説明

電子写真印刷機

【課題】電子写真印刷機において、感光ドラムに対する現像ローラの追従移動による現像品質の確保が可能であるとともに、現像ローラの位置調整範囲の確保、現像装置内部の操作性、保守性の向上を実現できる技術の開発。
【解決手段】現像ローラ52が設けられた現像装置5を押圧機構20によって弾性付勢して、現像ローラ52を感光ドラム2に押圧するようにした電子写真印刷機1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真印刷機に関し、特に、感光ドラムと、該感光ドラムに接して回転する現像ローラによって感光ドラム表面にトナーを供給して、感光ドラム表面の静電潜像を可視像化したトナー像を感光ドラム表面に形成する現像装置とを具備する電子写真印刷機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の電子写真印刷機として、特許文献1に開示されたものがある。
この特許文献1には、記録紙に対して回転する感光ドラムと、この感光ドラムの表面を均一に帯電せしめる帯電手段と、この帯電手段によって帯電された感光ドラム表面に静電潜像を形成する露光手段と、感光ドラムに接触しつつ感光ドラムに対して逆方向に回転し感光ドラムの前記静電潜像をトナーにより可視像化する現像ローラとを具備し、前記現像ローラが前記感光ドラムに対して接近離反可能に支持され、且つ、現像ローラが加圧機構により感光ドラムに押圧されている、構成の電子写真印刷機(電子写真装置)が開示されている。
【特許文献1】特開平8−30100号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、電子写真印刷機の現像装置部には、前記現像ローラ以外に、クリーニングローラやトナー供給ローラなどが存在する。このため、感光ドラムに対して現像ローラが追従移動できる構成であると、クリーニングローラやトナー供給ローラと現像ローラとの間の位置調整に不都合な面が生じてくる。
また、現像ローラが感光ドラムに追従移動する構成であると、現像装置部における現像ローラ以外のローラと現像ローラとの接触圧などを適正範囲に調整するための現像ローラの位置調整範囲が狭くなり、調整作業に熟練を要する、調整に時間と手間を要するといった問題が生じる。操作性、保守性の面で効率が悪くなり、不経済であった。
【0004】
本発明は、前記課題に鑑みて、感光ドラムに対する現像ローラの追従移動による現像品質の確保が可能であるとともに、現像ローラの位置調整範囲を充分に確保できるため、現像装置内部の操作性、保守性を向上できる、電子写真印刷機の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明では以下の構成を提供する。
第1の発明は、記録紙に対して回転する感光ドラムと、この感光ドラムの表面を均一に帯電させる帯電装置と、この帯電装置によって帯電された前記感光ドラム表面に静電潜像を形成する露光装置と、前記感光ドラムに接して回転する現像ローラから前記感光ドラムにトナーを供給して前記感光ドラム表面に前記静電潜像を可視像化したトナー像を形成する現像装置と、前記現像装置を前記感光ドラムに対して進退自由に直線案内する案内レールと、前記現像装置を弾性付勢して該現像装置の前記現像ローラを前記感光ドラムに押し付ける押圧機構とを具備することを特徴とする電子写真印刷機を提供する。
第2の発明は、前記現像装置は、前記現像ローラと、該現像ローラのローラ軸の軸受けを有し前記ローラ軸の両端を支持する一対の現像装置フレームとを具備し、前記案内レール及び前記押圧機構が個々の現像装置フレームに対応して設けられていることを特徴とする第1の発明の電子写真印刷機を提供する。
第3の発明は、前記押圧機構は、前記現像装置への付勢力の付与と付与解除とを切り換えるための押圧切換手段を具備し、前記押圧機構による前記現像装置の弾性付勢を解除した状態において、前記現像装置の前記案内レールに沿った移動により、前記現像装置の前記現像ローラが前記感光ドラムに対して接離自在となることを特徴とする第1又は第2の発明の電子写真印刷機を提供する。
第4の発明は、前記現像装置に、前記現像ローラ表面にトナーを供給するためのトナー供給ローラと、前記現像ローラと前記感光ドラムとの接触位置から前記現像ローラの回転方向下流側にて前記トナー供給ローラよりも前記現像ローラの回転方向上流側に配置されて、前記現像ローラ表面からトナーを除去するクリーニングローラとが、それぞれ前記現像装置フレームに軸支して設けられていることを特徴とする第1〜3のいずれかの発明の電子写真印刷機を提供する。
第5の発明は、さらに、前記感光ドラムに接して回転して前記感光ドラム表面の前記トナー像を前記感光ドラムから記録紙に転写する転写ローラと、印刷機機体に対して可動に設けられ前記転写ローラのローラ軸の両端をそれぞれ軸受けを介して支持する一対の転写ローラ支持体と、個々の転写ローラ支持体に対応して設けられ、転写ローラ支持体をそれぞれ単独に弾性付勢して前記転写ローラを前記感光ドラムに押圧する転写ローラ押圧機構とを具備することを特徴とする第1〜4のいずれかの発明の電子写真印刷機を提供する。
第6の発明は、前記転写ローラ押圧機構は、前記転写ローラ支持体への付勢力の付与と付与解除とを切り換えるための転写ローラ押圧切換手段を具備し、前記転写ローラ押圧機構による前記転写ローラ支持体の弾性付勢を解除した状態において、前記転写ローラが前記感光ドラムに対して離隔可能であることを特徴とする第5の発明の電子写真印刷機を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る電子写真印刷機よれば、押圧機構による現像装置の弾性付勢によって、感光ドラムに対する現像ローラの追従移動が実現される。現像装置は、内部の現像ローラの位置を決めた状態で押圧機構によって弾性付勢される。このため、従来に比べて、現像装置内部の調整が簡単になり、調整後は、現像ローラが感光ドラムに追従移動しても、内部の調整状態が影響を受けず、調整後の状態を安定に維持できる。この結果、現像装置内部の操作性、保守性を向上できる。また、感光ドラムに対する現像ローラの追従移動によって、良好な現像品質を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を実施した電子写真印刷機の一例について、図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る電子写真印刷機1の構成を示す正面図、図2は前記電子写真印刷機1の感光ドラム2、現像装置5、押圧機構20のエアシリンダ装置21との関係を示す平面図、図3は図1のA−A線矢視図であり、現像装置5の一対の現像装置フレーム51と、現像ローラ52、トナー供給ローラ53、クリーニングローラー54、案内レール13との関係を模式的に示す図、図4は現像装置フレームに設けられた移動子56と案内レール13との関係を示す図、図5は押圧機構20の一例を示す図、図6は別態様の押圧機構20Aを示す正面図、図7(a)、(b)は、スプリングを利用した押圧機構30(30A、30B)を説明する図である。
