説明

電子写真用現像ローラ

【課題】導電性軸体と被覆層との層間接着性が良好で、多数枚(例えば、5000枚)プリントを行っても被覆層の剥がれが発生せず、ハーフトーン画像部に画像欠陥の無い高品質のプリント画像が継続して得られる優れた電子写真用現像ローラの提供。
【解決手段】導電性軸体の外周に、少なくとも導電剤と樹脂とを有する被覆層を直接形成して構成される電子写真用現像ローラにおいて、該導電性軸体の基材が快削鋼であり、該導電性軸体の表面が無電解メッキ法により形成されたメッキ層で被覆されていることを特徴とする電子写真用現像ローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真用現像ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
現在広く用いられている電子写真方式の画像形成方法は、電荷付与されたトナーを静電潜像担持体(通常電子写真感光体)上に形成した静電潜像に接触、或いは狭い間隙を介して対向させ、静電潜像をトナーにより顕像化する現像過程を経て形成された静電潜像担持体上のプリント画像を、普通紙等に転写した後、定着して最終画像を形成するものである。
【0003】
プリント画像を形成するための現像方法として、キャリアとトナーとから構成される2成分現像剤を用いてトナーを帯電させ現像する2成分現像方式や、トナーのみから構成される現像剤を搬送する現像ローラや現像剤規制部材などとの摩擦でトナーを帯電させ現像する1成分現像方式がある。この1成分現像方式ではキャリアを使用しないため、現像装置が簡略化でき、近年ではかなり幅広く使用されている。特に、近年のカラー化の流れに伴い、磁性体を含有しないトナーを用いる非磁性1成分現像方式はカラー化も可能であるため、注目されている。
【0004】
非磁性1成分現像方式は、2成分現像方式とは異なり、キャリアを使用せず、トナーのみを帯電部材と摩擦させ、或いは、現像ローラ面等に押圧することにより帯電させるものであり、現像器の機構が複雑でなく、且つコンパクトにできるという大きなメリットがある。その結果、通常、現像機構を4個以上必要とするカラー画像形成装置にも適用し易いと言う特徴も有する。特に近年、装置の軽量化、小型化が積極的に進められており、プリンターでは非磁性1成分現像剤を用いた現像方式が主流となっている。
【0005】
この非磁性1成分現像方式における現像ローラとしては、従来、導電性のシャフトの外周にシリコーンゴムを用いた弾性層を形成したものが用いられてきた。トナーを帯電させるには、金属板或いはローラ等の帯電部材を用いて現像ローラ上にトナーの薄層を形成すると共に、これと摩擦させることにより行うので、機構的には極めて単純な構成の現像器となる。
【0006】
この現像ローラは、金属性の或いは導電性樹脂の軸体の外周面にシリコーンゴム等のゴム状弾性体を用いた弾性層が形成されているが、トナーへの帯電付与或いはトナーの搬送性を付与するために、弾性層上に表面層が形成されることがある。この表面層にはトナーの付着や融着を防止するために、フッ素ゴムを用いることが知られている。弾性層上にフッ素ゴムの層を形成するためには、接着性を向上させる必要があり、弾性層表面をシランカップリング剤の中間層を形成させ、更にその上にフッ素ゴム等を主成分として用いた塗布層を形成することが知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0007】
しかしながら、近年の装置の小型化やプリントアウトタイムの短縮により、現像ローラの機能であるトナー搬送、帯電、現像、トナー入れ替えのサイクルが高速になり現像ローラの負荷が高まっている。特に、小型化という点で、軸体の外周面にシリコーンゴム等のゴム状弾性体を用いた弾性層を有する現像ローラを用いた場合、高速サイクルによる残留電荷の蓄積や、ローラ層の磨耗等の問題があった。
【0008】
そこで、軸体に直接被覆層を形成した構成の現像ローラが検討されている。軸体に直接被覆層を形成した構成の現像ローラは、ブレード等により外部から被覆層に力が加えられた場合、弾性層を介して形成される構成の現像ローラのような衝撃を吸収する層が無いため、被覆層が軸体から剥がされるような力が加えられる。そのため軸体と被覆層の層間で良好な接着性が要求される。
【0009】
軸体の基材としてステンレスを用い、その外周に直接被覆層を形成する検討がされている(例えば、特許文献2参照。)。
【0010】
また、軸体と被覆層との接着性を向上するため、軸体と被覆層との間に接着層を設ける検討がされている(例えば特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開平8−190263号公報
【特許文献2】特開2002−14535号公報
【特許文献3】特開平7−56434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記に記載された導電性軸体の外周に直接被覆層を形成した構成の電子写真用現像ローラでは、導電性軸体と被覆層との層間接着性が不十分で、多数枚プリントすると被覆層が剥がれたり、ハーフトーン画像部に画像欠陥が発生したりして高品質のプリント画像を継続して得ることができなかった。
【0012】
本発明は、導電性軸体と被覆層との層間接着性が良好で、多数枚(例えば、5000枚)プリントを行っても被覆層の剥がれが発生せず、ハーフトーン画像部に画像欠陥の無い高品質のプリント画像が継続して得られる優れた電子写真用現像ローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の課題は、下記に記載の何れかの構成により発現されるものである。
【0014】
1.導電性軸体の外周に、少なくとも導電剤と樹脂とを有する被覆層を直接形成して構成される電子写真用現像ローラにおいて、
該導電性軸体の基材が快削鋼であり、
該導電性軸体の表面が無電解メッキ法により形成されたメッキ層で被覆されていることを特徴とする電子写真用現像ローラ。
【0015】
