説明

電子機器

【課題】 発熱部品を内蔵し、この発熱部品から発生した発熱を効率良く放熱し小形化できる電子機器を提供することを目的とする。
【解決手段】 筐体2に形成した凹溝3,4の内面にグラファイト層9,10を貼り付け、このグラファイト層9,10の上面に受信回路11、送信回路12を装着することにより熱伝達のバラツキを低減し、筐体2の外面の各部間の温度バラツキを低減し効率良く放熱できるので放熱効果の優れた電子機器が得られる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は通信機器など発熱部品を内蔵した電子機器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図4に電子機器の一例として通信機器の分解斜視図を示す。
【0003】図4において101は通信機器であり、アルミニウム合金を用いて成形した筐体102に受信回路103と送信回路104とを内蔵し、カバー105で遮蔽する構成としている。前記受信回路103と送信回路104の動作時には、電源やパワートランジスタなどから発熱を伴うので前記筐体102の底面に受信回路103と送信回路104とを設置し、これら回路からの発熱を前記筐体102の外周面の放熱フィン106に熱伝達し、前記通信機器101の外部に放熱する構成としている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従来例によれば前記筐体102の底面の表面に温度バラツキがあり、さらに前記筐体102の外面に伝達する熱伝達量にバラツキが生じるために、このバラツキを考慮して放熱フィン106の面積を大きくする必要があり小形化が困難であるという問題点があった。
【0005】本発明は発熱部品を内蔵し、この発熱部品から発生した発熱を効率良く放熱し小形化できる電子機器を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記問題を解決するために以下の構成を有するものである。
【0007】本発明の請求項1に記載の発明は、筐体に形成した凹溝内に電子回路を内蔵した電子機器において、前記凹溝の内面に高分子フィルムをグラファイト化し熱伝導性を発現したグラファイト層を貼り付け、このグラファイト層の上面に電子回路を装着した電子機器であり、これにより、グラファイト層の表面の熱拡散が優れているため筐体の外面へ熱伝達のバラツキを低減して筐体の外面の各部間の温度勾配を下げて効率良く放熱できるので放熱効果の優れた小形の電子機器が得られるという作用効果を有する。
【0008】本発明の請求項2に記載の発明は、凹溝の底面から内壁に沿ってグラファイト層を貼り付け、このグラファイト層に縁端部を前記凹溝の外方に引出した延長部を形成した請求項1に記載の電子機器であり、これにより、発熱部からの熱伝導が筐体の内壁に熱伝導し、この内壁の外面から効率良く放熱できるとともにグラファイト層の表面に熱伝達した熱量がグラファイト層の縁端部を経て放熱できるので放熱効果の優れた電子機器が得られるという作用効果を有する。
【0009】本発明の請求項3に記載の発明は、延長部を凹溝の上面に沿って曲げた折り曲げ部で形成し、この折り曲げ部を前記凹溝を遮蔽するカバーと筐体の上面との間で挟着した請求項2に記載の電子機器であり、これにより、グラファイト層の延長部を筐体の上面とカバーとの間に確実に接合し、この接合部を通じて熱伝達でき放熱効果の優れた電子機器が得られるという作用効果を有する。
【0010】本発明の請求項4に記載の発明は、筐体とカバーとをアルミニウム合金で形成した請求項1に記載の電子機器であり、これにより、グラファイト層との設置面に熱伝導性を損なう腐食を発生させることなくグラファイト層をアルミニウム合金とともに用いて信頼性の優れた放熱特性が得られるという作用効果を有する。
【0011】本発明の請求項5に記載の発明は、筐体の上面と下面の両面にそれぞれ凹溝を形成した請求項1に記載の電子機器であり、これにより、筐体の裏面と表面に均等に熱分散できるので小形で放熱効果の優れた電子機器が得られるという作用効果を有する。
【0012】本発明の請求項6に記載の発明は、電子回路を金属ケース内に収納し、この金属ケースの底面がグラファイト層を挟んで筐体の凹溝の底面に接合した請求項1に記載の電子機器であり、これにより、グラファイト層と電子回路を収納した金属ケース及び筐体との熱伝導が安定して得られ、放熱効果の優れた電子機器が得られるという作用効果を有する。
【0013】本発明の請求項7に記載の発明は、グラファイト層の延長部の端部を放熱体と接合した請求項6に記載の電子機器であり、これにより、回路部品から発生した熱がグラファイト層の表面に熱伝達し放熱体を経て放熱できるので電子機器の回路部品の特性を損なうことがないという作用効果を有する。
【0014】本発明の請求項8に記載の発明は、放熱体が筐体の側壁に一体に形成した複数の放熱フィンである請求項7に記載の電子機器であり、これにより、筐体の表面の放熱面積を大きく形成し筐体の内部に収納した回路部品からの発熱を確実に放熱できるという作用効果を有する。
