電子装置
【課題】表裏両面に電極を有する電子素子を基板の一面上に搭載し、基板に対向する電子素子の一面の第1の電極を基板に電気的に接続し、他面の電極は、当該他面上に貼り付けられた金属製の配線部を介して、基板の一面に電気的に接続してなる電子装置において、電子素子の他面側から配線部を介して放熱するときに配線部上に設ける熱伝導性部材として、絶縁部の膜厚が薄くてもピンホールの発生を極力防止する手段を提供する。
【解決手段】電子素子10は一面に第1の電極11、12、他面に第2の電極13を有して、基板20の一面上に搭載され、第2の電極13は配線部40によって基板20と電気的に接続され、配線部40上には、熱伝導性且つ電気伝導性を有する板状の熱伝導性部材50が貼り付けられ、その貼り付け面には、熱伝導性部材50の板厚方向の一部を改質することにより形成された電気絶縁性の改質膜51が形成されている。
【解決手段】電子素子10は一面に第1の電極11、12、他面に第2の電極13を有して、基板20の一面上に搭載され、第2の電極13は配線部40によって基板20と電気的に接続され、配線部40上には、熱伝導性且つ電気伝導性を有する板状の熱伝導性部材50が貼り付けられ、その貼り付け面には、熱伝導性部材50の板厚方向の一部を改質することにより形成された電気絶縁性の改質膜51が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表裏両面に電極を有する電子素子が基板上に搭載され、当該両面の電極と基板とが電気的接続されてなる電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表裏両面に電極を有する電子素子としては、パワーMOSFETやIGBTなどのパワー半導体素子が挙げられ、これらはインバータや電力スイッチなどのパワーエレクトロニクス分野に活用されている。一般に、大電流を流すことができるパワー素子では、その表面から裏面、あるいは裏面から表面に電流を流す構造を採用している。
【0003】
従来より、このような構造を有する電子装置としては、表裏両面に電極を有する電子素子、すなわち、一面に第1の電極、当該一面とは反対側の他面に第2の電極を有する電子素子を、基板の一面上に搭載したものが提案されている(たとえば、特許文献1〜3参照)。
【0004】
ここで、電子素子の両面の電極と基板の一面とを電気的に接続する構成としては、電子素子の一面と基板の一面とを対向させた状態で、第1の電極を基板に電気的に接続し、電子素子の他面に、金属製の部材よりなる配線部を貼り付け、この配線部を当該他面より基板の一面まで延ばして基板の一面に接続するようにしている(特許文献4参照)。
【0005】
これにより、電子素子の他面側における第2の電極については、配線部を介して基板の一面に電気的に接続される。そして、電子素子の他面からの電流を基板に流すことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−332196号公報
【特許文献2】特表2003−530695号公報
【特許文献3】特開2007−5590号公報
【特許文献4】特表2004−500720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の構成では、電子素子の両面の電極と基板の一面とが電気的に接続されるものの、基板とは反対側である電子素子の他面側の電位が露出した構造になるため、配線部に導電性のものが触れると、リークやショートの恐れがある。
【0008】
また、基板とは反対側である電子素子の他面側に放熱用のヒートシンクを接続し、当該他面側から放熱を行う場合には、当該他面側の配線部とヒートシンクとの間に電気絶縁性材料よりなる熱伝導性部材を介在させる必要がある。これは、ヒートシンクとして使用される材料が主に金属であるためである。そして、この配線部上に設けられた熱伝導性部材を介して、電子素子の他面側から放熱がなされる。
【0009】
この熱伝導性部材としては、一般的にシリコーンシートなどが使用されるが、たとえば0.2mm以上と厚いものが使用されるため、放熱性の低下を招いてしまう。また、熱伝導性部材として、熱伝導性が樹脂よりも優れたセラミック基板を使用することも可能であるが、このセラミック基板を薄くすると割れやすくなるため、あまり薄くすることはできない。
【0010】
また、熱伝導性部材として、絶縁性のセラミック薄膜を形成することも考えられるが、蒸着やCVD(化学気相成長法)などの成膜では、均一でピンホールなどが発生しない膜を形成することが困難である。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、表裏両面に電極を有する電子素子を基板の一面上に搭載し、基板に対向する電子素子の一面の第1の電極を基板に電気的に接続し、電子素子の他面の電極は、当該他面上に貼り付けられた金属製の配線部を介して、基板の一面に電気的に接続してなる電子装置において、電子素子の他面側から配線部を介して放熱するときに配線部上に設ける熱伝導性部材として、絶縁部の膜厚が薄くてもピンホールの発生を極力防止できる構成を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明においては、配線部(40)の上には、熱伝導性且つ電気伝導性を有する板状の熱伝導性部材(50)が貼り付けられており、熱伝導性部材(50)において配線部(40)に貼り付けられている貼り付け面には、当該貼り付け面から熱伝導性部材(50)の板厚方向の一部を改質することにより形成された電気絶縁性の改質膜(51)が形成されており、この改質膜(51)が配線部(40)に直接接触していることを特徴とする。
【0013】
それによれば、熱伝導性部材(50)として、熱伝導性且つ電気伝導性を有する板状のものを採用し、その配線部(40)への貼り付け面側に、異物などが存在してもピンホールが発生しにくい改質により形成された改質膜(51)を絶縁部として形成しているから、電子素子(10)の他面側から配線部(40)を介して放熱するときに配線部(40)上に設ける熱伝導性部材(50)として、絶縁部の膜厚が薄くてもピンホールの発生を極力防止できる構成を実現することができる。
【0014】