2.前記メッキ層が、鉛フリーのメッキ液を用いて形成されたものであることを特徴とする前記1に記載の電子写真用現像ローラ。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電子写真用現像ローラ(以下、単に現像ローラともいう)は、導電性軸体(以下、単に軸体ともいう)と被覆層との層間接着性が良好で、多数枚(例えば、5000枚)プリントを行っても被覆層の剥がれが発生せず、ハーフトーン画像部に画像欠陥の無い高品質のプリント画像が継続して得られる優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
現像ローラの軸体として用いる基材中に組成の不均一な部分が有ると、切削加工時にバリや亀裂等が発生する。バリや亀裂等が有る軸体を用いると、被覆層用塗布液を塗布して被覆層を形成するときバリや亀裂等の部分が基点となり塗布むらが発生し、均一な塗膜を形成することができない。
【0018】
このバリや亀裂等のある軸体を用いて作製した現像ローラで画像形成すると、被覆層の剥がれが発生したり、ハーフトーン画像部に画像欠陥が発生したりして高品質のプリント画像を継続して得られない。
【0019】
本発明者等は、導電性軸体の外周に直接被覆層を形成した構成の現像ローラを用いて画像形成したとき、導電性軸体と被覆層との層間接着性が良好で、多数枚プリントを行っても画像欠陥の無い良好な画像を継続して得られる現像ローラの作製に用いる軸体について検討を行った。
【0020】
検討の結果、導電性軸体の基材に快削鋼を用いると、被削性、即ち、切りくず処理性、切削工具寿命に対する向上効果が大きく、バリや亀裂等の加工不良部の無い切削加工を行うことができ、且つ切削性も良好で生産性も優れていることを見いだした。
【0021】
この切削加工品の表面にメッキを施した軸体の外周に直接被覆層を設けて作製した現像ローラで画像形成を行うと、多数枚プリントしても膜剥がれや画像欠陥が発生せず、継続して高品質のプリント画質が得られることを見いだした。
【0022】
バリや亀裂等の切削不良が無くなった理由としては、切削加工中の昇温により融点以上に加熱された添加金属が溶出するため、溶出した添加金属がバイトと切りくずとの間で潤滑剤となり、切削バイトの摩擦抵抗が下がったことによると推察している。
【0023】
また、切削加工中の昇温により融点以上に加熱された添加金属の溶融金属脆化のため、切削バイト刃前方の変形領域を脆くさせ、被切削剤の剪断強度を下げる。更に、切りくずに割れを発生させやすくするため、切りくず分断性が向上したことによると推察している。
【0024】
本発明では、錆の発生防止等の目的で、切削加工した快削鋼の表面に無電解メッキ法によりメッキ層を施した導電性軸体とするものである。
【0025】
切削加工した快削鋼の表面にメッキ層を施した軸体は、現像ローラを長時間高温高湿(例えば、30℃、80%RHに7日間)の環境に放置しておいても、錆が発生せず、錆に起因する膜剥がれや画像欠陥の発生を防止する効果を有する。
【0026】
メッキ層は、無電解メッキにより形成する。尚、無電解メッキ液に鉛フリーのメッキ液を用いると、メッキ層中に鉛を含まなくなり、環境の面でも好ましい。
【0027】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0028】
《現像ローラの構成》
本発明の現像ローラは、導電性軸体の外周に、少なくとも導電剤と樹脂とを有する被覆層を直接形成して構成されたものである。
【0029】
図1は、本発明の現像ローラの一例を示す断面概略図である。
【0030】
図1に示す現像ローラ25は、円筒状の基材251の表面にメッキ層252を施した導電性軸体253の外周に被覆層254を設けたものである。
【0031】
〈層間接着力〉
本発明の現像ローラは、導電性軸体と被覆層の層間接着力が強いことが好ましい。
【0032】
導電性軸体と被覆層の層間接着力は、下記の方法で測定して得られた値で評価を行う。
【0033】
図2は、導電性軸体と被覆層の層間接着力の測定方法を説明するための模式図である。
【0034】
現像ローラ25を、図2(a)に示すように、ローラ中央部の被覆層254に対し、その外周に沿って、破線Xで示される幅2.5cmの切り込みを入れ、更に、上記被覆層12に対して現像ローラ25方向に切り込み(破線Y)を入れて、そこから塾対253の外周に設けた被覆層254を少し剥がし、図2(b)に示すように、剥がされた被覆層254の端部を「オートグラフAGS(島津製作所社製)」のグリップ5でつまみ、垂直に引き上げて(矢印Z方向)、どの程度の力で引き上げたら被覆層が、導電性軸体253から引きはがされ始めるか測定し層間接着力を評価する。
【0035】
具体的には、被覆層を100mm/minの速度で引き上げていって、負荷容量20Nまで上げる過程で、負荷が増加しなくても被覆層を引き上げていける負荷値を求め、その値を層間接着力とする。
【0036】
次に、本発明に係わる導電性軸体、被覆層について説明する。
【0037】
《導電性軸体》
本発明では、軸体の基材として快削鋼を用いることを特徴としている。
【0038】
本発明でいう快削鋼とは、特定量のマンガン元素、リン元素、硫黄元素、鉛元素、セレン元素、テルル元素等を単独或いは複合で添加した鋼材のことをいい、切削抵抗が低く、削りやすく、仕上げ精度に優れ、工作物の寸法を出すのが容易というメリットを有する。また、良好な機械精度特性を有することや、加工時に切粉が連続しない傾向であるため切粉の処理が行いやすいというメリットを有する。
【0039】
快削鋼が含有する元素の量は、各元素で適した範囲が有り、最近では、環境への対応を配慮して、いわゆる「Pbフリー快削鋼」と呼ばれる鉛元素を含有していない快削鋼もあり、この「Pbフリー快削鋼」に含有される元素の量は、具体的には、快削鋼総質量に対してマンガン元素を0.30〜1.35質量%、リン元素を0.02〜0.12質量%、及び、硫黄元素を0.08〜0.37質量%含有しているものを挙げることができる。
【0040】
一般の快削鋼としては、具体的には、快削鋼総質量に対してマンガン元素を0.30〜1.35質量%、リン元素を0.02〜0.09質量%、硫黄元素を0.28〜0.36質量%、及び、鉛元素を0.08〜0.40質量%含有しているものを挙げることができる。