【0015】本発明の請求項9に記載の発明は、グラファイト層の延長部端面とカバーに複数の穴を形成してこの穴に重なるように形成した筐体の上面のネジ穴にネジ止めした請求項3に記載の電子機器であり、これにより、グラファイト層の延長部を筐体とカバーとの間に確実に接合でき、筐体の内部に収納した電子回路の発熱を筐体とカバーに確実に熱伝達でき優れた放熱効果が得られるという作用効果を有する。
【0016】本発明の請求項10に記載の発明は、複数の放熱フィンの表面にグラファイト層を貼り付けた請求項8に記載の電子機器であり、これにより、複数の放熱フィン間の温度差を低減でき、且つ、放熱フィンの表面の温度バラツキを低減できるので放熱フィンの放熱効果を一層優れたものにできるという作用効果を有する。
【0017】本発明の請求項11に記載の発明は、グラファイト層の延長部に粘着剤を塗布して筐体の上面に粘着した請求項3に記載の電子機器であり、これにより、グラファイト層と筐体との設置間に熱伝達を損なう間隙や有害層を形成されることなく信頼性の優れた放熱効果が得られるという作用効果を有する。
【0018】本発明の請求項12に記載の発明は、筐体の上面の凹溝および筐体の下面の凹溝のそれぞれに一体に形成したグラファイト層を貼り付けた請求項5に記載の電子機器であり、これにより、筐体の上面と下面との温度差が無くなるので筐体の表面の放熱効果が均等に得られ、放熱効果の優れた電子機器が得られるという作用効果を有する。
【0019】本発明の請求項13に記載の発明は、グラファイト層の延長部の表面に複数の凹凸を形成した請求項3に記載の電子機器であり、これにより、グラファイト層が筐体の上面とカバーとの間に確実な接触圧を得ることができ安定した放熱効果が得られるという作用効果を有する。
【0020】本発明の請求項14に記載の発明は、発熱部品を含む電子回路である請求項1に記載の電子機器であり、これにより、電源やパワートランジスタなど発熱部品を含む電子回路において回路部品の熱劣化を防止し動作寿命が長く信頼性の優れた電子機器が得られるという作用効果を有する。
【0021】本発明の請求項15に記載の発明は、電子機器が通信機器である請求項1に記載の電子機器であり、これにより、通信機器を構成する回路部品に熱劣化を生じることがなく通信精度の優れた電子機器が得られるという作用効果を有する。
【0022】本発明の請求項16に記載の発明は、通信機が受信回路と送信回路を備え、筐体の上面と下面にそれぞれ形成した凹溝内に前記受信回路と送信回路とを区分して装着した請求項15に記載の電子機器であり、これにより、受信回路と送信回路との間に干渉する不要輻射の影響を低減でき、且つ、受信回路と送信回路が相互の発熱による特性劣化を防止でき通信特性を損なうことがないという作用効果を有する。
【0023】
【発明の実施の形態】(実施の形態1)以下、本発明の特に請求項1〜11、14〜16に記載の発明について本実施の形態1を用いて説明する。
【0024】図1は本発明の実施の形態1における電子機器の分解斜視図、図2は同実施の形態1における電子機器の断面図である。
【0025】図1、図2において、1は電子機器であり、この電子機器1はアルミニウム合金で形成した筐体2の上方と下方に凹溝3,4を形成し、この凹溝3,4の底面5,6と内壁7,8に沿って高分子フィルムをグラファイト化し熱伝導性を発現したおよそ100ミクロン厚みのグラファイト層9,10を貼り付け、前記凹溝3に電子回路としての受信回路11を、前記凹溝4に電子回路としての送信回路12をそれぞれ区分して収納し、前記グラファイト層9,10の上面に設置してある。
【0026】前記受信回路11、送信回路12等の電子回路は金属ケース13,14内に配線基板を備えパワートランジスタや電源などを含む回路部品(図示せず)を装着し、前記金属ケース13,14の底面が前記グラファイト層9,10を挟んで前記筐体2の凹溝3,4の底面5,6にネジ止めして接合している。
【0027】前記グラファイト層9,10の縁端部15,16を前記凹溝3,4の外方に引き出して延長部17,18を形成し、この延長部17,18を前記凹溝3,4の上面に沿って曲げて折り曲げ部19,20を形成し、この折り曲げ部19,20の両面に粘着剤を塗布してアルミニウム合金で形成したカバー21,22と前記筐体2の上面との間で挟着するとともに、前記カバー21,22に形成した孔23と前記グラファイト層9,10に形成した孔24とを前記筐体2に形成したネジ穴25とを重なるように配置しネジ26で接合している。
【0028】前記筐体2の外面には一層優れた放熱効果を得るために複数の放熱フィン27を一体に形成した放熱体28を形成し、前記放熱フィン27に粘着剤を塗布してグラファイト層29,30を貼り付けている。
【0029】前記構成により、受信回路11や送信回路12で発生した熱が前記グラファイト層9,10,29,30を介し前記筐体2の表面や前記カバー21,22に熱伝達して放熱でき、前記グラファイト層9,10,29,30が表面へ熱拡散する熱伝導性に優れているので前記筐体2と前記カバー21,22の表面の温度差が少なくて放熱効果が優れ、電子機器の小形化ができる。
