説明

電子楽音発生装置

【課題】現在設定されているパラメータ値を特別なスイッチを用意することなく簡単に知ることができるようにし、操作性を向上させる。
【解決手段】LCD4に定常画面が表示されているとき、トランスポーズ値が現在「0」に設定されている状態で、トランスポーズ値設定用UP/DOWNスイッチ9−8が操作されると、その操作に従ってトランスポーズ値が修正され、LCD4に表示される。また、LCD4に定常画面が表示されているとき、トランスポーズ値が現在「0」以外に設定されている状態で、トランスポーズ値設定用UP/DOWNスイッチ9−8が操作されると、現在設定されているトランスポーズ値が表示される。トランスポーズ値設定用UP/DOWNスイッチ9−8が所定時間操作されなければ定常画面に戻る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子楽音発生装置に関し、特に、現在設定されているトランスポーズ値などのパラメータ値を特別なスイッチを用意することなく、簡単に知ることができる電子楽音発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子楽音発生装置では、スライドボリュームやアップ/ダウンスイッチ(以下、UP/DOWNスイッチと称す。)を操作してトランスポーズなどのパラメータ値の設定を行う。スライドボリュームを用いる場合、現在設定されているパラメータ値はスライドボリューム位置の目盛で確認できる。UP/DOWNスイッチを用いる場合には、UP/DOWNスイッチの操作により設定されたパラメータ値を表示装置(LCD)に表示し、その表示状態を保つことにより現在設定されている値を確認できる。
【0003】
電子楽音発生装置の機能が増えて表示装置での表示内容が増えると、パラメータ値の設定中のみにその値を表示装置に表示させ、その後、所定時間内に設定操作が行われなければ設定は終了したとみなして設定されたパラメータ値を表示装置から消去するようになった。
【0004】
LEDなどの表示機能を使用することなくトランスポーズ機能を実現するトランスポーズ設定装置も下記特許文献1に記載されている。これによればトランスポーズ値の設定/確認を聴覚的に認識することができる。
【特許文献1】特開平11−288286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スライドボリュームは、専有面積が広く、また、トランスポーズ機能のためだけに用意するのはコスト的にも不利である。したがって、スライドボリュームは、現在の設定値を確認するには便利であるが、最近では使われなくなってきている。また、LCDなどの表示装置に、現在設定されているパラメータ値を常に表示させたままにするものでは、表示エリアの関係で多機能の表示に対処することが困難である。また、表示装置に表示されたパラメータ値を、その設定操作から所定時間後に消去するものでは、操作者は今現在パラメータ値が設定されているのか否か、設定されているのであればその値はいくつであるのかを容易に知ることができなくなってしまう。
【0006】
UP/DOWNスイッチの操作で表示装置にパラメータ値を表示させることも考えられるが、UP/DOWNスイッチの操作は、そのスイッチ操作分だけパラメータ値を“+”側にアップあるいは“−”側にダウンさせて表示させてしまうので、今現在設定されているパラメータ値を確認することができないという不具合が生じる。このような不具合を生じさせることなく今現在設定されているパラメータ値を表示させるには、他の特別なスイッチを設ける必要がある。
【0007】
また、トランスポーズ値の設定/確認を聴覚的に認識させるものでは、設定された移調値分だけ移調された移調ピッチの楽音を生成する手段が必要となり、また、聴覚的に移調具合の確認を行うには慣れが必要であり、誰でも行えることではない。
【0008】
