説明

電子機器の消音装置

【課題】空冷による発熱体を冷却する電子機器の消音装置において、小型で簡易な構造でありながら、送風に対する消音効果の大きくする。
【解決手段】
冷却風を流すための一つまたは複数の流路2が設けられた消音装置において、冷却風を流すための流路2を形成する流路形成部材1と、この部材に固定した吸音材5とを備え、吸音材5の内部に共鳴型消音器の空洞部4と、前記流路形成部材の一部に面積6の共鳴型消音器の開口部とを設け、流路の壁面に共鳴型消音器を構成する。そして、この共鳴型消音器により、送風機の騒音のピーク周波数に対して、消音したい周波数を設定する。さらに、スライド機構8よりスライドさせるスライド部材7を設け、開口部の面積6を調節できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の消音装置に係り、空冷により発熱体の冷却をおこなう電子機器に取り付けて、簡易な構造により、送風による騒音を消音するのに用いて好適な電子機器の消音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ブレードサーバと呼ばれる電子機器の形態が急速に普及しつつある。これは、ブレードと呼ばれる着脱可能なサーバを筐体内に複数搭載するもので、筐体内のサーバの実装密度を飛躍的に向上させることができる。実装密度の向上に伴い、サーバ中の発熱部(CPU、メモリ、ハードディスク等)を冷却するための送風機の数やその回転数が増加し、結果として電子機器の騒音も上昇している。
【0003】
一方で、サーバの実装密度の向上により筐体の小型化が可能となったため、事務室に設置される頻度が高くなり、低騒音化の要望が強くなっている。こうした低騒音化の要望に応えるためには、送風機近傍や筐体等に、グラスウールやウレタン等の吸音材を用いた消音装置を設置することが多い。これにより、吸音材の吸音特性に応じた周波数帯域で消音効果が得られる。
【0004】
ここで、図16を用いて従来技術に係る電子機器の消音装置について説明する。
図16は、従来技術に係る電子機器の消音装置の断面図である。
【0005】
例えば、特許文献1には、このような構造を有する従来技術に係る電子機器の消音化構造が開示されている。
【0006】
ブレードサーバ等の電子機器は、筐体13、送風機15、CPU等の発熱部を有する複数のサーバ16等からなり、冷却風は吸気口14から流入し、排気口20から流出する。また、送風機15の騒音を低減化することを目的として、送風機の近傍、あるいは吸気口や排気口の近傍に、複数の吸音材18、19、21、22を用いて消音構造17を形成している。
【0007】
【特許文献1】特開平5−226864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここでは、図16と、さらに、図17および図18を用いて従来技術に係る電子機器の消音装置の問題点について説明する。
図17は、送風による騒音の周波数と騒音レベルの関係を示すグラフである。
図18は、一般的な吸音材の周波数と吸音率の関係を示すグラフである。
【0009】
図16に示された従来技術に係る電子機器の消音装置では、複数の吸音材18、19、21、22により消音構造17を形成し、送風機15から生じる騒音を低減している。送風機の騒音は、図17に示すように、比較的低い特定の周波数に強いピークを持つことが多い。しかしながら、図18に示すように、グラスウールやウレタン等の一般的な吸音材は高域ほど吸音特性が高いため、図16に示された送風機15の騒音を十分に低減するには、吸音材18、19、21、22の厚みや面積等を大きくする必要がある。そのため、消音構造17の全体のサイズが大きくなってしまうという問題があった。また、消音構造の大型化によって流体抵抗が増加し、冷却風の通過が阻害されるという問題があった。また、サーバ16の着脱が可能なブレードサーバ等の電子機器においては、サーバの搭載数を変えると、機器の発熱量が変化する。そのため、送風機15の回転数等の仕様を変える必要があり、結果として騒音の周波数特性が変化する。このような場合、電子機器が設置される場所における騒音の許容値に基づいて、消音構造17を再度構成する必要があるという問題があった。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、その目的は、空冷による発熱体を冷却する電子機器の消音装置において、小型で簡易な構造でありながら、送風に対する消音効果の大きな電子機器の消音装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電子機器の消音装置は、送風機によって冷却風を流して発熱体を冷却するブレードサーバ等の電子機器に、送風機の騒音のピーク周波数を消音できるように、複数の共鳴型消音器を有する消音装置を、電子機器の筐体の内部あるいは外部に装着したものである。