なお、図1、図3−図7(a)、(b)において、図中、上側を上、下側を下として説明する。
【0008】
図1に示すように、電子写真印刷機1は、感光ドラム2、帯電装置3、露光装置4、現像装置5、除電器6、感光体クリーナー7,転写ローラ8、バックアップローラ9、キャリア液供給装置10、転写ロールクリーナー11、現像装置設置台12、案内レール13、押圧機構20を具備して構成されている。
【0009】
図1において、符号101は記録紙である。この記録紙101は長尺帯状であり、転写ローラ8とバックアップアップローラ9との間に挟み込まれている。転写ローラ8及びバックアップローラ9は、回転することで、記録紙101を送り移動するための送りローラとしての機能も果たす。
【0010】
感光ドラム2は、電子写真印刷機1のフレーム(図示略)に回転自在に軸支されており、図示略の駆動装置によって回転駆動される。この感光ドラム2は、記録紙101に対して回転する。
【0011】
帯電装置3は、感光ドラム2の表面を均一に帯電させるものである。
露光装置4は、前記帯電装置3によって帯電された前記感光ドラム2表面の電荷を露光によって除去して、静電潜像を形成するものである。露光装置4は、感光ドラム2表面の一部又は全体から、露光によって電荷を除去する。
現像装置5は、前記感光ドラム2に接して回転する現像ローラ52を具備しており、この現像ローラ52から前記感光ドラム2にトナー(液体トナー。トナーとの記載箇所は、以下も液体トナーを指す)を供給して前記感光ドラム2表面に前記静電潜像を可視像化したトナー像を形成するものである。
なお、現像装置5の詳細、及び、該現像装置1と案内レール13、押圧機構20との関係については、後述する。
除電器6は、感光ドラム2表面全体から電荷を除去して除電するものである。
感光体クリーナー7は、感光ドラム2表面の付着物(トナー等)を除去して、感光ドラム2表面を清掃するものである。
【0012】
転写ローラ8は、前記感光ドラム2に接して回転して前記感光ドラム2表面の前記トナー像を前記感光ドラム2から記録紙101に転写するものである。
バックアップローラ9は、転写ローラ8との間に記録紙101を挟み込んで、転写ローラ8の記録紙101に対する圧接力を確保するものである。
キャリア液供給装置10は、転写ローラ8表面に、トナー粒子分散用のキャリア液を供給するものである。
転写ロールクリーナー11は、転写ローラ8表面の付着物(トナー等)を除去して、転写ローラ8表面を清掃するものである。
【0013】
帯電装置3、露光装置4、現像装置5の現像ローラ52、除電器6、感光体クリーナー7は、感光ドラム2の周囲に該感光ドラム2の外周に沿って、感光ドラム2と転写ローラ8との接触位置(接触点P1)から感光ドラム2の回転方向(図1中矢印a)下流側へ、除電器6、感光体クリーナー7、帯電装置3、露光装置4、現像ローラ52の順で配列設置されている。
現像ローラ52は、感光ドラム2の回転方向(図1中矢印a)において、感光ドラム2と転写ローラ8との接触位置(接触点P1)よりも上流側に位置している。
【0014】
バックアップローラ9、キャリア液供給装置10、転写ロールクリーナー11は、転写ローラ8の周囲に該転写ローラ8の外周に沿って、感光ドラム2と転写ローラ8との接触位置(接触点P1)から転写ローラ8の回転方向(図1中矢印b)下流側へ、バックアップローラ9、キャリア液供給装置10、転写ロールクリーナー11の順で配列設置されている。
転写ロールクリーナー11は、転写ローラ8の回転方向(図1中矢印b)において、感光ドラム2と転写ローラ8との接触位置(接触点P1)よりも上流側に位置している。
【0015】
次に現像装置5について説明する。
図1、図2、図3に示すように、現像装置5は、互いに離隔して設けられた一対の現像装置フレーム51(図中、2つの現像装置フレーム51の区別のため、符号51a、51bを付す)と、現像ローラ52と、トナー供給ローラ53と、クリーニングローラ54と、トナー収容槽55と、現像装置フレーム51a、51bの下部に設けられた移動子56とを具備して構成されている。
【0016】
図3中、符号57は一対の現像装置フレーム51a、51bを連結する連結部材である。
現像装置5は、連結部材57によって一対の現像装置フレーム51a、51bを連結してなる主フレーム58に、内部構成部材(例えば、現像ローラ52と、トナー供給ローラ53と、クリーニングローラ54と、トナー収容槽55)を支持した構成になっている。
【0017】
トナー供給ローラ53は、現像ローラ52に接して回転して、現像ローラ52表面にトナー(液体トナー)を供給するものである。このトナー供給ローラ53は、その下部が、現像装置5に設けられたトナー収容槽55内に貯留されている液体トナー551中に浸潰されており、現像ローラ52に接して回転することで、トナー(液体トナー)を現像ローラ52表面全体に塗布するようにして供給する。
クリーニングローラ54は、現像ローラ52に接して回転して、前記現像ローラ52表面からトナーを除去するものである。
【0018】
トナー供給ローラ53、クリーニングローラ54は、現像ローラ52の周囲に該現像ローラ52の外周に沿った方向に互いの位置をずらして設けられており、感光ドラム2と現像ローラ52との接触位置(接触点P2)から、現像ローラ52の回転方向(図1中矢印c)下流側へ、クリーニングローラ54、トナー供給ローラ53の順で配列設置されている。トナー供給ローラ53は、感光ドラム2と現像ローラ52との接触位置(接触点P2)に対して、現像ローラ52の回転方向(図1中矢印c)上流側に位置している。
【0019】
図3等に示すように、現像ローラ52、トナー供給ローラ53、クリーニングローラ54は、それぞれ、一対の現像装置フレーム51a、51bの間に架設状態に設けられている。
