説明

電子線レジスト上層用帯電防止膜形成組成物

【課題】
電子線レジストの上層に用いられる帯電防止膜形成組成物とそれを用いたレジストパターン及び半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 水溶性樹脂及びイオン液体を含む電子線レジストの上層に用いる帯電防止膜形成組成物。水溶性樹脂が非イオン性樹脂、アニオン性樹脂、又はカチオン性樹脂である。イオン液体が、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、フォスフォニウム、アンモニウム、及びスルホニウムからなる群より選ばれるカチオンを含む。イオン液体が、ハロゲン、カルボキシレート、サルフェート、スルホネート、チオシアネート、アルミネート、ボレート、ホスフェート、ホスフィネート、アミド、アンチモネート、イミド、及びメチドからなる群より選ばれるアニオンを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は電子線レジストの上層に用いられる帯電防止膜形成組成物とそれを用いたレジストパターン及び半導体装置の製造方法に係わる。
半導体デバイスは高性能化、低コスト化を目指して微細化による高集積化が進んでいる。半導体デバイス製造プロセスにおけるリソグラフィー方式は光源として光を用いたフォトリソグラフィーが主流である。微細化に対応し短波長化が進み、KrF(波長248nm)、ArF(波長193nm)というエキシマレーザーを光源とする露光装置が実用化されている。短波長化の延長としてF2(波長157nm)、EUV(極端紫外線、波長13.5nm)、X線(波長1nm以下)というリソグラフィーの開発も進められている。
【0002】
将来の微細化に対応可能なリソグラフィーの一つとして期待されているのが電子線(electron beam:EB)リソグラフィーである。電子線リソグラフィーは光源として電子線を用いた技術である。理論的には解像能力が最も高く、微細加工能力に優れている。
【0003】
電子線露光は大別すると直描方式とマスク投影方式で分類することができる。当初の電子線露光方法はポイントビーム方式であるが、露光効率を上げるため可変成型ビーム方式(variable shaped beam)、部分一括方式(cell projection)と進化し、更にその延長として光露光と同様に全てのパターンを持つマスク投影方式に進んでいった。一方で、ビームを多重化することにより効率を上げるマルチビーム方式がある。
【0004】
マスク投影方式には電子線縮小投影リソグラフィー(electron beam projection lithography:EPL)と、低加速電圧電子線等倍近接投影リソグラフィー(low energy electron beam proximity projection lithography:LEEPL)がある。
【0005】
電子線縮小投影リソグラフィーでは、高加速電圧の電子線を用いてマスク上に1mm平方に分割したデバイスパターンをレンズで1/4に縮小露光し、互いにつなぎ合わせてウエハーパターンを形成する方法である。
【0006】
低加速電圧電子線等倍近接投影リソグラフィーは、ウエハーとマスクを近接させて、低加速電子線(2keV)をスキャンさせながら照射し、マスク上のパターンを等倍露光する方法である。この方法では縮小投影レンズが不要で装置構造が単純なため安価であり、低加速電圧の電子線であるためレジスト感度が高く高スループットが有られ、低加速電圧の電子線であるためウエハやマスクに与える損傷が小さく、低加速電圧の電子線であるため電子線露光特有の近接硬化を蒸しでき、マスクとウエハーの間隔が小さいため空間電荷効果が無視でき高解像度が得られる。
【0007】
電子線露光特有の問題点として、近接効果、電子線露光による基板損傷、電子線露光時の帯電現象(チャージアップ)が上げられる。
【0008】
近接効果は低加速電圧電子線等倍近接投影リソグラフィーのような2keVという低加速電圧電子線の場合は、電子線の進入深度は浅く、後方散乱電子はほとんどないため無視できる。
【0009】
基板損傷は高感度レジストによる露光量を低減することで影響を低下することができる。
【0010】
電子線露光時の帯電現象は、絶縁体であるレジストに電子線露光するため、レジストに電荷が蓄積して帯電する。レジストに帯電した電子のクローン反発の影響により、露光される電子線の軌道が曲げられるため、位置精度や解像精度の低下をもたらす。帯電現象はマルチレイヤープロセスを適用すると、厚い下層膜のために更に増大する。そのために電子線レジストの上に塗布する導電性膜(帯電防止膜)が検討されている。
【0011】
帯電防止を目的とする帯電防止膜としては以下に上げられる。
【0012】
ポリアルキルチオフェン系導電性ポリマーをレジスト下層膜として用いる(特許文献1)、
ポリシラン、ポリフルオレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレンアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリピロール、ポリカルバゾール等の樹脂を用いるレジスト下層膜(特許文献2)、
第4級アンモニウムカチオンを含有する高分子ポリカチオンとTCNQ錯体を含むレジスト上層膜(特許文献3)
ハロゲン原子又は硫黄原子を含む水溶性有機物からなるレジスト上層膜(特許文献4)、
イオン性基を含有しない部分結晶性ポリマーおよび可塑性化合物を有するポリマー組成物であって、該ポリマーがポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル、ポリオレフィン、ポリエーテルアミド、ポリアラミド、ポリエーテルケトンおよびポリエーテルエステルアミドの群から選ばれたポリマーであり、可塑性化合物がイオン液体である組成物(特許文献5)が開示されている。