【0041】
快削鋼中に含有する元素及びその質量は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法により測定することができる。
【0042】
高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(Inductively Coupled Plasma)とは、金属を酸やアルカリ等に溶解した溶液試料をArプラズマ中に噴霧し、励起発光した光を、それぞれの波長に分光し、その光強度から元素の種類と含有量を定量する方法である。同法は、微量域から高濃度まで光強度と含有量が直線関係にあり、それぞれ元素を同時に分析することができる。
【0043】
高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法の測定装置としては、「ULTIMA2000(堀場製作所製)」を用いることができる。
【0044】
導電性軸体は、現像ローラ表面に蓄積される電荷をリークさせる部材も兼ねるため、比抵抗が1×104Ω・cm以下のものを用いることが好ましい。尚、比抵抗は公知の方法により測定することができる。
【0045】
導電性軸体としては、その表面が無電解メッキ法により形成されたメッキ層を有するものを用いる。ここで、無電解メッキ法とは、メッキ液に含有される還元剤の酸化により放出される電子の作用で、メッキ液に含浸させた被メッキ物である導電性軸体表面に金属被膜を析出させてメッキ層を形成する方法である。
【0046】
一方、電解メッキ法は、通電による電子の作用で導電性軸体表面に金属被膜を形成するものである。
【0047】
メッキ層の膜厚は、1〜20μmが好ましく、3〜6μmがより好ましい。
【0048】
無電解メッキが好ましいという理由は明確ではないが、電解メッキの場合は軸体の基材に僅かなバリや亀裂等の欠陥があると、その欠陥部に電界が集中し電界強度分布の乱れによりメッキ膜厚の不均一が発生し、バリや亀裂等の欠陥が誇張されるため好ましくないと推測される。
【0049】
また、無電解メッキの方が処理時間は長くなるものの、メッキ層膜厚の均一性に優れるために高精度の膜厚が得られ、ピンホール等の欠陥も少ないために耐食性に優れていると考えている。
【0050】
無電解メッキの種類としては、ニッケルメッキ、銅メッキ、金メッキ等が挙げられるが、無電解メッキの中でも無電解ニッケルメッキがメッキ液の安定性やコストの面からより好ましく用いられている。
【0051】
無電解ニッケルメッキにおいては、メッキ液安定剤及び光沢付与剤として重金属化合物、特に鉛化合物が一般に使用されており、メッキ被膜中に100〜1000ppm程度の鉛が共析する。メッキ液の種類や使用条件によっては、メッキ被膜中への鉛の共析量が1000ppmを越える可能性があることから、鉛代替の金属、無機化合物、有機化合物を使用する鉛フリーのメッキ液を用いてメッキを行うことが、環境に優しく好ましい。
【0052】
《被覆層》
被覆層は、少なくとも導電剤(例えば、電子導電剤やイオン導電剤)と樹脂、必要に応じ非導電性充填剤を適宜配合して調製した塗布液を導電性軸体の外周面に塗布し、これを乾燥し、所望の場合にはこれを硬化させて形成することができる。
【0053】
〈被覆層の樹脂〉
被覆層の樹脂としては、特に限定されるものではないが、具体的には、シロキサン変性ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等の変性アルキッド樹脂、オイルフリーアルキッド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ウレタン樹脂等を挙げることができる。この内、自己膜補強性、トナー帯電性等の観点から、シロキサン変性ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂等が好ましく用いられる。中でも、良好な耐磨耗性が得られる点から、シロキサン変性ポリウレタン樹脂を用いることが特に好ましい。
【0054】
ウレタン樹脂とは、ポリヒドロキシ化合物とイソシアネート化合物を含むウレタン原料を反応させて得られたたもので、例えば、プレポリマーを架橋反応させる方法で得られたのや、ポリオールをワン・ショット法にてポリイソシアネー卜と反応させる方法で得られたものなどが挙げられる。
【0055】
この場合、ウレタン樹脂を得る際に用いられるポリヒドロキシル化合物としては、一般の軟質ポリウレタンフォームやウレタンエラストマーの製造に用いられるポリオール、例えば、末端にポリヒドロキシル基を有するポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリエステルポリオールが挙げられるほか、ポリブタジエンポリオールやポリイソプレンポリオール等のポリオレフィンポリオール、ポリオール中でエチレン性不飽和単量体を重合させて得られるいわゆるポリマーポリオール等の一般的なポリオールを使用することができる。また、イソシアネート化合物としては、同様に一般的な軟質ポリウレタンフォームやウレタンエラストマーの製造に使用されるポリイソシアネート、即ち、トリレンジイソシアネート(TDIと表すことがある)、粗製TDI、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDIと表すことがある)、粗製MDI、炭素数2〜18の脂肪族ポリイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネート及びこれらポリイソシアネートの混合物や変性物、例えば部分的にポリオール類と反応させて得られるプレポリマー等を用いることができる。特に被覆層をユニバーサル硬さを低くする目的でポリイソシアネートの混合比率を低くしてもよい。
【0056】
また、ウレタン樹脂は、ポリヒドロキシル化合物及びポリイソシアネートを含む、1液型や2液型のウレタン原料を用いて調製してもよいし、必要に応じてエポキシ樹脂やメラミン樹脂を架橋剤として用いてもよい。
【0057】
