説明

電子機器製造用治具および電子機器の製造方法

【課題】基板上への電子部品のはんだによる接合をより高精度に行なうことが可能な電子機器製造用治具および電子機器の製造方法を提供する。
【解決手段】治具1は、絶縁メタライズ基板4表面にはんだを介して電子部品3を接合するために用いる電子機器製造用治具であって、絶縁メタライズ基板4表面に接触する裏面と、当該裏面と反対側に位置する表面とを有する治具本体からなる。治具本体には、表面から裏面まで貫通する、上方凹部5および下方開口部6からなる貫通孔が形成される。貫通孔の側壁には、貫通孔における表面側での幅とは貫通孔の幅が変更される幅変更部としての段差部7が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子機器製造用治具および電子機器の製造方法に関し、より特定的には、電子機器を構成する電子部品の位置決めに用いる電子機器製造用治具および電子機器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器を構成する電子部品をプリント基板などの基板上に搭載・固定するためにはんだが用いられている。また、このはんだによる接合作業では、従来はんだをシート状部材の表面の所定の位置に配置した部材が用いられる場合があった。具体的には、電子部品と基板との接続部(たとえば電子部品のリードピンが挿入された基板の穴)にはんだが位置するように上記シート状部材を配置し、加熱処理することではんだを溶融させ、基板に電子部品を接合している(たとえば、実開昭61−44878号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭61−44878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように電子部品と基板との接続部にあらかじめはんだを配置してから、加熱処理することではんだを溶融させ、結果的に電子部品と基板とを接合するという手法は、たとえばその表面に導電体からなるパターンが形成された基板上に、電子部品を搭載する場合にも利用できる。この場合、基板表面において電子部品を搭載する位置に、予めシート状に成形されたはんだ(フォームソルダ)を配置し、そのフォームソルダ上に電子部品を載せてから加熱処理を行なうことになる。
【0005】
しかし、上記のような工程を実施する場合、以下のような問題があることを発明者は見出した。すなわち、基板表面の所定の位置にフォームソルダを配置する際、当該フォームソルダは、その先端部に吸着手段(たとえば吸気孔)が形成された吸着マウンタに保持され、基板表面の所定の位置に配置される。そして、吸着マウンタからフォームソルダを取外す工程(たとえば吸気孔から空気を噴射して吸着マウンタからフォームソルダを取外す工程)を行なうときに、フォームソルダの位置が当初の位置からずれてしまう場合があった。また、複数のフォームソルダを並べて配置するときにも、上記フォームソルダを取外す工程を行なうことで、先に配置されていた別のフォームソルダの位置がずれる場合もあった。このようなフォームソルダや電子部品の位置決めのため、治具を用いることも考えられるが、上記のようなフォームソルダの位置ずれを抑制可能な治具は従来知られていない。
【0006】
そして、上記のようなフォームソルダの位置ずれは、加熱処理後での基板表面において、電子部品の接続不良や、導電体パターンの短絡といった問題の原因となる。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の目的は、基板上への電子部品のはんだによる接合をより高精度に行なうことが可能な電子機器製造用治具および電子機器の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に従った電子機器製造用治具は、基板表面にはんだを介して電子部品を接合するために用いる電子機器製造用治具であって、基板表面に接触する裏面と、当該裏面と反対側に位置する表面とを有する治具本体からなる。治具本体には、表面から裏面まで貫通する貫通孔が形成される。貫通孔の側壁には、貫通孔における表面側での幅とは貫通孔の幅が変更される幅変更部が形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、はんだ部材の位置ずれを防止することで、基板上への電子部品のはんだによる接合をより高精度に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による治具の実施の形態1を説明するための平面模式図である。