【特許文献1】特開平2−10356
【特許文献2】特開平11−243054
【特許文献3】特開昭62−113134
【特許文献4】特開昭63−99525
【特許文献5】特表2005−532440
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本願発明は電子線レジストの上に被覆される帯電防止膜形成組成物であって、電子線レジストが有機溶剤への溶解性が高いため、帯電防止膜形成組成物に有機溶剤を用いた場合には、電子線レジストとインターミキシング(相互溶解)を起こし双方の機能低下が発生する。
【0014】
このため、本件発明に用いられる帯電防止膜形成組成物は水性溶剤(水性媒体)であることが好ましく、これらに要求物性を満たす帯電防止膜形成組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明は第1観点として、水溶性樹脂及びイオン液体を含み、電子線レジストの上層に帯電防止膜を形成するための帯電防止膜形成組成物、
第2観点として、水溶性樹脂が、アミド基、アミノ基、水酸基又はそれらの組み合わせを有する官能基を側鎖に含む非イオン性樹脂である第1観点に記載の帯電防止膜形成組成物、
第3観点として、水溶性樹脂が、カルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸、スルホン酸塩又はそれらの組み合わせを有する官能基を側鎖に含むアニオン性樹脂である第1観点に記載の帯電防止膜形成組成物、
第4観点として、水溶性樹脂が、アンモニウム塩を側鎖に含むカチオン性樹脂である第1観点に記載の帯電防止膜形成組成物、
第5観点として、イオン液体が、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、フォスフォニウム、アンモニウム、及びスルホニウムからなる群より選ばれるカチオンを含む第1観点乃至第4観点のいずれか一つに記載の帯電防止膜形成組成物、
第6観点として、イオン液体が、ハロゲン、カルボキシレート、サルフェート、スルホネート、チオシアネート、アルミネート、ボレート、ホスフェート、ホスフィネート、アミド、アンチモネート、イミド、及びメチドからなる群より選ばれるアニオンを含む第1観点乃至第5観点のいずれか一つに記載の帯電防止膜形成組成物、
第7観点として、更に水性媒体を含む第1観点乃至第6観点のいずれか一つに記載の帯電防止膜形成組成物、
第8観点として、更に界面活性剤を含む第1観点乃至第7観点のいずれか一つに記載の帯電防止膜形成組成物、
第9観点として、基板上に電子線レジストを被覆する工程、その上に第1観点乃至第8観点のいずれか一つに記載の帯電防止膜形成組成物を塗布し焼成し帯電防止膜を形成する工程、電子線を照射する工程、現像する工程を含む電子線レジストパターンの形成方法、及び
第10観点として、基板上に電子線レジストを被覆する工程、その上に請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の帯電防止膜形成組成物を塗布し焼成し帯電防止膜を形成する工程、電子線を照射する工程、現像する工程を含む半導体素子の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
リソグラフィーの微細化の一つとして電子線リソグラフィーがある。電子線リソグラフィーでは基板上に電子線レジストを被覆するが、絶縁体であるレジストを電子線露光するため、レジストに電荷が蓄積して帯電する。レジストに帯電した電子のクローン反発の影響により露光される電子線の軌道が曲げられるため、位置精度や解像精度の低下をもたらす。そのために電子線レジストの上に塗布する導電性膜(帯電防止膜)が必要になる。
【0017】
帯電防止膜を形成するための帯電防止膜形成組成物は、電子線レジスト上に塗布されるため電子線レジストとのインターミキシングが発生しない様にすることが重要である。電子線レジストは有機溶剤への溶解性が高いため、本願発明の帯電防止膜形成組成物は水性溶剤を用いるものである。
【0018】
本願発明の帯電防止膜形成組成物は、水溶性樹脂とイオン液体を含むものである。水溶性樹脂は水性溶剤への溶解性が高く、またイオン液体も水性溶剤への溶解性が高いものが好ましい。そして、イオン性液体自体は水性溶剤への溶解度が大きくなくても水溶性樹脂と併用した時に、それらが相互に水性溶剤への溶解性を向上するものであれば用いることができる。このように水溶性樹脂が水性溶剤への溶解助剤として機能する場合は、幅広いイオン液体の種類を本願発明に適用することができる。
【0019】
本願発明から得られた帯電防止膜は、電子線レジスト上に被覆され、電子線レジストとはインターミキシングを起こさず、電子線レジスト上で被膜を形成する。水溶性樹脂とイオン液体は帯電防止膜中に残り、これらの両成分が相乗効果により共に帯電防止性能を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本願発明は水溶性樹脂及びイオン液体を含み、電子線レジストの上層に帯電防止膜を形成するための組成物である。
本願発明では更に水性媒体(水性溶剤)を含み帯電防止膜形成組成物は水性組成物である。そして、任意成分として更に界面活性剤等を含むことができる。
【0021】
帯電防止膜形成組成物は、組成物全体から溶剤(水性溶剤)を取り除いた割合で示される固形分は、0.1〜15.0質量%、好ましくは1.0〜5.0質量%である。固形分中の水溶性樹脂の割合は、10.0〜99.0質量%、好ましくは30.0〜70.0質量%である。また、固形分中でのイオン液体の割合は、
1.0〜90.0質量%、好ましくは3.0〜70.0質量%である。
【0022】
本願発明に用いられる水溶性樹脂は、非イオン性樹脂、アニオン性樹脂、カチオン性樹脂が挙げられる。
【0023】
非イオン性樹脂としてはアミド基、アミノ基、水酸基又はそれらの組み合わせを有する官能基を側鎖に含む樹脂が挙げられる。