本発明の目的は、上記課題にかんがみなされたものであり、現在設定されているパラメータ値を特別なスイッチを用意することなく、簡単に知ることができ、操作性が向上された電子楽音発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、楽音の発音態様を定める第1のパラメータと該第1のパラメータによる楽音の発音態様に対して修正を加える第2のパラメータとに従って楽音を発生する電子楽音発生装置であって、第2のパラメータが前記第1のパラメータによる楽音の発音態様を1方向に修正する度合いを設定するための第1の操作子と、前記第2のパラメータが前記第1のパラメータによる楽音の発音態様を前記第1の操作子が操作された場合とは別の方向に修正する度合いを設定するための第2の操作子と、前記電子楽音発生装置における各種設定情報を表示するとともに、前記第2のパラメータが前記第1のパラメータによる楽音の発音態様に対して加える修正の度合いを示す値を表示可能な表示手段と、前記第2のパラメータが前記第1のパラメータによる楽音の発音態様に対して加える修正の度合いを示す値が前記表示手段に表示されていないとき、前記第1の操作子あるいは前記第2の操作子の操作に応じて、前記第2のパラメータによって前記第1のパラメータによる楽音の発音態様が既に修正されている場合は、前記第2のパラメータによって前記第1のパラメータによる楽音の発音態様に対して加える修正の度合いを示す値を前記表示手段に表示し、前記第2のパラメータによって前記第1のパラメータによる楽音の発音態様がまだ修正されていない場合は、該修正を実行するとともに、該修正の度合いを示す値を前記表示手段に表示する第1の制御手段と、前記第1の制御手段による表示が開始されてから所定時間経過を検出して該表示を解除する第2の制御手段を備えた点に第1の特徴がある。
【0010】
また、本発明は、前記第1のパラメータは、楽音の音高に関するパラメータであり、前記第2のパラメータは、トランスポーズまたはチューニングに関するパラメータである点に第2の特徴がある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第2のパラメータが第1のパラメータによる楽音の発音態様に対して加える修正の度合いを示す値が表示手段に表示されていないとき、第2のパラメータによって第1のパラメータによる楽音の発音態様がまだ修正されていなければ、第1の操作子あるいは第2の操作子を操作することによって、直ちに該修正が実行され、該修正の度合いを示す値が表示手段に表示されるので、楽音の発音態様を迅速に修正できる。
【0012】
また、第2のパラメータが第1のパラメータによる楽音の発音態様に対して加える修正の度合いを示す値が表示手段に表示されていないとき、第2のパラメータによって第1のパラメータによる楽音の発音態様が既に修正されていれば、第1の操作子あるいは第2の操作子を操作することによって、現在の修正の度合いを示す値が表示手段に表示されるので、現在の修正状態を知らずに修正を行うことによる誤動作を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明について説明する。図1は、本発明に係る電子楽音発生装置の一実施形態を示すブロック図である。同図において、CPU1は、ROM2に格納されている制御プログラムに従って電子楽音発生装置全体の制御を行う。CPU1はタイマ割り込み回路を備えている。
【0014】
ROM2には制御プログラム、音色パラメータやエフェクト、トランスポーズについてのパラメータなどの演奏状態を設定するための各種パラメータなどが記憶されている。音色パラメータには波形メモリに記憶されている楽音波形のアドレス情報、エンベロープ制御情報等がある。RAM3は、CPU1のワークエリアおよびバッファとして使用され、また、楽器内の各種制御データ、MIDIデータ等を格納する。トランスポーズなどのパラメータ値もRAM3に格納される。このRAM3は、例えばバッテリによりバックアップされていてもよい。
【0015】
表示装置(LCD)4は、後述する操作パネル9に配置され、演奏時や設定時の装置状態を表示する。LCD4の詳細は後述する。外部記憶媒体インタフェース5は、外部記憶媒体から楽音情報を入力したり、本装置で発生された楽音情報を外部記憶媒体に出力して記憶させたりするためのものである。
【0016】
外部入出力(MIDI)インタフェース6は、本装置と外部のMIDI機器との間でMIDI情報のやり取りを行う信号送受信回路である。