【0012】
すなわち、冷却風を流すための一つまたは複数の流路が設けられたその流路に消音器の構造を形成するものであって、冷却風を流すための流路を形成する流路形成部材と、この部材に固定した吸音材とを備え、吸音材の内部に共鳴型消音器の空洞部と、流路形成部材の一部に開口部とを設け、流路の壁面に共鳴型消音器を構成するようにしたものである。
【0013】
また、本発明の電子機器の消音装置は、電子機器の仕様の変更や稼動状態の変化によって、送風機の騒音の周波数特性が変化する場合においても騒音を消音できるように、ターゲット周波数を自由に変えられる複数の共鳴型消音器を有する消音装置を、電子機器の筐体の内部あるいは外部に装着したものである。
【0014】
すなわち、冷却風を流すための一つまたは複数の流路が設けられたその流路に消音器の構造を形成するものであって、冷却風を流すための流路を形成する流路形成部材と、この部材に固定した吸音材とを備え、吸音材の内部に共鳴型消音器の空洞部と、流路形成部材の一部に開口部とを設け、流路の壁面に共鳴型消音器を構成するるようにしたものであって、スライド機構により共鳴型消音器の開口部の面積を調節するスライド部材を設けるようにしたものである。
【0015】
さらに、本発明の電子機器の別の消音装置は、送風機によって冷却風を流して発熱体を冷却するブレードサーバ等の電子機器に、送風機の騒音のピーク周波数を消音できるように、電子機器の筐体の内部あるいは外部の冷却風の流路の壁面に、膨張型消音器を構成したものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、空冷による発熱体を冷却する電子機器の消音装置において、小型で簡易な構造でありながら、送風に対する消音効果の大きな電子機器の消音装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る各実施形態を、図1ないし図20を用いて説明する。
【0018】
〔実施形態1〕
以下、本発明に係る第一の実施形態を、図1ないし図3、図19および図20を用いて説明する。
図1は、本発明の第一の実施形態に係る電子機器の消音装置の斜視図である。
図2は、本発明の第一の実施形態に係る電子機器の消音装置の断面図である。
図3は、本発明の第一の実施形態に係る電子機器の消音装置を、電子機器に取り付けたときの断面図である。
図19は、共鳴型消音器における周波数と効果の関係を示すグラフである。
図20は、一般的なヘルムホルツ型共鳴器の構造を模式的に示す図である。
【0019】
本実施形態の消音装置は、ブレードサーバ等の電子機器の吸気側または排気側のドア部分における消音のための機構として用いることができるものである。本実施形態の消音装置は、図1に示されるように、本実施形態の冷却風の流路2を正面からみた場合に、騒音源が見えないように流路に傾斜を持たせた構造を有する。また、図2は、図1のA−Aで切断した断面を示す図である。
【0020】
本実施形態の消音装置は、冷却風の流路2を形成する流路形成部材1と、この部材に固定した吸音材5とで構成されている。ここで、吸音材5の内部には共鳴器型消音器の空洞部4が設けられており、また、流路形成部材1に穿たれた複数の穴3によって、面積6の共鳴型消音器の開口部が形成されている。空洞部4の少なくとも一個所以上の断面積を、開口部と空洞部4の接する面の断面積よりも大きくしている。
【0021】
ここで、本実施形態の消音装置は、流路形成部材1の穿たれた穴3と、空洞部4により、いわゆるヘルムホルツ型共鳴器(Hermholtz resontor)を構成している。
【0022】
ヘルムホルツ型共鳴器は、図20に示されるような構造であり、ネック部分と空洞部分が連結している壷上の容器である。このような容器に共振周波数に相当する音波が入射すると、共振(共鳴)が生じてネック部分の空気は激しく振動する。そのときに、ネックから音が再放射されるが、管壁で粘性抵抗が働き、入射した音波のエネルギーの一部は熱に変換されて吸音効果が生じる。共振周波数fは、以下の(式1)で表される。
【0023】
【数1】

ただし、cは、音速であり、δは、ネック長に対する補正(管端補正)であり、直径dの断面の場合には、δ=0.8dとなる。