【0024】
これらの樹脂を製造するためのモノマー成分として、例えばビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルアルコール、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシスチレン、ビニルアニリン、マレイミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、及びN,N−ジメチルメタクリルアミド等が挙げられ、これらを単独重合で又は共重合することができる。
【0025】
またメチルビニルエーテル等を重合したポリビニルエーテルや、デキストリン類(例えばマルトデキストリン)を用いることもできる。
【0026】
アニオン性樹脂としてはカルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸、スルホン酸塩又はそれらの組み合わせを有する官能基を側鎖に含むアニオン性樹脂が挙げられる。
これらの樹脂を製造するためのモノマー成分として、例えばアクリル酸、アクリル酸ナトリウム、スルホン酸プロピルアクリレート、スルホン酸ナトリウムプロピルアクリレート、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸ナトリウム、ビニルベンゼンスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、マレイン酸、マレイン酸アトリウム等が挙げられ、これらを単独重合で又は共重合することができる。
【0027】
カチオン性樹脂としては、アンモニウム塩を側鎖に含む樹脂が挙げられる。
この樹脂を製造するためのモノマーとして、トリメチル(アクリロイルオキシエチル)アンモニウム塩、トリエチル(アクリロイルオキシメチル)アンモニウム塩、トリメチル(スチリルカルボニルオキシエチル)アンモニウム塩等が挙げられ、これらを単独重合で又は共重合することができる。
【0028】
上記樹脂の製造には水溶性樹脂としての特性が失われない限り他の共重合性モノマーを共重合することができる。これらの共重合性モノマーは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、ナフチルアクリレート、アントリルアクリレート、アントリルメチルアクリレート、フェニルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート等アクリル酸エステル、エチルメタクリレート、ノルマルプロピルメタクリレート、ノルマルペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、アントリルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,2−トリクロロエチルメタクリレート、メチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ノルマルラウリルメタクリレート、ノルマルステアリルメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート等のメタクリレート、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、及びヒドロキシスチレン等スチレン化合物が挙げられる。
【0029】
上記の付加重合性モノマーを使用したポリマーの製造は、有機溶剤に付加重合性モノマー及び必要に応じて添加される連鎖移動剤(モノマーの質量に対して10%以下)を溶解した後、重合開始剤を加えて重合反応を行い、その後、重合停止剤を添加することにより製造することができる。重合開始剤の添加量としてはモノマーの質量に対して1〜10%であり、重合停止剤の添加量としては0.01〜0.2%である。使用される有機溶剤としてはプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、乳酸エチル、及びジメチルホルムアミド等が、連鎖移動剤としてはドデカンチオール及びドデシルチオール等が、重合開始剤としてはアゾビスイソブチロニトリル及びアゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等が、そして重合停止剤としては4−メトキシフェノール等が挙げられる。反応温度としては30〜100℃、反応時間としては1〜24時間から適宜選択される。
【0030】
水溶性樹脂の原料として他の付加重合性モノマーを用いる場合は、付加重合性モノマー/他の付加重合性モノマーの割合として例えば100/1〜1/100であり、または50/1〜1/50であり、または10/1〜1/10であり、好ましくは5/1〜1/5であり、または3/1〜1/3である。
得られたポリマーの重量平均分子量は500〜1000000、好ましくは500〜500000、更に好ましくは700〜300000である。
【0031】
本願発明に用いられるイオン液体としては、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、フォスフォニウム、アンモニウム、及びスルホニウムからなる群より選ばれるカチオンを含む。これらのカチオンとしては以下に例示される。
【0032】
【化1】

【0033】
【化2】

【0034】
【化3】

【0035】
【化4】

【0036】
【化5】

【0037】
【化6】

【0038】
本願発明に用いられるイオン液体としては、ハロゲン、カルボキシレート、サルフェート、スルホネート、チオシアネート、アルミネート、ボレート、ホスフェート、アミド、アンチモネート、イミド、及びメチドからなる群より選ばれるアニオンを含む。これらのアニオンの例としては以下に例示される。
【0039】
【化7】

【0040】
【化8】

【0041】