各現像装置フレーム51a、51bには、現像ローラ52、トナー供給ローラ53、クリーニングローラ54に対応して、これら各ローラ52、53、54のローラ軸52a、53a、54aを回転自在に軸支する軸受け512、513、514が設けられている。現像ローラ52、トナー供給ローラ53、クリーニングローラ54は、それぞれ、ローラ軸52a、53a、54aの両端が一対の現像装置フレーム51a、51bの軸受け512、513、514に軸支されて、一対の現像装置フレーム51a、51bに支持されている。
【0020】
この現像装置5は、電子写真印刷機1の機内に設置された現像装置設置台12(以下、単に、設置台とも言う)上に設けられている。
前記設置台12上には、前記現像装置5を前記感光ドラム2に対して進退自由に直線案内する一対の案内レール13が設けられている。前記現像装置5は、各現像装置フレーム51a、51bの下部に、前記案内レール13との接触用の移動子56を具備しており、両現像装置フレーム51a、51bの移動子56と一対の案内レール13との接触によって、案内レール13の長手方向に沿って直線移動する。
【0021】
図4は、移動子56の一例を示す。
図4に例示する移動子56は、断面コ字形(チャンネル形)の移動子本体561に、前記案内レール13と接触される転動ボール562を回転自在に組み込んだ構成になっている。
【0022】
移動子本体561は、現像装置フレーム51に固定された天板部561aと、この天板部561aの互いに離隔した2箇所から下方へ突出する一対の側板部561b、561cとを具備している。この移動子本体561は、天板部561aと一対の側板部561b、561cとによって囲まれる内側空間561dが、案内レール13を収容するためのレール収納空間として機能する。
【0023】
転動ボール562は、移動子本体561の、天板部561a、一対の側板部561b、561cにそれぞれ回転自在に組み込まれている。また、各転動ボール562は、天板部561a、一対の側板部561b、561cから、前記内側空間561dに突出状態に設けられており、それぞれ、内側空間561dに収容された案内レール13に接触される。
【0024】
この移動子56は、案内レール13に上、左右(長手方向に垂直の断面における上、左右。図4において上、左右)の3方向から転動ボール562を接触させた状態で、案内レール13の長手方向に沿って移動する。これにより、現像装置5は、案内レール13に対する接触抵抗が低く抑えられ、案内レール13の長手方向に沿って円滑に直線移動する。
【0025】
なお、移動子56としては、上述の構成に限定されず、様々な構成のものを採用できる。案内レール13に接触して転動する転動ボールを具備する移動子であれば、現像装置5の案内レール13に対する接触抵抗を低く抑えることを容易に実現でき、好適である。
また、現像装置5を感光ドラム2に対して進退自由に直線案内するための構成としては、例えば、設置台12上にて磁気浮上させた現像装置5を、案内レール13と現像装置5下部に設けた移動子との係合によって直線案内する構成等も採用可能である。
【0026】
次に、押圧機構20について説明する。
図1、図5に示すように、押圧機構20は、前記現像装置5を弾性付勢して前記現像装置5の前記現像ローラ52を前記感光ドラム2に押し付けるものである。
さらに、ここでは、押圧機構20が、現像装置5の一対の現像装置フレーム51a、51bの個々に対応して設けられ、それぞれ案内レール13によって直線案内される現像装置フレーム51a、51bが、押圧機構20によってそれぞれ単独に弾性付勢されて、現像ローラ52が前記感光ドラム2に押し付けられた構成を説明する。
【0027】
案内レール13に沿った現像装置5の直線移動は、感光ドラム2の回転軸心2q(図2参照)に対して垂直方向の直線移動である。現像装置5において、現像ローラ52は、その回転軸心52qの向きが感光ドラム2の回転軸心2qと揃うようにして支持されている。
なお、図1において、案内レール13長手方向に沿う現像装置5の移動方向について、感光ドラム2側(つまり、図1において現像装置5の右側)を前側、反対の側(図1において左側)を後側として説明する。
【0028】
図1に例示した電子写真印刷機1の押圧機構20を説明する。
図1、図5に示すように、ここで説明する押圧機構20は、エアシリンダ装置21と、このエアシリンダ装置21にエア圧源22のエア圧(圧縮エア)を導入するためのエア圧供給ライン23と、このエア圧供給ライン23の途中に介在設置された減圧弁24とを具備して構成されている。
【0029】
図示例の押圧機構20は、エアシリンダ装置21のシリンダ本体21cを、現像装置5を介して感光ドラム2とは反対の側(図1において現像装置5よりも左側)にて設置台12に固定している。そして、エア圧源22から供給したエア圧によってシリンダ本体21cから突出させた作動軸21aの先端21b(以下、作動端とも言う)で、現像装置5の現像装置フレーム51を感光ドラム2とは反対の側から感光ドラム2側(移動方向前側)へ弾性付勢する。
【0030】
図1、図2、図3に示すように、現像装置フレーム51の下部には、エアシリンダ装置21の作動軸21aの先端21bが当接される受け部材59が設けられている。
エアシリンダ装置21は、作動軸21aの作動端21bを、前記現像装置フレーム51の受け部材59に、感光ドラム2とは反対の側(現像装置5の移動方向後側)から当接させた状態で、現像装置フレーム51を弾性付勢している。
【0031】
図5に示すように、エアシリンダ装置21の作動軸21aは、シリンダ本体21c内に組み込まれたピストン21dに固定されている。現像装置フレーム51を弾性付勢する作動軸21aの作動端21bは、作動軸21aのシリンダ本体21cから突出された部分の先端である。
【0032】
エア圧供給ライン23は、シリンダ本体21cに設けられた接続ポート21fに接続されて、シリンダ本体21c内の前記ピストン21dを介して作動軸21aとは反対の側(シリンダヘッド側)の内室21eと連通されている。エアシリンダ装置21は、エア圧供給ライン23から内室21eに供給されたエア圧によって、現像装置フレーム51を弾性付勢する。
シリンダ本体21cの、ピストン21dを介して内室21eとは反対の側の空間21gは大気開放されている。
【0033】
前記減圧弁24は、エア圧源22からエア圧供給ライン23を介してエアシリンダ装置21へエア圧を供給するエア圧回路(エアシリンダ21を含む)において、該減圧弁24からエアシリンダ装置21側(二次側)のエア圧を一定に保つ機能を果たす。エア圧回路の一次側(減圧弁24からエア圧源22側)から二次側へのエア圧の供給圧は、減圧弁24の設定圧となる。
また、この減圧弁24は、エア圧供給ライン23において、該減圧弁24からエアシリンダ装置21側(二次側)の圧力が、減圧弁24からエア圧源22側(一次側)の圧力よりも低くなったときに、一次側から二次側へのエア圧の供給を許可する。
