電圧印加装置、回転機器および電圧印加方法
【課題】回転場による慣性力下でも低ノイズで、安定的に供給できる電圧印加装置を提供する。
【解決手段】実施形態の電圧印加装置は、回転翼の回転軸が回転可能に保持部に保持された回転機器の前記回転翼に配置される気流発生装置において互いに離間して配置された第1および第2の電極の間に電圧を印加する。実施形態の電圧印加装置では、電圧出力部が電圧を出力する。そして、回転軸の回転翼側、保持部側のそれぞれに配置される電極を有する摺動型伝達部が、電圧出力部から出力される電圧を保持部側から回転翼側に伝達する。そして、回転翼側に配置された変圧部が、摺動型伝達部が伝達した電圧を昇圧して気流発生装置に出力する。
【解決手段】実施形態の電圧印加装置は、回転翼の回転軸が回転可能に保持部に保持された回転機器の前記回転翼に配置される気流発生装置において互いに離間して配置された第1および第2の電極の間に電圧を印加する。実施形態の電圧印加装置では、電圧出力部が電圧を出力する。そして、回転軸の回転翼側、保持部側のそれぞれに配置される電極を有する摺動型伝達部が、電圧出力部から出力される電圧を保持部側から回転翼側に伝達する。そして、回転翼側に配置された変圧部が、摺動型伝達部が伝達した電圧を昇圧して気流発生装置に出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電圧印加装置、回転機器および電圧印加方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ファン、風車、タービン等の回転機器が有する回転翼の表面に、プラズマによる気流発生装置を配置し、回転場に電圧を供給する電圧供給装置が提案されている。この電圧印加装置は、回転する翼の表面に設置された気流発生装置の第1の電極と、この第1の電極から離間して配置された第2の電極との間に電圧を印加することで、第1の電極と第2の電極間に気流を発生させる。これによって、回転翼の表面の境界層の速度分布に影響を与えて、剥離を抑制したり流速の変動を緩和することで、気流の流れを安定化して騒音や振動を低減し、翼の空気力学的特性が改善される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−291798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、気流発生装置に電磁ノイズが混入する恐れがあることが分かった。例えば、回転機器の回転側と固定側とを電気的に接続する摺動型伝達部を介して、高周波高電圧を伝達すると、摺動型伝達部の摺動部は、摺動部の凹凸や押し付け力の不均一性により接触面積や接触抵抗が非定常に変動する。このため、その変動に応じて摺動部付近に微小な放電が発生し、放電による電磁ノイズが発生する。これにより、周辺の他機器へノイズの影響が出るだけでなく、気流発生装置に供給する電力に電磁ノイズが混入することにより、気流発生装置の動作が不安定となり、騒音や振動の低減や効率向上の効果が十分に得られなくなる。また、摺動型伝達部における放電により伝達部が損耗し、ランニングコストを押し上げる要因となる。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、回転機器の動作中でも低ノイズで、安定的に供給できる電圧印加装置、回転機器および電圧印加方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態電圧印加装置は、回転翼の回転軸が回転可能に保持部に保持された回転機器の前記回転翼に配置された気流発生装置において互いに離間して配置された第1および第2の電極の間に電圧を印加する。実施形態の電圧印加装置では、電圧出力部が電圧を出力する。そして、回転軸の回転翼側、保持部側のそれぞれに配置される電極を有する摺動型伝達部が、電圧出力部から出力される電圧を保持部側から回転翼側に伝達する。そして、回転翼側に配置された変圧部が、摺動型伝達部が伝達した電圧を昇圧して気流発生装置に出力する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、回転機器の動作中でも低ノイズで、安定的に供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、一実施形態の電圧印加装置の構成を示す側面図である。
【図2】図2は、気流発生装置を模式的に示す斜視図である。
【図3】図3は、図2のA−A断面を示す断面図である。
【図4】図4は、電圧印加装置の電気回路の構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、実施形態2の電圧印加装置の構成を示す側面図である。
【図6】図6は、実施形態3の電圧印加装置の構成を示す側面図である。
【図7】図7は、図6の回転軸とスリップリングの取付状態を示す拡大断面図である。
【図8】図8は、図1に示したブレードの一実施形態を示す斜視図である。
【図9】図9は、図8に示したブレードに配置した気流発生装置と変圧器の応用例を示す斜視図である。
【図10】図10は、一実施形態の風力発電システムの大型風車の一部分を示す斜視図である。
【図11】図11は、他の実施形態の風力発電システムの大型風車の一部分を示す斜視図である。
【図12】図12は、変圧器をファンの回転軸の端部に配置した場合の図である。
【図13】図13は、ファンの雑音スペクトルを示す図である。
【図14】図14は、電磁ノイズレベルの比較結果を示す図である。
【図15】図15は、騒音スペクトルのうちプラズマによって低減できるピークの強度の比較結果を示す図である。
【図16】図16は、振動強度の比較結果を示す図である。
【図17】図17は、電源効率の比較結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態1)
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は一つの実施形態に係る電圧印加装置30の構成を示す側面図である。
【0010】
図1に示すように、この電圧印加装置30は、回転機器であるファン10に配置されている。このファン10は、例えば家庭用の小型のファンであり、ケーシング(筺体)11と、ケーシング11に取り付けられた軸受(保持部)12と、軸受12に回動可能に支持された回転軸13と、回転軸13の端部に取り付けられ回転軸13とともに回転する複数のブレード(回転翼)14とを有する。複数のブレード14のうち、少なくとも一つのブレード14の表面には、ブレード14上にプラズマを生成する気流発生装置20が配置され、電圧印加装置30によって高周波で高い電圧が印加されている。
【0011】
図2は、気流発生装置20を模式的に示す斜視図である。図3は、図2のA−A断面を示す断面図である。
図2および図3に示すように、気流発生装置20は、誘電体21の表面に露出された電極22(第1の電極)と、この電極22と誘電体21の表面からの距離が異なり、かつ誘電体21の表面と水平な方向にずらして離間され、誘電体21内に埋設された電極23(第2の電極)とを有する。その一対の電極22,23間には、ケーブル24を介して電圧を印加する電圧印加装置30が接続されている。誘電体21、一対の電極22,23は、ブレード14の表面上に長手方向に沿って延設されている(図1参照)。
【0012】
この気流発生装置20において、電圧印加装置30によって、一対の電極22,23の間に、高周波で高い電圧を印加すると、一対の電極22,23の間に放電が起こり、この放電に伴って放電プラズマが発生する。ここで、一対の電極22,23の間に誘電体21を介在させているので、アーク放電にはいたらず、安定に維持されることが可能な誘電体バリア放電が生じる。この誘電体バリア放電は、誘電体21に沿って形成される沿面放電となる。この誘電体バリア放電によって、気流発生装置20の表面、すなわち誘電体21の表面に沿って、図2,図3中に示す矢印方向に流れる気流25を発生できる。この発生された気流25によって、ブレード14の周りにおいて流れの剥離抑制や騒音・振動の抑制等の気流制御効果が可能になる。
【0013】
図4は、電圧印加装置30の電気回路の構成を示すブロック図である。
図4に示すように、電圧印加装置30は、交流電圧を直流電圧に変換するAC/DC変換部31と、高周波電圧を発生する高周波発生部32と、摺動型伝達部35(図1参照)を介して高周波発生部32と接続され、高周波高電圧を発生する変圧器33とを備える。
【0014】
図1に示すように、AC/DC変換部31は、ケーシング11に配置されている。AC/DC変換部31は、例えば商用周波数の正弦波低電圧(AC)を、図示しないダイオード等を介して直流電圧(DC)に変換する。AC/DC変換部31は、交流電圧を直流電圧に変換する電圧変換部として機能する。なお、交流電圧は、リップルを低く抑えるために3相交流電圧を用いるのが望ましい。
【0015】
高周波発生部32は、図1に示すように、ケーシング11に配置されている。高周波発生部32は、例えばIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)やFET(電界効果トランジスタ)を用いたスイッチングにより、供給された直流電圧によって起動して高周波のパルスを発生し、1[kHz]〜20[kHz]程度の高周波の交番電圧を生成する。高周波発生部32は、ケーブル34を介して摺動型伝達部35と電気的に接続されている。この高周波発生部32は、電圧変換部によって変換された直流電圧に基づいて、高周波成分を発生する機能を有する。
【0016】
摺動型伝達部(例えばスリップリング)35は、図1に示すように、ファン10の回転軸13に取り付けられ、この回転軸13とともに回転する2つのリング(電極)35aと、リング35aと組みをなし、高周波発生部32と電気的に接続された2つのブラシ(摺動接点)35bとを有する。2つのリング35aは、回転軸13においてブレード14(回転翼)側と、軸受12(保持部)側に配置されており、互いに電気的に絶縁され、それぞれが変圧器33に電気的に接続されている。リング35aとブラシ35bとの2つの組において、リング35aとブラシ35bは、互いに電気的に接触し、高周波発生部32から出力される高周波交番電圧を変圧器33に伝達する機能を有する。つまり、摺動型伝達部35は、軸受12(保持部)の側からブレード14(回転翼)の側に電圧を伝達する。なお、回転軸にブラシを配置して、ブラシと電気的に接続されたリングを保持部側に配置してもよい。
【0017】
変圧器33は、図1に示すように、リング35aよりブレード14側の回転軸13に配置されている。変圧器33は、リング35aから伝達された例えば100[V]〜400[V]の高周波の交番電圧を、数[kV]の高周波の高電圧に昇圧し、気流発生装置20に出力する。変圧器33は、重心がファン10の回転軸13の中心軸に略一致するように、回転軸13上に配置されている。変圧器33は、摺動型伝達部35から出力された電圧を高周波高電圧に変換して気流発生装置20に出力する機能を有する。なお、上述した略一致とは、例えば回転軸13の中心軸と変圧器33の重心33a間の距離Lが、回転軸13の中心軸とブレード14の先端との距離(以下、「翼長」という)L0の5%以下であることをいう。