【0017】
鍵盤7は複数のキー(鍵)を有し、それぞれのキーオン/キーオフを示すキーイベント情報や押鍵強さつまりベロシティを示すタッチ情報を検知するための、例えば2つのセンサを有している。キースキャン回路8は、上記センサの状態に基づいてキーイベント情報やタッチ情報を生成する。これらの情報はキーナンバに対応付けられてRAM3に記憶される。キーイベント情報はCPU1にも供給される。
【0018】
操作パネル9は、演奏時の各種状態を設定するための操作子スイッチ、操作スイッチの操作状態表示用の発光素子(LED)などを備えている。トランスポーズ設定用スイッチ(UP/DOWNスイッチ)やそれに付随するLEDも操作パネル9に含まれる。
【0019】
パネルスキャン回路10は、操作パネル9の操作スイッチの状態をスキャンしてパネルスイッチイベント情報を生成し、各種情報をLCD4に表示させる。また、パネルスキャン回路10により生成されたスイッチイベント情報は各操作スイッチに対応付けられてRAM3に記憶される。
【0020】
楽音発生部11は、波形読み出し方式により所望の楽音信号を発生する回路であり、例えばデジタルコントロール・オシレータ(DCO)、デジタルコントロール・フィルタ(DCF)、デジタルコントロール・アンプ(DCA)、エンベロープ発生回路、DSP(digital signal processor)を有する。楽音発生部11は、複数、例えば32の楽音発生チャネルを有しているが、実際には、1つの楽音発生回路を時分割多重動作させることにより同時に複数の楽音信号を独立して発生可能に構成されている。
【0021】
ここでは、デジタル楽音波形サンプル値が記憶されている波形ROM12から、発音すべき音高に比例したアドレス間隔で順次波形データを読み出し、補間演算を行って楽音波形信号を発生させる。また、エンベロープ発生回路において、楽音波形信号にエンベロープ信号を乗算してエンベロープを付与し、デジタル信号処理用LSIからなるDSPにおいて、楽音信号にディレイやリバーブなどのエフェクトを付与する。
【0022】
楽音発生部11から発生されるデジタル楽音信号は、D/A変換器13によりアナログ楽音信号に変換された後、アナログ信号処理部14、アンプ15を介してスピーカ16に供給される。バス17は、電子楽音発生装置の上記各部間を接続する。各構成要素間での楽音情報や制御情報のやり取りはバス17を介して行われる。楽音信号によって発音される楽音は、第1のパラメータとしての音高に従って発音態様が定められ、トランスポーズ値などの第2のパラメータに従ってその発音態様が修正されている。
【0023】
図2は、操作パネル9の具体例を示す外観構成の正面図である。操作パネル9は、楽音発生音量設定用マスタ・ボリューム9−1、デモ曲演奏用デモスイッチ9−2、複数の音色選択スイッチ9−3、複数の曲スタイル(リズム、自動伴奏パターン)選択スイッチ9−4、各種パラメータ(トランスポーズ値を除く)設定用UP/DOWNスイッチ9−5、エフェクトオン/オフスイッチ9−6、リバーブオン/オフスイッチ9−7、トランスポーズ値設定用スイッチ9−8、スプリット選択スイッチ9−9、メトロノーム選択スイッチ9−10、楽音録音・再生用スイッチ(PLAY/STOP,REC)9−11などを有し、中央部にLCD4が配置されている。トランスポーズ値設定用スイッチ9−8は、UPスイッチ9−8−1とDOWNスイッチ9−8−2が独立して用意されている。
【0024】
デモ曲演奏用デモスイッチ9−2、複数の音色選択スイッチ9−3、複数の曲スタイル選択スイッチ9−4、エフェクトオン/オフスイッチ9−6、リバーブオン/オフスイッチ9−7、トランスポーズ値設定用スイッチ9−8、スプリット選択スイッチ9−9、メトロノーム選択スイッチ9−10、楽音録音・再生用スイッチ9−11には、LEDなどの発光素子(図ではボタン中下部の□で示す)が内蔵されており、これらの発光素子は、対応するボタンによる選択や設定が現在行われているか否かを指示する。
【0025】