【0034】
この電子写真印刷機1にあっては、押圧機構20の減圧弁24における圧力設定(二次側圧力の設定)によって、現像装置5の現像ローラ52の感光ドラム2に対する接触圧を簡単に設定できる。
減圧弁24における圧力設定値の調整により、現像ローラ52と感光ドラム2との接触圧を簡単に調整できる。
【0035】
また、この電子写真印刷機1にあっては、現像装置5の一対の現像装置フレーム51に対応して一対の押圧機構20が設けられており、現像装置5の一対の現像装置フレーム51は、各押圧機構20のエアシリンダ装置21によって、感光ドラム2側にそれぞれ単独に弾性付勢される。
【0036】
ところで、現像ローラ52、感光ドラム2は、その加工誤差、軸回り回転用のベアリングの精度等によって、避けがたい僅かな振れ回転が生じることがある。
本発明に係る電子写真印刷機1にあっては、押圧機構20によって、現像装置5の一対の現像装置フレーム51をそれぞれ単独に弾性付勢しているので、上述の振れ回転が生じたとしても、現像ローラ52を感光ドラム2に対して追従移動させることができる。このため、現像ローラ52と感光ドラム2との接触位置では、現像ローラ52、感光ドラム2の軸方向に沿う全長にわたって、現像ローラ52と感光ドラム2との接触圧を安定に保つことができる。
現像ローラ52の振れ回転については、一対の現像装置フレーム51がそれぞれ単独に移動することによって吸収することができ、現像ローラ52と感光ドラム2との接触状態、接触圧を安定に保つことができる。
【0037】
図4に示すように、現像装置フレーム51の移動子56においては、一対の現像装置フレーム51のそれぞれ単独での進退動(案内レール13に沿った移動)を円滑にするために、案内レール13の両側面(図4における左右の側面)と転動ボール562との間に僅かなクリアランスc1を確保することが好ましい。
このクリアランスc1によって、各現像装置フレーム51が、それぞれ単独に±1mm程度、自由に進退動(案内レール13に沿った方向の移動)できるようにする。
【0038】
現像装置フレーム51の進退動に伴う、押圧機構20のエア圧回路の二次側(減圧弁24からエアシリンダ装置21側)のエア圧の変動は微小であるため、エア圧回路の二次側の空気自体の弾性がエア圧の変動吸収に有効に寄与する。
現像ローラ52が感光ドラム2側からの押圧力によって押圧されて、現像装置フレーム51が移動方向後側へ僅かに移動されたときには、この現像装置フレーム51の弾性付勢用の押圧機構20のエア圧回路の二次側(エア圧供給ライン23の二次側及びエアシリンダ装置21の前記内室21e)での空気の弾性圧縮によって、現像ローラ52と感光ドラム2との接触圧の上昇を抑えることができる。
【0039】
また、減圧弁24としてブリーズタイプ減圧弁等のリリーフ弁機能を持つものを採用することがより好ましい。また、エア圧供給ライン23の二次側にリリーフ弁を接続しても良い。
これにより、エア圧回路の二次側の圧力の上限値を設定でき、現像ローラ52と感光ドラム2との接触圧が必要以上に上昇することを確実に防ぐことができる。
【0040】
逆に、感光ドラム2の振れ回転等によって、現像装置フレーム51が移動方向前側へ僅かに移動して二次側の圧力が低下したときは、減圧弁24を介して一次側から二次側へのエア圧の供給が適宜生じることで、二次側圧力を減圧弁24に設定した設定圧に安定に保つことができる。
【0041】
図6は、減圧弁24として電空変換器(図6中、符号24Aを付す)を採用した押圧機構20(図6中、符号20Aを付す)を示す。
この押圧機構20Aは、エア圧源22が接続されたエア圧供給ライン23の途中に介在設置された前記電空変換器24Aと、現像ローラ52と感光ドラム2との接触圧の検出用の圧力センサ25と、この圧力センサ25の圧力計測信号に対応して前記電空変換器24Aにその出力エア圧制御用の制御信号(電気信号)を入力する制御装置26とを具備する。
【0042】
図示例では、圧力センサ25は、エアシリンダ装置21の作動軸21aの作動端21bと現像装置フレーム51(具体的には、受け部材59)との間に配置して、エアシリンダ装置21の作動軸21aの作動端21bと現像装置フレーム51(受け部材59)との間にて圧力センサ25に作用する圧縮力を、現像ローラ52と感光ドラム2との接触圧として計測するようにしている。この圧力センサ25としては、例えば、圧電センサ等を採用できる。
【0043】
この押圧機構20Aによれば、圧力センサ25の圧力計測値に対応して、制御装置26によって、電空変換器24Aの出力エア圧の制御を精度良く行うことができる。
このため、現像ローラ52と感光ドラム2との接触圧を、より高い精度を以て安定に維持することができる。
【0044】
現像ローラ52と感光ドラム2との接触圧を、より高い精度を以て安定に維持する点では、エアシリンダ装置21として、例えば、ベロフラムシリンダやダイアフラムシリンダを採用することが好ましい。
【0045】
エア圧源22からエアシリンダ装置21へのエア圧の供給を停止して、エア圧回路の二次側の圧力を低下させ、エアシリンダ装置21の作動軸21aのシリンダ本体21cからの突出量を縮小可能な状態(あるいは突出量が縮小された状態。弾性付勢解除状態)とすれば、現像装置5、現像装置フレーム51の案内レール13に沿った移動(前後動)によって、感光ドラム2に対して現像ローラ52を自在に接離させることができる。これにより、現像ローラ52、感光ドラム2のメンテナンス等の作業性を向上できる。
【0046】
エア圧回路の二次側の圧力低下のために、例えば、図5、図6に示すように、エア圧供給ライン23の二次側(具体的には二次側配管23b)に開閉弁27を接続して、この開閉弁27を開放することで、圧力低下を迅速に行えるようにしても良い。開閉弁27は、エアシリンダ装置21に設けても良い。また、減圧弁24として、例えばブリーズタイプ減圧弁等の排気用ポートを備えるものを採用して、減圧弁24が、エア圧回路の二次側圧力の低下用の開閉弁を兼ねるようにした構成としても良い。
【0047】
開放状態の開閉弁27を閉鎖すれば、押圧機構20のエア圧回路の一次側から二次側へのエア圧の供給によって、二次側圧力を、減圧弁24に設定した値とすることができ、押圧機構20による現像装置フレーム51の弾性付勢を行える。
開閉弁27は、押圧機構20から現像装置5への付勢力の付与と付与解除とを切り換えるための押圧切換手段として機能する。
【0048】
(押圧機構の別態様)