ここで、請求項2に記載の発明のように、熱伝導性部材(50)は半導体よりなり、改質膜(51)は当該半導体を化学反応させて電気絶縁性としたものとすることができる。さらに、請求項3に記載の発明のように、半導体をシリコンとし、改質膜(51)を熱により酸化されたシリコンの熱酸化膜とすれば、改質膜(51)の形成を容易に行うことが可能となる。
【0015】
また、請求項4に記載の発明のように、配線部(40)を、電子素子(10)の他面よりはみ出させるとともに、このはみ出し部を、基板(20)の一面に対向させ、はみ出し部とこれに対向する基板(20)の一面との間に、金属バンプ(41)を介在させ、配線部(40)と基板(20)とを、金属バンプ(41)を介して電気的に接続するようにしてもよい。
【0016】
また、請求項5に記載の発明のように、配線部(40)を、電子素子(10)の他面よりはみ出させるとともに、このはみ出し部を、基板(20)の一面に対向させ、熱伝導性部材(50)の貼り付け面のうちはみ出し部に位置する部位を、基板(20)の一面に向かって突出した突起部(42)とすることによって、はみ出し部とこれに対向する基板(20)の一面とを接触させて電気的に接続するようにしてもよい。それによれば、上記金属バンプを用いなくても、配線部(40)と基板(20)との電気的接続を行うことができる。
【0017】
また、請求項6に記載の発明のように、配線部(40)を、改質膜(51)の表面に成膜されたものにすれば、改質膜(51)と配線部(40)との直接接触を確実に実現することができる。
【0018】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電子装置を示す概略断面図である。
【図2】第1実施形態に係る電子装置の製造方法を示す工程図である。
【図3】図2に続く製造方法を示す工程図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る電子装置の製造方法を示す工程図である。
【図5】図4に続く製造方法を示す工程図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る電子装置を示す概略断面図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係る電子装置の製造方法におけるダイシングカット前のワークを示す図であり、(a)は概略断面図、(b)は概略平面図である。
【図8】第4実施形態に係る電子装置の製造方法を示す工程図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係る電子装置の製造方法を示す工程図である。
【図10】図10に続く製造方法を示す工程図である。
【図11】本発明の第6実施形態に係る電子装置の製造方法におけるダイシングカット前のワークを示す図であり、(a)は概略断面図、(b)は概略平面図である。
【図12】第6実施形態に係る電子装置の製造方法を示す工程図である。
【図13】図12に続く製造方法を示す工程図である。
【図14】図12、図13における各ワークの平面構成を示す図である。
【図15】本発明の第7実施形態に係る電子装置の製造方法を示す工程図である。
【図16】本発明の第8実施形態に係る電子装置の製造方法を示す工程図である。
【図17】本発明の第9実施形態に係る電子装置の製造方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る電子装置の概略断面構成を示す図である。本実施形態の電子装置は、大きくは、表裏両面に電極11、12、13を有する電子素子10が基板20上に搭載され、当該両面の電極11〜13と基板20とが電気的接続されてなるものである。
【0022】
この電子素子10としては、表裏面のうち基板20に対向する一面に第1の電極11、12、当該一面とは反対側の他面に第2の電極13を有するものであればよい。具体的には、電子素子10は、表裏面の方向すなわち素子の厚さ方向に電流を流すことができるパワー素子であり、パワーMOS素子やIGBTなどが挙げられる。
【0023】
本実施形態では、電子素子10はパワーMOS素子10として構成されている。このパワーMOS素子10においては、基板20に対向する一面に第1の電極としてのゲート端子11およびソース端子12、他面に第2の電極としてのドレイン端子13を有する。パワーMOS素子10はシリコン半導体チップよりなり、上記各電極11〜13はアルミニウムを主体として表面に金がメッキされた一般的なものである。
【0024】
基板20は、一般的なプリント基板やセラミック基板などの配線基板であり、パワーMOS素子10が搭載されている一面には、基板配線21が設けられている。この基板配線21は、たとえば銅や銀などよりなる。
【0025】
そして、図1に示されるように、パワーMOS素子10の一面と基板20の前記一面とが対向した状態で、パワーMOS素子10は、基板20の一面上に搭載されている。ここで、パワーMOS素子10の一面のゲート端子11およびソース端子12は、接続部材30を介して基板配線21に電気的に接続されている。
【0026】
この接続部材30は、はんだや銀ペーストなどの導電性接着剤よりなる一般的なものであり、これにより、パワーMOS素子10と基板20の基板配線21とは電気的・機械的に接続されている。
【0027】
また、パワーMOS素子10の他面上には、配線部としてのドレイン配線40が設けられている。このドレイン配線40は、銅などの金属よりなるもので、パワーMOS素子10の他面に貼り付けられている。具体的には、ドレイン配線40は、パワーMOS素子10の他面のドレイン端子13に対して接続部材30を介して電気的に接続されている。
【0028】
また、このドレイン配線40は、パワーMOS素子10の他面よりはみ出しており、このはみ出し部は、基板20の一面に対向している。つまり、配線部としてのドレイン配線40には、パワーMOS素子10の他面に貼り付けられている部位と、当該他面に貼り付けられずに当該他面から基板20の一面に対向するようにはみ出している部位とがある。
【0029】
そして、図1に示されるように、このドレイン配線40のはみ出し部とこれに対向する基板20の一面との間には、銅などよりなる金属バンプ41が介在している。ここで、ドレイン配線40のはみ出し部と金属バンプ41とは、直接接触するか、もしくは、はんだなどにより電気的に接続されている。
