電子放出源の形成用組成物、これを利用して製造された電子放出源、該電子放出源を含む電子放出素子、及び前記電子放出源の製造方法
【課題】電子放出源の形成用組成物、これを利用して製造された電子放出源、該電子放出源を含む電子放出素子、及び前記電子放出源の製造方法を提供する。
【解決手段】20℃ないし25℃の温度及び0.01l/sないし100l/sの測定条件下での揺変性値が10,000Pa/sないし50,000Pa/sであるか、または20℃ないし25℃の温度、1Paないし10Pa及び0.05Hzないし100Hzの測定条件下での粘弾性(tanδ、粘度係数/保存係数)値が2ないし5である電子放出源の形成用組成物、これを利用して製造された電子放出源、電子放出源を含む電子放出素子、及び電子放出源の製造方法。これにより、電子放出源の形成用組成物は、印刷特性及びレベリング特性が優秀であるので、工程安定性が確保されて電子放出素子内の電子放出源の形成に効果的に使われうる。
【解決手段】20℃ないし25℃の温度及び0.01l/sないし100l/sの測定条件下での揺変性値が10,000Pa/sないし50,000Pa/sであるか、または20℃ないし25℃の温度、1Paないし10Pa及び0.05Hzないし100Hzの測定条件下での粘弾性(tanδ、粘度係数/保存係数)値が2ないし5である電子放出源の形成用組成物、これを利用して製造された電子放出源、電子放出源を含む電子放出素子、及び電子放出源の製造方法。これにより、電子放出源の形成用組成物は、印刷特性及びレベリング特性が優秀であるので、工程安定性が確保されて電子放出素子内の電子放出源の形成に効果的に使われうる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子放出源の形成用組成物、これを利用して製造された電子放出源、該電子放出源を含む電子放出素子、及び前記電子放出源の製造方法に係り、より具体的には、印刷特性及びレベリング特性に優れて工程安定性が確保されることによって、電子放出素子内の電子放出源の形成に効果的に使われうる電子放出源の形成用組成物、これを利用して製造された電子放出源、該電子放出源を含む電子放出素子、及び前記電子放出源の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子放出素子は、アノード電極とカソード電極との間に電圧を印加して電界を形成することによって、カソード電極の電子放出源から電子を放出させ、この電子をアノード電極側の蛍光物質に衝突させて発光させるディスプレイ装置である。
【0003】
電子伝導性に優れた炭素ナノチューブ(Carbon Nano Tube:CNT)を含むカーボン系物質は、伝導性及び電界集中効果が優秀であり、仕事関数が小さくて電界放出特性が優秀で低電圧駆動が容易であり、大面積化できるので電子放出素子の理想的な電子放出源として期待されている。
【0004】
従来技術による組成物は、カーボンナノチューブ粉末、ポリマー及び有機溶媒を含むビヒクル、無機質系バインダー及びその他の添加剤を含み、例えば、特許文献1には、カーボンナノチューブ粉末、ガラスフリット、アクリレート系樹脂、エチルセルロース、光開始剤及び有機溶媒を含む電子放出表示素子用カーボンナノチューブエミッタペースト組成物が開示されている。
【0005】
しかし、このような従来技術による組成物において、揺変性及び粘弾性数値が所定範囲内に調節されない場合には、工程上印刷機での連続印刷が困難であり、印刷後基板表面でのレベリング特性がよくないという問題点があった。
【特許文献1】大韓民国特許出願公開第2003−0083790号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、前述したような従来技術の問題点を解決するためのものであって、電子放出源の形成用組成物の揺変性値及び粘弾性(tanδ、粘度係数/保存係数)値を最適の範囲内に調節することによって、印刷特性及びレベリング特性を向上させた電子放出源の形成用組成物、これを利用して製造された電子放出源、該電子放出源を含む電子放出素子、及び前記電子放出源の製造方法を提供することを目的とする。なお、本明細書において、粘弾性値tanδは、粘度係数(損失弾性率:loss modulus)を保存係数(貯蔵弾性率:storage modulus)で除算したものであり、δは位相角である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するために、本発明はその一具現例で、20℃ないし25℃の温度及び0.01l/sないし100l/sの測定条件下での揺変性値が10,000Pa/sないし50,000Pa/sであるか、または20℃ないし25℃の温度、1Paないし10Pa及び0.05Hzないし100Hzの測定条件下での粘弾性(tanδ、粘度係数/保存係数)値が2ないし5である電子放出源の形成用組成物を提供する。
【0008】
本発明は他の具現例で、前記電子放出源の形成用組成物を利用して製造された電子放出源を提供する。
本発明はさらに他の具現例で、基板と、前記基板上に形成されたカソード電極と、
前記基板上に形成されたカソード電極と電気的に連結されるように形成され、前記電子放出源と、を備えた電子放出素子を提供する。
【0009】
本発明はさらに他の具現例で、前記電子放出源の形成用組成物を提供する工程と、基板上に前記電子放出源の形成用組成物を印刷する工程と、前記印刷された電子放出源の形成用組成物を焼成する工程と、前記焼成された結果物を活性化させて電子放出源を得る工程と、を含む電子放出源の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電子放出源の形成用組成物は、印刷特性及びレベリング特性に優れた電子放出源の形成用組成物を提供でき、このような電子放出源の形成用組成物を使用して電子放出源を製造する場合、工程安定性が確保できるので、効果的に電子放出素子を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明による電子放出源の形成用組成物は、揺変性値及び粘弾性(tanδ、粘度係数/保存係数)値が最適の範囲内に調節されることによって、印刷特性及びレベリング特性が従来技術による電子放出源の形成用組成物に比べて優れてあり、したがって、工程安定性が確保されて電子放出素子内の電子放出源の形成にさらに効果的に使われうる。
【0012】
本発明では、電子放出源の形成用組成物の揺変性値及び粘弾性(tanδ、粘度係数/保存係数)値を最適の範囲内に調節することによって、印刷特性及びレベリング特性を向上させようとした。
【0013】