図7(a)、(b)は、別態様の押圧機構30を示す。
図7(a)、(b)に示す押圧機構30は、現像装置5の現像装置フレーム51の弾性付勢用の付勢手段としてスプリング31を採用したものである。
この押圧機構30は、既述の押圧機構20と同様に、現像装置5の一対の現像装置フレーム51の個々に対応して一対設けられており、現像装置フレーム51(詳細には、受け部材59)をそれぞれ単独に弾性付勢して、現像ローラ52を感光ドラム2に押圧する。
なお、図示例の押圧機構30では、スプリング31としてコイルスプリングを採用している。
【0049】
図7(a)に示す押圧機構30(区別のため、図7(a)の押圧機構30に符号30Aを付す)は、設置台12に固設されたスプリング受け部材32に、スプリング31(コイルスプリング)の軸方向一端を固定している。そして、このスプリング31の軸方向他端(作用端31a)を現像装置フレーム51(詳細には、受け部材59)に当接させて、スプリング31の弾性によって、現像装置フレーム51を感光ドラム2側(移動方向前側)へ弾性付勢する構成となっている。
【0050】
図7(b)に示す押圧機構30(区別のため、図7(b)の押圧機構30に符号30Bを付す)は、スプリング31(コイルスプリング)と、このスプリング31を現像装置フレーム51に押し付けるスプリング押付機構33とを具備して構成されている。
図示例のスプリング押付機構33は、設置台12に固設された固定ブロック34に、スプリング31のバックアップ用のハンドル付き押圧ねじ35を螺着した構成になっている。ハンドル付き押圧ねじ35は、固定ブロック34に貫設されており、その一端側(基端側)のハンドル35aの回転操作によって、ハンドル35aは反対の先端側に設けられているスプリング受け部材36の位置を、案内レール13に案内される現像装置フレーム51の移動方向に沿った方向に移動できる。スプリング31による現像装置フレーム51の弾性付勢は、スプリング31がその軸方向両端から、スプリング受け部材36と現像装置フレーム51(詳細には、受け部材59)とによって挟み込まれた状態でなされる。また、この押圧機構30Bでは、ハンドル付き押圧ねじ35を回転操作して、該ハンドル付き押圧ねじ35の先端側の固定ブロック34からの突出寸法を、スプリング31による現像装置フレーム51の弾性付勢時に比べて縮小することで、現像ローラ52の感光ドラム2に対する接離が可能なように、スプリング受け部材36の位置を調整することができる。
スプリング押付機構33は、押圧機構30から現像装置5への付勢力の付与と付与解除とを切り換えるための押圧切換手段として機能する。
【0051】
なお、スプリング押圧機構としては、スプリングの付勢力による現像装置フレーム51の弾性付勢を実現できるものであれば良く、上述の構成に限定されず、様々な構成を採用できる。
また、上述のように、押圧機構から現像装置5への付勢力の付与と付与解除とを切り換えるための押圧切換手段として機能し得るものを採用することがより好ましい。
【0052】
本発明に係る電子写真印刷機1にあっては、既述のように、押圧機構20、30によって、現像装置5の一対の現像装置フレーム51をそれぞれ単独に弾性付勢する構成であるので、感光ドラム2及び現像ローラ52の一方又は両方に振れ回転が生じたとしても、現像ローラ52を感光ドラム2に対して確実に追従移動させることができる。その結果、現像ローラ52と感光ドラム2との接触位置では、現像ローラ52、感光ドラム2の軸方向に沿う全長にわたって、現像ローラ52と感光ドラム2との接触圧の安定化、均一化を実現できる。これにより、均一品質のトナー現像が得られる。
【0053】
また、この電子写真印刷機1によれば、現像ローラ52を含む現像装置5(詳細には現像装置フレーム51)を押圧機構によって弾性付勢して、現像ローラ52を感光ドラム2に押圧する構成であることから、現像ローラ52に感光ドラム2に対する追従移動が生じても、現像ローラ52と該現像ローラ52に接する部材(例えば、トナー供給ローラ53、クリーニングローラ54)との間の位置調整等、現像装置5の内部の調整状態が影響を受けず、調整後の状態を安定に維持できる。
現像ローラ52と感光ドラム2との接触圧は、押圧機構が現像装置5(詳細には現像装置フレーム51)を弾性付勢する付勢力によって確保されるので、現像装置5における現像ローラ52の位置調整作業を軽減できる。また、これに伴い、現像ローラ52と該現像ローラ52に接する部材(例えば、トナー供給ローラ53、クリーニングローラ54)との間の位置調整等、現像装置5の内部の調整作業を従来に比べて楽に行えるようになる。つまり、現像装置5内部の操作性、保守性が向上し、これにより、現像装置5の内部の調整作業全体の労力軽減を実現できる。メンテナンスコストの低減等、経済性を向上できることも言うまでも無い。
【0054】
(別実施形態)
次に、本発明の別実施形態を、図8、図9、図10を参照して説明する。
なお、図8において、上側を上、下側を下として説明する。
【0055】
ここで説明する実施形態(電子写真印刷機)は、既述の電子写真印刷機1に転写ローラ押圧機構40等を追加したものである。
なお、図8では、現像装置5の弾性付勢用の押圧機構として、図1等に例示した、エアシリンダ装置21を付勢手段として採用した押圧機構20を適用した構成を例示しているが、ここで説明する電子写真印刷機1(図中、符号1Aを付す)に適用する押圧機構としては、本発明に係る既述の電子写真印刷機に適用可能な押圧機構(例えば、図6の押圧機構20A、図7(a)、(b)の押圧機構30を含む)であれば、いずれも採用可能である。
【0056】
まず、転写ローラ8を回転自在に軸支する支持構造を説明する。
図8、図9において、図中符号14は、転写ローラ8を印刷機機体(以下、単に、機体、とも言う)に対して可動に支持するための転写ローラ支持体である。
転写ローラ支持体14は、軸受けを介して、転写ローラ8のローラ軸81の両端を回転自在に軸支する。
転写ローラ押圧機構40は、転写ローラ支持体14を弾性付勢する。転写ローラ8は、転写ローラ押圧機構40が転写ローラ支持体14に作用させる付勢力によって感光ドラム2に弾性付勢される。
【0057】
転写ローラ押圧機構40による転写ローラ8の感光ドラム2に対する弾性付勢を実現する点では、転写ローラ支持体14及び転写ローラ8が一体的に感光ドラム2に対して進退動する構成であっても良いが、ここでは、リング状の転写ローラ支持体14(以下、リング状支持体、とも言う)を採用し、この転写ローラ支持体14を軸受け16(以下、支持体用軸受け)を介して機体に軸回り回転可能に支持した構成を例示する。