【0018】
すなわち、この実施形態では、変圧器33を、その重心が回転軸13の中心軸に略一致するように、例えばこの回転軸13のブレード14側の端部の中心軸上に配置し、AC/DC変換部31と高周波発生部32をファン10の保持側(ケーシング11)に配置する。そして、高周波発生部32が、AC/DC変換部31で生成された直流電圧に基づいて高周波の交番電圧を発生させ、この高周波の交番電圧を摺動型伝達部35を介して変圧器33に供給できる。変圧器33は、摺動型伝達部35から伝達された高周波の交番電圧を、高周波高電圧に変換して気流発生装置20に出力する。
【0019】
この気流発生装置20では、電圧印加装置30から高周波高電圧が一対の電極22,23間に印加されると、一対の電極22,23の間に放電が起こり、この放電に伴って放電プラズマを発生できる。そしてこの発生したプラズマによって、気流発生装置20の表面(ブレード14)に沿って気流25を発生できる。
【0020】
これにより、この実施形態では、摺動型伝達部35(リング35a)に高電圧を印加することなしに、気流発生装置20に高周波高電圧を印加することができる。このため、回転機器の動作中でも高周波高電圧を低ノイズで、安定的に供給できる(後述する実験結果参照)。この結果、気流発生装置の動作が安定し、ブレード14の周囲での気流の流れを安定化して騒音や振動の低減を実現できる。また、摺動型接点における放電によるノイズの発生を防いだり、接点の損耗を緩和することができる。
【0021】
また、この実施形態では、重量の大きい変圧器33を、その重心が回転軸13の回転軸に略一致するように、回転軸13に配置している。このため、変圧器33の支持部や回転中心にかかるモーメントを小さく抑えることができ、耐久性の向上や振動、騒音の低減を実現できる。
また、この実施形態では、電圧印加装置30に関して、変圧器33と、それ以外の部分を分離している。そして、変圧器33のみを回転翼(ブレード14)側に配置し、それ以外の部分を保持部(軸受12)側に配置している。このため、回転翼(ブレード14)側の重量が増加することを抑制できる。また、軸受12構造簡略化、長寿命化、低コスト化、回転部分モーメントの低減、設計の簡素化を実現できる。
【0022】
なお、電圧印加装置30への入力が直流電圧である場合には、AC/DC変換部31の代わりに、この直流電圧を所定電圧値に昇圧するDC/DC変換部を設置することが可能である。または、電圧印加装置30へ入力する直流電圧が所定電圧値の場合には、AC/DC変換部31もこのDC/DC変換部も設置しなくてもよい。
【0023】
このような構成により、電圧印加装置30の製造コストの削減とともに、部品点数を削減することも可能となる。例えば後述する風力発電システムの大型風車にこの電圧印加装置30を用いると、上述した直流電圧を取り出して電圧印加装置30に入力できる場合があり、上述した電圧印加装置30の製造コストの低減や部品点数が削減できる。
【0024】
(実施形態2)
図5は、実施形態2の電圧印加装置30の構成を示す側面図である。
図5に示すように、ファン10と気流発生装置20の構成は、図1と同様であるが、電圧印加装置30の配置構成が異なっている。すなわち、この電圧印加装置30は、気流発生装置20の駆動に必要なAC/DC変換部31、高周波発生部32および変圧器33のうち、高周波発生部32と変圧器33がリング35aよりブレード14側の回転軸13に配置されている。
【0025】
高周波発生部32と変圧器33は、その合成された重心がファン10の回転軸13の中心軸に略一致するように、回転軸13に配置する。AC/DC変換部31で生成された直流電圧は、摺動型伝達部35を介して高周波発生部32に出力される。
【0026】
つまり、ブラシの耐久性を上げるためには、リング35aとブラシ35bの接触面積をできるだけ小さくすることが望ましい。しかし、この接触面積が小さくなると、振動や摩耗等により、瞬間的に電圧の印加が途切れる場合がある。このため、印加の途切れが生じた電圧をそのまま変圧器33に供給すると、気流発生装置20へ供給する電圧にも瞬間的な変動が発生し、安定的なプラズマ放電を維持できなくなる。
【0027】
そこで、摺動型伝達部35(リング35a)よりブレード14側の回転軸13に高周波発生部32を配置させることで、高周波発生部32が備える所定の周波数帯域を得るためのフィルタ機能を利用することができる。このフィルタ機能により、直流電圧の瞬間的な変動が、変圧器33まで伝達されなくなり、気流発生装置20へ供給する電圧が安定し、安定的なプラズマ放電を維持できる。この結果、気流発生装置20の表面に沿って気流25を途切れなく発生できる。この発生された気流25によって、ブレード14の安定した回転が可能になる。
なお、この高周波発生部32と変圧器33の構造は、後述する図12(a)で詳細に説明する。
【0028】
ところで、この高周波発生部32は、所定の周波数帯域を得るためのフィルタ機能を備えているが、このフィルタ機能は別体でもよい。この場合には、フィルタ機能と高周波発生部と変圧器の合成された重心が回転軸13の中心軸に略一致するように、リング35aよりブレード14側の回転軸13に配置させる。またはフィルタ機能のみをブレード14側の回転軸13に配置させ、高周波発生部32はファン10の保持側に配置させることも可能である。なお、上述した略一致とは、例えば中心軸と、高周波発生部32と変圧器33との合成された重心間の距離Laが、翼長L0の5%以下であることをいう。
【0029】
すなわち、この実施形態では、高周波発生部32と変圧器33を、その合成された重心が回転軸13の中心軸に略一致するように、この回転軸13に配置し、AC/DC変換部31から出力した直流電圧を、摺動型伝達部35を介して高周波発生部32に供給する。
【0030】
これにより、この実施形態では、瞬間的な電圧の印加途切れが生じても、高周波発生部32のフィルタ機能により、直流電圧の瞬間的な変動が、変圧器33まで伝達されなくなり、回転機器の動作中でも高周波高電圧を低ノイズで、安定的に供給できる。この結果、気流発生装置20への供給電圧が安定し、安定的なプラズマ放電を維持できる。
【0031】
また、この実施形態では、高周波発生部32と変圧器33を、その合成された重心が回転軸13の中心軸に略一致するように、回転軸13に配置する。このため、変圧器33の支持部や回転軸13の回転中心にかかるモーメントを小さく抑えることができ、耐久性の向上や振動、騒音の低減を実現できる。
なお、本実施形態においては、AC/DC変換部31が保持部(軸受12)側に配置されている。しかし、AC/DC変換部31を回転翼(ブレード14)側に配置して、商用周波数の正弦波低電圧(AC)を、摺動型伝達部35を介してAC/DC変換部31に供給するようにしてもよい。
【0032】
(実施形態3)
図6は、実施形態3の電圧印加装置30の構成を示す側面図である。図7は、図6の回転軸13とスリップリング(摺動型伝達部)35との取付状態を示す拡大断面図である。
【0033】
図6、図7に示すように、ファン10と気流発生装置20の構成は、図1と同様であるが、電圧印加装置30の配置構成が異なっている。すなわち、この電圧印加装置30は、回転軸13の軸受12側とは反対側の端部13aにスリップリング35のリング35aを取り付け、このリング35aにブラシ35bを電気的に接触させ、AC/DC変換部31から出力した直流電圧を、摺動型伝達部35を介して高周波発生部32に供給する。
【0034】
回転軸13とスリップリング35の取付状態を説明する。図7に示すように、スリップリング35のリング35aは、取付軸35cの長手方向の一端側に固定されて配置されている。また、回転軸13の端部13aの中央部分には、取付軸35cの一端が嵌合可能な孔13bが設けられている。
【0035】
取り付け時には、回転軸13の端部13aの孔13bに取付軸35cの長手方向の他端を挿入して嵌合させ、さらにネジ40を用いて取付軸35cを回転軸13の端部13aに固定することができる。
【0036】
このように、この実施形態では、回転軸13の端部13aの孔13bに、リング35aを固定した取付軸35cを嵌合させる。このため、リング35aを回転軸13に直接取り付けた図1の場合に比べ、リング35aの回転半径を小さくすることができ、1回転あたりの摺動距離を短くすることができる。図1の場合は、回転軸13はファン10の回転構造を機械的に支持する必要があるため、必要な太さをもった丸棒状のものになる。これに図1のようにスリップリング35を設置する場合、リング35aの直径は丸棒の直径より大きくする必要があり、1回転あたりの摺動距離が大きくなる。図7のようにすればスリップリング35を取り付ける丸棒は35cのようになり、この丸棒はスリップリング35の回転構造のみを支持する強度があればよい。このため、細い丸棒を使用でき、これに取り付けるリング35aの直径も小さくでき、1回転あたりの摺動距離が短くなる。
これにより、同じ回転数で回転軸13を回転させた時のブラシ35bの摩耗率を図1の場合より低減することができ、摺動型伝達部35の使用寿命を向上させることができる。
【0037】
また、この実施形態では、実施形態1と同様に、回転機器の動作中でも高周波高電圧を低ノイズで、安定的に供給できる。
また、この実施形態でも、高周波発生部32と変圧器33を、その合成された重心が回転軸13の中心軸に略一致するように、回転軸13に配置している。このため変圧器33の支持部や回転軸13の回転中心にかかるモーメントを小さく抑えることができ、耐久性の向上や振動、騒音の低減を図ることができる。
【0038】
なお、この実施形態でも、上述した略一致とは、実施形態2と同様に、例えば中心軸と、高周波発生部32と変圧器33との合成された重心間の距離Laが、翼長L0の5%以下であることをいう(図5参照)。
また、本実施形態では、AC/DC変換部31が保持部(軸受12)側に配置されている。しかし、AC/DC変換部31を回転翼(ブレード14)側に配置し、商用周波数の正弦波低電圧(AC)を、摺動型伝達部35を介してAC/DC変換部31に供給するようにしてもよい。
【0039】
(実施形態4)
図8は、図1に示したブレードの一実施形態を示す斜視図である。
図1に示したファン10のブレード14は、例えば図8に示すように、回転軸13の半径方向に互いが等しい角度になるように、回転軸13に配設された複数の翼であり、実施形態では3つの翼14a〜14cを有する。これらの翼14a〜14cは、回転軸13と一体的に構成されている。なお、この実施形態におけるファン10のブレード14は、3つの翼で構成されるが、これに限定されるものではない。
【0040】
各翼14a〜14cの表面上には、気流発生装置20がそれぞれ配置されるとともに、この気流発生装置20の近傍に変圧器33がそれぞれ配置されて、気流発生装置20と電気的に接続されている。これらの変圧器33のそれぞれは、その合成された重心が回転軸13の中心軸に略一致するように、各翼14a〜14cに配置されている。この実施形態では、例えば変圧器33がほぼ同じ重さで回転軸13の中心軸から略等間隔になるように、各翼14a〜14cにそれぞれ配置させることで、上述した合成された重心を回転軸13の中心軸に略一致させることができる。
