説明

電子写真機器用導電性部材

【課題】長期に渡り通電を行ったときにも、相手部材に対する荷電性能の低下を抑制できる電子写真機器用導電性部材を提供すること。
【解決手段】電子写真機器用導電性部材10、20の導電性ゴム弾性層14を、(a)極性ゴム、(b)ジアリルジメチルアンモニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、および、ジアリルジメチルアンモニウム・トリフルオロメタンスルホネートから選択された1種以上のイオン導電剤、(c)架橋剤、を含有する導電性ゴム組成物の架橋体で形成し、架橋体の比誘電率を23以上に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器に用いられる現像ロール、帯電ロールなどの電子写真機器用導電性部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器が知られている。電子写真機器の内部には、通常、感光ドラムが組み込まれており、感光ドラムの周囲には、現像ロール、帯電ロール、転写ロール、トナー供給ロールなどの導電性ロールや転写ベルトなどの導電性ベルトといった導電性部材が配設されている。
【0003】
導電性ロールとしては、例えば、芯金の外周にゴム弾性体よりなるベース層が形成されるとともにこのベース層を保護する表層がベース層の表面に形成された2層構成のものや、このベース層と表層との間に導電性ロールの抵抗を調整する抵抗調整層などがゴム弾性体により形成された3層構成のものなどが知られている。また、導電性ベルトとしては、例えば、ゴム弾性体よりなるベース層が形成されるとともにこのベース層を保護する表層がベース層の表面に形成された2層構成のものなどが知られている。
【0004】
導電性部材のベース層や抵抗調整層などのゴム弾性体は、導電性ゴム組成物により形成されている。導電性ゴム組成物中には、導電性を付与する材料として、イオン導電剤が配合されることがある。
【0005】
例えば特許文献1には、電子写真複写機などに用いられる導電性ロールの材料としてゴム組成物を用いる記載がある。このゴム組成物としては、エピハロヒドリン系ゴムと、イオン導電剤としてのジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどの第四級アンモニウム塩と、を含有するものが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−165902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この種の導電性部材においては、長期に渡り通電を行ったときに、感光ドラムやトナーなどの相手部材に対する荷電性能が低下するという問題があった。これは、長期に渡り通電を行ったときに、導電性部材のイオン導電剤が消費されて抵抗が上昇するためと推察される。
【0008】
そして、この結果、相手部材が帯電不良となり、画像不具合が生じるおそれがあった。そのため、従来では、電子写真機器の本体側で印加する電圧を調整するなどして画像に影響が出ないようにしていたため、電子写真機器のコストが高くなっていた。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、長期に渡り通電を行ったときにも、相手部材に対する荷電性能の低下を抑制できる電子写真機器用導電性部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明に係る電子写真機器用導電性部材は、導電性ゴム弾性層を有する電子写真機器用導電性部材であって、前記導電性ゴム弾性層は、(a)極性ゴム、(b)ジアリルジメチルアンモニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、および、ジアリルジメチルアンモニウム・トリフルオロメタンスルホネートから選択された1種以上のイオン導電剤、(c)架橋剤、を含有する導電性ゴム組成物の架橋体よりなり、前記架橋体の比誘電率は23以上に設定されていることを要旨とするものである。
【0011】
この際、前記(a)成分としては、ヒドリンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、および、エポキシ化天然ゴムから選択された1種または2種以上の極性ゴムが好適である。
【0012】
