説明

電子機器、ならびにそのはんだ付け状態の検査方法および装置

【課題】従来のはんだ付け状態検の査装置では、実装基板を撓ませるための装置が大掛かりでコスト高になっていた。また、実装基板が均一に撓むことがなく、実装基板の全域にわたって前記はんだ付け不良を検出することが困難であった。
【解決手段】電子部品26がはんだ付け実装された実装基板20と、前記実装基板20を収納するケース11とを備えた電子機器10であって、前記実装基板20は、その周囲を前記ケース11により支持され、前記ケース11内には、前記実装基板20により仕切られた第一の空間11Aおよび第二の空間11Bが形成され、前記ケース11における実装基板20の支持部は支持部材12によりシールされ、前記第一の空間11Aおよび第二の空間11Bは空気が封入された密封空間に構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品がはんだ付け実装された実装基板と、前記電子部品を収納するケースとを備えた電子機器、ならびにそのはんだ付け状態の検査方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車に搭載されるECU(Engine Control Unit)等の電子機器は、種々の電子部品がはんだ付け実装された実装基板をケースに収納して構成したものが多くある。
このような電子機器の生産工程では、実装基板への電子部品の実装、および実装済みの実装基板のケースへの組み込み等といった組み立て作業が終了して出荷する前に、電子機器の機能が正常に発揮されるか否かの検査を行う機能検査が実施されている。
【0003】
前述の機能検査においては、電子部品が実装基板へ未実装であったり、電子部品の端子と実装基板の電極パターン(ランド)とが電気的に接続されていなかったりした場合には、機能不良が存在する旨の判定がなされることとなる。
【0004】
しかし、実装されている電子部品の端子と実装基板の端子(ランド)との間にはんだ付けが行われていない、いわゆる「未はんだ」の状態のはんだ付け不良が存在していたとしても、機能検査時に両端子が接触した状態にあると、両端子間の通電が確保された状態となっているため、機能検査では正常であると判定されてしまうことがある。
【0005】
このように、はんだ付け不良が存在している端子接続部が一時的に電気的に接続された状態となっていると、機能検査では正常であると判定されるが、機能検査後に熱や振動の影響により前記端子接続部の接触状態が解除されて電気的にオープンした状態となり、機能不良が発生することがある。
【0006】
そこで、従来は、機能検査における、実装基板に存在する「未はんだ」などのはんだ付け不良の検出精度を向上させた構成が考案されている。
例えば特許文献1に示す検査装置においては、電子機器のケースの中央部をロッドにて支持するとともに、端部の複数個所をロッドにて押圧することにより、実装基板をケースごと撓ませた状態で機能検査を行うように構成している。
このように、ロッドによりケースを撓ませた状態で機能検査を行うことにより、撓んでいない状態の実装基板では検出できなかったはんだ付け不良の検出を、実装基板がケースに収納された状態でも行うことが可能となっている。
【特許文献1】特開2000−321315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前述の特許文献1に示す検査装置のように、電子機器のケースの中央部と端部とに逆方向の力を加えることにより該ケースを撓ませて機能検査を行うように構成した場合、前記ケースは内部に収納する実装基板を外力から保護するために屈強で高剛性に構成されているので、ケースを撓ませるためには大きな力を要することとなり、撓ませるための装置が大掛かりでコスト高になっていた。
【0008】
また、特許文献1の検査装置では、電子機器のケースをロッドにより局所的に押圧して撓ませていたので、内部に収納される実装基板が均一に撓むことがなく(大きく撓む箇所や殆ど撓まない個所が混在している)、実装基板の全域にわたって前記はんだ付け不良を検出することが困難であった。
【0009】
そこで、本発明においては、簡単な構成により、実装基板の全域にわたって「未はんだ」などのはんだ付け不良を精度良く検出することが可能な電子機器、ならびにそのはんだ付け状態検査方法および装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する電子機器、ならびにそのはんだ付け状態の検査方法および装置は、以下の特徴を有する。