【0024】
本実施形態の消音装置は、図18に示すような、吸音材による広帯域における消音効果と、図19に示すような、共鳴型消音器による特定のターゲット周波数ftにおける消音効果とを併せて得られる。ここで、ターゲット周波数ftを決定する寸法は、空洞部4の体積および開口部の面積6である。したがって、対象となる騒音のピーク周波数と共鳴型消音器のターゲット周波数ftとを一致させるように空洞部4の体積および開口部の面積6を設計することで、対象となる騒音のピーク周波数において消音効果を最大にする共鳴型消音器を構成することができる。これにより、吸音材の厚みや面積等を大きくすることなく消音効果を上げられ、消音構造を小型にすることができる。
【0025】
また、本実施形態の消音装置は、冷却風の流路を形成する部材の一部に共鳴型消音器をもたせることにより、通風性能と消音性能とを併せて得られる。これにより、冷却風の通過を阻害することなく、消音性能を上げることができる。
【0026】
なお、本実施形態の消音装置は、図に示されるように、冷却風の流路2は二つ存在するが、この数は一つまたは複数でもよい。また、共鳴型消音器の開口部を形成する穴3は円形を示しているが、この形状は長方形やその他の形状でもよく、穴の数は一つまたは複数でもよい。また、共鳴型消音器の空洞部4を有する吸音材5の材料は、共鳴型消音器の空洞部を構成可能な材料ならば任意で良い。また、冷却風の流路2の形状は直線的であるが、この形状は、流路2を正面からみた場合に騒音源が見えない形状ならば任意でよい。
【0027】
図3に示されているのは、図2に示した消音装置を、ブレードサーバ等の電子機器の筐体13に設置したものである。本実施形態の電子機器は、送風機15、CPU等の発熱部を有する複数のサーバ16等からなり、冷却風は吸気口14から流入し、冷却風の流路2から流出する。ここで、冷却風の排気側に設置された本発明の消音装置は、吸音材5による広帯域の消音効果に加えて、共鳴型消音器による送風機15の騒音ピーク周波数における消音効果を併せ持つ。そのため、図16に示された複数の吸音材18、19、21、22のみによる従来技術に係る消音装置に比べて、消音効果が高い。これにより、消音構造を小型化することができる。
【0028】
なお、本実施形態の図3に示した構造では、冷却流体の排気側に図2に示した消音装置を設置したが、吸気側に消音構造を設置してもよい。
【0029】
〔実施形態2〕
以下、本発明に係る第二の実施形態を、図4ないし図6を用いて説明する。
図4は、本発明の第二の実施形態に係る電子機器の消音装置の斜視図である。
図5は、本発明の第二の実施形態に係る電子機器の消音装置の断面図である。
図6は、本発明の第二の実施形態に係る電子機器の消音装置を、電子機器に取り付けたときの断面図である。
【0030】
ここで、図5は、図4のB−Bで切断した断面を示す図である。
【0031】
本実施形態の消音装置は、構成基本部材は第一の実施形態と同じである。しかしながら、本実施形態では、スライド機構8により共鳴型消音器の開口部の面積6を調節できるスライド部材7を設けた点が異なっている。共鳴型消音器のターゲット周波数を決定する寸法は、空洞部4の体積および開口部の面積6である。したがって、対象となる騒音のピーク周波数が変化する場合においても、開口部の面積6を変えて共鳴型消音器のターゲット周波数を変化させることより、消音効果を最大にする共鳴型消音器を構成することができる。
【0032】
また、スライド部材7の寸法10は、流路形成部材1の寸法9に比べて小さくすることで、スライド機構8によるスライド部材7の可動範囲は、流路形成部材1の寸法9に納まる。これにより、消音構造の全体の大きさを変えることなく、共鳴型消音器のターゲット周波数を変化させることができる。
【0033】
本発明の消音装置は、電子機器の仕様の変更や稼動状態の変化等によって、送風機の騒音の周波数特性が変化する場合においても、送風機の騒音のピーク周波数に合わせて共鳴型消音器のターゲット周波数を変化させることで、消音効果を最大にすることができる。これにより、仕様や稼動状態の異なる電子機器に対して、消音構造を再度構成することなく、同一の消音構造を適用することができる。
【0034】
なお、本実施形態の消音装置では、騒音のピーク周波数の検出ならびに共鳴型消音器の開口部面積の設定については、手動、自動いずれをも含めうる。例えば、冷却風の流路2の中にマイクロフォンを設置して、電子機器の稼動状態における騒音のピーク周波数を把握する。そして、自動化したスライド機構8により開口部の面積8を自動設定することにより、騒音のピーク周波数の変化に合わせて共鳴型消音器のターゲット周波数を自動的に変化させる消音構造を構成することができる。
