説明

電子写真印刷用感圧接着シート及びその製造方法

【課題】 ターンバーに対し優れた離型効果を有し、かつ、親展ハガキ原紙製造工程における金属ロール、印刷工程におけるフォーム印刷機の圧胴、圧着工程におけるドライシーラーの圧胴等に汚れ付着が発生しない電子写真印刷用感圧接着シートの製造方法を提供する。
【解決手段】 接着剤と、脂肪酸粒子及び脂肪酸金属塩粒子から選ばれる少なくとも1種の粒子と澱粉粒子とを含有する接着剤組成物により、通常は接着性を示さず、接着剤層同士を対向させた状態で加圧処理することにより接着でき、かつ、接着後の接着剤層同士が剥離可能である再剥離性接着剤層を基材シートの少なくとも一面に形成することからなる電子写真印刷用感圧接着シートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親展性をもつハガキやカード等の各種システムに用いられる電子写真印刷用感圧接着シートの製造方法と該製造方法により製造されている、優れた印刷・印字適性を備え、トナー汚れを発生することのない再剥離性接着面を有する電子写真印刷用感圧接着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、郵便法の改正に伴い必要情報を記録したシートを二つ折り、又は三つ折りに折り畳み、親展性を持つハガキシステムが実用化され普及している。このような親展性を持つハガキは、基材シートの一方の面に通常は接着性がなく、接着剤層同士を対向させた状態で加圧することにより接着性を示し、かつ接着後は再剥離することが可能な接着剤層を有する親展ハガキ用紙(感圧接着シート)が使用される。
【0003】
通常、親展ハガキの製造工程は、第1に、基材シートに接着剤層を形成し、所定の大きさに断裁加工する親展ハガキ原紙製造工程、第2に、親展ハガキ原紙の接着剤層面にハガキとしての定型事項や不変情報を印刷する印刷工程、第3に、個人情報や宛先等などの秘密可変情報を印字する印字工程、第4に、V折り(二つ折り)又はZ折り(三つ折り)にして秘密可変情報が外部から見えないように加圧積層する圧着工程に分類され、それらの工程を経て親展ハガキとなる。親展ハガキは、一般のハガキと同じ郵便料金で使用できる。
【0004】
上記の一連の親展ハガキの製造工程における第2の印刷工程は、通常、フォーム印刷機で印刷される工程である。フォーム印刷機で印刷する方法としては、親展ハガキ用紙がインキを転写したブランケット胴と圧胴(金属ロール)の間を通過することにより、インキが親展ハガキ用紙の一方の面に転写され、その後、熱又は紫外線によりインキ硬化・定着工程を経てロール状に巻き取る、もしくはZ折り状に折りたたむ方法が知られている。
この際、Z折り状に折りたたんだときのミシン目でブロッキングが生じ、印字工程時あるいは圧着工程時に給紙不能等のトラブルを生じるという問題があった。
【0005】
このブロッキング防止のために、接着剤層中に平均粒子径が20μmを超える顔料を添加する方法が提案されている(特許文献1)。
しかし、この方法では、耐ブロッキング効果は認められるが、フォーム印刷機で両面印刷をする際に用いるターンバー(原紙の表裏を反転させる紙反転装置)に親展ハガキ原紙が擦れることによって、前記大粒径の顔料を含む接着剤層や紙粉等の汚れがターンバーに付着し(以下、「ターンバー汚れ」という)、さらに、その汚れが親展ハガキ原紙にも付着して印刷適性を悪化させ、後工程の印刷、印字工程における印刷・印字不良等の原因となることがある。
【0006】
また、耐ブロッキング性と印刷適性の双方を改善するために、接着剤層中に平均粒子径10μm以下の熱可塑性樹脂を添加する方法が提案されている(特許文献2)。この方法は、耐ブロッキング性及び印刷適性には効果が認められるが、熱可塑性樹脂のうち、カルナバワックス等の動植物性ワックス、パラフィンワックス等の石油系ワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックスを用いた場合には、親展ハガキ原紙製造工程において、接着剤層の塗工・乾燥後や断裁加工時に塗工面が金属ロールと接触した際に、前記ワックスが長時間の塗工・断裁作業の間に付着・蓄積する問題が生じていた。
【0007】
また、印刷工程においても同様に、親展ハガキ用紙がブランケット胴と圧胴の間を通過する際に、圧胴に前記ワックスが付着・蓄積する問題が生じていた。さらに、圧着工程においても、圧着する際のドライシーラーの圧胴(金属ロール)にワックスが付着・蓄積することがあった。いずれの場合も、汚れがひどくなると定期的に汚れを落とす必要がるため作業性に問題があり、印刷・印字ムラ等の不具合が生じやすいものであった。
【0008】
