説明

電子キーシステム、車両用電子キー装置、解錠方法

【課題】ユーザに煩わしさを感じさせずに、第三者の不正使用を防止する電子キーシステム等を提供する。
【解決手段】サーバ14は、ユーザ端末11から予約情報とキーIDを受信する受信手段141と、予約情報及びキーIDを車両用電子キー装置16に送信する送信手段141と、を有し、車両用電子キー装置16は、予約情報とキーIDを受信する受信手段21と、予約情報をキーIDに対応づけて記憶する記憶部25と、携帯キー17から受信したキーIDと予約情報に基づき携帯キーの認証が成立した場合、解錠を許可すると共に、予め記憶されている解錠許可回数252をゼロより大の初期値に設定するか、又は、予め記憶されている解錠許可期限252を所定期間延長するか、の少なくとも一方を実行する制御部25と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信して車両のドアロックを解錠する電子キーシステム等に関し、特に、解錠に解錠許可回数又は解錠許可期限を設けた電子キーシステム、車両用電子キー装置及び解錠方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の解錠やエンジン始動はユーザがキーを所有している場合に認められるが、さらにキーの有効期限、有効回数、使用者等を車両に登録しておき、これらの条件を満たす場合に解錠等を許可する技術が提案されている(例えば、特許文献1。)。特許文献1には、コピーキーに有効回数を設定しておくことでマスターキーを紛失してもコピーキーによりユーザに解錠等を許可し、コピーキーにより解錠する毎に車両に登録された有効回数を減少させる解錠方法が記載されている。マスターキーを紛失してもコピーキーで解錠が可能であると共に、コピーキーでは有効回数を超えて解錠できないので有効回数によりコピーキーに使用制限を課すことができる。
【0003】
ところで、ユーザは車両を自宅や契約駐車場など定められた場所に駐車することが多く、そのような予め定められた条件下では解錠条件を緩和する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2には、キーが認証されたことを条件に、車両が登録位置、登録時刻、有効回数及び使用時刻の使用条件を満たす場合、ドアを解錠する解錠方法が記載されている。この使用条件を満たす場合、運転者がドアに接触して解錠する前に、運転者以外のユーザが車両に乗車することができる。また、特許文献2の解錠方法では、この解錠方法で解錠した解錠回数をカウントすることで、いずれ有効回数の条件を満たさないことになり自動的な解錠に制限を持たすこととしている。
【特許文献1】特開2007−113306号公報
【特許文献2】特開2005−146666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の解錠方法では、マスターキーを第三者が不正使用した場合に解錠等を禁止することができず、特許文献2記載の解錠方法ではキーを所有してドアに接触するとドアを解錠できるので第三者の不正使用を禁止することができない。
【0005】
第三者の不正使用を禁止するため、例えばマスターキーを使用しても解錠回数をカウントしていき有効回数の上限を超えた場合には解錠を禁止することが考えられる。また、この場合、予め定めた車両の登録位置など所定の使用条件を満たす場合には、解錠回数をカウントしないようにすることで正規のユーザには継続的にマスターキーを使用できるようすると共に、第三者には有効回数を超えた時点でマスターキーによる解錠を禁止することができる。
【0006】
しかしながら、これでは正規のユーザが解錠する場合でも解錠回数をカウントアップする場合が想定でき、いずれ有効回数を超えて解錠できない場合が生じるという不都合が生じる。
【0007】
例えば、使用条件の登録忘れ、登録していない状況下での突破的な用事による車両の使用等は日常的に頻発するものである。解錠回数が有効回数を超えると、ドアを解錠するためにユーザは解錠回数のカウント数を初期化する等の手続きが必要になり、ユーザに多大な煩わしさを感じさせてしまう。