【化9】

【0042】
【化10】

【0043】
【化11】

【0044】
【化12】

【0045】
上記イオン液体は水溶性であることが好ましい。
水溶性のイオン液体はカチオンとアニオンの組み合わせとして、例えば(1−1)と(10−1)、(1−1)と(10−4)、(1−1)と(11−1)、(1−2)と(10−1)、(1−2)と(10−4)、(1−2)と(11−1)、(1−6)と(7−11)、(1−6)と(8−3)、(1−6)と(8−5)、(1−6)と(8−6)、(1−6)と(9−1)、(1−6)と(9−2)、(1−6)と(9−3)、(1−6)と(10−1)、(1−6)と(10−4)、(1−6)と(10−7)、(1−6)と(11−1)、(1−6)と(12−5)、(1−6)と(12−6)、(1−8)と(8−2)、(1−8)と(8−5)、(1−8)と(8−6)、(1−8)と(9−1)、(1−8)と(10−4)、(1−12)と(10−4)、(1−13)と(10−4)、(1−17)と(10−4)、(2−1)と(9−1)、(2−1)と(9−2)、(3−1)と(8−2)、(3−1)と(8−3)、(3−1)と(11−1)、(3−5)と(8−3)、(3−6)と(10−4)、(3−8)と(9−2)、(5−8)と(12−5)、(5−9)と(10−4)のイオン対を有するイオン液体が水溶性であって好ましい。
【0046】
本願発明では水溶性樹脂とイオン液体を含有する媒体は水性媒体であることが好ましい。水溶性樹脂が水に溶解している場合は、イオン液体を水溶性樹脂水溶液に添加して帯電防止膜形成組成物を得ることができる。また、水溶性樹脂とイオン液体を水に添加して帯電防止性樹脂組成物を得ることができる。上記水は純水を用いることが好ましい。
本発明の帯電防止膜形成組成物は、リソグラフィー工程で下層のレジストとの酸性度を一致させる為に、電子線照射により酸を発生する酸発生剤を添加する事が出来る。好ましい酸発生剤としては、例えば、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート等のオニウム塩系酸発生剤類、フェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のハロゲン含有化合物系酸発生剤類、ベンゾイントシレート、N−ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホネート等のスルホン酸系酸発生剤類等が挙げられる。上記酸発生剤の添加量は全固形分100質量%当たり0.02〜3質量%、好ましくは0.04〜2質量%である。
【0047】
本発明の帯電防止膜形成組成物には、上記以外に必要に応じて更なるレオロジー調整剤、接着補助剤、界面活性剤などを添加することができる。
【0048】
レオロジー調整剤は、主に帯電防止膜形成組成物の流動性を向上させるための目的で添加される。具体例としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ブチルイソデシルフタレート等のフタル酸誘導体、ジノルマルブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジイソオクチルアジペート、オクチルデシルアジペート等のアジピン酸誘導体、ジノルマルブチルマレート、ジエチルマレート、ジノニルマレート等のマレイン酸誘導体、メチルオレート、ブチルオレート、テトラヒドロフルフリルオレート等のオレイン酸誘導体、またはノルマルブチルステアレート、グリセリルステアレート等のステアリン酸誘導体を挙げることができる。これらのレオロジー調整剤は、帯電防止膜形成組成物の全組成物100質量%に対して通常30質量%未満の割合で配合される。
【0049】
接着補助剤は、主に基板あるいは電子線レジストと帯電防止膜の密着性を向上させ、特に現像において電子線レジストが剥離しないようにするための目的で添加される。具体例としては、トリメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルジフエニルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン等のクロロシラン類、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジフエニルジメトキシシラン、フエニルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン、N,N’ービス(トリメチルシリン)ウレア、ジメチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール等のシラザン類、ビニルトリクロロシラン、γークロロプロピルトリメトキシシラン、γーアミノプロピルトリエトキシシラン、γーグリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン類、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、イミダゾール、2ーメルカプトベンズイミダゾール、2ーメルカプトベンゾチアゾール、2ーメルカプトベンゾオキサゾール、ウラゾール、チオウラシル、メルカプトイミダゾール、メルカプトピリミジン等の複素環式化合物や、1,1ージメチルウレア、1,3ージメチルウレア等の尿素、またはチオ尿素化合物を挙げることができる。これらの接着補助剤は、帯電防止膜形成組成物の全組成物100質量%に対して通常5質量%未満、好ましくは2質量%未満の割合で配合される。
【0050】