また、前記特許文献1の実施例等に記載されている方法では、塗工層中にシリカを多く含むためインクジェット方式の印字に際しては効果が得られるが、反面、塗工層の表面強度が劣るため、レーザープリンターに代表される電子写真印刷方式で印字した場合にはトナー定着ロールに塗工層が付着する、トナー定着汚れが発生する欠点があった。
【特許文献1】特開平8−92534号公報
【特許文献2】特開2005−139397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ターンバーに対し優れた離型効果を有し、かつ、親展ハガキ原紙製造工程における金属ロール、印刷工程におけるフォーム印刷機の圧胴、圧着工程におけるドライシーラーの圧胴等に汚れ付着が発生しない電子写真印刷用感圧接着シートの製造方法と、該製造方法によって得られる印刷・印字ムラやトナー定着汚れが発生することがない電子写真印刷用感圧接着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、電子写真印刷用感圧接着シートの製造工程において、再剥離性接着層を有する再剥離性接着面用の接着剤組成物中に脂肪酸粒子及び/又は脂肪酸金属塩粒子から選ばれる少なくとも1種の粒子と澱粉粒子を配合することにより、前記課題を克服できることを見出した。本発明は以下の各発明を包含する。
【0011】
(1)接着剤と、脂肪酸粒子及び脂肪酸金属塩粒子から選ばれる少なくとも1種の粒子と澱粉粒子とを含有する接着剤組成物により、通常は接着性がなく、接着剤層同士を対向させた状態で加圧処理することにより接着でき、かつ、接着後の接着剤層同士が剥離可能である再剥離性接着剤層を基材シートの少なくとも一面に形成することからなる電子写真印刷用感圧接着シートの製造方法。
【0012】
(2)前記再剥離性接着層を形成した基材シート面の少なくとも他方の面に、通常は接着性がなく、接着剤層同士を対向させた状態で加圧処理することにより接着でき、かつ、再剥離性のない永久接着用の接着剤層を形成することよりなる(1)記載の電子写真印刷用感圧接着シートの製造方法。
【0013】
(3)前記脂肪酸粒子及び脂肪酸金属塩粒子は、炭素数8以上の飽和脂肪酸、炭素数8以上の不飽和脂肪酸、炭素数8以上のオキシ脂肪酸、及びそれらの金属塩の粒子である(1)又は(2)に記載の電子写真印刷用感圧接着シートの製造方法。
【0014】
(4)前記脂肪酸粒子及び脂肪酸金属塩粒子の平均粒子径が0.1〜20μm、好ましくは2〜18μm、さらに好ましくは10μmより大きく15μm以下であり、その接着剤組成物中における配合量が0.1〜5質量%、好ましくは0.2〜3質量%、さらに好ましくは0.3質量%以上1質量%未満であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の電子写真印刷用感圧接着シートの製造方法。
【0015】
(5)前記澱粉粒子は、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉及びタピオカ澱粉等から選ばれる平均粒子径5〜30μm、好ましくは10〜20μmの粒子であり、その再剥離性接着剤層用の接着剤組成物における配合量が10質量%〜60質量%、好ましくは20質量%〜50質量%、さらに好ましくは30質量%以上40質量%未満であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の電子写真印刷用感圧接着シートの製造方法。
【0016】
(6)前記再剥離性接着剤層用の接着剤組成物に、バインダーとして、ポリビニルアルコール(PVA)、変性PVA、ヒドロキシエチルセルロース、CMC、セルロース誘導体、澱粉誘導体等、水性エマルジョン型高分子ラテックス、SBRラテックス、NBRラテックス、MBRラテックス、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル重合体、ポリビニルブチラール、ポリウレタン等から選ばれる少なくとも1種を配合してなる(1)〜(5)のいずれか1項に記載の電子写真印刷用感圧接着シートの製造方法。
【0017】
(7)前記再剥離性接着剤層用の接着剤組成物に、接着力コントロール剤として無機顔料又は有機顔料の粒子を配合してなる(1)〜(6)のいずれか1項に記載の電子写真印刷用感圧接着シートの製造方法。
【0018】
(8)前記基材シートが、上質紙、中質紙、アート紙、コート紙等の紙類、合成紙、合成樹脂フィルム、金属箔及び不織布から選ばれる1種である(1)〜(7)のいずれか1項に記載の電子写真印刷用感圧接着シートの製造方法。
【0019】