【0030】
また、金属バンプ41は、基板20の基板配線21と上記接続部材30を介して電気的に接続されている。こうして、ドレイン配線40と基板20の一面とは金属バンプ41を介して電気的に接続され、結果的に、ドレイン配線40によってパワーMOS素子10のドレイン端子13と基板20とが電気的に接続されている。そして、パワーMOS素子10の他面からの電流をドレイン配線40、金属バンプ41を介して基板配線21に流すことが可能となっている。
【0031】
また、本実施形態の電子装置では、ドレイン配線40の上には、板状の熱伝導性部材50が貼り付けられている。この熱伝導性部材50は、熱伝導性且つ電気伝導性を有するものであり、具体的には、半導体や金属などよりなる。ここでは、熱伝導性部材50は、半導体としてのシリコンよりなる。
【0032】
そして、この熱伝導性部材50においてドレイン配線40に貼り付けられている面である貼り付け面には、電気絶縁性の改質膜51が形成されている。この改質膜51は、熱伝導性部材50を構成する半導体などの材料を化学反応させて組成を変化させたもの、すなわち改質したものであり、当該貼り付け面から熱伝導性部材50(図1中の上下方向)の板厚方向の一部にわたって形成されている。
【0033】
このような改質により形成された改質膜51は、蒸着やCVDなどの成膜により形成される絶縁膜とは異なり、異物などが存在してもピンホールが発生しにくい膜である。本実施形態では、改質膜51は熱により酸化された熱酸化膜、すなわち熱酸化されたSiO2である。
【0034】
そして、この改質膜51は、ドレイン配線40の表面に直接接触している。具体的には、ドレイン配線40は、改質膜51の表面に、銅などの材料を用いて蒸着、スパッタ、メッキなどにより成膜されたものである。
【0035】
そして、ドレイン配線40と改質膜51との直接接触により、これら両者40、51は熱的に接続されており、その結果、パワーMOS素子10の他面と熱伝導性部材50との熱的接続が実現されている。
【0036】
また、図1に示されるように、熱伝導性部材50の上には、放熱シート60を介してヒートシンク70が設けられている。放熱シート60は、たとえばシリコーン樹脂にグラファイト粒子を混合してなる放熱性に優れたシートであり、熱伝導性部材50とヒートシンク70との密着性を確保し、これら両者を熱的に接続している。また、ヒートシンク70は、銅やアルミニウムなどの一般的なものであるが、これら金属などよりなる筺体であってもよい。
【0037】
このように、本実施形態の電子装置においては、パワーMOS素子10の表裏両面の電極11〜13が基板20と電気的に接続されるとともに、パワーMOS素子10の一面側からは基板20へ放熱され、一方、当該素子10の他面側からは、ドレイン配線40、熱伝導性部材50、放熱シート60を介して、ヒートシンク70へ放熱される放熱経路が形成されている。
【0038】
次に、本第1実施形態の電子装置の製造方法について、図2および図3を参照して述べる。図2は本電子装置の製造方法を示す工程図であり、図3は図2に続く製造方法を示す工程図である。これら図2および図3では、上記図1に対応した断面にて各ワークを示してある。
【0039】
まず、シリコンウェハとしての熱伝導性部材50を準備し(図2(a)参照)、その表面に熱酸化膜としての改質膜51を形成する(図2(b)参照)。さらに、改質膜51の上に金属膜としてのドレイン配線40を、蒸着やスパッタ、メッキなどにより成膜する(図2(c)参照)。
【0040】
次に、ドレイン配線40のうち金属バンプ41を形成しない部位をレジストK1で覆い(図2(d)参照)、電気メッキ法などにより、レジストK1の開口部に金属バンプ41を形成する(図2(e)参照)。
【0041】
その後、レジストK1を除去し(図3(a)参照)、金属バンプ41と金属バンプ41との間のドレイン配線40上に、接続部材30を介して、パワーMOS素子10を搭載し、接続する(図3(b)、(c)参照)。そして、このウェハ状態の完成品を、図3(d)中の破線に示すダイシングラインDLにてダイシングカットすることにより、個片化する。
【0042】
その後は、個片化されたワークを、接続部材30を介して基板20の一面上に搭載し、固定するとともに、熱伝導性部材50の上に放熱シート60を介してヒートシンク70を取り付ける。こうして、上記図1に示される本実施形態の電子装置ができあがる。
【0043】
ところで、本実施形態によれば、熱伝導性部材50として、熱伝導性且つ電気伝導性を有する板状のものを採用し、そのドレイン配線40への貼り付け面側に、異物などが存在してもピンホールが発生しにくい改質により形成された改質膜51を絶縁部として形成している。そのため、パワーMOS素子10の他面側からドレイン配線40を介して放熱するときにドレイン配線40上に設ける熱伝導性部材50として、絶縁部の膜厚が薄くてもピンホールの発生を極力防止できる構成が実現される。
【0044】
なお、本実施形態においては、パワーMOS素子10とドレイン配線40および基板配線21とを接続する上記接続部材30としては、はんだや導電性接着剤に限らず、たとえば、金属ナノ粒子を用いてもよい。さらに、上記図1に示される電子装置において、接続部材30を省略して、各部間を直接接合してもよい。
【0045】
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態に係る電子装置の製造方法を示す工程図であり、図5は、図4に続く製造方法を示す工程図であり、これら図4および図5では、各ワークの概略断面を示してある。本実施形態では、上記第1実施形態に比べて、ドレイン配線40と基板20の一面の基板配線21とを接続する構成が相違するものであり、ここでは、その相違点を中心に述べることとする。
【0046】
図5(d)に示されるように、本実施形態は、配線部であるドレイン配線40のはみ出し部と基板配線21との電気的接続を、上記金属バンプ41に替えて、熱伝導性部材50に形成した突起部42により行うようにしたものである。
【0047】
本実施形態においても、ドレイン配線40のうちパワーMOS素子10の他面よりはみ出すはみ出し部は、基板20の一面に対向している。ここで、熱伝導性部材50の貼り付け面のうちはみ出し部に位置する部位が、基板20の一面に向かって突出した突起部42とされている。