本発明の帯電防止膜膜形成組成物には、ピンホールやストレーション等の発生がなく、表面むらに対する塗布性をさらに向上させるために、界面活性剤を配合することができる。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフエノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフエノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロツクコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、エフトツプEF301、EF303、EF352((株)トーケムプロダクツ製)、メガフアツクF171、F173(大日本インキ(株)製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710、サーフロンSー382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、サーフェノール(商品名、日信化学社製)等を挙げることができる。これらの界面活性剤の配合量は、本発明の帯電防止膜形成組成物の固形分当たり通常10質量%以下、好ましくは0.001〜5質量%である。これらの界面活性剤は単独で添加してもよいし、また2種以上の組合せで添加することもできる。
【0051】
本発明における帯電防止膜の下層に塗布される電子線レジストとしてはネガ型、ポジ型いずれも使用できる。酸発生剤と酸により分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーからなる化学増幅型レジスト、アルカリ可溶性バインダーと酸発生剤と酸により分解してレジストのアルカリ溶解速度を変化させる低分子化合物からなる化学増幅型レジスト、酸発生剤と酸により分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーと酸により分解してレジストのアルカリ溶解速度を変化させる低分子化合物からなる化学増幅型レジスト、電子線によって分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーからなる非化学増幅型レジスト、電子線によって切断されアルカリ溶解速度を変化させる部位を有するバインダーからなる非化学増幅型レジストなどがある。
本発明の帯電防止膜形成組成物を使用して形成したレジストの現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジーn−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第4級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類等のアルカリ類の水溶液を使用することができる。さらに、上記アルカリ類の水溶液にイソプロピルアルコール等のアルコール類、ノニオン系等の界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。これらの中で好ましい現像液は第四級アンモニウム塩、さらに好ましくはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド及びコリンである。
【0052】
本発明では、転写パターンを形成する加工対象膜を有する基板上に、電子線リソグラフィー用レジスト組成物を塗布し焼成(乾燥)して電子線リソグラフィー用レジスト膜を形成し、その上に帯電防止膜形成組成物を塗布し焼成(乾燥)し帯電防止膜を形成し、この帯電防止膜と電子線リソグラフィー用レジストを被覆した基板に電子線を照射し電子線レジストを露光し、レジスト膜を現像し、レジストパターンを形成し、ドライエッチングにより基板上に画像を転写して集積回路素子を形成する。
上記工程では塗布膜はスピナー、コーターにより行われる。得られた塗布膜は乾燥工程を経る。乾燥温度は70.0〜150.0℃、好ましくは90.0〜140.0℃で行われる。上記乾燥工程は、例えば、ホットプレート上、基板を50〜100℃で0.1〜10分間加熱することによって行うことができる。また、例えば、室温(20℃程度)で風乾することでも行うこともできる。
【0053】
照射する電子線量は、吸収線量として1から300kGy程度の範囲で調節するのが望ましい。1kGy未満では十分な照射効果が得られず、300kGyを超えるような照射は基材を劣化させる恐れがあるため好ましくない。電子線の照射方法としては、例えばスキャニング方式、カーテンビーム方式、ブロードビーム方式などが用いられ、電子線を照射する際の加速電圧は、照射する側の基材の厚さによりコントロールする必要があるが、2から100kV程度が適当である。
露光された基板は現像液により現像されレジストパターンが形成される。現像液による現像で帯電防止膜も共に除去される。
得られたレジストパターンを用いて塩素系ガス又はフッ素系ガスを用いて基板のドライエッチングが行われる。
【実施例】
【0054】
実施例1
20質量%ポリビニルピロリドン水溶液10.0g(ポリビニルピロリドンとして20質量%含有する。東京化成(株)製)、及び1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアンアミド0.353gを、0.1質量%の割合でオルフィンEXP4200(界面活性剤、日信化学(株)製、商品名)を含有する超純水水溶液107.3gへ溶解して溶液とした。その後、孔径0.45μmの親水性ポリプロピレン製ミクロフィルターを用いてろ過し、レジスト上層膜形成用組成物(溶液)を調製した。
【0055】
実施例2
20質量%ポリビニルピロリドン水溶液8.0g(ポリビニルピロリドンとして20質量%含有する。東京化成(株)製)、及び1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアンアミド0.686gを、0.1質量%の割合でオルフィンEXP4200(界面活性剤、日信化学(株)製、商品名)を含有する超純水水溶液105.6gへ溶解して溶液とした。その後、孔径0.45μmの親水性ポリプロピレン製ミクロフィルターを用いてろ過し、レジスト上層膜形成用組成物(溶液)を調製した。