ポリアミド樹脂とは、ナイロン6、6・6、6・10、6・12、11、12、12・12及びそれらのポリアミドの異種モノマー間の重縮合から得られるポリアミドなどで、作業性の面からアルコール可溶性のものが好んで用いられている。例えばポリアミドの3元共重合体や4元共重合体の分子量を調整したもの、またはナイロン6やナイロン12をメトキシメチル化し、アルコールや水に可溶性としたものが挙げられる。
【0058】
また、アクリル樹脂とは、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルエタクリレート、これらの側鎖末端をヒドロキシアルキル基等で置換したもの、及び、これらの共重合体などである。
【0059】
アクリル樹脂を構成するモノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
【0060】
本発明で用いられる樹脂としては、シリコーン共重合ポリウレタン樹脂がより好ましい。シリコーン共重合ポリウレタン樹脂は、2官能以上の多価イソシアネート及び2官能以上の水酸基を持つシリコーン骨格を分子中に有する化合物から合成することができる。
【0061】
このシリコーン共重合ポリウレタン樹脂は特に限定されるものではないが、特公平7−33427号等に開示されるものを使用することができる。
【0062】
シロキサン変性ポリウレタン樹脂としては、例えばポリオールとイソシアネートと鎖伸長剤から得られ、且つエポキシ基と反応性を持つ官能基を有するポリウレタン樹脂(1)と、1分子中に1つの水酸基を持つエポキシ化合物(A)(以下、単にエポキシ化合物(A)と略す。)とアルコキシシラン部分縮合物(B)との脱アルコール反応によって得られるエポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物(2)とを反応させてなるアルコキシ基含有シロキサン変性ポリウレタン樹脂を用いることができるがこれに限定されるものではない。
【0063】
ポリウレタン樹脂(1)におけるエポキシ基と反応性を有する官能基は、ポリウレタン樹脂(1)の末端、主鎖の何れに存在していてもよい。かかる官能基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などの酸性基、アミノ基、水酸基、メルカプト基などが挙げることができる。エポキシ基との反応性や、官能基付与容易性の点から酸性基、アミノ基が好ましい。ポリウレタン樹脂(1)に酸性基を付与する方法は特に限定されないが、例えば前記の鎖伸長剤や重合停止剤として前述の官能基を有する化合物を使用することで、官能基を付与することができる。
【0064】
本発明に用いるポリウレタン樹脂(1)を製造する方法としては、高分子ポリオールとジイソシアネート化合物ならびに必要に応じて鎖伸長剤及び/または重合停止剤を、適当な溶媒中で一度に反応させる一段法、高分子ポリオールとジイソシアネート化合物とを、イソシアネート基過剰の条件で反応させ、高分子ポリオールの末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを調製し、次いでこれを適当な溶媒中で鎖伸長剤及び必要に応じて、重合停止剤と反応させる二段法等が挙げられる。均一なポリマー溶液をうる目的には二段法が好ましい。これら製造法において、使用される溶剤としては通常、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、その他ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノンなどの溶剤を単独または混合して使用できる。
【0065】
またポリウレタン樹脂(1)にアミノ基を付与する方法に限定はないが、例えばプレポリマーの末端イソシアネート基に対し、アミノ基が過剰になるようポリアミン類を反応させればよい。ポリウレタン樹脂(1)におけるエポキシ基反応性官能基の量は特に制限されないが、通常は0.1〜20KOHmg/gであることが好ましい。0.1KOHmg/g未満になると得られるポリウレタン樹脂−シリカハイブリッド体の柔軟性や耐熱性が低下し、また20KOHmg/gを超えるとポリウレタン樹脂−シリカハイブリッド体の耐水性が低下する傾向がある。尚、ポリウレタン樹脂中にはウレア結合を含むものが、層間接着性がより好ましい。
【0066】
本発明のエポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物(2)は、前記のように、エポキシ化合物(A)とアルコキシシラン部分縮合物(B)との脱アルコール反応によって得られるものである。
【0067】
かかるエポキシ化合物(A)としては、1分子中に水酸基を1つ持つエポキシ化合物であれば、エポキシ基の数は特に限定されない。また、エポキシ化合物(A)としては、分子量が小さいもの程、アルコキシシラン部分縮合物(B)に対する相溶性がよく、耐熱性や密着性付与効果が高いことから、炭素数が15以下のものが好適である。その具体例としては、エピクロロヒドリンと、水、2価アルコールまたはフェノール類とを反応させて得られる分子末端に1つの水酸基を有するモノグリシジルエーテル類;エピクロロヒドリンとグリセリンやペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールとを反応させて得られる分子末端に1つの水酸基を有するポリグリシジルエーテル類;エピクロロヒドリンとアミノモノアルコールとを反応させて得られる分子末端に1つの水酸基を有するエポキシ化合物;分子中に1つの水酸基を有する脂環式炭化水素モノエポキシド(例えば、エポキシ化テトラヒドロベンジルアルコール)などが例示できる。これらのエポキシ化合物の中でも、グリシドールが耐熱性付与効果の点で最も優れており、またアルコキシシラン部分縮合物(2)との反応性も高いため、最適である。
【0068】
またアルコキシシラン部分縮合物(B)としては、下記一般式(a)で表される加水分解性アルコキシシランモノマーを酸またはアルカリ水の存在下で加水分解し、部分的に縮合させて得られるものが用いられる。
【0069】
一般式(a):R1pSi(OR24-p
