説明

電子キーシステム

【課題】構成簡素な中継器を使用した無線通信の不正成立を生じ難くさせる電子キーシステムを提供する。
【解決手段】電子キー2との間で相互に行われるID照合には、車外ID照合と車内ID照合とがあり、車外ID照合が成立する場合には、車両1の特定のドアの解錠を実行又は許可し、車内ID照合が成立する場合には、車両1の走行用の駆動手段の始動を許可する電子キーシステムにおいて、電子キー2は、UHF帯の信号を受信するUHF受信機24に受信感度を調整する感度調整部24aを備え、同感度調整部24aは、リクエスト信号の受信感度を車外ID照合のときより車内ID照合のときに下げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子キーから無線送信されたIDコードにより電子キーのID照合を行う電子キーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の電子キーシステムとして、車両から送信されるリクエスト信号によって電子キーからID信号を返信させ、このID信号に含まれるIDコードにより電子キーのID照合を実行する電子キーシステムが存在する(特許文献1参照)。この電子キーシステムでは、車外発信機で車外にリクエスト信号の通信エリアと、車内発信機で車内にリクエスト信号の通信エリアとを形成し、車両は、車外及び車内のそれぞれ通信エリアに進入した電子キーとのID照合を実行する。そして、車外ID照合が成立すると、ドアロックの施解錠が実行され、車内ID照合が成立すると、エンジンの始動操作が許可される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−132024号公報
【特許文献2】特開2001−342758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような電子キーシステムでは、特許文献2にも記載されるように、中継器を使った不正行為が実行されるおそれがある。この不正行為は、例えば、電子キーが車両から遠い場所に位置する際に、複数の中継器を使用して電子キーと車両との間で電波を中継し、これら2者間の通信を成立させる行為である。従って、ユーザが気付かないところでID照合が成立されてしまうおそれがあった。
【0005】
そこで、特許文献2では、電子キー及び車両が互いに対する相対位置を算出するようにしている。電子キーは、IDコードを送信する信号に車両に対する自身の相対位置を示す信号を含ませて、車両に送信する。同車両は、自身が算出した電子キーに対する自身の相対位置情報と電子キーからの相対位置情報とを比較し、双方の位置情報のずれが所定の範囲内であれば、ドアの解錠を行う。これにより、中継器を使用した不正行為が抑制される。
【0006】
特許文献1の電子キーシステムを備えた車両では、通常の場合、電子キーを携帯したユーザが、車両から離れることでドアの施錠が完了する。このため、ユーザは、ドアの施錠が完了したか否かを確認しないまま車両から離れることが想定される。特許文献2に記載の方法では、車両と電子キーとが位置情報を含めて通信を行うことで、不正行為を防止しようとしている。しかし、位置情報を算出するためには高度な計算が必要となり、構成が複雑になっている。
【0007】
本発明は、こうした実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、より構成簡素な中継器を使用した無線通信の不正成立を生じ難くさせる電子キーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両から発信された応答要求信号を電子キーが受信すると、当該電子キーは前記車両に対し応答信号を返信し、続いて、前記車両から発信されたIDコードの返信要求信号を前記電子キーが受信すると、当該電子キーは前記車両に対してIDコード信号を返信し、この返信された前記IDコードを基に前記車両においてID照合が行われ、前記ID照合が、前記電子キーが前記車両の外部に存在する車外ID照合の場合、これが成立するときには、前記車両の特定のドアの解錠を実行又は許可し、前記ID照合が、前記電子キーが前記車両の室内に存在する車内ID照合の場合、これが成立するときには、前記車両の走行用の駆動手段の始動を許可する電子キーシステムにおいて、前記電子キーは、信号の送信強度又は受信感度を調整する調整部を備え、前記車内ID照合時において、前記応答要求信号若しくは前記返信要求信号の受信感度又は前記応答信号若しくは前記IDコード信号の送信強度を車外ID照合時よりも下げることを要旨とする。
