電子装置
【課題】カーボンナノチューブを含有してなる導電性接着剤を介して、電子部品と回路基板とを電気的・機械的に接続してなる電子装置において、電子部品と回路基板との間のさらなる高導電性、高放熱性を実現する。
【解決手段】導電性接着剤30における導電フィラー32を、カーボンナノチューブ33と、このカーボンナノチューブ33に設けられ導電性接着剤30の硬化時に電子部品20の電極21および回路基板10の電極11に融着する融着部34とにより構成した。ここで、融着部は、カーボンナノチューブ33に含有されたFe、Co、Niなどの金属微粒子34である。
【解決手段】導電性接着剤30における導電フィラー32を、カーボンナノチューブ33と、このカーボンナノチューブ33に設けられ導電性接着剤30の硬化時に電子部品20の電極21および回路基板10の電極11に融着する融着部34とにより構成した。ここで、融着部は、カーボンナノチューブ33に含有されたFe、Co、Niなどの金属微粒子34である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品と回路基板とを導電性接着剤を介して電気的・機械的に接続してなる電子装置に関し、特に、導電性接着剤の導電フィラーがカーボンナノチューブであるものに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の電子装置としては、電極を有する電子部品を回路基板に搭載し、電子部品の電極と回路基板の電極とを、導電性接着剤により電気的・機械的に接続してなる電子装置が、よく用いられている。
【0003】
ここで、導電性接着剤は、導電フィラーを樹脂に含んでなるものであって、電子部品と回路基板との電気的な導通を取りながら、これらを固着するものである。一般には、導電フィラーとしては、導電性にすぐれた金属微粒子あるいは金や銀などの貴金属が導電性充填材(フィラー)として多く用いられている。これらの金属微粒子は、エポキシ、ポリイミド、シリコーン系などを代表とするバインダ用の樹脂と混合して導電性接着剤を構成している。
【0004】
そして、導電性接着剤は、樹脂の硬化により、樹脂中の導電フィラー同士の接触、および、導電フィラーと部品電極や基板電極との接触がなされており、これら接触により導電経路が形成され、当該電極間の導通さらには放熱が得られている。また、当該電極間の機械的な接続は樹脂の接着によりなされている。
【0005】
しかしながら、将来、電子装置の性能が上がることにより、電子部品の動作電圧が上昇すると考えられ、また、電子部品動作時の消費電力の上昇により、部品接続部の温度が上昇すると考えられる。したがって、導電性接着剤の更なる高導電性、高放熱性が必要となってくる。
【0006】
一方で、導電性および接着保持強度を向上させるために、導電性接着剤として、従来の一般的な導電フィラーに代えてカーボンナノチューブを用いたものが提案されている(たとえば、特許文献1〜4等参照)。
【0007】
カーボンナノチューブは、一般的には直径0.数〜数十nmで長さが数百μm〜数mm程度の円筒の形をした炭素の結晶であり、炭素原子が六角形に配置されたグラファイトシートを筒状に巻いた形をしているものである。カーボンナノチューブの代表的な作り方(合成方法)としては、アーク放電法、レーザー蒸発法、化学的気相成長法(CVD法)などが挙げられる。
【特許文献1】特開2004−27134号公報
【特許文献2】特開2006−49369号公報
【特許文献3】特開2002−109489号公報
【特許文献4】特開2003−203450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、カーボンナノチューブを樹脂に含有させてなる導電性接着剤の場合、従来の金属微粒子などの導電フィラーに比べて、導電性に優れるものの、導電性接着剤の更なる高導電性、高放熱性が要望されている。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、カーボンナノチューブを含有してなる導電性接着剤を介して、電子部品と回路基板とを電気的・機械的に接続してなる電子装置において、電子部品と回路基板との間のさらなる高導電性、高放熱性を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、導電性接着剤(30)における導電フィラー(32)を、カーボンナノチューブ(33)と、このカーボンナノチューブ(33)に設けられ導電性接着剤(30)の硬化時に電子部品(20)の電極(21)および回路基板(10)の電極(11)に融着する融着部(34、35)とにより構成したことを特徴とする。
【0011】
それによれば、融着部(34、35)が電子部品(20)の電極(21)および回路基板(10)の電極(11)に融着して、導電フィラーとしてのカーボンナノチューブ(33)が電極(11、21)と導電性接着剤(30)との界面近傍に多く存在することが可能となるため、電子部品(20)と回路基板(10)との間のさらなる高導電性、高放熱性を実現することができる。
【0012】
ここで、融着部としては、カーボンナノチューブ(33)に含有された金属微粒子(34)であるものにできる。カーボンナノチューブ(33)に含有された金属微粒子(34)は直径がナノオーダーであり、このような金属微粒子(34)は表面エネルギーが高く、金属本来の融点よりも遥かに低温で容易に他の物質と結合しやすい特性がある。
【0013】
そのため、この金属微粒子(34)は、融着部として機能し、導電性接着剤(30)を硬化させる際、電子部品(20)の電極(21)あるいは回路基板(10)の電極(11)に接触して融着する。それにより、電気および熱が、金属微粒子(34)とカーボンナノチューブ(33)を介して対向する電極(11、21)間を効率的に伝わる。
【0014】
また、融着部は、上記カーボンナノチューブ(33)に含有された金属微粒子(34)以外にも、さらに、カーボンナノチューブ(33)の表面にコーティングされカーボンナノチューブ(33)の直径よりも粒径の小さな金属粒子(35)であってもよい。なお、上記金属微粒子(34)を含有するカーボンナノチューブ(33)の表面が、さらに、この金属粒子(35)で被覆されていてもよく、この場合、金属微粒子(34)および金属粒子(35)の両方が融着部として構成される。
【0015】
このコーティングされた金属粒子(35)を有するカーボンナノチューブ(33)の場合、導電性接着剤(30)を硬化させる際に、上記電極(11、21)への融着だけでなく、カーボンナノチューブ(33)同士の融着も可能となり、電気的・熱的な経路がさらに強固になることが期待される。
【0016】
また、カーボンナノチューブ(33)を、多孔質結晶から成長したものにすれば、カーボンナノチューブ(33)同士の接触面積を大きくするうえで好ましい。
【0017】
また、カーボンナノチューブ(33)を、コイルバネ形状をなすカーボンナノコイルとしてもよい。この場合、コイルバネ形状であることから、弾性力が大きく、接触面積も棒状のカーボンナノチューブ(33)よりも大きくなるため、好ましい。
【0018】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る電子装置100の概略断面構成を示す図であり、図2は、この電子装置100における導電性接着剤30の詳細構成を示す概略断面図である。
【0021】
回路基板10の上に電子部品20が搭載され、回路基板10の電極11と電子部品20の電極21とが導電性接着剤30を介して電気的に接続されている。なお、以下、回路基板10の電極11を基板電極11、電子部品20の電極21を部品電極21ということにする。
【0022】
回路基板10は、セラミック基板やプリント基板などを採用することができ、特に限定されるものではない。基板電極11は、回路基板10の一面に形成されており、たとえばAu、Sn、Ag、Ni、Cuなどおよびこれらの合金などの材料を用いた厚膜やめっきから構成されたものである。
【0023】
電子部品20としては、コンデンサ、抵抗などの受動部品やダイオードなどの能動部品、ICチップなどの表面実装部品を採用することができる。図1に示される例では、電子部品20はチップコンデンサとして示してある。部品電極21は、たとえばAu、Sn、Ag、Ni、Cuなどおよびこれらの合金などの材料より構成されたものである。
【0024】
また、導電性接着剤30は、樹脂31に導電フィラー32を含有してなる。ここで、樹脂31はエポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイミド系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂など、一般的なバインダ用樹脂材料よりなり、一液性のものでも、2種類の樹脂の混合で効果する二液性のものでもよい。さらに、カップリング剤、有機溶剤、希釈剤、硬化遅延剤などが混合されていてもよい。
【0025】
ここで、本実施形態では、導電フィラー32は、カーボンナノチューブ33よりなる。カーボンナノチューブは、炭素によって作られる厚さ0.37nmの六員環ネットワーク(グラフェンシート)が単層あるいは多層の同軸管状になった物質である。
【0026】