(9)前記(1)〜(8)のいずれか1項に記載の製造方法により作製されている、通常は接着性がなく、接着剤層同士を対向させた状態で加圧処理することにより接着でき、かつ、接着後の接着剤層同士が剥離可能である再剥離性接着剤層を有する電子写真印刷用感圧接着シート。
【発明の効果】
【0020】
本発明の電子写真印刷用感圧接着シートの製造方法は、再剥離性接着剤層中に脂肪酸及び/又は脂肪酸金属塩の粒子を配合することにより、親展ハガキ原紙製造工程時の金属ロール、印刷工程時のフォーム印刷機の圧胴、圧着工程時のドライシーラーの圧胴、に汚れ付着がない優れた方法である。
また、上記方法によって製造される電子写真印刷用感圧接着シートは優れた印刷・印字適性を有し、トナー定着汚れが発生することがない電子写真印刷用感圧接着シートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の電子写真印刷用感圧接着シートは、基材シートの少なくとも一方の面に、通常は接着性がなく、接着剤層同士を対向させた状態で加圧処理することにより接着でき、かつ、接着後の接着剤層同士が剥離可能である再剥離性接着剤層を有する再剥離性接着面が形成されている。
【0022】
基材シートの少なくとも一方の面に再剥離性接着剤層を有する再剥離性接着面が形成されている例としては、基材の一方の面にのみ再剥離性接着剤層が形成されているもの、両面に再剥離性接着剤層が形成されているもの、一方の面に再剥離性接着剤層が形成され、他方の面には再剥離性のない接着剤層(以下、「永久接着剤層」ともいう)が形成されているもの等が包含される。再剥離性接着剤層及び永久接着剤層は共に、通常の状態では接着性を示さず、ドライシーラー等で加圧することにより接着される。このような電子写真印刷用感圧接着シートの再剥離性接着層及び永久接着層は、それらの接着剤層を形成する接着剤組成物に接着剤と接着力コントロール剤及びバインダー等を併用して各接着剤層の接着力を調節することによって形成することができる。
【0023】
本発明の電子写真印刷用感圧接着シートにおける再剥離性接着剤層を形成する接着剤組成物に配合する脂肪酸粒子としては、炭素数8以上の飽和又は不飽和脂肪酸(カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸等の飽和脂肪酸、オクテン酸、テトラデセン酸、ヘキサデセン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸など)、オキシ脂肪酸(12−ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸などの水酸基を有する脂肪酸)などの粒子、及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらのうち、炭素数12〜20の飽和又は不飽和脂肪酸、オキシ脂肪酸の粒子が好ましく、さらに好ましい粒子としては、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸の粒子が挙げられる。
【0024】
また、本発明の電子写真印刷用感圧接着シートにおける再剥離性接着剤層を形成する接着剤組成物に配合する脂肪酸金属塩の粒子としては、前記脂肪酸とマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、カドミウム、アルミニウムなどとの塩類、又はこれら複数の金属との混合塩類の粒子が挙げられる。これらのうち、炭素数12〜20の飽和又は不飽和脂肪酸、もしくはオキシ脂肪酸と、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム等との塩の粒子又はこれらの塩の粒子の混合物が挙げられ、さらに好ましくは、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸とカルシウム、亜鉛等との塩の粒子又はこれらの塩の粒子の混合物が挙げられる。前記脂肪酸及び脂肪酸塩の粒子は、単独で用いても良いが、それらを任意に混合して用いることもできる。
【0025】
本発明で使用される脂肪酸及び/又は脂肪酸金属塩の粒子の平均粒子径は、通常0.1〜20μm、好ましくは2〜18μm、さらに好ましくは10μmより大きく15μm以下である。平均粒子径が20μmを超えると粒子が脱落しやすくなりターンバー汚れが発生し、印刷機やプリンターの通紙に問題が生じる。0.1μm未満の平均粒子径のものとするとターンバー汚れ改善効果が十分でない。なお、本発明において平均粒子径とは、JIS Z8825−1に基づきレーザー回折式粒度分布測定装置 SALD−2000J〔(株)島津製作所社製〕を使って測定した50%体積平均粒子径をいう。
【0026】
