説明

電圧比較回路

【課題】
消費電力がより少ない電圧比較回路を提供する。
【解決手段】
入力端子IN1がゲートに接続されるFETQ1と、入力端子IN2がゲートに接続されるFETQ2と、双安定回路と、AND回路Gと、FETQ11を備える。双安定回路は、比較のストローブ信号となるパルス信号φが供給され、パルス信号φがローレベルにある時に出力端子OUT1、OUT2の論理値がハイレベルとなり、AND回路Gの出力がハイとなってFETQ11をオンとする。パルス信号φがローレベルからハイレベルに変化した時に、入力電圧の比較がなされ、FETQ1、Q2のドレイン電流の大小関係に対応して出力端子OUT1、OUT2の一方がローレベルに変化してAND回路Gの出力がローレベルとなってFETQ11をオフとする。比較動作を行う短い期間にのみFETQ1、Q2のソース電流が流れるので低消費電力化が実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧比較回路に関し、特に低消費電力の電圧比較回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯端末等に代表される各種の電子機器においては、高機能化、高性能化に伴い、搭載される回路数が増大し、一方では、小型軽量化の要求も高まり、回路の省電力化が大きな課題になってきている。電圧比較回路は、各種電子回路の機能回路ブロックとして広く用いられている。特に、アナログ信号をディジタル信号に変換する回路、すなわちAD変換回路には、多用されている。このような電圧比較回路における省電力化も例外ではなく、回路上の工夫によって消費電流の低減がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、低消費電力の電圧比較回路が開示されている。この回路は、図7に示すような二重のフリップフロップ回路(ダブルラッチ型)の電圧比較器によって構成されている。以下に、この回路の詳細について説明する。
【0004】
図7において、電圧比較回路は、1対の交叉結合されたn型の電界効果トランジスタ(以下、FETという)Q103、Q104により構成される第1のフリップフロップと、このフリップフロップを構成するFETQ103、Q104とソースおよびドレインをそれぞれ共通にするn型FETQ101、Q102と、を備える。また、第1のフリップフロップとは異極性の1対の交叉結合されたp型FETQ105、Q106により構成される第2のフリップフロップと、第2のフリップフロップを構成するp型FETQ105、Q106とソースおよびドレインをそれぞれ共通にするp型FETQ107、Q108と、FETQ103、Q104のドレインとFETQ105、Q106のドレインとの間にそれぞれソース、ドレインが接続されるn型FETQ109、Q110と、を備える。FETQ107、Q108、Q109、Q110のゲートは、共通とされ、パルス信号(ストローブ信号)φが供給される。FETQ101、Q102のゲートは、それぞれ信号入力端子IN1、IN2に接続されて比較すべき電圧が入力される。また、FETQ109、Q110のドレインは、それぞれ出力端子OUT2、OUT1に接続される。さらに、FETQ101、Q102、Q103、Q104のソースは、低電位の電源VSSに接続され、FETQ105、Q106、Q107、Q108のソースは、高電位の電源VDDに接続される。
【0005】
以上のように構成される電圧比較回路の動作について説明する。この回路は、最初パルス信号φがローレベル(電源VSSの電位)からスタートする。電源VDDの電圧として5V、n型FETのしきい値電圧が0.8Vの場合には入力電圧は、望ましくはFETQ101、Q102のしきい値電圧より1V程度高いことが回路を最も高速に動作させることができる。以下この条件で説明する。FETQ101、Q102は、導通しているから、FETQ103、Q104のドレイン電圧は、零(電源VSSの電位)でFETQ109、Q110は、非導通であり、FETQ107、Q108は、導通となるから、出力端子OUT1、OUT2の電位は、電源VDDの電圧(ハイレベル)と等しい。
【0006】
