説明

電子装置及びその製造方法

【課題】電気的特性を損なうことなく、接続信頼性の高い電子装置及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】電子装置は、基板と、基板にバンプを介して実装された電子素子と、基板と電子素子との間に配される封止樹脂と、を備える。電子素子は、バンプと電気的に接続された第1パッドを有する。基板は、導電性樹脂層を有する。導電性樹脂層は、バンプと電気的に接続された第2パッドと、第2パッドから連続的に延在する配線と、を形成する。第2パッドの厚さは、配線の厚さよりも厚い。第2パッドは、バンプの押圧によって凹状となっていない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子素子を基板に実装した電子装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子のフリップチップ実装構造としては、接合剤としてはんだを用いるもの、Auなどの金属同士を熱圧着するもの等がある。はんだを用いる場合には、チップ側の電極或いは基板電極にあらかじめはんだを供給する必要があり、狭ピッチへの対応が難しい。金属の熱圧着法では、高温への加熱と超音波による振動がチップ及び基板に加わり、ダメージを受けることが懸念される。また、チップを振動させるため狭ピッチへの対応が難しい。
【0003】
これらの工法に対し、より簡便な方法として検討されているのが、圧接工法である。圧接工法は、基板の部品実装位置にあらかじめ絶縁性樹脂を塗布しておき、チップを基板に搭載・加圧するとともに加熱し、絶縁性樹脂を硬化させる実装方法である。この圧接工法を用いた半導体装置において、接続信頼性を高めるために、一方の電極ないし配線側を凹状にするものが知られている(例えば特許文献1〜3)。
【0004】
特許文献1に記載の半導体装置においては、基材の少なくとも一方の面に樹脂層を介し導体配線を有する配線基板の導体配線と、半導体素子の突起電極が合致し、突起電極が合致した部分の導体配線及び樹脂層を凹となる様に弾性変形し、且つ半導体素子と配線基板の間に介在した接着用絶縁性樹脂により、半導体素子が配線基板に固着されるとともに、半導体素子の突起電極と導体配線が電気的に接続されている。
【0005】
特許文献2に記載の半導体装置においては、半導体素子の電極上に具備された突起電極と、配線基板上に具備された電極とを合致させ、配線基板上の電極を圧延性を有する材料で構成し、配線基板上の電極下に突起電極より柔らかい絶縁膜を配置し、突起電極と配線基板上の電極が合致する部分の、圧延性を有する電極と突起電極より柔らかい絶縁膜が凹状に変形し、凹状の部分に突起電極が合致していることにより、突起電極と配線基板上の電極とが電気的に接続しているとともに、半導体素子が機械的に配線基板に固定される。
【0006】
特許文献3に記載の半導体装置においては、突起電極を有する半導体素子と、該突起電極に相対する電極を有する配線基板との間に樹脂にてなる接着剤を配置し、半導体素子と配線基板とを圧接して接着剤を硬化させることにより半導体素子と配線基板とを接続し、配線基板の電極の幅を突起電極の幅より小さく形成し、かつ、圧接により配線基板の電極部分に凹部が形成されている。
【0007】
【特許文献1】特許第2502794号公報
【特許文献2】特許第3052615号公報
【特許文献3】特許第3274619号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以下の分析は、本発明の観点から与えられる。
【0009】
特許文献1〜3に記載の半導体装置においては、半導体素子等の電子素子が搭載される部分に凹部が形成されている。しかしながら、電極又は配線が凹状に変形すると、配線から伝送されてきた高周波信号の特性が劣化し、性能低下を招くおそれがある。また、樹脂層等が凹状に変形すると、凹状変形領域にストレスが生じ、樹脂層等と基板とが剥離したり、基板にクラックが発生したりするおそれがある。
【0010】