【0048】
それによって、図示しないが、この突起部42に位置するドレイン配線40のはみ出し部は、これに対向する基板20の一面の基板配線21に接触して電気的に接続される。この場合も、上記図1と同様に、突起部42に位置するドレイン配線40のはみ出し部と基板配線21とは、突起部42の先端とこれに対向する基板配線21との間に上記接続部材を介在させて接触し、電気的に接続される。
【0049】
本実施形態の電子装置の製造方法について、図4および図5を参照して述べる。まず、シリコンウェハとしての熱伝導性部材50を準備し(図4(a)参照)、突起部42となる部分に通常のホト工程によってレジストK1を成形し(図4(b)参照)、次に、Siの異方性エッチングによって突起部42だけ残してSiを薄くエッチングする(図4(c)参照)。
【0050】
その後、レジストK1を除去し(図4(d)参照)、続いてSiの熱酸化により改質膜51を形成する(図4(e)参照)。そして、改質膜51の上に金属膜としてのドレイン配線40を成膜する(図5(a)参照)。
【0051】
その後、突起部42と突起部42との間のドレイン配線40上に、接続部材30を介して、パワーMOS素子10を搭載し、接続する(図5(b)、(c)参照)。そして、このウェハ状態の完成品を、図5(d)中の破線に示すダイシングラインDLにてダイシングカットすることにより、個片化する。
【0052】
その後は、個片化されたワークを、接続部材30を介して基板20の一面上に搭載し、固定するとともに、熱伝導性部材50の上に放熱シート60を介してヒートシンク70を取り付ける。こうして、本実施形態の電子装置ができあがる。そして、本実施形態の電子装置によっても、改質膜51を有する熱伝導性部材50によって、絶縁部の膜厚が薄くてもピンホールの発生を極力防止できる構成が実現される。
【0053】
(第3実施形態)
図6は、本発明の第3実施形態に係る電子装置の概略断面構成を示す図である。本実施形態は、上記第1実施形態に比べて、配線部であるドレイン配線40と基板20の一面の基板配線21とを接続する構成が相違するものであり、ここでは、その相違点を中心に述べることとする。
【0054】
図6に示されるように、本実施形態では、上記金属バンプや突起部を形成する替わりにパワーMOS素子10の一部に厚さ方向に貫通する貫通電極43を設けておく。この貫通電極43は一般的なものであり、貫通電極43とドレイン配線40および基板配線21との電気的接続は、上記接続部材30を介して行われる。
【0055】
それにより、パワーMOS素子10の他面のドレイン端子13は、ドレイン配線40、貫通電極43を介して基板配線21と電気的に接続された状態となっている。そして、本実施形態によっても、改質膜51を有する熱伝導性部材50によって、絶縁部の膜厚が薄くてもピンホールの発生を極力防止できる構成が実現される。
【0056】
(第4実施形態)
図7は、本発明の第4実施形態に係る電子装置の製造方法におけるダイシングカット前のワークを示す図であり、(a)は概略断面図、(b)は概略平面図である。上記各実施形態の電子装置では、電子素子10は1個であったが、本実施形態の電子装置は、電子素子10、10aを2個備えるものである。
【0057】
具体的には、本実施形態の電子素子10および10aは、パワーMOS素子10とダイオード10aである。電子素子としてのダイオード10aは、一面に第1の電極11a、他面に第2の電極13aを有する。これらの組合せは、たとえばモータを駆動させる回路を構成するものとして使用できる。
【0058】
本実施形態の電子装置の製造方法について、図8を参照して述べる。図8は、本製造方法を示す工程図であり、各ワークの概略断面を示してある。ここでは、パワーMOS素子10およびダイオード10aは予め研磨されて概略同じ厚さとされている。
【0059】
まず、これらパワーMOS素子10およびダイオード10aを、その第1の電極11、12、11a側にて粘着テープK3を介して保持基板K2上に搭載し、粘着テープK3によって固定する(図8(a)参照)。このとき、各電子素子10、10aは、ウェハ状態の熱伝導性部材50に搭載するときの位置に対応する位置に配置する。
【0060】
一方で、表面に改質膜51、ドレイン配線40および金属バンプ41が形成されたシリコンウェハとしての熱伝導性部材50を用意する。このような熱伝導性部材50は、上記図2に示した製造方法と同様の要領により作製される。
【0061】
そして、パワーMOS素子10およびダイオード10aの各第2の電極13、13aに接続部材30を配置し、これに上記熱伝導性部材50を重ね合わせ、パワーMOS素子10およびダイオード10aの各第2の電極13、13aとドレイン配線40とを電気的に接続する(図8(b)、(c)参照)。
【0062】
この接続の際には、接続部材30を多少厚めに供給しておき、接続後には、パワーMOS素子10、ダイオード10aの各第1の電極11、12、11aの表面および金属バンプ41の下面が同一平面に位置して揃うようにする。余った接続部材30は、電子素子10、10aからはみ出るようにしておく。
【0063】
その後は、図8(c)に示されるワークにおいて、粘着テープK3および保持基板K2を除去すると、上記図7に示される状態となる。そして、このものを、図7中の破線に示すダイシングラインDLにてダイシングカットすることにより、個片化する。
【0064】
その後は、個片化されたワークを、接続部材30を介して基板20の一面上に搭載し、固定するとともに、上記同様に、熱伝導性部材50の上に放熱シート60を介してヒートシンク70を取り付ければ、本実施形態の電子装置ができあがる。なお、本実施形態において、上記第2実施形態の突起部や第3実施形態の貫通電極を採用してもよい。
【0065】
(第5実施形態)
図9は、本発明の第5実施形態に係る電子装置の製造方法を示す工程図であり、図10は、図9に続く製造方法を示す工程図である。これら図9、図10では、各ワークの概略断面を示してある。
【0066】
本実施形態は、上記第4実施形態と同様に、2個の電子素子10、10aを備えるものであるが、製造方法が相違するものであり、ここでは、その相違点を中心に述べることとする。