次に、パルス信号φがハイレベル(電源VDDの電位)となるパルスを印加すると、FETQ109、Q110は導通し、FETQ107、Q108は非導通となり、FETQ109、Q110を通してFETQ103、Q104のフリップフロップへ電流が流入する。このとき信号入力端子IN1の電位が信号入力端子IN2の電位より高かったとすると、FETQ101に流れる電流の方がFETQ102に流れる電流より多くなる。それぞれFETQ103のドレイン電位もしくはFETQ104のドレイン電位がしきい値電圧を超えるまでは、FETQ103、Q104にドレイン電流が流れない。FETQ109、Q110が導通した初期においてはFETQ103のドレインもFETQ104のドレインも同じように充電されるが、FETQ103のドレインの方が放電量が多いため、FETQ104のドレイン(FETQ103のゲート)の方が先にしきい値電圧を超える。するとFETQ103も放電を開始し、FETQ103のドレイン(FETQ104のゲート)の電位は上昇しない。したがってFETQ104のドレインの電位は、上昇をつづける。そのためFETQ109に流れる電流の方がFETQ110に流れる電流より多くなる。すると、出力端子OUT2の電位の方が出力端子OUT1の電位より低くなるからFETQ105、Q106でつくられるフリップフロップも動作し、出力端子OUT2の電位は、急速に低下する。このようにして入力端子の電位に応じて出力端子の状態が定まる。
【0007】
以上のように電圧比較回路は、二重のフリップフロップで構成され、出力状態が定まるに要する時間が高速となる。また、入力から出力まで完全な対称構成となっているため、オフセット電圧の生ずる原因を除去することができ、電源雑音が両入力電圧に対して等しく加わるためキャンセルされ、雑音に対して誤動作するおそれも全くない。さらに、初期状態(パルス信号φがローレベル)において、電流を消費せず、比較動作(パルス信号φがハイレベル)においても微少な電流を消費するだけであるので、低消費電力の電圧比較回路が実現される。
【0008】
また、非特許文献1にも、低消費電力の電圧比較回路が記載されている。この回路は、特許文献1の電圧比較回路とほぼ同様の構成であるが、入力段がp型FETの差動アンプにより構成されるものである。
【0009】
【特許文献1】特公平2−34490号公報 (図4)
【非特許文献1】ジー・エム・ユィン(G. M. Yin)他、「8ビット解像度を有する高速CMOS比較器(A High-Speed CMOS Comparator with 8-b Resolution)」、(米国)、アイイーイーイー ジャーナル オブ ソリッドステート サーキット(IEEE Journal of Solid-state Circuits)、27巻2号、1992年2月、p.208−211
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の電圧比較回路は、初期状態(パルス信号φがローレベル)において、電流を消費しないが、比較動作(パルス信号φがハイレベル)においては微少な電流を消費している。すなわち、図7において、パルス信号φがハイレベルであって、信号入力端子IN1の電位が信号入力端子IN2の電位より高かったとする。この状態で、FETQ104、Q105、Q107、FETQ108は、オフ状態となり、FETQ103、Q106、Q109、FETQ110は、オン状態となる。したがって、FETQ106、Q110、Q102を通して微少な電流が流れることになる。また、信号入力端子IN2の電位が信号入力端子IN1の電位より高い場合には、FETQ105、Q109、Q101を通して微少な電流が流れることになる。この微少な電流は、比較動作において信号を増幅するために必要であるが、出力状態が決まった後でも流れている。しかしながら、従来の回路では、この電流は不可欠なものであると長年考えられており、微少電流を止むを得ないものとして放置されていた。そして、従来、この電流を削減して消費電力をさらに少なくするような電圧比較回路の試みは、なされていなかった。
【0011】