【0035】
図6に示されているのは、図5に示した消音装置を、ブレードサーバ等の電子機器の筐体13に設置したものである。送風機15、CPU等の発熱部を有する複数のサーバ16等からなり、冷却風は吸気口14から流入し、冷却風の流路2から流出することは、第一の実施形態と同様である。
【0036】
サーバの着脱が可能なブレードサーバ等の電子機器において、仕様の変更や稼動状態の変化によって、送風機の騒音の周波数特性が変化する場合がある。このような場合に、本実施形態では、スライド機構8により、共鳴型消音器のターゲット周波数を、消音構造の全体の大きさを変えることなく自由に変化させることができる。すなわち、本実施形態では、サーバ16の搭載数の変更や機器の稼動状態の変化等によって送風機の騒音の周波数特性が変化する場合においても、スライド機構8によって面積6を変えて共鳴型消音器のターゲット周波数を送風機15の騒音のピーク周波数に合わせることにより、最適な消音構造を構成することができる。これにより、送風機15やサーバ16の搭載数の変更等による仕様の変更や、稼動状態の変化に対して、消音構造を再度構成することなく、同一の消音構造を適用することができる。
【0037】
〔実施形態3〕
以下、本発明に係る第三の実施形態を、図7および図8を用いて説明する。
図7は、本発明の第三の実施形態に係る電子機器の消音装置の斜視図である。
図8は、本発明の第三の実施形態に係る電子機器の消音装置の断面図である。
【0038】
ここで、図8は、図5に示した消音装置のC−C断面図である。
【0039】
本実施形態も、構成基本部材は、第二の実施形態のように、スライド機構8により共鳴型消音器の開口部の面積6を調節できるスライド部材7を設けたことは同様である。しかしながら、スライド部材7が複数分割されており、それぞれが独立にスライドできる点と、共鳴型消音器の開口部の構成方法とが異なっている。吸音材5の内部には共鳴型消音器の空洞部4が複数設けられている。また、スライド部材に穿たれた複数の穴11と、流路形成部材1に穿たれた複数の穴3とで、面積6の共鳴型消音器の開口部が形成されている。開口部の面積6は、スライド機構8によって自由に調節ができるため、消音構造中の各共鳴型消音器のターゲット周波数を独立に設定することができる。
これにより、対象となる騒音に複数のピーク周波数が存在し、それらが変化する場合においても、各共鳴型消音器のターゲット周波数をそれらのピーク周波数に合わせることで、複数のピーク周波数において消音効果を最大にする共鳴型消音器を構成することができる。
【0040】
〔実施形態4〕
以下、本発明に係る第四の実施形態を、図9を用いて説明する。
図9は、本発明の第四の実施形態に係る電子機器の消音装置の断面図である。
【0041】
本実施形態も、構成基本部材は、第一の実施形態と同じである。しかしながら、共鳴型消音器の空洞部4と開口部との構成手法が異なっている。本実施形態における共鳴型消音器の空洞部4と開口部とは、流路形成部材1の曲げによって構成されている。共鳴型消音器は、壁面を剛な部材により構成した場合、図19に示されたターゲット周波数ftのバンド幅fwが狭くなり、消音効果fhが高くなる。通常、流路形成部材1は吸音材5に比べて剛な部材によって構成されているため、本実施形態では、図2に示された第一の実施形態の消音装置に比べて、ターゲット周波数をより強く消音する共鳴型消音器を構成することができる。これにより、対象となる騒音に非常に強いピーク周波数がある場合においても、有効な消音構造を構成することができる。
【0042】
〔実施形態5〕
以下、本発明に係る第五の実施形態を、図10を用いて説明する。
図10は、本発明の第五の実施形態に係る電子機器の消音装置の断面図である。
【0043】
本実施形態は、第四の実施形態と同様に、共鳴型消音器の空洞部4と開口部とは、流路形成部材1の曲げによって構成されていることは同様である。しかしながら、スライド機構8により共鳴型消音器の開口部の面積6を調節できるスライド部材7を設けたことが異なる。
【0044】
これにより、対象となる騒音に非常に強いピーク周波数があり、これが機器の稼動状態の変化等で変動する場合においても、開口部の面積8を変えて共鳴型消音器のターゲット周波数を変化させることで、最適な共鳴型消音器を構成することができる。
【0045】