(式中、pは0または1を示す。R1は、炭素原子に直結した官能基を持っていてもよい低級アルキル基、アリール基または不飽和脂肪族残基を示す。R2はメチル基またはエチル基を示し、R2同士はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
このような加水分解性アルコキシシランモノマーの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、等のテトラアルコキシシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類が挙げられる。尚、これらアルコキシシラン部分縮合物(B)としては、前記例示のものを特に制限なく使用できるが、これら例示物の内の2種以上を混合使用する場合には、テトラメトキシシランを、アルコキシシラン部分縮合物(B)を構成する全てのアルコキシシランモノマー中70モル%以上用いて合成されたものが好ましい。尚、ポリウレタン樹脂−シリカハイブリッド体中に含まれるシラン骨格の割合が、1.0質量%以上30.0質量%以下とすることにより、非常に安定した接着性が発現される。
【0070】
アルコキシシラン部分縮合物(B)は、例えば次の一般式(b)または(c)で示される。
【0071】
【化1】

【0072】
(一般式(b)中、R1は、炭素原子に直結した官能基を持っていてもよい低級アルキル基、アリール基または不飽和脂肪族残基を示す。R2はメチル基またはエチル基を示し、R2同士はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。nは整数である。)
【0073】
【化2】

【0074】
(一般式(c)中、R1、R2は一般式(b)中のR1、R2と同じ。nは整数である。)
〈電子導電剤〉
電子導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム、銅、錫、ステンレス鋼等の各種導電性金属または合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン、酸化錫一酸化アンチモン固溶体、酸化錫一酸化インジウム固溶体等の各種導電性金属酸化物、これらの導電性材料で被膜された絶縁性物質などの微粉末を用いることができる。この内、カーボンブラックが、比較的容易に入手でき良好な帯電性が得られるので好ましく用いられる。
【0075】
カーボンブラックは、その種類には、特に制限はなく、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック等の従来公知の種々のカーボンブラックを使用することができる。カーボンブラックの配合量は、使用するカーボンブラックの種類によって異なるために特に限定されないが、通常、樹脂成分100質量部に対して5〜50質量部とするのが好ましく、10〜40質量部がより好ましい。この配合量は被覆層に要求される導電性及びユニバーサル硬さに応じて適宜設定される。
【0076】
〈イオン導電剤〉
イオン導電剤としては、従来から無機イオン塩や有機イオン塩として公知のものが、何れも適宜に選択使用できる。具体的には、Li、LiCl、NaI、NaBr、KI等のアルカリ金属ハライド、LiClO4、KCllO4、CuCl2Mg(ClO42等の過塩素酸塩、LiSCN、NaSCN、CsSCN等のチオシアン酸塩等のごとき無機イオン塩や、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加リン酸エステル塩、4級アンモニウム塩、ベタイン等の有機イオン塩を挙げることができる。これらの中で特に好ましいものとして、トリメチルオクタデシルアンモニウムパークロレート、テトラメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩を挙げることができる。このイオン導電剤は、1種類で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
イオン導電剤の配合量は、特に制限はなく各種状況に応じて適宜選定されるが、被覆層を形成する樹脂成分100質量部に対し0.001〜5質量部が好ましく、0.05〜2質量部がより好ましい。
【0078】
これにより、1×104〜1×1010Ω・cmの抵抗領域で、電気抵抗の位置ばらつきが少なく、且つ電気抵抗の電圧依存性が少ない上、温湿度の環境変化に対する電気抵抗の変動が少ない導電性を有する被覆層が得られる。
【0079】
次に、現像ローラの作製について説明する。
【0080】
《導電性軸体の作製》
導電性軸体の形状は、画像形成装置を小型、軽量、低コストにするため小径(例えば、外径5〜30mm)の薄肉厚(例えば、0.5〜2.0mm)の中空筒状の管の両端に、フランジを取り付けた形状のものが好ましい。
【0081】
軸体は、前記元素を含有する快削鋼をバイトを用い、目的の寸法、表面粗さの中空状の管に切削加工機で加工し、その表面に前記メッキ層を設けることにより作製することができる。切削加工機としては特に限定されず公知の切削加工機を用いることができる。
【0082】
《被覆層の作製》
導電性軸体の外周に被覆層を形成するする方法としては、上記構成部材(樹脂と導電剤、必要に応じ非導電性充填剤)を有機溶剤に溶解、分散した塗布液を軸体上に塗布する方法が好ましい。この塗布液の樹脂成分濃度は特に制限はなく、必要とする層厚に応じ、適宜調整すればよいが、樹脂成分濃度は塗布液中の固形物の分散性や安定性から10質量%以上であることが好ましい。
【0083】
塗布液の樹脂成分濃度を調製するために用いる溶剤は、上記樹脂成分を溶解することができるものであれば特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール、メチルエチルケトンなどのケトン類、シクロヘキサン、トルエン、キシレンなどが好ましく用いられる。
【0084】
被覆層の塗布方法としては、塗布液の粘度などに応じて、ディッピング、スプレー、ロールコートまたは刷毛塗り法などが挙げられるが、これらの中では、被覆層を均一に形成し易いディッピング、スプレー法が好ましい。
【0085】