したがって、本発明の目的は、消費電力がより少ない電圧比較回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明者は、電圧比較回路の出力状態が決まった後にあっては、FETQ101あるいはQ102を流れる電流は、必ずしも必要のないものであり、この電流を削減することが消費電力をより少なくすることに繋がると着目し、本発明に至った。
【0013】
本発明の一つのアスペクトに係る電圧比較回路は、第1の入力端子をゲート電極に接続する第1の電界効果トランジスタと、第1の電界効果トランジスタのソース電極とソース電極を共通にし、第2の入力端子をゲート電極に接続する第2の電界効果トランジスタと、を備える。また、クロック信号が供給され、クロック信号が第1の論理値にある時には第1の出力端子の論理値と第2の出力端子の論理値とが同一の論理値となり、クロック信号が第1の論理値から第2の論理値に変化した時に、第1の電界効果トランジスタのドレイン電流と第2の電界効果トランジスタのドレイン電流との大小関係に対応して第1の出力端子の論理値と第2の出力端子の論理値との一方が異なる論理値に変化するように構成される双安定回路を備える。さらに、第1の出力端子の論理値と第2の出力端子の論理値とが同一である場合に、第1および第2の電界効果トランジスタのソース電流を流すようにし、第1の出力端子の論理値と第2の出力端子の論理値とが互いに異なる論理値である場合にソース電流を遮断するように制御する電流制御回路を備える。
【0014】
第1の展開形態の電圧比較回路において、電流制御回路は、第1の出力端子の論理値と第2の出力端子の論理値とが同一であって、さらにクロック信号が第2の論理値にある場合に、第1および第2の電界効果トランジスタのソース電流を流すように制御することが好ましい。
【0015】
第2の展開形態の電圧比較回路において、電流制御回路は、第1の出力端子の論理値と第2の出力端子の論理値とが同一である場合に第1の論理値を出力し、第1の出力端子の論理値と第2の出力端子の論理値とが互いに異なる場合に第2の論理値を出力する論理回路と、論理回路が第1の論理値を出力する場合にオンし、論理回路が第2の論理値を出力する場合にオフするスイッチ素子と、を備え、ソース電流は、スイッチ素子がオンの場合に流れ、オフの場合に遮断されることが好ましい。
【0016】
第3の展開形態の電圧比較回路において、論理回路は、第1の出力端子の論理値と第2の出力端子の論理値とが同一であって、さらにクロック信号が第2の論理値にある場合に第1の論理値を出力することが好ましい。
【0017】
第4の展開形態の電圧比較回路において、第1および第2の電界効果トランジスタのそれぞれのソース電極は、共通とされてスイッチ素子を介して電圧比較回路の電源に接続されることが好ましい。
【0018】
第5の展開形態の電圧比較回路において、第1および第2の電界効果トランジスタのそれぞれのソース電極は、共通とされて定電流源を介して電圧比較回路の電源に接続され、スイッチ素子は、定電流源の電流をオンオフすることが好ましい。
【0019】
第6の展開形態の電圧比較回路において、双安定回路は、1対の交叉結合された第1導電型の第3および第4の電界効果トランジスタにより構成される第1のフリップフロップと、1対の交叉結合された第2導電型の第5および第6の電界効果トランジスタにより構成される第2のフリップフロップと、第5および第6の電界効果トランジスタとソース電極およびドレイン電極をそれぞれ共通にする第2導電型の第7および第8の電界効果トランジスタと、第3および第4の電界効果トランジスタのドレイン電極と第5および第6の電界効果トランジスタのドレイン電極との間にソース電極、ドレイン電極がそれぞれ接続される第1導電型の第9および第10の電界効果トランジスタと、を備え、第1および第2の電界効果トランジスタのドレイン電極は、第3および第4の電界効果トランジスタのドレイン電極にそれぞれ接続され、第7、第8、第9および第10の電界効果トランジスタの各ゲート電極は、共通とされてクロック信号が供給され、第3および第4の電界効果トランジスタの各ソース電極は、第1の電源に接続され、第5、第6、第7および第8の電界効果トランジスタの各ソース電極は、第2の電源に接続されることが好ましい。
【0020】