【0030】(実施の形態2)以下、本発明の特に請求項12,13に記載の発明について本実施の形態2を用いて説明する。尚、本実施の形態2の基本的な構成は実施の形態1と同じなので同一符号をつけて詳細な説明を省き、ここでは実施の形態2の特徴とする部分を以下に説明する。
【0031】図3は本発明の実施の形態2における電子機器を示す断面図である。
【0032】図3において、筐体2の上面の凹溝3および筐体2の下面の凹溝4のそれぞれに一体に形成したグラファイト層31を貼り付け、このグラファイト層31の延長部32の表面に複数の凹凸33を形成し、この凹凸33を前記筐体2と前記カバー21,22との間に加圧して挟着した構成としている。
【0033】前記構成により、グラファイト層31とカバー21,22および筐体2との熱伝達が向上するとともに、前記グラファイト層31に形成した複数の凹凸33より前記筐体2とカバー21,22との電気的接触が行われ、電子機器1の内部から発生し電子機器1の外部へ漏洩する不要輻射を低減できる。
【0034】
【発明の効果】以上のように本発明の電子機器は、筐体に形成した凹溝の内面にグラファイト層を貼り付け、このグラファイト層の上面に電子回路を装着することにより熱伝達のバラツキを低減し筐体外面の各部間の温度勾配を下げて効率良く放熱できるので放熱効果の優れた小形の電子機器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における電子機器の分解斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における電子機器の断面図
【図3】本発明の実施の形態2における電子機器の断面図
【図4】従来例における電子機器の分解斜視図
【符号の説明】
1 電子機器
2 筐体
3,4 凹溝
5,6 底面
7,8 内壁
9,10,29,30,31 グラファイト層
11 受信回路
12 送信回路
13,14 金属ケース
15,16 縁端部
17,18 延長部
19,20 折り曲げ部
21,22 カバー
23,24 孔
25 ネジ穴
26 ネジ
27 放熱フィン
28 放熱体
32 延長部
33 凹凸

【特許請求の範囲】
【請求項1】 筐体に形成した凹溝内に電子回路を内蔵した電子機器において、前記凹溝の内面に高分子フィルムをグラファイト化し熱伝導性を発現したグラファイト層を貼り付け、このグラファイト層の上面に電子回路を装着した電子機器。
【請求項2】 凹溝の底面から内壁に沿ってグラファイト層を貼り付け、このグラファイト層に縁端部を前記凹溝の外方に引出した延長部を形成した請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】 延長部を凹溝の上面に沿って曲げた折り曲げ部で形成し、この折り曲げ部を前記凹溝を遮蔽するカバーと筐体の上面との間で挟着した請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】 筐体とカバーとをアルミニウム合金で形成した請求項1に記載の電子機器。
【請求項5】 筐体の上面と下面の両面にそれぞれ凹溝を形成した請求項1に記載の電子機器。
【請求項6】 電子回路を金属ケース内に収納し、この金属ケースの底面がグラファイト層を挟んで筐体の凹溝の底面に接合した請求項1に記載の電子機器。
【請求項7】 グラファイト層の延長部の端部を放熱体と接合した請求項6に記載の電子機器。
【請求項8】 放熱体が筐体の側壁に一体に形成した複数の放熱フィンである請求項7に記載の電子機器。
【請求項9】 グラファイト層の延長部端面とカバーに複数の孔を形成してこの孔に重なるように形成した筐体の上面のネジ穴にネジ止めした請求項3に記載の電子機器。
【請求項10】 複数の放熱フィンの表面にグラファイト層を貼り付けた請求項8に記載の電子機器。
【請求項11】 グラファイト層の延長部に粘着剤を塗布して筐体の上面に粘着した請求項2に記載の電子機器。
【請求項12】 筐体の上面の凹溝および筐体の下面の凹溝のそれぞれに一体に形成したグラファイト層を貼り付けた請求項5に記載の電子機器。
【請求項13】 グラファイト層の延長部の表面に複数の凹凸を形成した請求項12に記載の電子機器。
【請求項14】 電子回路が発熱部品を含む請求項1に記載の電子機器。
【請求項15】 電子機器が通信機器である請求項1に記載の電子機器。
【請求項16】 通信機が電子回路として受信回路と送信回路を備え、筐体の上面と下面にそれぞれ形成した凹溝内に前記受信回路と送信回路とを区分して装着した請求項15に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2002−344179(P2002−344179A)
【公開日】平成14年11月29日(2002.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−149106(P2001−149106)
【出願日】平成13年5月18日(2001.5.18)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】