本発明の目的は、電気的特性を損なうことなく、接続信頼性の高い電子装置及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1視点によれば、基板と、基板にバンプを介して実装された電子素子と、基板と電子素子との間に配される封止樹脂と、を備える電子装置が提供される。電子素子は、バンプと電気的に接続された第1パッドを有する。基板は、導電性樹脂層を有する。導電性樹脂層は、バンプと電気的に接続された第2パッドと、第2パッドから連続的に延在する配線と、を形成する。第2パッドの厚さは、配線の厚さよりも厚い。第2パッドは、バンプの押圧によって凹状となっていない。
【0012】
上記第1視点の好ましい形態によれば、第2パッドは、バンプの押圧によって弾性変形している。
【0013】
上記第1視点の好ましい形態によれば、導電性樹脂層は、金属層によって覆われている。さらに好ましい形態によれば、金属層は、めっき又は金属微粒子の焼結体である。
【0014】
上記第1視点の好ましい形態によれば、導電性樹脂層は、基板に形成された回路配線と電気的に接続されている。
【0015】
上記第1視点の好ましい形態によれば、基板は、その表面の少なくとも一部を覆う第1カバーコートを有する。導電性樹脂層は、第1カバーコート上に形成されている。
【0016】
上記第1視点の好ましい形態によれば、基板は、第2パッドの少なくとも一部を露出するように、基板及び導電性樹脂層又は金属層の少なくとも一部を覆う第2カバーコートを有する。
【0017】
上記第1視点の好ましい形態によれば、基板は、第2パッドが形成された領域の少なくとも一部に、基板よりも低弾性の低弾性層を有する。さらに好ましい形態によれば、低弾性層は、絶縁性樹脂、導電性樹脂、シリコンゴム又は銅である。
【0018】
本発明の第2視点によれば、基板上に導電性樹脂層を形成する導電性樹脂層形成工程と、導電性樹脂層と電気的に接続するように電子素子を基板に実装する実装工程と、を含む電子装置の製造方法が提供される。実装工程において、電子素子による押圧によって導電性樹脂層が凹状とならないように電子素子を実装する。
【0019】
上記第2視点の好ましい形態によれば、実装工程において、電子素子による押圧によって導電性樹脂層を弾性変形させる。
【0020】
上記第2視点の好ましい形態によれば、実装工程において、電子素子の第1パッドに形成したバンプを介して、導電性樹脂に面するバンプの一部を塑性変形させながら、電子素子と導電性樹脂とを電気的に接続する。
【0021】
上記第2視点の好ましい形態によれば、電子装置の製造方法は、実装工程前に、基板と電子素子との間に配されるように封止樹脂を供給する封止樹脂供給工程をさらに含む。実装工程において又は実装工程後、封止樹脂を硬化させる。
【0022】
上記第2視点の好ましい形態によれば、電子装置の製造方法は、導電性樹脂層を金属層で覆う金属層形成工程をさらに含む。実装工程において、電子素子と導電性樹脂層とは金属層を介して電気的に接続させる。さらに好ましい形態によれば、金属層は、めっき又は金属微粒子の焼結体で形成する。
【0023】
上記第2視点の好ましい形態によれば、導電性樹脂層形成工程において、導電性樹脂によって、電子素子の第1パッドと電気的に接続するための第2パッド及び第2パッドと連続して延在する配線を形成する。第2パッドは、配線よりも厚く形成する。
【0024】
上記第2視点の好ましい形態によれば、電子装置の製造方法は、導電性樹脂層形成工程前に、第2パッドを形成する少なくとも一部に、基板よりも低弾性の低弾性層を形成する低弾性層形成工程をさらに含む。
【0025】
上記第2視点の好ましい形態によれば、導電性樹脂層形成工程において、基板に形成された回路配線と導電性樹脂とを電気的に接続させる。
【0026】
上記第2視点の好ましい形態によれば、電子装置の製造方法は、導電性樹脂層形成工程前に、基板上の少なくとも一部に絶縁性の第1カバーコートを形成する第1カバーコート形成工程をさらに含む。導電性樹脂層形成工程において、第1カバーコート上に導電性樹脂層を形成する。
【0027】
上記第2視点の好ましい形態によれば、電子装置の製造方法は、実装工程前に、第2パッドの少なくとも一部を露出するように、基板及び導電性樹脂層又は金属層の少なくとも一部を覆う第2カバーコートを形成する第2カバーコート形成工程をさらに含む。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、以下の効果のうち少なくとも1つを有する。
【0029】