再剥離性接着剤層への脂肪酸粒子及び/又は脂肪酸金属塩粒子の配合量は、通常0.1〜5質量%であり、好ましくは0.2〜3質量%、さらに好ましくは0.3質量%以上1質量%未満である。0.1質量%未満ではターンバー汚れ改善効果が十分でなく、5質量%より多く配合しても本発明の効果は変わらない。
【0027】
再剥離性接着剤層には、前記脂肪酸粒子及び/又は脂肪酸金属塩粒子に加えて、澱粉粒子が配合される。澱粉粒子としては、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉等が挙げられる。澱粉粒子はブロッキング防止及びカラーレーザープリンター使用時のトナー定着汚れ防止の目的でスペーサー的に使用され、通常、平均粒子径5〜30μm、好ましくは10〜20μmのものが使用可能である。
【0028】
再剥離性を有する接着剤層への澱粉粒子の配合量は、通常10質量%〜60質量%であり、好ましくは20質量%〜50質量%、さらに好ましくは30質量%以上40質量%未満である。10質量%未満ではターンバー汚れ改善効果が十分でなく、60質量%より多く配合しても本発明の効果は変わらない。
【0029】
再剥離性接着剤層には、無機及び有機顔料が使用できる。例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、ゼオライト、タルク、クレー、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、アルミナ、コロイダルシリカ、プラスチックピグメント、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素系樹脂等が用いられる。特に、シリカはインク受容性に優れ、印刷適性を改善するので好ましい。再剥離性を有する接着剤層への無機及び有機顔料の配合量は、通常3質量%〜40質量%であり、好ましくは5質量%〜30質量%、さらに好ましくは10質量%以上20質量%未満である。
【0030】
本発明の再剥離性接着剤層に使用される接着剤としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、合成ゴム系樹脂、天然ゴム系樹脂、アクリル変性天然ゴム系樹脂等が挙げられ、それらを単独もしくは混合して用いることが可能である。
特に、天然ゴム系樹脂を用いる場合、不飽和二重結合が存在していると、耐熱性が劣るため、水添等の方法により、二重結合を飽和したものを使用することが、耐熱性や加熱臭気の点でより好ましい。
再剥離性を有する接着剤層における接着剤の配合量は、通常20質量%〜60質量%であり、好ましくは25質量%〜50質量%、さらに好ましくは30質量%以上40質量%未満である。
【0031】
再剥離性接着剤層には、上記接着剤や接着力コントロール剤を基材シート上へ密着させるためにバインダーを配合することが好ましい。バインダーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)、変性PVA、ヒドロキシエチルセルロース、CMC、セルロース誘導体、澱粉誘導体等、水性エマルジョン型高分子ラテックス、SBRラテックス、NBRラテックス、MBRラテックス、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル重合体、ポリビニルブチラール、ポリウレタン等が例示でき、これらのバインダーを組み合わせて用いることもできる。 再剥離性を有する接着剤層におけるバインダーの配合量は、通常3質量%〜20質量%であり、好ましくは5質量%〜15質量%、さらに好ましくは7質量%以上12質量%未満である。
【0032】
また、再剥離性接着剤層には、添加剤として顔料用分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤、耐水化剤などが適量配合できる。
【0033】
基材シートとしては、上質紙、中質紙、アート紙、コート紙等の紙類、合成紙、合成樹脂フィルム、金属箔、不織布等を用いることができ、これらは積層されたり、表面処理されたりしたものを用いてもよい。
【0034】
基材シートの表面に接着剤層を塗工する方法としては、特に限定するものではないが、各種ブレードコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、グラビアコーター、カーテンコーターなどが用いられるが、本発明ではエアーナイフコーター、バーコーター、グラビアコーターなどが好ましい。塗工量としては2〜30g/mの範囲であるが、好ましくは3〜15g/mの範囲である。
【実施例】
【0035】