【0067】
まず、パワーMOS素子10およびダイオード10aを、その第1の電極11、12、11a側にて粘着テープK3を介して保持基板K2上に搭載し、粘着テープK3によって固定する(図9(a)参照)。また、柱状に成形された金属バンプ41も同様に、粘着テープK3によって保持基板K2上に固定する。このとき、各電子素子10、10aおよび金属バンプ41は、ウェハ状態の熱伝導性部材50に搭載するときの位置に対応する位置に配置する。
【0068】
次に、パワーMOS素子10、ダイオード10aの他面側および金属バンプ41を研磨し、これらの高さを揃える(図9(b)参照)。その後、研磨されたパワーMOS素子10、ダイオード10aの他面に第2の電極13、13aを形成するとともに、金属バンプ41の研磨された面にアルミニウムなどよりなる電極41aを形成する(図9(c)参照)。これら各電極13、13a、41aは、通常の成膜およびホト、エッチング工程により形成する。
【0069】
一方で、表面に改質膜51およびドレイン配線40が形成されたシリコンウェハとしての熱伝導性部材50を用意する。そして、パワーMOS素子10およびダイオード10aの各第2の電極13、13a、および金属バンプ41の電極41aに接続部材30を配置し、これら電極と熱伝導性部材50のドレイン配線40とを電気的に接続する(図9(d)、図10(a)参照)。
【0070】
その後、粘着テープK3および保持基板K2を除去し(図10(b)参照)、次に、図10(c)中の破線に示すダイシングラインDLにてダイシングカットすることにより、ウェハを個片化する。
【0071】
その後は、個片化されたワークを、接続部材30を介して基板20の一面上に搭載し、固定するとともに、上記同様に、熱伝導性部材50の上に放熱シート60を介してヒートシンク70を取り付ければ、本実施形態の電子装置ができあがる。なお、本実施形態においても、上記第2実施形態の突起部や第3実施形態の貫通電極を採用してもよい。
【0072】
(第6実施形態)
図11は、本発明の第6実施形態に係る電子装置の製造方法におけるダイシングカット前のワークを示す図であり、(a)は概略断面図、(b)は概略平面図である。本実施形態では、電子装置に4個の電子素子10を設けたものである。
【0073】
たとえばパワーMOS素子10を4個使用した回路はブリッジ回路と呼ばれ、モータの正逆回転を制御する回路に使用される。その場合には、図11に示されるように、ドレイン配線40をパターニングする必要がある。図11では、1個のパワーMOS素子10毎にドレイン配線40が分離されている。
【0074】
本実施形態の電子装置の製造方法について、図12、図13、図14を参照して述べる。図12(a)〜(e)は本製造方法を示す工程図、図13(a)〜(d)は図13に続く製造方法を示す工程図であり、これら両図においては、各ワークの概略断面を示してある。また、図14は図12、図13における各ワークの平面構成を示す図であり、図14(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)は、それぞれ図12(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、図13(a)、(b)、(c)、(d)に対応している。
【0075】
まず、シリコンウェハとしての熱伝導性部材50を準備し(図12(a)、図14(a)参照)、その表面に熱酸化膜としての改質膜51を形成する(図12(b)、図14(b)参照)。さらに、改質膜51の上に金属膜としてのドレイン配線40を、蒸着やスパッタ、メッキなどにより成膜する(図12(c)、図14(c)参照)。
【0076】
次に、ドレイン配線40として必要な部分にレジストK1を、ホト工程などにより形成する(図12(d)、図14(d)参照)。そして、ドレイン配線40をエッチングし(図12(e)、図14(e)参照)、続いてレジストK1を剥離する(図13(a)、図14(f)参照)。
【0077】
次に、ドレイン配線40のうち金属バンプ41を形成しない場所をレジストK1で覆い(図13(b)、図14(g)参照)、続いて、メッキ法などによって、レジストK1の開口部に金属バンプ41を形成する(図13(c)、図14(h)参照)。そして、レジストK1を除去する(図13(d)、図14(i)参照)。
【0078】
その後は、ドレイン配線40上に、接続部材30を介して、各パワーMOS素子10を搭載し、接続する(図11参照)。そして、このウェハ状態の完成品を、図11中の破線に示すダイシングラインDLにてダイシングカットすることにより、個片化する。
【0079】
その後は、個片化されたワークを、接続部材30を介して基板20の一面上に搭載し、固定するとともに、熱伝導性部材50の上に放熱シート60を介してヒートシンク70を取り付ける。こうして、本実施形態の電子装置ができあがる。なお、本実施形態においても、上記第2実施形態の突起部や第3実施形態の貫通電極を採用してもよい。
【0080】
(第7実施形態)
図15は、本発明の第7実施形態に係る電子装置の製造方法を示す工程図である。本実施形態および以下の第8および第9実施形態の製造方法は、上記各実施形態のうち、ドレイン配線40と基板20の一面の基板配線21とを金属バンプ41を介して接続するものについて、適用されるものであり、ダイシングカットされたワークを基板20の一面に搭載する工程に関するものである。
【0081】
まず、金属バンプ41、ドレイン配線40、熱伝導性部材50およびパワーMOS素子10が一体に組み付けられたダイシング後のワークを用意する。このワークは、たとえば上記第1実施形態の製造方法により作製される。
【0082】
そして、図15に示されるように、基板20の一面にて基板配線21の上に印刷法などによって接続部材30を配置し、その上に、上記ワークを搭載し、固定する。それにより、上記図1に示されるものと同様の電子装置ができあがる。
【0083】
(第8実施形態)
図16は、本発明の第8実施形態に係る電子装置の製造方法を示す工程図である。ここでは、まず、ダイシングカットされたパワーMOS素子10および柱状に成形された金属バンプ41を用意し、これらを、接続部材30を介して基板20の一面上に搭載・固定する(図16(a)参照)。
【0084】