【0041】
なお、略一致とは、例えば回転軸13の中心軸と、各翼14a〜14cの変圧器33の合成重心間の距離をL11とし、翼長をL0とすると、L11/L0≦5/100とすることをいう。
【0042】
また、略等間隔とは、例えば回転軸13の中心軸から各翼14a〜14cの変圧器33までの距離を、それぞれL11/L0≦1/5、L12/L0≦1/5、L13/L0≦1/5とすることをいう。
【0043】
この実施形態では、3つの気流発生装置20に重量の大きい1つの変圧器33から高周波高電圧を供給する場合に比べ、小型で重量の軽い3つの変圧器33からそれぞれの気流発生装置20に高周波高電圧を供給できる。このため、重量の分散が可能となって、変圧器33の支持部や回転軸13の回転中心にかかるモーメントを小さく抑えることができ、耐久性の向上や振動、騒音の低減を実現できる。この結果、回転機器の動作中でも高周波高電圧を低ノイズで、安定的に供給できる。
【0044】
また、この実施形態では、各変圧器33を気流発生装置20の近傍にそれぞれ配置できるので、変圧器33と気流発生装置20を接続するための配線38が最小限に短縮でき、この配線からのノイズの侵入を防ぐことができる。この結果、回転機器の動作中でも高周波高電圧を低ノイズで、さらに安定的に供給できる。
【0045】
(応用例)
図9は、図8に示したブレード14に配置した気流発生装置20と変圧器33の応用例を示す斜視図である。この応用例では、図8と気流発生装置20と変圧器33の配置構成が異なっている。
【0046】
すなわち図9に示すように、この応用例では、各翼14a〜14cに配置された気流発生装置を分割、例えば3つの気流発生装置20a〜20cに分割してそれぞれ配置されている。これとともに、その気流発生装置20a〜20cの近傍に変圧器33a〜33cがそれぞれ配置されており、変圧器33a〜33cが気流発生装置20a〜20cと電気的に接続されている。
【0047】
複数の変圧器33a〜33cは、例えば各翼14a〜14cにおける各変圧器33bの重心を求め、その求めたそれぞれの重心をさらに合成した重心が回転軸13の中心軸に略一致するように、各翼14a〜14cにそれぞれ配置されている。この実施形態では、例えば変圧器33a〜33cがほぼ同じ重さで回転軸13の中心軸からそれぞれ略等間隔になるように、各翼14a〜14cにそれぞれ配置させることで、上述した合成された重心を回転軸13の中心軸に略一致させることができる。
【0048】
なお、この応用例では、各翼14a〜14cに配置された気流発生装置20を、3つに分割して構成されるが、これに限定されるものではない。また、この応用例でも、略一致とは、実施形態4と同様に、例えば回転軸13の中心軸と、各翼14a〜14cの合成変圧器33bの重心間の距離をL1aとし、翼長をL0とすると、L1a/L0≦5/100とすることをいう。
【0049】
また、略等間隔とは、例えば回転軸13の中心軸から各翼14a〜14cの変圧器33までの距離を、それぞれL1a/L0≦1/5、L1b/L0≦1/5、L1c/L0≦1/5とすることをいう。
【0050】
この応用例では、上述した図8に示した変圧器33よりもさらに小型で重量の小さい変圧器33を用いることができ、重量の分散が可能となる。このため、変圧器33の支持部や回転中心にかかるモーメントを小さく抑えることができ、耐久性の向上や振動、騒音の低減を図ることができる。この結果、回転機器の動作中でも高周波高電圧を低ノイズで、安定的に供給できる。
【0051】
また、この応用例では、1つの翼においても気流発生装置20や変圧器33を分割して配置することができる。このため、図8に示した実施形態4の気流発生装置20や変圧器33よりも小型で重量の小さい、低コストの気流発生装置と変圧器を用いることができる。
【0052】
(実施形態5)
図10は、一実施形態のMW(メガワット)級の風力発電システムの大型風車50の一部分を示す斜視図である。
図10に示すように、大型風車50は、図示しない地面に垂直に設置された円筒形のタワー51と、このタワー51の頂部に取り付けられた、図示しない発電機などを収容する略長方体のナセル52を有する。さらに、ナセル52の先端には、ハブ53とノーズコーン54がナセル52の一端に配設されている。ハブ53の中心部分には、ナセル52から突出した回転軸55が設けられ、ノーズコーン54の外周面(またはハブ53)には、ブレード56が配置されている。ハブ53とノーズコーン54は、回転軸55とともに、回転する。
【0053】
このブレード56は、例えば3つの翼56a〜56cを有し、これらの翼56a〜56cの表面上には、翼の長手方向に沿って気流発生装置20がそれぞれ延設されている。これらの翼56a〜56cは、ノーズコーン54の外周面に互いが略等角度になるように配設されている。なお、大型風車50のブレード56は、一般的には3つの翼56a〜56cで構成されるが、これに限定されるものではない。
【0054】
回転軸55のノーズコーン54側の端部55aには、変圧器33と摺動型伝達部35が配置されている。
変圧器33は、重量が大きく、重心が発電機(大型風車50)の回転軸55の中心軸に略一致するように、回転軸55の端部55aやハブ53の中心部に配置されている。なお、上述した略一致とは、実施形態1と同様に、例えば回転軸55の中心軸と変圧器33の重心間の距離Lが、ブレード56の翼長L0(図示せず)の5%以下であることをいう(図1参照)。
【0055】
摺動型伝達部35は、実施形態1と同様に、回転軸55の中心部に配置されている。なお、摺動型伝達部35は、回転半径が小さく、重量も小さいので、回転軸13の回転中心にかかるモーメントに影響を与えることはない。
【0056】
すなわち、この実施形態では、変圧器33を、その重心が回転軸55の中心軸に略一致するように、この回転軸55の端部55aの中心部に配置し、AC/DC変換部31と高周波発生部32を大型風車50の保持側(ナセル52)に配置する。そして、高周波発生部32が、AC/DC変換部31で生成された直流電圧に基づいて高周波の交番電圧を発生させ、この高周波の交番電圧を、摺動型伝達部35を介して変圧器33に供給することができる。変圧器33は、摺動型伝達部35からの高周波の交番電圧を、高周波高電圧に変換して気流発生装置20に出力する。
【0057】
この気流発生装置20では、電圧印加装置30からの高周波高電圧が一対の電極22,23の間(図2、図3参照)に印加されると、その一対の電極22,23の間に放電が起こり、この放電に伴って放電プラズマを発生できる。そして、この発生したプラズマによって、気流発生装置20の表面(ブレード56)に沿って気流25(図2、図3参照)を発生できる。
【0058】
この大型風車50において、気流発生装置20用の電圧印加装置の出力は、数[kW]程度になり、変圧器33の大きさや重量は、従来の風車のノーズコーン54内部の機器と比較して大きい。
【0059】
そこで、この実施形態では、変圧器33を、その重心が回転軸55の中心軸に略一致するように、この回転軸55のノーズコーン54側の端部55aの中心部に配置する。このため、図示しない風車ロータの慣性モーメントの増大を抑え、風車回転の時定数の増大を抑え、風速・風向変動やカットイン・カットアウト時の大型風車50の追従性を保持できる。
【0060】
これにより、この実施形態では、摺動型伝達部35(リング35a)に高電圧を印加することなしにブレード14上にプラズマを発生することができるとともに、耐久性の向上や振動、騒音の低減、空力性能の向上等を実現できる。この結果、回転機器の動作中でも高周波高電圧を低ノイズで、安定的に供給できる。
【0061】
なお、この実施形態では、変圧器33のみを、その重心が回転軸55の中心軸に略一致するように、この回転軸55の端部55aの中心部に配置したが、これに限定されるものではなく、図5と同様に、高周波発生部32をこの回転軸55の端部55aに配置してもよい。
また、本実施形態では、AC/DC変換部31と高周波発生部32を保持部(軸受12)側に配置した。しかし、AC/DC変換部31または高周波発生部32またはその両者を回転翼(ブレード14)側に配置してもよい。
【0062】
(実施形態6)
図11は、他の実施形態のMW(メガワット)級の風力発電システムの大型風車50の一部分を示す斜視図である。
【0063】
図11に示すように、大型風車50と気流発生装置20の構成は、図10と同様であるが、電圧印加装置30の配置構成が異なっている。
すなわち、この実施形態では、例えば変圧器33がほぼ同じ重さで回転軸55の中心軸から略等間隔になるように、各翼56a〜56cがノーズコーン54に取り付けられている、その根元部にそれぞれ配置させることで、各変圧器33の合成された重心が回転軸55の中心軸に略一致させる。
【0064】
さらに、この実施形態では、摺動型伝達部35を回転軸55のノーズコーン54側の端部55aの中心部に配置させ、摺動型伝達部35の重心を回転軸55の中心軸に略一致させている。
【0065】
なお、略一致とは、例えば回転軸13の中心軸と、各翼14a〜14cの変圧器33の合成重心間の距離をL11とし、翼長をL0とすると、L11/L0≦5/100とすることをいう。
【0066】
また、略等間隔とは、例えば回転軸13の中心軸から各翼14a〜14cの変圧器33までの距離を、それぞれL11/L0≦1/5、L12/L0≦1/5、L13/L0≦1/5とすることをいう。
【0067】
また、1枚の翼上に複数の電極を配置してそれぞれ異なる放電の制御をする場合、各電極に対して電源を設置する必要がある。たとえば3本の電極を3台の電源で駆動する場合等である。その場合は図11で電源33が設置されている円筒状翼根の周上に、略等間隔で3台の電源を設置することで、翼のピッチ制御時に翼根を回転させる際の重心のバランスを損なわないようにすることが可能になる。この場合、各翼に設置されている電源の合成された重心どうしをさらに全翼について合成した総重心が、回転軸の中心軸に略一致するように配置する。
【0068】
この実施形態では、各変圧器33を、その合成した重心が回転軸55の中心軸に略一致するように、ブレード56の根元部にそれぞれ配置している。このため、図示しない風車ロータの慣性モーメントの増大を抑え、風車回転の時定数の増大を抑え、風速・風向変動やカットイン・カットアウト時の大型風車50の追従性を保持できる。
【0069】
これにより、この実施形態では、摺動型伝達部35(リング35a)に高電圧を印加することなしにブレード14上にプラズマを発生することができるとともに、耐久性の向上や振動、騒音の低減を実現できる。この結果、回転機器の動作中でも高周波高電圧を低ノイズで、安定的に供給できる。
【0070】
次に、上述した実施形態の着想に到る根拠となった実験の結果について説明する。
この実験では、図5に示した構成のファン(回転数=500[rpm])、高周波高電圧(15[kHz]、Vop=3[kV])の電源(100[W]、3[kg])を準備して検証を行った。なお、変圧器33の重量は1[kg]、高周波発生部32の重量は0.2[kg]であった。
【0071】