【0056】
実施例3
20質量%ポリビニルピロリドン水溶液7.0g(ポリビニルピロリドンとして20質量%含有する。東京化成(株)製)、及び1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアンアミド1.40gを、0.1質量%の割合でオルフィンEXP4200(界面活性剤、日信化学(株)製、商品名)を含有する超純水水溶液105.6gへ溶解して溶液とした。その後、孔径0.45μmの親水性ポリプロピレン製ミクロフィルターを用いてろ過し、レジスト上層膜形成用組成物(溶液)を調製した。
【0057】
実施例4
20質量%ポリビニルピロリドン水溶液8.0g(ポリビニルピロリドンとして20質量%含有する。東京化成(株)製)、及び1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート0.686gを、0.1質量%の割合でオルフィンEXP4200(界面活性剤、日信化学(株)製、商品名)を含有する超純水水溶液105.6gへ溶解して溶液とした。その後、孔径0.45μmの親水性ポリプロピレン製ミクロフィルターを用いてろ過し、レジスト上層膜形成用組成物(溶液)を調製した。
【0058】
実施例5
20質量%ポリビニルピロリドン水溶液7.0g(ポリビニルピロリドンとして20質量%含有する。東京化成(株)製)、及び1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート1.40gを、0.1質量%の割合でオルフィンEXP4200(界面活性剤、日信化学(株)製、商品名)を含有する超純水水溶液105.6gへ溶解して溶液とした。その後、孔径0.45μmの親水性ポリプロピレン製ミクロフィルターを用いてろ過し、レジスト上層膜形成用組成物(溶液)を調製した。
【0059】
実施例6
20質量%ポリビニルピロリドン水溶液8.0g(ポリビニルピロリドンとして20質量%含有する。東京化成(株)製)、及び1−エチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネート0.686gを、0.1質量%の割合でオルフィンEXP4200(界面活性剤、日信化学(株)製、商品名)を含有する超純水水溶液105.6gへ溶解して溶液とした。その後、孔径0.45μmの親水性ポリプロピレン製ミクロフィルターを用いてろ過し、レジスト上層膜形成用組成物(溶液)を調製した。
【0060】
実施例7
20質量%ポリビニルピロリドン水溶液7.0g(ポリビニルピロリドンとして20質量%含有する。東京化成(株)製)、及び1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネート1.40gを、0.1質量%の割合でオルフィンEXP4200(界面活性剤、日信化学(株)製、商品名)を含有する超純水水溶液105.6gへ溶解して溶液とした。その後、孔径0.45μmの親水性ポリプロピレン製ミクロフィルターを用いてろ過し、レジスト上層膜形成用組成物(溶液)を調製した。
【0061】
実施例8
10質量%ポリビニルエーテル水溶液10.0g(ポリメチルビニルエーテル(製品名Lutonal M40、BASF社製)として10質量%含有する。BASF(株)製)、及び1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムジシアンアミド0.48gを、0.1質量%の割合でオルフィンEXP4200(界面活性剤、日信化学(株)製、商品名)を含有する超純水水溶液61.0gへ溶解して溶液とした。その後、孔径0.45μmの親水性ポリプロピレン製ミクロフィルターを用いてろ過し、レジスト上層膜形成用組成物(溶液)を調製した。
【0062】
実施例9
10質量%ポリビニルエーテル水溶液10.0g(ポリメチルビニルエーテル(製品名Lutonal M40、BASF社製)として10質量%含有する。BASF(株)製)、及び1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムジシアンアミド1.00gを、0.1質量%の割合でオルフィンEXP4200(界面活性剤、日信化学(株)製、商品名)を含有する超純水水溶液89.0gへ溶解して溶液とした。その後、孔径0.45μmの親水性ポリプロピレン製ミクロフィルターを用いてろ過し、レジスト上層膜形成用組成物(溶液)を調製した。
【0063】
実施例10
10質量%ポリビニルエーテル水溶液10.0g(ポリメチルビニルエーテル(製品名Lutonal M40、BASF社製)として10質量%含有する。BASF(株)製)、及び1−ブチル−1−メチルピロリジニウムトリフルオロメタンスルフォネート1.00gを、0.1質量%の割合でオルフィンEXP4200(界面活性剤、日信化学(株)製、商品名)を含有する超純水水溶液89.0gへ溶解して溶液とした。その後、孔径0.45μmの親水性ポリプロピレン製ミクロフィルターを用いてろ過し、レジスト上層膜形成用組成物(溶液)を調製した。
【0064】
実施例11
10質量%マルトデキストリン水溶液10.0g(マルトデキストリンとして10質量%含有する。Aldrich(株)製)、及び1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムジシアンアミド0.48gを、0.1質量%の割合でオルフィンEXP4200(界面活性剤、日信化学(株)製、商品名)を含有する超純水水溶液61.0gへ溶解して溶液とした。その後、孔径0.45μmの親水性ポリプロピレン製ミクロフィルターを用いてろ過し、レジスト上層膜形成用組成物(溶液)を調製した。
【0065】
実施例12