また、図10の断面図に示されるように、開口部の上部、下部のいずれの方向にもスライド部材を取り付けてもよい。
【0046】
〔実施形態6〕
以下、本発明に係る第六の実施形態を、図11および図12を用いて説明する。
図11は、本発明の第六の実施形態に係る電子機器の消音装置の正面図である。
図12は、本発明の第六の実施形態に係る電子機器の消音装置の断面図である。
【0047】
ここで、図12は、図11の消音装置のD−D断面図である。
【0048】
本実施形態の基本的な構成は、第五の実施形態と同様である。しかしながら、スライド部材7に吸音材12を固定したことが異なる。本実施形態では、スライド部材7に吸音材12を固定することで、吸音材12を接着していない場合に比べて、より消音効果を高めることができる。
【0049】
〔実施形態7〕
以下、本発明に係る第七の実施形態を、図13を用いて説明する。
図13は、本発明の第七の実施形態に係る電子機器の断面図である。
【0050】
これは、ブレードサーバ等の電子機器の筐体の内部に共鳴型消音器を設けたものである。本実施形態の電子機器は、送風機15、CPU等の発熱部を有する複数のサーバ16等からなり、これらを消音構造の内部に設置している。また、冷却風は吸気口14から流入し、流路2から流出する。このように、本実施形態では、通風性能と消音性能とを併せ持つ消音構造を形成することができる。
【0051】
また、図13に示した電子機器の冷却風の吸気側や排気側に、これまでに説明してきた実施形態の消音装置のいずれかを追加することにより、さらに、消音効果の電子機器の筐体を構成することができる。
【0052】
〔実施形態8〕
以下、本発明に係る第八の実施形態を、図14を用いて説明する。
図14は、本発明の第八の実施形態に係る電子機器の断面図である。
【0053】
本実施形態の消音装置は、第一の実施形態と同様、冷却風の流路2を形成する流路形成部材1と、この部材に固定した吸音材5とで構成されていることは、同様であり、電子機器に取り付けて使用することも同様である。しかしながら、開口部と空洞部4の構成が異なっている。本実施形態の消音装置では、開口部の面積6がすぼまらずに、空洞部4まで続いている。したがって、空洞部4により流路を流れる冷却風の流れが広がるようになる。これにより、流路形成部材1と吸音材5とで、いわゆる、膨張型消音器を構成している。
【0054】
膨張型消音器は、ダクト系の断面積を急変させることによって音響インピーダンスの不連続部を作り、その部分で生じる反射によって伝播音を減衰させるリアクティブ消音器である。膨張型消音器の減音効果により、比較的広い周波数範囲をカバーすることができる。
【0055】
〔実施形態9〕
以下、本発明に係る第九の実施形態を、図15を用いて説明する。
図15は、本発明の第九の実施形態に係る電子機器の断面図である。
【0056】
本実施形態も、第八の実施形態と同様、消音装置に膨張型消音器を構成することは、同様であるが、膨張型消音器と空洞部4と開口部との構成手法が異なっている。本実施形態における共鳴型消音器の空洞部4と開口部とは、流路形成部材1の曲げによって構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る電子機器の消音装置の斜視図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係る電子機器の消音装置の断面図である。
【図3】本発明の第一の実施形態に係る電子機器の消音装置を、電子機器に取り付けたときの断面図である。
【図4】本発明の第二の実施形態に係る電子機器の消音装置の斜視図である。
【図5】本発明の第二の実施形態に係る電子機器の消音装置の断面図である。
【図6】本発明の第二の実施形態に係る電子機器の消音装置を、電子機器に取り付けたときの断面図である。
【図7】本発明の第三の実施形態に係る電子機器の消音装置の斜視図である。
【図8】本発明の第三の実施形態に係る電子機器の消音装置の断面図である。
【図9】本発明の第四の実施形態に係る電子機器の消音装置の断面図である。
【図10】本発明の第五の実施形態に係る電子機器の消音装置の断面図である。
【図11】本発明の第六の実施形態に係る電子機器の消音装置の正面図である。
【図12】本発明の第六の実施形態に係る電子機器の消音装置の断面図である。
【図13】本発明の第七の実施形態に係る電子機器の断面図である。
【図14】本発明の第八の実施形態に係る電子機器の断面図である。
【図15】本発明の第九の実施形態に係る電子機器の断面図である。
【図16】従来技術に係る電子機器の消音装置の断面図である。
