説明

電子回路装置および電子回路装置の分別方法

【課題】簡単な構成で、使用済みの電子機器から貴金属やレアメタルなどを効率的に回収できるようにすることを目的とする。
【解決手段】本発明の電子回路装置は、配線パターンを有する回路基板と、この回路基板の前記配線パターンに電気的に接続されて実装されかつ貴金属やレアメタルなどの回収対象材料を含有する電子部品3とを有し、前記電子部品3に回収対象材料の有無を表示する材料表示パターン5を備え、前記材料表示パターン5は、紫外線の照射により発光する蛍光体材料により形成するとともに、回収対象材料に応じて発光色および発光パターンの少なくとも一方が異なるように形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は貴金属やレアメタルなどの回収対象材料を効率よくリサイクルすることが可能な電子回路装置および電子回路装置の分別方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、金、銀などの貴金属やパラジウム、インジウムなどのレアメタルは、その特性を活用してエレクトロニクスなどの分野に用いられており、その用途は拡大されている。特に、エレクトロニクス分野において、電子回路装置を構成する回路基板や回路基板に実装された電子部品に貴金属やレアメタルなどが多く含まれている。この貴金属やレアメタルなどは希少で有限であるため、使用済みの電子機器から、これらの貴金属やレアメタルなどを効率的に回収することが望まれている。
【0003】
従来、特許文献1に開示されているように、レアメタル情報を記録したICタグやRFIDチップなどの半導体チップを電子部品や電子機器に装着しておき、リサイクル時に、回収した電子部品や電子機器の半導体チップに記録されている情報を読み取ることにより、レアメタルを分別回収することが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−116639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されている技術内容では、ICタグやRFIDチップなどの半導体チップを使用することから、電子機器に使用する電子部品や、その電子部品を回路基板に実装した電子回路装置のコストが高くなり、広く一般に普及しにくい状況にある。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みなされたもので、簡単な構成で、使用済みの電子機器から貴金属やレアメタルなどを効率的に回収できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために本発明の電子回路装置は、配線パターンを有する回路基板と、この回路基板の前記配線パターンに電気的に接続されて実装されかつ回収対象材料を含有する電子部品とを有し、前記回路基板および電子部品の少なくとも一方に回収対象材料の有無を表示する材料表示パターンを備え、前記材料表示パターンは、紫外線の照射により発光する蛍光体材料により形成するとともに、回収対象材料に応じて発光色および発光パターンの少なくとも一方が異なるように形成したことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の電子回路装置の分別方法は、配線パターンを有する回路基板と、この回路基板の前記配線パターンに電気的に接続されて実装されかつ回収対象材料を含有する電子部品とを有し、前記回路基板および電子部品の少なくとも一方に回収対象材料の有無を表示する材料表示パターンを備えた電子回路装置の分別方法であって、前記材料表示パターンは、紫外線の照射により発光する蛍光体材料により形成するとともに、回収対象材料に応じて発光色および発光パターンの少なくとも一方が異なるように形成し、前記電子回路装置の材料表示パターンに紫外線を照射し、その紫外線の照射による材料表示パターンの発光色および発光パターンの少なくとも一方を読み取ることにより前記回収対象材料の有無を検出し、その検出結果に応じて電子回路装置を分別することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回路基板および電子部品の少なくとも一方に回収対象材料の有無を表示する材料表示パターンを備え、前記材料表示パターンは、紫外線の照射により発光する蛍光体材料により形成するとともに、回収対象材料に応じて発光色および発光パターンの少なくとも一方が異なるように形成したことにより、回収した電子回路装置に紫外線ランプにより紫外線を照射するだけで、使用されている貴金属やレアメタルの有無とその種類、含有量を認識することができる。しかも、使用されている貴金属やレアメタルの有無とその種類、含有量の認識について、材料表示パターンを作業者が目視することにより認識したり、または材料表示パターンからの発光色および発光パターンをテレビカメラで撮影し、その撮影画像を2値化信号などに信号変換した後、予め記憶されている信号と比較して判断する画像認識装置を用いて認識することができ、高価な測定装置を用いることなく、貴金属やレアメタルの有無とその種類、含有量を認識することができ、簡単な構成で、使用済みの電子機器から貴金属やレアメタルなどを効率的に回収できるようにすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態による電子回路装置を示す概略構成図