まず、ファンの騒音低減を狙った実験の結果を図12〜図17に示す。
ファンの騒音は回転する翼の後縁付近の速度変動によって発生すると考えられる。そこで、ファンの翼後縁付近に気流発生装置を設置して、ファンの近傍における騒音をマイクロホンで計測してプラズマの効果を調べた。
【0072】
電圧印加装置の構成としては、AC/DC変換部、高周波発生部、変圧器をファンの保持側に配置して、高周波高電圧を、摺動型伝達部を介してファンの回転側に伝達する従来方式、後述するA電源およびB電源の場合で調べた。
【0073】
図12は、変圧器33をファンの回転軸の端部に配置した図で、(a)は変圧器33をこの端部の中心軸上に配置した電圧印加装置(以下、「A電源」という)を用いた場合の図、(b)は変圧器33をこの端部の中心軸から外して配置した電圧印加装置(以下、「B電源」という)を用いた場合の図である。
【0074】
図12(a)に示すように、A電源の場合は、変圧器33を、その重心が回転軸の中心軸に略一致するように、ファンの回転軸の端部の中心軸上に配置した構成である(図5の構成と同様)。また、図中の高周波発生部32は、回転軸12(図5参照)の端部に、同心円上に設置可能な円板形状の基板に形成されており、その重心が回転軸の中心軸に略一致するように配置され、変圧器33はこの基板上に搭載されている(図12(b)も同様)。また、回転軸13にスリップリング(図5参照)を配置して、保持側から回転側への電圧供給を可能にした(図12(b)も同様)。
【0075】
また、図中の符号60〜62は、ダイオードや抵抗等の高周波高電圧を発生するための回路素子である。これら回路素子は、軽量であるので、回転軸13の回転中心にかかるモーメントへの影響を無視できる(図12(b)も同様)。
ここで、電圧印加装置30を駆動させると、プラズマが安定に生成できた。ファンの回転数を1500[rpm]まで増加させてもプラズマは安定に生成できている。
【0076】
また、図12(b)に示すように、B電源の場合は、変圧器33を、その重心が回転軸の中心軸に略一致しないように、ファンの回転軸の端部の中心軸から外して配置した構成である。このB電源の場合には、重量の大きい変圧器33がこの回転軸の端部の中心軸から外れているので、回転軸13の回転中心にかかるモーメントへの影響が現れると考えられる。
【0077】
気流発生装置のプラズマ電極(図2に示した一対の電極22,23参照)は、厚さ250[μm]のポリイミド樹脂上に、表面電極をスパン方向へ一様に形成した。表面電極の放電長は、翼1枚あたり100[mm]である。プラズマ誘起流が翼の後縁にむけて生じるように、電極を設置した。電極は翼の表裏両面に設置した。これらの条件は、上述した従来方式の構成の場合、A電源の構成の場合、B電源の構成の場合で、ともに同じである。
【0078】
まず、本願発明者らは、A電源の構成で、ファンの翼から30[cm]の位置に設置したマイクロホン(図示せず)で、放電あり・放電なしでの騒音スペクトルを求めて比較した。
図13は、ファンの雑音スペクトルを示す図である。
【0079】
図13に示すように、この実験では、ファンの回転数が500[rpm]の条件で、プラズマ放電なしの時(図中の点線部分)に発生する雑音のピークが、プラズマ放電ありの時(図中の実線部分)に、一点鎖線で囲んだような雑音のピークの低減を観測できた。これにより、プラズマ気流制御により回転翼の騒音を低減できることが明らかになった。
【0080】
次に、本願発明者らは、上述した従来方式の構成の場合、A電源の構成の場合、B電源の構成の場合の、電磁ノイズレベル、騒音スペクトルのうちプラズマによって低減できるピークの強度、振動強度および電源効率(放電電力/一次消費電力)をそれぞれ求めて比較した。なお、以下の図14〜図17において、点線は従来方式の構成、実線はA電源の構成、一点鎖線はB電源の構成の場合を示す。
【0081】
図14は、電磁ノイズレベルの比較結果を示す図である。
図14に示すように、電磁ノイズレベルは、A電源(実線)およびB電源(一点鎖線)の構成の場合が従来方式(点線)の構成の場合より明らかに低くなっており、これは摺動型伝達部への供給電圧を下げたことで、電磁ノイズが低減していることを示している。
【0082】
図15は、騒音スペクトルのうちプラズマによって低減できるピークの強度の比較結果を示す図である。
図15に示すように、A電源(実線)の構成の場合は安定的にピーク強度を低減できているのに対し、B電源(一点鎖線)の構成の場合では徐々にピーク強度が増加して、途中で急激に騒音が大きくなっている。これは、変圧器33が回転軸の中心軸上にないために500[rpm]の状態では振動による騒音が大きく、これがターゲットとする空力騒音に重畳されているためである。
【0083】
また、急激に増加した時点ではB電源の構成の場合で変圧器33固定部が破壊寸前となり、ついに破壊にいたったため、試験を停止した。従来方式(点線)の構成の場合は安定しているがA電源の構成の場合に比べて騒音が大きい。これは摺動型伝達部における放電音が重畳されているからである。以上の結果は、摺動型伝達部への供給電圧を下げ、変圧器33を回転軸の中心軸上に配置することで、騒音のピーク強度を安定的に低減できることを示している。
【0084】
図16は、振動強度の比較結果を示す図である。
図16に示す振動強度は、ファン10のケーシング11(図5参照)に設置した図示しない加速度計で計測した。
【0085】
B電源(図中、一点鎖線)の構成の場合は他の構成(図中、点線および実線)の場合に比べて振動が大きく、徐々に振動強度が増加して、途中で急激に振動が大きくなっている。これは、変圧器33が回転軸13の中心軸上にないために、ファン11(図5参照)の回転数が500「rpm」の状態では振動が大きいためである。
【0086】
また、急激に増加した時点では、B電源の変圧器33固定部が破壊寸前となり、ついに破壊にいたったため、試験を停止した。以上の結果は、変圧器33を回転軸の中心軸上に配置することで、振動を低減して信頼性の高い電圧印加装置30が実現できることを示している。
【0087】
図17は、電源効率の比較結果を示す図である。
図17に示す電源効率は、放電電力を一次消費電力で割ったもので評価した。A電源(図中、実線)およびB電源(図中、一点鎖線)の構成の場合は、いずれも、従来方式(図中、点線)の構成の場合より効率がよい。これは、摺動型伝達部への供給電圧を下げたことで摺動型伝達部での余分な放電を回避することで、熱損失を低減し効率の高い電圧印加装置30が実現できることを示している。
【0088】
上述した比較結果によれば、電圧印加装置30のうちの少なくとも変圧器33を、その重心が回転軸13の中心軸に略一致するように、回転軸13に配置することで、気流発生装置20に必要な高周波高電圧を、保持側から回転する翼上に、効率的に、低ノイズで、安定的に供給でき、回転場による慣性力下でも信頼性が高くなることがわかった。
【0089】
また、電圧印加装置30のうちの少なくとも変圧器33を、複数のブレード14に分散配置する場合も、これら変圧器33の合成された重心が回転軸13の中心軸に略一致するようになるので、上記と同様に、各ブレード14に分散配置された気流発生装置20に必要な高周波高電圧を、保持側から回転する翼上に、効率的に、低ノイズで、安定的に供給でき、回転場による慣性力下でも信頼性が高くなることが容易に思料される。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、様々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
10…ファン、11…ケーシング、12…軸受、13…回転軸、13a…端部、13b…孔、14…ブレード、14a〜14c,56a〜56c…翼、20…気流発生装置、21…誘電体、22,23…電極、24…ケーブル、25…気流、30…電圧印加装置、31…AC/DC変換部、32…高周波発生部、33…変圧器、34…ケーブル、35…摺動型伝達部、35a…リング、35b…ブラシ、35c…取付軸、38…配線、40…ネジ、50…大型風車、51…タワー、52…ナセル、53…ハブ、54…ノーズコーン、55…回転軸、55a…端部、56…ブレード。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電圧印加装置、回転機器および電圧印加方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ファン、風車、タービン等の回転機器が有する回転翼の表面に、プラズマによる気流発生装置を配置し、回転場に電圧を供給する電圧供給装置が提案されている。この電圧印加装置は、回転する翼の表面に設置された気流発生装置の第1の電極と、この第1の電極から離間して配置された第2の電極との間に電圧を印加することで、第1の電極と第2の電極間に気流を発生させる。これによって、回転翼の表面の境界層の速度分布に影響を与えて、剥離を抑制したり流速の変動を緩和することで、気流の流れを安定化して騒音や振動を低減し、翼の空気力学的特性が改善される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−291798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、気流発生装置に電磁ノイズが混入する恐れがあることが分かった。例えば、回転機器の回転側と固定側とを電気的に接続する摺動型伝達部を介して、高周波高電圧を伝達すると、摺動型伝達部の摺動部は、摺動部の凹凸や押し付け力の不均一性により接触面積や接触抵抗が非定常に変動する。このため、その変動に応じて摺動部付近に微小な放電が発生し、放電による電磁ノイズが発生する。これにより、周辺の他機器へノイズの影響が出るだけでなく、気流発生装置に供給する電力に電磁ノイズが混入することにより、気流発生装置の動作が不安定となり、騒音や振動の低減や効率向上の効果が十分に得られなくなる。また、摺動型伝達部における放電により伝達部が損耗し、ランニングコストを押し上げる要因となる。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、回転機器の動作中でも低ノイズで、安定的に供給できる電圧印加装置、回転機器および電圧印加方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態電圧印加装置は、回転翼の回転軸が回転可能に保持部に保持された回転機器の前記回転翼に配置された気流発生装置において互いに離間して配置された第1および第2の電極の間に電圧を印加する。実施形態の電圧印加装置では、電圧出力部が電圧を出力する。そして、回転軸の回転翼側、保持部側のそれぞれに配置される電極を有する摺動型伝達部が、電圧出力部から出力される電圧を保持部側から回転翼側に伝達する。そして、回転翼側に配置された変圧部が、摺動型伝達部が伝達した電圧を昇圧して気流発生装置に出力する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、回転機器の動作中でも低ノイズで、安定的に供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、一実施形態の電圧印加装置の構成を示す側面図である。