本発明によれば、導電性樹脂層を凹状としないことにより、導電性樹脂層によって形成される配線が伝送する高周波信号の劣化を防止することができる。また、導電性樹脂層と基板との剥離を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の第1実施形態に係る電子装置について説明する。図1に、本発明の第1実施形態に係る電子装置の概略断面図を示す。電子装置1は、電子素子5と、電子素子5を実装した実装基板2と、電子素子5と実装基板2との間を封止する封止樹脂8と、を備える。
【0031】
実装基板2は、その上に配された導電性樹脂層3と、導電性樹脂層3を覆う金属層4と、を有する。実装基板2の第2パッド(電子素子実装用パッド)10及び配線11は、導電性樹脂層3及び金属層4のよって一続きに形成されている。例えば、第2パッド10は、配線11よりも導電性樹脂層3及び金属層4の表面積を大きくすることによって形成される。また、導電性樹脂層3は、実装基板2表面から隆起している(凸状となっている)第2パッド10部分における導電性樹脂層3の厚さは、配線11部分における導電性樹脂層3の厚さよりも厚くなっている。例えば、配線11の厚さは、配線幅の半分以下にすることができる。
【0032】
電子素子5は、第1パッド(電子素子パッド)6と、第1パッド6に形成されたバンプ7と、を有する。
【0033】
電子素子5は、バンプ7が第2パッド10と電気的に接続されるように、実装基板2に実装されている。このとき、バンプ7は、第2パッド10への押し付けによって塑性変形されている。一方、第2パッド10は、バンプ7の押圧によって弾性変形されている。さらに、電子素子5と実装基板2には、封止樹脂8の硬化収縮力が作用している。これにより、電子素子5と実装基板2とは、第2パッド10の弾性作用及び封止樹脂8の収縮作用によって強固に接続され、電気的接続の信頼性を高めることができる。
【0034】
但し、第2パッド10は、バンプ7の押圧によって凹状には変形していない。第2パッド10が凹状に変形すると、配線11から伝送されてきた高周波信号の特性が劣化し、性能低下を招くおそれがある。また、導電性樹脂層3と実装基板2との間にストレスが掛かり、導電性樹脂層3と実装基板2とが剥離するおそれがある。
【0035】
導電性樹脂層3としては、硬化後の弾性率が1MPaから10GPa程度の導電性樹脂(導電性接着剤)、導電性インク(導電性ペースト)等を使用すると好ましい。この弾性率によれば、バンプ7に押圧によって適当な弾性変形を得ることができる。導電性樹脂層3は、例えば、導電用フィラー、金属微粒子(金、銀、または銅等の微粒子)、エポキシ、アクリル、シリコーン等のバインダ樹脂、カップリング剤等を有する導電性樹脂又は導電性インク等により形成することができる。導電用フィラーの外径サイズは、第2パッド10及び配線11の狭ピッチ化を図るために、5μm以下であることと好ましく、より好ましくは0.5μm〜3μmである。導電用フィラーの外形サイズが小さいほど印刷がしやすくなるが、小さくなりすぎると接触抵抗が増大してしまう。また、導電性樹脂層3には、金属微粒子が含まれていると好ましく、金属微粒子の粒子径は、5nm〜20nmであると好ましい。金属微粒子は、粒子径が20nm以下にサイズになると低温で融着する性質があるので、導電性樹脂層3に金属微粒子を含有させることにより、狭ピッチ化に対応可能となるだけでなく、金属微粒子同士が融着して導電率も向上させることができる。
【0036】
金属層4は、めっき又は金属微粒子の焼結体により形成することができる。金属層4の材料は特に限定されないが、めっきの場合には、Ni/Au、Ni/Pd/Au、Ni、Cu、Ag等から適宜選択することができ、焼結体の場合には、Au、Ag、Cu、Ni等から適宜選択することができる。焼結体は、焼結粒子の粒子径を20nm以下とすることで、より低温で焼結させることが可能となる。金属層4を形成することにより、導電性樹脂層3の樹脂強度や樹脂と金属フィラーとの密着力が弱い場合に、バンプ7の圧接荷重に伴って発生する導電性樹脂層3の破壊を防止することができる。
【0037】
封止樹脂8の材料としては、エポキシ系樹脂など、通常フリップチップ実装のアンダーフィル樹脂として用いられる材料を用いることが可能であるが、これに限定されるものではなく、圧接工法により電子素子5を実装可能で、導電性樹脂層3及び金属層4による配線に発生するイオンマイグレーションを抑制可能な絶縁性能を持っていれば使用することができる。また、封止樹脂8は、硬化後の樹脂物性を調整するためにフィラーを含有してもよく、フィラーとしてはシリカ、シリコーン、アルミナ等から適宜選択することができる。