【図2】同装置の要部構成を示す平面図
【図3】本発明の一実施の形態による電子回路装置の分別方法に使用する装置の概略構成図
【図4】本発明の他の実施の形態による電子回路装置の分別方法に使用する装置の概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態による電子回路装置および電子回路装置の分別方法について、図1〜図4の図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は本発明の一実施の形態による電子回路装置を示す概略構成図である。電子回路装置1は、図1に示すように、配線パターンを有する回路基板2と、この回路基板2の前記配線パターンに電気的に接続されて実装されている電子部品3、4を備えている。前記電子部品3は、金、銀などの貴金属やパラジウム、インジウムなどのレアメタルの回収対象材料を含有するもので、電子部品4は、回収対象材料を含有しないものである。
【0013】
前記金、銀などの貴金属やパラジウム、インジウムなどのレアメタルの回収対象材料を含有する電子部品3の樹脂外装体3aにおいて、回路基板2に実装した際に外部から目視可能なように露出する上面3bには、図2(a)、(b)に示すように、回収対象材料の有無を表示する材料表示パターン5が配置されている。この材料表示パターン5は、波長が10nm〜380nmの紫外線の照射により可視光領域の波長で発光する蛍光体材料により形成されており、回収対象材料に応じて発光色および発光パターンが異なるように形成されている。ここで、蛍光体材料により材料表示パターン5を形成する方法としては、蛍光体材料とバインダーと溶媒などからなる蛍光体インクを作製し、その蛍光体インクをスクリーン印刷法、転写印刷法、インクジェット法により電子部品3の樹脂外装体3aの上面3bに塗布し、乾燥させることにより形成することができる。
【0014】
また、材料表示パターン5において、例えば、パラジウムが含有された電子部品3については、図2(a)に示すように、酸化イットリウムの母体に付活剤としてユーロピウムを添加した蛍光体材料により材料表示パターン5を形成しておくことにより、材料表示パターン5は、紫外線を照射することにより赤色の発光色に発光し、パラジウムが含有されていることを簡単に認識することができる。また、金が使用されている電子部品3については、図2(b)に示すように、ケイ酸亜鉛の母体に付活剤としてマンガンを添加した蛍光体材料により材料表示パターン5を形成しておくことにより、材料表示パターン5は、紫外線を照射することにより緑色に発光し、金が含有されていることを簡単に認識することができる。また、図2(a)、(b)の材料表示パターン5の例においては、回収対象材料の含有量に応じて発光面積が異なるように、発光パターンを異ならせている。
【0015】
なお、このような発光色と発光パターンの組み合わせにおいて、勿論発光色または発光パターンの少なくとも一方のみを用い、発光色または発光パターンを異ならせることにより、含有されている回収対象材料の種類と含有量を表示するようにしてもよく、さらには同一の電子部品3に、図2(a)のパターンと図2(b)のパターンとを組み合わせて形成し、含有されている回収対象材料の種類と含有量を表示するようにしてもよい。
【0016】
また、図1、図2に示す例においては、回収対象材料を含有する電子部品3の樹脂外装体3aに材料表示パターン5を形成したが、通常電子部品3の樹脂外装体3aには、製品品番や商標などが印刷されており、電子部品3の樹脂外装体3aに回収対象材料を示す材料表示パターン5を形成することが困難な場合がある。この場合は、片面接着層を有する樹脂製の絶縁性フィルムの表面に、金、銀などの貴金属やパラジウム、インジウムなどのレアメタルの回収対象材料を含有する電子部品3の製品品番を記載するとともに、材料表示パターン5を蛍光体インクを用いて記載し、その電子部品3の製品品番、材料表示パターン5を記載した絶縁性フィルムを回路基板2に貼り付けるように構成してもよい。
【0017】
次に、本発明の電子回路装置の分別方法について説明する。
【0018】
図3は、本発明による電子回路装置において、回収対象材料を含有する電子部品が使用されているかどうかを分別する際に使用する分別装置を示す概略構成図である。図3に示すように、分別装置11は、回収されてきた使用済み電子機器から取り出した電子回路装置1を搬送するための搬送コンベア12と、この搬送コンベア12の途中に設けられた検出ユニット13とから構成されている。
【0019】
検出ユニット13は、暗室14と、この暗室14の中に設置され、前記電子回路装置1に紫外線15を照射するための紫外線ランプなどの紫外線照射装置16と、紫外線15が照射されることによって発光する材料表示パターン5からの発光色および発光パターンの検出を行うテレビカメラによる発光パターン検出装置17と、この発光パターン検出装置17からの撮影画像を2値化信号などに信号変換した後、予め記憶されている信号と比較することにより、材料表示パターン5が存在するかどうかの判断、含有されている回収対象材料の種類および含有量を判断する画像認識処理装置18とを備えている。
【0020】