具体的に、揺変性はせん断力を上昇させてから下降させた時のせん断力の差として算出でき、粘弾性は、周波数を変化させつつ粘性及び弾性を測定することによって得られうる。
【0014】
揺変性及び粘弾性は、電子放出源の形成用組成物の有機物質、溶媒及び無機物質の組成比によって影響を受けるが、従来技術による電子放出源の形成用組成物はほぼ200,000Pa/s以上の揺変性数値及び5以上の粘弾性数値を持ち、このような値を持つ電子放出源の形成用組成物は工程上印刷機での連続印刷が難しく、印刷後の基板表面でのレベリング特性が良好でないという問題点があった。
【0015】
本発明による一具現例で、電子放出源の形成用組成物はカーボン系物質及びビヒクルを含む。
望ましくは、前記電子放出源の形成用組成物は、全体組成物100重量部に対して、0.1重量部ないし30重量部のカーボン系物質及び70重量部ないし99.9重量部のビヒクルを含む。
【0016】
本発明による組成物中、カーボン系物質は、伝導性及び電子放出特性に優れて、電子放出素子の作動時にアノード部の蛍光膜に電子を放出させて蛍光体を励起させる役割を行う。このようなカーボン系物質の非制限的な例には、カーボンナノチューブ、グラファイト、ダイアモンド及びフラーレンなどが含まれる。このうち、カーボンナノチューブが望ましい。
【0017】
カーボンナノチューブは、グラファイトシートがナノサイズの直径に丸く巻かれてチューブ状をなしているカーボン同素体であって、単一壁ナノチューブ及び多重壁ナノチューブをいずれも使用できる。本発明のカーボンナノチューブは、熱化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition:以下、“CVD法”ともいう)、DCプラズマCVD法、RFプラズマCVD法、マイクロ波プラズマCVD法のようなCVD法を利用して製造されたものでありうる。
【0018】
本発明による組成物のうち、ビヒクルは、電子放出源の形成用組成物の粘度及び印刷性を調節する役割を行うものであって、これはポリマー成分及び有機溶媒成分を含む。
ビヒクル内に含まれるポリマー成分についての非制限的な例には、エチルセルロース、ニトロセルロースのようなセルロース系樹脂;ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート及びウレタンアクリレートのようなアクリル系樹脂;及びビニル系樹脂などがあり、その含有量はビヒクル100重量部に対して3重量部ないし20重量部でありうる。
【0019】
ビヒクル内に含まれる有機溶媒成分についての非制限的な例には、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、テルピネオール(TP)、トルエン、テキサノール及びブチルカルビトール(BC)などがあり、その含有量は、ビヒクル100重量部に対して80重量部ないし97重量部でありうる。
【0020】
前記電子放出源の形成用組成物は、カーボン系物質及びビヒクル以外にも、添加剤をさらに含むことができ、このような添加剤は、カーボンナノチューブと基板との接着力を向上させる役割を行う接着成分として、無機接着成分、有機接着成分、及び低融点金属からなる群から1種以上選択されたものを含むことができ、それ以外にも、フィラー、感光性樹脂、粘度改善剤、解像度改善剤、光開始剤、分散剤、消泡剤などをさらに含むことができ、前記添加剤の含有量は全体組成物100重量部に対して0.5重量部ないし30重量部でありうる。
【0021】
前記フィラーは、基板と十分に接着されていないカーボンナノチューブの伝導性を向上させ、電子放出源の形成用組成物の揺変性及びその他の物性を調節するためのものであり、このようなフィラーの具体的な例には、これらに制限されるものではないが、Ag、Al、Pd、Al2O3などが使われうる。
【0022】
本発明は他の具現例で、前記電子放出源の形成用組成物を利用して製造された電子放出源を提供する。
本発明の電子放出源は、本発明による電子放出源の形成用組成物を利用したペースト法によって形成できる。
【0023】
ペースト法を利用して電子放出源を形成する場合、本発明の電子放出源は、接着成分及び接着成分の焼成結果物のうち一つ以上を含むことができる。前記接着成分は、カーボンナノチューブと基板との接着力を向上させる役割を行うものであって、無機接着成分の具体的な例には、ガラスフリット、シラン、水ガラスなどが含まれ、有機接着成分の具体的な例には、エチルセルロース、ニトロセルロースのようなセルロース系樹脂;ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート及びウレタンアクリレートのようなアクリル系樹脂;ビニル系樹脂などが含まれ、低融点金属も前記接着成分として利用できる。
【0024】
本発明はさらに他の具現例で、基板と、前記基板上に形成されたカソード電極と、前記基板上に形成されたカソード電極と電気的に連結されるように形成された前記電子放出源と、を備えた電子放出素子を提供する。
【0025】
図1は、本発明による電子放出素子の部分断面図であって、代表的に3極管構造の電子放出素子を図示した。
図示したように、電子放出素子200は、上板201と下板202とを備え、前記上板は上面基板190、前記上面基板の下面190aに配置されたアノード電極180、前記アノード電極の下面180aに配置された蛍光体層170を備える。
【0026】
前記下板202は、内部空間を形成するように所定の間隔をおいて前記上面基板190と対向して平行に配置される下面基板110、前記下面基板110上にストライプ状に配置されたカソード電極120、前記カソード電極120と交差するようにストライプ状に配置されたゲート電極140、前記ゲート電極140と前記カソード電極120との間に配置された絶縁体層130、前記絶縁体層130と前記ゲート電極140との一部に形成された電子放出源ホール169、前記電子放出源ホール169内に配置されて前記カソード電極120と通電され、前記ゲート電極140より低く配置される電子放出源160を備える。
【0027】
前記上板201と下板202とは、大気圧より低い圧力の真空に維持され、前記真空により発生する前記上板と下板との圧力を支持し、発光空間210を区画するようにスペーサ192が前記上板と下板との間に配置される。
【0028】
前記アノード電極180は、前記電子放出源160から放出された電子の加速に必要な高電圧を印加して、前記電子が前記蛍光体層170に高速で衝突可能にする。前記蛍光体層は、前記電子により励起されて高エネルギーレベルから低エネルギーレベルに落ちつつ可視光を放出する。カラー電子放出素子の場合には、単位画素をなす複数の前記発光空間210それぞれに赤色発光、緑色発光、青色発光の蛍光体層が前記アノード電極の下面180aに配置される。
