説明

電子装置製造システムおよび電子装置製造方法

【課題】リワインド処理の回数を抑えて電子装置を製造する。
【解決手段】複数のベース13が配列可能な広さを有する長尺なベースシート上に、複数のアンテナ12を、それら複数のアンテナ12の向きも含めて点対称な配列となるように形成し、そのベースシートを巻き取ってロール体を得るアンテナ形成装置210と、そのロール体からベースシートを引き出して、その引き出したベースシート上に形成された各アンテナ12上にICチップ11を、各アンテナ12の向きに応じた向きに搭載して、ICチップ11とアンテナ12とを電気的に接続するICチップ搭載装置220と、アンテナ12上にICチップ11が搭載されたベースシートに対し、そのベースシートをRFIDタグ1に仕上げる後処理を施す後処理装置230とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベース上に形成された導体パターンとその導体パターンに電気的に接続された回路チップとを有する電子装置を製造する電子装置製造システム、および、そのような電子装置を製造する電子装置製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プリント配線基板等のベースに形成された導体パターンに回路チップが電気的に接続されてなる電子装置が広く知られている。このような電子装置は、電子機器に内蔵されてこの電子機器を制御したり、あるいは単体として外部機器と情報をやり取りしたりする用途に用いられている。このような電子装置の一例として、近年、リーダライタに代表される外部機器との間で、電波によって非接触で情報のやり取りを行う種々のタイプのRFID(Radio_Frequency_IDentification)タグが提案されている。このRFIDタグの一種として、プラスチックや紙からなるベースシート上に電波通信用のアンテナとして機能する導体パターン(以下、単にアンテナと呼ぶ)が形成され、さらにそのアンテナに、そのアンテナを介して無線通信を行うICチップが電気的に接続された構成のものが提案されており(例えば、特許文献1,2,3参照)、このようなタイプのRFIDタグについては、物品などに貼り付けられ、その物品に関する情報を外部機器とやり取りすることで物品の識別などを行うという利用形態が考えられている。
【0003】
図1は、RFIDタグの一例を示す図である。
【0004】
この図1のパート(a)には、RFIDタグ1の上面図が示されており、パート(b)には、このRFIDタグ1の長手方向の側面図が示されており、パート(c)には、このRFIDタグ1の構成部品であるICチップ11が示されている。尚、ICチップ11は、その接続端子に金などのバンプ11aが形成されたものであるが、図1のパート(c)では、バンプ11aの形成面が見えるようにパート(a)やパート(b)に示すICチップ11とは上下が逆に示されている。
【0005】
この図1に示すRFIDタグ1は、シート状のPETフィルム等からなるベース13上に設けられたアンテナ12と、そのアンテナ12にバンプ11aにより電気的に接続されベース13に接着剤で固着されたICチップ11とで構成されている。
【0006】
このRFIDタグ1を構成するICチップ11は、アンテナ12を介して外部機器と無線通信を行ない、情報をやりとりすることができる。
【0007】
ここで、このRFIDタグ1のアンテナ12は、図1の例では、ICチップ11を挟んだ2つのL字型パターンからなっており、非点対称な形状となっている。この図1の例では、図1のパート(c)に示す3つのバンプ11aのうち、図中の手前側の2つのバンプ11a_1それぞれが、アンテナ12におけるL字型パターンの長辺側の端部に接続されている。さらに、この図1の例では、ICチップ11は、残る1つのバンプ11a_2が、アンテナ12におけるL字型パターンの短辺の突出方向とは反対側に位置する向きにアンテナ12に搭載されている。このように、この図1の例では、ICチップ11は、アンテナ12におけるL字型パターンの短辺の突出方向(以下、この短辺の突出方向をアンテナ12の向きと呼ぶ)に応じた向きに搭載される。
【0008】
以上、図1に示すように、一般のRFIDタグの中には、非点対称な形状のアンテナを有し、ICチップが、そのアンテナの向きに応じた向きに搭載されてなるものがある。従来、このような非点対称な形状のアンテナを有するRFIDタグを製造するに当たっては、以下に説明するような工夫が行われている。
【0009】
図2は、非点対称な形状のアンテナを有するRFIDタグを製造するタグ製造システムの一例を示す図である。
【0010】
尚、この図2の例では、製造されるRFIDタグとして、図1に示すRFIDタグ1が示されている。
【0011】
この図2に示すタグ製造システム100は、複数のベース13が配列可能な広さを有する長尺のベースシートが巻かれたベースロール13aを使って、RFIDタグ1を複数製造するものである。