その上に、改質膜51およびドレイン配線40が形成されダイシングカットされた熱伝導性部材50を、ドレイン配線40を下に向けて搭載し、接続部材30を介して固定する(図16(b)参照)。これにより、本実施形態によっても、上記図1に示されるものと同様の電子装置ができあがる。
【0085】
(第9実施形態)
図17は、本発明の第9実施形態に係る電子装置の製造方法を示す工程図である。ここでは、まず、ダイシングカットされたパワーMOS素子10を用意し、これを、接続部材30を介して基板20の一面上に搭載・固定する(図17(a)参照)。
【0086】
その上に、金属バンプ41が接合されるとともに改質膜51およびドレイン配線40が形成されダイシングカットされた熱伝導性部材50を、ドレイン配線40を下に向けて搭載し、接続部材30を介して固定する(図17(b)参照)。これにより、本実施形態によっても、上記図1に示されるものと同様の電子装置ができあがる。
【0087】
なお、個片化されたパワーMOS素子10、改質膜51およびドレイン配線40が形成され個片化された熱伝導性部材50、および、金属バンプの基板20への搭載順序は、上記図15〜図17に示される製造方法に限定するものではなく、それ以外にも適宜変更してもよい。
【0088】
(他の実施形態)
熱伝導性部材50としては、熱伝導性材料自体を改質して上記貼り付け面側に絶縁層としての改質膜51を形成できるものであればよい。たとえば、熱伝導性部材50がシリコン半導体よりなる場合に、アンモニア(NH3)などを用いたSiの窒化膜を改質膜51として活用してもよい。
【0089】
また、Si以外の材料を改質して絶縁膜とし、活用してもよく、たとえば、アルミニウムよりなる熱伝導性部材50を陽極酸化法により酸化して、陽極酸化膜を改質膜51として活用してもよい。
【符号の説明】
【0090】
10 電子素子としてのパワーMOS素子
11 第1の電極としてのゲート端子
12 第1の電極としてのソース端子
13 第2の電極としてのドレイン端子
20 基板
40 配線部としてのドレイン配線
41 金属バンプ
42 突起部
50 熱伝導性部材
51 改質膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、表裏両面に電極を有する電子素子が基板上に搭載され、当該両面の電極と基板とが電気的接続されてなる電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表裏両面に電極を有する電子素子としては、パワーMOSFETやIGBTなどのパワー半導体素子が挙げられ、これらはインバータや電力スイッチなどのパワーエレクトロニクス分野に活用されている。一般に、大電流を流すことができるパワー素子では、その表面から裏面、あるいは裏面から表面に電流を流す構造を採用している。
【0003】
従来より、このような構造を有する電子装置としては、表裏両面に電極を有する電子素子、すなわち、一面に第1の電極、当該一面とは反対側の他面に第2の電極を有する電子素子を、基板の一面上に搭載したものが提案されている(たとえば、特許文献1〜3参照)。
【0004】
ここで、電子素子の両面の電極と基板の一面とを電気的に接続する構成としては、電子素子の一面と基板の一面とを対向させた状態で、第1の電極を基板に電気的に接続し、電子素子の他面に、金属製の部材よりなる配線部を貼り付け、この配線部を当該他面より基板の一面まで延ばして基板の一面に接続するようにしている(特許文献4参照)。
【0005】
これにより、電子素子の他面側における第2の電極については、配線部を介して基板の一面に電気的に接続される。そして、電子素子の他面からの電流を基板に流すことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−332196号公報
【特許文献2】特表2003−530695号公報
【特許文献3】特開2007−5590号公報
【特許文献4】特表2004−500720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の構成では、電子素子の両面の電極と基板の一面とが電気的に接続されるものの、基板とは反対側である電子素子の他面側の電位が露出した構造になるため、配線部に導電性のものが触れると、リークやショートの恐れがある。
【0008】
また、基板とは反対側である電子素子の他面側に放熱用のヒートシンクを接続し、当該他面側から放熱を行う場合には、当該他面側の配線部とヒートシンクとの間に電気絶縁性材料よりなる熱伝導性部材を介在させる必要がある。これは、ヒートシンクとして使用される材料が主に金属であるためである。そして、この配線部上に設けられた熱伝導性部材を介して、電子素子の他面側から放熱がなされる。
【0009】
この熱伝導性部材としては、一般的にシリコーンシートなどが使用されるが、たとえば0.2mm以上と厚いものが使用されるため、放熱性の低下を招いてしまう。また、熱伝導性部材として、熱伝導性が樹脂よりも優れたセラミック基板を使用することも可能であるが、このセラミック基板を薄くすると割れやすくなるため、あまり薄くすることはできない。
【0010】
また、熱伝導性部材として、絶縁性のセラミック薄膜を形成することも考えられるが、蒸着やCVD(化学気相成長法)などの成膜では、均一でピンホールなどが発生しない膜を形成することが困難である。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、表裏両面に電極を有する電子素子を基板の一面上に搭載し、基板に対向する電子素子の一面の第1の電極を基板に電気的に接続し、電子素子の他面の電極は、当該他面上に貼り付けられた金属製の配線部を介して、基板の一面に電気的に接続してなる電子装置において、電子素子の他面側から配線部を介して放熱するときに配線部上に設ける熱伝導性部材として、絶縁部の膜厚が薄くてもピンホールの発生を極力防止できる構成を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明においては、配線部(40)の上には、熱伝導性且つ電気伝導性を有する板状の熱伝導性部材(50)が貼り付けられており、熱伝導性部材(50)において配線部(40)に貼り付けられている貼り付け面には、当該貼り付け面から熱伝導性部材(50)の板厚方向の一部を改質することにより形成された電気絶縁性の改質膜(51)が形成されており、この改質膜(51)が配線部(40)に直接接触していることを特徴とする。