【図2】図1の線分II−IIにおける断面模式図である。
【図3】図1および図2に示した治具を用いた電子機器の製造方法を示すフローチャートである。
【図4】図3のフォームソルダ配置工程を説明するための模式図である。
【図5】図4に示したフォームソルダ配置工程の変形例を説明するための模式図である。
【図6】本発明による治具の実施の形態2を説明するための平面模式図である。
【図7】図6の線分VII−VIIにおける断面模式図である。
【図8】本発明による治具の実施の形態3を説明するための断面模式図である。
【図9】本発明による治具の実施の形態4を説明するための断面模式図である。
【図10】本発明による治具の実施の形態5を説明するための断面模式図である。
【図11】本発明による治具の実施の形態6を説明するための断面模式図である。
【図12】本発明による治具の実施の形態7を説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0012】
(実施の形態1)
図1および図2を参照して、本発明による治具を説明する。
【0013】
図1および図2を参照して、治具1は電子機器製造用治具であって、基板としての絶縁メタライズ基板4の表面に電子部品3を接合する工程において用いられるものである。治具1を構成する治具本体には、接続対象である電子部品3を内部に配置することが可能な下方開口部6と、当該下方開口部6上に位置し、接合材としてのフォームソルダ2を内部に配置することが可能な上方凹部5とが形成されている。上方凹部5と下方開口部6とにより貫通孔が構成される。
【0014】
上方凹部5の平面サイズは、下方開口部6の平面サイズよりも大きくなっている。このため、下方開口部6の上端部には段差部7が形成されている。この段差部7上にフォームソルダ2の端部が乗り上げるように配置されることで、フォームソルダ2は上方凹部5の底部(すなわち下方開口部6の上端部)に配置される。
【0015】
図1および図2に示すように、上方凹部5の平面形状は、2本の互いに平行に延びる線状平行凹部と、この2つの線状平行凹部のほぼ中央部を繋ぐように延びる中央凹部とから構成されている。また、下方開口部6は、上記線状平行凹部とほぼ同じ方向に長軸が延びるとともに、線状平行凹部よりも長軸方向の長さが短い線状平行開口部と、この2つの線状平行開口部を繋ぐように配置された中央開口部とからなっている。また、治具1の平面形状は図1に示すように四角形状となっている。上方凹部5の側壁および下方開口部6の側壁は、治具1の上部表面に対してほぼ垂直に延びるように形成されている。なお、治具1の平面形状は、他の任意の形状、たとえば三角形状あるいは円形状もしくは五角形状の多角形状としてもよい。また、上方凹部5および下方開口部6の平面形状も、図1に示した形状とは異なる形状であってもよい。
【0016】
治具1が後述する工程において用いられるときには、図1および図2に示すように接続対象の一方である絶縁メタライズ基板4の上に当該治具1が配置される。治具1は、絶縁メタライズ基板4の表面に形成された導電領域(図示せず)が下方開口部6の内部において露出するように位置決めされる。そして、上方凹部5の底部にシート状のはんだ部材である帯状のフォームソルダ2が配置される。このフォームソルダ2は上述した線状平行凹部の内部において、線状平行凹部の長軸とフォームソルダ2の長軸とを揃えるように配置される。図2に示すように、フォームソルダ2は、下方開口部6の上端における段差部7にその両端を保持されることで、絶縁メタライズ基板4と間隔を隔てて配置された状態となっている。なお、フォームソルダ2を当該位置に配置する具体的な方法については後述する。そして、このフォームソルダ2上に、上述した中央開口部と重なるように電子部品3が配置される。
【0017】
次に、図1および図2に示した治具を用いた電子機器の製造方法を図3および図4を参照しながら説明する。
【0018】