単層のものをシングルウォールナノチューブ(SWNT)、複層のものをマルチウォールナノチューブ(MWNT)という。特に二層のものはダブルウォールナノチューブ(DWNT)とも呼ばれる。直径はSWNTで数nm、MWNTで数十nmである。また長さは数百um〜数mmである。
【0027】
カーボンナノチューブの特性としては、カーボンナノチューブは優れた電気伝導率を持っており、理論的にはCu(1.67×10-6[Ω・cm])を越えるといわれている。また、熱伝導率では3000〜5500[W/mK](理論値)と言われており、Cu(398[W/mK])を1桁上回る。また、化学的に安定で不活性であり腐食などに強い。そして、機械的に強靭であり、アルミニウムの半分という軽さ、鋼鉄の20倍の強度(特に繊維方向の引っ張り強度ではダイヤモンドすら凌駕する)と非常にしなやかな弾性力を持つ。
【0028】
さらに、本実施形態では、このカーボンナノチューブ33には、金属微粒子34が含有されている。この金属微粒子34は、棒状のカーボンナノチューブ33の両端の開口部にそれぞれはめ込まれ、当該開口部から露出した形となっている。金属微粒子34は、カーボンナノチューブ33の直径と略同等であり、Fe、Co、Niなどの遷移金属よりなるものである。
【0029】
この金属微粒子34は、導電性接着剤30の硬化時に部品電極21および基板電極11に融着する融着部として構成されている。つまり、本実施形態では、導電フィラー32は、カーボンナノチューブ33と、このカーボンナノチューブ33に設けられた融着部としての金属微粒子34とにより構成されたものである。
【0030】
そして、図2に示されるように、導電フィラー32は両電極11、21の間に介在し、金属微粒子34と各電極11、21との融着により、カーボンナノチューブ33の一端または両端が各電極11、21に接している。また、樹脂31中にてカーボンナノチューブ33同士も接触している。
【0031】
これらの接触により、導電性接着剤30の内部には、カーボンナノチューブ33によって基板電極11と部品電極21との間を結ぶ電気経路、熱経路が形成され、当該電極11、21間の導通および放熱が確保されている。また、当該電極11、21間の機械的な接続は、樹脂31の接着によりなされている。
【0032】
次に、導電フィラー32である金属微粒子含有カーボンナノチューブ33の製造方法について述べる。上述したように、カーボンナノチューブを生成する一般的な方法として、アーク放電法、レーザ蒸発法、化学気相成長(CVD)法などがある。
【0033】
ここでは、一具体例として、CVD法、特にプラズマCVD法によって金属微粒子含有カーボンナノチューブ33を生成させる例について説明する。CVD法は、原料ガスを反応炉内に流入し、基板表面あるいは気相での化学反応により原料ガスを分解して薄膜を形成する手法である。
【0034】
図3は、本例のCVD法を行う装置の概略構成を示す図である。また、図4は、本例のCVD法による基板201表面でのカーボンナノチューブ33の成長の様子を模式的に示す図である。
【0035】
本例では、原料ガスにはメタン(CH4)を用い、キャリアガスとして水素(H2)を用い、これらガスをマスフローコントローラによってCH4:H2=80:20sccmとなるように、反応炉200に流入させる。なお、この反応炉200は、一般的なCVD用のものである。
【0036】
基板201にはSiを用いる。そして、スパッタ法、真空蒸着法などの薄膜形成法によって、基板201の表面に、図4(a)に示されるように、Fe、Co、Niなどの遷移金属を触媒金属202として数nm成膜する。ここでは、場合により、基板201と触媒金属202との間にバッファ層として、Tiなどの遷移金属を数nm〜数十nm成膜してもよい。
【0037】
そして、この触媒金属202が形成された基板201を反応炉200内に設置し、反応炉200内を10-3[Pa]となるように真空排気する。その後、基板201を700℃に加熱し、30分間アニールを行う。
【0038】
次に、反応炉200内で、RF電源210を介して電極211、212間にプラズマを発生させる。このときのRF電源210のパワーは300W、時間は10分、基板温度は700℃、真空度は67Paである。それにより、基板201上に垂直に成長したカーボンナノチューブ33が生成される。
【0039】
CVD法により成長するカーボンナノチューブ33は、触媒金属202から成長することが知られている。詳しくは、上記した基板201のアニール処理によって触媒金属202は均一な薄膜から、たとえば粒径が2nm〜10nm程度の微粒子に変化する。このように微粒子化することで、触媒金属202は活性化する。
【0040】
そして、ここに、炭化水素ガスを分解してできた炭素を、微粒子化した触媒金属202に取り込ませることで、図4(b)に示されるように、この微粒子化した触媒金属202を成長サイトとしてカーボンナノチューブ33が成長することが知られている。
【0041】
その成長メカニズムは、先端成長と末端成長とのどちらにもあると言われている。実際に、本発明者が電子顕微鏡(TEM)により観察したところ、成長したカーボンナノチューブ33は触媒金属202を先端と末端に含んでいる。
【0042】
通常、このカーボンナノチューブ33に内包された触媒金属202は、カーボンナノチューブの純度の観点から、溶剤などにより排除される。しかしながら、この微粒子化された触媒金属202は、その粒子径がカーボンナノチューブ33の直径以下のナノオーダーであり、それ自体活性になりうる。そのために、本実施形態では、この微粒子化された触媒金属202を排除せず、カーボンナノチューブ33に含有させたまま、上記金属微粒子34として用いる。
【0043】
このようにして、図4(c)に示されるように、両端に微粒子化された触媒金属202としての金属微粒子34を含有するカーボンナノチューブ33が、基板201上にて基板201と垂直方向に成長し、形成される。
【0044】
なお、上記SWNT、上記MWNTのように層の数を異ならせた金属微粒子含有カーボンナノチューブ33を作製する場合は、公知の方法ではあるが、上記図4(a)に示される基板201上の触媒金属202の膜厚を変えることで、層の数を制御すればよい。
【0045】
次に、基板201からカーボンナノチューブ33を剥離させる。図5は、この剥離工程を示す図である。容器300中にエタノール310を入れ、その中に、カーボンナノチューブ33が成長した基板201を浸漬させる。
【0046】
そして、エタノール310中で数分間、超音波分散させることにより、金属微粒子含有カーボンナノチューブ33を基板201から剥離させる。その後、この溶液を乾燥させることにより、金属微粒子含有カーボンナノチューブ33を得る。
【0047】
次に、この金属微粒子含有カーボンナノチューブ33の精製を行う。図6はこの精製工程を示す工程図であり、(a)はカーボンナノチューブ33の概略断面図、(b)、(c)は概略外観図である。
【0048】
まず、上記剥離工程後に得られたカーボンナノチューブ33は、図6(a)に示されるように、金属微粒子34を両端に含有してはいるものの、金属微粒子34はアモルファスカーボンなどのキャップ34aにより被覆されており、このキャップ34aを除去して金属微粒子34を露出させる必要がある。ここで、本例にて形成されるカーボンナノチューブ33は、直径D:5〜20nm、長さL:数十μm程度である。
【0049】
そこで、この精製工程では、金属微粒子含有カーボンナノチューブ33に、30%に希釈した過酸化水素水を加え、一晩攪拌した後、125℃で12時間還流を行う。これにより、上記キャップ34aおよびそれ以外にカーボンナノチューブ33に付着しているアモルファスカーボンを除去し、図6(b)に示されるように、金属微粒子34をチューブ外へ露出させる。
【0050】
露出させた金属微粒子34は、そのまま導電フィラーとして用いてもよいが、シリサイド化していたり、望まない金属化合物を形成している場合があるので、最表面をエッチングすることが望ましい。
【0051】
このエッチングには塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸など酸性の溶液を用いる。場合により、希釈し、カーボンナノチューブ33を数秒〜数十秒浸すことで、金属微粒子34の最表面の化合物を除去し、図6(c)に示されるように、純粋な金属微粒子34を最表面に露出させる。こうして、本実施形態の導電フィラー32としての金属微粒子含有カーボンナノチューブ33ができあがる。
【0052】
このように、導電フィラー32としての金属微粒子含有カーボンナノチューブ33は、触媒金属を用いてカーボンナノチューブを成長させるCVD法による成長工程、剥離工程、精製工程を経て作製される。
【0053】
次に、この導電フィラー32を数十wt%、樹脂31に混合すれば、本実施形態の導電性接着剤30が作製される。次に、図1に示される本実施形態の電子装置100の組み付け方法について述べておく。
【0054】
まず、導電性接着剤30を、マスク印刷またはディスペンスにより基板10の基板電極11上に供給する。次に、基板電極11と部品電極21とを位置あわせした状態で基板10の上に電子部品20を搭載する。そして、導電性接着剤30を加熱し、硬化させる。それにより、電子部品20と基板10との接続が完了し、上記図1に示される電子装置100ができあがる。
【0055】
この導電性接着剤30の硬化反応時、カーボンナノチューブ33に含有させた金属微粒子34は部品電極21あるいは基板電極11と接触して融着し、樹脂31が完全に硬化することで固着する。