【0013】
それによれば、熱伝導性部材(50)として、熱伝導性且つ電気伝導性を有する板状のものを採用し、その配線部(40)への貼り付け面側に、異物などが存在してもピンホールが発生しにくい改質により形成された改質膜(51)を絶縁部として形成しているから、電子素子(10)の他面側から配線部(40)を介して放熱するときに配線部(40)上に設ける熱伝導性部材(50)として、絶縁部の膜厚が薄くてもピンホールの発生を極力防止できる構成を実現することができる。
【0014】
ここで、請求項2に記載の発明のように、熱伝導性部材(50)は半導体よりなり、改質膜(51)は当該半導体を化学反応させて電気絶縁性としたものとすることができる。さらに、請求項3に記載の発明のように、半導体をシリコンとし、改質膜(51)を熱により酸化されたシリコンの熱酸化膜とすれば、改質膜(51)の形成を容易に行うことが可能となる。
【0015】
また、請求項4に記載の発明のように、配線部(40)を、電子素子(10)の他面よりはみ出させるとともに、このはみ出し部を、基板(20)の一面に対向させ、はみ出し部とこれに対向する基板(20)の一面との間に、金属バンプ(41)を介在させ、配線部(40)と基板(20)とを、金属バンプ(41)を介して電気的に接続するようにしてもよい。
【0016】
また、請求項5に記載の発明のように、配線部(40)を、電子素子(10)の他面よりはみ出させるとともに、このはみ出し部を、基板(20)の一面に対向させ、熱伝導性部材(50)の貼り付け面のうちはみ出し部に位置する部位を、基板(20)の一面に向かって突出した突起部(42)とすることによって、はみ出し部とこれに対向する基板(20)の一面とを接触させて電気的に接続するようにしてもよい。それによれば、上記金属バンプを用いなくても、配線部(40)と基板(20)との電気的接続を行うことができる。
【0017】
また、請求項6に記載の発明のように、配線部(40)を、改質膜(51)の表面に成膜されたものにすれば、改質膜(51)と配線部(40)との直接接触を確実に実現することができる。
【0018】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電子装置を示す概略断面図である。
【図2】第1実施形態に係る電子装置の製造方法を示す工程図である。
【図3】図2に続く製造方法を示す工程図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る電子装置の製造方法を示す工程図である。
【図5】図4に続く製造方法を示す工程図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る電子装置を示す概略断面図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係る電子装置の製造方法におけるダイシングカット前のワークを示す図であり、(a)は概略断面図、(b)は概略平面図である。
【図8】第4実施形態に係る電子装置の製造方法を示す工程図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係る電子装置の製造方法を示す工程図である。
【図10】図10に続く製造方法を示す工程図である。
【図11】本発明の第6実施形態に係る電子装置の製造方法におけるダイシングカット前のワークを示す図であり、(a)は概略断面図、(b)は概略平面図である。
【図12】第6実施形態に係る電子装置の製造方法を示す工程図である。
【図13】図12に続く製造方法を示す工程図である。
【図14】図12、図13における各ワークの平面構成を示す図である。
【図15】本発明の第7実施形態に係る電子装置の製造方法を示す工程図である。
【図16】本発明の第8実施形態に係る電子装置の製造方法を示す工程図である。
【図17】本発明の第9実施形態に係る電子装置の製造方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る電子装置の概略断面構成を示す図である。本実施形態の電子装置は、大きくは、表裏両面に電極11、12、13を有する電子素子10が基板20上に搭載され、当該両面の電極11〜13と基板20とが電気的接続されてなるものである。
【0022】
この電子素子10としては、表裏面のうち基板20に対向する一面に第1の電極11、12、当該一面とは反対側の他面に第2の電極13を有するものであればよい。具体的には、電子素子10は、表裏面の方向すなわち素子の厚さ方向に電流を流すことができるパワー素子であり、パワーMOS素子やIGBTなどが挙げられる。
【0023】
本実施形態では、電子素子10はパワーMOS素子10として構成されている。このパワーMOS素子10においては、基板20に対向する一面に第1の電極としてのゲート端子11およびソース端子12、他面に第2の電極としてのドレイン端子13を有する。パワーMOS素子10はシリコン半導体チップよりなり、上記各電極11〜13はアルミニウムを主体として表面に金がメッキされた一般的なものである。
【0024】
基板20は、一般的なプリント基板やセラミック基板などの配線基板であり、パワーMOS素子10が搭載されている一面には、基板配線21が設けられている。この基板配線21は、たとえば銅や銀などよりなる。
【0025】
そして、図1に示されるように、パワーMOS素子10の一面と基板20の前記一面とが対向した状態で、パワーMOS素子10は、基板20の一面上に搭載されている。ここで、パワーMOS素子10の一面のゲート端子11およびソース端子12は、接続部材30を介して基板配線21に電気的に接続されている。
【0026】
この接続部材30は、はんだや銀ペーストなどの導電性接着剤よりなる一般的なものであり、これにより、パワーMOS素子10と基板20の基板配線21とは電気的・機械的に接続されている。
【0027】
また、パワーMOS素子10の他面上には、配線部としてのドレイン配線40が設けられている。このドレイン配線40は、銅などの金属よりなるもので、パワーMOS素子10の他面に貼り付けられている。具体的には、ドレイン配線40は、パワーMOS素子10の他面のドレイン端子13に対して接続部材30を介して電気的に接続されている。