【0012】
このタグ製造システム100は、以下に説明するアンテナ形成処理(ステップS101)を行うアンテナ形成装置110を備えている。このアンテナ形成処理(ステップS101)では、まず、上記のベースロール13aがこのアンテナ形成装置110にセットされる。すると、このアンテナ形成装置110が備えているパターン形成部111が、ベースロール13aからベースシートを引出して、そのベースシートに複数のアンテナ12を形成する。このパターン形成部111では、図2に示すように、複数のアンテナ12が、アンテナ12のパターンの向きが互いに揃えられてベースシート上に2列に配列される。そして、このパターン形成部111でアンテナが形成されたアンテナ形成済みのベースシートは、不図示の巻取り部によって巻き取られ、アンテナ付ロール体13a_1が得られる。これにより、アンテナ形成済みのベースシートの、次工程への引渡しが、取り扱いの容易なロール体で行われることとなる。
【0013】
また、タグ製造システム100は、ベースシート上の各アンテナ12にICチップ11を搭載するICチップ11の搭載処理(ステップS103)を行うIC搭載装置130を備えている。このIC搭載装置130が備えている、ICチップ11をアンテナ12上に搭載するマウンタ131は、パターン形成部111がアンテナ12を形成するときのそのアンテナ12の向きと同じ向きのアンテナ上にICチップ11を搭載するように設定されており、これによりシステム構築の単純化が図られている。ここで、アンテナ形成装置110で得られるアンテナ付ロール体13a_1をそのままIC搭載装置130にセットしたとすると、そのセットの際にアンテナ付ロール体13a_1が180度反転されるので、そのアンテナ付ロール体13a_1から引出されるベースシート上のアンテナ12の向きは、マウンタ131でICチップ11を搭載可能なアンテナ12の向きとは180度反転した向きとなってしまう。
【0014】
ここで、このタグ製造システム100は、このような不整合を解消するために、上記のようなロール体を巻き直すリワインダ120を備えており、アンテナ形成処理(ステップS101)の後、アンテナ付ロール体13a_1を巻き直してアンテナ付巻直しロール体13a_2を得るというリワインド処理(ステップS102)が行われる。このアンテナ付巻直しロール体13a_2から引出されるベースシート上のアンテナ12の向きは、マウンタ131でICチップ11を搭載可能なアンテナ12の向きと同じ向きとなるので、ICチップ11の搭載処理(ステップS103)において正常にICチップ11を搭載することができる。
【0015】
また、タグ製造システム100は、ICチップ搭載済みのベースシートに対し、そのベースシートをシール加工や裁断等によってRFIDタグ1に仕上げる後処理(ステップS105)を施す後処理装置140を備えている。この後処理装置140も、上記のマウンタ131と同様に、システム構築の単純化のために、パターン形成部111がアンテナ12を形成するときのそのアンテナ12の向きと同じ向きのアンテナが形成されているベースシートに後処理を施すように設定されている。そして、IC搭載装置130でも、アンテナ形成装置110と同様に、ICチップ搭載済みのベースシートの、次工程への引渡しを容易なものとするためにベースシートが巻き取られ、ICチップ搭載済みのロール体13a_3が得られる。このため、ICチップ11の搭載処理(ステップS103)の後に、このICチップ搭載済みのロール体13a_3をリワインダ120を使って巻き直してICチップ搭載済みの巻直しロール体13a_4を得るというリワインド処理(ステップS104)が行われる。
【0016】
このように、図2に示すタグ製造システムでは、パターン形成部111、IC搭載装置130、および後処理装置140それぞれで扱われるアンテナの向きを互いに同じ向きとすることでシステム構築の単純化が図られている。さらに、製造工程間のベースシートの引渡しをロール体で行うことでベースシートの引渡しの容易化が図られているが、この結果生じる上記のような不整合がリワインダ120を使ったリワインド処理で解消されている。
【特許文献1】特開2000−311226号公報
【特許文献2】特開2000−200332号公報
【特許文献3】特開2001−351082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上記のようなリワインド処理は、ユーザにとって煩雑であり、RFIDタグ1を製造する際の作業遅延の原因となっている。また、リワインド処理の回数が多いと、例えばベースシート上のアンテナ12やICチップ11に与える負荷が大きくなり、ICチップ11の剥がれや、アンテナ12およびICチップ11の破損等といった不具合を招く恐れもある。
【0018】