【図2】図2は、気流発生装置を模式的に示す斜視図である。
【図3】図3は、図2のA−A断面を示す断面図である。
【図4】図4は、電圧印加装置の電気回路の構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、実施形態2の電圧印加装置の構成を示す側面図である。
【図6】図6は、実施形態3の電圧印加装置の構成を示す側面図である。
【図7】図7は、図6の回転軸とスリップリングの取付状態を示す拡大断面図である。
【図8】図8は、図1に示したブレードの一実施形態を示す斜視図である。
【図9】図9は、図8に示したブレードに配置した気流発生装置と変圧器の応用例を示す斜視図である。
【図10】図10は、一実施形態の風力発電システムの大型風車の一部分を示す斜視図である。
【図11】図11は、他の実施形態の風力発電システムの大型風車の一部分を示す斜視図である。
【図12】図12は、変圧器をファンの回転軸の端部に配置した場合の図である。
【図13】図13は、ファンの雑音スペクトルを示す図である。
【図14】図14は、電磁ノイズレベルの比較結果を示す図である。
【図15】図15は、騒音スペクトルのうちプラズマによって低減できるピークの強度の比較結果を示す図である。
【図16】図16は、振動強度の比較結果を示す図である。
【図17】図17は、電源効率の比較結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態1)
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は一つの実施形態に係る電圧印加装置30の構成を示す側面図である。
【0010】
図1に示すように、この電圧印加装置30は、回転機器であるファン10に配置されている。このファン10は、例えば家庭用の小型のファンであり、ケーシング(筺体)11と、ケーシング11に取り付けられた軸受(保持部)12と、軸受12に回動可能に支持された回転軸13と、回転軸13の端部に取り付けられ回転軸13とともに回転する複数のブレード(回転翼)14とを有する。複数のブレード14のうち、少なくとも一つのブレード14の表面には、ブレード14上にプラズマを生成する気流発生装置20が配置され、電圧印加装置30によって高周波で高い電圧が印加されている。
【0011】
図2は、気流発生装置20を模式的に示す斜視図である。図3は、図2のA−A断面を示す断面図である。
図2および図3に示すように、気流発生装置20は、誘電体21の表面に露出された電極22(第1の電極)と、この電極22と誘電体21の表面からの距離が異なり、かつ誘電体21の表面と水平な方向にずらして離間され、誘電体21内に埋設された電極23(第2の電極)とを有する。その一対の電極22,23間には、ケーブル24を介して電圧を印加する電圧印加装置30が接続されている。誘電体21、一対の電極22,23は、ブレード14の表面上に長手方向に沿って延設されている(図1参照)。
【0012】
この気流発生装置20において、電圧印加装置30によって、一対の電極22,23の間に、高周波で高い電圧を印加すると、一対の電極22,23の間に放電が起こり、この放電に伴って放電プラズマが発生する。ここで、一対の電極22,23の間に誘電体21を介在させているので、アーク放電にはいたらず、安定に維持されることが可能な誘電体バリア放電が生じる。この誘電体バリア放電は、誘電体21に沿って形成される沿面放電となる。この誘電体バリア放電によって、気流発生装置20の表面、すなわち誘電体21の表面に沿って、図2,図3中に示す矢印方向に流れる気流25を発生できる。この発生された気流25によって、ブレード14の周りにおいて流れの剥離抑制や騒音・振動の抑制等の気流制御効果が可能になる。
【0013】
図4は、電圧印加装置30の電気回路の構成を示すブロック図である。
図4に示すように、電圧印加装置30は、交流電圧を直流電圧に変換するAC/DC変換部31と、高周波電圧を発生する高周波発生部32と、摺動型伝達部35(図1参照)を介して高周波発生部32と接続され、高周波高電圧を発生する変圧器33とを備える。
【0014】
図1に示すように、AC/DC変換部31は、ケーシング11に配置されている。AC/DC変換部31は、例えば商用周波数の正弦波低電圧(AC)を、図示しないダイオード等を介して直流電圧(DC)に変換する。AC/DC変換部31は、交流電圧を直流電圧に変換する電圧変換部として機能する。なお、交流電圧は、リップルを低く抑えるために3相交流電圧を用いるのが望ましい。
【0015】
高周波発生部32は、図1に示すように、ケーシング11に配置されている。高周波発生部32は、例えばIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)やFET(電界効果トランジスタ)を用いたスイッチングにより、供給された直流電圧によって起動して高周波のパルスを発生し、1[kHz]〜20[kHz]程度の高周波の交番電圧を生成する。高周波発生部32は、ケーブル34を介して摺動型伝達部35と電気的に接続されている。この高周波発生部32は、電圧変換部によって変換された直流電圧に基づいて、高周波成分を発生する機能を有する。
【0016】
摺動型伝達部(例えばスリップリング)35は、図1に示すように、ファン10の回転軸13に取り付けられ、この回転軸13とともに回転する2つのリング(電極)35aと、リング35aと組みをなし、高周波発生部32と電気的に接続された2つのブラシ(摺動接点)35bとを有する。2つのリング35aは、回転軸13においてブレード14(回転翼)側と、軸受12(保持部)側に配置されており、互いに電気的に絶縁され、それぞれが変圧器33に電気的に接続されている。リング35aとブラシ35bとの2つの組において、リング35aとブラシ35bは、互いに電気的に接触し、高周波発生部32から出力される高周波交番電圧を変圧器33に伝達する機能を有する。つまり、摺動型伝達部35は、軸受12(保持部)の側からブレード14(回転翼)の側に電圧を伝達する。なお、回転軸にブラシを配置して、ブラシと電気的に接続されたリングを保持部側に配置してもよい。
【0017】
変圧器33は、図1に示すように、リング35aよりブレード14側の回転軸13に配置されている。変圧器33は、リング35aから伝達された例えば100[V]〜400[V]の高周波の交番電圧を、数[kV]の高周波の高電圧に昇圧し、気流発生装置20に出力する。変圧器33は、重心がファン10の回転軸13の中心軸に略一致するように、回転軸13上に配置されている。変圧器33は、摺動型伝達部35から出力された電圧を高周波高電圧に変換して気流発生装置20に出力する機能を有する。なお、上述した略一致とは、例えば回転軸13の中心軸と変圧器33の重心33a間の距離Lが、回転軸13の中心軸とブレード14の先端との距離(以下、「翼長」という)L0の5%以下であることをいう。
【0018】
すなわち、この実施形態では、変圧器33を、その重心が回転軸13の中心軸に略一致するように、例えばこの回転軸13のブレード14側の端部の中心軸上に配置し、AC/DC変換部31と高周波発生部32をファン10の保持側(ケーシング11)に配置する。そして、高周波発生部32が、AC/DC変換部31で生成された直流電圧に基づいて高周波の交番電圧を発生させ、この高周波の交番電圧を摺動型伝達部35を介して変圧器33に供給できる。変圧器33は、摺動型伝達部35から伝達された高周波の交番電圧を、高周波高電圧に変換して気流発生装置20に出力する。
【0019】
この気流発生装置20では、電圧印加装置30から高周波高電圧が一対の電極22,23間に印加されると、一対の電極22,23の間に放電が起こり、この放電に伴って放電プラズマを発生できる。そしてこの発生したプラズマによって、気流発生装置20の表面(ブレード14)に沿って気流25を発生できる。
【0020】
これにより、この実施形態では、摺動型伝達部35(リング35a)に高電圧を印加することなしに、気流発生装置20に高周波高電圧を印加することができる。このため、回転機器の動作中でも高周波高電圧を低ノイズで、安定的に供給できる(後述する実験結果参照)。この結果、気流発生装置の動作が安定し、ブレード14の周囲での気流の流れを安定化して騒音や振動の低減を実現できる。また、摺動型接点における放電によるノイズの発生を防いだり、接点の損耗を緩和することができる。
【0021】
また、この実施形態では、重量の大きい変圧器33を、その重心が回転軸13の回転軸に略一致するように、回転軸13に配置している。このため、変圧器33の支持部や回転中心にかかるモーメントを小さく抑えることができ、耐久性の向上や振動、騒音の低減を実現できる。
また、この実施形態では、電圧印加装置30に関して、変圧器33と、それ以外の部分を分離している。そして、変圧器33のみを回転翼(ブレード14)側に配置し、それ以外の部分を保持部(軸受12)側に配置している。このため、回転翼(ブレード14)側の重量が増加することを抑制できる。また、軸受12構造簡略化、長寿命化、低コスト化、回転部分モーメントの低減、設計の簡素化を実現できる。
【0022】
なお、電圧印加装置30への入力が直流電圧である場合には、AC/DC変換部31の代わりに、この直流電圧を所定電圧値に昇圧するDC/DC変換部を設置することが可能である。または、電圧印加装置30へ入力する直流電圧が所定電圧値の場合には、AC/DC変換部31もこのDC/DC変換部も設置しなくてもよい。
【0023】
このような構成により、電圧印加装置30の製造コストの削減とともに、部品点数を削減することも可能となる。例えば後述する風力発電システムの大型風車にこの電圧印加装置30を用いると、上述した直流電圧を取り出して電圧印加装置30に入力できる場合があり、上述した電圧印加装置30の製造コストの低減や部品点数が削減できる。
【0024】
(実施形態2)
図5は、実施形態2の電圧印加装置30の構成を示す側面図である。
図5に示すように、ファン10と気流発生装置20の構成は、図1と同様であるが、電圧印加装置30の配置構成が異なっている。すなわち、この電圧印加装置30は、気流発生装置20の駆動に必要なAC/DC変換部31、高周波発生部32および変圧器33のうち、高周波発生部32と変圧器33がリング35aよりブレード14側の回転軸13に配置されている。
【0025】
高周波発生部32と変圧器33は、その合成された重心がファン10の回転軸13の中心軸に略一致するように、回転軸13に配置する。AC/DC変換部31で生成された直流電圧は、摺動型伝達部35を介して高周波発生部32に出力される。
【0026】
つまり、ブラシの耐久性を上げるためには、リング35aとブラシ35bの接触面積をできるだけ小さくすることが望ましい。しかし、この接触面積が小さくなると、振動や摩耗等により、瞬間的に電圧の印加が途切れる場合がある。このため、印加の途切れが生じた電圧をそのまま変圧器33に供給すると、気流発生装置20へ供給する電圧にも瞬間的な変動が発生し、安定的なプラズマ放電を維持できなくなる。
【0027】