そして、前記(b)成分の含有量は、前記(a)成分100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲内であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る電子写真機器用導電性部材によれば、導電性ゴム弾性層が、極性ゴムと、特定のジアリルジメチルアンモニウム塩よりなるイオン導電剤と、架橋剤とを含有し、比誘電率が23以上となる導電性ゴム組成物の架橋体により形成されていることから、長期に渡り通電を行ったときにも、相手部材に対する荷電性能の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子写真機器用導電性部材としての導電性ロールの層構成を示したものであり、周方向断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る電子写真機器用導電性部材としての導電性ベルトの層構成を示した一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る電子写真機器用導電性部材(以下、本導電性部材ということがある。)について詳細に説明する。
【0016】
本導電性部材は、特定の導電性ゴム組成物の架橋体よりなる導電性ゴム弾性層を有するものである。本導電性部材としては、例えば、電子写真機器に用いられる現像ロール、帯電ロール、転写ロール、トナー供給ロールなどの導電性ロールや、電子写真機器に用いられる転写ベルトなどの導電性ベルトなどを挙げることができる。
【0017】
導電性ロールの構成としては、図1(a)に示すように、軸体12の外周に導電性ゴム弾性層14と表層16とがこの順で積層された2層構成の導電性ロール10や、図1(b)に示すように、軸体12の外周に導電性ゴム弾性層18、14と表層16とがこの順で積層された3層構成の導電性ロール20などを挙げることができる。なお、導電性ロールの構成としては、図1(a)(b)に示す構成以外の構成として、例えば、軸体12の外周に導電性ゴム弾性層が3層以上積層されたものであっても良い。また、導電性ベルトの構成としては、図2に示すように、導電性ゴム弾性層32と表層34とがこの順で積層された2層構成の導電性ベルト30などを挙げることができる。
【0018】
図1(b)に示す導電性ロール20の内側の導電性ゴム弾性層18は、導電性ロール20の基層となる層であり、発泡体であっても良いし、非発泡体であっても良い。また、導電性ロール20の外側の導電性ゴム弾性層14は、導電性ロール20の抵抗調整などの機能を備えた層である。導電性ロール20の場合、導電性ゴム弾性層を2層有しており、外側の導電性ゴム弾性層14のみが特定の導電性ゴム組成物で形成されていても良いし、内側と外側の両方の導電性ゴム弾性層18、14が特定の導電性ゴム組成物で形成されていても良い。
【0019】
導電性ゴム弾性層14を形成する特定の導電性ゴム組成物は、(a)極性ゴム、(b)特定のイオン導電剤、(c)架橋剤を少なくとも含有している。
【0020】
(a)極性ゴムは、極性基を有するゴムであり、極性基としては、クロロ基、ニトリル基、カルボキシル基、エポキシ基などを挙げることができる。(a)極性ゴムとしては、具体的には、ヒドリンゴム、ニトリルゴム(NBR)、ウレタンゴム(U)、アクリルゴム(アクリル酸エステルと2−クロロエチルビニルエーテルとの共重合体、ACM)、クロロプレンゴム(CR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)などを挙げることができる。
【0021】
(a)特定の極性ゴムのうちでは、導電性ゴム組成物の体積抵抗率が特に低くなりやすいなどの観点から、ヒドリンゴム、ニトリルゴム(NBR)が好ましい。
【0022】
ヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリンの単独重合体(CO)、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体(ECO)、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル二元共重合体(GCO)、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体(GECO)などを挙げることができる。
【0023】
ウレタンゴムとしては、分子内にエーテル結合を有するポリエーテル型のウレタンゴムなどを挙げることができる。ポリエーテル型のウレタンゴムは、両末端にヒドロキシル基を有するポリエーテルとジイソシアネートとの反応により製造できる。ポリエーテルとしては、特に限定されるものではないが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどを挙げることができる。ジイソシアネートとしては、特に限定されるものではないが、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどを挙げることができる。
【0024】
(b)特定のイオン導電剤は、ジアリルジメチルアンモニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(DAM・TFSI)、ジアリルジメチルアンモニウム・トリフルオロメタンスルホネート(DAM・TF)である。これらは、単独で用いても良いし、組み合わせて用いても良い。このDAM・TFSIの構造式を式1に、DAM・TFの構造式を式2に示す。
【0025】
【化1】

【0026】