被覆層の厚みは、1〜30μmが好ましく、5〜20μmがより好ましい。被覆層の厚みは、現像ローラより被覆層を含む断面試料を採取し、断面試料の顕微鏡写真より測定される。
【0086】
次に、本発明に係る現像装置、フルカラー画像形成装置について説明する。
【0087】
図3は、本発明に係る現像装置の一例を示す断面概略図である。
【0088】
図3に示す現像装置20は、現像ローラ25に隣接してバッファ室26を、バッファ室26に隣接してホッパ27等を有する。
【0089】
バッファ室26にはトナー規制部材であるブレード28が現像ローラ25に圧接させた状態で配置されている。ブレード28は、現像ローラ25上のトナーの帯電量及び付着量を規制するものである。また、現像ローラ25の回転方向に対してブレード28の下流側に、現像ローラ25上のトナー帯電量・付着量の規制を補助するための補助ブレード29を更に設けることも可能である。
【0090】
現像ローラ25には供給ローラ30が押圧されている。供給ローラ30は、図示しないモータにより現像ローラ25と同一方向(図中反時計回り方向)に回転駆動する。供給ローラ30は、導電性の円柱基体と基体の外周にウレタンフォームなどで形成された発泡層を有する。
【0091】
ホッパ27には非磁性一成分現像剤であるトナーTが収容されている。また、ホッパ27にはトナーTを撹拌する回転体31が設けられている。回転体31には、フィルム状の搬送羽根が取り付けられており、回転体31の矢印方向への回転によりトナーTを搬送する。搬送羽根により搬送されたトナーTは、ホッパ27とバッファ室26を隔てる隔壁に設けられた通路28を介してバッファ室26に供給される。尚、搬送羽根の形状は、回転体31の回転に伴い羽根の回転方向前方でトナーTを搬送しながら撓むとともに、通路32の左側端部に到達すると真っ直ぐの状態に戻るようになっている。このように羽根はその形状を湾曲状態を経て真っ直ぐに戻るようにすることでトナーTを通路32に供給している。
【0092】
また、通路32には通路32を閉鎖する弁321が設けられている。この弁はフィルム状の部材で、一端が隔壁の通路32右側面上側に固定され、トナーTがホッパ27から通路28に供給されると、トナーTからの押圧力により右側に押されて通路32を開けるようになっている。その結果、バッファ室26内にトナーTが供給される。
【0093】
また、弁321の他端には規制部材322が取り付けられている。規制部材322と供給ローラ30は、弁321が通路32を閉鎖した状態でも僅かな隙間を形成する様に配置される。規制部材322は、バッファ室26の底部に溜まるトナー量が過度にならないように調整するもので、現像ローラ25から供給ローラ30に回収されたトナーTがバッファ室26の底部に多量に落下しないように調整される。
【0094】
現像装置20では、画像形成時に現像ローラ25が矢印方向に回転駆動するとともに供給ローラ30の回転によりバッファ室26のトナーが現像ローラ25上に供給される。現像ローラ25上に供給されたトナーTは、ブレード28、補助ブレード29により帯電、薄層化された後、像担持体との対向領域に搬送され、像担持体上の静電潜像の現像に供される。現像に使用されなかったトナーは、現像ローラ25の回転に伴ってバッファ室26に戻り、供給ローラ30により現像ローラ25から掻き取られ回収される。
【0095】
図4は、フルカラー画像形成装置の一例を示す概略断面図である。
【0096】
図4に示すフルカラー画像形成装置においては、回転駆動される感光体ドラム10の周囲に、この感光体ドラム10の表面を所定の電位に均一に帯電させる帯電ブラシ111等が設けられている。
【0097】
また、帯電ブラシ111によって帯電された感光体ドラム10をレーザビームによって走査露光するレーザ走査光学系20が設けられており、このレーザ走査光学系20はレーザダイオード,ポリゴンミラー,fθ光学素子を内蔵した周知のものであり、その制御部にはイエロー,マゼンタ,シアン,ブラック毎の印字データがホストコンピュータから転送されるようになっている。そして、このレーザ走査光学系20は、上記の各色毎の印字データに基づいて、順次レーザビームとして出力し、感光体ドラム10上を走査露光し、これにより感光体ドラム10上に各色毎の静電潜像を順次形成するようになっている。
【0098】
また、このように静電潜像が形成された感光体ドラム10に各色のトナーを供給してフルカラーの現像を行うフルカラー現像装置30は、支軸33の周囲にイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各非磁性一成分トナーを収容させた4つの色別の現像器31Y、31M、31C、31Bkが設けられており、支軸33を中心として回転し、各現像器31Y、31M、31C、31Bkが感光体ドラム10と対向する位置に導かれるようにな
っている。
【0099】
また、このフルカラー現像装置30における各現像器31Y、31M、31C、31Bkにおいては、上記図4に示すように、回転してトナーを搬送する現像剤担持体(現像ローラ)25の外周面にトナー規制部材が圧接されており、このトナー規制部材により、現像ローラ25によって搬送されるトナーの量を規制すると共に、搬送されるトナーを帯電させるようになっている。尚、このフルカラー現像装置30においては、現像ローラによって搬送されるトナーの規制と帯電とを適切に行うために、トナー規制部材を2つ設けるようにしてもよい。
【0100】
そして、上記のようにレーザ走査光学系20によって感光体ドラム10上に各色の静電潜像が形成される毎に、上記のように支軸33を中心にして、このフルカラー現像装置30を回転させ、対応する色彩のトナーが収容された現像器31Y、31M、31C、31Bkを感光体ドラム10と対向する位置に順々に導き、各現像器31Y、31M、31C、31Bkにおける現像ローラ25を上記のように各色の静電潜像が順々に形成された感光体ドラム10上に向かって、帯電された各色のトナーを順々に供給して現像を行うようになっている。
【0101】