第7の展開形態の電圧比較回路において、第1および第2の電界効果トランジスタは、第1導電型の電界効果トランジスタであって、それぞれのソース電極は、共通とされてスイッチ素子を介して第1の電源に接続され、電流制御回路は、スイッチ素子を含み、スイッチ素子を開閉することでソース電流を制御することが好ましい。
【0021】
第8の展開形態の電圧比較回路において、第1および第2の電界効果トランジスタは、第1導電型の電界効果トランジスタであって、それぞれのソース電極は、共通とされて定電流源を介して第1の電源に接続され、電流制御回路は、定電流源に流れる電流を制御することでソース電流を制御することが好ましい。
【0022】
第9の展開形態の電圧比較回路において、第1および第2の電界効果トランジスタは、第2導電型の電界効果トランジスタであって、それぞれのソース電極は、共通とされて定電流源を介して第2の電源に接続され、電流制御回路は、定電流源に流れる電流を制御することでソース電流を制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、比較動作を行う短い期間にのみ入力段のFETのソース電流が流れるように構成されるので、消費電力の極めて少ない電圧比較回路を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の実施形態に係る電圧比較回路は、第1の信号入力端子(図1のIN1)がゲートに接続される第1のFET(図1のQ1)と、第2の信号入力端子(図1のIN2)がゲートに接続される第2のFET(図1のQ2)と、二重の双安定回路と、電流制御回路と、を備える。双安定回路は、比較のストローブ信号となるパルス信号(図1のφ)が供給され、パルス信号がローレベルにある時には第1の出力端子(図1のOUT1)の論理値と第2の出力端子(図1のOUT2)の論理値とがハイレベルとなり、パルス信号がローレベルからハイレベルに変化した時に、第1のFETのドレイン電流と第2のFETのドレイン電流との大小関係に対応して第1の出力端子と第2の出力端子の一方がローレベルに変化するように構成される。
【0025】
電流制御回路は、論理回路(図1のG)と、スイッチ素子(図1のFETQ11)と、を備える。論理回路は、第1の出力端子と第2の出力端子との論理値がハイレベルの場合にハイレベルを出力し、第1の出力端子と第2の出力端子の一方がローレベルの場合にローレベルを出力する。また、スイッチ素子は、論理回路がハイレベルを出力する場合にオンし、論理回路がローレベルを出力する場合にオフする。第1のFETと第2のFETのソース電流は、スイッチ素子がオンの場合に流れ、オフの場合に遮断される。
【0026】
以上のように構成される電圧比較回路は、パルス信号がローレベルからハイレベルに変化した時に、第1のFETのドレイン電流と第2のFETのドレイン電流との大小関係に対応して第1の出力端子と第2の出力端子の一方がローレベルに変化する。これによって論理回路がローレベルを出力してスイッチ素子がオフし、第1のFETと第2のFETのソース電流を遮断する。したがって、比較動作の極めて短い時間においてのみ第1のFETと第2のFETのソース電流が流れ、比較によって出力状態が決まった後は、これらのソース電流は遮断されるので、電圧比較回路における消費電力を極めて少なくすることができる。
【実施例1】
【0027】
次に、実施例に基づき電圧比較回路について詳しく説明する。図1は、本発明の第1の実施例に係る電圧比較回路の構成を示す回路図である。図1において、FETQ1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6、Q7、Q8、Q9、Q10は、従来の電圧比較回路である図7のFETQ101、Q102、Q103、Q104、Q105、Q106、Q107、Q108、Q109、Q110と同一であり、その説明を省略する。ただし、FETQ1、Q2のソース電極は共通とされ、n型FETQ11のドレイン電極に接続される。また、n型FETQ11のソース電極は、低電位の電源VSSに接続される。論理回路は、出力端子OUT1、OUT2を入力とし、出力PがFETQ11のゲート電極に接続される2入力のANDゲートGで構成される。
【0028】