【0029】
前記ゲート電極140は、前記電子放出源160から電子を容易に放出させる機能を担い、前記絶縁体層130は、前記電子放出源ホール169を区画し、前記電子放出源160と前記ゲート電極140とを絶縁する機能を担う。
電界形成により電子を放出する前記電子放出源160は、本発明による電子放出源の形成用組成物を利用して製造された電子放出源160である。
【0030】
本発明はさらに他の具現例で、前記電子放出源の形成用組成物を提供する工程と、基板上に前記電子放出源の形成用組成物を印刷する工程と、前記印刷された電子放出源の形成用組成物を焼成する工程と、前記焼成された結果物を活性化させて電子放出源を得る工程と、を含む電子放出源の製造方法を提供する。
【0031】
本発明による電子放出素子の製造方法の一具現例は、次の通りである。
まず、電子放出源の形成用組成物を準備する。電子放出源の形成用組成物はカーボンナノチューブ及びビヒクルを含み、これは前述した方法によって製造できる。
【0032】
次いで、準備された電子放出源の形成用組成物を基板に印刷する。前記“基板”とは、電子放出源が形成される基板であって、当業界で通常的に使われる基板を使用できる。
印刷方式は、電子放出源の形成用組成物が感光性樹脂を含む場合と感光性樹脂を含まない場合とによって異なる。電子放出源の形成用組成物が感光性樹脂を含む場合には、別途のフォトレジストパターンが不要である。すなわち、基板上に感光性樹脂を含む電子放出源の形成用組成物を印刷でコーティングし、これを所望の電子放出源の形成領域に沿って露光及び現像する。一方、電子放出源の形成用組成物が感光性樹脂を含まない場合には、別途のフォトレジスト膜パターンを利用したフォトリソグラフィ工程が必要である。すなわち、フォトレジスト膜を利用してフォトレジスト膜パターンをまず形成した後、前記フォトレジスト膜パターンを利用して電子放出源の形成用組成物を印刷で供給する。
【0033】
この後、印刷された電子放出源の形成用組成物を焼成させる。前記焼成工程を通じてカーボンナノチューブと基板との接着力が向上し、一部以上の接着成分の溶融及び固形化によって耐久性も向上し、ガス抜け(outgasing)も最小化できる。焼成温度は、電子放出源の形成用組成物に含まれたビヒクルの揮発及び接着成分の焼結可能温度及び時間を考慮して決定されねばならない。通常的な焼成温度は、350℃ないし500℃、望ましくは450℃である。焼成温度が350℃未満ならばビヒクルなどの揮発が十分になされないという問題点が発生し、焼成温度が500℃を超過すればカーボンナノチューブ損傷の問題点が発生しうるためである。
【0034】
この後、焼成結果物を活性化して電子放出源を得る。前記活性化工程は、例えば、熱処理工程を通じてフィルム形態に硬化されうるポリイミド系高分子を含む電子放出源の表面処理剤を前記焼成結果物上に塗布した後、これを熱処理した後、前記熱処理で形成されたフィルムを剥離することによって行われうる。また、前記活性化工程は、所定の駆動源で駆動されるローラ表面に接着力を持つ接着部を形成して、前記焼成結果物の表面に所定の圧力で加圧することによって行われてもよい。このような活性化工程を通じて電子放出源の表面にカーボンナノチューブが露出されるか、カーボンナノチューブの垂直配向状態が調節できる。
【0035】
以下、本発明の望ましい実施例及び比較例を記載する。下記の実施例は本発明をさらに明確に表現するための目的で記載されるものであるだけで、本発明の内容が下記の実施例に限定されるものではない。
【0036】
<カーボンナノチューブの製造>
電気放電法によって本発明によるカーボンナノチューブを製造し、図2には、このような電気放電法を実行する電気放電装置の構造図を簡略に示した。前記方法では、二つのグラファイトや金属棒を負極41と正極42とし、両電極間に直流電源を印加して電極間に放電を起こした。
【0037】
このような放電により発生した多量の電子は正極に移動して正極棒41に衝突し、この時、電子の衝突によって正極として使われたグラファイト棒から落ちた炭素クラストは、低温で冷却されている負極42のグラファイト棒の表面に凝縮されてカーボンナノチューブが製造される。
【0038】
<電子放出源の形成用組成物の製造>
[実施例1]
前記方法によって製造されたカーボンナノチューブ2g、ガラスフリット20g、エチルセルロース6g、メチルアクリル酸12g、ブチルカルビトールアセテート60g及びAg5gを混合して、22.5℃の温度及び10l/sの測定条件下での揺変性値が23,500Pa/sである電子放出源の形成用組成物を製造した。
【0039】
[実施例2]
Agの添加量を10gとしたという点を除いては、実施例1と同じ方法によって揺変性値が11,000Pa/sである電子放出源の形成用組成物を製造した。
【0040】
[実施例3]
Agの添加量を20gとしたという点を除いては、実施例1と同じ方法によって揺変性値が23、360Pa/sである電子放出源の形成用組成物を製造した。
【0041】
[実施例4]
Ag5gの代わりにAl2O3 5gを添加したという点を除いては、実施例1と同じ方法によって揺変性値が20,960Pa/sである電子放出源の形成用組成物を製造した。
【0042】
[実施例5]
Al2O3の添加量を10gとしたという点を除いては、実施例4と同じ方法によって揺変性値が14,850Pa/sである電子放出源の形成用組成物を製造した。
【0043】
[実施例6]
Al2O3の添加量を20gとしたという点を除いては、実施例4と同じ方法によって揺変性値が23,500Pa/sである電子放出源の形成用組成物を製造した。
【0044】
[比較例]
Agを添加していないという点を除いては、実施例1と同じ方法によって揺変性値が7,670Pa/sである電子放出源の形成用組成物を製造した。
図3には、実施例1ないし3及び比較例による電子放出源の形成用組成物の揺変性値を、図4には、実施例4ないし6による電子放出源の形成用組成物の揺変性値を示すためのグラフが図示されており、図面で揺変性値は、閉曲線グラフの面積を計算することによって得られうる。
【0045】
<電子放出源の製造>
実施例1ないし6及び比較例によって製造された電子放出源の形成用組成物を基板上にコーティングした後、パターンマスクを利用して2000mJ/cm2の露光エネルギーで平行露光器を利用して照射した。露光後にスプレーして現像し、450℃の温度で焼成して電子放出源を得た。
【0046】