尚、ここまで、RFIDタグを例に挙げて、製造時にリワインド処理の回数が多いと生じる恐れがある問題について説明したが、このような問題は、プリント配線基板等のベースに形成された導体パターンに回路チップが電気的に接続されてなる電子装置に共通の問題である。
【0019】
本発明は、上記事情に鑑み、リワインド処理の回数を抑えて電子装置を製造することができる電子装置製造システムと電子装置製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成する本発明の電子装置製造システムは、ベースとそのベース上に非点対称な形状に形成された導体パターンとその導体パターンに電気的に接続された回路チップとを有する電子装置を製造する電子装置製造システムにおいて、
複数の上記ベースが配列可能な広さを有する長尺なベースシート上に、複数の上記導体パターンを、それら複数の導体パターンのうちの少なくとも一部の導体パターンの配列が、導体パターンの向きも含めて点対称な配列となるように形成し、そのベースシートを巻き取ってロール体を得る導体パターン形成装置と、
上記ロール体から上記ベースシートを引き出して、その引き出したベースシート上に形成された各導体パターン上に上記回路チップを、各導体パターンの向きに応じた向きに搭載して、その回路チップとその導体パターンとを電気的に接続する回路チップ搭載装置と、
上記回路チップ搭載装置によって導体パターン上に回路チップが搭載されたベースシートに対し、そのベースシートを電子装置に仕上げる後処理を施す後処理装置とを備えたことを特徴とする。
【0021】
ここで、上記にいう「点対称な配列」は、ベースシート上に形成される全導体パターンの配列であっても良く、一部の導体パターンの配列であっても良く、ベースシート上に「点対称な配列」が複数形成されても良い。
【0022】
本発明の電子装置製造システムでは、上記導体パターン形成装置において上記ロール体を得ることで、次工程へのベースシートの引渡し作業の容易化が図られているが、この本発明の電子装置製造システムによれば、上記導体パターン形成装置で得られたロール体が、その下流側の製造工程を担う上記回路チップ搭載装置でそのまま扱われることとなる。ここで、このロール体は、上記導体パターン形成装置から上記回路チップ搭載装置への引渡しの際に180度反転されることとなるが、上記点対称な配列については反転の前後で互いに同じ配列となる。このため、上記導体パターン形成装置から上記回路チップ搭載装置へ上記ロール体を引き渡すに当たって、上記点対称な配列が形成されているベースシートについては上述したリワインド処理が不要となる。また、このリワインド処理が不要となることで、上記導体パターンについての負荷が軽減されることとなる。このように、本発明の電子装置製造システムによれば、リワインド処理の回数を抑えて例えばRFIDタグ等といった電子装置を製造することができる。
【0023】
ここで、本発明の電子装置製造システムにおいて、「上記回路チップ搭載装置が、導体パターン上に回路チップを搭載したベースシートを巻き取ってロール体を得るものであり、
上記後処理装置が、上記回路チップ搭載装置によって得られたロール体から上記ベースシートを引き出して上記後処理を施すものである」という形態は好ましい形態である。
【0024】
この好ましい形態の電子装置製造システムによれば、上記回路チップ搭載装置から上記後処理装置へのベースシートの引渡しについても上記ロール体で行われることから容易であるとともに、上記点対称な配列が形成されているベースシートについては、このロール体の引渡しに当たってのリワインド処理も不要となる。その結果、この好ましい形態の電子装置製造システムによれば、リワインド処理を全く行うことなく電子装置を製造することができる。また、リワインド処理が全く不要となることで、リワインド処理に伴う回路チップの剥がれや、導体パターンおよび回路チップの破損等といった不具合が回避される。
【0025】
また、本発明の電子装置製造システムにおいて、「上記回路チップ搭載装置が、
上記回路チップを保持して、その保持した回路チップを上記導体パターンの向きに応じた向きに向けて、その導体パターン上へと運搬するチップ運搬部を備えたものである」という形態も好ましい形態である。
【0026】
この好ましい形態の電子装置製造システムによれば、互いに向きが異なる複数の導体パターンが規則的に配列されてなる点対称な配列について上記回路チップを確実に搭載することが可能となる。
【0027】
また、本発明の電子装置製造システムにおいて、「上記導体パターン形成装置が、各導体パターンを、所定の複数の向きそれぞれに規則的に配列して形成するものであり、
上記回路チップ搭載装置は、
上記導体パターンの上記複数の向きそれぞれに対応した複数の回路チップ群が載置される、その回路チップ群の各回路チップはその複数の向きのうちその回路チップ群が対応した1つの向きに応じた向きを向いている載置部と、
上記載置部に載置されている複数の回路チップ群それぞれから、各回路チップ群が対応している向きと同じ向きの導体パターン上へと回路チップを運搬するチップ運搬部とを備えたものである」という形態も好ましい。