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、ユーザに煩わしさを感じさせずに、第三者の不正使用を防止する電子キーシステム、車両用電子キー装置及び解錠方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題に鑑み、本発明は、携帯キーから送信されたキーIDに基づきドアロックを解除する車両用電子キー装置と、サーバとを有する電子キーシステムであって、サーバは、ユーザ端末から車両の使用条件を定める使用条件情報とキーIDを受信する受信手段と、使用条件情報及びキーIDを車両に送信する送信手段と、を有し、車両用電子キー装置は、記使用条件情報とキーIDを受信する受信手段と、使用条件情報をキーIDに対応づけて記憶する記憶部と、携帯キーから受信したキーIDと使用条件情報に基づき携帯キーの認証が成立した場合、解錠を許可すると共に、予め記憶されている解錠許可回数(例えば、使用許可回数)をゼロより大の初期値に設定するか、又は、予め記憶されている解錠許可期限(例えば、使用許可期限)を所定期間延長するか、の少なくとも一方を実行する制御部と、ことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、使用条件により認証された場合、解除許可回数を自動再登録できるので、再設定する煩わしさを回避して、ユーザに継続的に携帯キーを使用させることができる。また、第三者の不正使用を防止できる。
【0011】
また、本発明の一形態において、制御部は、携帯キーから受信したキーIDと使用条件情報に基づき前記携帯キーの認証が成立しない場合であって、解錠許可回数がゼロより大きく、かつ、解錠許可期限を超過していない場合、解錠を許可すると共に、解錠許可回数を1回減少させ、解錠許可期限を延長しない、ことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、使用条件により認証できない場合、解錠許可回数を1回減少させ、解錠許可期限を延長しないことで、第三者の不正使用を防止できる。
【0013】
また、本発明の一形態において、制御部は、携帯キーから受信したキーIDと使用条件情報に基づき携帯キーの認証が成立しない場合であって、解錠許可回数がゼロ以下か、又は、解錠許可期限を超過している場合、解錠を禁止すると共に、サーバに解錠禁止情報を送信する、ことを特徴とする。本発明によれば、第三者の不正使用を防止できる。
【0014】
また、本発明の一形態において、使用条件情報は、乗車時刻範囲情報、乗車位置情報又は目的地情報の少なくともいずれかを有し、携帯キーからキーIDを受信した時刻が乗車時刻範囲情報の時間に含まれる、車両の現在位置が乗車位置情報に合致する、又は、車両に設定された目的地が目的地情報に一致する場合、制御部は、携帯キーから受信したキーIDの認証が成立したと判定する、ことを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、乗車時刻範囲情報、乗車位置情報又は目的地情報に基づき使用状況が使用条件情報に一致するか否かを判定でき、例えば自宅位置から乗車する場合には解除許可回数を自動再登録できる。
【0016】
また、本発明の一形態において、携帯キーから受信したキーIDと使用条件情報に基づき携帯キーの認証が成立した場合、乗車後の車載装置の操作を検出し、キーIDに対応づけて操作に相当する車載装置の設定情報を登録する、ことを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、使用条件により認証できた場合、ユーザの車載装置の操作を学習して、次回から使用条件により認証できた場合、自動的に車載装置を作動させることができる。
【発明の効果】
【0018】
ユーザに煩わしさを感じさせずに、第三者の不正使用を防止する電子キーシステム、車両用電子キー装置及び解錠方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、電子キーシステム100の概略構成図を示す。図1の電子キーシステム100は、乗車時刻や乗車位置等の使用条件情報を入力するユーザ端末11,ユーザ端末11から使用条件情報を受信して車両15に使用条件情報を送信する予約サーバ14、車両15に搭載された車両用電子キー装置16、及び、ユーザが携帯する携帯キー17を有するように構成される。使用条件情報に一致する使用状況で解錠する場合、車両15の正規のユーザであると認証される。
【0020】
そして、本実施例の電子キーシステム100は、車両用電子キー装置16又は予約サーバ14に、携帯キー17により解錠が可能な使用許可回数又は使用許可期限の少なくとも一方(以下、両者を区別しない場合、使用制限情報という)、及び、使用条件情報を登録しておく。
【0021】