例えば、トランスポーズ値設定用スイッチ9−8の操作によりトランスポーズ値が“+1”〜“+12”の範囲に設定されている場合、UPスイッチ9−8−1に内蔵されたLEDが点灯する。この場合、DOWNスイッチ9−8−2に内蔵されたLEDは消灯している。また、トランスポーズ値が“−1”〜“−12”の範囲に設定されている場合には、DOWNスイッチ9−8−2に内蔵されたLEDが点灯する。この場合、UPスイッチ9−8−1に内蔵されたLEDは消灯している。また、トランスポーズ値が“0”に設定されている場合、UPスイッチ9−8−1とDOWNスイッチ9−8−2に内蔵されたLEDは共に消灯している。
【0026】
図3は、LCD4で表示される画面の例を示す。図3(a)は、定常画面であり、曲スタイル(STYLE)やテンポ(TEMPO)、現在設定されている音色名(SOLO, LEFT, RIGHT1, RIGHT2)などが表示される。定常画面ではトランスポーズ値は表示されない。
【0027】
定常画面が表示されている状態でも、トランスポーズ値設定用のUPスイッチ9−8−1およびDOWNスイッチ9−8−2に内蔵されたLEDが共に消灯状態であればトランスポーズ値が“0”であることが分かる。また、いずれかのLEDが点灯状態であればトランスポーズ値が“0”以外で“+”側あるいは“−”側に設定されていることは分かる。しかしながら、今現在トランスポーズ値がどのような値に設定されているのかは分からない。
【0028】
いずれかのLEDが点灯状態である時にトランスポーズ値設定用スイッチ9−8(UPスイッチ9−8−1、DOWNスイッチ9−8−2の何れか)を操作すると定常画面の一部(トランスポーズ値表示部)、例えば中央下部にトランスポーズ値が重ねて表示され、図3(b)の画面になる。同図では「Transpose -2」が上書きされて表示された例である。この操作は、あくまで今現在設定されているトランスポーズ値を表示させるためのものであって、現在設定されているトランスポーズ値をUPあるいはDOWNさせて更新させるためのものではない。この表示に続いてトランスポーズ値設定用スイッチ9−8を操作すれば、表示中の現在設定されているトランスポーズ値が初めて更新される。
【0029】
トランスポーズ値設定用のUPスイッチ9−8−1およびDOWNスイッチ9−8−2に内蔵されたLEDが共に消灯状態である時はトランスポーズの現在設定値が“0”であると分かるので、トランスポーズ値設定用スイッチ9−8の最初の操作で改めて現在設定されているトランスポーズ値を表示させる必要がない。したがって、この状態でトランスポーズ値設定用スイッチ9−8(UPスイッチ9−8−1、DOWNスイッチ9−8−2の何れか)が操作されると図3(b)の画面(トランスポーズ値表示部が表示された画面)になると同時にトランスポーズ値が“+1”あるいは“−1”されて更新されて表示されるようにしている。これによりトランスポーズ値を操作性よく更新できる。
【0030】
トランスポーズ値設定用スイッチ9−8の操作で変更されたトランスポーズ値は、RAM3(図1)に記憶される。その後、予め定められた所定時間内にトランスポーズ値設定用スイッチ9−8が再び操作されなければ、図3(b)のトランスポーズ値表示部が表示された画面から図3(a)の定常画面に戻る。
【0031】
図4は、上記電子楽音発生装置の全体の処理を示すメインフローチャートである。まず、電源が投入されたならば、CPU1、RAM3、楽音発生回路11を構成するLSIなどを初期化する(ステップS4−1)。次に、イベントが発生したか否かを判断し(ステップS4−2)、イベントが発生していないと判断すればステップS4−2に戻ってイベント発生まで待つ。また、イベントが発生したと判断すればイベント処理を実行(ステップS4−3)した後、ステップS4−2に戻る。
【0032】
図5は、図3(b)のトランスポーズ値表示部が表示された画面から図3(a)の定常画面に戻す(トランスポーズ値表示部を消去する)ためのタイマ割り込み処理の一例を示すフローチャートである。タイマ割り込み処理では、まず、LCD4に図3(b)のようにトランスポーズ値表示部が表示されているか否かを判断する(ステップS5−1)。
【0033】