図5ないし図11には、実施例1ないし6及び比較例による電子放出源の形成用組成物を使用して製造された電子放出源のうち1つの電子放出源の断面写真(図5Aないし図11A)及び複数の電子放出源の配列の平面写真(図5Bないし図11B)を表した。
【0047】
<電子放出素子の製造>
下面基板を準備し、前記下面基板上にITO物質からなる透明な複数のカソード電極をストライプ状に形成した。以後、前記カソード電極が覆われるようにポリイミド絶縁物質をスクリーン印刷して絶縁体層を形成し、前記絶縁体層の上面に導電性に優れた銀(Ag)または銅(Cu)、アルミニウム(Al)などの導体を含むペーストをスクリーン印刷してゲート電極を形成した。その後、ゲート電極と絶縁体層とをエッチングして、前記カソード電極の表面が露出されるように電子放出源ホールを形成し、前記ゲート電極をフォトリソグラフィ工程でパターニングして前記カソード電極と交差するようにストライプ状に形成した。
【0048】
次いで、前記電子放出源ホールに前記のように電子放出源の形成用組成物を塗布して電子放出源を形成し、焼成及び活性化工程を経て電子放出素子を製造した。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、電子放出関連の技術分野に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明による電子放出素子の一実施形態を示す図面である。
【図2】カーボンナノチューブを製造するために電気放電法を実行する電気放電装置の構造図を略的に示す図面である。
【図3】実施例1ないし3及び比較例による電子放出源の形成用組成物の揺変性値を示すためのグラフである。
【図4】実施例4ないし6による電子放出源の形成用組成物の揺変性値を示すためのグラフである。
【図5A】実施例1による電子放出源の形成用組成物を使用して製造された電子放出源のうち1つの電子放出源の断面写真である。
【図5B】実施例1による電子放出源の形成用組成物を使用して製造された電子放出源のうち複数の電子放出源の配列の平面写真である。
【図6A】実施例2による電子放出源の形成用組成物を使用して製造された電子放出源のうち1つの電子放出源の断面写真である。
【図6B】実施例2による電子放出源の形成用組成物を使用して製造された電子放出源のうち複数の電子放出源の配列の平面写真である。
【図7A】実施例3による電子放出源の形成用組成物を使用して製造された電子放出源のうち1つの電子放出源の断面写真である。
【図7B】実施例3による電子放出源の形成用組成物を使用して製造された電子放出源のうち複数の電子放出源の配列の平面写真である。
【図8A】実施例4による電子放出源の形成用組成物を使用して製造された電子放出源のうち1つの電子放出源の断面写真である。
【図8B】実施例4による電子放出源の形成用組成物を使用して製造された電子放出源のうち複数の電子放出源の配列の平面写真である。
【図9A】実施例5による電子放出源の形成用組成物を使用して製造された電子放出源のうち1つの電子放出源の断面写真である。
【図9B】実施例5による電子放出源の形成用組成物を使用して製造された電子放出源のうち複数の電子放出源の配列の平面写真である。
【図10A】実施例6による電子放出源の形成用組成物を使用して製造された電子放出源のうち1つの電子放出源の断面写真である。
【図10B】実施例6による電子放出源の形成用組成物を使用して製造された電子放出源のうち複数の電子放出源の配列の平面写真である。
【図11A】比較例による電子放出源の形成用組成物を使用して製造された電子放出源のうち1つの電子放出源の断面写真である。
【図11B】比較例による電子放出源の形成用組成物を使用して製造された電子放出源のうち複数の電子放出源の配列の平面写真である。
【符号の説明】
【0051】
41 負極
42 正極
110 下面基板
120 カソード電極
130 絶縁体層
140 ゲート電極
160 電子放出源
200 電子放出素子
201 上板
202 下板
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子放出源の形成用組成物、これを利用して製造された電子放出源、該電子放出源を含む電子放出素子、及び前記電子放出源の製造方法に係り、より具体的には、印刷特性及びレベリング特性に優れて工程安定性が確保されることによって、電子放出素子内の電子放出源の形成に効果的に使われうる電子放出源の形成用組成物、これを利用して製造された電子放出源、該電子放出源を含む電子放出素子、及び前記電子放出源の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子放出素子は、アノード電極とカソード電極との間に電圧を印加して電界を形成することによって、カソード電極の電子放出源から電子を放出させ、この電子をアノード電極側の蛍光物質に衝突させて発光させるディスプレイ装置である。
【0003】
電子伝導性に優れた炭素ナノチューブ(Carbon Nano Tube:CNT)を含むカーボン系物質は、伝導性及び電界集中効果が優秀であり、仕事関数が小さくて電界放出特性が優秀で低電圧駆動が容易であり、大面積化できるので電子放出素子の理想的な電子放出源として期待されている。
【0004】
従来技術による組成物は、カーボンナノチューブ粉末、ポリマー及び有機溶媒を含むビヒクル、無機質系バインダー及びその他の添加剤を含み、例えば、特許文献1には、カーボンナノチューブ粉末、ガラスフリット、アクリレート系樹脂、エチルセルロース、光開始剤及び有機溶媒を含む電子放出表示素子用カーボンナノチューブエミッタペースト組成物が開示されている。
【0005】
しかし、このような従来技術による組成物において、揺変性及び粘弾性数値が所定範囲内に調節されない場合には、工程上印刷機での連続印刷が困難であり、印刷後基板表面でのレベリング特性がよくないという問題点があった。
【特許文献1】大韓民国特許出願公開第2003−0083790号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、前述したような従来技術の問題点を解決するためのものであって、電子放出源の形成用組成物の揺変性値及び粘弾性(tanδ、粘度係数/保存係数)値を最適の範囲内に調節することによって、印刷特性及びレベリング特性を向上させた電子放出源の形成用組成物、これを利用して製造された電子放出源、該電子放出源を含む電子放出素子、及び前記電子放出源の製造方法を提供することを目的とする。なお、本明細書において、粘弾性値tanδは、粘度係数(損失弾性率:loss modulus)を保存係数(貯蔵弾性率:storage modulus)で除算したものであり、δは位相角である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するために、本発明はその一具現例で、20℃ないし25℃の温度及び0.01l/sないし100l/sの測定条件下での揺変性値が10,000Pa/sないし50,000Pa/sであるか、または20℃ないし25℃の温度、1Paないし10Pa及び0.05Hzないし100Hzの測定条件下での粘弾性(tanδ、粘度係数/保存係数)値が2ないし5である電子放出源の形成用組成物を提供する。