【0038】
実装基板2の材料は特に限定されないが、例えば、有機基板、シリコン基板(シリコンウェハ、シリコンチップ)等を使用することができる。
【0039】
バンプ7の材料は、導電率が高く、かつ塑性変形しやすいものが好ましく、例えば、Au、Au−Pd合金等を使用することができる。また、電子素子5実装前のバンプ7の形状は、先端が細く潰れやすい形状を有するいわゆるスタッドバンプであると好ましい。
【0040】
次に、本発明の第2実施形態に係る電子装置について説明する。図2に、本発明の第1実施形態に係る電子装置の概略断面図を示す。なお、図2において、第1実施形態と同じ要素には同じ符号を付してある。
【0041】
第2実施形態に係る電子装置21において、実装基板22は、その表面に、回路配線から引き出された基板電極23をさらに有する。導電性樹脂層3及び金属層4から形成された配線11は、基板電極23と電気的に接続されている。実装基板22の回路配線は、片面、両面、多層配線のいずれであってもよい。
【0042】
第2実施形態における上記以外の形態については、第1実施形態と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0043】
次に、本発明の第3実施形態に係る電子装置について説明する。図3に、本発明の第3実施形態に係る電子装置の概略断面図を示す。なお、図3において、第1実施形態及び第2実施形態と同じ要素には同じ符号を付してある。
【0044】
第3実施形態に係る電子装置31において、実装基板22表面の基板電極23以外の領域には、絶縁性の第1カバーコート32が形成されている。第2パッド10及び配線11は、第1カバーコート32上に形成することができる。
【0045】
第1カバーコート32の材料及び膜厚は、回路配線の物理的保護、マイグレーションの抑制、及び封止樹脂8との親和性(実装時のフロー性、硬化後の密着性)が得られるように適宜設定することができる。例えば、第1カバーコート32としては、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)、エポキシ樹脂等を使用することができる。
【0046】
第3実施形態によれば、実装基板22表面に回路配線がある場合には、実装基板22の回路配線と配線11とのショートを防止することができる。
【0047】
第3実施形態における上記以外の形態については、第1実施形態及び第2実施形態と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0048】
次に、本発明の第4実施形態に係る電子装置について説明する。図4に、本発明の第4実施形態に係る電子装置の概略断面図を示す。なお、図4において、第1〜第3実施形態と同じ要素には同じ符号を付してある。
【0049】
第4実施形態に係る電子装置41において、実装基板22上には第2カバーコート42が形成されている。第2パッド10の表面のみが第2カバーコート42から露出し、配線11等は第2カバーコート42で覆われている。
【0050】
第2カバーコート42の材料及び膜厚は、マイグレーションの抑制、及び封止樹脂8との親和性(実装時のフロー性、硬化後の密着性)が得られるように適宜設定することができる。例えば、第2カバーコート42としては、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)、エポキシ樹脂等を使用することができる。また、第2カバーコート42の膜厚は、第2パッド10が露出するように設定し、例えば、印刷で形成する場合には20μm〜30μm、フィルムを使用する場合には10μm〜20μmにすることができる。
【0051】
第4実施形態によれば、実装基板22に対する配線11の密着強度を高めることができる。また、封止樹脂8に、配線11へのマイグレーション抑制効果がない場合であっても、第2カバーコート42にマイグレーション抑制効果を有する材料を採用することにより、マイグレーションを抑制することができる。
【0052】