ここで図3(b)のようにトランスポーズ値表示部が表示されていると判断すればタイマ値をインクリメントし(ステップS5−2)、その値が予め定められた所定値を超えたか否かを判断する(ステップS5−3)。また、ステップS5−1で図3(b)のようにトランスポーズ値表示部が表示されていないと判断すれば直接ステップS5−3に移る。ステップS5−3で タイマ値が所定値を超えたと判断すればタイムオーバイベントを発生(ステップS5−4)させてリターンし、超えていないと判断すれば直接リターンする。
【0034】
図6は、イベント処理の一例を示すフローチャートである。イベント処理では、まず、タイムオーバイベントが発生したか否かを判断する(ステップS6−1)。ここでタイムオーバイベントが発生したと判断すれば図3(b)の画面から図3(a)の画面に戻す処理を実行(ステップS6−2)してリターンする。また、ステップS6−1でタイムオーバイベントが発生していないと判断すればその他の処理を実行(ステップS6−3)して次へ移る。
【0035】
図7は、トランスポーズ値設定用のUPスイッチ9−8−1が操作された場合の処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、図6のその他の処理(ステップS6−3)に含まれる処理である。UPスイッチ9−8−1がON操作されたとき(ステップS7−1)、まず、割り込み処理用のタイマ(ステップS5−2)をリセットする(ステップS7−2)。次に、LCD4(図2)の画面が図3(a)の状態か否か、すなわちトランスポーズ値表示部が消去されている状態か否かを判断する(ステップS7−3)。
【0036】
ステップ7−3で図3(a)の画面が表示されている、すなわちトランスポーズ値表示部が消去されている状態であると判断すれば、続いて現在設定されているトランスポーズ値が“0”であるか否かを判断する(ステップS7−4)。ステップS7−4で現在設定されているトランスポーズ値が“0”であると判断すれば、そのトランスポーズ値に「1」を加算(インクリメント)してトランスポーズ値を更新し(ステップS7−5)、ステップS7−6に移る。また、“0”でないと判断すれば直接ステップS7−6に移る。
【0037】
ステップS7−6でLCD4の画面を図3(b)の状態にしてトランスポーズ値を表示した後、次へ移る。図3(b)の状態は、所定時間内にトランスポーズ値設定用スイッチ9−8(UPスイッチ9−8−1、DOWNスイッチ9−8−2の何れか)が再び操作されなければ、図5および図6のフローに従って図3(a)の状態に戻る。
【0038】
以上のように、図3(a)の状態でUPスイッチ9−8−1が操作されたとき、現在設定されているトランスポーズ値が“0”であれば直接それが更新されて表示され、“0”でなければ現在設定されているトランスポーズ値が更新されずに表示される。ここで、所定時間内にトランスポーズ値設定用スイッチ9−8(UPスイッチ9−8−1、DOWNスイッチ9−8−2の何れか)が再び操作されれば、以下に説明するフローによりトランスポーズ値が更新される。
【0039】
ステップ7−3でトランスポーズ値表示部が消去されている状態でない、すなわち図3(b)の画面が表示されていると判断すれば、続いて現在設定されているトランスポーズ値が12未満か否かを判断する(ステップS7−7)。なお、本例では、トランスポーズ値が“+12”〜“−12”の範囲で設定し得るものとしている。
【0040】
ステップS7−7で現在設定されているトランスポーズ値が12未満であると判断すれば、トランスポーズ値に「1」を加算(インクリメント)してトランスポーズ値を更新し(ステップ7−8)、ステップS7−9に移る。また、トランスポーズ値が12未満でないと判断すれば直接ステップS7−9に移る。ステップS7−7,S7−8は、トランスポーズ値を“+12”までインクリメントさせ、“+12”になるとそれ以上にインクリメントさせないようにする。
【0041】
ステップS7−9では現在設定されているトランスポーズ値が“0”であるか否かを判断し、“0”であると判断すればUPスイッチ9−8−1に内蔵されたLEDを消灯(ステップS7−10)してステップS7−11に移り、“0”でないと判断すれば直接ステップS7−11に移る。
【0042】