【0056】
ここで、導電性接着剤30の硬化反応時に両電極11、21間に電場、あるいは磁場を与えるなどの方法を採用してもよい。それによれば、金属微粒子含有カーボンナノチューブ33を配向性よく電極11、21に対して垂直に配列させ、金属微粒子34を電極11、21に接触しやすくすることが可能となる。
【0057】
ところで、一般に導電性接着剤における導電性、放熱性は、母材と接着剤との界面におけるフィラー状態に因る部分が大きく、界面のフィラーの分布度が大きいほうがよい。その点、本実施形態の電子装置100では、導電性接着剤30の導電フィラー32を、カーボンナノチューブ33と、カーボンナノチューブ33に設けられた融着部としての金属微粒子34とにより構成している。
【0058】
それによれば、融着部としての金属微粒子34が部品電極21および基板電極11に融着して、導電フィラーとしてのカーボンナノチューブ33が電極11、21と導電性接着剤30との界面近傍に多く存在することが可能となるため、電子部品20と回路基板10との間のさらなる高導電性、高放熱性を実現することができる。
【0059】
特に、本実施形態では、融着部を、カーボンナノチューブ33に含有された金属微粒子34としているが、この金属微粒子34は直径がナノオーダーであり、このような金属微粒子34は表面エネルギーが高く、金属本来の融点よりも遥かに低温で容易に他の物質と結合しやすい特性がある。
【0060】
そのため、本実施形態では、金属微粒子34は、融着部として効果的に機能し、導電性接着剤30を硬化させる際、各電極11、21に接触して融着する。それにより、電気および熱が、金属微粒子34とカーボンナノチューブ33を介して対向する電極11、21間を効率的に伝わる。
【0061】
(第2実施形態)
図7は、本発明の第2実施形態に係る電子装置の要部を示す概略断面図であり、同電子装置における導電性接着剤30の詳細構成を示す概略断面図である。
【0062】
本実施形態では、上記第1実施形態の導電性接着剤30において、導電フィラー32としての金属微粒子含有カーボンナノチューブ33以外に、別の導電フィラー36を樹脂31に含ませたものである。
【0063】
この別の導電フィラー36は、従来の一般的な導電フィラーとして用いていたCu、Ag、Ni、Pd、Cなどの導電粒子であり、その樹脂31への含有量は数wt%〜数十wt%程度である。この場合、上記第1実施形態における効果と同様の効果とともに、金属微粒子34が別の導電フィラー36にも融着して、より効率的な電気経路・熱経路の形成が期待される。
【0064】
(第3実施形態)
図8は、本発明の第3実施形態に係る電子装置の要部を示す概略断面図であり、同電子装置における導電性接着剤30の詳細構成を示す概略断面図である。
【0065】
本実施形態では、上記第1実施形態の導電性接着剤30において、導電フィラー32としての金属微粒子含有カーボンナノチューブ33に対して、さらに、当該カーボンナノチューブ34の表面にAgメッキ35を施したものである。
【0066】
この場合、このAgメッキ35は、カーボンナノチューブ33の直径よりも粒径の小さなAg粒子がカーボンナノチューブ33の表面にコーティングされたものとして構成されている。そして、このAgメッキ35は、上記融着部として機能する。
【0067】
このAgメッキ35は、上記金属微粒子34の表面までも被覆しているが、本実施形態では、導電性接着剤30の硬化反応時に、金属微粒子34とともにAgメッキ35も、電極11、21やカーボンナノチューブ33に融着する。つまり、この場合、金属微粒子34および金属粒子としてのAgメッキ35の両方が融着部として構成される。
【0068】
そして、本実施形態においても上記第1実施形態と同様の効果を奏するが、このコーティングされたAgメッキ35を有するカーボンナノチューブ33の場合、硬化時に、上記電極11、21への融着だけでなく、カーボンナノチューブ33同士の融着も可能となる。それゆえ、電気的・熱的な経路がさらに強固になるというメリットがある。
【0069】
このAgメッキ35は、置換型メッキ法により形成されるもので、具体的には、ホルムアルデヒドや次亜リン酸塩を還元剤とするメッキ浴に、カーボンナノチューブ33を浸すことにより形成される。そのAgメッキ35の膜厚は、たとえば0.1〜0、5μm程度である。
【0070】
ここで、カーボンナノチューブ33の表面をAgメッキ35でコーティングする場合、カーボンナノチューブ33は金属微粒子34を含有していないものであってもよい。つまり、一般のカーボンナノチューブ33に対してAgメッキ35を施したものであっても、このAgメッキ35が融着部として機能するため、融着部を有するカーボンナノチューブ33として構成される。
【0071】
この場合も、融着部としてのAgメッキ35の作用により、カーボンナノチューブ33が、上記電極11、21に融着して、カーボンナノチューブ33が電極11、21と導電性接着剤30との界面近傍に多く存在することが可能となるため、電子部品20と回路基板10との間のさらなる高導電性、高放熱性を実現することができる。
【0072】
なお、カーボンナノチューブ33の表面にコーティングされカーボンナノチューブ33の直径よりも粒径の小さな金属粒子としては、Agメッキ35以外にも、Ag系(Ag、AgSn、AgPd等)、Cu系(Cu、CuNi等)、Au、Snの金属でもよい。そのようなAg粒子の粒径は、たとえば※1〜20 nmであり、カーボンナノチューブ33の直径よりも小さい。
【0073】
その場合、カーボンナノチューブ33へのコーティングは、カーボンナノチューブ33と金属粒子との混合物を溶液または気体中で加熱することにより、金属粒子のカーボンナノチューブ33の表面への焼結による融着または付着等を行うことにより形成される。
【0074】
ここで、図9は、本第3実施形態の他の例としての電子装置の要部を示す概略断面図である。図9に示されるように、本実施形態においても、上記第2実施形態に示した別の導電フィラー36を含有させてもよい。この場合、上記した本実施形態における効果に加えて、金属微粒子34およびAgメッキ35が別の導電フィラー36にも融着して、より効率的な電気経路・熱経路の形成が期待される。
【0075】
(第4実施形態)
ところで、上記各実施形態では、カーボンナノチューブ33は、一般的な棒状のものであったが、上記各実施形態におけるカーボンナノチューブ33としては、多孔質結晶から成長したもの、いわゆる多孔質結晶担持カーボンナノチューブであってもよい。
【0076】
図10は本実施形態のカーボンナノチューブ33を模式的に示す図であり、(a)に示される多孔質結晶33aからカーボンナノチューブ33が成長すると(b)に示されるような毬栗(いがぐり)状のカーボンナノチューブ33となる。
【0077】
これは、複数のカーボンナノチューブ33が、多孔質結晶33aの細孔33bから延びるように形成されたものである。ここで、多孔質結晶33aとしては、ゼオライト、シリカ多孔体、アルミナ、酸化マグネシウムなどが挙げられ、サイズの一例を示すと、直径D1は300nm、細孔33bの径D2は0.2〜2nm程度である。
【0078】
このような本実施形態のカーボンナノチューブ33によれば、多孔質結晶33aを基にして複数のカーボンナノチューブ33が接触した集合体の構成となっているので、カーボンナノチューブ33同士の接触面積が大きくなり、導電性接着剤30における導電性、熱伝導性の向上が期待される。
【0079】
この多孔質結晶から成長させたカーボンナノチューブ33の製造方法は、たとえば、特開2002−255519号公報、特開2006−111458号公報などに記載されているが、簡単に製造方法を述べておく。
【0080】
〔単層カーボンナノチューブ合成用触媒の調製〕
酢酸第一鉄0.08gと酢酸コバルト4水和物0.11gとをエタノール7mlに加え、超音波洗浄機で10分間懸濁。この懸濁液に、多孔質結晶としてのUSY型ゼオライトを1.0g加え、超音波洗浄機で10分間処理し、120℃の恒温下でエタノールを除去することにより、金属担持触媒を得る。
【0081】
〔単層カーボンナノチューブの合成〕
内径100mmの石英管の中央部の石英プレート上に、先に調製した金属塩を担持したUSY型ゼオライトを0.09gとる。ロータリーポンプで系内の圧力を約107Paまで減圧した時点で、ロータリーポンプで減圧しながら、アルゴンガスを50ml/min.で供給し、石英管を管状電気炉で300℃まで昇温する。石英管中央付近の温度が300℃に達してから30分間、アルゴンガスの供給を続けた後に、アルゴンガスを停止し、炉内温度を800℃へ昇温する。
【0082】
次いで、石英管に対し、ロータリーポンプ側を下流とし、ロータリーポンプの上流側の室温領域にデシケーターを設置し、その中にエタノール(ナカライテスク社製)約100mlが入ったビーカーを設置する。デシケーターと石英管の接合バルブを開き、エタノール蒸気圧(約8000Pa)で石英管内を満たす。30分間エタノール蒸気で満たした後に、エタノール入りビーカーと石英管の接合バルブを閉じる。その後、石英管内をロータリーポンプで減圧したまま、電気炉を室温まで冷やし、ゼオライト触媒を回収する。こうして、単層カーボンナノチューブができあがる。
【0083】
〔2層カーボンナノチューブの合成〕