【0058】
図8、図9に例示したリング状支持体14は、印刷機機体(機枠15)に設けられている縦壁16に支持体用軸受け17を介して軸回り回転可能に支持されている。図中、符号19は、縦壁16からのリング状支持体14の脱落防止用の押さえ部材である。リング状支持体14は軸回り回転したときに、この押さえ部材19に対して摺動する。
【0059】
転写ローラ8は、そのローラ軸81の両端が、それぞれ、転写ローラ支持体14の内側の穴14a内の軸受け18(以下、ローラ用軸受け)を介して、リング状支持体14に軸回り回転自在に軸支されている。転写ローラ8は、その回転軸心の向きが、感光ドラム2の回転軸心2qと揃うように支持される。
【0060】
なお、支持体用軸受け17、ローラ用軸受け18としては、ここでは転がり軸受けであるが、例えば滑り軸受け等、転がり軸受け以外のものであっても良い。
また、図9では、転写ローラ8のローラ軸81の両端に対応する一対のリング状支持体14の内、一方(図9右側のリング状支持体142)はスリーブ状、他方(図9左側のリング状支持体141)は、円板の中央に該円板を貫通する穴14aを有する構造、になっている。
また、図9中、符号82は転写ローラ8のローラ軸81に固定された駆動力伝達ギア、符号83は転写ローラ8の回転駆動用の駆動モータである。転写ローラ8は、駆動モータ83の回転駆動力が、ギア84等からなる駆動力伝達系から駆動力伝達ギア82に伝達されることで、回転駆動される。
【0061】
ここでは、リング状支持体14の支持体用軸受け17に接する外周面14bの湾曲中心をリング状支持体14の中心14cとして扱うものとする。外周面14bは前記中心14cを中心とする正円を描いて形成されている。
図9中、符号rは、外周面14bの半径である。
【0062】
リング状支持体14は、穴14aの中心(転写ローラ8の回転軸心8qと一致)位置が、該リング状支持体14の中心14cからずらされている。リング状支持体14の穴14a内のローラ用軸受け18の内側にローラ軸81を内挿した転写ローラ8は、リング状支持体14(詳細には、その外周面14b)に対して偏心した状態で軸支される。このため、リング状支持体14が印刷機機体(機枠15)に対して軸回り回転(中心14cを中心とする回転)すると、転写ローラ8が移動して、転写ローラ8と感光ドラム2との間の距離が変動する。これにより、転写ローラ8が感光ドラム2に対して接離可能とされている。
【0063】
図8に示す転写ローラ押圧機構40は、転写ローラ8を感光ドラム2に弾性付勢するための付勢手段としてエアシリンダ装置41を採用したものである。
前記リング状支持体14の外周部には、エアシリンダ装置41の作動軸414先端との連結用の連結部材14dが固定されており、この連結部材14dとエアシリンダ装置41の作動軸414の先端部414aとが、連結ピン14eを介して枢着されている。
また、エアシリンダ装置41は、ピストン412を収納するシリンダ本体411のヘッド側(シリンダヘッド側。図8中左下側)の端部が、印刷機機体(機枠15)に連結ピン49を介して枢着されており、この連結ピン49を中心とする回転によって、作動軸414先端側が揺動可能になっている。
【0064】
なお、エアシリンダ装置41は、その作動軸414の長手方向が、リング状支持体14の中心14cと連結ピン14eとを結ぶ仮想線14fと一致しない向きで設置される。
図8では、連結ピン14eはリング状支持体14の上側に位置しており、この連結ピン14eに作動軸414の先端部414aを連結した前記エアシリンダ装置41は、連結ピン14eから斜め下方へ延在するように設置されている。
【0065】
前記転写ローラ押圧機構40は、図示略のエア圧源から供給されるエア圧を、三方切換弁42(電磁弁)を介して、前記エアシリンダ装置41のシリンダ本体411内のピストン412を介して両側の内室413a、413bに選択的に供給できるようにしたものである。なお、以下、一対の内室413a、413bの内、シリンダヘッド側を第1内室413a(主室)、ロッド側を第2内室413b、として説明する。
【0066】
エアシリンダ装置41の一対の内室413a、413bは、エア圧供給ライン431、432を介して、三方切換弁42の出力側2ポートに1対1に接続されている。
第1内室413aと三方切換弁42との間を接続するエア圧供給ライン431(以下、第1エア圧供給ラインとも言う)には、その途中に、減圧弁44が介在設置されている。
減圧弁44は、第1エア圧供給ライン431の一次側(減圧弁44から三方切換弁42側)から二次側(減圧弁44から第1内室413a側)へ、該減圧弁44にエア圧源からの供給エア圧よりも低く設定した設定圧でエア圧を供給するためのものである。二次側圧力が設定圧よりも低いときに、一次側から二次側へのエア圧の供給を許可する。これにより、二次側圧力を設定値に保つ。
【0067】
印刷機運転時には、転写ローラ押圧機構40の三方切換弁42の入力側ポートを第1エア圧供給ライン431に接続し、第1内室413aにエア圧(第1内室413a内のエア圧は、減圧弁44に設定された設定圧)を供給する。これにより、エアシリンダ装置41の作動軸414に、シリンダ本体411からの突出量を増大する方向の作動力(付勢力)が与えられ、この作動力が連結ピン14eを介してリング状支持体14に回転駆動力として作用する。
なお、このとき、第2エア圧供給ライン432は三方切換弁42にて大気開放される。
このときの、転写ローラ押圧機構40の状態、すなわち、三方切換弁42の入力側ポートに第1エア圧供給ライン431を接続してエア圧を供給し、第2エア圧供給ライン432は三方切換弁42にて大気開放した状態を、以下、運転時状態とも言う。
【0068】
図8において、一対のリング状支持体14に軸支された転写ローラ8は、その回転軸心8qが、リング状支持体14の中心14cから連結ピン14eとは反対の側へずらされている。感光ドラム2と転写ローラ8との接触位置(接触点P1)は、転写ローラ8の外周面の内、リング状支持体14の中心14cからの距離が最大の部位と最小の部位との間の中間位置に設定される。
【0069】
このため、上述のように、三方切換弁42の入力側ポートを第1エア圧供給ライン431に接続してエアシリンダ装置41の第1内室413aをエア圧を供給すると、作動軸414の作動力によって、リング状支持体14に、転写ローラ8の外周面のリング状支持体14の中心14cからの距離が最大の部位を感光ドラム2と転写ローラ8との接触位置(接触点P1)に接近させる方向の回転駆動力が与えられる。図8においては、転写ローラ8に、リング状支持体14の中心14cを中心とする時計回り方向の回転力が与えられることになる。したがって、エアシリンダ装置41の第1内室413a内のエア圧の調整によって、接触点P1における感光ドラム2と転写ローラ8との接触圧を調整できる。第1内室413a内のエア圧は、減圧弁44にて設定できる。