第4実施形態における上記以外の形態については、第1〜第3実施形態と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0053】
次に、本発明の第5実施形態に係る電子装置について説明する。図5に、本発明の第5実施形態に係る電子装置の概略断面図を示す。なお、図5において、第1〜第2実施形態と同じ要素には同じ符号を付してある。
【0054】
第5実施形態に係る電子装置51は、実装基板22上に多層配線層52を有している。多層配線層52は、第1〜第2絶縁層53a,53b及び第1〜第3導電性樹脂層54a〜54cの積層構造を有する。第1導電性樹脂層54aは、実装基板22上に、基板電極23と電気的に接続して形成され、第2導電性樹脂層54bは、第1絶縁層53a上に、第1導電性樹脂層54aと電気的に接続して形成され、第3導電性樹脂層54cは、第2絶縁層53b上に、第2導電性樹脂層54bと電気的に接続して形成されている。第3導電性樹脂層54cが第2パッド10及び配線11を形成している。
【0055】
図5に示す形態においては、金属層55は、第3導電性樹脂層54c上のみに形成されているが、第1〜第3導電性樹脂層54a〜54cのすべてに形成してもよい。
【0056】
第5実施形態によれば、実装基板22が回路配線を有しない場合であっても、多層配線層52を絶縁層53a,53b及び導電性樹脂層54a〜54cの印刷のみで形成することができ、リソグラフィ法と比較して、安価でかつ環境に優しい方法で電子装置51を製造することができる。
【0057】
第5実施形態における上記以外の形態については、第1実施形態及び第2実施形態と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0058】
次に、本発明の第6実施形態に係る電子装置について説明する。図6に、本発明の第6実施形態に係る電子装置の概略断面図を示す。なお、図6において、第1〜第2実施形態と同じ要素には同じ符号を付してある。
【0059】
第6実施形態に係る電子装置61は、実装基板22上の第2パッド10下部に、実装基板22よりも弾性が低い低弾性層62を有する。低弾性層62の材料は、実装基板22の材料に応じて適宜選択することでき、例えば、絶縁性樹脂、導電性樹脂、シリコンゴム、銅等から選択することができる。低弾性層62の形成範囲は、第2パッド10の面積に関係なく設定することができ、例えば、第2パッド10の面積よりも大きくてもよいし、実装基板22全面に形成してもよい。
【0060】
第6実施形態によれば、電子素子5実装時に、実装基板22ではなく低弾性層62を変形させることにより反発力を高めてバンプ7と第2パッド10との接続信頼性をより高めることができる。また、低弾性層62により第2パッド10がかさ上げされるので、電子素子5と実装基板22間のギャップを確保することができる。さらに、低弾性層62による応力緩和及び実装基板22への荷重低減によって実装性及び接続信頼性を高めることができる。
【0061】
第6実施形態における上記以外の形態については、第1実施形態及び第2実施形態と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0062】
次に、本発明の第7実施形態に係る電子装置について説明する。図7に、本発明の第7実施形態に係る電子装置の概略断面図を示す。なお、図7において、第1実施形態と同じ要素には同じ符号を付してある。
【0063】
第7実施形態に係る電子装置71は、第2パッド10及び配線11は、導電性樹脂層3のみで形成され、第1〜第6実施形態と異なり金属層は有していない。導電性樹脂層3の樹脂強度や樹脂と金属フィラーとの密着力が十分にある場合には、金属層を形成しないことにより、電子装置71の構成をより簡易にすることができると共に、その製造方法の工数を減少させることができる。
【0064】
第7実施形態における上記以外の形態については、第1実施形態と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0065】
上記において、第1〜第7実施形態は、いずれか1つの形態を基に説明したが、第1〜第7実施形態のうち複数の形態を適宜組み合わせることができることはいうまでもない。
【0066】