上記生成物を、再度石英ボートの上に乗せ、石英反応管の中央部分に設置する。石英反応管の両端は大気開放とし、石英管を管状電気炉で600℃まで約10分で昇温し、600℃で30分保持する。その後、電気炉を室温まで冷やし、ゼオライト触媒を回収する。こうして、2層カーボンナノチューブができあがる。
【0084】
このように、本実施形態の多孔質結晶担持カーボンナノチューブは、熱CVD法により作製されるが、上記実施形態同様のプラズマCVD法によっても多孔質結晶からの成長を行うことで作製できる。
【0085】
ここで、たとえば多孔質結晶の細孔内に溶剤などを用いて上記触媒金属を配置すれば、上記熱CVD法あついはプラズマCVD法により、上記第1実施形態と同様に、先端成長および末端成長が行われ、当該触媒金属が金属微粒子として両端に含有されたカーボンナノチューブができあがる。なお、この場合、多孔質結晶とは反対側の端部に含有される金属微粒子を、精製することで融着部とする。
【0086】
このように、本実施形態のカーボンナノチューブ33に対しても、触媒金属を用いて上記金属微粒子を含有させたものとすることが可能である。また、本実施形態のカーボンナノチューブ33に対して、上記同様にして、融着部としてのAgメッキ35をコーティングしてもよい。
【0087】
図11は、本実施形態の多孔質結晶担持カーボンナノチューブ33を導電フィラー32として用いた電子装置の要部を示す概略断面図である。ここでは、カーボンナノチューブ33には、上記融着部としての金属微粒子あるいはAgメッキなどが設けられているが、図11では省略してある。
【0088】
そして、この場合も、融着部の作用により、電子部品20と回路基板10との間のさらなる高導電性、高放熱性を実現することができる。また、図示しないが、ここに、上記した別の導電フィラー36を、さらに混合してもよい。
【0089】
(第5実施形態)
図12は、本発明の第5実施形態に係る電子装置の要部を示す概略断面図であり、同電子装置における導電性接着剤30の詳細構成を示す概略断面図である。図12において、(a)はカーボンナノチューブ33が無配向である場合を示し、(b)はカーボンナノチューブ33を上記電場または磁場印加の方法により配向させた状態を示す。
【0090】
本実施形態では、上記各実施形態における一般的な棒状のカーボンナノチューブ33に代えて、カーボンナノチューブ33をコイルバネ形状をなすカーボンナノコイルとしたものである。その製造方法は、特開2001−192204号公報、特開2005−35800号公報、特開2003−26410号公報などに記載されている。
【0091】
カーボンナノコイルの特性は、一般のカーボンナノチューブと同様であり、さらにコイル状であることから、弾性力が大きく、接触面積も棒状のものよりも大きくなる。この場合も、上記触媒金属を用いたCVD法によって上記金属微粒子を含有させたり、Agメッキを施すことによって融着部を設け、これを導電フィラーとして用いることで、導電性、放熱性を高めることができる。
【0092】
なお、図12では、導電フィラーとしてのコイルバネ形状のカーボンナノチューブ33が示されており、上記融着部としての金属微粒子やAgメッキなどは、省略してあるが、これら融着部による作用効果は、上記第1実施形態と同様に発揮されている。
【0093】
ここで、図12(a)に示される無配向状態では、コイル形状のカーボンナノチューブ33を用いることにより、接触面積が増加するとともに、コイル同士が絡み合うことで、導電性、放熱性のさらなる向上が期待される。
【0094】
また、図12(b)に示される配向状態では、導電性接着剤30の硬化時に電場あるいは磁場をかけることで配向性を持たせるが、このとき、カーボンナノチューブ33がコイルバネ状であるため弾性力が大きく、導電性接着剤30の硬化時の収縮に対してスペーサーとしての機能を果たす。そのため、基板電極11と部品電極21との間にて導電性接着剤30の厚さの均一化が期待される。また、本実施形態においても上記した別の導電フィラー36を混合してもよい。
【0095】
(他の実施形態)
なお、本実施形態のカーボンナノチューブ33および上記各実施形態のカーボンナノチューブ33は、それぞれ単独に用いるだけでなく、各実施形態のカーボンナノチューブ33を適宜選択して組み合わせて用いてもよい。以下、その一具体例を挙げておく。
【0096】
例1:導電フィラーとして、上記第1実施形態の金属微粒子含有カーボンナノチューブと、上記第4実施形態の金属微粒子含有の多孔質結晶担持カーボンナノチューブとを混合したものを用いる。
【0097】
例2:導電フィラーとして、上記第1実施形態の金属微粒子含有カーボンナノチューブと、上記第5実施形態の金属微粒子含有のコイルバネ形状カーボンナノチューブとを混合したものを用いる。
【0098】
例3:導電フィラーとして、上記第1実施形態の金属微粒子含有カーボンナノチューブと、上記第4実施形態の金属微粒子含有の多孔質結晶担持カーボンナノチューブと、上記第5実施形態の金属微粒子含有のコイルバネ形状カーボンナノチューブとを混合したものを用いる。
【0099】
例4:導電フィラーとして、上記第4実施形態の金属微粒子含有の多孔質結晶担持カーボンナノチューブと、上記第5実施形態の金属微粒子含有のコイルバネ形状カーボンナノチューブとを混合したものを用いる。
【0100】
また、上記した例1〜例4においては、各カーボンナノチューブのすべてあるいは一部に対して上記したAgメッキやAg粒子をコーティングしてもよい。また、上記の例1〜例4においても、上記第2実施形態に示したような別の導電フィラー36を含有させてもよいし、電場や磁場の印加の有無により、カーボンナノチューブの配向または無配向を行ってもよい。
【0101】
また、電子装置としては、電子部品を回路基板に搭載し、部品電極と基板電極とを導電性接着剤により電気的・機械的に接続してなるものであればよく、上記図1に示される電子装置100は、あくまでも一実施形態である。
【0102】
たとえば、電子部品は、コンデンサやICチップなど異なる種類のものが複数搭載されていてもよいし、その異なる電子部品のすべてに、上記実施形態のなかの1つの導電性接着剤30を用いてもよいし、異なる電子部品毎に、上記実施形態から異なる導電性接着剤30を選択して用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電子装置の概略断面図である。
【図2】図1中の導電性接着剤の詳細構成を示す概略断面図である。
【図3】CVD法を行う装置の概略構成を示す図である。
【図4】CVD法による基板表面でのカーボンナノチューブの成長の様子を模式的に示す図である。
【図5】基板からカーボンナノチューブを剥離させる工程を示す図である。
【図6】金属微粒子含有カーボンナノチューブの精製工程を示す工程図であり、(a)はカーボンナノチューブの概略断面図、(b)、(c)は概略外観図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る電子装置の要部を示す概略断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る電子装置の要部を示す概略断面図である。
【図9】第3実施形態の他の例としての電子装置の要部を示す概略断面図である。
【図10】本発明の第4実施形態のカーボンナノチューブを模式的に示す図である。
【図11】第4実施形態に係る電子装置の要部を示す概略断面図である。
【図12】本発明の第5実施形態に係る電子装置の要部を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0104】
10…回路基板、11…回路基板の電極、20…電子部品、21…電子部品の電極、
30…導電性接着剤、31…樹脂、32…導電フィラー、
33…カーボンナノチューブ、34…融着部としての金属微粒子、
35…融着部としてのAgメッキ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品と回路基板とを導電性接着剤を介して電気的・機械的に接続してなる電子装置に関し、特に、導電性接着剤の導電フィラーがカーボンナノチューブであるものに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の電子装置としては、電極を有する電子部品を回路基板に搭載し、電子部品の電極と回路基板の電極とを、導電性接着剤により電気的・機械的に接続してなる電子装置が、よく用いられている。
【0003】
ここで、導電性接着剤は、導電フィラーを樹脂に含んでなるものであって、電子部品と回路基板との電気的な導通を取りながら、これらを固着するものである。一般には、導電フィラーとしては、導電性にすぐれた金属微粒子あるいは金や銀などの貴金属が導電性充填材(フィラー)として多く用いられている。これらの金属微粒子は、エポキシ、ポリイミド、シリコーン系などを代表とするバインダ用の樹脂と混合して導電性接着剤を構成している。
【0004】
そして、導電性接着剤は、樹脂の硬化により、樹脂中の導電フィラー同士の接触、および、導電フィラーと部品電極や基板電極との接触がなされており、これら接触により導電経路が形成され、当該電極間の導通さらには放熱が得られている。また、当該電極間の機械的な接続は樹脂の接着によりなされている。
【0005】
しかしながら、将来、電子装置の性能が上がることにより、電子部品の動作電圧が上昇すると考えられ、また、電子部品動作時の消費電力の上昇により、部品接続部の温度が上昇すると考えられる。したがって、導電性接着剤の更なる高導電性、高放熱性が必要となってくる。