【化2】

【0027】
DAM・TFSIおよびDAM・TFのジアリルジメチルアンモニウム(DAM)は、ゴム練り時に極性ゴム(a成分)内に分散した後、架橋時(加熱時)に、ラジカル存在下(架橋剤存在下)で、式3に示すように、ジアリルジメチルアンモニウム自体が高分子量化して極性ゴムに結合すると推測される。これにより、式3に示す構造で、極性ゴムの高分子骨格内に特定のイオン導電剤が取り込まれる。
【0028】
【化3】

【0029】
ここで、ジアリルジメチルアンモニウムが高分子量化するほど、導電性ゴム組成物の架橋体の比誘電率の値が大きくなると推測される。これにより、架橋体の荷電性能が高くなる。これは、ジアリルジメチルアンモニウムが高分子量化すると、N原子上の電荷密度が上昇するためと考えられる。
【0030】
また、ジアリルジメチルアンモニウムが高分子化して極性ゴムに結合することにより、導電性部材の通電時に、導電性ゴム弾性層内でのイオン導電剤の移動が抑えられる。これにより、導電性部材の通電時にイオン導電剤が消費されにくくなるため、通電による荷電性能の低下が抑制できると推測される。
【0031】
さらに、(b)特定のイオン導電剤において、アニオンのTFSIおよびTFは、構造中にフッ素基を多く含んでいるため、アニオン自体の塩基性が小さく、カチオンと比較的弱いイオン結合を形成する。そのため、これらのアンモニウム塩は、上記極性ゴム中でイオンに解離しやすく、特に比誘電率の値を大きくできる。これにより、架橋体の荷電性能を高くできる。また、(b)特定のイオン導電剤では、アニオンがTFSIやTFであるため、ジアリルジメチルアンモニウム自体が高分子量化すると推測される。仮にアニオンがClアニオンであると、Clアニオンは塩基性が高いため、上記極性ゴム中でイオンに解離しにくく、塩の状態では分子自体の自由度が低くなり、ジアリルジメチルアンモニウムが高分子量化しにくくなるものと推測される。
【0032】
(b)特定のイオン導電剤の含有量は、(a)極性ゴム100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.3〜5質量部の範囲内、さらに好ましくは0.5〜3質量部の範囲内である。含有量が0.1質量部未満では、架橋体の荷電性能を高める効果が低下しやすい。一方、含有量が10質量部を超えると、(b)特定のイオン導電剤が架橋体からブリードしやすくなり、導電性部材に接触する相手部材への汚染の原因になりやすい。
【0033】
(c)架橋剤としては、(a)極性ゴムを架橋する架橋剤であれば特に限定されるものではない。(c)架橋剤としては、硫黄架橋剤、過酸化物架橋剤、脱塩素架橋剤を挙げることができる。これらの架橋剤は、単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いても良い。
【0034】
硫黄架橋剤としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄、塩化硫黄、チウラム系加硫促進剤、高分子多硫化物などの従来より公知の硫黄架橋剤を挙げることができる。
【0035】
過酸化物架橋剤としては、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ケトンパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、ジアシルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイドなどの従来より公知の過酸化物架橋剤を挙げることができる。
【0036】
脱塩素架橋剤としては、ジチオカーボネート化合物を挙げることができる。より具体的には、キノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、6−メチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、6−イソプロピルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、5,8−ジメチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネートなどを挙げることができる。
【0037】
(c)架橋剤の含有量としては、(c)架橋剤がブリードしにくいなどの観点から、(a)極性ゴム100質量部に対して、好ましくは0.1〜3質量部の範囲内、より好ましくは0.3〜2.5質量部の範囲内、さらに好ましくは0.5〜2.5質量部の範囲内である。
【0038】
(c)架橋剤として脱塩素架橋剤を用いる場合には、脱塩素架橋促進剤を併用しても良い。脱塩素架橋促進剤としては、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(以下、DBUと略称する。)もしくはその弱酸塩を挙げることができる。脱塩素架橋促進剤は、DBUの形態として用いても良いが、その取り扱い面から、その弱酸塩の形態として用いることが好ましい。DBUの弱酸塩としては、炭酸塩、ステアリン酸塩、2−エチルヘキシル酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩、フェノール樹脂塩、2−メルカプトベンゾチアゾール塩、2−メルカプトベンズイミダゾール塩などを挙げることができる。