図3を参照して、まず治具準備工程(S10)を実施する。具体的には、この工程(S10)において、図1および図2に示した治具1を準備する。この治具1は、後述する加熱工程などにおいて変形や反応を起こさないような材質であれば任意の材料を用いることができるが、たとえば金属やセラミックなどを用いることができる。
【0019】
また、治具1の製造方法としては、治具本体となるブロック状の部材を準備し、当該部材に対して切削加工や放電加工により上方凹部5や下方開口部6を形成する、あるいは治具1となるべき材料を型成形した後、焼結や熱処理などを加えるといった任意の方法を用いることができる。
【0020】
次に、フォームソルダ配置工程(S20)を実施する。具体的には、予め別途準備した絶縁メタライズ基板4上に上述した治具1を配置する。絶縁メタライズ基板4の表面には、導電体からなり電子部品が接続されるパターン(図示せず)が形成されており、下方開口部6の内部において当該パターンが露出するように治具1は配置される。そして、この治具1の上方凹部5の底部において、フォームソルダ2の端部が図2に示すように段差部7上に搭載されるようにフォームソルダ2を配置する。2つのフォームソルダ2は、図1に示すように線状平行凹部の内部にそれぞれ配置される。
【0021】
この工程(S20)においては、図4に示すようにフォームソルダ2を吸着マウンタ8の先端部に吸着し、当該吸着マウンタ8を操作することで治具1の上方凹部5の内部における所定位置へとフォームソルダ2を配置する。吸着マウンタ8の先端部には、図示しないが吸引用の開口が設けられている。当該開口をフォームソルダ2に押し付けた状態で開口内部から空気を吸引することで、吸着マウンタ8はフォームソルダ2を吸着している。
【0022】
そして、吸着マウンタ8からフォームソルダ2を取外すときには、図4に示す矢印9に示す方向に吸着マウンタ8を押込む。具体的には、段差部7の上部表面よりも絶縁メタライズ基板4側へと吸着マウンタ8の先端部が移動するように、吸着マウンタ8を移動させる。この結果、フォームソルダ2が図4に示すように撓み、吸着マウンタ8の先端部における吸着マウンタ8とフォームソルダ2との吸着界面の端部に隙間ができる。この隙間ができることにより、吸着マウンタ8とフォームソルダ2との吸着界面(吸着部)に外気が入り込み、吸着マウンタ8によるフォームソルダ2の吸着状態が解除される。そして、図4の矢印9に示す方向と反対方向に吸着マウンタ8を後退させることにより、治具1の上方凹部5の内部にフォームソルダが残存した状態となる。このようにすれば、吸着マウンタ8からフォームソルダ2を取外すために吸着マウンタ8の先端部から空気を噴射するといった特別な処置を行なう必要がない。このため、当該空気の噴射によってフォームソルダ2の位置がずれるといった問題の発生を抑制できる。
【0023】
次に、電子部品配置工程(S30)を実施する。具体的には、この工程(S30)においては、図1および図2に示すようにフォームソルダ2上に電子部品3を配置する。電子部品3の配置方法としては従来周知の任意の方法を用いることができる。このとき、フォームソルダ2の厚みを所定値以上としておくことにより、フォームソルダ2上に電子部品3を搭載してもフォームソルダ2の形状を維持できる。このようにして、フォームソルダ2によって電子部品3が支持された状態とする。
【0024】
次に、固定工程(S40)を実施する。具体的には、電子部品3が搭載された治具1を所定の温度まで加熱する。この結果、フォームソルダ2が軟化・溶融し、電子部品3の下部表面にフォームソルダ2が融着するとともに、電子部品3の自重によって電子部品3が絶縁メタライズ基板4の上部表面側へと落下する。このとき、上述のように電子部品3と絶縁メタライズ基板4との間には融着したフォームソルダ2の一部が配置された状態となっている。このため、この溶融したフォームソルダ2によって絶縁メタライズ基板4の表面の導電体からなるパターン(図示せず)と電子部品3とを固定することができる。
【0025】
この後、後処理工程(S50)を実施する。具体的には、この工程(S50)においては、絶縁メタライズ基板4の表面上から治具1を取外すといった後処理を行なう。このようにして、電子部品3がその表面に接続固定された絶縁メタライズ基板4を含む電子機器を製造することができる。