ユーザは、使用条件情報に一致しない使用状況であっても、使用許可回数又は使用許可期限の制限を超えていなければ車両15のドアロックを解錠することができる。
【0022】
そして、次の規則に従い車両用電子キー装置16又は予約サーバ14は使用制限情報を更新する。
A.使用条件情報に一致しない使用状況であるが、使用許可回数又は使用許可期限の制限を超えていなため解錠が認められた場合、使用許可回数を1回減らし、また、使用許可期限を延長しない。
B.使用条件情報に一致する使用状況において車両15を解錠する場合、使用許可回数を初期値に更新し、また、使用許可期限を所定期間先まで延長する。
【0023】
したがって、使用条件情報の乗車位置に例えば自宅位置を登録しておけば、自宅から車両15に乗車することで、使用制限情報がその度に初期状態に更新されるので、使用条件情報と一致しない使用状況で解錠しても、使用許可回数がゼロになったり、使用許可期限が満了する可能性を低減できる。また、第三者が不正に車両15を使用する場合、使用条件情報と一致しない使用状況となるので、いずれ使用許可回数がゼロとなるか使用許可期限が満了し、車両15の不正使用を防止することができる。
【0024】
なお、以下では、車両用電子キー装置16がかかる制御を実行する場合を例にするが予約サーバ14が使用許可回数又は使用許可期限を管理してもよい。また、以下では、ドアロックの解錠の禁止を例に説明するが、エンジンの始動の禁止に適用してもよい。
【0025】
ユーザ端末11はPC(パーソナルコンピュータ)又は携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)等の携帯端末である。ユーザ端末11と予約サーバ14は、携帯電話網の基地局12や、インターネットやWANなどのネットワーク13を介して接続される。ユーザは所望の使用条件情報を送信することができる。本実施形態ではユーザ端末11はPCであるとする。
【0026】
使用制限情報は、ユーザがユーザ端末11から入力してもよいし、予約サーバ14が設定してもよいが、使用制限情報は所定の回数及び日数であるので、本実施例では予め車両15に設定されているとする。例えば、ユーザが設定する場合、突発的な用事で車両15を使用することが多いユーザは使用許可回数や使用許可期限の初期状態に余裕を持たせることができる。
【0027】
なお、正規のユーザが使用している状況で、万一、使用許可回数がゼロとなるか使用許可期限が満了した場合のため、予約サーバ14が使用制限情報を初期状態に更新できるようになっている。
【0028】
また、予約サーバ14と車両用電子キー装置16は無線にて通信することができる。例えば、予約サーバ14は携帯電話網の基地局12を介して車両用電子キー装置16と通信し、ユーザ端末11から送信された使用条件情報を車両用電子キー装置16に送信する。DSRC(Dedicated Short Range Communication)、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、ワイヤレスUSB、ZigBee等の近距離無線通信により通信してもよい。
【0029】
図2は、電子キーシステム100のブロック図の一例を示す。ユーザ端末11及び予約サーバ14は、CPU、RAM、ROM、NIC(Network Interface Card)、入出力装置及びハードディスク装置などのメモリを備えたコンピュータである。
【0030】
・ユーザ端末11
使用条件入力部112は、ユーザの所望の使用条件を入力するユーザインターフェイスで、例えば、キーボード、ディスプレイ、ブラウザソフトウェア等で構成される。ブラウザソフトウェアは、予約サーバ14から受信したHTMLファイルを解析して、使用条件情報を入力するためのウェブページをディスプレイに表示する。ユーザは自分のユーザIDとパスワードを入力して予約サーバ14にログインする。これにより、予約サーバ14はユーザIDに対応づけて暗号化されている、該ユーザが携帯する携帯キー17に固有のキーIDを抽出できる。ユーザは、表示されたウェブページに乗車時刻、乗車位置などの使用条件情報を入力する。そして、例えばNICで構成される通信部111はTCP(Transmission Control Protocol )/IP(Internet Protocol)等のプロトコルに従い、ユーザが入力した使用条件情報を予約サーバ14に送信する。
【0031】
・予約サーバ14