ステップS7−11では現在設定されているトランスポーズ値が“0”より大きいか否かを判断し、“0”より大きければUPスイッチ9−8−1に内蔵されたLEDを点灯(ステップS7−12)してステップS7−13に移る。また、“0”より大きくなければ直接ステップS7−13に移る。
【0043】
ステップS7−13でLCD4の画面に表示されているトランスポーズ値を更新した後、次へ移る。
【0044】
図8は、トランスポーズ値設定用のDOWNスイッチ9−8−2が操作された場合の処理の一例を示すフローチャートである。この処理も、図6のその他の処理(ステップS6−3)に含まれる処理である。本フローは、図7のフローと基本的に同じであるので詳細な説明は省略するが、図4のフローとは、現在設定されているトランスポーズ値を減算(デクリメント)してトランスポーズ値を更新する点(ステップS8−5,S8−6)、トランスポーズ値が“−12”になった場合にはそれ以下にはデクリメントしない点(ステップS8−7,S8−8)、トランスポーズ値が“0”より小さい場合にDOWNスイッチ9−8−2に内蔵されたLEDを点灯させる点(ステップS8−9〜S8−12)で異なる。
【0045】
図9は、RAM3に記憶されているトランスポーズ値のリセット処理の一例を示すフローチャートである。この処理も、図6のその他の処理(ステップS6−3)に含まれる処理である。トランスポーズ値のリセットは、UPスイッチ9−8−1とDOWNスイッチ9−8−2を同時に操作することにより実行される。すなわち、UPスイッチ9−8−1とDOWNスイッチ9−8−2が同時に操作されたとき(ステップS9−1)、現在設定されているトランスポーズ値を“0”にしてRAM3に記憶されているトランスポーズ値を更新し(ステップS9−2)、UPスイッチ9−8−1に内蔵されたLEDあるいはDOWNスイッチ9−8−2に内蔵されたLEDを消灯させる(ステップS9−3)。
【0046】
この際、リセットされたことの確認のために、LCD4の画面にトランスポーズ値“0”を表示させ、その後、所定時間内にトランスポーズ値設定用UP/DOWNスイッチ9−8が操作されなければ、図5および図6のフローに従ってトランスポーズ値“0”の表示を消去し、定常画面に戻すようにしてもよいが、リセット状態はUPスイッチ9−8−1およびDOWNスイッチ9−8−2に内蔵されたLEDの消灯でわかるので、そのような画面をわざわざ表示しなくても構わない。
【0047】
以上、実施形態を説明したが、本発明は種々に改変可能である。例えば、上記実施形態では、UPスイッチ9−8−1に内蔵されたLEDを点灯させることでトランスポーズ値が“+”側に設定されていることを表示し、DOWNスイッチ9−8−2に内蔵されたLEDを点灯させることでトランスポーズ値が“−”側に設定されていることを表示しているが、LEDをそれとは異なる発光状態、例えば、点滅させたり、明るさや色を変えたりして表示させるようにしてもよい。また、トランスポーズ値が“0”に設定されていることの表示も、上記実施形態とは異なる発光状態、例えばUPスイッチ9−8−1およびDOWNスイッチ9−8−2の双方に内蔵されたLEDを点滅させたり、その明るさや色を変えたりして表示させるようにしてもよい。
【0048】
また、トランスポーズ値の設定の有効/無効をそのLEDや別個のLEDで表示させることもでき、トランスポーズ設定用スイッチ9−8が操作されたことをLEDの点灯状態や発音によって告知するようにもできる。さらに、UPスイッチ9−8−1やDOWNスイッチ9−8−2と各種パラメータ設定用UP/DOWNスイッチ9−5とを兼用させることもできる。
【0049】
また、本発明は、トランスポーズ値の設定に限らず、所定値を基準として一方向および他方向に設定されるチューニングなどのパラメータの設定にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る電子楽音発生装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】操作パネル9の具体例を示す外観構成の正面図である。
【図3】表示装置で表示される画面の例を示す図である。
【図4】電子楽音発生装置の全体の処理を示すメインフローチャートである。