【0026】
次に、図5を参照して、上記工程(S20)の変形例を説明する。
図5に示した工程(S20)の変形例は、基本的には図4に示した工程と同様であるが、フォームソルダ2を治具1の上方凹部5内部の所定の位置に搭載するために用いる器具が吸着マウンタ8ではなくニードルマウンタ10である点が異なっている。ニードルマウンタ10はその先端部が針状になった針状部材である。ニードルマウンタ10は、フォームソルダ2をその先端部により突き刺して当該フォームソルダ2を保持し移動するための器具である。このようなニードルマウンタ10を用いてフォームソルダ2を治具1の上方凹部5の所定位置へと配置する。具体的には、上方凹部5における線状平行凹部内にフォームソルダ2を配置する。上方凹部5内においてフォームソルダ2の位置が決定された後、図5に示すように、ニードルマウンタ10を矢印9に示す方向に押し下げる。この結果、フォームソルダ2が図5に示すように反った状態となり、ニードルマウンタ10をフォームソルダ2から容易に取外すことができる。
【0027】
(実施の形態2)
図6および図7を参照して、本発明による治具の実施の形態2を説明する。なお、図6および図7はそれぞれ図1および図2に対応する。
【0028】
図6および図7に示すように、本発明による治具の実施の形態2は、基本的には図1および図2に示した治具1と同様の構造を備えるが、上方凹部5の構造が異なっている。具体的には、図6および図7に示した治具1においては、上方凹部が、下方開口部6上に位置し平面形状が円形状の第1上方凹部15と、この第1上方凹部と下方開口部6との間に位置する第2上方凹部25とにより構成されている。この第2上方凹部25の形状は基本的には図1および図2に示した上方凹部5と同様である。一方、第1上方凹部15の平面サイズは第2上方凹部25の平面サイズより大きくなっている。このため、第1上方凹部と第2上方凹部25との間には貫通孔の側壁に段差が形成される。ウエイト11は、この段差に当該ウエイト11の端部が乗るように、第1上方凹部15の内部に配置可能である。このウエイト11は、下部表面が電子部品3の上部表面と接触するように、第2上方凹部25の高さが決定されている。このウエイト11により電子部品3を絶縁メタライズ基板4側へと押圧することができる。この結果、図1および図2に示した治具1と同様の効果を得られるとともに、電子部品3の位置ずれといった問題の発生を抑制できる。
【0029】
(実施の形態3)
図8を参照して、本発明による治具の実施の形態3を説明する。なお、図8は図2に対応する。
【0030】
図8を参照して、図8に示した治具1は、基本的には図1および図2に示した治具1と同様の構造を備えるが、上方凹部5の側壁の形状が異なっている。すなわち、図8に示した治具1においては、上方凹部5の側壁が治具1の上部表面に対して傾斜している。また、異なる観点から言えば、上方凹部5の幅は治具1の上部表面側から下部表面側(絶縁メタライズ基板4側)に向かうにつれて徐々に狭くなるように、上方凹部5の側壁が傾いた状態となっている。
【0031】
このような形状の治具1によっても、図1および図2に示した治具1と同様の効果を得ることができる。さらに、図8に示した治具1においては、上方凹部5の内部にフォームソルダ2を配置すると、上方凹部5の側壁がすり鉢状に傾いているため、上方凹部5の所定の位置(たとえば上方凹部5の中央部)へとフォームソルダ2が自重でほぼ自動的に配置される。このとき、フォームソルダ2の端部31は上方凹部5の側壁に沿った方向に屈曲している。この結果、フォームソルダ2の位置決めをより容易に行なうことができる。
【0032】
(実施の形態4)
図9を参照して、本発明による治具の実施の形態4を説明する。なお、図9は図2に対応する。
【0033】
図9を参照して、本発明の実施の形態4に従った治具1は、基本的には図8に示した治具1と同様の構造を備えるが、図7に示した治具1と同様に上方凹部5の内部にウエイト11を配置可能となっている点が異なっている。具体的には、図9に示した治具1においては、上方凹部5が、その側面が傾斜した第2上方凹部25と、当該第2上方凹部25上に位置し、第2上方凹部25の上部開口幅よりも広い開口幅を有する第1上方凹部15とにより構成されている。第1上方凹部15の平面形状は図6および図7に示した治具1における第1上方凹部15の平面形状と同様である。このような治具1によれば、図6および図7に示した治具1と同様に、第1上方凹部15の内部にウエイト11を配置することができる。そのため、ウエイト11により電子部品3を上方から押圧できるので、図8に示した治具1による効果に加えて、図7に示した治具1と同様の効果を得ることができる。