以下に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。実施例において示す「部」及び「%」は特に明示のない限り質量部及び質量%である。
【0036】
実施例1
〔脂肪酸分散液の製造〕
ステアリン酸粉末350g、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル50g及び水600gを混合して固形分濃度40%のステアリン酸分散液を得た。この分散液を直径5mmのガラスビーズを用いたディスク型ビーズミルにてディスク周速10m/s、温度20〜30℃で12時間循環して粉砕を行った。得られたステアリン酸分散液中の粒子の平均粒子径は10.3μmであった。この分散液を分散液Aとする。
【0037】
〔再剥離性接着剤層の形成〕
坪量95g/mの上質紙の両面(ワイヤー面とフエルト面)に、以下の配合処方になるように調成した再剥離用接着剤組成物をエアーナイフコーターにて固形あたり7g/mになるように塗工、乾燥し、電子写真印刷用感圧接着シートを得た。
【0038】
〔再剥離性接着剤用接着剤組成物配合〕
分散液A:0.8部
接着剤A:35部〔天然ゴムにメタクリル酸メチルを25%グラフト重合して得られた接着剤(日本NSC製、商品名:35-018A)〕
バインダー:10部〔SBR(日本エイアンドエル製、商品名:SR-100)〕
澱粉:36.2部〔小麦澱粉(籠島澱粉製、商品名:濱の雪、平均粒子径11μm)〕
シリカ:18部〔合成シリカ(トクヤマ製、商品名:ファインシールX−45)〕
【0039】
実施例2
〔脂肪酸分散液の製造〕
ステアリン酸粉末350g、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル50g及び水600gを混合して固形分濃度40%のステアリン酸分散液を得た。この分散液を直径2mmのガラスビーズを用いたディスク型ビーズミルにてディスク周速10m/s、温度20〜30℃で12時間循環して粉砕を行った。得られたステアリン酸分散液の平均粒子径は6.3μmであった。この分散液を分散液Bとする。
【0040】
〔再剥離性接着剤層の形成〕
分散液Aを分散液Bとした以外は実施例1と同様にして、電子写真印刷用感圧接着シートを得た。
【0041】
実施例3
〔脂肪酸塩分散液の製造〕
ステアリン酸カルシウム粉末350g、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル50g及び水600gを混合して固形分濃度40%のステアリン酸分散液を得た。この分散液を直径5mmのガラスビーズを用いたディスク型ビーズミルにてディスク周速10m/s、温度60〜80℃で12時間循環して粉砕を行った。得られたステアリン酸分散液の平均粒子径は10.6μmであった。この分散液を分散液Cとする。
【0042】
〔再剥離性接着剤層の形成〕
分散液Aを分散液Cとした以外は実施例1と同様にして、電子写真印刷用感圧接着シートを得た。
【0043】
実施例4
〔脂肪酸塩分散液の製造〕
ステアリン酸カルシウム粉末350g、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル50g及び水600gを混合して固形分濃度40%のステアリン酸分散液を得た。この分散液を直径2mmのガラスビーズを用いたディスク型ビーズミルにてディスク周速10m/s、温度20〜30℃で12時間循環して粉砕を行った。得られたステアリン酸分散液の平均粒子径は6.6μmであった。この分散液を分散液Dとする。
【0044】
〔再剥離性接着剤層の形成〕
分散液Aを分散液Dとした以外は実施例1と同様にして、電子写真印刷用感圧接着シートを得た。
【0045】
比較例1
〔脂肪酸分散液の製造〕
ステアリン酸粉末350g、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル50g及び水600gを混合して固形分濃度40%のステアリン酸分散液を得た。この分散液を直径0.1mmのガラスビーズを用いたディスク型ビーズミルにてディスク周速10m/s、温度60〜80℃で12時間循環して粉砕を行った。得られたステアリン酸分散液の平均粒子径は0.07μmであった。この分散液を分散液Eとする。
【0046】
〔再剥離性接着剤層の形成〕
分散液Aを分散液Eとした以外は実施例1と同様にして、電子写真印刷用感圧接着シートを得た。
【0047】
比較例2
〔脂肪酸分散液の製造〕
ステアリン酸粉末350g、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル50g及び水600gを混合して固形分濃度40%のステアリン酸分散液を得た。この分散液を直径20mmのガラスビーズを用いたディスク型ビーズミルにてディスク周速10m/s、温度20〜30℃で12時間循環して粉砕を行った。得られたステアリン酸分散液の平均粒子径は22μmであった。この分散液を分散液Fとする。