【0070】
この状態(運転時状態)においては、エアシリンダ装置41がリング状支持体14を付勢する付勢力、つまり、リング状支持体14に付与する回転駆動力によって、転写ローラ8が感光ドラム2に対して弾性付勢される。このため、感光ドラム2に転写ローラ8を確実に押し付けることができる。
【0071】
また、この電子写真印刷機1Aでは、転写ローラ8のローラ軸81の両端を軸支する一対のリング状支持体14が、該一対のリング状支持体14に対応して2つ設けられた転写ローラ押圧機構40によって、それぞれ単独で弾性付勢される。このため、感光ドラム2、転写ローラ8の一方又は両方に振れ回転が生じたとしても、転写ローラ8を感光ドラム2に確実に追従移動させることができる。転写ローラ8の振れ回転は、その両端のリング状支持体14のそれぞれ単独の軸回り回転によって吸収することで、感光ドラム2に対する転写ローラ8の接触状態を維持できる。
その結果、感光ドラム2と転写ローラ8との接触位置(接触点P1)の、感光ドラム2、転写ローラ8の回転軸心2q、8qに沿った方向の全長にわたって、感光ドラム2と転写ローラ8との接触圧の均一化、安定化を実現できる。
【0072】
図10に示すように、ローラ用軸受け18と、その内側の転写ローラ8のローラ軸81の外周面との間には、一対のリング状支持体14のそれぞれ単独での回転変位(リング状支持体14自体の中心14cを中心とする軸回り回転による変位)を円滑にするために、僅かなクリアランスc2を確保することが好ましい。
このクリアランスc2によって、各リング状支持体14がそれぞれ単独に自由に回転することで、転写ローラ8のローラ軸81の両端が感光ドラム2に対する進退方向(図8において、感光ドラム2、転写ローラ8の回転軸心2q、8q同士を結ぶ仮想線48に沿った方向)において、例えば、±1mm程度、自由に移動できるようにする。
【0073】
感光ドラム2、転写ローラ8の振れ回転に起因する、第1エア圧供給ライン431の二次側、エアシリンダ装置41の第1内室413a内のエア圧の変動は微小であるため、転写ローラ押圧機構40のエア圧回路内の空気自体の弾性が、エア圧の変動の吸収に有効に寄与する。
また、減圧弁44として、ブリーズタイプ減圧弁等の、リリーフ弁を兼ねる構成のものを採用することがより好ましい。第1エア圧供給ライン431の二次側にリリーフ弁を接続しても良い。これにより、第1エア圧供給ライン431の二次側のエア圧の上昇幅が空気弾性で吸収できない大きさである場合にも対応して、第1エア圧供給ライン431の二次側、エアシリンダ装置41の第1内室413a内のエア圧の安定化を一層確実に図ることができる。
一方、第1エア圧供給ライン431の二次側のエア圧が低下したときは、減圧弁44を介して一次側から二次側へのエア圧の供給が適宜生じることで、二次側のエア圧が維持される。
【0074】
転写ローラ8と感光ドラム2との接触圧を、より高い精度を以て安定に維持する点では、エアシリンダ装置41として、例えば、ベロフラムシリンダやダイアフラムシリンダ等を採用することが好ましい。
【0075】
また、転写ローラ押圧機構40にて、三方切換弁42の入力側ポートとの接続を第2エア圧供給ライン432へ切り換え、三方切換弁42にて第1エア圧供給ライン431を大気開放することで、エアシリンダ装置41の作動軸414に、シリンダ本体411からの突出量が減少する方向の作動力を与えることができる。このときの転写ローラ押圧機構40の状態を、以下、メンテナンス時状態とも言う。
転写ローラ押圧機構40を、運転時状態からメンテナンス時状態に切り換えると、作動軸414の作動力の向きが逆転(切換後の作動力の向きは、シリンダ本体411からの突出量が減少する方向となる)し、リング状支持体14に、転写ローラ8の外周面のリング状支持体14の中心14cからの距離が最小の部位を感光ドラム2と転写ローラ8との接触位置(接触点P1)に接近させる方向の回転駆動力が与えられる。
【0076】
転写ローラ8は、リング状支持体14の中心14cに対する偏心量によって、その外周面のリング状支持体14の中心14cからの距離の最大値と最小値との差を1mm程度、あるいは数mm程度確保する。これにより、転写ローラ押圧機構40をメンテナンス時状態としたときに、転写ローラ8を感光ドラム2から離隔させることができ、メンテナンス作業を効率良く行える。
【0077】
この電子写真印刷機1Aによれば、転写ローラ押圧機構40の運転時状態とメンテナンス時状態との切り換え、つまり、三方切換弁42の操作によって、感光ドラム2に対して転写ローラ8を接離させることができる。
三方切換弁42が、転写ローラ支持体14への付勢力の付与と付与解除とを切り換えるための押圧切換手段(転写ローラ用押圧切換手段)として機能する。
【0078】
なお、バックアップローラ9の設置位置については、図8に示すように、転写ローラ8との間に記録紙101を挟み込む挟持位置(押圧点P3)のリング状支持体14の中心14cからの距離を、転写ローラ8と感光ドラム2との接触位置(接触点P1)のリング状支持体14の中心14cからの距離よりも大きく確保できる位置であることが好ましい。
これにより、転写ローラ8がリング状支持体14の中心14c回りに回転したとき、バップアップローラ9と転写ローラ8の芯間距離の変動量を、転写ローラ8と感光ドラム2の芯間距離の変動量よりも小さく抑えることができる。
【0079】
転写ローラを介して記録紙等の被記録媒体にトナー像を転写記録する方式の電子写真印刷機においては、従来、感光ドラム及び転写ローラの位置は、両ローラの芯間距離を適正位置に調整した後は、両ローラの軸心位置を固定して印刷を行うのが一般的であった。
しかしながら、この電子写真印刷機1Aによれば、上述のように、転写ローラ押圧機構40をメンテナンス時状態とすることで転写ローラ8を感光ドラム2から離隔させることができ、メンテナンス作業を効率良く行える。
【0080】
また、電子写真印刷機1Aによれば、感光ドラム2と現像ローラ52との接触状態の安定確保、接触圧の均一化、安定化に加えて、感光ドラム2と転写ローラ8との間についても両者の接触状態の安定確保、接触圧の均一化、安定化が実現される。感光ドラム2に対して対向する両側から接触される現像ローラ52、転写ローラ8について、感光ドラム2との接触状態の安定確保、接触圧の均一化、安定化が図られることで、押圧機構20の適用等によって感光ドラム2と現像ローラ52との接触状態の安定確保、接触圧の均一化、安定化のみを行った場合に比べて、感光ドラム2の振れ回転を抑える点で有利であり、現像品質、印刷品質の向上に有効に寄与する。