そこで、摺動型伝達部35(リング35a)よりブレード14側の回転軸13に高周波発生部32を配置させることで、高周波発生部32が備える所定の周波数帯域を得るためのフィルタ機能を利用することができる。このフィルタ機能により、直流電圧の瞬間的な変動が、変圧器33まで伝達されなくなり、気流発生装置20へ供給する電圧が安定し、安定的なプラズマ放電を維持できる。この結果、気流発生装置20の表面に沿って気流25を途切れなく発生できる。この発生された気流25によって、ブレード14の安定した回転が可能になる。
なお、この高周波発生部32と変圧器33の構造は、後述する図12(a)で詳細に説明する。
【0028】
ところで、この高周波発生部32は、所定の周波数帯域を得るためのフィルタ機能を備えているが、このフィルタ機能は別体でもよい。この場合には、フィルタ機能と高周波発生部と変圧器の合成された重心が回転軸13の中心軸に略一致するように、リング35aよりブレード14側の回転軸13に配置させる。またはフィルタ機能のみをブレード14側の回転軸13に配置させ、高周波発生部32はファン10の保持側に配置させることも可能である。なお、上述した略一致とは、例えば中心軸と、高周波発生部32と変圧器33との合成された重心間の距離Laが、翼長L0の5%以下であることをいう。
【0029】
すなわち、この実施形態では、高周波発生部32と変圧器33を、その合成された重心が回転軸13の中心軸に略一致するように、この回転軸13に配置し、AC/DC変換部31から出力した直流電圧を、摺動型伝達部35を介して高周波発生部32に供給する。
【0030】
これにより、この実施形態では、瞬間的な電圧の印加途切れが生じても、高周波発生部32のフィルタ機能により、直流電圧の瞬間的な変動が、変圧器33まで伝達されなくなり、回転機器の動作中でも高周波高電圧を低ノイズで、安定的に供給できる。この結果、気流発生装置20への供給電圧が安定し、安定的なプラズマ放電を維持できる。
【0031】
また、この実施形態では、高周波発生部32と変圧器33を、その合成された重心が回転軸13の中心軸に略一致するように、回転軸13に配置する。このため、変圧器33の支持部や回転軸13の回転中心にかかるモーメントを小さく抑えることができ、耐久性の向上や振動、騒音の低減を実現できる。
なお、本実施形態においては、AC/DC変換部31が保持部(軸受12)側に配置されている。しかし、AC/DC変換部31を回転翼(ブレード14)側に配置して、商用周波数の正弦波低電圧(AC)を、摺動型伝達部35を介してAC/DC変換部31に供給するようにしてもよい。
【0032】
(実施形態3)
図6は、実施形態3の電圧印加装置30の構成を示す側面図である。図7は、図6の回転軸13とスリップリング(摺動型伝達部)35との取付状態を示す拡大断面図である。
【0033】
図6、図7に示すように、ファン10と気流発生装置20の構成は、図1と同様であるが、電圧印加装置30の配置構成が異なっている。すなわち、この電圧印加装置30は、回転軸13の軸受12側とは反対側の端部13aにスリップリング35のリング35aを取り付け、このリング35aにブラシ35bを電気的に接触させ、AC/DC変換部31から出力した直流電圧を、摺動型伝達部35を介して高周波発生部32に供給する。
【0034】
回転軸13とスリップリング35の取付状態を説明する。図7に示すように、スリップリング35のリング35aは、取付軸35cの長手方向の一端側に固定されて配置されている。また、回転軸13の端部13aの中央部分には、取付軸35cの一端が嵌合可能な孔13bが設けられている。
【0035】
取り付け時には、回転軸13の端部13aの孔13bに取付軸35cの長手方向の他端を挿入して嵌合させ、さらにネジ40を用いて取付軸35cを回転軸13の端部13aに固定することができる。
【0036】
このように、この実施形態では、回転軸13の端部13aの孔13bに、リング35aを固定した取付軸35cを嵌合させる。このため、リング35aを回転軸13に直接取り付けた図1の場合に比べ、リング35aの回転半径を小さくすることができ、1回転あたりの摺動距離を短くすることができる。図1の場合は、回転軸13はファン10の回転構造を機械的に支持する必要があるため、必要な太さをもった丸棒状のものになる。これに図1のようにスリップリング35を設置する場合、リング35aの直径は丸棒の直径より大きくする必要があり、1回転あたりの摺動距離が大きくなる。図7のようにすればスリップリング35を取り付ける丸棒は35cのようになり、この丸棒はスリップリング35の回転構造のみを支持する強度があればよい。このため、細い丸棒を使用でき、これに取り付けるリング35aの直径も小さくでき、1回転あたりの摺動距離が短くなる。
これにより、同じ回転数で回転軸13を回転させた時のブラシ35bの摩耗率を図1の場合より低減することができ、摺動型伝達部35の使用寿命を向上させることができる。
【0037】
また、この実施形態では、実施形態1と同様に、回転機器の動作中でも高周波高電圧を低ノイズで、安定的に供給できる。
また、この実施形態でも、高周波発生部32と変圧器33を、その合成された重心が回転軸13の中心軸に略一致するように、回転軸13に配置している。このため変圧器33の支持部や回転軸13の回転中心にかかるモーメントを小さく抑えることができ、耐久性の向上や振動、騒音の低減を図ることができる。
【0038】
なお、この実施形態でも、上述した略一致とは、実施形態2と同様に、例えば中心軸と、高周波発生部32と変圧器33との合成された重心間の距離Laが、翼長L0の5%以下であることをいう(図5参照)。
また、本実施形態では、AC/DC変換部31が保持部(軸受12)側に配置されている。しかし、AC/DC変換部31を回転翼(ブレード14)側に配置し、商用周波数の正弦波低電圧(AC)を、摺動型伝達部35を介してAC/DC変換部31に供給するようにしてもよい。
【0039】
(実施形態4)
図8は、図1に示したブレードの一実施形態を示す斜視図である。
図1に示したファン10のブレード14は、例えば図8に示すように、回転軸13の半径方向に互いが等しい角度になるように、回転軸13に配設された複数の翼であり、実施形態では3つの翼14a〜14cを有する。これらの翼14a〜14cは、回転軸13と一体的に構成されている。なお、この実施形態におけるファン10のブレード14は、3つの翼で構成されるが、これに限定されるものではない。
【0040】
各翼14a〜14cの表面上には、気流発生装置20がそれぞれ配置されるとともに、この気流発生装置20の近傍に変圧器33がそれぞれ配置されて、気流発生装置20と電気的に接続されている。これらの変圧器33のそれぞれは、その合成された重心が回転軸13の中心軸に略一致するように、各翼14a〜14cに配置されている。この実施形態では、例えば変圧器33がほぼ同じ重さで回転軸13の中心軸から略等間隔になるように、各翼14a〜14cにそれぞれ配置させることで、上述した合成された重心を回転軸13の中心軸に略一致させることができる。
【0041】
なお、略一致とは、例えば回転軸13の中心軸と、各翼14a〜14cの変圧器33の合成重心間の距離をL11とし、翼長をL0とすると、L11/L0≦5/100とすることをいう。
【0042】
また、略等間隔とは、例えば回転軸13の中心軸から各翼14a〜14cの変圧器33までの距離を、それぞれL11/L0≦1/5、L12/L0≦1/5、L13/L0≦1/5とすることをいう。
【0043】
この実施形態では、3つの気流発生装置20に重量の大きい1つの変圧器33から高周波高電圧を供給する場合に比べ、小型で重量の軽い3つの変圧器33からそれぞれの気流発生装置20に高周波高電圧を供給できる。このため、重量の分散が可能となって、変圧器33の支持部や回転軸13の回転中心にかかるモーメントを小さく抑えることができ、耐久性の向上や振動、騒音の低減を実現できる。この結果、回転機器の動作中でも高周波高電圧を低ノイズで、安定的に供給できる。
【0044】
また、この実施形態では、各変圧器33を気流発生装置20の近傍にそれぞれ配置できるので、変圧器33と気流発生装置20を接続するための配線38が最小限に短縮でき、この配線からのノイズの侵入を防ぐことができる。この結果、回転機器の動作中でも高周波高電圧を低ノイズで、さらに安定的に供給できる。
【0045】
(応用例)
図9は、図8に示したブレード14に配置した気流発生装置20と変圧器33の応用例を示す斜視図である。この応用例では、図8と気流発生装置20と変圧器33の配置構成が異なっている。
【0046】
すなわち図9に示すように、この応用例では、各翼14a〜14cに配置された気流発生装置を分割、例えば3つの気流発生装置20a〜20cに分割してそれぞれ配置されている。これとともに、その気流発生装置20a〜20cの近傍に変圧器33a〜33cがそれぞれ配置されており、変圧器33a〜33cが気流発生装置20a〜20cと電気的に接続されている。
【0047】
複数の変圧器33a〜33cは、例えば各翼14a〜14cにおける各変圧器33bの重心を求め、その求めたそれぞれの重心をさらに合成した重心が回転軸13の中心軸に略一致するように、各翼14a〜14cにそれぞれ配置されている。この実施形態では、例えば変圧器33a〜33cがほぼ同じ重さで回転軸13の中心軸からそれぞれ略等間隔になるように、各翼14a〜14cにそれぞれ配置させることで、上述した合成された重心を回転軸13の中心軸に略一致させることができる。
【0048】
なお、この応用例では、各翼14a〜14cに配置された気流発生装置20を、3つに分割して構成されるが、これに限定されるものではない。また、この応用例でも、略一致とは、実施形態4と同様に、例えば回転軸13の中心軸と、各翼14a〜14cの合成変圧器33bの重心間の距離をL1aとし、翼長をL0とすると、L1a/L0≦5/100とすることをいう。
【0049】
また、略等間隔とは、例えば回転軸13の中心軸から各翼14a〜14cの変圧器33までの距離を、それぞれL1a/L0≦1/5、L1b/L0≦1/5、L1c/L0≦1/5とすることをいう。
【0050】
この応用例では、上述した図8に示した変圧器33よりもさらに小型で重量の小さい変圧器33を用いることができ、重量の分散が可能となる。このため、変圧器33の支持部や回転中心にかかるモーメントを小さく抑えることができ、耐久性の向上や振動、騒音の低減を図ることができる。この結果、回転機器の動作中でも高周波高電圧を低ノイズで、安定的に供給できる。
【0051】
また、この応用例では、1つの翼においても気流発生装置20や変圧器33を分割して配置することができる。このため、図8に示した実施形態4の気流発生装置20や変圧器33よりも小型で重量の小さい、低コストの気流発生装置と変圧器を用いることができる。
【0052】
(実施形態5)
図10は、一実施形態のMW(メガワット)級の風力発電システムの大型風車50の一部分を示す斜視図である。