即ち、請求項1記載の如く、電子部品がはんだ付け実装された実装基板と、前記実装基板を収納するケースとを備えた電子機器であって、前記実装基板は、その周囲を前記ケースにより支持され、前記ケース内には、前記実装基板により仕切られた第一の空間および第二の空間が形成され、前記ケースにおける実装基板の支持部はシールされ、前記第一の空間および第二の空間は気体が封入された密封空間に構成される。
これにより、前記第一の空間または第二の空間内の気体を加熱して膨張させ、前記空間に隣接する実装基板を湾曲させることができる。
このように、実装基板を湾曲させた状態で電子機器の機能検査を行うことで、未はんだ状態となっていて実装基板にはんだ接続されていないなどのはんだ付け不良状態にある電子部品の端子を、実装基板から浮かせた状態で機能検査を行うことが可能となり、これらのはんだ付け不良を高精度で検出することが可能となる。
また、前記第一の空間または第二の空間内の気体を膨張させることで実装基板が湾曲することとなるので、前記実装基板に加わる力は、実装基板の全域にわたって等しくなる。従って、実装基板を全域にわたって略等しい曲率で湾曲させることができ、未はんだ状態等の端子が実装基板の何れの場所に位置していたとしても電極パターンから浮くこととなって、確実にはんだ付け不良を検出することが可能となる。
さらに、簡単かつ低コストな構成の装置にて実装基板を撓ませることが可能となる。
【0011】
また、請求項2記載の如く、前記実装基板における、実装された電子部品の端子間の下方に相当する位置には、所定の厚みを有したパターンが形成されている。
これにより、前記パターンが形成されていない場合に比べて、電子部品の端子を実装基板の電極パターンから大きく離すことができ、未はんだ状態等のはんだ付け不良が生じている端子と電極パターンとの電気的な接続を確実に切り離すことができ、はんだ付け不良の検出精度をさらに向上させることが可能となる。
【0012】
また、請求項3記載の如く、前記パターンは、電子部品の端子が接続される電極パターンと同質のパターンにレジストを被覆したものである。
これにより、前記パターンを電極パターンおよびレジストを形成する工程で同時に形成することができるため、前記パターンを形成するための余分な工程が増加することもなく、実装基板のコストアップを招くことがない。
【0013】
また、請求項4記載の如く、請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の電子機器におけるはんだ付け状態の検査方法であって、前記第一の空間または第二の空間の何れか一方を加熱する工程と、前記加熱開始から所定時間経過後に、前記電子機器の機能検査を実施する工程とを備える。
これにより、前記第一の空間または第二の空間内の気体を加熱して膨張させ、前記空間に隣接する実装基板を湾曲させることができる。
このように、実装基板を湾曲させた状態で電子機器の機能検査を行うことで、未はんだ状態となっていて実装基板にはんだ接続されていないなどのはんだ付け不良状態にある電子部品の端子を、実装基板から浮かせた状態で機能検査を行うことが可能となり、これらのはんだ付け不良を高精度で検出することが可能となる。
また、前記第一の空間または第二の空間内の気体を膨張させることで実装基板が湾曲することとなるので、前記実装基板に加わる力は、実装基板の全域にわたって等しくなる。従って、実装基板を全域にわたって略等しい曲率で湾曲させることができ、未はんだ状態等の端子が実装基板の何れの場所に位置していたとしても電極パターンから浮くこととなって、確実にはんだ付け不良を検出することが可能となる。
さらに、簡単かつ低コストな構成の装置にて実装基板を撓ませることが可能となる。
【0014】
また、請求項5記載の如く、前記電子機器の機能検査の実施は、前記第一の空間または第二の空間を加熱することにより前記実装基板に生じる反りの大きさが最も大きくなるときに行われる。
これにより、未はんだ状態等となっている電子部品の端子が電極パターンから最も大きく離れる状態となっているときに機能検査を行うことができるため、未はんだ等のはんだ付け不良を確実に検出することが可能となる。
【0015】
また、請求項6記載の如く、請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の電子機器におけるはんだ付け状態の検査装置であって、前記電子機器のケース内に形成される第一の空間または第二の空間の何れか一方を加熱する加熱具と、前記電子機器に接続され、該電子機器の機能検査を行う検査機とを備える。
これにより、前記加熱具により第一の空間または第二の空間内の気体を加熱して膨張させ、前記空間に隣接する実装基板を湾曲させることができる。