10質量%マルトデキストリン水溶液10.0g(マルトデキストリンとして10質量%含有する。BASF(株)製)、及び1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムジシアンアミド1.00gを、0.1質量%の割合でオルフィンEXP4200(界面活性剤、日信化学(株)製、商品名)を含有する超純水水溶液89.0gへ溶解して溶液とした。その後、孔径0.45μmの親水性ポリプロピレン製ミクロフィルターを用いてろ過し、レジスト上層膜形成用組成物(溶液)を調製した。
【0066】
実施例13
10質量%マルトデキストリン水溶液10.0g(マルトデキストリンとして10質量%含有する。Aldrich(株)製)、及び1−ブチル−1−メチルピロリジニウムトリフルオロメタンスルフォネート0.48gを、0.1質量%の割合でオルフィンEXP4200(界面活性剤、日信化学(株)製、商品名)を含有する超純水水溶液61.0gへ溶解して溶液とした。その後、孔径0.45μmの親水性ポリプロピレン製ミクロフィルターを用いてろ過し、レジスト上層膜形成用組成物(溶液)を調製した。
【0067】
比較例1
ポリビニルピロリドン水溶液10.0g(ポリビニルピロリドンとして20質量%含有する。東京化成(株)製)を、0.1質量%の割合でオルフィンEXP4200(界面活性剤、日信化学(株)製、商品名)を含有する超純水水溶液90.0gへ溶解して溶液とした。その後、孔径0.45μmの親水性ポリプロピレン製ミクロフィルターを用いてろ過し、レジスト上層膜形成用組成物(溶液)を調製した。
【0068】
比較例2
ポリビニルピロリドン水溶液8.0g(ポリビニルピロリドンとして20質量%含有する。東京化成(株)製)、及びピリジニウムパラトルエンスルフォン酸(固体塩)0.686gを、0.1質量%の割合でオルフィンEXP4200(界面活性剤、日信化学(株)製、商品名)を含有する超純水水溶液105.6gへ溶解して溶液とした。その後、孔径0.45μmの親水性ポリプロピレン製ミクロフィルターを用いてろ過し、レジスト上層膜形成用組成物(溶液)を調製した。
【0069】
比較例3
20質量%ポリビニルピロリドン水溶液7.0g(ポリビニルピロリドンとして20質量%含有する。東京化成(株)製)、及びピリジニウムパラトルエンスルフォン酸(固体塩)1.40gを、0.1質量%の割合でオルフィンEXP4200(界面活性剤、日信化学(株)製、商品名)を含有する超純水水溶液105.6gへ溶解して溶液とした。その後、孔径0.45μmの親水性ポリプロピレン製ミクロフィルターを用いてろ過し、レジスト上層膜形成用組成物(溶液)を調製した。
【0070】
比較例4
2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチルメタクリレート85部とメタクリル酸15部の割合で共重合した共重合ポリマーを20重量%の割合で含有する4−メチル−2−ペンタノール溶液7.0g、及び1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアンアミド1.40gを、4−メチル−2−ペンタノール105.6gへ溶解して溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過し、更に、孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト上層膜形成用組成物(溶液)を調製した。
【0071】
(インターミキシングの有無)
実施例1〜13、及び比較例1〜3の各組成物をそれぞれ電子線レジスト膜上に塗布したところ、それらの各組成物は電子線レジスト膜とインターミキシングを生じないことが確認された。
【0072】
比較例4の組成物を電子線レジスト膜上に塗布したところ、比較例4の組成物は電子線レジスト膜とインターミキシングを生じ、以後のリソグラフィー工程を行うことができなかった。
【0073】
(表面抵抗値測定)
帯電防止性能は、フィルムの表面抵抗値と密接に関係し、一般に表面抵抗値が低い程帯電防止性能に優れることが知られている。従って、表面抵抗値を測定することことで、間接的ではあるが帯電防止能を評価することが可能である。ガラス基板上に実施例1〜13、及び比較例1〜3で得た組成物を2500rpmで60秒間スピンコートし、110℃で1.5分ベークして帯電防止膜を形成した。
DSM−8103デジタル絶縁計(東亜DKK社製)を用いて表面抵抗値測定を行った。表1に示すとおり、実施例にて作成したイオン性液体を有する帯電防止膜では、イオン性液体を有しない比較例のものと比較して抵抗値が1オーダー以上低いことが確認された。
【0074】
〔表1〕
表1
――――――――――――――――――――
表面抵抗値(Ω・cm)
――――――――――――――――――――
比較例1 3.9×(E+12)
比較例2 2.8×(E+10)
比較例3 1.5×(E+10)
実施例1 1.1×(E+9)
実施例2 1.0×(E+8)
実施例3 5.2×(E+7)
実施例4 2.0×(E+8)
実施例5 4.4×(E+7)
実施例6 1.1×(E+8)
実施例7 3.5×(E+7)
実施例8 4.7×(E+8)
実施例9 3.1×(E+8)
実施例10 2.0×(E+9)
実施例11 5.6×(E+9)
実施例12 7.8×(E+8)
実施例13 3.6×(E+9)
――――――――――――――――――――
表1中で(E+X)は10の値を示す。
【0075】
(帯電防止性能試験)