【0034】
(実施の形態5)
図10を参照して、本発明による治具の実施の形態5を説明する。なお、図10は図2に対応する。
【0035】
図10を参照して、治具1は基本的には図1および図2に示した治具1と同様の構造を備えるが、上方凹部5と下方開口部6の形状が異なっている。具体的には、図10に示すように、上方凹部5の幅が下方開口部6の幅よりも狭くなっている。なお、図10に示した上方凹部5の平面形状は図1および図2に示した下方開口部6の平面形状と同様とする。また、図10に示した治具1の下方開口部6の平面形状は、図1および図2に示した治具1の上方凹部5の平面形状と同様とする。
【0036】
このような治具1を用いる場合、以下のようにしてフォームソルダ2を治具1の貫通孔内部に配置する。すなわち、吸着マウンタ8などにより保持されたフォームソルダ2が上方凹部5を介して下方開口部6の内部にまで挿入された後、吸着マウンタなどのマウンタ部材を上方凹部5側へと後退させる。このとき、フォームソルダ2の端部31が上方凹部5の下部における段差部7に引っかかり、フォームソルダ2が撓むことにより、マウンタ部材からフォームソルダ2を容易に取外すことができる。マウンタ部材から取外されたフォームソルダ2は、図10に示すように絶縁メタライズ基板4の表面上に配置される。このようにしても、吸着マウンタからフォームソルダ2を取外すときに空気の噴射などを行なう必要がないため、フォームソルダ2の位置決めを容易に行なうことができる。なお、フォームソルダ2の平面形状は、上方凹部5の平面形状より少しだけ大きくしておくことが好ましい。この場合、上方凹部5を介してフォームソルダ2を下方開口部6の内部に挿入するときに、フォームソルダ2の端部31は上方凹部5の側壁に押圧されて屈曲するが、下方開口部6の内部においては当該端部31が外方に広がる。このため、フォームソルダ2の端部31を段差部7の下部表面に容易に接触させることができる。
【0037】
そして、図10に示すように、上方凹部5を介してフォームソルダ2上に電子部品3を配置する。この後、図3に示した工程(S40)および工程(S50)を実施することにより、本発明による電子機器を製造できる。
【0038】
(実施の形態6)
図11を参照して、本発明による治具の実施の形態6を説明する。なお、図11は図10に対応する。
【0039】
図11に示した治具1は、基本的には図10に示した治具と同様の構造を備えるが、下方開口部6の形状が異なっている。すなわち、図11に示した治具1においては、下方開口部6の側壁が絶縁メタライズ基板4の表面に対して傾斜した状態となっている。異なる観点から言えば、下方開口部6の側壁は上方凹部5側から絶縁メタライズ基板4側へと向かうにつれて、下方開口部6の幅が徐々に広くなるように傾斜した状態となっている。このような構造によっても、上方凹部5を介して下方開口部6内部へ挿入されたフォームソルダ2を、吸着マウンタ8などのマウンタ部材から取外すときに、フォームソルダ2の端部31が上方凹部5と下方開口部6との境界部の段差部7に接触することで吸着マウンタからフォームソルダ2を容易に取外すことができる。この結果、図10に示した治具と同様の効果を得ることができる。また、下方開口部6の側壁が傾斜しているため、フォームソルダ2を下方開口部6の中央部へと容易に位置決めすることができる。
【0040】
(実施の形態7)
図12を参照して、本発明による治具の実施の形態7を説明する。なお、図12は図2に対応する。
【0041】