【図5】タイマ割り込み処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】イベント処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】トランスポーズ値設定用UPスイッチが操作された場合の処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】トランスポーズ値設定用DOWNスイッチが操作された場合の処理の一例を示すフローチャートである。
【図9】トランスポーズ値のリセット処理の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
1・・・CPU、2・・・ROM、3・・・RAM、4・・・表示装置(LCD)、5・・・外部記憶媒体インタフェース、6・・・外部入出力(MIDI)インタフェース、7・・・鍵盤、8・・・キースキャン回路、9・・・操作パネル、9−1・・・楽音発生音量設定用マスタ・ボリューム、9−2・・・デモ曲演奏用デモスイッチ、9−3・・・音色選択スイッチ、9−4・・・曲スタイル選択スイッチ、9−5・・・パラメータ設定用UP/DOWNスイッチ、9−6・・・エフェクトオン/オフスイッチ、9−7・・・リバーブオン/オフスイッチ、9−8・・・トランスポーズ値設定用UP/DOWNスイッチ、9−8−1・・・UPスイッチ、9−8−2・・・DOWNスイッチ、9−9・・・スプリット選択スイッチ、9−10・・・メトロノーム選択スイッチ、9−11・・・楽音録音・再生用スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽音の発音態様を定める第1のパラメータと該第1のパラメータによる楽音の発音態様に対して修正を加える第2のパラメータとに従って楽音を発生する電子楽音発生装置であって、
第2のパラメータが前記第1のパラメータによる楽音の発音態様を1方向に修正する度合いを設定するための第1の操作子と、
前記第2のパラメータが前記第1のパラメータによる楽音の発音態様を前記第1の操作子が操作された場合とは別の方向に修正する度合いを設定するための第2の操作子と、
前記電子楽音発生装置における各種設定情報を表示するとともに、前記第2のパラメータが前記第1のパラメータによる楽音の発音態様に対して加える修正の度合いを示す値を表示可能な表示手段と、
前記第2のパラメータが前記第1のパラメータによる楽音の発音態様に対して加える修正の度合いを示す値が前記表示手段に表示されていないとき、前記第1の操作子あるいは前記第2の操作子の操作に応じて、前記第2のパラメータによって前記第1のパラメータによる楽音の発音態様が既に修正されている場合は、前記第2のパラメータによって前記第1のパラメータによる楽音の発音態様に対して加える修正の度合いを示す値を前記表示手段に表示し、前記第2のパラメータによって前記第1のパラメータによる楽音の発音態様がまだ修正されていない場合は、該修正を実行するとともに、該修正の度合いを示す値を前記表示手段に表示する第1の制御手段と、
前記第1の制御手段による表示が開始されてから所定時間経過を検出して該表示を解除する第2の制御手段を備えたことを特徴とする電子楽音発生装置。
【請求項2】
前記第1のパラメータは、楽音の音高に関するパラメータであり、前記第2のパラメータは、トランスポーズまたはチューニングに関するパラメータであることを特徴とする請求項1に記載の電子楽音発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−310357(P2008−310357A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218082(P2008−218082)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【分割の表示】特願2003−407380(P2003−407380)の分割
【原出願日】平成15年12月5日(2003.12.5)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)
【Fターム(参考)】