次に、本発明の電子装置の製造方法について説明する。図8に、本発明の電子装置の製造方法を説明するための概略工程図を示す。図8は、第2実施形態に係る電子装置21の製造方法を示す。
【0067】
まず、実装基板22上に、基板電極23と電気的に接続するように導電性樹脂層3を形成する(図8(a);導電性樹脂層形成工程)。導電性樹脂層3によって、電子素子5と電気的に接続するための第2パッド10と、第2パッド10と連続して延在する配線11とを形成する。第2パッド10となる部分は、配線11部分よりも厚く形成する。導電性樹脂層3は、例えば、スクリーンマスクを用いたスクリーン印刷法、インクジェット法、ディスペンス法、グラビアオフセット印刷法等を用いて形成することができる。このとき、実装基板22の回路配線の形態には限定されず、導電性樹脂層による配線のみで実装基板22の回路配線を構成してもよい。
【0068】
第3実施形態に係る電子装置の場合には、導電性樹脂層3の形成前に、実装基板22上の少なくとも一部に絶縁性の第1カバーコートを形成し(第1カバーコート形成工程)、第1カバーコート上に導電性樹脂層3を形成する。第1カバーコートは、例えば、スクリーン印刷法、インクジェット法、ディスペンス法等を用いて形成することができる。
【0069】
第6実施形態に係る電子装置の場合には、導電性樹脂層3の形成前に、第2パッド10を形成する領域の少なくとも一部に低弾性層を形成し(低弾性層形成工程)、低弾性層上に導電性樹脂層3を形成する。
【0070】
次に、金属層4を形成する場合には、導電性樹脂層3を覆うように金属層4をめっき又は金属微粒子の焼結体によって形成する(図8(b);金属層形成工程)。めっきの場合には、電解めっきと無電解めっきのいずれの方法を用いてもよい。
【0071】
次に、実装基板22上に、実装基板22と電子素子5との間に配されるように封止樹脂8を塗布する(図8(c);封止樹脂供給工程)。封止樹脂8は、例えばスクリーン印刷法、インクジェット法、ディスペンス法等を用いて塗布することができる。また、このとき先に形成した第2パッド10が封止樹脂8によって覆われないようにする必要がある。封止樹脂8の塗布量は、電子素子5と実装基板22との間を充填し、電子素子5側面にフィレットを形成するのに十分で、かつ電子素子5上面に封止樹脂8が這い上がらない量とすることが好ましい。
【0072】
次に、第1パッド6に予めバンプ7が形成された電子素子5を実装基板22に搭載する。このとき、バンプ7が第2パッド10上に配されるように、すなわち第1パッド6と第2パッド10とがバンプ7、導電性樹脂層3及び金属層4を介して電気的に接続されるように、位置合わせする(図8(d);実装工程)。バンプ7の材質は金属で、導電率が高く塑性変形しやすいものが好ましく、Au、Au−Pd合金で先端が細く潰れやすい形状である所謂スタッドバンプを用いると好ましい。また、電子素子5を実装基板22に搭載することにより、電子素子5と実装基板22との間を硬化前の封止樹脂8で満たすことができる。
【0073】
図9に、電子素子5実装時における第2パッド10及びバンプ7部分の拡大概略断面図を示す。なお、図9において、封止樹脂の図示は省略してある。電子素子5を加熱及び加圧し、バンプ7を第2パッド10に押し付ける。これにより、第2パッド10に面するバンプ7の先端が塑性変形すると共に、第2パッド10が弾性変形する(図9(b))。これにより、バンプ7と第2パッド10との電気的接続の信頼性を高めることができる。ただし、高周波特性の劣化や導電性樹脂層3の剥離を防止するため、第2パッド10はバンプ7によって凹状とならないようにする。
【0074】
第4実施形態に係る電子装置の場合には、実装工程の前に、少なくともバンプ7と接続する第2パッド10部分を露出するように、実装基板22(及び/又は第1カバーコート)及び金属層4(又は導電性樹脂層3)の少なくとも一部を覆う第2カバーコートを形成する(第2カバーコート形成工程)。
【0075】
次に、バンプ7と第2パッド10とを接触させ、第2パッド10の弾性変形を維持しながら、封止樹脂8が硬化するように加熱して、電子装置21を製造する(図8(e))。このとき、封止樹脂8の硬化収縮力によってバンプ7と第2パッド10との電気的接続の信頼性をさらに高めることができる。
【0076】