図12に示した治具1は、基本的には図1および図2に示した治具1と同様の構造を備えるが、上方凹部5および下方開口部6(図2参照)に対応する貫通孔16の形状が異なっている。具体的には、図12に示した治具1では、その上部表面から下部表面にまで貫通するように傾斜した側壁を有する貫通孔16が形成されている。異なる観点から言えば、貫通孔16の側壁は治具1の上部表面から下部表面に向けて徐々に貫通孔16の幅が狭くなるように傾斜した状態となっている。この結果、貫通孔16の内部に貫通孔16の下端での幅よりも広い幅を有するフォームソルダ2を配置すれば、貫通孔16の側壁の途中でフォームソルダ2の端部31が貫通孔16の側壁に接触して折れ曲がり、容易にマウント部材からフォームソルダ2を取外すことができるとともに、その位置にフォームソルダ2を配置することができる。この状態で、フォームソルダ2上に電子部品3を搭載し、図1および図2に示した治具を用いた場合と同様に、図3の工程(S40)および工程(S50)を実施することで、電子部品3を絶縁メタライズ基板4にフォームソルダ2を介して接続固定することができる。
【0042】
上述した実施の形態と一部重複する部分もあるが、以下本発明の特徴的な構成を列挙する。
【0043】
この発明に従った電子機器製造用治具である治具1は、基板としての絶縁メタライズ基板4表面にはんだを介して電子部品3を接合するために用いる電子機器製造用治具であって、絶縁メタライズ基板4表面に接触する裏面と、当該裏面と反対側に位置する表面とを有する治具本体からなる。治具本体には、表面から裏面まで貫通する貫通孔(図2などに示す上方凹部5および下方開口部6からなる貫通孔、または図12に示す貫通孔16)が形成される。貫通孔の側壁には、貫通孔における表面側での幅とは貫通孔の幅が変更される幅変更部(図2の段差部7または図12の貫通孔16の側壁全体)が形成されている。
【0044】
このようにすれば、上記治具1の貫通孔の内部に、電子部品3を絶縁メタライズ基板4表面に固定するためのシート状のはんだ部材であるフォームソルダ2を配置するときに、フォームソルダ2を保持している保持部材としての吸着マウンタ8またはニードルマウンタ10から当該フォームソルダ2を取外す工程において、上記段差部7などを利用できる。たとえば、フォームソルダ2を吸着することで保持している吸着マウンタ8を用いる場合、フォームソルダ2の端部を上記幅変更部に押し付ける動作を行なうことでフォームソルダ2を撓ませることができ、この結果、吸着マウンタ8においてフォームソルダ2の表面を吸着している部分の吸着状態を解除することできる。このため、吸着マウンタ8においてフォームソルダ2を取外すために吸着部から空気をフォームソルダ2に向けて噴射するといった工程を実施する必要が無い。したがって、当該空気の噴射などによりフォームソルダ2の位置がずれるといった問題の発生を防止できる。
【0045】
上記治具1において、図2、図4、図5、図7〜図11に示すように、幅変更部は、ステップ状に貫通孔の幅が変化する段差部7であってもよい。この場合、吸着マウンタ8などの保持部材からフォームソルダ2を取外す工程においてフォームソルダ2の端部を段差部7に押し付ける動作を容易に行なうことができるので、フォームソルダ2を保持部材から確実に取外すことができる。
【0046】
上記治具1において、貫通孔では、段差部7より表面側(上部表面側)における幅が、段差部7より裏面側(絶縁メタライズ基板4側)における幅より広くなっていてもよい。この場合、フォームソルダ2の平面サイズを、段差部7より裏面側における貫通孔の幅より大きくしておくことで、フォームソルダ2の端部を段差部7において表面側に位置する部分上に載せた状態とすることができる。つまり、段差部7においてフォームソルダ2の端部を保持することで、貫通孔の途中(段差部7が形成された部分)でフォームソルダ2を保持することができる。このように、熱処理の前に絶縁メタライズ基板4表面からフォームソルダ2を離した状態とすることができるので、絶縁メタライズ基板4表面において電子部品3が搭載されるべき領域以外の部分にフォームソルダ2が固着する可能性を低減できる。
【0047】
上記治具1において、図8や図9に示すように、貫通孔では、段差部7より表面側において、表面側から段差部7側に向けて徐々に幅が狭くなるように、貫通孔の側壁(上方凹部5の側壁)が治具1の上部表面に対して傾斜していてもよい。この場合、段差部7より裏面側での貫通孔の幅(下方開口部6の幅)より広い幅のフォームソルダ2を、貫通孔の表面側から当該貫通孔の内部に配置したときに、貫通孔の側壁が上記のように傾斜しているので、貫通孔の中心にフォームソルダ2の中心がほぼ揃う様に、当該傾斜によってフォームソルダ2の位置決めを容易に行なうことができる。また、フォームソルダ2の端部31が傾斜した側壁に接触することで、フォームソルダ2がたわみ、結果的に吸着マウンタ8などの保持部材からフォームソルダ2を容易に取外すことができる。