そして、実装基板を湾曲させた状態で前記検査機により電子機器の機能検査を行うことで、未はんだ状態となっていて実装基板にはんだ接続されていないなどのはんだ付け不良状態にある電子部品の端子を、実装基板から浮かせた状態で機能検査を行うことが可能となり、これらのはんだ付け不良を高精度で検出することが可能となる。
また、前記第一の空間または第二の空間内の気体を膨張させることで実装基板が湾曲することとなるので、前記実装基板に加わる力は、実装基板の全域にわたって等しくなる。従って、実装基板を全域にわたって略等しい曲率で湾曲させることができ、未はんだ状態等の端子が実装基板の何れの場所に位置していたとしても電極パターンから浮くこととなって、確実にはんだ付け不良を検出することが可能となる。
さらに、簡単かつ低コストな構成の装置にて実装基板を撓ませることが可能となる。
【0016】
また、請求項7記載の如く、前記検査機による前記電子機器の機能検査の実施は、前記加熱具により前記第一の空間または第二の空間を加熱することにより前記実装基板に生じる反りの大きさが最も大きくなるときに行われる。
これにより、未はんだ状態等となっている電子部品の端子が電極パターンから最も大きく離れる状態となっているときに機能検査を行うことができるため、未はんだ等のはんだ付け不良を確実に検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電子機器のケース内における第一の空間または第二の空間内の気体を加熱して膨張させて実装基板を湾曲させた状態で電子機器の機能検査を行うことができ、未はんだ状態等のはんだ付け不良状態にある電子部品の端子を、実装基板から浮かせた状態で機能検査を行うことが可能となり、これらのはんだ付け不良を高精度で検出することが可能となる。
また、実装基板を全域にわたって略等しい曲率で湾曲させることができ、確実にはんだ付け不良を検出することが可能となる。
さらに、簡単かつ低コストな構成の装置にて実装基板を撓ませることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明を実施するための形態を、添付の図面を用いて説明する。
【0019】
図1に示すはんだ付け状態の検査装置は、自動車に搭載されるECU(Engine Control Unit)等の電子機器10におけるはんだ付け状態の検査を行う装置であって、前記電子機器10のケース11を加熱する加熱具であるヒーター2と、前記電子機器10にケーブル3を介して接続され、該電子機器10の機能検査を行う検査機1とを備えている。
【0020】
図2、図3に示すように、前記電子機器10は、複数の電子部品26・26・・・がはんだ付け実装された実装基板20と、前記実装基板20を収納するケース11と、電子機器10をケーブル3に接続するためのコネクタ14とを備えている。
前記実装基板20は、前記ケース11内における上下方向途中部に配置されており、その外周面が支持部材12を介してケース11の側面に支持されている。
前記ケース11内の空間は実装基板20により2分割されており、該ケース11内には実装基板20の上方に位置する上部空間11A、および実装基板20の下方に位置する下部空間11Bが形成されている。
【0021】
また、前記実装基板20は、その外周を全域にわたって前記支持部材12により支持されている。
前記支持部材12は、実装基板20ケース11の側面との間をシールするシール部材としての役目も果たしており、該支持部材12により実装基板20をケース11内の上下途中部にシールしながら支持することで、前記上部空間11Aおよび下部空間11Bをそれぞれ密封空間として形成している。
上部空間11Aおよび下部空間11B内には、例えば空気が常圧で封入されている。
【0022】
また、前記ケース11は、例えば上部ケース11aと下部ケース11bとの2つの部材にて構成されており、電子機器10を組み立てる際には、例えば前記支持部材12が付設された下部ケース11bに実装基板20をセットした後に、上部ケース11aを実装基板20の上方から下部ケース11bに被せるようにしている。
【0023】
図4に示すように、実装基板20の基材21における電子部品26の実装面には、該電子部品26の端子26a・26aが接続される電極パターン22・22や、基材21の表面を被覆するレジスト23・23が形成されている(図4においては、実装基板20は、基材21の片面のみが電子部品26の実装面となっている片面基板に構成されているが、実装基板20は、基材21の両面に電子部品26を実装する両面基板として構成することも可能である)。
【0024】
前記電子部品26は、その端子26aと電極パターン22とをはんだ27にて接続することで実装基板20に実装されている。