【0039】
脱塩素架橋促進剤の含有量としては、ブリードしにくいなどの観点から、(a)極性ゴム100質量部に対して、0.1〜2質量部の範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.3〜1.8質量部の範囲内、さらに好ましくは0.5〜1.5質量部の範囲内である。
【0040】
特定の導電性ゴム組成物においては、必要に応じて、カーボンブラックなどの電子導電剤、滑剤、老化防止剤、光安定剤、粘度調整剤、加工助剤、難燃剤、可塑剤、発泡剤、充填剤、分散剤、消泡剤、顔料、離型剤などの各種添加剤を1種または2種以上含有していても良い。
【0041】
本導電性部材においては、上記構成の特定の導電性ゴム組成物よりなる架橋体の比誘電率が23以上に設定されている。上記架橋体の比誘電率としては、より好ましくは40以上、さらに好ましくは50以上である。上記架橋体の比誘電率が23未満では、導電性部材の荷電性能が満足されない。なお、架橋体の比誘電率は、例えば、(a)極性ゴムの種類、(b)特定のイオン導電剤の種類、(b)特定のイオン導電剤の含有量などにより調整できる。
【0042】
特定の導電性ゴム組成物の架橋体から形成される導電性ゴム弾性層14の厚さとしては、特に限定されるものではないが、導電性ロール10、20の場合には、好ましくは0.1〜10mmの範囲内、より好ましくは0.5〜5mmの範囲内、さらに好ましくは1〜3mmの範囲内である。導電性ベルト30の場合には、好ましくは30〜300μmの範囲内、より好ましくは50〜200μmの範囲内である。
【0043】
特定の導電性ゴム組成物の架橋体から形成される導電性ゴム弾性層14の体積抵抗率としては、特に限定されるものではないが、好ましくは10〜1010Ω・cm、より好ましくは10〜10Ω・cm、さらに好ましくは10〜10Ω・cmの範囲内である。
【0044】
導電性ロール10、20において、軸体12は、導電性を有するものであれば特に限定されない。具体的には、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属製の中実体、中空体からなる芯金などを例示することができる。軸体12の表面には、必要に応じて、接着剤、プライマーなどを塗布しても良い。接着剤、プライマーなどには、必要に応じて導電化を行なっても良い。
【0045】
導電性ロール10、20において、表層16は、ロール表面の保護層などとして機能し得る。表層16を形成する主材料としては、特に限定されるものではなく、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、アミド樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂を挙げることができる。これらの樹脂は、変性されたものであっても良い。変性基としては、例えば、N−メトキシメチル基、シリコーン基、フッ素基などを挙げることができる。
【0046】
表層16には、導電性付与のため、カーボンブラック、グラファイト、c−TiO、c−ZnO、c−SnO(c−は、導電性を意味する。)、イオン導電剤(4級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤など)などの従来より公知の導電剤を適宜添加することができる。また、必要に応じて、各種添加剤を適宜添加しても良い。
【0047】
表層16の厚みは、特に限定されるものではないが、好ましくは0.01〜100μmの範囲内、より好ましくは0.1〜20μmの範囲内、さらに好ましくは0.3〜10μmの範囲内である。表層16の体積抵抗率は、好ましくは、10〜1012Ω・cm、より好ましくは、10〜1011Ω・cm、さらに好ましくは、10〜1010Ω・cmの範囲内である。
【0048】
導電性ロール20において、特定の導電性ゴム組成物で形成されない場合の内側の導電性ゴム弾性層18を形成する主材料としては、例えば、エチレン−プロピレンゴム(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム(NR)、ポリノルボルネンゴム、シリコーンゴム、ニトリルゴム(NBR、H−NBR)、クロロプレンゴム(CR)などを挙げることができる。これらは単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いても良い。
【0049】
この内側の導電性ゴム弾性層18には、導電性付与のため、カーボンブラック、グラファイト、c−TiO、c−ZnO、c−SnO(c−は、導電性を意味する。)、イオン導電剤(4級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤など)などの従来より公知の導電剤を適宜添加することができる。導電剤を配合することで、体積抵抗率が5×10〜1×10Ω・cmの範囲内の導電性を得ることができる。