【0008】
本発明は他の具現例で、前記電子放出源の形成用組成物を利用して製造された電子放出源を提供する。
本発明はさらに他の具現例で、基板と、前記基板上に形成されたカソード電極と、
前記基板上に形成されたカソード電極と電気的に連結されるように形成され、前記電子放出源と、を備えた電子放出素子を提供する。
【0009】
本発明はさらに他の具現例で、前記電子放出源の形成用組成物を提供する工程と、基板上に前記電子放出源の形成用組成物を印刷する工程と、前記印刷された電子放出源の形成用組成物を焼成する工程と、前記焼成された結果物を活性化させて電子放出源を得る工程と、を含む電子放出源の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電子放出源の形成用組成物は、印刷特性及びレベリング特性に優れた電子放出源の形成用組成物を提供でき、このような電子放出源の形成用組成物を使用して電子放出源を製造する場合、工程安定性が確保できるので、効果的に電子放出素子を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明による電子放出源の形成用組成物は、揺変性値及び粘弾性(tanδ、粘度係数/保存係数)値が最適の範囲内に調節されることによって、印刷特性及びレベリング特性が従来技術による電子放出源の形成用組成物に比べて優れてあり、したがって、工程安定性が確保されて電子放出素子内の電子放出源の形成にさらに効果的に使われうる。
【0012】
本発明では、電子放出源の形成用組成物の揺変性値及び粘弾性(tanδ、粘度係数/保存係数)値を最適の範囲内に調節することによって、印刷特性及びレベリング特性を向上させようとした。
【0013】
具体的に、揺変性はせん断力を上昇させてから下降させた時のせん断力の差として算出でき、粘弾性は、周波数を変化させつつ粘性及び弾性を測定することによって得られうる。
【0014】
揺変性及び粘弾性は、電子放出源の形成用組成物の有機物質、溶媒及び無機物質の組成比によって影響を受けるが、従来技術による電子放出源の形成用組成物はほぼ200,000Pa/s以上の揺変性数値及び5以上の粘弾性数値を持ち、このような値を持つ電子放出源の形成用組成物は工程上印刷機での連続印刷が難しく、印刷後の基板表面でのレベリング特性が良好でないという問題点があった。
【0015】
本発明による一具現例で、電子放出源の形成用組成物はカーボン系物質及びビヒクルを含む。
望ましくは、前記電子放出源の形成用組成物は、全体組成物100重量部に対して、0.1重量部ないし30重量部のカーボン系物質及び70重量部ないし99.9重量部のビヒクルを含む。
【0016】
本発明による組成物中、カーボン系物質は、伝導性及び電子放出特性に優れて、電子放出素子の作動時にアノード部の蛍光膜に電子を放出させて蛍光体を励起させる役割を行う。このようなカーボン系物質の非制限的な例には、カーボンナノチューブ、グラファイト、ダイアモンド及びフラーレンなどが含まれる。このうち、カーボンナノチューブが望ましい。
【0017】
カーボンナノチューブは、グラファイトシートがナノサイズの直径に丸く巻かれてチューブ状をなしているカーボン同素体であって、単一壁ナノチューブ及び多重壁ナノチューブをいずれも使用できる。本発明のカーボンナノチューブは、熱化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition:以下、“CVD法”ともいう)、DCプラズマCVD法、RFプラズマCVD法、マイクロ波プラズマCVD法のようなCVD法を利用して製造されたものでありうる。
【0018】
本発明による組成物のうち、ビヒクルは、電子放出源の形成用組成物の粘度及び印刷性を調節する役割を行うものであって、これはポリマー成分及び有機溶媒成分を含む。
ビヒクル内に含まれるポリマー成分についての非制限的な例には、エチルセルロース、ニトロセルロースのようなセルロース系樹脂;ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート及びウレタンアクリレートのようなアクリル系樹脂;及びビニル系樹脂などがあり、その含有量はビヒクル100重量部に対して3重量部ないし20重量部でありうる。
【0019】
ビヒクル内に含まれる有機溶媒成分についての非制限的な例には、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、テルピネオール(TP)、トルエン、テキサノール及びブチルカルビトール(BC)などがあり、その含有量は、ビヒクル100重量部に対して80重量部ないし97重量部でありうる。
【0020】
前記電子放出源の形成用組成物は、カーボン系物質及びビヒクル以外にも、添加剤をさらに含むことができ、このような添加剤は、カーボンナノチューブと基板との接着力を向上させる役割を行う接着成分として、無機接着成分、有機接着成分、及び低融点金属からなる群から1種以上選択されたものを含むことができ、それ以外にも、フィラー、感光性樹脂、粘度改善剤、解像度改善剤、光開始剤、分散剤、消泡剤などをさらに含むことができ、前記添加剤の含有量は全体組成物100重量部に対して0.5重量部ないし30重量部でありうる。
【0021】
前記フィラーは、基板と十分に接着されていないカーボンナノチューブの伝導性を向上させ、電子放出源の形成用組成物の揺変性及びその他の物性を調節するためのものであり、このようなフィラーの具体的な例には、これらに制限されるものではないが、Ag、Al、Pd、Al2O3などが使われうる。
【0022】
本発明は他の具現例で、前記電子放出源の形成用組成物を利用して製造された電子放出源を提供する。
本発明の電子放出源は、本発明による電子放出源の形成用組成物を利用したペースト法によって形成できる。
【0023】