【0028】
この好ましい形態の電子装置製造システムによれば、予め上記載置部に回路チップ群を上記複数の向きそれぞれに対応させて載置しておくことで、互いに向きが異なる複数の導体パターンが規則的に配列されてなる点対称な配列について上記回路チップを効率良く搭載することが可能となる。
【0029】
また、本発明の電子装置製造システムは、「前記電子装置が、前記導体パターンを通信用のアンテナとして機能させるとともに、前記回路チップによって該導体パターンを介した無線通信を行うRFIDタグである」という形態であっても良い。
【0030】
この形態によれば、リワインド処理の回数を抑えてRFIDタグを製造することができる。
【0031】
また、上記目的を達成する本発明の電子装置製造方法は、ベースとそのベース上に非点対称な形状に形成された導体パターンとその導体パターンに電気的に接続された回路チップとを有する電子装置を製造する電子装置製造方法において、
複数の上記ベースが配列可能な広さを有する長尺なベースシート上に、複数の上記導体パターンを、それら複数の導体パターンのうちの少なくとも一部の導体パターンの配列が、導体パターンの向きも含めて点対称な配列となるように形成し、そのベースシートを巻き取ってロール体を得る導体パターン形成過程と、
上記ロール体から上記ベースシートを引き出して、その引き出したベースシート上に形成された各導体パターン上に上記回路チップを、各導体パターンの向きに応じた向きに搭載して、その回路チップとその導体パターンとを電気的に接続する回路チップ搭載過程と、
上記回路チップ搭載過程によって導体パターン上に回路チップが搭載されたベースシートに対し、そのベースシートを電子装置に仕上げる後処理を施す後処理過程とを備えたことを特徴とする。
【0032】
この本発明の電子装置製造方法によれば、リワインド処理の回数を抑えて電子装置を製造することができる。
【0033】
尚、本発明の電子装置製造方法については、ここではその基本形態のみを示すに止めるが、これは単に重複を避けるためであり、本発明の電子装置製造方法には、上記の基本形態のみではなく、前述した本発明の電子装置製造システムの各形態に対応する各種の形態が含まれる。
【発明の効果】
【0034】
以上、説明したように、本発明によれば、リワインド処理の回数を抑えて電子装置を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0036】
図3は、本発明の一実施形態であるタグ製造システムの一例を示す図である。
【0037】
この図3に示すタグ製造システム200は、本発明の電子装置製造システムの一実施形態に相当し、このタグ製造システム200で実行される後述の一連の処理が、本発明の電子装置製造方法の一実施形態に相当する。
【0038】
このタグ製造システム200は、上述した図2に示すタグ製造システム100と同様に、図1に示す非点対称な形状のアンテナを有するRFIDタグ1を、複数のベース13が配列可能な広さを有する長尺のベースシートが巻かれたベースロール13aを使って製造するものであって、アンテナ形成装置210と、IC搭載装置220と、後処理装置230とを有している。ここで、この図3に示すタグ製造システム200で製造されるRFIDタグ1が本発明にいう電子装置の一例に相当し、このRFIDタグ1が有するアンテナ12が本発明にいう導体パターンの一例に相当する。また、このアンテナ12の、図1に示すL字型パターンが、本発明にいう非点対称な形状の一例に相当する。
【0039】
アンテナ形成装置210は、以下に説明するアンテナ形成処理(ステップS201)を実行するものであり、本発明にいう導体パターン形成装置の一例に相当する。また、このアンテナ形成装置210が実行するアンテナ形成処理(ステップS201)が、本発明にいう導体パターン形成過程の一例に相当する。
【0040】
このアンテナ形成装置210はパターン形成部211を備えており、ベースロール13aがこのアンテナ形成装置210にセットされると、まず、このパターン形成部211が、ベースロール13aからベースシートを引出して、そのベースシートに複数のアンテナ12を形成する。本実施形態では、このパターン形成部211は、図3に示すように、2つのアンテナ12を、L字型パターンの長辺がベースシートの長手方向に沿って延び短辺が互いに向き合って突出するように配列する配列規則を有しており、この配列規則に従って複数のアンテナを点対称な配列で形成する。ここで、これら互いに向き合う2つのアンテナ12の配列は、本発明にいう点対称な配列の一例に相当し、さらに、これら2つのアンテナ12の配列が複数配列されてなる、ベースシート上の全アンテナ12の配列も本発明にいう点対称な配列の一例に相当する。そして、このパターン形成部211でアンテナが形成されたアンテナ形成済みのベースシートは、そのベースシートの引渡しを容易なものとするために不図示の巻取り部によって巻き取られ、アンテナ付ロール体13a_5が得られる。