【0048】
上記治具1において、図7や図9に示すように、貫通孔の側壁には、段差部7より表面側において第2の段差部(第1上方凹部15と第2上方凹部25との境界部に位置する段差部)が形成されていてもよい。第2の段差部は、貫通孔の表面側における開口部に面する上部表面(ウエイト11の端部が搭載されている表面部分)を有していてもよい。
【0049】
この場合、第2の段差部より裏面側における貫通孔の幅(第2上方凹部25の幅)より大きく、かつ、第2の段差部より表面側での貫通孔の幅(第1上方凹部15の幅)より狭い部材(たとえば錘としてのウエイト11)の端部を、第2の段差部の上部表面上に載せることで、ウエイト11を貫通孔の内部に配置することができる。また、段差部7から第2の段差部までの高さ方向(貫通孔の中心軸方向)での距離を、フォームソルダ2上に搭載される(結果的に絶縁メタライズ基板4に接続される)電子部品3の高さと同等または電子部品3の高さより小さくしておけば、当該ウエイト11によって電子部品3を絶縁メタライズ基板4側に押圧することができる。この結果、貫通孔の内部に配置される電子部品3の位置ずれなどを防止できる。したがって、電子部品3の位置精度を高めることができる。
【0050】
上記治具1において、図10および図11に示すように、貫通孔では、段差部7より表面側における幅(上方凹部5の幅)が、段差部7より裏面側における幅(下方開口部6の幅)より狭くなっていてもよい。この場合、段差部7において裏面側に面する部分に、フォームソルダ2の端部を押し付けてフォームソルダ2でのたわみを発生させることができる。たとえば、段差部7より表面側での貫通孔の幅(上方凹部5の幅)より若干大きめのサイズの、シート状のフォームソルダ2を当該貫通孔の表面側より(段差部7より裏面側の領域である下方開口部6の内部にまで)挿入する。その後、フォームソルダ2の端部が段差部7に接触するように(段差部7において裏面側に位置する表面に接触するように)、フォームソルダ2を保持する吸着マウンタ8などの保持部材を操作する。この結果、フォームソルダ2を撓ませて保持部材からフォームソルダ2を取外すことができる。
【0051】
上記治具1において、図11に示すように、貫通孔では、段差部7より裏面側において、裏面側から段差部7側に向けて徐々に幅が狭くなるように、貫通孔の側壁(下方開口部6の側壁)が裏面に対して傾斜していてもよい。この場合、上記のようにフォームソルダ2を取外す作業のときに、傾斜した側壁によって貫通孔の中央部へフォームソルダ2を容易に位置決めできる。
【0052】
上記治具1において、図12に示すように、貫通孔16の幅が表面側から裏面側に向けて徐々に狭くなるように、貫通孔16の側壁が治具1の上部表面に対して傾斜していてもよい。つまり、貫通孔16の側壁全体が幅変更部となっていてもよい。この場合、フォームソルダ2の平面サイズに応じて、貫通孔16の傾斜した側壁の任意の位置においてフォームソルダ2の端部31を側壁に接触させ、その位置でフォームソルダ2を吸着マウンタ8などの保持部材から取外すことができる。
【0053】
この発明に従った電子機器の製造方法は、上記治具1を、予め準備した基板としての絶縁メタライズ基板4の表面上に配置する工程(図3の工程(S20))と、治具1の貫通孔の内部にシート状のはんだ部材(フォームソルダ2)を配置する工程(図3の工程(S20))と、フォームソルダ2上に電子部品3を搭載する工程(図3の工程(S30))と、フォームソルダ2を加熱することで、フォームソルダ2を介して絶縁メタライズ基板4の表面上に電子部品3を固定する工程(図3の工程(S40))と、を備える。
【0054】
このようにすれば、貫通孔の側壁における幅変更部(図2の段差部7または図12の貫通孔16の側壁)を利用して吸着マウンタ8などの保持部材からはんだ部材としてのフォームソルダ2を容易に取外すことができるので、保持部材からフォームソルダ2を取外すための空気の噴射などを行なう必要が無い。そのため、当該空気の噴射などによりフォームソルダ2の位置がずれるといった問題の発生を抑制できる。