【0009】
このような構成の電子キーシステムにおいて、第3者が、車両に設けられた駆動手段を駆動させる場合、車両と電子キーとの間で行われる返信要求信号及びIDコード信号の授受を成立させる必要がある。
【0010】
同構成によれば、車内ID照合が行われるとき、調整部は、車外ID照合のときに比べて返信要求信号又はIDコード信号の送信強度又は受信感度を下げる。このため、車両の駆動手段を始動させて車両盗難を試みる第3者が、中継器を使用して車内ID照合を成立させようとする場合、第3者は、中継器を電子キーに一層近づいた状態にする必要がある。このため、第3者が、車内ID照合を成立させて車両の駆動手段を駆動させることを抑制することができる。また、車両と電子キーとの相対位置関係に基づき第3者による不正行為を抑制するシステムも存在するところ、このシステムと異なり、車両や電子キーにおいて、相互の位置情報を算出したり通信したりする必要がなく、その分、演算負荷が抑制させる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、前記調整部は、受信感度を調整するものであって、前記車内ID照合を行う際に、電子キーが前記車両の室内にある場合にのみ前記応答要求信号又は前記返信要求信号を受信することが可能となる程度に、その受信感度を下げることを要旨とする。
【0012】
同構成によれば、返信要求信号の受信は、電子キーが車両の室内にある場合に可能となる。すなわち、車両のユーザが電子キーを携帯した状態で車外に出た状態において、車両の駆動手段の駆動等の機器の不正使用を試みる第3者が、中継器を使用して車両から発信される返信要求信号を電子キーに受信させるためには、中継器を携帯した状態で車内空間の距離以内でユーザに近づく必要がある。この距離は、非常に近い距離となるため、第3者の行動が、ユーザに不審がられる可能性が高くなるため、第3者による機器の不正使用が抑制される。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の電子キーシステムにおいて、前記調整部は、前記車内ID照合時に前記返信要求信号に対する受信感度を下げることを要旨とする。
同構成によれば、車外ID照合時においては、調整部による返信要求信号を受信するための感度が低下しないため、電子キーと車両とが好適に通信される。従って、ユーザが車外通信による機器を作動させたい場合には、この作動が好適に行われる、すなわちユーザの利便性は確保される。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の電子キーシステムにおいて、前記車両には、車両ドアの開閉を検出する開閉スイッチが設けられ、前記調整部は、前記車外ID照合が行われた後、前記車両ドアの開操作が前記開閉スイッチにより検出されたときに前記返信要求信号に対する受信感度を下げることを要旨とする。
【0015】
同構成によれば、車内ID照合を行う際には、調整部によって返信要求信号を受信する受信感度が下げられる。従って、電子キーを携帯したユーザが車外にいる場合、第3者が車内ID照合を行うために車両からの返信要求信号を電子キーまで中継しようとしても、受信感度が下げられているため、これが困難となる。すなわち、車内ID照合の成立が難しくなる。これにより、第3者による機器の不正使用がより確実に防止される。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、中継器を使用した無線通信の不正成立を生じ難くさせる電子キーシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態を示す電子キーシステムの概略構成を示すブロック図。
【図2】同実施形態における車両及び電子キーの各通信エリアを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の電子キーシステムを車両に搭載した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、車両1には、電子キー2が車両1に近づくと自動でID(Identification)照合を実行する電子キーシステム3が設けられている。この電子キーシステムには、実際に電子キー2の操作を行うことなくドア開閉の一連の操作過程の中でドア錠の施錠及び解錠が実行されるスマートシステムと、車内に設置されたプッシュ式のエンジンスイッチ5を押し操作するのみで車両1に搭載された駆動手段としてのエンジン6aを始動することが可能なワンプッシュエンジンスタートシステムとがある。