実装基板22がシリコンウェハである場合には、導電性樹脂層3の形成及び金属層の形成は、ウェハ状態で行うことができる。また、電子素子5の搭載及び封止樹脂8の硬化もウェハ状態で行うことができ、電子装置21の製造後、各個片にダイシングすることができる。
【0077】
本発明の電子装置の製造方法によれば、電子素子と実装基板との電気的接続の信頼性を高めることができる。また、印刷法を用いて第2パッド及び配線を形成することで、エッチングなどによる廃材が一切なく、リソグラフィ技術に比べて環境への負荷を低減することができる。さらに、リソグラフィ技術に比べて工程数が削減されるため製造コストや設備投資額を低下させることもできる。
【0078】
本発明の電子装置及びその製造方法は、上記実施形態に基づいて説明されているが、上記実施形態に限定されることなく、本発明の範囲内において、かつ本発明の基本的技術思想に基づいて、上記実施形態に対し種々の変形、変更及び改良を含むことができることはいうまでもない。また、本発明の請求の範囲の枠内において、種々の開示要素の多様な組み合わせ・置換ないし選択が可能である。
【0079】
本発明のさらなる課題、目的及び展開形態は、請求の範囲を含む本発明の全開示事項からも明らかにされる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、例えば、電子素子として、LSIチップ等の半導体素子を用いた半導体装置及びその製造方法に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電子装置の概略断面図。
【図2】本発明の第2実施形態に係る電子装置の概略断面図。
【図3】本発明の第3実施形態に係る電子装置の概略断面図。
【図4】本発明の第4実施形態に係る電子装置の概略断面図。
【図5】本発明の第5実施形態に係る電子装置の概略断面図。
【図6】本発明の第6実施形態に係る電子装置の概略断面図。
【図7】本発明の第7実施形態に係る電子装置の概略断面図。
【図8】本発明の電子装置の製造方法を説明するための概略工程図。
【図9】電子素子実装時における第2パッド及びバンプ部分の拡大概略断面図。
【符号の説明】
【0082】
1,21,31,41,51,61,71 電子装置
2,22 実装基板
3 導電性樹脂層
4 金属層
5 電子素子
6 第1パッド
7 バンプ
8 封止樹脂
10 第2パッド
11 配線
23 基板電極
32 第1カバーコート
42 第2カバーコート
52 多層配線層
53a〜53b 第1〜第2絶縁層
54a〜54c 第1〜第3導電性樹脂層
55 金属層
62 低弾性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板にバンプを介して実装された電子素子と、
前記基板と前記電子素子との間に配される封止樹脂と、を備え、
前記電子素子は、前記バンプと電気的に接続された第1パッドを有し、
前記基板は、導電性樹脂層を有し、
前記導電性樹脂層は、前記バンプと電気的に接続された第2パッドと、前記第2パッドから連続的に延在する配線と、を形成し、
前記第2パッドの厚さは、前記配線の厚さよりも厚く、
前記第2パッドは、前記バンプの押圧によって凹状となっていないことを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記第2パッドは、前記バンプの押圧によって弾性変形していることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記導電性樹脂層は、金属層によって覆われていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記金属層は、めっき又は金属微粒子の焼結体であることを特徴とする請求項3に記載の電子装置。
【請求項5】
前記導電性樹脂層は、前記基板に形成された回路配線と電気的に接続されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子装置。
【請求項6】
前記基板は、その表面の少なくとも一部を覆う第1カバーコートを有し、
前記導電性樹脂層は、前記第1カバーコート上に形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子装置。
【請求項7】