実装基板20にはんだ付け実装された電子部品26の下方には(すなわち電子部品26と基材21との間には)、電極パターン22の表面をレジスト23にて被覆したパターンが形成されている。
なお、実装基板20に実装される電子部品26としては、例えばLSI、IC、抵抗、コンデンサ、ダイオード、リレー、コネクタ等がある。
【0025】
このように、電子部品26は実装基板20にはんだ付け実装されるが、実装された電子部品26の中には、図5に示すようなはんだ付け不良が発生するものもある。
つまり、図5に示す電子部品26は、例えば左右2か所に端子26a・26aが形成されるチップ部品であるが、左方の端子26aのみがはんだ接続されており、右方の端子26aは「未はんだ」のはんだ付け不良が生じた状態であり、端子26aと電極パターン22とのはんだ27による接続はなされていない。
【0026】
前述のように、前記右方の端子26aと電極パターン22とははんだ接続されていないが、該端子26aは電極パターン22と物理的に接触しており、図5に示す状態では両者は電気的に接続されている。
このように、未はんだ状態ではあるが、電子部品26の端子26aと実装基板20の電極パターン22とが接触して電気的に接続されている場合、通常の機能検査では、当該電子部品26が正常に機能するため、良品であると判定されてしまう。
【0027】
しかし、検査時に端子26aが電極パターン22と接触していたとしても、その後に電子機器10に振動や熱が加わった際に、図6に示すように、端子26aが電極パターン22から離れて浮いた状態となり、当該電子部品26が正常に機能しないといった不具合が生じることがある。
【0028】
そこで、本はんだ付け状態の検査装置においては、このような「未はんだ」等のはんだ付け不良の存在を、検査機1による電子機器10の機能検査を行う際に検出することができるように構成している。
次に、はんだ付け状態の検査装置を用いて電子機器10の機能検査を行う手順について説明する。
【0029】
図7に示すように、まず、電子機器10をケーブル3により検査機1に接続する(S01)。
電子機器10の検査機1へのセットが完了したら、前記ヒーター2をオンして、図2に示すように電子機器10のケース11を下方から加熱する(S02)。
前記ケース11の加熱を開始してから所定時間待機しておき(S03)、所定時間が経過すると前記検査機1による電子機器10の機能検査を行う(S04)。
そして、機能検査の結果が良否判定され(S05)、良品であれば良判定が下され(S06)、不良品であれば不良判定が下される(S07)。
【0030】
この場合、電子機器10のケース11が下方から加熱されると、ケース11の下部に位置する下部空間11Bの温度が上昇し、該下部空間11B内の空気が膨張する。
前記下部空間11Bは密封されているため、該下部空間11B内の空気が膨張すると、可撓性を有するとともに、その外周がケース11に支持されている実装基板20が上方(上部空間11A側)に凸となるように湾曲する(図2に二点鎖線で示した状態)。
【0031】
実装基板20が上方に湾曲すると、実装基板20の上面に実装されている電子部品26の形状は変化しないため、電子部品26の両端に配置されている端子26a・26aと、実装基板20の電極パターン22・22との間には離れる方向の力がかかる。
【0032】
このように、端子26a・26aと電極パターン22・22との間に離れる方向の力がかかった場合、両端部の端子26a・26aと電極パターン22・22とが共に正常にはんだ接続されていれば、両端部はそのまま接続状態を保持したままとなるが、図8に示すように、一方(左端部)の端子26aが電極パターン22とはんだ接続されていて、他方(右端部)の端子26aは「未はんだ」により電極パターン22とはんだ接続されていない場合は、はんだ接続がされていない方の端子26aが電極パターン22から浮いた状態となる。
【0033】
つまり、実装基板20が湾曲しておらず側面視において直線状であるときには、一方の端子26aのみが電極パターン22とはんだ接続されている状態でも、他方の端子26aと電極パターン22とが接触することもあるが、実装基板20が前述のように湾曲した場合は、他方の電極パターン22が端子26aから離れる方向へ移動することとなるため、両者間に隙間ができて、端子26aが電極パターン22から浮いた状態となる。
【0034】
本はんだ付け状態の検査装置では、このように、前記ケース11の下部を加熱して下部空間11B内の空気を膨張させることにより、該下部空間11Bに隣接する実装基板20を上方に凸に湾曲させて、未はんだ状態となっている端子26aを電極パターン22から浮かせた状態としたうえで検査機1による電子機器10の機能検査を行うようにしている。