【0048】
〔再剥離性接着剤層の形成〕
分散液Aを分散液Fとした以外は実施例1と同様にして、電子写真印刷用感圧接着シートを得た。
【0049】
比較例3
〔脂肪酸塩分散液の製造〕
ステアリン酸カルシウム粉末350g、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル50g及び水600gを混合して固形分濃度40%のステアリン酸分散液を得た。この分散液を直径0.1mmのガラスビーズを用いたディスク型ビーズミルにてディスク周速10m/s、温度60〜80℃で12時間循環して粉砕を行った。得られたステアリン酸分散液の平均粒子径は0.08μmであった。この分散液を分散液Gとする。
【0050】
比較例4
〔脂肪酸塩分散液の製造〕
ステアリン酸カルシウム粉末350g、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル50g及び水600gを混合して固形分濃度40%のステアリン酸分散液を得た。この分散液を直径20mmのガラスビーズを用いたディスク型ビーズミルにてディスク周速10m/s、温度20〜30℃で12時間循環して粉砕を行った。得られたステアリン酸分散液の平均粒子径は24μmであった。この分散液を分散液Hとする。
【0051】
〔再剥離性接着剤層の形成〕
分散液Aを分散液Hとした以外は実施例1と同様にして、電子写真印刷用感圧接着シートを得た。
【0052】
比較例5
分散液Aを「SNダルアクト1001W」〔商品名、ポリエチレンワックス、固形分40%、平均粒子径10μm、サンノプコ(株)社製〕とした以外は実施例1と同様にして、電子写真印刷用感圧接着シートを得た。
【0053】
比較例6
分散液Aを「セロゾール686」〔商品名、パラフィンワックス、固形分50%、平均粒子径0.5μm、中京油脂(株)社製〕とした以外は実施例1と同様にして、電子写真印刷用感圧接着シートを得た。
【0054】
比較例7
特開2005−139397号の実施例1に基づいて、接着剤Aを50部、バインダーを5部、小麦澱粉を0部、シリカ〔ミズカシルP−78A、水澤化学工業(株)社製、平均粒子径0.5μm〕を35部、ワックスエマルジョン「セロゾール686」〔商品名、パラフィンワックス、固形分50%、平均粒子径0.5μm、中京油脂(株)社製〕を10部とした以外は実施例1と同様にして、電子写真印刷用感圧接着シートを得た。
【0055】
実施例及び比較例で使用した材料を表1にまとめて示す。
【0056】
【表1】



【0057】
「評価方法」
(1)親展ハガキ原紙製造工程時の金属ロール汚れの評価
金属ロール汚れの状況を目視評価した。
○:金属ロール汚れは全く起こさない。
△:金属ロール汚れが若干発生するが、印刷面には影響しない。
×:金属ロール汚れが発生し、印刷面にも影響する。
【0058】
(2)ターンバー汚れの評価
電子写真印刷用感圧接着シートをフォーム印刷機(ミヤコシ製 MVF18B)で5,000m分印刷し、ターンバー汚れの状況を目視評価した。
○:ターンバー汚れは全く起こさない。
△:ターンバー汚れが若干発生するが、印刷面には影響しない。
×:ターンバー汚れが発生し、印刷面にも影響する。
【0059】
(3)印刷時の圧胴汚れの評価
電子写真印刷用感圧接着シートをフォーム印刷機(ミヤコシ社製 MVF18B)で5,000m分印刷し、圧胴汚れの状況を目視評価した。
○:圧胴汚れは全く起こさない。
△:圧胴汚れが若干発生するが、印刷面には影響しない。
×:圧胴汚れが発生し、印刷面にも影響する。
【0060】
(4)ドライシーラー圧着時の圧胴汚れの評価
電子写真印刷用感圧接着シートをZ折に重ね合わせて、メモリ18(180μmに相当)に設定したドライシーラー6860〔トッパンフォームズ(株)社製〕で30000枚を圧着し、圧胴汚れの状況を目視評価した。
○:圧胴汚れは全く起こさない。
△:圧胴汚れが若干発生するが、印刷・印字面には影響しない。
×:圧胴汚れが発生し、印刷・印字面にも影響する。
【0061】
(5)レーザープリンター適性
高速レーザープリンター(昭和情報機器社製、SX7300)を用いて、テスト文字パターンを5,000m分印字し、トナー定着ロールの汚れ状況を目視評価した。
○:トナー定着ロール汚れは全く起こさない。
△:トナー定着ロール汚れが若干発生するが、印刷・印字面には影響しない。
×:トナー定着ロール汚れが発生し、印刷・印字面にも影響する。
【0062】
(6)インクジェット印字適性