【0019】
車両1には、電子キー2との間でID照合を実行する照合ECU(Electronic Control Unit)11が設けられている。照合ECU11に内蔵されるメモリ11aには、車両1と組みをなす電子キー2のIDコードが登録されている。この照合ECU11は、車両ドア7の施解錠を実行するドアロック装置4と、エンジン6aの始動及び停止を管理するエンジン管理装置6とが接続され、電子キー2との間でID照合が成立すると、これらドアロック装置4を作動させたりエンジン管理装置6の作動を許可したりする。エンジン管理装置6は、エンジンスイッチ5と接続されており、照合ECU11による作動の許可を得た状態で、エンジンスイッチ5がオン操作されることによって、エンジン6aを始動させ、車両1を走行可能な状態にする。また、エンジン管理装置6は、エンジンスイッチ5がオフ操作されると、エンジン6aを停止させる。なお、照合ECU11には、車両ドアの開閉を検出するカーテシスイッチ8が接続されている。照合ECU11は、カーテシスイッチ8を通じて車両ドアの開閉を検出する。
【0020】
照合ECU11には、車外にLF(Low Frequency)帯の無線電波を発信する車外LF発信機12と、車内にLF帯の無線電波を発信する車内LF発信機13と、UHF(Ultra High Frequency)帯の無線電波を受信するUHF受信機14と、UHF帯の無線電波を発信するUHF発信機15とが接続されている。
【0021】
照合ECU11は、電子キー2の位置を判断するために、車外LF発信機12及び車内LF発信機13から電子キー2へ応答信号を要求するLF帯の電波を発信して、UHF受信機14にて電子キー2からのUHF帯の応答信号を受信できるか否かを試みる。UHF受信機14がUHF帯の電波を受信すると照合ECU11は、UHF発信機15から電子キー2へIDコード送信要求としてリクエスト信号をUHF帯の電波によって送信して、UHF受信機14にて電子キー2からのIDコードを含むUHF帯の信号の受信を試みる。そして、照合ECU11は、電子キー2からの無線信号を受信すると、自身のメモリ11aに含まれるIDコードと電子キー2のIDコードとを照合して、同電子キー2の認証を試みる。
【0022】
なお、図2に示すように、各車両ドア7には、車外LF発信機12が設けられており、この車外LF発信機12から発せられるLF帯の電波により、各車両ドア7の外側周辺には車外通信エリアS1(図2では、運転席に対応するもののみ図示する。)が形成される。また、車内のダッシュボードには、車内LF発信機13が設けられており、この車内LF発信機13から発せられるLF帯の電波により、車両の室内には、車内通信エリアS2が形成される。なお、図2における図示は省略するが、車外LF発信機12及び車内LF発信機13と同位置には、UHF受信機14及びUHF発信機15も設けられている。UHF発信機15は、UHF受信機14が受信したUHF帯の無線電波の方向に向けて、UHF帯の無線電波を発信する。
【0023】
一方、図1に示すように、電子キー2には、電子キー2の動作を統括制御する通信制御部21が設けられている。通信制御部21に内蔵されるメモリ21aには、キー固有のIDコードが登録されている。通信制御部21には、LF帯の電波を受信するLF受信機22と、UHF帯の電波を発信するUHF発信機23と、UHF帯の電波を受信するUHF受信機24とが接続されている。UHF受信機24には、UHF帯の電波に対する受信感度を調整する感度調整部24aが設けられている。図2の左下に2点鎖線で示すように、感度調整部24aは、UHF受信機24の受信感度を車外ID照合時の感度R1とそれよりも弱い車内ID照合時の感度R2とに切り替える。この感度R2は、電子キー2が車内通信エリアS2にある場合にのみ、UHF受信機24がUHF発信機15からのUHF電波を好適に受信することができる受信感度に設定されている。電子キー2は、車外通信エリアS1又は車内通信エリアS2に進入したとき、車両1との間でLF帯及びUHF帯の通信が好適に行われる。
【0024】
なお、図2に示す感度R1,R2は、UHF受信機24(電子キー2)のUHF帯の電波を受信できる範囲(エリア)を示すものではなく、感度R1,R2の感度の大小を示すイメージである。