【0006】
一方で、導電性および接着保持強度を向上させるために、導電性接着剤として、従来の一般的な導電フィラーに代えてカーボンナノチューブを用いたものが提案されている(たとえば、特許文献1〜4等参照)。
【0007】
カーボンナノチューブは、一般的には直径0.数〜数十nmで長さが数百μm〜数mm程度の円筒の形をした炭素の結晶であり、炭素原子が六角形に配置されたグラファイトシートを筒状に巻いた形をしているものである。カーボンナノチューブの代表的な作り方(合成方法)としては、アーク放電法、レーザー蒸発法、化学的気相成長法(CVD法)などが挙げられる。
【特許文献1】特開2004−27134号公報
【特許文献2】特開2006−49369号公報
【特許文献3】特開2002−109489号公報
【特許文献4】特開2003−203450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、カーボンナノチューブを樹脂に含有させてなる導電性接着剤の場合、従来の金属微粒子などの導電フィラーに比べて、導電性に優れるものの、導電性接着剤の更なる高導電性、高放熱性が要望されている。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、カーボンナノチューブを含有してなる導電性接着剤を介して、電子部品と回路基板とを電気的・機械的に接続してなる電子装置において、電子部品と回路基板との間のさらなる高導電性、高放熱性を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、導電性接着剤(30)における導電フィラー(32)を、カーボンナノチューブ(33)と、このカーボンナノチューブ(33)に設けられ導電性接着剤(30)の硬化時に電子部品(20)の電極(21)および回路基板(10)の電極(11)に融着する融着部(34、35)とにより構成したことを特徴とする。
【0011】
それによれば、融着部(34、35)が電子部品(20)の電極(21)および回路基板(10)の電極(11)に融着して、導電フィラーとしてのカーボンナノチューブ(33)が電極(11、21)と導電性接着剤(30)との界面近傍に多く存在することが可能となるため、電子部品(20)と回路基板(10)との間のさらなる高導電性、高放熱性を実現することができる。
【0012】
ここで、融着部としては、カーボンナノチューブ(33)に含有された金属微粒子(34)であるものにできる。カーボンナノチューブ(33)に含有された金属微粒子(34)は直径がナノオーダーであり、このような金属微粒子(34)は表面エネルギーが高く、金属本来の融点よりも遥かに低温で容易に他の物質と結合しやすい特性がある。
【0013】
そのため、この金属微粒子(34)は、融着部として機能し、導電性接着剤(30)を硬化させる際、電子部品(20)の電極(21)あるいは回路基板(10)の電極(11)に接触して融着する。それにより、電気および熱が、金属微粒子(34)とカーボンナノチューブ(33)を介して対向する電極(11、21)間を効率的に伝わる。
【0014】
また、融着部は、上記カーボンナノチューブ(33)に含有された金属微粒子(34)以外にも、さらに、カーボンナノチューブ(33)の表面にコーティングされカーボンナノチューブ(33)の直径よりも粒径の小さな金属粒子(35)であってもよい。なお、上記金属微粒子(34)を含有するカーボンナノチューブ(33)の表面が、さらに、この金属粒子(35)で被覆されていてもよく、この場合、金属微粒子(34)および金属粒子(35)の両方が融着部として構成される。
【0015】
このコーティングされた金属粒子(35)を有するカーボンナノチューブ(33)の場合、導電性接着剤(30)を硬化させる際に、上記電極(11、21)への融着だけでなく、カーボンナノチューブ(33)同士の融着も可能となり、電気的・熱的な経路がさらに強固になることが期待される。
【0016】
また、カーボンナノチューブ(33)を、多孔質結晶から成長したものにすれば、カーボンナノチューブ(33)同士の接触面積を大きくするうえで好ましい。
【0017】
また、カーボンナノチューブ(33)を、コイルバネ形状をなすカーボンナノコイルとしてもよい。この場合、コイルバネ形状であることから、弾性力が大きく、接触面積も棒状のカーボンナノチューブ(33)よりも大きくなるため、好ましい。
【0018】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る電子装置100の概略断面構成を示す図であり、図2は、この電子装置100における導電性接着剤30の詳細構成を示す概略断面図である。
【0021】
回路基板10の上に電子部品20が搭載され、回路基板10の電極11と電子部品20の電極21とが導電性接着剤30を介して電気的に接続されている。なお、以下、回路基板10の電極11を基板電極11、電子部品20の電極21を部品電極21ということにする。
【0022】
回路基板10は、セラミック基板やプリント基板などを採用することができ、特に限定されるものではない。基板電極11は、回路基板10の一面に形成されており、たとえばAu、Sn、Ag、Ni、Cuなどおよびこれらの合金などの材料を用いた厚膜やめっきから構成されたものである。
【0023】
電子部品20としては、コンデンサ、抵抗などの受動部品やダイオードなどの能動部品、ICチップなどの表面実装部品を採用することができる。図1に示される例では、電子部品20はチップコンデンサとして示してある。部品電極21は、たとえばAu、Sn、Ag、Ni、Cuなどおよびこれらの合金などの材料より構成されたものである。
【0024】
また、導電性接着剤30は、樹脂31に導電フィラー32を含有してなる。ここで、樹脂31はエポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイミド系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂など、一般的なバインダ用樹脂材料よりなり、一液性のものでも、2種類の樹脂の混合で効果する二液性のものでもよい。さらに、カップリング剤、有機溶剤、希釈剤、硬化遅延剤などが混合されていてもよい。
【0025】
ここで、本実施形態では、導電フィラー32は、カーボンナノチューブ33よりなる。カーボンナノチューブは、炭素によって作られる厚さ0.37nmの六員環ネットワーク(グラフェンシート)が単層あるいは多層の同軸管状になった物質である。
【0026】
単層のものをシングルウォールナノチューブ(SWNT)、複層のものをマルチウォールナノチューブ(MWNT)という。特に二層のものはダブルウォールナノチューブ(DWNT)とも呼ばれる。直径はSWNTで数nm、MWNTで数十nmである。また長さは数百um〜数mmである。
【0027】
カーボンナノチューブの特性としては、カーボンナノチューブは優れた電気伝導率を持っており、理論的にはCu(1.67×10-6[Ω・cm])を越えるといわれている。また、熱伝導率では3000〜5500[W/mK](理論値)と言われており、Cu(398[W/mK])を1桁上回る。また、化学的に安定で不活性であり腐食などに強い。そして、機械的に強靭であり、アルミニウムの半分という軽さ、鋼鉄の20倍の強度(特に繊維方向の引っ張り強度ではダイヤモンドすら凌駕する)と非常にしなやかな弾性力を持つ。
【0028】
さらに、本実施形態では、このカーボンナノチューブ33には、金属微粒子34が含有されている。この金属微粒子34は、棒状のカーボンナノチューブ33の両端の開口部にそれぞれはめ込まれ、当該開口部から露出した形となっている。金属微粒子34は、カーボンナノチューブ33の直径と略同等であり、Fe、Co、Niなどの遷移金属よりなるものである。
【0029】
この金属微粒子34は、導電性接着剤30の硬化時に部品電極21および基板電極11に融着する融着部として構成されている。つまり、本実施形態では、導電フィラー32は、カーボンナノチューブ33と、このカーボンナノチューブ33に設けられた融着部としての金属微粒子34とにより構成されたものである。
【0030】
そして、図2に示されるように、導電フィラー32は両電極11、21の間に介在し、金属微粒子34と各電極11、21との融着により、カーボンナノチューブ33の一端または両端が各電極11、21に接している。また、樹脂31中にてカーボンナノチューブ33同士も接触している。
【0031】
これらの接触により、導電性接着剤30の内部には、カーボンナノチューブ33によって基板電極11と部品電極21との間を結ぶ電気経路、熱経路が形成され、当該電極11、21間の導通および放熱が確保されている。また、当該電極11、21間の機械的な接続は、樹脂31の接着によりなされている。
【0032】
次に、導電フィラー32である金属微粒子含有カーボンナノチューブ33の製造方法について述べる。上述したように、カーボンナノチューブを生成する一般的な方法として、アーク放電法、レーザ蒸発法、化学気相成長(CVD)法などがある。
【0033】
ここでは、一具体例として、CVD法、特にプラズマCVD法によって金属微粒子含有カーボンナノチューブ33を生成させる例について説明する。CVD法は、原料ガスを反応炉内に流入し、基板表面あるいは気相での化学反応により原料ガスを分解して薄膜を形成する手法である。