これにより、実装基板20が湾曲していない状態で行う通常の機能検査時には機能が正常であると判定される、未はんだ状態の端子26aを有する電子部品26であっても、機能が正常でなくなるので不良であるとの判定を行うことができ、端子26aの電極パターン22に対するはんだ付け不良の検出精度を向上することが可能となっている。
【0035】
このように、加熱により下部空間11B内の空気を膨張させて実装基板20を湾曲させることにより未はんだ状態の端子26aを電極パターン22から浮かせるように構成しているが、下部空間11B内における前記実装基板20に接する部分の空気の圧力は、前記実装基板20の全域にわたって同じであるので、下部空間11B内の空気が膨張することにより前記実装基板20に加わる力は、実装基板20の全域にわたって等しくなる。
従って、実装基板20は全域にわたって略等しい曲率で湾曲することとなるため、未はんだ状態の端子26aが実装基板20の何れの場所に位置していたとしても電極パターン22から浮くこととなって、確実にはんだ付け不良を検出することが可能となる。
【0036】
また、本はんだ付け状態の検査装置では、ヒーター2により下部空間11B内の空気を加熱して膨張させることで実装基板20を湾曲させるようにしているので、従来のようにロッドによりケース11ごと撓ませる場合に比べて装置を簡単かつ低コストな構成とすることができる。
【0037】
また、前記実装基板20における、該実装基板20に実装された電子部品26の端子26a・26a間の下方に相当する位置には、前記電極パターン22と同質のパターンにて形成されるダミー電極パターン22’に、レジスト23を被覆して構成されたダミーパターン29が形成されている。
【0038】
このダミーパターン29は所定の厚みを有しているため(電極パターン22の厚みにレジスト23の厚みを加えた厚み)、実装基板20が上方へ凸に湾曲した際に、該ダミーパターン29が電子部品26の下面を押圧することとなり、ダミーパターン29が形成されていない場合に比べて、他方の端子26aが電極パターン22から大きく離れるので、未はんだ状態となっている端子26aと電極パターン22との電気的な接続を確実に切り離すことができ、はんだ付け不良の検出精度をさらに向上させることが可能となっている。
【0039】
また、前記ダミーパターン29のダミー電極パターン22’は、電極パターン22を基材21に形成する際に同時に形成され、該ダミーパターン29のレジスト23は他部のレジスト23を形成する際に同時に形成されるため、ダミーパターン29を形成するために余分な工程が増加することもなく、実装基板20のコストアップを招くこともない。
【0040】
また、ヒーター2により前記電子機器10のケース11下部を加熱すると前記下部空間11B内の空気が膨張して実装基板20が上方へ凸に湾曲することとなるが、ヒーター2による加熱を継続していくと、下部空間11B内の熱がケース11および実装基板20を通じて上部空間11A内に伝達され、次第に上部空間11A内の空気が加熱されて膨張することとなる。
この上部空間11A内の空気の膨張により、実装基板20には下へ湾曲する方向の力が新たに加わることとなり、上方へ凸に湾曲している実装基板20の湾曲度合いが減少していき、ついには下部空間11Bと上部空間11Aとの温度が等しくなって実装基板20は直線状に戻ってしまうこととなる。
【0041】
つまり、図9に示すように、実装基板20の上方への湾曲量は、ケース11下部の加熱を開始してから増加していき、所定の時間が経過した時点でピークに達した後、減少していくことになる。
【0042】
そこで、本はんだ付け状態の検査装置では、検査機1による電子機器10の機能検査を、加熱開始から実装基板20の湾曲量が最も大きくなる時間tだけ経過した時点で実施するようにしている。
このように実装基板20が最も大きく湾曲しているときに実装基板20の機能検査を実施することで、未はんだ状態となっている電子部品26の端子26aが電極パターン22から最も大きく離れる状態となっているときに機能検査を行うことができるため、未はんだ等のはんだ付け不良を確実に検出することが可能となっている。
【0043】
なお、本例では、ケース11の下部空間11Bを加熱して実装基板20の上面に実装された電子部品26のはんだ付け不良を検出するように構成しているが、実装基板20の下面に実装された電子部品26のはんだ付け不良を検出することも可能である。
つまり、実装基板20の下面に実装された電子部品26のはんだ付け不良を検出する場合は、ケース11の上部空間11A内の空気を加熱して実装基板20を下部空間11B側へ湾曲させることではんだ付け不良の検出を行うことができる。