【0025】
次に、電子キーシステム3の動作について説明する。
例えば、車両1が駐車されて車両ドア7が施錠された状態において、照合ECU11は、電子キー2が車両の近傍に存在するか否かを判断するために、応答要求信号を車外LF発信機12から断続的に送信させる。これにより、車両ドアの周辺には、図2に示される車外通信エリアS1が形成される。通信制御部21は、この車外通信エリアS1に電子キー2が進入して、車両1からの応答要求信号をLF受信機22を通じて受信すると、この応答要求信号に応じて応答信号をUHF発信機23から車両1に向けて発信する。
【0026】
照合ECU11は、電子キー2からの応答信号をUHF受信機14を通じて受信すると、リクエスト信号をUHF発信機15から電子キー2に向けて発信する。通信制御部21は、車両1からのリクエスト信号をUHF受信機24を通じて受信すると、内蔵されるメモリ21aに記憶されたIDコードを含ませたID信号を生成し、これをUHF発信機23から車両1に向けて発信する。
【0027】
照合ECU11は、ID信号をUHF受信機14を通じて受信すると、そのID信号に含まれるIDコードと、自身のメモリ11aに記憶されたIDコードとの照合(車外ID照合)を実行する。そして、この車外ID照合が成立すると、照合ECU11は、ドアロック装置4によるドアロックの解錠を実行する。なお、照合ECU11は、車外ID照合が成立しない場合には、車両ドア7を施錠した状態に維持する。
【0028】
また、照合ECU11は、車外ID照合が成立した場合、ドアロック装置4を通じて車両ドア7を解錠した後、カーテシスイッチ8を通じて車両ドア7が開操作された旨検出すると、車外LF発信機12に代えて車内LF発信機13から応答要求信号を発信させる。これにより、車内には、図2に示す車内通信エリアS2が形成される。そして、この車内通信エリアS2に電子キー2が進入して、ID照合(車内ID照合)が成立すると、照合ECU11は、エンジン管理装置6によるエンジン6aの始動を許可する。この状態で、エンジンスイッチ5が操作されると、エンジン管理装置6によってエンジン6aの始動が実行される。
【0029】
この車内ID照合におけるUHF帯の電波の送受信の最中に、通信制御部21は、UHF受信機24の受信強度を調整する。具体的には、通信制御部21は、応答信号を車両1に向けて発信した直後に感度調整部24aを通じて、UHF受信機24の受信感度を感度R1から感度R2にする。車内ID照合時の通信制御部21は、この感度R2となった状態のUHF受信機24を通じて、車両1からのリクエスト信号を受信する。照合ECU11は、UHF発信機23を通じてリクエスト信号に対するIDコードを送信した直後に、感度調整部24aを通じてUHF受信機24の感度R2を感度R1に戻す。
【0030】
次に、第3者による、中継器を使用した不正行為について考える。前述したように、不正行為は、ユーザが車両から離れるときに多いとされる。そこで、ユーザが車両から離れる際の状況を想定して、以下の説明を展開する。
【0031】
車外に出たユーザは、車両ドア7を閉め、車両1から離れる。照合ECU11は、電子キー2と車両1との車外ID照合の成立が不可となった旨検出すると、ドアロック装置4を通じて、車両ドア7を施錠する。このとき、ユーザは、まだ車両1に近い位置にいると推測される。このため、第3者はユーザを特定しやすい。そこで、第3者が中継器を使用して車外ID照合を成立させ、車両ドア7が解錠されるおそれがある。
【0032】
さらに、車両1から離れようとしているユーザが携帯する電子キー2と車両1との間において、第3者が中継器を使用して車内ID照合を成立させようとすることも想定される。この場合、まず、車両1の車外LF発信機12から発信される応答要求信号が、中継器を介して電子キー2のLF受信機22により受信される。すると、電子キー2は、応答信号を発信し、その直後に感度調整部24aを通じてUHF受信機の受信感度を感度R1から感度R2に切り替える。
【0033】