【0034】
図3は、本例のCVD法を行う装置の概略構成を示す図である。また、図4は、本例のCVD法による基板201表面でのカーボンナノチューブ33の成長の様子を模式的に示す図である。
【0035】
本例では、原料ガスにはメタン(CH4)を用い、キャリアガスとして水素(H2)を用い、これらガスをマスフローコントローラによってCH4:H2=80:20sccmとなるように、反応炉200に流入させる。なお、この反応炉200は、一般的なCVD用のものである。
【0036】
基板201にはSiを用いる。そして、スパッタ法、真空蒸着法などの薄膜形成法によって、基板201の表面に、図4(a)に示されるように、Fe、Co、Niなどの遷移金属を触媒金属202として数nm成膜する。ここでは、場合により、基板201と触媒金属202との間にバッファ層として、Tiなどの遷移金属を数nm〜数十nm成膜してもよい。
【0037】
そして、この触媒金属202が形成された基板201を反応炉200内に設置し、反応炉200内を10-3[Pa]となるように真空排気する。その後、基板201を700℃に加熱し、30分間アニールを行う。
【0038】
次に、反応炉200内で、RF電源210を介して電極211、212間にプラズマを発生させる。このときのRF電源210のパワーは300W、時間は10分、基板温度は700℃、真空度は67Paである。それにより、基板201上に垂直に成長したカーボンナノチューブ33が生成される。
【0039】
CVD法により成長するカーボンナノチューブ33は、触媒金属202から成長することが知られている。詳しくは、上記した基板201のアニール処理によって触媒金属202は均一な薄膜から、たとえば粒径が2nm〜10nm程度の微粒子に変化する。このように微粒子化することで、触媒金属202は活性化する。
【0040】
そして、ここに、炭化水素ガスを分解してできた炭素を、微粒子化した触媒金属202に取り込ませることで、図4(b)に示されるように、この微粒子化した触媒金属202を成長サイトとしてカーボンナノチューブ33が成長することが知られている。
【0041】
その成長メカニズムは、先端成長と末端成長とのどちらにもあると言われている。実際に、本発明者が電子顕微鏡(TEM)により観察したところ、成長したカーボンナノチューブ33は触媒金属202を先端と末端に含んでいる。
【0042】
通常、このカーボンナノチューブ33に内包された触媒金属202は、カーボンナノチューブの純度の観点から、溶剤などにより排除される。しかしながら、この微粒子化された触媒金属202は、その粒子径がカーボンナノチューブ33の直径以下のナノオーダーであり、それ自体活性になりうる。そのために、本実施形態では、この微粒子化された触媒金属202を排除せず、カーボンナノチューブ33に含有させたまま、上記金属微粒子34として用いる。
【0043】
このようにして、図4(c)に示されるように、両端に微粒子化された触媒金属202としての金属微粒子34を含有するカーボンナノチューブ33が、基板201上にて基板201と垂直方向に成長し、形成される。
【0044】
なお、上記SWNT、上記MWNTのように層の数を異ならせた金属微粒子含有カーボンナノチューブ33を作製する場合は、公知の方法ではあるが、上記図4(a)に示される基板201上の触媒金属202の膜厚を変えることで、層の数を制御すればよい。
【0045】
次に、基板201からカーボンナノチューブ33を剥離させる。図5は、この剥離工程を示す図である。容器300中にエタノール310を入れ、その中に、カーボンナノチューブ33が成長した基板201を浸漬させる。
【0046】
そして、エタノール310中で数分間、超音波分散させることにより、金属微粒子含有カーボンナノチューブ33を基板201から剥離させる。その後、この溶液を乾燥させることにより、金属微粒子含有カーボンナノチューブ33を得る。
【0047】
次に、この金属微粒子含有カーボンナノチューブ33の精製を行う。図6はこの精製工程を示す工程図であり、(a)はカーボンナノチューブ33の概略断面図、(b)、(c)は概略外観図である。
【0048】
まず、上記剥離工程後に得られたカーボンナノチューブ33は、図6(a)に示されるように、金属微粒子34を両端に含有してはいるものの、金属微粒子34はアモルファスカーボンなどのキャップ34aにより被覆されており、このキャップ34aを除去して金属微粒子34を露出させる必要がある。ここで、本例にて形成されるカーボンナノチューブ33は、直径D:5〜20nm、長さL:数十μm程度である。
【0049】
そこで、この精製工程では、金属微粒子含有カーボンナノチューブ33に、30%に希釈した過酸化水素水を加え、一晩攪拌した後、125℃で12時間還流を行う。これにより、上記キャップ34aおよびそれ以外にカーボンナノチューブ33に付着しているアモルファスカーボンを除去し、図6(b)に示されるように、金属微粒子34をチューブ外へ露出させる。
【0050】
露出させた金属微粒子34は、そのまま導電フィラーとして用いてもよいが、シリサイド化していたり、望まない金属化合物を形成している場合があるので、最表面をエッチングすることが望ましい。
【0051】
このエッチングには塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸など酸性の溶液を用いる。場合により、希釈し、カーボンナノチューブ33を数秒〜数十秒浸すことで、金属微粒子34の最表面の化合物を除去し、図6(c)に示されるように、純粋な金属微粒子34を最表面に露出させる。こうして、本実施形態の導電フィラー32としての金属微粒子含有カーボンナノチューブ33ができあがる。
【0052】
このように、導電フィラー32としての金属微粒子含有カーボンナノチューブ33は、触媒金属を用いてカーボンナノチューブを成長させるCVD法による成長工程、剥離工程、精製工程を経て作製される。
【0053】
次に、この導電フィラー32を数十wt%、樹脂31に混合すれば、本実施形態の導電性接着剤30が作製される。次に、図1に示される本実施形態の電子装置100の組み付け方法について述べておく。
【0054】
まず、導電性接着剤30を、マスク印刷またはディスペンスにより基板10の基板電極11上に供給する。次に、基板電極11と部品電極21とを位置あわせした状態で基板10の上に電子部品20を搭載する。そして、導電性接着剤30を加熱し、硬化させる。それにより、電子部品20と基板10との接続が完了し、上記図1に示される電子装置100ができあがる。
【0055】
この導電性接着剤30の硬化反応時、カーボンナノチューブ33に含有させた金属微粒子34は部品電極21あるいは基板電極11と接触して融着し、樹脂31が完全に硬化することで固着する。
【0056】
ここで、導電性接着剤30の硬化反応時に両電極11、21間に電場、あるいは磁場を与えるなどの方法を採用してもよい。それによれば、金属微粒子含有カーボンナノチューブ33を配向性よく電極11、21に対して垂直に配列させ、金属微粒子34を電極11、21に接触しやすくすることが可能となる。
【0057】
ところで、一般に導電性接着剤における導電性、放熱性は、母材と接着剤との界面におけるフィラー状態に因る部分が大きく、界面のフィラーの分布度が大きいほうがよい。その点、本実施形態の電子装置100では、導電性接着剤30の導電フィラー32を、カーボンナノチューブ33と、カーボンナノチューブ33に設けられた融着部としての金属微粒子34とにより構成している。
【0058】
それによれば、融着部としての金属微粒子34が部品電極21および基板電極11に融着して、導電フィラーとしてのカーボンナノチューブ33が電極11、21と導電性接着剤30との界面近傍に多く存在することが可能となるため、電子部品20と回路基板10との間のさらなる高導電性、高放熱性を実現することができる。
【0059】
特に、本実施形態では、融着部を、カーボンナノチューブ33に含有された金属微粒子34としているが、この金属微粒子34は直径がナノオーダーであり、このような金属微粒子34は表面エネルギーが高く、金属本来の融点よりも遥かに低温で容易に他の物質と結合しやすい特性がある。
【0060】
そのため、本実施形態では、金属微粒子34は、融着部として効果的に機能し、導電性接着剤30を硬化させる際、各電極11、21に接触して融着する。それにより、電気および熱が、金属微粒子34とカーボンナノチューブ33を介して対向する電極11、21間を効率的に伝わる。
【0061】
(第2実施形態)
図7は、本発明の第2実施形態に係る電子装置の要部を示す概略断面図であり、同電子装置における導電性接着剤30の詳細構成を示す概略断面図である。
【0062】
本実施形態では、上記第1実施形態の導電性接着剤30において、導電フィラー32としての金属微粒子含有カーボンナノチューブ33以外に、別の導電フィラー36を樹脂31に含ませたものである。
【0063】
この別の導電フィラー36は、従来の一般的な導電フィラーとして用いていたCu、Ag、Ni、Pd、Cなどの導電粒子であり、その樹脂31への含有量は数wt%〜数十wt%程度である。この場合、上記第1実施形態における効果と同様の効果とともに、金属微粒子34が別の導電フィラー36にも融着して、より効率的な電気経路・熱経路の形成が期待される。