前記基板は、前記第2パッドの少なくとも一部を露出するように、前記基板及び前記導電性樹脂層又は金属層の少なくとも一部を覆う第2カバーコートを有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の電子装置。
【請求項8】
前記基板は、前記第2パッドが形成された領域の少なくとも一部に、前記基板よりも低弾性の低弾性層を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子装置。
【請求項9】
前記低弾性層は、絶縁性樹脂、導電性樹脂、シリコンゴム又は銅であることを特徴とする請求項8に記載の電子装置。
【請求項10】
基板上に導電性樹脂層を形成する導電性樹脂層形成工程と、
前記導電性樹脂層と電気的に接続するように電子素子を前記基板に実装する実装工程と、を含み、
前記実装工程において、前記電子素子による押圧によって前記導電性樹脂層が凹状とならないように前記電子素子を実装することを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項11】
前記実装工程において、前記電子素子による押圧によって前記導電性樹脂層を弾性変形させることを特徴とする請求項10に記載の電子装置の製造方法。
【請求項12】
前記実装工程において、前記電子素子の第1パッドに形成したバンプを介して、前記導電性樹脂に面する前記バンプの一部を塑性変形させながら、前記電子素子と前記導電性樹脂とを電気的に接続することを特徴とする請求項10又は11に記載の電子装置の製造方法。
【請求項13】
前記実装工程前に、前記基板と前記電子素子との間に配されるように封止樹脂を供給する封止樹脂供給工程をさらに含み、
前記実装工程において又は前記実装工程後、前記封止樹脂を硬化させることを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法。
【請求項14】
前記導電性樹脂層を金属層で覆う金属層形成工程をさらに含み、
前記実装工程において、前記電子素子と前記導電性樹脂層とは前記金属層を介して電気的に接続させることを特徴とする請求項10〜13のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法。
【請求項15】
前記金属層は、めっき又は金属微粒子の焼結体で形成することを特徴とする請求項14に記載の電子装置の製造方法。
【請求項16】
前記導電性樹脂層形成工程において、前記導電性樹脂によって、前記電子素子の第1パッドと電気的に接続するための第2パッド及び前記第2パッドと連続して延在する配線を形成し、
前記第2パッドは、前記配線よりも厚く形成することを特徴とする請求項10〜15のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法。
【請求項17】
前記導電性樹脂層形成工程前に、前記第2パッドを形成する少なくとも一部に、前記基板よりも低弾性の低弾性層を形成する低弾性層形成工程をさらに含むことを特徴とする請求項16に記載の電子装置の製造方法。
【請求項18】
前記導電性樹脂層形成工程において、前記基板に形成された回路配線と前記導電性樹脂とを電気的に接続させることを特徴とする請求項10〜17のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法。
【請求項19】
前記導電性樹脂層形成工程前に、前記基板上の少なくとも一部に絶縁性の第1カバーコートを形成する第1カバーコート形成工程をさらに含み、
前記導電性樹脂層形成工程において、前記第1カバーコート上に前記導電性樹脂層を形成することを特徴とする請求項18に記載の電子装置の製造方法。
【請求項20】
前記実装工程前に、前記第2パッドの少なくとも一部を露出するように、前記基板及び前記導電性樹脂層又は金属層の少なくとも一部を覆う第2カバーコートを形成する第2カバーコート形成工程をさらに含むことを特徴とする請求項16〜19のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−87418(P2010−87418A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257502(P2008−257502)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】