次に、以上のように構成される電圧比較回路の動作について説明する。図2は、本発明の第1の実施例に係る電圧比較回路の動作を説明するタイムチャートである。比較のストローブ信号となるパルス信号φがローレベル(電源VSSの電位)にある場合は、FETQ7、Q8が導通し、出力端子OUT1、OUT2の電位は、電源VDDの電圧(ハイレベル)と等しい。したがって、ANDゲートGの出力Pは、ハイレベルとなり、FETQ11がオンとなっていて、FETQ1、Q2は、導通している。
【0029】
パルス信号φがローレベルからハイレベルに変化すると、従来の図7の電圧比較回路の動作で説明したように、入力端子IN1、IN2に供給される電圧差に応じて出力端子OUT1、OUT2の一方がローレベルに変化する。例えば、入力端子IN1の電位が入力端子IN2の電位に対して高い場合、出力端子OUT2がローレベルに変化し、入力端子IN2の電位が入力端子IN1の電位に対して高い場合、出力端子OUT1がローレベルに変化する。これによってANDゲートGの出力Pは、ハイレベルからローレベルと変化し、FETQ11がオフとなり、FETQ1、Q2のソース電流が遮断される。なお、出力Pは、比較結果の状態が定まっているか否かを表す制御信号となり、電圧比較回路を用いる外部回路において有効活用されうる。
【0030】
電圧比較回路は、以上のように動作するので、比較動作の行われる極めて短い時間τにおいてのみFETQ1、Q2のソース電流が流れる。比較によって出力状態が決まった後は、FETQ11がオフの状態となってFETQ1、Q2のソース電流を遮断し続ける。通常、比較のストローブ信号となるパルス信号φのデューティを50%として電圧比較回路が動作する。したがって、平均の消費電流は、FETQ1、Q2のソース電流の半分となる。しかし、比較期間τは、例えば1ns程度とはるかに短く、例えばパルス信号φが50ns周期であれば(比較を50ns周期で行うとすれば)、消費電流は、従来の例において25nsの期間流れるのに対して本発明では1nsの期間だけ流れて、消費電力が従来の例に比して1/25程度に減少することとなる。すなわち、電圧比較回路における消費電力を極めて少なくすることができる。
【実施例2】
【0031】
図3は、本発明の第2の実施例に係る電圧比較回路の構成を示すブロック図である。図3において、図1のANDゲートGの代わりに、出力に否定論理を付した排他論理和回路EXORが使用されている。その他の構成は、図1と同一である。出力端子OUT1、OUT2がハイレベルの場合、排他論理和回路EXORの出力Pは、ハイレベルであり、出力端子OUT1、OUT2の一方がローレベルの場合に、排他論理和回路EXORの出力Pは、ローレベルとなる。出力端子OUT1、OUT2が共にローレベルの場合、図1のANDゲートGの出力Pは、ローレベルとなり、図3の排他論理和回路EXORの出力Pは、ハイレベルとなる。しかし、本発明の実施例においては、出力端子OUT1、OUT2が共にローレベルとなる状態は、存在しないので、第2の実施例は、第1の実施例と全く同じに動作することとなる。なお、ANDゲートGあるいは排他論理和回路EXORの代わりに、出力端子OUT1、OUT2がハイレベルの場合、ハイレベルを出力し、出力端子OUT1、OUT2の一方がローレベルの場合に、ローレベルを出力するような種々の論理回路を用いることができる。
【実施例3】
【0032】
図4は、本発明の第3の実施例に係る電圧比較回路の構成を示すブロック図である。図4において、図1と同じ符号は、同一物あるいは相当物を表し、その説明を省略する。n型FETQ12は、ドレイン電極がFETQ1、Q2のソース電極と共通に接続され、ソース電極が低電位の電源VSSに接続される。n型FETQ13は、ドレイン電極とゲート電極が共通とされ定電流源Iに接続され、ソース電極が低電位の電源VSSに接続される。n型FETQ14は、ドレイン電極がn型FETQ15のドレイン電極とn型FETQ12のゲート電極とに接続され、ソース電極がn型FETQ13のドレイン電極に接続される。n型FETQ15は、ドレイン電極がFETQ14のドレイン電極とFETQ12のゲート電極とに接続され、ソース電極が低電位の電源VSSに接続される。
【0033】
また、ANDゲートGの出力Pは、FETQ14のゲート電極に接続されると共に、インバータ回路INVに接続され、インバータ回路INVにより論理反転された信号がFETQ15のゲート電極に供給される。