【0050】
また、必要に応じて、各種添加剤を適宜添加しても良い。添加剤としては、増量剤、補強剤、加工助剤、硬化剤、加橋剤、架橋促進剤、発泡剤、酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、シリコーンオイル、滑剤、助剤、界面活性剤などを挙げることができる。
【0051】
この内側の導電性ゴム弾性層18の厚さとしては、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1〜10mmの範囲内、より好ましくは0.5〜5mmの範囲内、さらに好ましくは1〜3mmの範囲内である。また、体積抵抗率としては、特に限定されるものではないが、好ましくは10〜1010Ω・cm、より好ましくは10〜10Ω・cm、さらに好ましくは10〜10Ω・cmの範囲内である。
【0052】
導電性ベルト30において、表層34は、導電性ロール10、20の表層16と同様の構成であれば良い。
【0053】
導電性ロール10は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、軸体12をロール成形金型の中空部に同軸的に設置し、上記特定の導電性ゴム組成物を注入して、加熱・硬化させた後、脱型するか、あるいは、軸体12の表面に上記特定の導電性ゴム組成物を押出成形するなどにより、軸体12の外周に導電性ゴム弾性層14を形成する。次いで、形成した導電性ゴム弾性層14の外周に表層形成用組成物を塗工し、必要に応じて紫外線照射や熱処理を行うことにより、表層16を形成する。これにより、導電性ロール10を製造できる。
【0054】
表層形成用組成物は、上記主材料、導電剤、必要に応じて含有されるその他の添加剤を含有するものからなる。表層形成用組成物は、粘度を調整するなどの観点から、メチルエチルケトン、トルエン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン(MIBK)、THF、DMFなどの有機溶剤や、メタノール、エタノールなどの水溶性溶剤などの溶剤を適宜含んでいても良い。塗工方法としては、ロールコーティング法や、ディッピング法、スプレーコート法などの各種コーティング法を適用することができる。
【0055】
導電性ロール20は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、軸体12をロール成形金型の中空部に同軸的に設置し、上記内側の導電性ゴム弾性層18を形成する材料を注入して、加熱・硬化させた後、脱型するか、あるいは、軸体12の表面に上記内側の導電性ゴム弾性層18を形成する材料を押出成形するなどにより、軸体12の外周に内側の導電性ゴム弾性層18を形成する。次いで、内側の導電性ゴム弾性層18を形成した軸体12をロール成形金型の中空部に同軸的に設置し、上記特定の導電性ゴム組成物を注入して、加熱・硬化させた後、脱型するか、あるいは、内側の導電性ゴム弾性層18の表面に上記特定の導電性ゴム組成物を押出成形するなどにより、外側の導電性ゴム弾性層14を形成する。次いで、外側の導電性ゴム弾性層14の外周に表層形成用組成物を塗工し、必要に応じて紫外線照射や熱処理を行うことにより、表層16を形成する。これにより、導電性ロール20を製造できる。
【0056】
また、導電性ベルト30は、例えば次のようにして製造できる。まず、円筒形金型の表面に上記特定の導電性ゴム組成物をスプレーコーティングし、これを加熱・硬化させることにより、導電性ゴム弾性層32を形成する。次いで、導電性ゴム弾性層32の外周に表層形成用組成物をスプレーコーティングし、これを加熱・硬化させることにより、表層34を形成する。次いで、導電性ゴム弾性層32と円筒形金型との間にエアーを吹き付けて円筒形金型を抜き取ることにより、導電性ベルト30が製造できる。なお、上記特定の導電性ゴム組成物は、スプレーコーティングする際には、溶剤を適宜含んでいても良い。
【0057】
以上の構成の本導電性部材によれば、導電性ゴム弾性層が、極性ゴムと、特定のジアリルジメチルアンモニウム塩よりなるイオン導電剤と、架橋剤とを含有し、比誘電率が23以上となる導電性ゴム組成物の架橋体により形成されていることから、長期に渡り通電を行ったときにも、相手部材に対する荷電性能の低下を抑制できる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。なお、実施例は、軸体の外周に導電性ゴム弾性層と表層とがこの順に積層された2層構造の導電性ロールを例に挙げるものであるが、本発明はこの構成に限定されるものではない。
【0059】
(実施例1)
<DAM・TFSIの調製>
ジアリルジメチルアンモニウムクロリドとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸リチウムとを水系溶媒に添加し、室温で4時間攪拌することにより、ジアリルジメチルアンモニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(DAM・TFSI)を調製した。
【0060】
<導電性ゴム組成物の調製>
ヒドリンゴム(ECO、日本ゼオン社製、「HydrinT3106」)100質量部に対し、イオン導電剤としてDAM・TFSIを0.1質量部、架橋剤として硫黄(鶴見化学社製、「イオウ−PTC」)を2質量部添加し、これらを攪拌機により撹拌、混合して、実施例1に係る導電性ゴム組成物を調製した。
【0061】
<導電性ロールの作製>
(導電性ゴム弾性層の形成)
成形金型に芯金(直径6mm)をセットし、上記導電性ゴム組成物を注入し、170℃で30分加熱した後、冷却、脱型して、芯金の外周に、厚み1.5mmの導電性ゴム弾性層を形成した。
【0062】
(表層の形成)
N−メトキシメチル化ナイロン(ナガセケムテックス社製、「EF30T」)100質量部と、導電性酸化スズ(三菱マテリアル社製、「S−2000」)60質量部と、クエン酸1質量部と、メタノール300質量部とを混合して、表層形成用組成物を調製した。次いで、導電性ゴム弾性層の表面に表層形成用組成物をロールコートし、120℃で50分加熱して、導電性ゴム弾性層の外周に、厚み10μmの表層を形成した。これにより、実施例1に係る導電性ロールを作製した。
【0063】
(実施例2〜3)
導電性ゴム組成物の調製において、DAM・TFSIの配合量を表1に記載の配合量とした点以外は実施例1と同様にして、導電性ゴム組成物の調製および導電性ロールの作製を行った。
【0064】
(実施例4)
<DAM・TFの調製>
ジアリルジメチルアンモニウムクロリドとトリフルオロメタンスルホン酸リチウムとを水系溶媒に添加し、室温で4時間攪拌することにより、ジアリルジメチルアンモニウム・トリフルオロメタンスルホネート(DAM・TF)を調製した。
【0065】
<導電性ロールの作製>
導電性ゴム組成物の調製において、DAM・TFSIに代えてDAM・TFを用いた点以外は実施例1と同様にして、実施例4に係る導電性ゴム組成物の調製および導電性ロールの作製を行った。
【0066】
(実施例5〜6)
導電性ゴム組成物の調製において、DAM・TFの配合量を表1に記載の配合量とした点以外は実施例4と同様にして、導電性ゴム組成物の調製および導電性ロールの作製を行った。
【0067】
(実施例7〜8)
導電性ゴム組成物の調製において、ヒドリンゴムに代えて表1に記載の極性ゴムを用いた点以外は、実施例2と同様にして、導電性ゴム組成物の調製および導電性ロールの作製を行った。
【0068】
(各種イオン導電剤の調製)
<DAM・Brの調製>
N−メチルメタンアミンと臭化アリルとを反応させることにより、ジアリルジメチルアンモニウム・ブロミド(DAM・Br)を調製した。
<TBA・TFSIの調製>
テトラブチルアンモニウムクロリドとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸リチウムとを水系溶媒に添加し、室温で4時間攪拌することにより調製した。
<TBA・TFの調製>
テトラブチルアンモニウムクロリドとトリフルオロメタンスルホン酸リチウムとを水系溶媒に添加し、室温で4時間攪拌することにより調製した。
<TEA・TFSIの調製>
テトラエチルアンモニウムクロリドとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸リチウムとを水系溶媒に添加し、室温で4時間攪拌することにより調製した。
<TEA・TFの調製>
テトラエチルアンモニウムクロリドとトリフルオロメタンスルホン酸リチウムとを水系溶媒に添加し、室温で4時間攪拌することにより調製した。
【0069】
(比較例1〜7)
導電性ゴム組成物の調製において、DAM・TFSIに代えて表2に記載のイオン導電剤を用い、表2に記載の配合量とした点以外は、実施例1と同様にして、導電性ゴム組成物の調製および導電性ロールの作製を行った。
【0070】
(使用材料)
NBR:[日本ゼオン社製、ニポールDN212]
U:[TSEインダストリ社製、ミラセンCM]
DAM・Cl:[東京化成工業社製、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド]
【0071】
調製した各導電性ゴム組成物を用いてシート材の比誘電率を測定した。また、作製した各導電性ロールを用いて荷電性評価、ブリード性評価、画像評価を行った。測定方法および評価方法を以下に示す。
【0072】
(シート材の比誘電率)
各導電性組成物を用いて170℃で30分間プレス架橋成形を行い、厚さ2mmのシート材を得た。得られたシート材における一方の表面上に銀ペーストを塗布することにより、10×10mmの大きさの電極を設けた(ガード電極付き)。一方、電極を設けた面と反対側の面に対抗電極を設けた。LCZメーター(YHP製4276A)を用い、25℃、50%RH環境下、DC印加なし、AC印加電圧1V、周波数1kHzの条件で、静電容量C[F]を測定し、下記の式4によりシート材の比誘電率εを算出した。