シリコンウェハー上にNEB22(電子線レジスト、住友化学社製)をスピンコートした。110℃で2分間ベークして電子線レジスト膜を形成し、電子線レジスト膜上に実施例1〜13及び比較例1〜3で得た組成物をそれぞれスピンコートした。110℃で1.5分ベークして帯電防止膜を形成した。ウェハーを1cm角にカットし、断面SEM(S−4800、日立製作所製)にて帯電防止性試験を行った。帯電防止性能は一定の加速電圧、引き出し電流の元、試料に電子線を照射し、SEM(走査型電子顕微鏡)で得られる像の焼きつきの大小にて帯電防止性の大きさを判断した。加速電圧1.5kV、引き出し電流10μAにて試験を行った。試験には、倍率1000倍で5秒間保った後に倍率を400倍に戻してすぐさま写真撮影を行い、1000倍に拡大時に帯電した像のコントラストを比較した。実施例にて作成したイオン性液体を有する帯電防止膜では、倍率を拡大、縮小後の像コントラストはイオン性液体を有しない比較例のものと比較して十分に小さく、帯電防止性能が確認された。もし、試料がチャージアップ(帯電状態)していれば、1000倍の拡大時の映像を400倍に縮小しても1000倍時の映像が黒い像として残存するが、チャージアップしていなければ1000倍時の映像から400倍時の映像にしたとき1000倍時の映像の残像が薄れた映像(残像がつきにくい)が映し出される。
【産業上の利用可能性】
【0076】
電子線レジストの上に被覆される帯電防止膜として十分に機能する。電子線レジストは有機溶剤への溶解性が高いが、本件発明に用いられる帯電防止膜形成組成物は水性溶剤(水性媒体)である電子線レジストとのインターミキシングを生じず、電子線レジストの上層に用いる帯電防止膜形成組成物として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】実施例1においてSEMを1000倍拡大時から400倍に縮小した直後の映像。
【図2】実施例2においてSEMを1000倍拡大時から400倍に縮小した直後の映像。
【図3】実施例3においてSEMを1000倍拡大時から400倍に縮小した直後の映像。
【図4】実施例4においてSEMを1000倍拡大時から400倍に縮小した直後の映像。
【図5】実施例5においてSEMを1000倍拡大時から400倍に縮小した直後の映像。
【図6】実施例6においてSEMを1000倍拡大時から400倍に縮小した直後の映像。
【図7】実施例7においてSEMを1000倍拡大時から400倍に縮小した直後の映像。
【図8】実施例8においてSEMを1000倍拡大時から400倍に縮小した直後の映像。
【図9】実施例9においてSEMを1000倍拡大時から400倍に縮小した直後の映像。
【図10】実施例10においてSEMを1000倍拡大時から400倍に縮小した直後の映像。
【図11】実施例11においてSEMを1000倍拡大時から400倍に縮小した直後の映像。
【図12】実施例12においてSEMを1000倍拡大時から400倍に縮小した直後の映像。
【図13】実施例13においてSEMを1000倍拡大時から400倍に縮小した直後の映像。
【図14】比較例1においてSEMを1000倍拡大時から400倍に縮小した直後の映像。
【図15】比較例2においてSEMを1000倍拡大時から400倍に縮小した直後の映像。
【図16】比較例3においてSEMを1000倍拡大時から400倍に縮小した直後の映像。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性樹脂及びイオン液体を含み、電子線レジストの上層に帯電防止膜を形成するための帯電防止膜形成組成物。
【請求項2】
水溶性樹脂が、アミド基、アミノ基、水酸基又はそれらの組み合わせを有する官能基を側鎖に含む非イオン性樹脂である請求項1に記載の帯電防止膜形成組成物。
【請求項3】
水溶性樹脂が、カルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸、スルホン酸塩又はそれらの組み合わせを有する官能基を側鎖に含むアニオン性樹脂である請求項1に記載の帯電防止膜形成組成物。
【請求項4】
水溶性樹脂が、アンモニウム塩を側鎖に含むカチオン性樹脂である請求項1に記載の帯電防止膜形成組成物。
【請求項5】
イオン液体が、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、フォスフォニウム、アンモニウム、及びスルホニウムからなる群より選ばれるカチオンを含む請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の帯電防止膜形成組成物。
【請求項6】
イオン液体が、ハロゲン、カルボキシレート、サルフェート、スルホネート、チオシアネート、アルミネート、ボレート、ホスフェート、ホスフィネート、アミド、アンチモネート、イミド、及びメチドからなる群より選ばれるアニオンを含む請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の帯電防止膜形成組成物。
【請求項7】
更に水性媒体を含む請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の帯電防止膜形成組成物。
【請求項8】
更に界面活性剤を含む請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の帯電防止膜形成組成物。
【請求項9】
基板上に電子線レジストを被覆する工程、その上に請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の帯電防止膜形成組成物を塗布し焼成し帯電防止膜を形成する工程、電子線を照射する工程、現像する工程を含む電子線レジストパターンの形成方法。
【請求項10】
基板上に電子線レジストを被覆する工程、その上に請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の帯電防止膜形成組成物を塗布し焼成し帯電防止膜を形成する工程、電子線を照射する工程、現像する工程を含む半導体素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−20046(P2010−20046A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179869(P2008−179869)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】