【0034】
以上のように構成される電圧比較回路において、出力Pがハイレベルの場合、FETQ14がオンし、FETQ15がオフする。定電流源IとFETQ13とにより発生するバイアス電圧が、オンしたFETQ14を介してFETQ12のゲート電極に供給され、FETQ12は、定電流源として動作する。FETQ1、Q2は、双方のソース電極がこの定電流源に接続される比較回路の入力段を構成する。
【0035】
一方、出力Pがローレベルの場合、FETQ14がオフし、FETQ15がオンする。これにより、FETQ12がオフしてFETQ1、Q2のソース電流を遮断する。
【0036】
第3の実施例に係る電圧比較回路は、第1の実施例と同様に比較動作の極めて短い時間においてのみFETQ1、Q2のソース電流がFETQ12の定電流源を介して流れる。比較によって出力状態が決まった後は、FETQ12がオフの状態となってFETQ1、Q2のソース電流を遮断し続けるので、電圧比較回路における消費電力を極めて少なくすることができる。また、FETQ1、Q2は、比較動作時にFETQ12を定電流源とする差動増幅器として動作するので、入力端子IN1、IN2に供給される入力電圧を第1の実施例の電圧比較回路より広い範囲とすることができる。さらに、同相の雑音成分の除去能力もより高めることができる。なお、定電流源IとFETQ13とを介して常時バイアス電流が流れるが、この電流は、極めて微少であって、電圧比較回路における消費電力にはほとんど影響を与えないものである。
【実施例4】
【0037】
図5は、本発明の第4の実施例に係る電圧比較回路の構成を示すブロック図である。図5に示す電圧比較回路は、非特許文献1に記載の比較回路に本発明を適用して消費電力をより低減するように構成したものであって、図4と同じ符号は、同一物あるいは相当物を表し、その説明を省略する。図5において、FETQ21、Q22、Q24、Q25、Q26、Q27は、図4のFETQ1、Q2、Q12、Q13、Q14、Q15にそれぞれ対応するが、p型FETであることが異なる。また、FETQ24、Q25、Q27の各ソース電極は、高電位の電源VDDに接続される。
【0038】
新たに追加されたn型FETQ23のドレイン電極およびソース電極は、FETQ21、Q22のドレイン電極にそれぞれ接続され、ゲート電極には、クロック信号φ2が供給される。一方、クロック信号φ1は、図4のクロック信号φに相当し、出力端子OUT1、OUT2と共に3入力のANDゲートG0に入力される。ANDゲートG0の出力P0は、FETQ27のゲート電極に接続されると共に、インバータ回路INVの入力に接続される。インバータ回路INVの出力は、FETQ26のゲート電極に接続される。
【0039】
次に、以上のように構成される電圧比較回路の動作について説明する。図6は、本発明の第4の実施例に係る電圧比較回路の動作を説明するタイムチャートである。比較のストローブ信号となるパルス信号φ1がローレベル(電源VSSの電位)にある場合は、FETQ7、Q8が導通し、出力端子OUT1、OUT2の電位は、電源VDDの電圧(ハイレベル)と等しい。したがって、ANDゲートG0の出力Pは、ローレベルとなり、FETQ27がオンとなっていて、FETQ24がオフとなり、FETQ21、Q22のソース電流は流れない。
【0040】
パルス信号φ1がローレベルにある間にパルス信号φ2をハイレベルにして(パルス信号φ1とパルス信号φ2とは同時にハイレベルにならないようにして)FETQ23をオンさせる。これによってFETQ3、Q4のドレインの電位を同一とする。すなわち、ラッチ段の電圧を平衡させる。その後、パルス信号φ2をローレベルにしてFETQ23をオフとする。
【0041】