【0041】
尚、ここでは、L字型パターンを有するアンテナ12についての本発明にいう点対称な配列の一例として、L字型パターンの長辺がベースシートの長手方向に沿って延び短辺が互いに向き合って突出するような2つのアンテナ12の配列を例示したが、本発明はこれに限るものではなく、L字型パターンを有するアンテナ12についての本発明にいう点対称な配列は、例えば次のような配列であっても良い。
【0042】
図4は、点対称な配列の別例を示す図である。
【0043】
この図4には、図3に示す点対称な配列とは別の配列でアンテナを形成するアンテナ形成装置210’が示されている。このアンテナ形成装置210’が備えるパターン形成部211’は、この図4に示すように、L字型パターンを有する2つのアンテナ12を、L字型パターンの長辺がベースシートの長手方向に直交して延び短辺が互いに向き合って突出する配列で形成する。この図4に示す2つのアンテナ12の配列は、本発明にいう点対称な配列の一例に相当し、さらに、これら2つのアンテナ12の配列が複数配列されてなる、ベースシート上の全アンテナ12の配列も本発明にいう点対称な配列の一例に相当する。
【0044】
以上で、点対称な配列の別例についての説明を終了し、図3に戻って本実施形態のタグ製造システム200の説明を続ける。
【0045】
図3に示すIC搭載装置220は、ベースシート上の各アンテナ12にICチップ11を搭載するICチップ11の搭載処理(ステップS202)を実行するものであり、本発明にいう回路チップ搭載装置の一例に相当する。また、このIC搭載装置220が実行する搭載処理(ステップS202)が、本発明にいう回路チップ搭載過程の一例に相当する。
【0046】
このIC搭載装置220はマウンタ221を備えており、アンテナ付ロール体13a_5がこのIC搭載装置220にセットされると、まず、このマウンタ221が、アンテナ付ロール体13a_5からベースシートを引出して、そのベースシート上の各アンテナ12にICチップ11を搭載する。このマウンタ221は、1つの向きを向いたICチップ群が載置される不図示の載置部と、その載置部からアンテナ12上にICチップ11を運搬する後述のチップ運搬部222(図5参照)とを備えている。
【0047】
図5は、チップ運搬部222を示す図である。
【0048】
本実施形態のタグ製造システム200で製造されるRFIDタグ1では、上述したようにICチップ11は、3つのバンプ11aのうち2つのバンプ11a_1それぞれが、アンテナ12におけるL字型パターンの長辺側の端部に接続され、残る1つのバンプ11a_2が短辺の突出方向とは反対側に位置する向きにアンテナ12に搭載される。ここで、本実施形態では、上述したように、点対称な配列をなす2つのアンテナ12の間で、L字型パターンの短辺の突出方向であるアンテナ12の向きが互いに異なっているので、ベースシート上における複数のアンテナ12それぞれの向きもこれら2つの向きの何れかの向きになる。
【0049】
そこで、この図5に示すチップ運搬部222は、ICチップ11を保持すると共に図中の矢印D方向に回動自在な先端部222aを有し、その保持したICチップ11を上記の2通りの向きのうちのいずれかの向きに向けて、その向きに対応する向きのアンテナ12まで運搬する。このチップ運搬部222が、本発明にいう「回路チップを保持して、その保持した回路チップを上記アンテナの向きに応じた向きに向けて、そのアンテナ上へと運搬するチップ運搬部」の一例に相当する。
【0050】
本実施形態では、不図示の載置部にはICチップ群が、図中の上下2段のアンテナ12のうち上段側のアンテナ12の向きに応じた向きで載置されている。チップ運搬部222は、この上段側のアンテナ12には、載置部で保持した向きのまま、即ち、上記の1つのバンプ11a_2がその上段側のアンテナ12の短辺の突出方向とは反対側に位置する向きで運搬する。そして、下段側のアンテナ12には、チップ運搬部222は、ICチップ11を保持した後に先端部222aを矢印D方向に180度回動して、その下段側のアンテナ12の短辺の突出方向とは反対側に位置する向きにICチップ11を向けてから運搬する。このように、本実施形態では、チップ運搬部222は、ICチップ11を保持した後に先端部222aを適宜に回動させることで、そのICチップ11を各アンテナ12の向きに応じた向きに向けて運搬する。これにより、ベースシート上で2通りの向きを有する複数のアンテナ12それぞれに、各アンテナ12の向きに応じた向きでICチップ11が搭載されることとなる。
【0051】