車両1は、電子キー2からの応答信号を受信すると、リクエスト信号を発信する。このとき、UHF発信機15から発せられるリクエスト信号は、図2に示す車内通信エリアS2の範囲にしか届かない。従って、このリクエスト信号を外部に届かせる為には、中継器は、少なくとも車内通信エリアS2内に存在しなければならない。また、図2に示されるように、電子キー2のUHF受信機24の受信感度は、感度調整部24aによって感度R2に下げられている。この感度R2は、電子キー2が運転席(助手席)にある場合に、ダッシュボードに設けられるUHF発信機15からのリクエスト信号を受信できるように設定されている。すなわち、リクエスト信号を中継する中継器と車両1から離れようとするユーザが携帯する電子キー2との距離が、運転席とUHF発信機15との距離と同等以下にならなければ、UHF受信機24は、UHF発信機15(ここでは、中継器)からのリクエスト信号を受信できない。従って、この車内ID照合を成立させようとする場合、第3者は、リクエスト信号を中継中の中継器を携帯して電子キー2を携帯したユーザに近づく必要がある。電子キー2の受信感度を通常の受信感度に維持した場合に比べて、第3者は、ユーザに一層近づく必要があるので電波リレーによる不正行為が困難となる。
【0034】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)電子キーシステム3において、第3者が、車両1に設けられたエンジン管理装置6を通じてエンジン6aを始動する場合、車両1と電子キー2との間で行われるUHF帯のリクエスト信号及びID信号の授受を成立させる必要がある。
【0035】
本例の電子キーシステム3では、電子キー2に内蔵されるUHF受信機24に感度調整部24aが設けられている。この感度調整部24aにより、UHF受信機24は、車内ID照合時におけるリクエスト信号の受信感度が感度R1から感度R2に下げられる。このため、車両1のエンジン6aを始動させてこれの盗難を試みる第3者が、中継器を使用してリクエスト信号及びID信号の授受を成立させようとする場合、電子キー2の感度を通常感度に維持した場合に比べて、第3者は、中継器を電子キー2に一層近づいた状態にする必要がある。従って、第3者が、車内ID照合を成立させて車両1のエンジン6aを駆動させることを抑制することができる。
【0036】
また、電子キー2が車両1と離れている場合には、複数の中継器を使用する必要がある。電子キー2が車両1と離れている場合には、両者間の通信を阻害するものが、存在する可能性が高くなる。すなわち、第3者は、各中継器間に、通信を阻害するものが存在しないように複数の中継器を配置する必要がある。これは、第3者にとって大変な労力となる。従って、第3者が、車内ID照合を成立させて車両1のエンジン6aを駆動させることを抑制することができるので、車両1のエンジン6aを始動させてこれを盗難することが困難となる。
【0037】
(2)車内ID照合に際して、UHF受信機24に設けられる感度調整部24aは、電子キー2が車室内に存在する場合にのみ、車両1のUHF発信機15からのリクエスト信号を受信できる程度に、同UHF受信機24の受信感度を引き下げる。
【0038】
このため、電子キー2がユーザによって携帯され、車両1の外に電子キー2が存在する場合に、第3者が車両1からのリクエスト信号を電子キー2に受信させるためには、少なくとも中継器と電子キー2とをUHF発信機15と運転席(助手席)等との間の距離以下にする必要がある。この第3者の行動は、ユーザに不審がられる可能性が高い。よって、第3者による車両1の盗難が抑制される。
【0039】
(3)感度調整部24aによるUHF受信機24の感度調整は、車内ID照合時の応答要求信号と応答信号との授受が成立した後に行われる。すなわち、車外ID照合時には、感度調整部24aは作動しない。このため、ユーザは、車外ID照合を利用するドアロック装置の作動や、電子キー2を携帯したまま車両1に乗り込んでのエンジン6aの始動を問題なく実行することができる。その上で、降車時に起こりやすいと想定される第3者による中継器を使用した車内ID照合を成立させて車両1のエンジン6aを始動させることによる当該車両1の盗難を抑制することができる。
【0040】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、UHF発信機23から応答信号を発信した直後に感度調整部24aを通じてUHF受信機24の受信感度を下げるようにしたが、UHF受信機24の受信感度を下げるタイミングは、このタイミングに限るものではない。例えば、以下に示すタイミングで受信感度を下げてもよい。
【0041】