【0055】
上記電子機器の製造方法では、はんだ部材を配置する工程(図3の工程(S20))において、フォームソルダ2を保持する部材としてフォームソルダ2を突き刺して保持する針状部材(ニードルマウンタ10)を用いてもよい。この場合も、フォームソルダ2の端部31を幅変更部へ押し付けることでフォームソルダ2を湾曲させ、ニードルマウンタ10からフォームソルダ2を取外すことができる。したがって、この場合も上記のような空気の噴射は不要であるので、フォームソルダ2の位置ずれを確実に防止できる。
【0056】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0057】
この発明は、電力用半導体装置などを構成する基板上に電子部品を搭載する工程に特に有利に適用される。
【符号の説明】
【0058】
1 治具、2 フォームソルダ、3 電子部品、4 絶縁メタライズ基板、5 上方凹部、6 下方開口部、7 段差部、8 吸着マウンタ、9 矢印、10 ニードルマウンタ、11 ウエイト、15 第1上方凹部、16 貫通孔、25 第2上方凹部、31 端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面にはんだを介して電子部品を接合するために用いる電子機器製造用治具であって、
基板表面に接触する裏面と、前記裏面と反対側に位置する表面とを有する治具本体からなり、
前記治具本体には、前記表面から前記裏面まで貫通する貫通孔が形成され、
前記貫通孔の側壁には、前記貫通孔における前記表面側での幅とは前記貫通孔の幅が変更される幅変更部が形成されている、電子機器製造用治具。
【請求項2】
前記幅変更部は、ステップ状に前記貫通孔の幅が変化する段差部である、請求項1に記載の電子機器製造用治具。
【請求項3】
前記貫通孔では、前記段差部より前記表面側における幅が、前記段差部より前記裏面側における幅より広くなっている、請求項2に記載の電子機器製造用治具。
【請求項4】
前記貫通孔では、前記段差部より前記表面側において、前記表面側から前記段差部側に向けて徐々に前記幅が狭くなるように、前記貫通孔の側壁が前記表面に対して傾斜している、請求項3に記載の電子機器製造用治具。
【請求項5】
前記貫通孔の側壁には、前記段差部より前記表面側において第2の段差部が形成されており、
前記第2の段差部は、前記貫通孔の前記表面側における開口部に面する上部表面を有する、請求項3または4に記載の電子機器製造用治具。
【請求項6】
前記貫通孔では、前記段差部より前記表面側における幅が、前記段差部より前記裏面側における幅より狭くなっている、請求項2に記載の電子機器製造用治具。
【請求項7】
前記貫通孔では、前記段差部より前記裏面側において、前記裏面側から前記段差部側に向けて徐々に前記幅が狭くなるように、前記貫通孔の側壁が前記裏面に対して傾斜している、請求項6に記載の電子機器製造用治具。
【請求項8】
前記貫通孔の幅が前記表面側から前記裏面側に向けて徐々に狭くなるように、前記貫通孔の側壁が前記表面に対して傾斜しており、
前記貫通孔の側壁全体が前記幅変更部となっている、請求項1に記載の電子機器製造用治具。
【請求項9】
請求項1に記載の電子機器製造用治具を、予め準備した基板の表面上に配置する工程と、
前記電子機器製造用治具の前記貫通孔の内部にシート状のはんだ部材を配置する工程と、
前記はんだ部材上に電子部品を搭載する工程と、
前記はんだ部材を加熱することで、前記はんだ部材を介して前記基板の表面上に前記電子部品を固定する工程と、を備える電子機器の製造方法。
【請求項10】
前記はんだ部材を配置する工程において、前記はんだ部材を保持する部材として前記はんだ部材を突き刺して保持する針状部材を用いる、請求項9に記載の電子機器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−129456(P2012−129456A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281703(P2010−281703)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】