図10に示すように、大型風車50は、図示しない地面に垂直に設置された円筒形のタワー51と、このタワー51の頂部に取り付けられた、図示しない発電機などを収容する略長方体のナセル52を有する。さらに、ナセル52の先端には、ハブ53とノーズコーン54がナセル52の一端に配設されている。ハブ53の中心部分には、ナセル52から突出した回転軸55が設けられ、ノーズコーン54の外周面(またはハブ53)には、ブレード56が配置されている。ハブ53とノーズコーン54は、回転軸55とともに、回転する。
【0053】
このブレード56は、例えば3つの翼56a〜56cを有し、これらの翼56a〜56cの表面上には、翼の長手方向に沿って気流発生装置20がそれぞれ延設されている。これらの翼56a〜56cは、ノーズコーン54の外周面に互いが略等角度になるように配設されている。なお、大型風車50のブレード56は、一般的には3つの翼56a〜56cで構成されるが、これに限定されるものではない。
【0054】
回転軸55のノーズコーン54側の端部55aには、変圧器33と摺動型伝達部35が配置されている。
変圧器33は、重量が大きく、重心が発電機(大型風車50)の回転軸55の中心軸に略一致するように、回転軸55の端部55aやハブ53の中心部に配置されている。なお、上述した略一致とは、実施形態1と同様に、例えば回転軸55の中心軸と変圧器33の重心間の距離Lが、ブレード56の翼長L0(図示せず)の5%以下であることをいう(図1参照)。
【0055】
摺動型伝達部35は、実施形態1と同様に、回転軸55の中心部に配置されている。なお、摺動型伝達部35は、回転半径が小さく、重量も小さいので、回転軸13の回転中心にかかるモーメントに影響を与えることはない。
【0056】
すなわち、この実施形態では、変圧器33を、その重心が回転軸55の中心軸に略一致するように、この回転軸55の端部55aの中心部に配置し、AC/DC変換部31と高周波発生部32を大型風車50の保持側(ナセル52)に配置する。そして、高周波発生部32が、AC/DC変換部31で生成された直流電圧に基づいて高周波の交番電圧を発生させ、この高周波の交番電圧を、摺動型伝達部35を介して変圧器33に供給することができる。変圧器33は、摺動型伝達部35からの高周波の交番電圧を、高周波高電圧に変換して気流発生装置20に出力する。
【0057】
この気流発生装置20では、電圧印加装置30からの高周波高電圧が一対の電極22,23の間(図2、図3参照)に印加されると、その一対の電極22,23の間に放電が起こり、この放電に伴って放電プラズマを発生できる。そして、この発生したプラズマによって、気流発生装置20の表面(ブレード56)に沿って気流25(図2、図3参照)を発生できる。
【0058】
この大型風車50において、気流発生装置20用の電圧印加装置の出力は、数[kW]程度になり、変圧器33の大きさや重量は、従来の風車のノーズコーン54内部の機器と比較して大きい。
【0059】
そこで、この実施形態では、変圧器33を、その重心が回転軸55の中心軸に略一致するように、この回転軸55のノーズコーン54側の端部55aの中心部に配置する。このため、図示しない風車ロータの慣性モーメントの増大を抑え、風車回転の時定数の増大を抑え、風速・風向変動やカットイン・カットアウト時の大型風車50の追従性を保持できる。
【0060】
これにより、この実施形態では、摺動型伝達部35(リング35a)に高電圧を印加することなしにブレード14上にプラズマを発生することができるとともに、耐久性の向上や振動、騒音の低減、空力性能の向上等を実現できる。この結果、回転機器の動作中でも高周波高電圧を低ノイズで、安定的に供給できる。
【0061】
なお、この実施形態では、変圧器33のみを、その重心が回転軸55の中心軸に略一致するように、この回転軸55の端部55aの中心部に配置したが、これに限定されるものではなく、図5と同様に、高周波発生部32をこの回転軸55の端部55aに配置してもよい。
また、本実施形態では、AC/DC変換部31と高周波発生部32を保持部(軸受12)側に配置した。しかし、AC/DC変換部31または高周波発生部32またはその両者を回転翼(ブレード14)側に配置してもよい。
【0062】
(実施形態6)
図11は、他の実施形態のMW(メガワット)級の風力発電システムの大型風車50の一部分を示す斜視図である。
【0063】
図11に示すように、大型風車50と気流発生装置20の構成は、図10と同様であるが、電圧印加装置30の配置構成が異なっている。
すなわち、この実施形態では、例えば変圧器33がほぼ同じ重さで回転軸55の中心軸から略等間隔になるように、各翼56a〜56cがノーズコーン54に取り付けられている、その根元部にそれぞれ配置させることで、各変圧器33の合成された重心が回転軸55の中心軸に略一致させる。
【0064】
さらに、この実施形態では、摺動型伝達部35を回転軸55のノーズコーン54側の端部55aの中心部に配置させ、摺動型伝達部35の重心を回転軸55の中心軸に略一致させている。
【0065】
なお、略一致とは、例えば回転軸13の中心軸と、各翼14a〜14cの変圧器33の合成重心間の距離をL11とし、翼長をL0とすると、L11/L0≦5/100とすることをいう。
【0066】
また、略等間隔とは、例えば回転軸13の中心軸から各翼14a〜14cの変圧器33までの距離を、それぞれL11/L0≦1/5、L12/L0≦1/5、L13/L0≦1/5とすることをいう。
【0067】
また、1枚の翼上に複数の電極を配置してそれぞれ異なる放電の制御をする場合、各電極に対して電源を設置する必要がある。たとえば3本の電極を3台の電源で駆動する場合等である。その場合は図11で電源33が設置されている円筒状翼根の周上に、略等間隔で3台の電源を設置することで、翼のピッチ制御時に翼根を回転させる際の重心のバランスを損なわないようにすることが可能になる。この場合、各翼に設置されている電源の合成された重心どうしをさらに全翼について合成した総重心が、回転軸の中心軸に略一致するように配置する。
【0068】
この実施形態では、各変圧器33を、その合成した重心が回転軸55の中心軸に略一致するように、ブレード56の根元部にそれぞれ配置している。このため、図示しない風車ロータの慣性モーメントの増大を抑え、風車回転の時定数の増大を抑え、風速・風向変動やカットイン・カットアウト時の大型風車50の追従性を保持できる。
【0069】
これにより、この実施形態では、摺動型伝達部35(リング35a)に高電圧を印加することなしにブレード14上にプラズマを発生することができるとともに、耐久性の向上や振動、騒音の低減を実現できる。この結果、回転機器の動作中でも高周波高電圧を低ノイズで、安定的に供給できる。
【0070】
次に、上述した実施形態の着想に到る根拠となった実験の結果について説明する。
この実験では、図5に示した構成のファン(回転数=500[rpm])、高周波高電圧(15[kHz]、Vop=3[kV])の電源(100[W]、3[kg])を準備して検証を行った。なお、変圧器33の重量は1[kg]、高周波発生部32の重量は0.2[kg]であった。
【0071】
まず、ファンの騒音低減を狙った実験の結果を図12〜図17に示す。
ファンの騒音は回転する翼の後縁付近の速度変動によって発生すると考えられる。そこで、ファンの翼後縁付近に気流発生装置を設置して、ファンの近傍における騒音をマイクロホンで計測してプラズマの効果を調べた。
【0072】
電圧印加装置の構成としては、AC/DC変換部、高周波発生部、変圧器をファンの保持側に配置して、高周波高電圧を、摺動型伝達部を介してファンの回転側に伝達する従来方式、後述するA電源およびB電源の場合で調べた。
【0073】
図12は、変圧器33をファンの回転軸の端部に配置した図で、(a)は変圧器33をこの端部の中心軸上に配置した電圧印加装置(以下、「A電源」という)を用いた場合の図、(b)は変圧器33をこの端部の中心軸から外して配置した電圧印加装置(以下、「B電源」という)を用いた場合の図である。
【0074】
図12(a)に示すように、A電源の場合は、変圧器33を、その重心が回転軸の中心軸に略一致するように、ファンの回転軸の端部の中心軸上に配置した構成である(図5の構成と同様)。また、図中の高周波発生部32は、回転軸12(図5参照)の端部に、同心円上に設置可能な円板形状の基板に形成されており、その重心が回転軸の中心軸に略一致するように配置され、変圧器33はこの基板上に搭載されている(図12(b)も同様)。また、回転軸13にスリップリング(図5参照)を配置して、保持側から回転側への電圧供給を可能にした(図12(b)も同様)。
【0075】
また、図中の符号60〜62は、ダイオードや抵抗等の高周波高電圧を発生するための回路素子である。これら回路素子は、軽量であるので、回転軸13の回転中心にかかるモーメントへの影響を無視できる(図12(b)も同様)。
ここで、電圧印加装置30を駆動させると、プラズマが安定に生成できた。ファンの回転数を1500[rpm]まで増加させてもプラズマは安定に生成できている。
【0076】
また、図12(b)に示すように、B電源の場合は、変圧器33を、その重心が回転軸の中心軸に略一致しないように、ファンの回転軸の端部の中心軸から外して配置した構成である。このB電源の場合には、重量の大きい変圧器33がこの回転軸の端部の中心軸から外れているので、回転軸13の回転中心にかかるモーメントへの影響が現れると考えられる。
【0077】
気流発生装置のプラズマ電極(図2に示した一対の電極22,23参照)は、厚さ250[μm]のポリイミド樹脂上に、表面電極をスパン方向へ一様に形成した。表面電極の放電長は、翼1枚あたり100[mm]である。プラズマ誘起流が翼の後縁にむけて生じるように、電極を設置した。電極は翼の表裏両面に設置した。これらの条件は、上述した従来方式の構成の場合、A電源の構成の場合、B電源の構成の場合で、ともに同じである。
【0078】
まず、本願発明者らは、A電源の構成で、ファンの翼から30[cm]の位置に設置したマイクロホン(図示せず)で、放電あり・放電なしでの騒音スペクトルを求めて比較した。
図13は、ファンの雑音スペクトルを示す図である。
【0079】
図13に示すように、この実験では、ファンの回転数が500[rpm]の条件で、プラズマ放電なしの時(図中の点線部分)に発生する雑音のピークが、プラズマ放電ありの時(図中の実線部分)に、一点鎖線で囲んだような雑音のピークの低減を観測できた。これにより、プラズマ気流制御により回転翼の騒音を低減できることが明らかになった。
【0080】
次に、本願発明者らは、上述した従来方式の構成の場合、A電源の構成の場合、B電源の構成の場合の、電磁ノイズレベル、騒音スペクトルのうちプラズマによって低減できるピークの強度、振動強度および電源効率(放電電力/一次消費電力)をそれぞれ求めて比較した。なお、以下の図14〜図17において、点線は従来方式の構成、実線はA電源の構成、一点鎖線はB電源の構成の場合を示す。
【0081】
図14は、電磁ノイズレベルの比較結果を示す図である。
図14に示すように、電磁ノイズレベルは、A電源(実線)およびB電源(一点鎖線)の構成の場合が従来方式(点線)の構成の場合より明らかに低くなっており、これは摺動型伝達部への供給電圧を下げたことで、電磁ノイズが低減していることを示している。
【0082】
図15は、騒音スペクトルのうちプラズマによって低減できるピークの強度の比較結果を示す図である。