【0073】
(式4)
ε=C×d/ε×S
【0074】
ただし、式4中、dは電極間距離=シート材の厚み(m)を示し、εは真空の誘電率(=8.855×10−12[F/m])を示し、Sは電極面積[m]を示す。
【0075】
(荷電性)
各導電性ロールを帯電ロールとしてCANON製MFP機(iR4570)のカートリッジに組み込み、23℃×53%RH環境にて、感光ドラムと帯電ロールとを接触させた状態で感光ドラム、帯電ロールともに60rpmの速度で回転させながら、帯電ロールに1800Hz、1.1kVpp、−600Vの電圧を印加した。このとき、帯電ロールの位置から感光ドラムの周方向に90°回った位置で、感光ドラムから2mm離した位置に表面電位計(トレックジャパン(株)製、「MODEL−370」)のプローブを配置し、暗所で感光ドラム中央部の表面電位(帯電量)を測定した。この際、2周目の波形の平均値が−580V以下の場合を良好「○」、−580V超〜−570V未満の場合をやや劣る「△」、−570V以上の場合を不良「×」とした。
【0076】
(ブリード)
各導電性ロールを40℃×90%RH環境下で1ヶ月放置した後、ロールの表面状態を確認した。表面状態に変化がなかった場合を特に良好「○」、表面にわずかにシワ、浮きが見られた場合を良「△」、表面に顕著にシワ、浮きが見られた場合を不良「×」とした。
【0077】
(画像評価)
各導電性ロールを帯電ロールとしてCANON製MFP機(iR4570)のカートリッジに組み込み、15℃×10%RHの環境下で、初期および60000枚複写後(60K後)のそれぞれについて、ハーフトーン画像出し(1枚)を行った。このハーフトーン画像で、濃度むらやスジ画像がなかったものを特に良好「○」、濃度むらやスジ画像がわずかに生じたものを良「△」、濃度むらやスジ画像が顕著に生じたものを不良「×」とした。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
比較例は、イオン導電剤のカチオン種あるいはアニオン種が本願の特定する種類のものではない。比較例1、6、7のように、イオン導電剤としてDAM・ClやDAM・Brを用いた場合では、アニオン自体の塩基性が大きすぎて極性ゴム中でイオン導電剤がイオン解離しにくい。また、ゴム架橋時に、DAMが高分子量化していない。さらに、ゴム練り時の分散も悪い。このため、シート材の比誘電率が低く、荷電性に劣っている。さらに、耐久時にイオン導電剤が消費され、耐久後の画像に不具合が生じている。比較例2〜5では、カチオン種が極性ゴムの骨格内に取り込まれるものではないため、耐久時にイオン導電剤が消費され、耐久後の画像に不具合が生じている。また、シート材の比誘電率が低く、荷電性にも劣っている。
【0081】
これに対し、実施例によれば、シート材の比誘電率が高く、また、荷電性に優れていることが確認できた。さらに、耐久後の画像に不具合が生じるのを抑制できることが確認できた。
【0082】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0083】
10、20 導電性ロール
12 軸体
14 導電性ゴム弾性層
16 表層
18 導電性ゴム弾性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ゴム弾性層を有する電子写真機器用導電性部材であって、
前記導電性ゴム弾性層は、
(a)極性ゴム、
(b)ジアリルジメチルアンモニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、および、ジアリルジメチルアンモニウム・トリフルオロメタンスルホネートから選択された1種以上のイオン導電剤、
(c)架橋剤、
を含有する導電性ゴム組成物の架橋体よりなり、
前記架橋体の比誘電率は23以上に設定されていることを特徴とする電子写真機器用導電性部材。
【請求項2】
前記(a)成分は、ヒドリンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、および、エポキシ化天然ゴムから選択された1種または2種以上の極性ゴムであることを特徴とする請求項1に記載の電子写真機器用導電性部材。
【請求項3】
前記(b)成分の含有量は、前記(a)成分100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真機器用導電性部材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−47871(P2012−47871A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188141(P2010−188141)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】