ここで、図3のIC搭載装置220では、図5に示すチップ運搬部222の運搬動作が、先端部222aの動きを含めて、上記のパターン形成部211がアンテナを形成するときに従う配列規則に基づいて予め設定されている。また、本実施形態では、アンテナ形成装置210で得られたアンテナ付ロール体13a_5は、180度反転されてそのままIC搭載装置220にセットされる。このとき、このIC搭載装置220にセットされたアンテナ付ロール体13a_5から引き出されたベースシート上のアンテナ12の配列が各アンテナ12の向きも含めて、上記の配列規則に従った配列になっていないとICチップ11搭載時に不整合が生じてしまう。しかしながら、本実施形態では、ベースシート上のアンテナ12の配列が点対称であるので、IC搭載装置220へのセット時に180度反転されても、反転後の配列が反転前の配列と一致し、上記のような不整合が回避される。このため、本実施形態では、アンテナ付ロール体13a_5の引渡しに際して、上述したリワインド処理が不要であり、この引渡しがスムーズに行われることとなる。
【0052】
尚、ここでは、本発明にいう回路チップ搭載装置の一例として、回動自在の先端部222aを有するチップ運搬部222を持ったマウンタ221を備えたIC搭載装置220を例示したが、本発明はこれに限るものではなく、本発明にいう回路チップ搭載装置は、例えば次のようなマウンタを備えたものであっても良い。
【0053】
図6は、マウンタの別例を示す図である。
【0054】
この図6に示すマウンタ221’は、先ず、複数のICチップ11が形成されているウェハが2つ載置される載置部223を備えている。この載置部223に載置される2つのウェハのうちの第1のウェハ223aは、ICチップ11が、ベースシート上で2通りの向きを向いている2種類のアンテナ12のうち一方のアンテナ12にそのまま搭載できる向きに向くようにこの載置部223に載置される。また、2つのウェハのうちの第2のウェハ223bは、ICチップ11が、第1のウェハ223におけるICチップ11の向きとは逆の向き、即ち、上記の2種類のアンテナ12のうちもう一方のアンテナ12にそのまま搭載できる向きに向くようにこの載置部223に載置される。この載置部223が、本発明にいう載置部の一例に相当し、第1及び第2のウェハ223a,223bそれぞれが、本発明にいう回路チップ群の各一例に相当する。そして、この図6に示すマウンタ221’は、載置部223に載置された各ウェハにおけるICチップ11を、各ウェハにおける向きのまま、各ウェハが対応している向きと同じ向きのアンテナ12上へと運搬するチップ運搬部222’とを備えている。この図6に示すチップ運搬部222’が、本発明にいう「複数の回路チップ群それぞれから、各回路チップ群が対応している向きと同じ向きのアンテナ上へと回路チップを運搬するチップ運搬部」の一例に相当する。
【0055】
この図6の例では、第1のウェハ223aが図中の上下2段のアンテナ12のうち上段側のアンテナ12の向きに対応しており、第2のウェハ223bが図中の上下2段のアンテナ12のうち下段側のアンテナ12の向きに対応している。チップ運搬部222’は、この上段側のアンテナ12には、第1のウェハ223aのICチップ11を、そのICチップ11の向きのまま、即ち、上記の1つのバンプ11a_2がその上段側のアンテナ12の短辺の突出方向とは反対側に位置する向きで運搬する。そして、下段側のアンテナ12には、第2のウェハ223bのICチップ11を、そのICチップ11の向きのまま、即ち、上記の1つのバンプ11a_2がその下段側のアンテナ12の短辺の突出方向とは反対側に位置する向きで運搬する。このように、この別例のマウンタ221’では、チップ運搬部222’は、ICチップ11を各アンテナ12の向きに対応したウェハから運搬する。これにより、この別例のマウンタ221’でも、ベースシート上で2通りの向きを有する複数のアンテナ12それぞれに、各アンテナ12の向きに応じた向きでICチップ11が搭載されることとなる。また、この別例では、載置部223におけるウェハの置き方や、チップ運搬部222’の動作が、上記の配列規則に従って予め決められる。
【0056】
また、以上説明した別例では、本発明にいう上記のチップ運搬部の一例として、載置部223とアンテナとの間を平行移動してICチップ11を載置部223での向きのままアンテナ上へと運ぶチップ運搬部222’を例示したが、本発明はこれに限るものではない。本発明の上記のチップ運搬部は、例えば、回動自在のアームと、そのアームの先端にあってICチップ11を保持する先端部と有し、アームが回動することで先端部が載置部223とアンテナとの間を移動するもの等であっても良い。この場合には、上記の2つのウェハそれぞれは、各ウェハのICチップが、アンテナに搭載できる向きからアームの回動角度だけズレた向きを向くように載置部223に載置されることとなる。
【0057】
以上で、別例のマウンタについての説明を終了し、図3に戻って本実施形態のタグ製造システム200の説明を続ける。
【0058】
上述したようにマウンタ221によってICチップ11が搭載されると、そのICチップ搭載済みのベースシートが、引渡しの容易化のために不図示の巻取り部によって巻き取られ、ICチップ搭載済みのロール体13a_6が得られる。