予約サーバ14は、例えばNICで構成される通信部141及び使用条件情報記憶部142を有する。使用条件情報記憶部142は、通信部141が受信した使用条件情報をユーザID又はキーIDに対応づけて記憶する。また、通信部141は、ユーザID又はキーIDに対応づけて使用条件情報を車両用電子キー装置16に送信する。通信部141は、例えばTCP/IP等のプロトコルに従い使用条件情報をパケットに分解すると共に各パケットに車両用電子キー装置16に付与されたアドレスを付加して携帯電話会社のサーバに送信する。携帯電話会社のサーバはアドレスに対応づけて記憶する識別情報に従い車両15を検出し車両15に最寄りの基地局12から交通情報を送信する。
【0032】
・携帯キー17
携帯キー17は、マイコン、アンテナ、受信回路、送信回路及びバッテリ等を備えた無線通信装置である。車両15の室外発信機241の検知エリアに携帯キー17が進入すると、無線通信部171はリクエスト電波を受信し、受信回路により受信されたリクエスト電波を復調してその電波に含まれていたリクエスト信号をマイコンに入力させる。無線通信部171は、キーID記憶部172に記憶された固有のキーID(以下、区別するためユーザキーIDという)で搬送波を変調することにより該ユーザキーIDを含むキーID電波を生成し、照合ECU24のアンテナに送信する。
【0033】
なお、携帯キー17はワイヤレスキーであってもよく、ワイヤレスキーの場合、携帯キー17の所定の操作ボタンを操作することでユーザキーIDが電波又は赤外線で搬送され車両15に送信される。
【0034】
・車両用電子キー装置16
車両用電子キー装置16は、通信装置21,GPS(Global Positioning System)装置22、時計23、照合ECU24、MMECU25及びボディECU26がCAN(Controller Area Network)等の車内LANにより接続して構成されている。
【0035】
通信装置21は、予約サーバ14から送信された使用条件情報を受信する。通信装置21は、基地局12が発信する電波からベースバンド信号を復調し、ベースバンド信号を信号処理して元のデジタル信号に復号することで使用条件情報を受信する。
【0036】
GPS装置22は、地球の周りを周回する好ましくは4つ以上のGPS衛星を補足して、各GPS衛星からの電波の到達時間を計算し、到達時間と光速cから各GPS衛星までの距離を算出する。そして、それら複数の距離に基づき自車両の位置(緯度・経度・標高)を決定し、現在位置の位置情報をMMECU25に送出する。
【0037】
なお、自宅に駐車しているか否かは、GPS装置22でなく例えば無線LANによりホームサーバに接続したことで検出することができる。また、車両15が電気自動車やハイブリッドカーの場合には、自宅で給電のためのPLC(電力線搬送通信)接続することができるので、PLC装置が車両15を検出した場合に自宅に駐車していることを検出してもよい。
【0038】
時計23は、現在時刻と日時(以下、両者を現在日時という)を管理する公知の時計であり、好ましくは電波時計とすることで時刻のずれを抑制できる。
【0039】
照合ECU24は、リクエスト信号を生成し室外発信機241から所定のサイクル時間毎にリクエスト電波を送信する。このリクエスト電波は、室外発信機241を中心に車両外側の1m弱の範囲に検知エリアを形成し、上記のように検知エリアに携帯キー17が進入すると携帯キー17がキーID電波を送信する。車室外の所定のアンテナが該キーID電波を受信すると、照合ECU24はキーID電波を復調して含まれていたユーザキーIDが、予め記憶している携帯キー17のキーIDと一致するか否かに基づき携帯キー17の認証の成立の可否を判定する。一致した場合、照合ECU24はユーザキーIDを送出して、MMECU25に解錠すべきか否かの判定を要求する。
【0040】
MMECU25は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェイス及びメモリがバスで接続されたコンピュータである。MMECU25は使用条件情報251、使用制限情報252及び車両設定情報253を記憶している。
【0041】
図3(a)は使用制限情報252の一例を、図3(b)は使用条件情報251の一例を、図3(c)は車両設定情報253の一例をそれぞれ示す図である。図3(a)では、使用許可回数及び使用許可期限がキーID及びユーザIDに対応づけて登録されている。使用許可回数は使用条件情報251に一致しない使用状況で、車両15のドアを解錠できる残りの回数である。例えば、ユーザABCDの場合、あとn1回、使用条件情報251に一致しない使用状況でドアを解錠することができる。n1回は、使用許可回数の初期値:N回(例えば5回)以下の値となる。