この図3に示す例においては、搬送コンベア12によって検出ユニット13に搬送されてきた電子回路装置1に紫外線15を照射し、その紫外線15の照射による電子部品3の材料表示パターン5からの発光色および発光パターンを読み取ることにより、電子部品3に含有されている回収対象材料の有無、種類、含有量を検出し、その検出結果に応じて、作業者が分別するものである。
【0021】
ここで、本発明においては、紫外線照射による材料表示パターン5からの発光を利用して、回収対象材料の有無、種類などを表示できるため、作業者の目視による判別も可能で、画像認識処理装置18を設けなくても、作業者が発光パターン検出装置17からの撮影画像を見て、回収対象材料の有無、種類などの判別を行うことができる。
【0022】
また、図4に示すように、図3に示す分別装置に、さらに分別ユニット19を追加することにより、自動で分別することも可能である。
【0023】
この図4に示す分別装置は、電子回路装置1の搬送方向において、検出ユニット13の後方に、画像認識処理装置18からの回収対象材料の有無、種類、含有量などを表す判別信号に基づき動作する分別ユニット19を設置したもので、分別ユニット19は、画像認識処理装置18からの判別信号に基づき、搬送コンベア12上を搬送されてくる電子回路装置1を挟んで、種別毎に設けた回収容器(図示せず)に分別して入れるものである。
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、配線パターンを有する回路基板2と、この回路基板2の前記配線パターンに電気的に接続されて実装されかつ回収対象材料を含有する電子部品3とを有し、前記電子部品3に回収対象材料の有無を表示する材料表示パターン5を備えた電子回路装置1において、材料表示パターン5は、紫外線の照射により発光する蛍光体材料により形成するとともに、回収対象材料に応じて発光色および発光パターンの少なくとも一方が異なるように形成し、前記電子回路装置1の材料表示パターン5に紫外線15を照射し、その紫外線15の照射による材料表示パターン5の発光色および発光パターンの少なくとも一方を読み取ることにより前記回収対象材料の有無を検出し、その検出結果に応じて電子回路装置1を分別するもので、回収した電子回路装置に紫外線ランプにより紫外線を照射するだけで、使用されている貴金属やレアメタルの有無とその種類、含有量を認識することができる。しかも、使用されている貴金属やレアメタルの有無とその種類、含有量の認識について、材料表示パターンを作業者が目視することにより認識したり、または材料表示パターンからの発光色および発光パターンをテレビカメラで撮影し、その撮影画像を2値化信号などに信号変換した後、予め記憶されている信号と比較して判断する画像認識装置を用いて認識することができ、高価な測定装置を用いることなく、貴金属やレアメタルの有無とその種類、含有量を認識することができ、簡単な構成で、使用済みの電子機器から貴金属やレアメタルなどを効率的に回収できるようにすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
以上のように本発明は、簡単な構成で、使用済みの電子機器から貴金属やレアメタルなどを効率的に回収する上で有用な発明である。
【符号の説明】
【0026】
1 電子回路装置
2 回路基板
3、4 電子部品
11 分別装置
12 搬送コンベア
13 検出ユニット
15 紫外線
16 紫外線照射装置
17 発光パターン検出装置
18 画像認識処理装置
19 分別ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線パターンを有する回路基板と、この回路基板の前記配線パターンに電気的に接続されて実装されかつ回収対象材料を含有する電子部品とを有し、前記回路基板および電子部品の少なくとも一方に回収対象材料の有無を表示する材料表示パターンを備え、前記材料表示パターンは、紫外線の照射により発光する蛍光体材料により形成するとともに、回収対象材料に応じて発光色および発光パターンの少なくとも一方が異なるように形成したことを特徴とする電子回路装置。
【請求項2】
前記回収対象材料は、貴金属またはレアメタルであることを特徴とする請求項1に記載の電子回路装置。
【請求項3】
配線パターンを有する回路基板と、この回路基板の前記配線パターンに電気的に接続されて実装されかつ回収対象材料を含有する電子部品とを有し、前記回路基板および電子部品の少なくとも一方に回収対象材料の有無を表示する材料表示パターンを備えた電子回路装置の分別方法であって、前記材料表示パターンは、紫外線の照射により発光する蛍光体材料により形成するとともに、回収対象材料に応じて発光色および発光パターンの少なくとも一方が異なるように形成し、前記電子回路装置の材料表示パターンに紫外線を照射し、その紫外線の照射による材料表示パターンの発光色および発光パターンの少なくとも一方を読み取ることにより前記回収対象材料の有無を検出し、その検出結果に応じて電子回路装置を分別することを特徴とする電子回路装置の分別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−94609(P2012−94609A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239241(P2010−239241)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】