、及びインダクタンスL,Lにより、共振信号の第1の共振周波数が決定され、この共振信号がトランジスタT1、T2のゲートに入力されることにより出力端out1、out2で相互180°の位相差を有する第1の周波数の発振信号が得られる。なお、この出力端out1、out2から出力される発振信号は該発振信号を利用する利用回路に供給される。
【0019】
制御信号がlowレベルになると、電流源群3の第1の電流源31のみから負性コンダクタンス部2に電流が供給される。そして、可変キャパシタVC、VCの設定された容量と、第1及び第2のキャパシタ群11,12の2つのキャパシタC1,C1の容量、及びインダクタンスL,Lにより、共振信号の第2の共振周波数が決定され、この共振信号がトランジスタT1、T2のゲートに入力されることにより出力端out1、out2で相互180°の位相差を有する第2の周波数の発振信号が得られる。
【0020】
このように、タンク回路1のキャパシタンス変化量に応じて電流源群3が切り替わることにより、この切り替え前後の第1の周波数と第2の周波数の各周波数で同一電圧振幅の発振信号が得られる。また、このときの制御信号は、CMOSスイッチである電流源スイッチ4、第1キャパシタスイッチ5及び第2キャパシタスイッチ6に対する切り替え信号のみであり、フィードバック制御を行っていない。さらに、タンク回路1のキャパシタンス変化量に応じて電流源群3における電流源(31及び32と、31)を切り替えているので、各周波数に必要な電流のみを供給することができ、低消費電力となる。さらに、発振信号の電圧振幅制御を実質的に行っていないので、発振周波数帯域に影響を与えることはなく、この発振周波数の幅に制限はない。
【0021】
なお、タンク回路1におけるキャパシタンスの量と電流源群3から供給する電流は、当該発振回路で得ようとする発振信号の周波数及び電圧振幅に応じて適宜設定したものであることはいうまでもない。
【0022】
なお、実施例では、タンク回路1の第1及び第2のキャパシタ群11,12は、それぞれ2つのキャパシタC1,C2を有し、電流源群3は第1及び第2の電流源31,32を有し、タンク回路1のキャパシタンスを2通りに切り替え、これに対応して電流源群3から供給する電流を2通りに切り替えるようにしているが、このタンク回路のキャパシタンスと電流源群から供給する電流を2通り以上の多段に切り替えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 LCタンク回路
11 第1のキャパシタ群
12 第2のキャパシタ群
2 負性コンダクタンス部
3 電流源群
31 第1の電流源
32 第2の電流源
4 電流源スイッチ
5 第1キャパシタスイッチ
6 第2キャパシタスイッチ
7 遅延回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ複数のキャパシタからなる第1及び第2のキャパシタ群を有するLCタンク回路と、前記LCタンク回路の第1及び第2のキャパシタ群の間に接続され上記LCタンク回路の共振信号をフィードバックして相互180°の位相差を有する2つの発振信号を生成し、該発振信号を上記LCタンク回路に供給する負性コンダクタンス部と、複数の電流源からなり前記負性コンダクタンス部を介して前記LCタンク回路に電流を供給する電流源群と、該電流源群の一部の電流源と前記負性コンダクタンス部との接続を開閉する電流源スイッチと、前記第1及び第2のキャパシタ群のそれぞれ一部のキャパシタを等電位接地に対して開閉する第1キャパシタスイッチ及び第2キャパシタスイッチと、該第1キャパシタスイッチ及び第2キャパシタスイッチと前記電流源スイッチとの間に接続された遅延回路と、
を備え、
前記遅延回路と前記電流源スイッチとに制御信号を出力して前記電流源群が前記負性コンダクタンス部に供給する電流を切り替えるとともに、該制御信号を前記遅延回路を介して前記第1キャパシタスイッチ及び第2キャパシタスイッチに出力することにより、前記第1及び第2のキャパシタ群のキャパシタンスを変化させ、該キャパシタンスの変化量に応じて前記電流源群が前記負性コンダクタンス部を介して前記LCタンク回路に供給する電流を切り替えるようにしたことを特徴とする電圧制御発振回路。

【図1】
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【公開番号】特開2011−120036(P2011−120036A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276089(P2009−276089)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】