【0042】
また、使用許可期限は使用条件情報251に一致しない使用状況で、車両15のドアを解錠できる最終日時を示す。例えば、ユーザEFGHは使用条件情報251に一致しない使用状況で「20xx年○月○日」までドアを解錠できることを示している。
【0043】
なお、使用期限情報を所定期間先まで延長するとは、現在日時に使用許可期限の初期値 M日(例えば10日)を加えて新しい使用期限情報とすることである。日時でなく日数そのもの(例えば残り10日間)を初期値としてもよい。
【0044】
同様に、ユーザIJKLは使用条件情報251に一致しない使用状況で、あとn2(≦N)回か「20xx年○月○日」までのいずれかの条件が成立する間はドアを解錠できる。使用許可回数と使用許可期限の両方を設定しておけば、車両15のセキュリティをより向上できる。
【0045】
また、図3(b)の使用条件情報251には、キーID及びユーザIDと共に、乗車時刻と乗車位置及び目的地が登録されている。乗車時刻は、乗車時間を指定するもので、ユーザABCDであれば、「7:00〜8:00」に乗車する場合は、使用条件情報251に一致した車両15の使用となる。また、乗車位置は緯度・経度等の座標情報であり、ユーザEFGHであれば、「自宅」から乗車する場合、使用条件情報251に一致した車両15の使用となる。また、ユーザIJKLであれば、「17:00〜18:00」に、「勤務先」から乗車する場合に使用条件情報251に一致した車両15の使用となる。
【0046】
また、目的地と目的地に到着する到着時刻を使用条件情報251としてもよい。例えば、勤務先からの帰宅時、ナビゲーションシステムに自宅を目的地に設定した場合、通常の到着時刻に自宅に到着することで使用条件情報251に一致する使用状況となる。
【0047】
また、図3(c)の車両設定情報253には、キーID及びユーザIDと共に、作動時刻、車載装置及びその設定内容が登録されている。ユーザが使用条件情報251に一致する使用状況で使用する場合、精度よくユーザが認証できたと考えてよいので、ユーザの嗜好に応じた車両設定を自動的に提供することができる。例えば、ユーザABCDが使用条件情報251に一致する使用状況で乗車すると、7:30〜8:30の通勤時には、1234MHzの放送局にチューニングしてラジオがオンになり、ドライビングポジションが適切に設定され、エアコンの温度が24度に設定される。また、17:30〜21:00の帰宅時には、オーディオからタイトル「○○」の音楽が自動的に演奏される。
【0048】
また、車載装置の自動的な作動でなく、作動を禁止しておくこともできる。例えば、子供の使用するキーIDに対しては、深夜の時間帯は解錠を禁止することができる。
【0049】
ところで、図3(c)のような車両設定情報253は、ユーザがマニュアルで設定してもよいが、本実施形態では使用条件情報251に一致する使用状況か否かを判定できるので、使用条件情報251に一致する使用状況では、ユーザの車載装置の操作を学習してもよい。すなわち、ユーザが通勤時にラジオをオンにした場合、その時刻、放送局を記憶しておき、次回に同じユーザが使用条件情報251に一致する使用状況で乗車した場合、自動的にラジオをオンにする。したがって、ユーザは車両設定情報253を設定することなく、車載装置を一度操作すれば次回の乗車からは嗜好にあった車両設定とすることができる。
【0050】
図2に戻り、MMECU25は、照合ECU24からユーザキーIDを受信した場合、ユーザキーIDに基づき、図3(b)の使用条件情報251を参照し、次の場合にボディECU26に解錠要求を送出する。なお、解錠要求を受信したボディECU26は、運転者のドア部の操作を検出した場合にドアロックモータ27を駆動して運転席のドアロックを解錠する。
・当該ユーザの使用状況が使用条件情報251に一致する。
・当該ユーザの使用状況が使用条件情報251に一致しないが、使用許可回数がゼロより大きく、かつ、使用許可期限を超過していない。
【0051】
MMECU25について詳細に説明する。図4はMMECU25の機能ブロック図を一例を示す。使用状況判定部254は、ユーザキーIDに基づき使用条件情報251を参照し、現在日時及び位置情報等が当該ユーザの使用条件情報251に一致するか否かを判定する。一致する場合には使用制限更新部256と解錠要求部258に一致情報を通知し、一致しない場合には使用制限判定部255に不一致情報を通知する。
【0052】