【0059】
このICチップ搭載済みのロール体13a_6は、上記のアンテナ付ロール体13a_5の受渡しの際と同様に、180度反転されて後処理装置230に渡されセットされる。
【0060】
この後処理装置230は、セットされたICチップ搭載済みのロール体13a_6から、アンテナ12上にICチップ11が搭載されたベースシートを引き出して、そのベースシートに対して、所定のシール処理や裁断処理によってそのベースシートを複数のRFIDタグ1に仕上げる後処理を施す(ステップS203)。この後処理装置230が、本発明にいう後処理装置の一例に相当し、この後処理装置230が実行する一連の処理(ステップS203)が、本発明にいう後処理過程の一例に相当する。
【0061】
ここで、本実施形態では、上記のシール処理は、アンテナ12とICチップ11とで構成される、RFIDタグ1のコア部分毎に行われ、裁断処理では、シール後のコア部分間が裁断されて複数のRFIDタグ1が得られる。このとき、ベースシート上のどの位置にシール処理を施すか、および、ベースシートのどの位置を裁断するか等といったことが、本実施形態では、上記の配列規則に基づいて予め設定されている。このため、後処理装置230で引き出されたベースシート上の上記のコア部分の配列が各アンテナ12の向きも含めて、上記の配列規則に従った配列になっていないと後処理時に不整合が生じてしまう。しかしながら、本実施形態では、ベースシート上のアンテナ12の配列、延いてはコア部分の配列が点対称であるので、後処理装置230へのセット時にICチップ搭載済みのロール体13a_6が180度反転されても、反転後の配列が反転前の配列と一致し、上記のような不整合が回避される。このため、本実施形態では、ICチップ搭載済みのロール体13a_6の引渡しについても、上述したリワインド処理が不要であり、この引渡しがスムーズに行われることとなる。また、本実施形態では、結局、リワインド処理が全く不要となるので、リワインド処理に伴うICチップ11の剥がれや、アンテナ12およびICチップ11の破損等といった不具合が回避されることとなる。
【0062】
以上、説明したように、本実施形態のタグ製造システム200によれば、リワインド処理を全く行うことなくRFIDタグを製造することができる。
【0063】
尚、上記では、本発明の電子装置製造システムの一実施形態として、RFIDタグを製造するタグ製造システムを例示し、本発明の電子装置製造方法の一実施形態として、RFIDタグを製造する一連の処理を例示したが、本発明はこれに限るものではない。本発明の電子装置製造システムは、プリント配線基板等のベースに形成された導体パターンに回路チップが電気的に接続されてなる電子装置を製造するものであれば良く、本発明の電子装置製造方法は、そのような電子装置を製造する方法であれば良い。例えば、本発明の電子装置製造システムは、極薄型のICカードを製造するものであっても良く、フレキシブル基板上に形成された導体パターンに回路チップを固定したプリント回路基板装置を製造するもの等であっても良い。また、本発明の電子装置製造方法は、このような極薄型のICカードを製造する方法やプリント回路基板装置を製造する方法等であっても良い。
【0064】
また、上記では、RFIDタグのアンテナにおける、本発明にいう非点対称な形状の一例としてL字型パターンを例示したが、本発明はこれに限るものではなく、本発明にいう非点対称な形状は、非点対称であればこのようなパターン以外のいかなる形状であっても良い。
【0065】
また、上記では、本発明のタグ製造システムの一実施形態として、ICチップ11搭載後のベースシートを巻き取ってICチップ搭載済みのロール体13a_6を得て、後処理を行う装置に引き渡すタグ製造システム200を例示したが、本発明はこれに限るものではない。本発明のタグ製造システムは、例えば、ICチップ11搭載後のベースシートを巻き取らずに、そのベースシートに直ぐに後処理を行うもの等であっても良い。
【0066】
また、上記では、本発明にいう後処理装置の一例として、シール処理と裁断処理とを行う後処理装置230を例示したが、本発明はこれに限るものではなく、本発明の後処理装置は、シール処理と裁断処理とのうちの何れか一方のみを行うものであっても良く、それらの処理以外の他の処理を行うもの等であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】RFIDタグの一例を示す図である。
【図2】非点対称な形状のアンテナを有するRFIDタグを製造するタグ製造システムの一例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態であるタグ製造システムの一例を示す図である。
【図4】点対称な配列の別例を示す図である。
【図5】チップ運搬部222を示す図である。