【0064】
(第3実施形態)
図8は、本発明の第3実施形態に係る電子装置の要部を示す概略断面図であり、同電子装置における導電性接着剤30の詳細構成を示す概略断面図である。
【0065】
本実施形態では、上記第1実施形態の導電性接着剤30において、導電フィラー32としての金属微粒子含有カーボンナノチューブ33に対して、さらに、当該カーボンナノチューブ34の表面にAgメッキ35を施したものである。
【0066】
この場合、このAgメッキ35は、カーボンナノチューブ33の直径よりも粒径の小さなAg粒子がカーボンナノチューブ33の表面にコーティングされたものとして構成されている。そして、このAgメッキ35は、上記融着部として機能する。
【0067】
このAgメッキ35は、上記金属微粒子34の表面までも被覆しているが、本実施形態では、導電性接着剤30の硬化反応時に、金属微粒子34とともにAgメッキ35も、電極11、21やカーボンナノチューブ33に融着する。つまり、この場合、金属微粒子34および金属粒子としてのAgメッキ35の両方が融着部として構成される。
【0068】
そして、本実施形態においても上記第1実施形態と同様の効果を奏するが、このコーティングされたAgメッキ35を有するカーボンナノチューブ33の場合、硬化時に、上記電極11、21への融着だけでなく、カーボンナノチューブ33同士の融着も可能となる。それゆえ、電気的・熱的な経路がさらに強固になるというメリットがある。
【0069】
このAgメッキ35は、置換型メッキ法により形成されるもので、具体的には、ホルムアルデヒドや次亜リン酸塩を還元剤とするメッキ浴に、カーボンナノチューブ33を浸すことにより形成される。そのAgメッキ35の膜厚は、たとえば0.1〜0、5μm程度である。
【0070】
ここで、カーボンナノチューブ33の表面をAgメッキ35でコーティングする場合、カーボンナノチューブ33は金属微粒子34を含有していないものであってもよい。つまり、一般のカーボンナノチューブ33に対してAgメッキ35を施したものであっても、このAgメッキ35が融着部として機能するため、融着部を有するカーボンナノチューブ33として構成される。
【0071】
この場合も、融着部としてのAgメッキ35の作用により、カーボンナノチューブ33が、上記電極11、21に融着して、カーボンナノチューブ33が電極11、21と導電性接着剤30との界面近傍に多く存在することが可能となるため、電子部品20と回路基板10との間のさらなる高導電性、高放熱性を実現することができる。
【0072】
なお、カーボンナノチューブ33の表面にコーティングされカーボンナノチューブ33の直径よりも粒径の小さな金属粒子としては、Agメッキ35以外にも、Ag系(Ag、AgSn、AgPd等)、Cu系(Cu、CuNi等)、Au、Snの金属でもよい。そのようなAg粒子の粒径は、たとえば※1〜20 nmであり、カーボンナノチューブ33の直径よりも小さい。
【0073】
その場合、カーボンナノチューブ33へのコーティングは、カーボンナノチューブ33と金属粒子との混合物を溶液または気体中で加熱することにより、金属粒子のカーボンナノチューブ33の表面への焼結による融着または付着等を行うことにより形成される。
【0074】
ここで、図9は、本第3実施形態の他の例としての電子装置の要部を示す概略断面図である。図9に示されるように、本実施形態においても、上記第2実施形態に示した別の導電フィラー36を含有させてもよい。この場合、上記した本実施形態における効果に加えて、金属微粒子34およびAgメッキ35が別の導電フィラー36にも融着して、より効率的な電気経路・熱経路の形成が期待される。
【0075】
(第4実施形態)
ところで、上記各実施形態では、カーボンナノチューブ33は、一般的な棒状のものであったが、上記各実施形態におけるカーボンナノチューブ33としては、多孔質結晶から成長したもの、いわゆる多孔質結晶担持カーボンナノチューブであってもよい。
【0076】
図10は本実施形態のカーボンナノチューブ33を模式的に示す図であり、(a)に示される多孔質結晶33aからカーボンナノチューブ33が成長すると(b)に示されるような毬栗(いがぐり)状のカーボンナノチューブ33となる。
【0077】
これは、複数のカーボンナノチューブ33が、多孔質結晶33aの細孔33bから延びるように形成されたものである。ここで、多孔質結晶33aとしては、ゼオライト、シリカ多孔体、アルミナ、酸化マグネシウムなどが挙げられ、サイズの一例を示すと、直径D1は300nm、細孔33bの径D2は0.2〜2nm程度である。
【0078】
このような本実施形態のカーボンナノチューブ33によれば、多孔質結晶33aを基にして複数のカーボンナノチューブ33が接触した集合体の構成となっているので、カーボンナノチューブ33同士の接触面積が大きくなり、導電性接着剤30における導電性、熱伝導性の向上が期待される。
【0079】
この多孔質結晶から成長させたカーボンナノチューブ33の製造方法は、たとえば、特開2002−255519号公報、特開2006−111458号公報などに記載されているが、簡単に製造方法を述べておく。
【0080】
〔単層カーボンナノチューブ合成用触媒の調製〕
酢酸第一鉄0.08gと酢酸コバルト4水和物0.11gとをエタノール7mlに加え、超音波洗浄機で10分間懸濁。この懸濁液に、多孔質結晶としてのUSY型ゼオライトを1.0g加え、超音波洗浄機で10分間処理し、120℃の恒温下でエタノールを除去することにより、金属担持触媒を得る。
【0081】
〔単層カーボンナノチューブの合成〕
内径100mmの石英管の中央部の石英プレート上に、先に調製した金属塩を担持したUSY型ゼオライトを0.09gとる。ロータリーポンプで系内の圧力を約107Paまで減圧した時点で、ロータリーポンプで減圧しながら、アルゴンガスを50ml/min.で供給し、石英管を管状電気炉で300℃まで昇温する。石英管中央付近の温度が300℃に達してから30分間、アルゴンガスの供給を続けた後に、アルゴンガスを停止し、炉内温度を800℃へ昇温する。
【0082】
次いで、石英管に対し、ロータリーポンプ側を下流とし、ロータリーポンプの上流側の室温領域にデシケーターを設置し、その中にエタノール(ナカライテスク社製)約100mlが入ったビーカーを設置する。デシケーターと石英管の接合バルブを開き、エタノール蒸気圧(約8000Pa)で石英管内を満たす。30分間エタノール蒸気で満たした後に、エタノール入りビーカーと石英管の接合バルブを閉じる。その後、石英管内をロータリーポンプで減圧したまま、電気炉を室温まで冷やし、ゼオライト触媒を回収する。こうして、単層カーボンナノチューブができあがる。
【0083】
〔2層カーボンナノチューブの合成〕
上記生成物を、再度石英ボートの上に乗せ、石英反応管の中央部分に設置する。石英反応管の両端は大気開放とし、石英管を管状電気炉で600℃まで約10分で昇温し、600℃で30分保持する。その後、電気炉を室温まで冷やし、ゼオライト触媒を回収する。こうして、2層カーボンナノチューブができあがる。
【0084】
このように、本実施形態の多孔質結晶担持カーボンナノチューブは、熱CVD法により作製されるが、上記実施形態同様のプラズマCVD法によっても多孔質結晶からの成長を行うことで作製できる。
【0085】
ここで、たとえば多孔質結晶の細孔内に溶剤などを用いて上記触媒金属を配置すれば、上記熱CVD法あついはプラズマCVD法により、上記第1実施形態と同様に、先端成長および末端成長が行われ、当該触媒金属が金属微粒子として両端に含有されたカーボンナノチューブができあがる。なお、この場合、多孔質結晶とは反対側の端部に含有される金属微粒子を、精製することで融着部とする。
【0086】
このように、本実施形態のカーボンナノチューブ33に対しても、触媒金属を用いて上記金属微粒子を含有させたものとすることが可能である。また、本実施形態のカーボンナノチューブ33に対して、上記同様にして、融着部としてのAgメッキ35をコーティングしてもよい。
【0087】
図11は、本実施形態の多孔質結晶担持カーボンナノチューブ33を導電フィラー32として用いた電子装置の要部を示す概略断面図である。ここでは、カーボンナノチューブ33には、上記融着部としての金属微粒子あるいはAgメッキなどが設けられているが、図11では省略してある。
【0088】
そして、この場合も、融着部の作用により、電子部品20と回路基板10との間のさらなる高導電性、高放熱性を実現することができる。また、図示しないが、ここに、上記した別の導電フィラー36を、さらに混合してもよい。
【0089】
(第5実施形態)
図12は、本発明の第5実施形態に係る電子装置の要部を示す概略断面図であり、同電子装置における導電性接着剤30の詳細構成を示す概略断面図である。図12において、(a)はカーボンナノチューブ33が無配向である場合を示し、(b)はカーボンナノチューブ33を上記電場または磁場印加の方法により配向させた状態を示す。
【0090】
本実施形態では、上記各実施形態における一般的な棒状のカーボンナノチューブ33に代えて、カーボンナノチューブ33をコイルバネ形状をなすカーボンナノコイルとしたものである。その製造方法は、特開2001−192204号公報、特開2005−35800号公報、特開2003−26410号公報などに記載されている。
【0091】