使用制限判定部255はユーザキーIDに基づき使用制限情報252を参照し、当該ユーザの使用許可回数がゼロより大きいか否か、使用許可期限を超過しているか否かをそれぞれ判定する。設定されているのが使用許可回数又は使用許可期限のどちらか一方の場合、判定するのは設定のある使用制限情報252のみである。いずれの使用制限情報252も満たす場合には制限内情報を使用制限更新部256と解錠要求部258に通知し、いずれかの使用制限情報を満たさない場合には制限外情報をサーバ通知部257に通知する。
【0053】
使用制限更新部256は、一致情報の通知を受けた場合、使用制限情報252における当該ユーザの使用許可回数を初期値に更新し、使用許可期限を所定期間先まで延長する。したがって、例えば図3(a)のユーザABCDの場合、使用許可回数n1(例えば3)はN(例えば5)に更新される。ユーザEFGHの場合、使用許可期限は現在日時に使用許可期限の初期値を加えた日時に更新される。
【0054】
このように、使用条件情報251に一致する使用状況下では、使用許可回数及び使用許可期限を初期状態に更新するので、正規のユーザが車両15を使用する場合は、使用許可回数がゼロとなったり使用許可期限を超過することを防止でき、車両15のセキュリティ向上とユーザの利便性向上を両立させることができる。
【0055】
また、使用制限更新部256は、制限内情報の通知を受けた場合、使用制限情報252における当該ユーザの使用許可回数を1回減らす(n1=n1−1)。そして、使用許可期限を延長しない。
【0056】
解錠要求部258は、一致情報又は制限内情報の通知を受けた場合、ボディECU26に解錠要求を送信する。また、サーバ通知部257は、制限外情報の通知を受けた場合、通信装置21に制限外の解錠要求があった旨の制限外解錠要求情報を予約サーバ14に送信するよう要求する。
【0057】
なお、予約サーバ14は制限外解錠要求情報を受信することで、車両15が解錠不能になっていることを検知し、所定の処理を実行する。例えば、ユーザ端末11にユーザの認証が必要な旨を通知し、ユーザが認証できた場合には、使用制限情報252を初期状態に更新する命令を車両15に送信する。したがって、万一、使用許可回数がゼロになるか、使用許可期限を超過しても、速やかに解錠することができる。
【0058】
また、ユーザは、認証が必要な旨の通知を受けることで、第三者が車両15を不正に使用していることを把握できる。この場合は、車両15は解錠やエンジン始動が禁止されたままであるので、車両15の盗難を防止できる。
【0059】
図5は、MMECU25がドアを解錠する手順を示すフローチャート図の一例である。図5のフローチャート図は例えば照合ECU24がユーザキーID(解錠要求)を受信することでスタートする。
【0060】
まず、使用状況判定部254は照合ECU24からユーザキーIDを取得する(S10)。ユーザキーIDを取得すると、時計23から現在日時を、GPS装置22から位置情報をそれぞれ取得する。
【0061】
ついで、使用状況判定部254は、ユーザキーIDに基づき使用条件情報251を参照する(S20)。そして、現在日時、位置情報に基づき、使用状況が当該ユーザの使用条件情報251に一致するか否かを判定する(S30)。
【0062】
使用状況が当該ユーザの使用条件情報251に一致する場合(S30のYes)、使用制限更新部256は、当該ユーザの使用制限情報252を初期状態に更新する(S40)。また、解除要求部258はボディECU26に解錠要求を送出する(S50)。
【0063】
使用状況が当該ユーザの使用条件情報251に一致しない場合(S30のNo)、使用制限判定部255は、使用制限情報252を参照し、使用許可回数がゼロより大きく、かつ、使用許可期限を超過していないか否かを判定する(S60)。
【0064】
使用許可回数がゼロより大きく、かつ、使用許可期限を超過していない場合(S60のYes)、使用制限更新部256は当該ユーザの使用許可回数を1回減らし、使用許可期限を延長しない(S70)。また、解除要求部258はボディECU26に解錠要求を送出する(S50)。
【0065】
使用許可回数がゼロ以下か、又は、使用許可期限を超過している場合(S60のNo)、サーバ通知部257は予約サーバ14に制限外の解錠要求があった旨の制限外解錠要求情報を通知する(S80)。
【0066】