【図6】マウンタの別例を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
1 RFIDタグ
11 ICチップ
11a,11a_1,11a_2 バンプ
12 アンテナ
13 ベース
13a ベースロール
13a_1,13a_5 アンテナ付ロール体
13a_2 アンテナ付巻直しロール体
13a_3,13a_6 ICチップ搭載済みのロール体
13a_4 ICチップ搭載済みの巻直しロール体
100,200 タグ製造システム
110,210,210’ アンテナ形成装置
111,211,211’ パターン形成部
120 リワインダ
130,220 IC搭載装置
131,221,221’ マウンタ
222,222’ チップ運搬部
222a 先端部
223 載置部
223a 第1のウェハ
223b 第2のウェハ
140,230 後処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと該ベース上に非点対称な形状に形成された導体パターンと該導体パターンに電気的に接続された回路チップとを有する電子装置を製造する電子装置製造システムにおいて、
複数の前記ベースが配列可能な広さを有する長尺なベースシート上に、複数の前記導体パターンを、それら複数の導体パターンのうちの少なくとも一部の導体パターンの配列が、導体パターンの向きも含めて点対称な配列となるように形成し、そのベースシートを巻き取ってロール体を得る導体パターン形成装置と、
前記ロール体から前記ベースシートを引き出して、その引き出したベースシート上に形成された各導体パターン上に前記回路チップを、各導体パターンの向きに応じた向きに搭載して、該回路チップと該導体パターンとを電気的に接続する回路チップ搭載装置と、
前記回路チップ搭載装置によって導体パターン上に回路チップが搭載されたベースシートに対し、該ベースシートを電子装置に仕上げる後処理を施す後処理装置とを備えたことを特徴とする電子装置製造システム。
【請求項2】
前記回路チップ搭載装置が、導体パターン上に回路チップを搭載したベースシートを巻き取ってロール体を得るものであり、
前記後処理装置が、前記回路チップ搭載装置によって得られたロール体から前記ベースシートを引き出して前記後処理を施すものであることを特徴とする請求項1記載の電子装置製造システム。
【請求項3】
前記回路チップ搭載装置が、
前記回路チップを保持して、その保持した回路チップを前記導体パターンの向きに応じた向きに向けて、該導体パターン上へと運搬するチップ運搬部を備えたものであることを特徴とする請求項1記載の電子装置製造システム。
【請求項4】
前記導体パターン形成装置が、各導体パターンを、所定の複数の向きそれぞれに規則的に配列して形成するものであり、
前記回路チップ搭載装置は、
前記導体パターンの前記複数の向きそれぞれに対応した複数の回路チップ群が載置される、該回路チップ群の各回路チップは該複数の向きのうち該回路チップ群が対応した1つの向きに応じた向きを向いている載置部と、
前記載置部に載置されている複数の回路チップ群それぞれから、各回路チップ群が対応している向きと同じ向きの導体パターン上へと回路チップを運搬するチップ運搬部とを備えたものであることを特徴とする請求項1記載の電子装置製造システム。
【請求項5】
前記電子装置が、前記導体パターンを通信用のアンテナとして機能させるとともに、前記回路チップによって該導体パターンを介した無線通信を行うRFIDタグであることを特徴とする請求項1記載の電子装置製造システム。
【請求項6】
ベースと該ベース上に非点対称な形状に形成された導体パターンと該導体パターンに電気的に接続された回路チップとを有する電子装置を製造する電子装置製造方法において、
複数の前記ベースが配列可能な広さを有する長尺なベースシート上に、複数の前記導体パターンを、それら複数の導体パターンのうちの少なくとも一部の導体パターンの配列が、導体パターンの向きも含めて点対称な配列となるように形成し、そのベースシートを巻き取ってロール体を得る導体パターン形成過程と、
前記ロール体から前記ベースシートを引き出して、その引き出したベースシート上に形成された各導体パターン上に前記回路チップを、各導体パターンの向きに応じた向きに搭載して、該回路チップと該導体パターンとを電気的に接続する回路チップ搭載過程と、
前記回路チップ搭載過程によって導体パターン上に回路チップが搭載されたベースシートに対し、該ベースシートを電子装置に仕上げる後処理を施す後処理過程とを備えたことを特徴とする電子装置製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−198721(P2008−198721A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−30682(P2007−30682)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】