照合ECU11は、車両ドア7の開閉をカーテシスイッチ8を通じて検出することができる。照合ECU11は、車外ID照合が成立して車両ドア7が開操作された旨含む信号を車外LF発信機12を通じて電子キー2に発信する。通信制御部21は、LF受信機22を通じて車両ドア7が開操作された旨示す信号を受信すると、感度調整部24aを通じて、UHF受信機24の感度を下げる。このタイミングで受信感度を下げた場合であっても、電子キー2を携帯したユーザが車両1に乗り込めば、車内ID照合が好適に行われる。また、降車時に懸念される中継器を使用した不正なID照合を抑制させることができる。なお、この場合、応答要求信号又はリクエスト信号、若しくはそれら両方の受信感度を下げる。応答要求信号に対する受信感度を下げる場合には、LF受信機22に感度調整部を設ける。このようにすれば、第3者による車両1の盗難を抑制することができる。
【0042】
また、受信感度を下げるタイミングは、車両1から、応答要求信号を受信した直後であってもよい。このようにしても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
・上記実施形態において、電子キーの受信感度又は送信強度を当該電子キーが運転席のみ又は運転席及び助手席に存在する場合のみ受信可能又は送信可能としてもよい。こうすれば、第3者(中継器)が一層ユーザ(電子キー2)に近づかなければならないので、上記実施形態の不正行為の抑制効果にも増して当該不正行為を抑制させることができる。
【0043】
・上記実施形態の車両1は、駆動手段としてエンジン6aを用いたが、駆動手段は、これに限らない。例えば、モータ、又はモータとエンジンとを併用するハイブリッドシステムであってもよい。
【符号の説明】
【0044】
R1,R2…感度、S1…車外通信エリア、S2…車内通信エリア、1…車両、2…電子キー、3…電子キーシステム、4…ドアロック装置、5…エンジンスイッチ、6…エンジン管理装置、6a…エンジン、7…車両ドア、8…カーテシスイッチ、11…照合ECU、11a,21a…メモリ、12…車外LF発信機、13…車内LF発信機、14,24…UHF受信機、15,23…UHF発信機、21…通信制御部、22…LF受信機、24a…感度調整部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両から発信された応答要求信号を電子キーが受信すると、当該電子キーは前記車両に対し応答信号を返信し、続いて、前記車両から発信されたIDコードの返信要求信号を前記電子キーが受信すると、当該電子キーは前記車両に対してIDコード信号を返信し、この返信された前記IDコードを基に前記車両においてID照合が行われ、前記ID照合が、前記電子キーが前記車両の外部に存在する車外ID照合の場合、これが成立するときには、前記車両の特定のドアの解錠を実行又は許可し、前記ID照合が、前記電子キーが前記車両の室内に存在する車内ID照合の場合、これが成立するときには、前記車両の走行用の駆動手段の始動を許可する電子キーシステムにおいて、
前記電子キーは、信号の送信強度又は受信感度を調整する調整部を備え、
前記車内ID照合時において、前記応答要求信号若しくは前記返信要求信号の受信感度又は前記応答信号若しくは前記IDコード信号の送信強度を車外ID照合時よりも下げる電子キーシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、
前記調整部は、受信感度を調整するものであって、前記車内ID照合を行う際に、電子キーが前記車両の室内にある場合にのみ前記応答要求信号又は前記返信要求信号を受信することが可能となる程度に、その受信感度を下げることを特徴とする電子キーシステム。
【請求項3】
請求項2に記載の電子キーシステムにおいて、
前記調整部は、前記車内ID照合時に前記返信要求信号に対する受信感度を下げることを特徴とする電子キーシステム。
【請求項4】
請求項2に記載の電子キーシステムにおいて、
前記車両には、車両ドアの開閉を検出する開閉スイッチが設けられ、
前記調整部は、前記車外ID照合が行われた後、前記車両ドアの開操作が前記開閉スイッチにより検出されたときに前記返信要求信号に対する受信感度を下げることを特徴とする電子キーシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−82654(P2012−82654A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231601(P2010−231601)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】