以上から本実施形態の電子キーシステム100は、使用条件情報251に一致する使用状況では使用制限情報252を初期状態に更新することで、使用条件情報と一致しない使用状況で解錠しても、使用許可回数がゼロになったり、使用許可期限が満了する可能性を低減できる。また、第三者が不正に車両15を使用する場合、使用条件情報と一致しない使用状況となるので、いずれ使用許可回数がゼロとなるか使用許可期限が満了し、車両15の不正使用を防止することができる。
【0067】
なお、本実施形態では、予約サーバ14から使用条件情報251を車両15に設定し、使用制限情報252は予め車両15に設定されているとしたが、使用条件情報251及び使用制限情報252を車両15に乗車したユーザが直接入力してもよい。この場合は、車両15を不正利用する第三者による使用条件情報251及び使用制限情報252の改ざんを防止するため、パスワードや生体認証情報等でユーザを認証する。したがって、本実施形態の車両用電子キー装置16は予約サーバ14を用いない場合でも、煩わしさを感じさせることなく正規のユーザは継続的に使用できることを可能とし、第三者の不正利用を防止できる。正規のユーザが使用中に、万一、使用許可回数がゼロ以下になるか、使用許可期限を超過した場合、車両15への乗車までは許可することで、ユーザは使用制限情報252を初期状態に更新でき、車両15を使用できるようすることができる。
【0068】
なお、携帯キー17には電池切れ時にドアロックを解除するためメカニカルキーが差し込まれているが、メカニカルキーを使用する場合キーIDの取得が困難なので、「ユーザの使用状況が使用条件情報251に一致しないが、使用許可回数がゼロより大きく、かつ、使用許可期限を超過していない。」として扱う。したがって、携帯キー17のバッテリーが切れても、使用許可回数がゼロとなるか使用許可期限が満了するまでメカニカルキーで解錠することができる。
【0069】
〔カーシェアリング等への適用〕
本実施形態の電子キーシステム100は、上記のように個人が車両15を所有する場合だけでなく、例えばカーシェアリングやレンタカーシステムのように1台の車両15を複数人で共用する場合に好適となる。
【0070】
カーシェアリングやレンタカーシステムでは予め利用時間(使用条件情報に相当)を予約することが多く、予約したユーザは利用時間内であれば携帯キー17により車両15を解錠できる。一方、車両15が盗難された場合に利用時間を超えて車両15を使用すると、いずれ使用許可回数がゼロとなるか使用許可期限が満了するため、共用される車両15の盗難を防止しやすくすることができる。
【0071】
カーシェアリングやレンタカーシステムの場合、予約サーバ14が、利用時間を超えて解錠する回数を想定して使用許可回数の初期値を設定すればよいし、利用時間を超えて使用を認める期限を使用許可期限とすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】電子キーシステムの概略構成図である。
【図2】電子キーシステムのブロック図の一例である。
【図3】使用制限情報、使用条件情報及び車両設定情報の一例を示す図である。
【図4】MMECUの機能ブロック図の一例である。
【図5】MMECUがドアを解錠する手順を示すフローチャート図の一例である。
【符号の説明】
【0073】
11 ユーザ端末
14 予約サーバ
15 車両
16 車両用電子キー装置
17 携帯キー
22 GPS装置
23 時計
24 照合ECU
25 MMECU
100 電子キーシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯キーから送信されたキーIDに基づきドアロックを解除する車両用電子キー装置と、車両を予約するサーバとを有する電子キーシステムであって、
前記サーバは、ユーザ端末から予約情報とキーIDを受信する受信手段と、
前記予約情報及びキーIDを前記車両用電子キー装置に送信する送信手段と、を有し、
前記車両用電子キー装置は、
前記予約情報とキーIDを受信する受信手段と、
前記予約情報をキーIDに対応づけて記憶する記憶部と、
前記携帯キーから受信したキーIDと前記予約情報に基づき前記携帯キーの認証が成立した場合、解錠を許可すると共に、予め記憶されている解錠許可回数をゼロより大の初期値に設定するか、又は、予め記憶されている解錠許可期限を所定期間延長するか、の少なくとも一方を実行する制御部と、を有する、
ことを特徴とする電子キーシステム。
【請求項2】
携帯キーから送信されたキーIDに基づきドアロックを解除する車両用電子キー装置であって、
サーバがユーザ端末から受信した予約情報とキーIDを、前記サーバから受信する受信手段と、
前記予約情報をキーIDに対応づけて記憶する記憶部と、