また、このフルカラー現像装置30より感光体ドラム10の回転方向下流側の位置には、中間転写体40として、回転駆動される無端状の中間転写ベルト40が設けられており、この中間転写ベルト40は感光体ドラム10と同期して回転駆動されるようになっている。そして、この中間転写ベルト40は回転可能な1次転写ローラ41により押圧されて感光体ドラム10に接触するようになっており、またこの中間転写ベルト40を支持する支持ローラ42の部分には、2次転写ローラ43が回転可能に設けられ、この2次転写ローラ43によって記録紙等の記録材Sが中間転写ベルト40に押圧されるようになっている。
【0102】
更に、前記のフルカラー現像装置30とこの中間転写ベルト40との間のスペースには、中間転写ベルト40上に残留したトナーを掻き取るクリーナ50が中間転写ベルト40に対して接離可能に設けられている。
【0103】
また、普通紙等の記録材Sを中間転写ベルト40に導く給紙手段60は、記録材Sを収容させる給紙トレイ61と、この給紙トレイ61に収容された記録材Sを1枚ずつ給紙する給紙ローラ62と、上記の中間転写ベルト40上に形成された画像と同期して給紙された記録材Sを中間転写ベルト40と上記の2次転写ローラ43との間に送るタイミングローラ63とで構成されており、このようにして中間転写ベルト40と2次転写ローラ43との間に送られた記録材Sを2次転写ローラ43によって中間転写ベルト40に押圧させて、中間転写ベルト40からトナー像を記録材Sへ押圧転写させるようになっている。
【0104】
一方、上記のようにトナー像が押圧転写された記録材Sは、エアーサクションベルト等で構成された搬送手段66により定着装置70に導かれるようになっており、この定着装置70において転写されたトナー像が記録材S上に定着され、その後、この記録材Sが垂直搬送路80を通して装置本体100の上面に排出されるようになっている。
【0105】
次に、このフルカラー画像形成装置を用いてフルカラーの画像形成を行う動作について具体的に説明する。
【0106】
まず、感光体ドラム10と中間転写ベルト40とを同じ周速度でそれぞれの方向に回転駆動させ、感光体ドラム10を帯電ブラシ11によって所定の電位に帯電させる。
【0107】
そして、このように帯電された感光体ドラム10に対して、上記のレーザ走査光学系20によりイエロー画像の露光を行い、感光体ドラム10上にイエロー画像の静電潜像を形成した後、この感光体ドラム10にイエロートナーを収容させた現像器31Yから前記のようにトナー規制部材によって荷電されたイエロートナーを供給してイエロー画像を現像し、このようにイエローのトナー像が形成された感光体ドラム10に対して中間転写ベルト40を1次転写ローラ41によって押圧させ、感光体ドラム10に形成されたイエローのトナー像を中間転写ベルト40に1次転写させる。
【0108】
このようにしてイエローのトナー像を中間転写ベルト40に転写させた後は、前記のようにフルカラー現像装置30を支軸33を中心にして回転させ、マゼンタトナーが収容された現像器31Mを感光体ドラム10と対向する位置に導き、上記のイエロー画像の場合と同様に、レーザ走査光学系20により帯電された感光体ドラム10に対してマゼンタ画像を露光して静電潜像を形成し、この静電潜像をマゼンタトナーが収容された現像器31Mによって現像し、現像されたマゼンタのトナー像を感光体ドラム10から中間転写ベルト40に1次転写させ、更に同様にして、シアン画像及びブラック画像の露光,現像及び1次転写を順々に行って、中間転写ベルト40上にイエロー,マゼンタ,シアン,ブラックのプリント画像を順々に重ねてフルカラーのトナー像を形成する。
【0109】
そして、中間転写ベルト40上に最終のブラックのトナー像が1次転写されると、記録材Sをタイミングローラ63により2次転写ローラ43と中間転写ベルト40との間に送り、2次転写ローラ43により記録材Sを中間転写ベルト40に押圧させて、中間転写ベルト40上に形成されたフルカラーのトナー像を記録材S上に2次転写させる。
【0110】
そして、このようにフルカラーのトナー像が記録材S上に2次転写されると、この記録材Sを上記の搬送手段66により定着装置70に導き、この定着装置70によって転写されたフルカラーのトナー像を記録材S上に定着させ、その後、この記録材Sを垂直搬送路80を通して装置本体100の上面に排出させるようになっている。
【実施例】
【0111】
以下に、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0112】
《現像ローラの作製》
以下の手順で現像ローラを作製した。
【0113】
〈軸体1の作製〉
(切削加工)
表1に記載の金属元素を含有する「快削鋼1」を、切削加工して直径16mmの中空筒状の管を作製した。
【0114】
(メッキ層の形成)
上記で作製した中空筒状の管を、無電解ニッケルメッキ液「トップニコロンPAL」(奥野製薬工業社製)を用いてメッキを行い、膜厚5μmのメッキ層を形成した。
【0115】
〈軸体2〜7の作製〉
軸体1の作製で用いた「快削鋼1」を、表1に記載の「快削鋼2〜5」に、表1に記載のメッキ層の膜厚になるようメッキ条件(メッキ時間)を変更した以外は同様にして「軸体2〜7」を作製した。
【0116】
〈軸体8、9の作製〉
軸体1の作製で用いた無電解ニッケルメッキ液「トップニコロンPAL」(奥野製薬工業社製)を、無鉛(鉛フリー)の無電解ニッケルメッキ液「トップニコロンBL」(奥野製薬工業社製)に変更、表1に記載のメッキ層の膜厚になるようメッキ条件を変更した以外は同様にして「軸体8、9」を作製した。
【0117】
〈軸体10の作製〉
軸体1の作製で準備した中空筒状の管に、メッキ層を設けなかったものを「軸体10」とした。
【0118】
〈軸体11の作製〉
軸体1の作製において、基材を快削鋼1から「ステンレス鋼」に変更し、メッキ層の形成を行わなかった以外は同様にして「軸体11」を作製した。
【0119】
表1に、軸体の基材、含有する金属元素とその質量%、メッキ液、メッキ層の膜厚を記す。
【0120】
【表1】

【0121】
尚、メッキ層の膜厚の測定は、蛍光X線法によって行った。具体的には、メッキ面にX線を照射し、メッキ層と素地から発生する蛍光X線の量を測定してメッキ厚さを測定する方法である。快削鋼を基準サンプルとし、同じ条件でメッキ処理をし、そのメッキ厚を測定して、軸体の表面に形成されるメッキ層の膜厚とした。