【0044】
また、本例では、はんだ付け不良として、未はんだ状態で電子部品26の端子26aと実装基板20の電極パターン22とがはんだ接続されていないモードの不良を検出する場合について説明したが、電子部品26の実装位置がずれていたり、はんだ量が少なかったりして前記端子26aの電極パターン22に対するはんだ付け状態が不十分である場合等、実装基板20を湾曲させた際に端子26aと電極パターン22とのはんだ接続部が剥離するようなモードのはんだ付け不良についても、本はんだ付け状態の検査装置により検出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】はんだ付け状態の検査装置を示す概略図である。
【図2】ヒーターおよび電子機器を示す側面断面図である。
【図3】電子機器を示す平面断面図である。
【図4】電子部品が実装された実装基板を示す側面断面図である。
【図5】未はんだ状態の端子を有する電子部品が実装されている実装基板を示す側面断面図である。
【図6】未はんだ状態の端子を有する電子部品を示す斜視図である。
【図7】はんだ付け状態の検査装置による電子部品の機能検査の手順を示す図である。
【図8】実装基板が湾曲して未はんだ状態の端子が電極パターンから浮いている状態を示す側面断面図である。
【図9】電子機器のケースの加熱時間と実装基板の湾曲量との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1 検査機
2 ヒーター
3 ケーブル
10 電子機器
11 ケース
11A 上部空間
11B 下部空間
12 支持部材
20 実装基板
21 基材
22 電極パターン
23 レジスト
26 電子部品
27 はんだ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品がはんだ付け実装された実装基板と、前記実装基板を収納するケースとを備えた電子機器であって、
前記実装基板は、その周囲を前記ケースにより支持され、
前記ケース内には、前記実装基板により仕切られた第一の空間および第二の空間が形成され、
前記ケースにおける実装基板の支持部はシールされ、
前記第一の空間および第二の空間は気体が封入された密封空間に構成される、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記実装基板における、実装された電子部品の端子間の下方に相当する位置には、所定の厚みを有したパターンが形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記パターンは、電子部品の端子が接続される電極パターンと同質のパターンにレジストを被覆したものである、
ことを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の電子機器におけるはんだ付け状態の検査方法であって、
前記第一の空間または第二の空間の何れか一方を加熱する工程と、
前記加熱開始から所定時間経過後に、前記電子機器の機能検査を実施する工程とを備える、
ことを特徴とする電子機器のはんだ付け状態の検査方法。
【請求項5】
前記電子機器の機能検査の実施は、
前記第一の空間または第二の空間を加熱することにより前記実装基板に生じる反りの大きさが最も大きくなるときに行われる、
ことを特徴とする請求項4に記載の電子機器のはんだ付け状態の検査方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の電子機器におけるはんだ付け状態の検査装置であって、
前記電子機器のケース内に形成される第一の空間または第二の空間の何れか一方を加熱する加熱具と、
前記電子機器に接続され、該電子機器の機能検査を行う検査機とを備える、
ことを特徴とする電子機器のはんだ付け状態の検査装置。
【請求項7】
前記検査機による前記電子機器の機能検査の実施は、
前記加熱具により前記第一の空間または第二の空間を加熱することにより前記実装基板に生じる反りの大きさが最も大きくなるときに行われる、
ことを特徴とする請求項6に記載の電子機器のはんだ付け状態の検査装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−109224(P2009−109224A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279119(P2007−279119)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】