前記携帯キーから受信したキーIDと前記予約情報に基づき前記携帯キーの認証が成立した場合、解錠を許可すると共に、予め記憶されている解錠許可回数をゼロより大の初期値に設定するか、又は、予め記憶されている解錠許可期限を所定期間延長するか、の少なくとも一方を実行する制御部と、
を有することを特徴とする車両用電子キー装置。
【請求項3】
携帯キーから送信されたキーIDに基づきドアロックを解除する車両用電子キー装置と、サーバとを有する電子キーシステムであって、
前記サーバは、ユーザ端末から車両の使用条件を定める使用条件情報とキーIDを受信する受信手段と、
前記使用条件情報及びキーIDを車両に送信する送信手段と、を有し、
前記車両用電子キー装置は、
前記使用条件情報とキーIDを受信する受信手段と、
前記使用条件情報をキーIDに対応づけて記憶する記憶部と、
前記携帯キーから受信したキーIDと前記使用条件情報に基づき前記携帯キーの認証が成立した場合、解錠を許可すると共に、予め記憶されている解錠許可回数をゼロより大の初期値に設定するか、又は、予め記憶されている解錠許可期限を所定期間延長するか、の少なくとも一方を実行する制御部と、
ことを特徴とする電子キーシステム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記携帯キーから受信したキーIDと前記使用条件情報に基づき前記携帯キーの認証が成立しない場合であって、
前記解錠許可回数がゼロより大きく、かつ、解錠許可期限を超過していない場合、
解錠を許可すると共に、前記解錠許可回数を1回減少させ、解錠許可期限を延長しない、
ことを特徴とする請求項3記載の電子キーシステム。
【請求項5】
前記制御部は、
前記携帯キーから受信したキーIDと前記使用条件情報に基づき前記携帯キーの認証が成立しない場合であって、
前記解錠許可回数がゼロ以下か、又は、解錠許可期限を超過している場合、解錠を禁止すると共に、前記サーバに解錠禁止情報を送信する、
ことを特徴とする請求項3又は4記載の電子キーシステム。
【請求項6】
前記使用条件情報は、乗車時刻範囲情報、乗車位置情報又は目的地情報の少なくともいずれかを有し、
前記携帯キーからキーIDを受信した時刻が前記乗車時刻範囲情報の時間に含まれる、
車両の現在位置が前記乗車位置情報に合致する、又は、
車両に設定された目的地が前記目的地情報に一致する、場合、
前記制御部は、前記使用条件情報に基づき前記携帯キーから受信したキーIDの認証が成立したと判定する、
ことを特徴とする請求項3〜5いずれか1項記載の電子キーシステム。
【請求項7】
前記携帯キーから受信したキーIDと前記使用条件情報に基づき前記携帯キーの認証が成立した場合、
乗車後の車載装置の操作を検出し、キーIDに対応づけて前記操作に相当する車載装置の設定情報を記憶する、
ことを特徴とする請求項3〜6いずれか1項記載の電子キーシステム。
【請求項8】
携帯キーから送信されたキーIDに基づきドアロックを解除する車両用電子キー装置であって、
キーIDに対応づけて車両の使用条件を定める使用条件情報を記憶する記憶部と、
前記携帯キーから受信したキーIDと前記使用条件情報に基づき前記携帯キーの認証が成立した場合、解錠を許可すると共に、予め記憶されている解錠許可回数をゼロより大の初期値に設定するか、又は、予め記憶されている解錠許可期限を所定期間延長するか、の少なくとも一方を実行する制御部と、
を有することを特徴とする車両用電子キー装置。
【請求項9】
携帯キーから送信されたキーIDに基づきドアロックを解除する車両の解錠方法であって、
前記携帯キーから受信したキーIDと、キーIDに対応づけて記憶されている車両の使用条件を定める使用条件情報と、に基づき前記携帯キーの認証が成立するか否かを判定するステップと、
認証が成立した場合、解錠を許可するステップと、予め記憶されている解錠許可回数をゼロより大の初期値に設定するか、又は、予め記憶されている解錠許可期限を所定期間延長するか、の少なくとも一方を実行するステップと、
有することを特徴とする解錠方法。


【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【公開番号】特開2009−127285(P2009−127285A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−303098(P2007−303098)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】