ペースト法を利用して電子放出源を形成する場合、本発明の電子放出源は、接着成分及び接着成分の焼成結果物のうち一つ以上を含むことができる。前記接着成分は、カーボンナノチューブと基板との接着力を向上させる役割を行うものであって、無機接着成分の具体的な例には、ガラスフリット、シラン、水ガラスなどが含まれ、有機接着成分の具体的な例には、エチルセルロース、ニトロセルロースのようなセルロース系樹脂;ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート及びウレタンアクリレートのようなアクリル系樹脂;ビニル系樹脂などが含まれ、低融点金属も前記接着成分として利用できる。
【0024】
本発明はさらに他の具現例で、基板と、前記基板上に形成されたカソード電極と、前記基板上に形成されたカソード電極と電気的に連結されるように形成された前記電子放出源と、を備えた電子放出素子を提供する。
【0025】
図1は、本発明による電子放出素子の部分断面図であって、代表的に3極管構造の電子放出素子を図示した。
図示したように、電子放出素子200は、上板201と下板202とを備え、前記上板は上面基板190、前記上面基板の下面190aに配置されたアノード電極180、前記アノード電極の下面180aに配置された蛍光体層170を備える。
【0026】
前記下板202は、内部空間を形成するように所定の間隔をおいて前記上面基板190と対向して平行に配置される下面基板110、前記下面基板110上にストライプ状に配置されたカソード電極120、前記カソード電極120と交差するようにストライプ状に配置されたゲート電極140、前記ゲート電極140と前記カソード電極120との間に配置された絶縁体層130、前記絶縁体層130と前記ゲート電極140との一部に形成された電子放出源ホール169、前記電子放出源ホール169内に配置されて前記カソード電極120と通電され、前記ゲート電極140より低く配置される電子放出源160を備える。
【0027】
前記上板201と下板202とは、大気圧より低い圧力の真空に維持され、前記真空により発生する前記上板と下板との圧力を支持し、発光空間210を区画するようにスペーサ192が前記上板と下板との間に配置される。
【0028】
前記アノード電極180は、前記電子放出源160から放出された電子の加速に必要な高電圧を印加して、前記電子が前記蛍光体層170に高速で衝突可能にする。前記蛍光体層は、前記電子により励起されて高エネルギーレベルから低エネルギーレベルに落ちつつ可視光を放出する。カラー電子放出素子の場合には、単位画素をなす複数の前記発光空間210それぞれに赤色発光、緑色発光、青色発光の蛍光体層が前記アノード電極の下面180aに配置される。
【0029】
前記ゲート電極140は、前記電子放出源160から電子を容易に放出させる機能を担い、前記絶縁体層130は、前記電子放出源ホール169を区画し、前記電子放出源160と前記ゲート電極140とを絶縁する機能を担う。
電界形成により電子を放出する前記電子放出源160は、本発明による電子放出源の形成用組成物を利用して製造された電子放出源160である。
【0030】
本発明はさらに他の具現例で、前記電子放出源の形成用組成物を提供する工程と、基板上に前記電子放出源の形成用組成物を印刷する工程と、前記印刷された電子放出源の形成用組成物を焼成する工程と、前記焼成された結果物を活性化させて電子放出源を得る工程と、を含む電子放出源の製造方法を提供する。
【0031】
本発明による電子放出素子の製造方法の一具現例は、次の通りである。
まず、電子放出源の形成用組成物を準備する。電子放出源の形成用組成物はカーボンナノチューブ及びビヒクルを含み、これは前述した方法によって製造できる。
【0032】
次いで、準備された電子放出源の形成用組成物を基板に印刷する。前記“基板”とは、電子放出源が形成される基板であって、当業界で通常的に使われる基板を使用できる。
印刷方式は、電子放出源の形成用組成物が感光性樹脂を含む場合と感光性樹脂を含まない場合とによって異なる。電子放出源の形成用組成物が感光性樹脂を含む場合には、別途のフォトレジストパターンが不要である。すなわち、基板上に感光性樹脂を含む電子放出源の形成用組成物を印刷でコーティングし、これを所望の電子放出源の形成領域に沿って露光及び現像する。一方、電子放出源の形成用組成物が感光性樹脂を含まない場合には、別途のフォトレジスト膜パターンを利用したフォトリソグラフィ工程が必要である。すなわち、フォトレジスト膜を利用してフォトレジスト膜パターンをまず形成した後、前記フォトレジスト膜パターンを利用して電子放出源の形成用組成物を印刷で供給する。
【0033】
この後、印刷された電子放出源の形成用組成物を焼成させる。前記焼成工程を通じてカーボンナノチューブと基板との接着力が向上し、一部以上の接着成分の溶融及び固形化によって耐久性も向上し、ガス抜け(outgasing)も最小化できる。焼成温度は、電子放出源の形成用組成物に含まれたビヒクルの揮発及び接着成分の焼結可能温度及び時間を考慮して決定されねばならない。通常的な焼成温度は、350℃ないし500℃、望ましくは450℃である。焼成温度が350℃未満ならばビヒクルなどの揮発が十分になされないという問題点が発生し、焼成温度が500℃を超過すればカーボンナノチューブ損傷の問題点が発生しうるためである。
【0034】
この後、焼成結果物を活性化して電子放出源を得る。前記活性化工程は、例えば、熱処理工程を通じてフィルム形態に硬化されうるポリイミド系高分子を含む電子放出源の表面処理剤を前記焼成結果物上に塗布した後、これを熱処理した後、前記熱処理で形成されたフィルムを剥離することによって行われうる。また、前記活性化工程は、所定の駆動源で駆動されるローラ表面に接着力を持つ接着部を形成して、前記焼成結果物の表面に所定の圧力で加圧することによって行われてもよい。このような活性化工程を通じて電子放出源の表面にカーボンナノチューブが露出されるか、カーボンナノチューブの垂直配向状態が調節できる。
【0035】
以下、本発明の望ましい実施例及び比較例を記載する。下記の実施例は本発明をさらに明確に表現するための目的で記載されるものであるだけで、本発明の内容が下記の実施例に限定されるものではない。
【0036】
<カーボンナノチューブの製造>
電気放電法によって本発明によるカーボンナノチューブを製造し、図2には、このような電気放電法を実行する電気放電装置の構造図を簡略に示した。前記方法では、二つのグラファイトや金属棒を負極41と正極42とし、両電極間に直流電源を印加して電極間に放電を起こした。
【0037】
このような放電により発生した多量の電子は正極に移動して正極棒41に衝突し、この時、電子の衝突によって正極として使われたグラファイト棒から落ちた炭素クラストは、低温で冷却されている負極42のグラファイト棒の表面に凝縮されてカーボンナノチューブが製造される。
【0038】
<電子放出源の形成用組成物の製造>