【0081】
なお、本発明では、上述の実施形態に限定されず、適宜変更が可能である。
例えば、上述の転写ローラ押圧機構40は、現像装置5の弾性付勢用の押圧機構としても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明に係る一実施形態の電子写真印刷機の構成を示す正面図である。
【図2】図1の電子写真印刷機の感光ドラム、現像装置、押圧機構のエアシリンダ装置との関係を示す平面図である。
【図3】図1のA−A線矢視図であり、現像装置の一対の現像装置フレームと案内レールとの関係を示す図である。
【図4】現像装置フレームに設けられた移動子の転動ボール562と案内レールとの間にクリアランスを確保した構成を示す図である。
【図5】本発明に係る電子写真印刷機に適用される押圧機構の一例を示す図である。
【図6】別態様の押圧機構を示す図であり電空変換器を適用した押圧機構の例を示す。
【図7】(a)、(b)は、付勢手段としてスプリングを適用した構成の押圧機構の例を示す図である。
【図8】本発明の別実施形態の電子写真印刷機の構成を示す正面図である。
【図9】図8の電子写真印刷機の転写ローラ、転写ローラ支持体(リング状支持体)、エアシリンダ装置の関係を示す図である。
【図10】図10の転写ローラ支持体(リング状支持体)内側のローラ用軸受けと転写ローラのローラ軸との間にクリアランスを確保した構成を示す図である。
【符号の説明】
【0083】
1、1A…電子写真印刷機、2…感光ドラム、2q…(感光ドラムの)回転軸心、3…帯電装置、4…露光装置、5…現像装置、51、51a、51b…現像装置フレーム、512,513、514…軸受け、52…現像ローラ、52a…ローラ軸、52q…(現像ローラの)回転軸心、53…トナー供給ローラ、53a…ローラ軸、54…クリーニングローラ、55…トナー収容槽、56…移動子、561…移動子本体、561a…天板部、561b、561c…側板部、561d…内側空間、562…転動ボール、57…連結部材、58…主フレーム、59…受け部材、6…除電器、7…感光体クリーナー、8…転写ローラ、8q…(転写ローラの)回転軸心、81…ローラ軸、9…バックアップローラ、10…キャリア液供給装置、11…転写ロールクリーナー、12…現像装置設置台、13…案内レール、14…転写ローラ支持体(リング状支持体)、17…支持体用軸受け、18…ローラ用軸受け、20、20A、30、30A、30B…押圧機構、24…押圧切換手段(減圧弁)、27…押圧切換手段(開閉弁)、33…押圧切換手段(スプリング押圧機構)、40…転写ローラ押圧機構、42…転写ローラ押圧切換手段(三方切換弁)、101…記録紙、P1…感光ドラムと転写ローラとの接触点、P2…感光ドラムと現像ローラとの接触点、P3…転写ローラとバックアップローラとの押圧点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真印刷機であって、
記録紙に対して回転する感光ドラムと、この感光ドラムの表面を均一に帯電させる帯電装置と、この帯電装置によって帯電された前記感光ドラム表面に静電潜像を形成する露光装置と、前記感光ドラムに接して回転する現像ローラから前記感光ドラムにトナーを供給して前記感光ドラム表面に前記静電潜像を可視像化したトナー像を形成する現像装置と、前記現像装置を前記感光ドラムに対して進退自由に直線案内する案内レールと、前記現像装置を弾性付勢して該現像装置の前記現像ローラを前記感光ドラムに押し付ける押圧機構とを具備することを特徴とする電子写真印刷機。
【請求項2】
前記現像装置は、前記現像ローラと、該現像ローラのローラ軸の軸受けを有し前記ローラ軸の両端を支持する一対の現像装置フレームとを具備し、
前記案内レール及び前記押圧機構が個々の現像装置フレームに対応して設けられていることを特徴とする請求項1記載の電子写真印刷機。
【請求項3】
前記押圧機構は、前記現像装置への付勢力の付与と付与解除とを切り換えるための押圧切換手段を具備し、
前記押圧機構による前記現像装置の弾性付勢を解除した状態において、前記現像装置の前記案内レールに沿った移動により、前記現像装置の前記現像ローラが前記感光ドラムに対して接離自在となることを特徴とする請求項1又は2記載の電子写真印刷機。
【請求項4】
前記現像装置に、前記現像ローラ表面にトナーを供給するためのトナー供給ローラと、前記現像ローラと前記感光ドラムとの接触位置から前記現像ローラの回転方向下流側にて前記トナー供給ローラよりも前記現像ローラの回転方向上流側に配置されて、前記現像ローラ表面からトナーを除去するクリーニングローラとが、それぞれ前記現像装置フレームに軸支して設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真印刷機。
【請求項5】
さらに、前記感光ドラムに接して回転して前記感光ドラム表面の前記トナー像を前記感光ドラムから記録紙に転写する転写ローラと、印刷機機体に対して可動に設けられ前記転写ローラのローラ軸の両端をそれぞれ軸受けを介して支持する一対の転写ローラ支持体と、個々の転写ローラ支持体に対応して設けられ、転写ローラ支持体をそれぞれ単独に弾性付勢して前記転写ローラを前記感光ドラムに押圧する転写ローラ押圧機構とを具備することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真印刷機。
【請求項6】
前記転写ローラ押圧機構は、前記転写ローラ支持体への付勢力の付与と付与解除とを切り換えるための転写ローラ押圧切換手段を具備し、
前記転写ローラ押圧機構による前記転写ローラ支持体の弾性付勢を解除した状態において、前記転写ローラが前記感光ドラムに対して離隔可能であることを特徴とする請求項5記載の電子写真印刷機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−157324(P2009−157324A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338885(P2007−338885)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000161057)株式会社ミヤコシ (122)
【Fターム(参考)】