【0122】
〈被覆層形成用塗布液の調製〉
特開2002−220431号公報に記載されている方法で得た、Si含有量が、シリカ質量換算で6.0質量%のアルコキシ基含有シロキサン変性ポリウレタン樹脂(ウレタン樹脂という)100質量部をメチルエチルケトン400質量部、イソプロピルアルコール300質量部の混合溶媒に溶解した。この溶液にカーボンブラック(体積固有抵抗1×10-1Ωcm、数平均1次粒径50nm)30質量部、テトラメチルアンモニウムクロライド1.0質量部、数基準におけるメディアン径(D50)が20μmの架橋ウレタン樹脂粒子20質量部を混合分散させ、「被覆層形成用塗布液」を調製した。
【0123】
〈現像ローラ1の作製〉
「被覆層形成用塗布液」を「軸体1」の外周面にスプレー塗布、乾燥した後、120℃で1時間熱処理を行い、膜厚15μmの被覆層を形成し、「現像ローラ1」を作製した。
【0124】
〈現像ローラ2〜11の作製〉
現像ローラ1の作製で用いた「軸体1」を、表1に示す「軸体2〜11」に変更した以外は同様にして「現像ローラ2〜11」を作製した。
【0125】
《評価》
〈層間接着力評価〉
上記で作製した現像ローラの導電性軸体と被覆層の層間接着力は、図2に記載の測定装置を用い測定し評価した。尚、層間接着力が8.0N以上を合格とする。
【0126】
尚、上記で作製した現像ローラは、予め30℃、80%RHの環境に7日間放置してから層間接着力評価に用いた。
【0127】
〈実写評価〉
実写評価は、画像形成装置としてカラーレーザプリンター「Magicolor2430DL(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)」を準備し、現像装置に上記で作製した現像ローラを順次装着し、プリントして行った。
【0128】
尚、上記で作製した現像ローラは、予め30℃、80%RHの環境に7日間放置してから実写評価に用いた。
【0129】
現像ローラ初期の性能評価は、画素率20%(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色5%のフルカラーモード)の原稿(A4サイズ)を10枚プリントし、そのプリント画像品質で評価した。
【0130】
その後、画像率2%(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色0.5%のフルカラーモード)の原稿(A4サイズ)を5000枚プリントした。
【0131】
5000枚プリント後の性能評価は、初期性能評価と同じ画素率20%(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色5%のフルカラーモード)の原稿(A4サイズ)を10枚プリントし、被覆層の剥がれ状態、ハーフトーン画像部の画像欠陥で評価した。尚、評価は○以上を合格とする。
【0132】
〈被覆層の剥がれ〉
被覆層の剥がれは、5000枚プリント修了後の現像ローラを取り出し、被覆層の剥がれの状態を目視で評価した。
【0133】
評価基準
◎:被覆層の剥がれが全く認められず
○:被覆層の剥がれが被覆層端部に少し見られたが実用上問題なし
×:被覆層の剥がれが被覆層端部に見られ実用上問題有り。
【0134】
〈ハーフトーン画像部の画像欠陥(黒ポチ、白ポチも含む)〉
ハーフトーン画像部の画像欠陥は、5000枚プリント修了後、画像濃度0.5の黒のハーフトーン画像部をプリントし、得られたプリント画像を目視観察し評価した。
【0135】
評価基準
◎:ハーフトーン画像部に、画像欠陥の無い均一な画像
○:ハーフトーン画像部に、スジ状の薄い濃度むら、黒ポチ、白ポチが存在するが実用上問題なし
×:ハーフトーン画像部に、スジ状の濃度むらが数本、黒ポチ、白ポチが存在し実用上問題。
【0136】
表2に、評価に用いた現像ローラ、層間接着力、被覆層の剥がれ、ハーフトーン画像部の画像欠陥の評価結果を記す。
【0137】
【表2】

【0138】
表2に示すように、本発明に該当する実施例1〜9の「現像ローラ1〜9」は、全ての評価項目で良好な結果が得られたのに対し、本発明外の比較例1、2の「現像ローラ10、11」はこれらの評価項目の何れかに問題が見られ、本発明の効果が発現されないことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】本発明の現像ローラの一例を示す断面概略図である。
【図2】導電性軸体と被覆層の層間接着力の測定方法を説明するための模式図である。
【図3】本発明の現像ローラの一例を示す断面概略図である。
【図4】フルカラー画像形成装置の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0140】
25 現像ローラ
251 基材
252 メッキ層
253 軸体
254 被覆層
10 感光体ドラム
20 現像装置
26 バッファ室
27 ホッパ
28 規制ブレード
29 補助ブレード
30 供給ローラ
T トナー
31 回転体
32 通路
321 弁
322 規制部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性軸体の外周に、少なくとも導電剤と樹脂とを有する被覆層を直接形成して構成される電子写真用現像ローラにおいて、
該導電性軸体の基材が快削鋼であり、
該導電性軸体の表面が無電解メッキ法により形成されたメッキ層で被覆されていることを特徴とする電子写真用現像ローラ。
【請求項2】
前記メッキ層が、鉛フリーのメッキ液を用いて形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用現像ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−224944(P2008−224944A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−61610(P2007−61610)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】