[実施例1]
前記方法によって製造されたカーボンナノチューブ2g、ガラスフリット20g、エチルセルロース6g、メチルアクリル酸12g、ブチルカルビトールアセテート60g及びAg5gを混合して、22.5℃の温度及び10l/sの測定条件下での揺変性値が23,500Pa/sである電子放出源の形成用組成物を製造した。
【0039】
[実施例2]
Agの添加量を10gとしたという点を除いては、実施例1と同じ方法によって揺変性値が11,000Pa/sである電子放出源の形成用組成物を製造した。
【0040】
[実施例3]
Agの添加量を20gとしたという点を除いては、実施例1と同じ方法によって揺変性値が23、360Pa/sである電子放出源の形成用組成物を製造した。
【0041】
[実施例4]
Ag5gの代わりにAl2O3 5gを添加したという点を除いては、実施例1と同じ方法によって揺変性値が20,960Pa/sである電子放出源の形成用組成物を製造した。
【0042】
[実施例5]
Al2O3の添加量を10gとしたという点を除いては、実施例4と同じ方法によって揺変性値が14,850Pa/sである電子放出源の形成用組成物を製造した。
【0043】
[実施例6]
Al2O3の添加量を20gとしたという点を除いては、実施例4と同じ方法によって揺変性値が23,500Pa/sである電子放出源の形成用組成物を製造した。
【0044】
[比較例]
Agを添加していないという点を除いては、実施例1と同じ方法によって揺変性値が7,670Pa/sである電子放出源の形成用組成物を製造した。
図3には、実施例1ないし3及び比較例による電子放出源の形成用組成物の揺変性値を、図4には、実施例4ないし6による電子放出源の形成用組成物の揺変性値を示すためのグラフが図示されており、図面で揺変性値は、閉曲線グラフの面積を計算することによって得られうる。
【0045】
<電子放出源の製造>
実施例1ないし6及び比較例によって製造された電子放出源の形成用組成物を基板上にコーティングした後、パターンマスクを利用して2000mJ/cm2の露光エネルギーで平行露光器を利用して照射した。露光後にスプレーして現像し、450℃の温度で焼成して電子放出源を得た。
【0046】
図5ないし図11には、実施例1ないし6及び比較例による電子放出源の形成用組成物を使用して製造された電子放出源のうち1つの電子放出源の断面写真(図5Aないし図11A)及び複数の電子放出源の配列の平面写真(図5Bないし図11B)を表した。
【0047】
<電子放出素子の製造>
下面基板を準備し、前記下面基板上にITO物質からなる透明な複数のカソード電極をストライプ状に形成した。以後、前記カソード電極が覆われるようにポリイミド絶縁物質をスクリーン印刷して絶縁体層を形成し、前記絶縁体層の上面に導電性に優れた銀(Ag)または銅(Cu)、アルミニウム(Al)などの導体を含むペーストをスクリーン印刷してゲート電極を形成した。その後、ゲート電極と絶縁体層とをエッチングして、前記カソード電極の表面が露出されるように電子放出源ホールを形成し、前記ゲート電極をフォトリソグラフィ工程でパターニングして前記カソード電極と交差するようにストライプ状に形成した。
【0048】
次いで、前記電子放出源ホールに前記のように電子放出源の形成用組成物を塗布して電子放出源を形成し、焼成及び活性化工程を経て電子放出素子を製造した。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、電子放出関連の技術分野に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明による電子放出素子の一実施形態を示す図面である。
【図2】カーボンナノチューブを製造するために電気放電法を実行する電気放電装置の構造図を略的に示す図面である。
【図3】実施例1ないし3及び比較例による電子放出源の形成用組成物の揺変性値を示すためのグラフである。
【図4】実施例4ないし6による電子放出源の形成用組成物の揺変性値を示すためのグラフである。
【図5A】実施例1による電子放出源の形成用組成物を使用して製造された電子放出源のうち1つの電子放出源の断面写真である。
【図5B】実施例1による電子放出源の形成用組成物を使用して製造された電子放出源のうち複数の電子放出源の配列の平面写真である。
【図6A】実施例2による電子放出源の形成用組成物を使用して製造された電子放出源のうち1つの電子放出源の断面写真である。
【図6B】実施例2による電子放出源の形成用組成物を使用して製造された電子放出源のうち複数の電子放出源の配列の平面写真である。
【図7A】実施例3による電子放出源の形成用組成物を使用して製造された電子放出源のうち1つの電子放出源の断面写真である。
【図7B】実施例3による電子放出源の形成用組成物を使用して製造された電子放出源のうち複数の電子放出源の配列の平面写真である。
【図8A】実施例4による電子放出源の形成用組成物を使用して製造された電子放出源のうち1つの電子放出源の断面写真である。
【図8B】実施例4による電子放出源の形成用組成物を使用して製造された電子放出源のうち複数の電子放出源の配列の平面写真である。
【図9A】実施例5による電子放出源の形成用組成物を使用して製造された電子放出源のうち1つの電子放出源の断面写真である。
【図9B】実施例5による電子放出源の形成用組成物を使用して製造された電子放出源のうち複数の電子放出源の配列の平面写真である。
【図10A】実施例6による電子放出源の形成用組成物を使用して製造された電子放出源のうち1つの電子放出源の断面写真である。
【図10B】実施例6による電子放出源の形成用組成物を使用して製造された電子放出源のうち複数の電子放出源の配列の平面写真である。
【図11A】比較例による電子放出源の形成用組成物を使用して製造された電子放出源のうち1つの電子放出源の断面写真である。
【図11B】比較例による電子放出源の形成用組成物を使用して製造された電子放出源のうち複数の電子放出源の配列の平面写真である。
【符号の説明】
【0051】
41 負極
42 正極
110 下面基板
120 カソード電極
130 絶縁体層
140 ゲート電極
160 電子放出源
200 電子放出素子
201 上板
202 下板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
20℃ないし25℃の温度及び0.01l/sないし100l/sの測定条件下での揺変性値が10,000Pa/sないし50,000Pa/sであるか、または20℃ないし25℃の温度、1Paないし10Pa及び0.05Hzないし100Hzの測定条件下での粘弾性値tanδが2ないし5であって、前記粘弾性値tanδは粘度係数を保存係数で除算したものである電子放出源の形成用組成物。