【図17】送風による騒音の周波数と騒音レベルの関係を示すグラフである。
【図18】一般的な吸音材の周波数と吸音率の関係を示すグラフである。
【図19】共鳴型消音器における周波数と効果の関係を示すグラフである。
【図20】一般的なヘルムホルツ型共鳴器の構造を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1…流路形成部材
2…流路
3…穴
4…空洞部
5…吸音材
6…開口部の面積
7…スライド部材
8…スライド機構
9…流路形成部材の寸法
10…スライド部材の寸法
11…開口部を形成する穴
12…吸音材
13…筐体
14…通風口
15…送風機
16…サーバ
17…従来の消音構造
18、19、21、22…吸音材
20…通風口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機によって冷却風を流して発熱体の冷却をする電子機器に取り付ける消音装置おいて、
前記冷却風を流すための流路を形成する流路形成部材と、
前記流路形成部材に固定した吸音材とを備え、
前記流路形成部材の一部に開口部と、
前記吸音材の内部に前記開口部につながる空洞部を設け、
前記空洞部の少なくとも一個所以上の断面積を、前記開口部と前記空洞部の接する面の断面積よりも大きくして、前記開口部と前記空洞部により前記流路の壁面に共鳴型消音器を構成したことを特徴とする電子機器の消音装置。
【請求項2】
前記開口部の入り口に、スライド機構によりスライドさせるスライド部材を設け、前記開口部の面積を調節するようにした請求項1記載の電子機器の消音装置。
【請求項3】
送風機によって冷却風を流して発熱体の冷却をする電子機器に取り付ける消音装置おいて、
前記冷却風を流すための流路を形成する流路形成部材と、
前記流路形成部材に固定した吸音材とを備え、
前記流路形成部材の一部に開口部と、
前記吸音材の内部に、前記流路形成部材を曲げることにより形成された前記開口部につながる空洞部を設け、
前記空洞部の少なくとも一個所以上の断面積を、前記開口部と前記空洞部の接する面の断面積よりも大きくして、前記開口部と前記空洞部により前記流路の壁面に共鳴型消音器を構成したことを特徴とする電子機器の消音装置。
【請求項4】
前記開口部の入り口に、スライド機構によりスライドさせるスライド部材を設け、前記開口部の面積を調節するようにした請求項3記載の電子機器の消音装置。
【請求項5】
送風機によって冷却風を流して発熱体の冷却をする電子機器に取り付ける消音装置おいて、
前記冷却風を流すための流路を形成する流路形成部材を備え、
前記流路形成部材の一部に開口部と、
前記流路形成部材を曲げることにより形成された前記開口部につながる空洞部を設け、
前記開口部の入り口に、スライド機構によりスライドさせるスライド部材を設け、前記開口部の面積を調節するようにし
前記流路形成部材と前記スライド部材とに吸音材を取り付け、
前記空洞部の少なくとも一個所以上の断面積を、前記開口部と前記空洞部の接する面の断面積よりも大きくして、前記開口部と前記空洞部により前記流路の壁面に共鳴型消音器を構成したことを特徴とする電子機器の消音装置。
【請求項6】
送風機によって冷却風を流して発熱体の冷却をする電子機器に取り付ける消音装置おいて、
前記冷却風を流すための流路を形成する流路形成部材と、
前記流路形成部材に固定した吸音材とを備え、
前記流路形成部材と前記吸音材により空洞部を設け、
前記空洞部により前記流路を流れる冷却風の流れが広がるようにして、前記流路の壁面に膨張型消音器を構成したことを特徴とする電子機器の消音装置。
【請求項7】
送風機によって冷却風を流して発熱体の冷却をする電子機器に取り付ける消音装置おいて、
前記冷却風を流すための流路を形成する流路形成部材と、
前記流路形成部材に固定した吸音材とを備え、
前記吸音材の内部に、前記流路形成部材を曲げることにより形成された空洞部を設け、
前記空洞部により前記流路を流れる冷却風の流れが広がるようにして、前記流路の壁面に膨張型消音器を構成したことを特徴とする電子機器の消音装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−87174(P2010−87174A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253674(P2008−253674)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】