さらにその後、パルス信号φ1がローレベルからハイレベルに変化すると、ANDゲートG0の出力P0は、ハイレベルとなり、FETQ27がオフ、FETQ26がオンとなって、FETQ24がオンして定電流源として機能する。したがって、FETQ21、Q22のソース電流が流れ、従来の図7の電圧比較回路の動作で説明したように、入力端子IN1、IN2に供給される電圧差に応じて出力端子OUT1、OUT2の一方がローレベルに変化する。例えば、入力端子IN1の電位が入力端子IN2の電位に対して高い場合、出力端子OUT2がローレベルに変化し、入力端子IN2の電位が入力端子IN1の電位に対して高い場合、出力端子OUT1がローレベルに変化する。これによって、ANDゲートG0の出力P0は、ハイレベルからローレベルと変化し、FETQ27がオンとなっていて、FETQ24がオフとなり、FETQ21、Q22のソース電流が遮断される。
【0042】
電圧比較回路は、以上のように動作し、比較動作の行われる極めて短い時間τにおいてのみFETQ21、Q22のソース電流が流れる。比較動作の期間以外では、FETQ24がオフの状態となってFETQ21、Q22のソース電流を遮断する。したがって、実施例3と同様に、電圧比較回路における消費電力を極めて少なくすることができる。また、FETQ21、Q22は、FETQ24を定電流源とする差動増幅器として動作するので、入力端子IN1、IN2に供給される入力電圧を第1の実施例の電圧比較回路より広い範囲とすることができる。さらに、同相の雑音成分の除去能力もより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1の実施例に係る電圧比較回路の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係る電圧比較回路の動作を説明するタイムチャートである。
【図3】本発明の第2の実施例に係る電圧比較回路の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第3の実施例に係る電圧比較回路の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第4の実施例に係る電圧比較回路の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第4の実施例に係る電圧比較回路の動作を説明するタイムチャートである。
【図7】従来の電圧比較回路の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0044】
EXOR 排他論理和回路
G 2入力AND回路
G0 3入力AND回路
I 定電流源
INV インバータ回路
IN1、IN2 入力端子
OUT1、OUT2 出力端子
P、P0 出力
Q1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6、Q7、Q8、Q9、Q10、Q11、Q12,Q13、Q14、Q15、Q21、Q22、Q23、Q24、Q25、Q26、Q27 電界効果トランジスタ(FET)
VDD、VSS 電源
φ、φ1、φ2 パルス信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の入力端子をゲート電極に接続する第1の電界効果トランジスタと、
前記第1の電界効果トランジスタのソース電極とソース電極を共通にし、第2の入力端子をゲート電極に接続する第2の電界効果トランジスタと、
クロック信号が供給され、前記クロック信号が第1の論理値にある時には第1の出力端子の論理値と第2の出力端子の論理値とが同一の論理値となり、前記クロック信号が前記第1の論理値から第2の論理値に変化した時に、前記第1の電界効果トランジスタのドレイン電流と前記第2の電界効果トランジスタのドレイン電流との大小関係に対応して前記第1の出力端子の論理値と前記第2の出力端子の論理値との一方が異なる論理値に変化するように構成される双安定回路と、
前記第1の出力端子の論理値と前記第2の出力端子の論理値とが同一である場合に、前記第1および前記第2の電界効果トランジスタのソース電流を流すようにし、前記第1の出力端子の論理値と前記第2の出力端子の論理値とが互いに異なる論理値である場合に前記ソース電流を遮断するように制御する電流制御回路と、
を備えることを特徴とする電圧比較回路。
【請求項2】
前記電流制御回路は、前記第1の出力端子の論理値と前記第2の出力端子の論理値とが同一であって、さらに前記クロック信号が前記第2の論理値にある場合に、前記第1および前記第2の電界効果トランジスタのソース電流を流すように制御することを特徴とする請求項1記載の電圧比較回路。