図15に示すように、A電源(実線)の構成の場合は安定的にピーク強度を低減できているのに対し、B電源(一点鎖線)の構成の場合では徐々にピーク強度が増加して、途中で急激に騒音が大きくなっている。これは、変圧器33が回転軸の中心軸上にないために500[rpm]の状態では振動による騒音が大きく、これがターゲットとする空力騒音に重畳されているためである。
【0083】
また、急激に増加した時点ではB電源の構成の場合で変圧器33固定部が破壊寸前となり、ついに破壊にいたったため、試験を停止した。従来方式(点線)の構成の場合は安定しているがA電源の構成の場合に比べて騒音が大きい。これは摺動型伝達部における放電音が重畳されているからである。以上の結果は、摺動型伝達部への供給電圧を下げ、変圧器33を回転軸の中心軸上に配置することで、騒音のピーク強度を安定的に低減できることを示している。
【0084】
図16は、振動強度の比較結果を示す図である。
図16に示す振動強度は、ファン10のケーシング11(図5参照)に設置した図示しない加速度計で計測した。
【0085】
B電源(図中、一点鎖線)の構成の場合は他の構成(図中、点線および実線)の場合に比べて振動が大きく、徐々に振動強度が増加して、途中で急激に振動が大きくなっている。これは、変圧器33が回転軸13の中心軸上にないために、ファン11(図5参照)の回転数が500「rpm」の状態では振動が大きいためである。
【0086】
また、急激に増加した時点では、B電源の変圧器33固定部が破壊寸前となり、ついに破壊にいたったため、試験を停止した。以上の結果は、変圧器33を回転軸の中心軸上に配置することで、振動を低減して信頼性の高い電圧印加装置30が実現できることを示している。
【0087】
図17は、電源効率の比較結果を示す図である。
図17に示す電源効率は、放電電力を一次消費電力で割ったもので評価した。A電源(図中、実線)およびB電源(図中、一点鎖線)の構成の場合は、いずれも、従来方式(図中、点線)の構成の場合より効率がよい。これは、摺動型伝達部への供給電圧を下げたことで摺動型伝達部での余分な放電を回避することで、熱損失を低減し効率の高い電圧印加装置30が実現できることを示している。
【0088】
上述した比較結果によれば、電圧印加装置30のうちの少なくとも変圧器33を、その重心が回転軸13の中心軸に略一致するように、回転軸13に配置することで、気流発生装置20に必要な高周波高電圧を、保持側から回転する翼上に、効率的に、低ノイズで、安定的に供給でき、回転場による慣性力下でも信頼性が高くなることがわかった。
【0089】
また、電圧印加装置30のうちの少なくとも変圧器33を、複数のブレード14に分散配置する場合も、これら変圧器33の合成された重心が回転軸13の中心軸に略一致するようになるので、上記と同様に、各ブレード14に分散配置された気流発生装置20に必要な高周波高電圧を、保持側から回転する翼上に、効率的に、低ノイズで、安定的に供給でき、回転場による慣性力下でも信頼性が高くなることが容易に思料される。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、様々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
10…ファン、11…ケーシング、12…軸受、13…回転軸、13a…端部、13b…孔、14…ブレード、14a〜14c,56a〜56c…翼、20…気流発生装置、21…誘電体、22,23…電極、24…ケーブル、25…気流、30…電圧印加装置、31…AC/DC変換部、32…高周波発生部、33…変圧器、34…ケーブル、35…摺動型伝達部、35a…リング、35b…ブラシ、35c…取付軸、38…配線、40…ネジ、50…大型風車、51…タワー、52…ナセル、53…ハブ、54…ノーズコーン、55…回転軸、55a…端部、56…ブレード。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転翼の回転軸が回転可能に保持部に保持された回転機器の前記回転翼に配置される気流発生装置において互いに離間して配置された第1および第2の電極の間に電圧を印加する電圧印加装置であって、
電圧を出力する電圧出力部と、
前記回転軸の前記回転翼側と前記保持部側とのそれぞれに配置される電極を有し、前記保持部側から供給される電圧を前記保持部側から前記回転翼側に伝達する摺動型伝達部と、
前記回転翼側に配置され、前記摺動型伝達部が伝達した電圧を昇圧して前記気流発生装置に出力する変圧部と、を具備することを特徴とする電圧印加装置。
【請求項2】
前記電圧出力部は、
商用周波数の電圧を直流電圧に変換する電圧変換部と、
前記電圧変換部によって変換された直流電圧に基づいて交番電圧を発生する交番電圧発生部と、
を具備することを特徴とする請求項1記載の電力印加装置。
【請求項3】
前記電圧出力部を前記保持部側に備えることを特徴とする請求項1記載の電力印加装置。
【請求項4】
前記電圧出力部を前記回翼部側に備えることを特徴とする請求項1記載の電力印加装置。
【請求項5】
前記電圧出力部のうち前記交番電圧発生部を前記回転翼側に備えることを特徴とする請求項2記載の電力印加装置。
【請求項6】
前記電圧出力部のうち回転翼側に設置される機器と、前記変圧部と、前記気流発生装置の合成された重心が、前記回転軸の中心軸に略一致するように、前記回転軸側に配置されることを特徴とする請求項1記載の電力印加装置。
【請求項7】
前記変圧部は、その重心が前記回転軸の中心軸に略一致するように、前記回転軸に配置されることを特徴とする請求項1記載の電圧印加装置。
【請求項8】
前記回転翼は、少なくとも2つの翼を有し、
前記気流発生装置および前記変圧部は、その合成された重心が前記回転軸の中心軸に略一致するように、前記翼にそれぞれ配置されることを特徴とする請求項1記載の電圧印加装置。
【請求項9】
前記回転翼は、少なくとも2つの翼を有し、
前記気流発生装置および前記変圧部は、同じ重さで前記回転軸の中心軸から略等間隔になるように、前記翼にそれぞれ配置されることを特徴とする請求項1記載の電圧印加装置。
【請求項10】
前記摺動型伝達部にて、前記電極は、リングと、前記リングに電気的に接触するブラシとを有することを特徴とする請求項1記載の電圧印加装置。
【請求項11】
前記請求項1から10のいずれかに記載の電圧印加装置を具備することを特徴とする回転機器。
【請求項12】
回転翼の回転軸が回転可能に保持部に保持された回転機器の前記回転翼に配置される気流発生装置において互いに離間して配置された第1および第2の電極の間に電圧を印加する電圧印加方法であって、
電圧出力部が、電圧を出力し、
前記回転軸の前記回転翼側と前記保持部側とのそれぞれに配置される電極を有する摺動型伝達部が、前記保持部側から供給される電圧を伝達し、
前記回転翼側に配置された変圧部が、前記伝達された電圧を昇圧して前記気流発生装置に出力することを特徴とする電圧印加方法。
【請求項1】
回転翼の回転軸が回転可能に保持部に保持された回転機器の前記回転翼に配置される気流発生装置において互いに離間して配置された第1および第2の電極の間に電圧を印加する電圧印加装置であって、
電圧を出力する電圧出力部と、
前記回転軸の前記回転翼側と前記保持部側とのそれぞれに配置される電極を有し、前記保持部側から供給される電圧を前記保持部側から前記回転翼側に伝達する摺動型伝達部と、
前記回転翼側に配置され、前記摺動型伝達部が伝達した電圧を昇圧して前記気流発生装置に出力する変圧部と、を具備することを特徴とする電圧印加装置。
【請求項2】
前記電圧出力部は、
商用周波数の電圧を直流電圧に変換する電圧変換部と、
前記電圧変換部によって変換された直流電圧に基づいて交番電圧を発生する交番電圧発生部と、
を具備することを特徴とする請求項1記載の電力印加装置。
【請求項3】
前記電圧出力部を前記保持部側に備えることを特徴とする請求項1記載の電力印加装置。
【請求項4】
前記電圧出力部を前記回翼部側に備えることを特徴とする請求項1記載の電力印加装置。
【請求項5】
前記電圧出力部のうち前記交番電圧発生部を前記回転翼側に備えることを特徴とする請求項2記載の電力印加装置。
【請求項6】
前記電圧出力部のうち回転翼側に設置される機器と、前記変圧部と、前記気流発生装置の合成された重心が、前記回転軸の中心軸に略一致するように、前記回転軸側に配置されることを特徴とする請求項1記載の電力印加装置。
【請求項7】
前記変圧部は、その重心が前記回転軸の中心軸に略一致するように、前記回転軸に配置されることを特徴とする請求項1記載の電圧印加装置。
【請求項8】
前記回転翼は、少なくとも2つの翼を有し、
前記気流発生装置および前記変圧部は、その合成された重心が前記回転軸の中心軸に略一致するように、前記翼にそれぞれ配置されることを特徴とする請求項1記載の電圧印加装置。
【請求項9】
前記回転翼は、少なくとも2つの翼を有し、
前記気流発生装置および前記変圧部は、同じ重さで前記回転軸の中心軸から略等間隔になるように、前記翼にそれぞれ配置されることを特徴とする請求項1記載の電圧印加装置。
【請求項10】
前記摺動型伝達部にて、前記電極は、リングと、前記リングに電気的に接触するブラシとを有することを特徴とする請求項1記載の電圧印加装置。
【請求項11】
前記請求項1から10のいずれかに記載の電圧印加装置を具備することを特徴とする回転機器。
【請求項12】
回転翼の回転軸が回転可能に保持部に保持された回転機器の前記回転翼に配置される気流発生装置において互いに離間して配置された第1および第2の電極の間に電圧を印加する電圧印加方法であって、
電圧出力部が、電圧を出力し、
前記回転軸の前記回転翼側と前記保持部側とのそれぞれに配置される電極を有する摺動型伝達部が、前記保持部側から供給される電圧を伝達し、
前記回転翼側に配置された変圧部が、前記伝達された電圧を昇圧して前記気流発生装置に出力することを特徴とする電圧印加方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−255432(P2012−255432A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−70190(P2012−70190)
【出願日】平成24年3月26日(2012.3.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「省エネルギー革新技術開発事業/先導研究/動的流れ場に対するプラズマ気流制御最適化の研究開発」業務委託、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月26日(2012.3.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「省エネルギー革新技術開発事業/先導研究/動的流れ場に対するプラズマ気流制御最適化の研究開発」業務委託、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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