カーボンナノコイルの特性は、一般のカーボンナノチューブと同様であり、さらにコイル状であることから、弾性力が大きく、接触面積も棒状のものよりも大きくなる。この場合も、上記触媒金属を用いたCVD法によって上記金属微粒子を含有させたり、Agメッキを施すことによって融着部を設け、これを導電フィラーとして用いることで、導電性、放熱性を高めることができる。
【0092】
なお、図12では、導電フィラーとしてのコイルバネ形状のカーボンナノチューブ33が示されており、上記融着部としての金属微粒子やAgメッキなどは、省略してあるが、これら融着部による作用効果は、上記第1実施形態と同様に発揮されている。
【0093】
ここで、図12(a)に示される無配向状態では、コイル形状のカーボンナノチューブ33を用いることにより、接触面積が増加するとともに、コイル同士が絡み合うことで、導電性、放熱性のさらなる向上が期待される。
【0094】
また、図12(b)に示される配向状態では、導電性接着剤30の硬化時に電場あるいは磁場をかけることで配向性を持たせるが、このとき、カーボンナノチューブ33がコイルバネ状であるため弾性力が大きく、導電性接着剤30の硬化時の収縮に対してスペーサーとしての機能を果たす。そのため、基板電極11と部品電極21との間にて導電性接着剤30の厚さの均一化が期待される。また、本実施形態においても上記した別の導電フィラー36を混合してもよい。
【0095】
(他の実施形態)
なお、本実施形態のカーボンナノチューブ33および上記各実施形態のカーボンナノチューブ33は、それぞれ単独に用いるだけでなく、各実施形態のカーボンナノチューブ33を適宜選択して組み合わせて用いてもよい。以下、その一具体例を挙げておく。
【0096】
例1:導電フィラーとして、上記第1実施形態の金属微粒子含有カーボンナノチューブと、上記第4実施形態の金属微粒子含有の多孔質結晶担持カーボンナノチューブとを混合したものを用いる。
【0097】
例2:導電フィラーとして、上記第1実施形態の金属微粒子含有カーボンナノチューブと、上記第5実施形態の金属微粒子含有のコイルバネ形状カーボンナノチューブとを混合したものを用いる。
【0098】
例3:導電フィラーとして、上記第1実施形態の金属微粒子含有カーボンナノチューブと、上記第4実施形態の金属微粒子含有の多孔質結晶担持カーボンナノチューブと、上記第5実施形態の金属微粒子含有のコイルバネ形状カーボンナノチューブとを混合したものを用いる。
【0099】
例4:導電フィラーとして、上記第4実施形態の金属微粒子含有の多孔質結晶担持カーボンナノチューブと、上記第5実施形態の金属微粒子含有のコイルバネ形状カーボンナノチューブとを混合したものを用いる。
【0100】
また、上記した例1〜例4においては、各カーボンナノチューブのすべてあるいは一部に対して上記したAgメッキやAg粒子をコーティングしてもよい。また、上記の例1〜例4においても、上記第2実施形態に示したような別の導電フィラー36を含有させてもよいし、電場や磁場の印加の有無により、カーボンナノチューブの配向または無配向を行ってもよい。
【0101】
また、電子装置としては、電子部品を回路基板に搭載し、部品電極と基板電極とを導電性接着剤により電気的・機械的に接続してなるものであればよく、上記図1に示される電子装置100は、あくまでも一実施形態である。
【0102】
たとえば、電子部品は、コンデンサやICチップなど異なる種類のものが複数搭載されていてもよいし、その異なる電子部品のすべてに、上記実施形態のなかの1つの導電性接着剤30を用いてもよいし、異なる電子部品毎に、上記実施形態から異なる導電性接着剤30を選択して用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電子装置の概略断面図である。
【図2】図1中の導電性接着剤の詳細構成を示す概略断面図である。
【図3】CVD法を行う装置の概略構成を示す図である。
【図4】CVD法による基板表面でのカーボンナノチューブの成長の様子を模式的に示す図である。
【図5】基板からカーボンナノチューブを剥離させる工程を示す図である。
【図6】金属微粒子含有カーボンナノチューブの精製工程を示す工程図であり、(a)はカーボンナノチューブの概略断面図、(b)、(c)は概略外観図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る電子装置の要部を示す概略断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る電子装置の要部を示す概略断面図である。
【図9】第3実施形態の他の例としての電子装置の要部を示す概略断面図である。
【図10】本発明の第4実施形態のカーボンナノチューブを模式的に示す図である。
【図11】第4実施形態に係る電子装置の要部を示す概略断面図である。
【図12】本発明の第5実施形態に係る電子装置の要部を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0104】
10…回路基板、11…回路基板の電極、20…電子部品、21…電子部品の電極、
30…導電性接着剤、31…樹脂、32…導電フィラー、
33…カーボンナノチューブ、34…融着部としての金属微粒子、
35…融着部としてのAgメッキ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極(21)を有する電子部品(20)を回路基板(10)に搭載し、前記電子部品(20)の前記電極(21)と前記回路基板(10)の電極(11)とを、導電フィラー(32)を樹脂(31)に含んでなる導電性接着剤(30)により電気的・機械的に接続してなる電子装置において、
前記導電フィラー(32)は、カーボンナノチューブ(33)と、
このカーボンナノチューブ(33)に設けられ前記導電性接着剤(30)の硬化時に前記電子部品(20)の前記電極(21)および前記回路基板(10)の前記電極(11)に融着する融着部(34、35)とにより構成されたものであることを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記融着部は、前記カーボンナノチューブ(33)に含有された金属微粒子(34)であることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記融着部は、前記カーボンナノチューブ(33)の表面にコーティングされ、前記カーボンナノチューブ(33)の直径よりも粒径の小さな金属粒子(35)であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブ(33)は、多孔質結晶から成長したものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電子装置。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブ(33)は、コイルバネ形状をなすカーボンナノコイルであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電子装置。
【請求項1】
電極(21)を有する電子部品(20)を回路基板(10)に搭載し、前記電子部品(20)の前記電極(21)と前記回路基板(10)の電極(11)とを、導電フィラー(32)を樹脂(31)に含んでなる導電性接着剤(30)により電気的・機械的に接続してなる電子装置において、
前記導電フィラー(32)は、カーボンナノチューブ(33)と、
このカーボンナノチューブ(33)に設けられ前記導電性接着剤(30)の硬化時に前記電子部品(20)の前記電極(21)および前記回路基板(10)の前記電極(11)に融着する融着部(34、35)とにより構成されたものであることを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記融着部は、前記カーボンナノチューブ(33)に含有された金属微粒子(34)であることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記融着部は、前記カーボンナノチューブ(33)の表面にコーティングされ、前記カーボンナノチューブ(33)の直径よりも粒径の小さな金属粒子(35)であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブ(33)は、多孔質結晶から成長したものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電子装置。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブ(33)は、コイルバネ形状をなすカーボンナノコイルであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電子装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−76568(P2009−76568A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−242435(P2007−242435)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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