【請求項3】
前記電流制御回路は、
前記第1の出力端子の論理値と前記第2の出力端子の論理値とが同一である場合に第1の論理値を出力し、前記第1の出力端子の論理値と前記第2の出力端子の論理値とが互いに異なる場合に第2の論理値を出力する論理回路と、
前記論理回路が前記第1の論理値を出力する場合にオンし、前記論理回路が前記第2の論理値を出力する場合にオフするスイッチ素子と、を備え、
前記ソース電流は、前記スイッチ素子がオンの場合に流れ、オフの場合に遮断されることを特徴とする請求項1記載の電圧比較回路。
【請求項4】
前記論理回路は、前記第1の出力端子の論理値と前記第2の出力端子の論理値とが同一であって、さらに前記クロック信号が前記第2の論理値にある場合に第1の論理値を出力することを特徴とする請求項3記載の電圧比較回路。
【請求項5】
前記第1および前記第2の電界効果トランジスタのそれぞれのソース電極は、共通とされて前記スイッチ素子を介して電圧比較回路の電源に接続されることを特徴とする請求項3または4記載の電圧比較回路。
【請求項6】
前記第1および前記第2の電界効果トランジスタのそれぞれのソース電極は、共通とされて定電流源を介して電圧比較回路の電源に接続され、前記スイッチ素子は、前記定電流源の電流をオンオフすることを特徴とする請求項3または4記載の電圧比較回路。
【請求項7】
前記双安定回路は、
1対の交叉結合された第1導電型の第3および第4の電界効果トランジスタにより構成される第1のフリップフロップと、
1対の交叉結合された第2導電型の第5および第6の電界効果トランジスタにより構成される第2のフリップフロップと、
前記第5および前記第6の電界効果トランジスタとソース電極およびドレイン電極をそれぞれ共通にする第2導電型の第7および第8の電界効果トランジスタと、
前記第3および前記第4の電界効果トランジスタのドレイン電極と前記第5および前記第6の電界効果トランジスタのドレイン電極との間にソース電極、ドレイン電極がそれぞれ接続される第1導電型の第9および第10の電界効果トランジスタと、
を備え、
前記第1および前記第2の電界効果トランジスタのドレイン電極は、前記第3および前記第4の電界効果トランジスタのドレイン電極にそれぞれ接続され、前記第7、前記第8、前記第9および前記第10の電界効果トランジスタの各ゲート電極は、共通とされて前記クロック信号が供給され、前記第3および前記第4の電界効果トランジスタの各ソース電極は、第1の電源に接続され、前記第5、前記第6、前記第7および前記第8の電界効果トランジスタの各ソース電極は、第2の電源に接続されることを特徴とする請求項1記載の電圧比較回路。
【請求項8】
前記第1および前記第2の電界効果トランジスタは、第1導電型の電界効果トランジスタであって、それぞれのソース電極は、共通とされてスイッチ素子を介して前記第1の電源に接続され、前記電流制御回路は、前記スイッチ素子を含み、前記スイッチ素子を開閉することで前記ソース電流を制御することを特徴とする請求項7記載の電圧比較回路。
【請求項9】
前記第1および前記第2の電界効果トランジスタは、第1導電型の電界効果トランジスタであって、それぞれのソース電極は、共通とされて定電流源を介して前記第1の電源に接続され、前記電流制御回路は、前記定電流源に流れる電流を制御することで前記ソース電流を制御することを特徴とする請求項7記載の電圧比較回路。
【請求項10】
前記第1および前記第2の電界効果トランジスタは、第2導電型の電界効果トランジスタであって、それぞれのソース電極は、共通とされて定電流源を介して前記第2の電源に接続され、前記電流制御回路は、前記定電流源に流れる電流を制御することで前記ソース電流を制御することを特徴とする請求項7記載の電圧比較回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−80679(P2006−80679A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−260200(P2004−260200)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】