インクジェットプリンター(ヒューレットパッカード社製、DeskJet560J)、黒インク(サイテックス1040)を用いて、テスト文字パターンを印字し、文字の識別状況を目視評価した。
○:滲みが全く、印字状況は鮮明である。
△:滲みがわずかにあるが、文字は識別可能である。
×:滲みがあり、文字は識別不能である。
【0063】
(7)総合評価
親展ハガキ用紙としての総合評価を行った。
○:親展ハガキ用紙として優れている。
△:親展ハガキ用紙として不具合を生じる可能性がある。
×:親展ハガキ用紙としては適当でない。
【0064】
以上の評価結果を表2にまとめた。
【0065】
【表2】

【0066】
表2より、ステアリン酸又はステアリン酸カルシウムを含有する実施例では、親展ハガキ原紙製造工程時の金属ロール、印刷工程時のフォーム印刷機の圧胴、圧着工程時のドライシーラーの圧胴、に汚れ付着がなく優れたものであった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤と、脂肪酸粒子及び脂肪酸金属塩粒子から選ばれる少なくとも1種の粒子と澱粉粒子とを含有する接着剤組成物により、通常は接着性がなく、接着剤層同士を対向させた状態で加圧処理することにより接着でき、かつ、接着後の接着剤層同士が剥離可能である再剥離性接着剤層を基材シートの少なくとも一面に形成することからなる電子写真印刷用感圧接着シートの製造方法。
【請求項2】
前記再剥離性接着層を形成した基材シート面の少なくとも他方の面に、通常は接着性がなく、接着剤層同士を対向させた状態で加圧処理することにより接着でき、かつ、再剥離性のない永久接着用の接着剤層を形成することよりなる請求項1記載の電子写真印刷用感圧接着シートの製造方法。
【請求項3】
前記脂肪酸粒子及び脂肪酸金属塩粒子は、炭素数8以上の飽和脂肪酸、炭素数8以上の不飽和脂肪酸、炭素数8以上のオキシ脂肪酸、及びそれらの金属塩の粒子である請求項1又は2に記載の電子写真印刷用感圧接着シートの製造方法。
【請求項4】
前記脂肪酸粒子及び脂肪酸金属塩粒子の平均粒子径が0.1〜20μmであり、その再剥離性接着剤層用の接着剤組成物中における配合量が0.1〜5質量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真印刷用感圧接着シートの製造方法。
【請求項5】
前記澱粉粒子は、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉及びタピオカ澱粉から選ばれる平均粒子径5〜30μmの粒子であり、その再剥離性接着剤層用の接着剤組成物における配合量が10質量%〜60質量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真印刷用感圧接着シートの製造方法。
【請求項6】
前記接着剤組成物に、バインダーとして、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロース誘導体、澱粉誘導体等、水性エマルジョン型高分子ラテックス、SBRラテックス、NBRラテックス、MBRラテックス、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル重合体、ポリビニルブチラール及びポリウレタンから選ばれる少なくとも1種を配合してなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子写真印刷用感圧接着シートの製造方法。
【請求項7】
前記接着剤組成物に、接着力コントロール剤として無機顔料又は有機顔料の粒子を配合してなる請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子写真印刷用感圧接着シートの製造方法。
【請求項8】
前記基材シートが、上質紙、中質紙、アート紙、コート紙、合成紙、合成樹脂フィルム、金属箔及び不織布から選ばれる1種である請求項1〜7のいずれか1項に記載の電子写真印刷用感圧接着シートの製造方法。
【請求項9】
前記請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法により作製されている、通常は接着性がなく、接着剤層同士を対向させた状態で加圧処理することにより接着でき、かつ、接着後の接着剤層同士が剥離可能である再剥離性接着剤層を有する電子写真印刷用感圧接着シート。

【公開番号】特開2007−248591(P2007−248591A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−69012(P2006−69012)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】