【請求項2】
前記電子放出源の形成用組成物は、全体組成物100重量部に対して0.1重量部ないし30重量部のカーボン系物質及び70重量部ないし99.9重量部のビヒクルを含むことを特徴とする請求項1に記載の電子放出源の形成用組成物。
【請求項3】
前記ビヒクルは、ビヒクル100重量部に対して3重量部ないし20重量部のポリマー成分及び80重量部ないし97重量部の有機溶媒成分を含むことを特徴とする請求項2に記載の電子放出源の形成用組成物。
【請求項4】
前記ポリマー成分は、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂及びその混合物からなる群から選択されたことを特徴とする請求項3に記載の電子放出源の形成用組成物。
【請求項5】
前記有機溶媒成分は、ブチルカルビトールアセテート、テルピネオール、トルエン、テキサノール、ブチルカルビトール及びその混合物からなる群から選択されたことを特徴とする請求項3に記載の電子放出源の形成用組成物。
【請求項6】
前記組成物は、接着成分、フィラー、感光性樹脂、光開始剤、粘度改善剤、解像度改善剤、分散剤、及び消泡剤からなる群から選択された一つ以上の添加剤をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の電子放出源の形成用組成物。
【請求項7】
前記添加剤の含有量は、全体組成物100重量部に対して0.5重量部ないし30重量部であることを特徴とする請求項6に記載の電子放出源の形成用組成物。
【請求項8】
前記フィラーは、Ag、Al、Pd及びAl2O3からなる群から選択された少なくとも一つの物質であることを特徴とする請求項6に記載の電子放出源の形成用組成物。
【請求項9】
請求項1ないし8のうちいずれか1項に記載の電子放出源の形成用組成物を利用して製造された電子放出源。
【請求項10】
基板と、
前記基板上に形成されたカソード電極と、
前記基板上に形成されたカソード電極と電気的に連結されるように形成され、請求項6に記載の電子放出源と、を備えた電子放出素子。
【請求項11】
20℃ないし25℃の温度及び0.01l/sないし100l/sの測定条件下での揺変性値が10,000Pa/sないし50,000Pa/sであるか、または20℃ないし25℃の温度、1Paないし10Pa及び0.05Hzないし100Hzの測定条件下での粘弾性値tanδが2ないし5である電子放出源の形成用組成物を提供する工程と、
基板上に前記電子放出源の形成用組成物を印刷する工程と、
前記印刷された電子放出源の形成用組成物を焼成する工程と、
前記焼成された結果物を活性化させて電子放出源を得る工程と、を含み、
前記粘弾性値tanδは粘度係数を保存係数で除算したものである、電子放出源の製造方法。
【請求項1】
20℃ないし25℃の温度及び0.01l/sないし100l/sの測定条件下での揺変性値が10,000Pa/sないし50,000Pa/sであるか、または20℃ないし25℃の温度、1Paないし10Pa及び0.05Hzないし100Hzの測定条件下での粘弾性値tanδが2ないし5であって、前記粘弾性値tanδは粘度係数を保存係数で除算したものである電子放出源の形成用組成物。
【請求項2】
前記電子放出源の形成用組成物は、全体組成物100重量部に対して0.1重量部ないし30重量部のカーボン系物質及び70重量部ないし99.9重量部のビヒクルを含むことを特徴とする請求項1に記載の電子放出源の形成用組成物。
【請求項3】
前記ビヒクルは、ビヒクル100重量部に対して3重量部ないし20重量部のポリマー成分及び80重量部ないし97重量部の有機溶媒成分を含むことを特徴とする請求項2に記載の電子放出源の形成用組成物。
【請求項4】
前記ポリマー成分は、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂及びその混合物からなる群から選択されたことを特徴とする請求項3に記載の電子放出源の形成用組成物。
【請求項5】
前記有機溶媒成分は、ブチルカルビトールアセテート、テルピネオール、トルエン、テキサノール、ブチルカルビトール及びその混合物からなる群から選択されたことを特徴とする請求項3に記載の電子放出源の形成用組成物。
【請求項6】
前記組成物は、接着成分、フィラー、感光性樹脂、光開始剤、粘度改善剤、解像度改善剤、分散剤、及び消泡剤からなる群から選択された一つ以上の添加剤をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の電子放出源の形成用組成物。
【請求項7】
前記添加剤の含有量は、全体組成物100重量部に対して0.5重量部ないし30重量部であることを特徴とする請求項6に記載の電子放出源の形成用組成物。
【請求項8】
前記フィラーは、Ag、Al、Pd及びAl2O3からなる群から選択された少なくとも一つの物質であることを特徴とする請求項6に記載の電子放出源の形成用組成物。
【請求項9】
請求項1ないし8のうちいずれか1項に記載の電子放出源の形成用組成物を利用して製造された電子放出源。
【請求項10】
基板と、
前記基板上に形成されたカソード電極と、
前記基板上に形成されたカソード電極と電気的に連結されるように形成され、請求項6に記載の電子放出源と、を備えた電子放出素子。
【請求項11】
20℃ないし25℃の温度及び0.01l/sないし100l/sの測定条件下での揺変性値が10,000Pa/sないし50,000Pa/sであるか、または20℃ないし25℃の温度、1Paないし10Pa及び0.05Hzないし100Hzの測定条件下での粘弾性値tanδが2ないし5である電子放出源の形成用組成物を提供する工程と、
基板上に前記電子放出源の形成用組成物を印刷する工程と、
前記印刷された電子放出源の形成用組成物を焼成する工程と、
前記焼成された結果物を活性化させて電子放出源を得る工程と、を含み、
前記粘弾性値tanδは粘度係数を保存係数で除算したものである、電子放出源の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【公開番号】特開2007−227351(P2007−227351A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−305693(P2006−305693)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】
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