【0028】
また、このドレイン配線40は、パワーMOS素子10の他面よりはみ出しており、このはみ出し部は、基板20の一面に対向している。つまり、配線部としてのドレイン配線40には、パワーMOS素子10の他面に貼り付けられている部位と、当該他面に貼り付けられずに当該他面から基板20の一面に対向するようにはみ出している部位とがある。
【0029】
そして、図1に示されるように、このドレイン配線40のはみ出し部とこれに対向する基板20の一面との間には、銅などよりなる金属バンプ41が介在している。ここで、ドレイン配線40のはみ出し部と金属バンプ41とは、直接接触するか、もしくは、はんだなどにより電気的に接続されている。
【0030】
また、金属バンプ41は、基板20の基板配線21と上記接続部材30を介して電気的に接続されている。こうして、ドレイン配線40と基板20の一面とは金属バンプ41を介して電気的に接続され、結果的に、ドレイン配線40によってパワーMOS素子10のドレイン端子13と基板20とが電気的に接続されている。そして、パワーMOS素子10の他面からの電流をドレイン配線40、金属バンプ41を介して基板配線21に流すことが可能となっている。
【0031】
また、本実施形態の電子装置では、ドレイン配線40の上には、板状の熱伝導性部材50が貼り付けられている。この熱伝導性部材50は、熱伝導性且つ電気伝導性を有するものであり、具体的には、半導体や金属などよりなる。ここでは、熱伝導性部材50は、半導体としてのシリコンよりなる。
【0032】
そして、この熱伝導性部材50においてドレイン配線40に貼り付けられている面である貼り付け面には、電気絶縁性の改質膜51が形成されている。この改質膜51は、熱伝導性部材50を構成する半導体などの材料を化学反応させて組成を変化させたもの、すなわち改質したものであり、当該貼り付け面から熱伝導性部材50(図1中の上下方向)の板厚方向の一部にわたって形成されている。
【0033】
このような改質により形成された改質膜51は、蒸着やCVDなどの成膜により形成される絶縁膜とは異なり、異物などが存在してもピンホールが発生しにくい膜である。本実施形態では、改質膜51は熱により酸化された熱酸化膜、すなわち熱酸化されたSiO2である。
【0034】
そして、この改質膜51は、ドレイン配線40の表面に直接接触している。具体的には、ドレイン配線40は、改質膜51の表面に、銅などの材料を用いて蒸着、スパッタ、メッキなどにより成膜されたものである。
【0035】
そして、ドレイン配線40と改質膜51との直接接触により、これら両者40、51は熱的に接続されており、その結果、パワーMOS素子10の他面と熱伝導性部材50との熱的接続が実現されている。
【0036】
また、図1に示されるように、熱伝導性部材50の上には、放熱シート60を介してヒートシンク70が設けられている。放熱シート60は、たとえばシリコーン樹脂にグラファイト粒子を混合してなる放熱性に優れたシートであり、熱伝導性部材50とヒートシンク70との密着性を確保し、これら両者を熱的に接続している。また、ヒートシンク70は、銅やアルミニウムなどの一般的なものであるが、これら金属などよりなる筺体であってもよい。
【0037】
このように、本実施形態の電子装置においては、パワーMOS素子10の表裏両面の電極11〜13が基板20と電気的に接続されるとともに、パワーMOS素子10の一面側からは基板20へ放熱され、一方、当該素子10の他面側からは、ドレイン配線40、熱伝導性部材50、放熱シート60を介して、ヒートシンク70へ放熱される放熱経路が形成されている。
【0038】
次に、本第1実施形態の電子装置の製造方法について、図2および図3を参照して述べる。図2は本電子装置の製造方法を示す工程図であり、図3は図2に続く製造方法を示す工程図である。これら図2および図3では、上記図1に対応した断面にて各ワークを示してある。
【0039】
まず、シリコンウェハとしての熱伝導性部材50を準備し(図2(a)参照)、その表面に熱酸化膜としての改質膜51を形成する(図2(b)参照)。さらに、改質膜51の上に金属膜としてのドレイン配線40を、蒸着やスパッタ、メッキなどにより成膜する(図2(c)参照)。
【0040】
次に、ドレイン配線40のうち金属バンプ41を形成しない部位をレジストK1で覆い(図2(d)参照)、電気メッキ法などにより、レジストK1の開口部に金属バンプ41を形成する(図2(e)参照)。
【0041】
その後、レジストK1を除去し(図3(a)参照)、金属バンプ41と金属バンプ41との間のドレイン配線40上に、接続部材30を介して、パワーMOS素子10を搭載し、接続する(図3(b)、(c)参照)。そして、このウェハ状態の完成品を、図3(d)中の破線に示すダイシングラインDLにてダイシングカットすることにより、個片化する。
【0042】
その後は、個片化されたワークを、接続部材30を介して基板20の一面上に搭載し、固定するとともに、熱伝導性部材50の上に放熱シート60を介してヒートシンク70を取り付ける。こうして、上記図1に示される本実施形態の電子装置ができあがる。
【0043】
ところで、本実施形態によれば、熱伝導性部材50として、熱伝導性且つ電気伝導性を有する板状のものを採用し、そのドレイン配線40への貼り付け面側に、異物などが存在してもピンホールが発生しにくい改質により形成された改質膜51を絶縁部として形成している。そのため、パワーMOS素子10の他面側からドレイン配線40を介して放熱するときにドレイン配線40上に設ける熱伝導性部材50として、絶縁部の膜厚が薄くてもピンホールの発生を極力防止できる構成が実現される。
【0044】
なお、本実施形態においては、パワーMOS素子10とドレイン配線40および基板配線21とを接続する上記接続部材30としては、はんだや導電性接着剤に限らず、たとえば、金属ナノ粒子を用いてもよい。さらに、上記図1に示される電子装置において、接続部材30を省略して、各部間を直接接合してもよい。
【0045】
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態に係る電子装置の製造方法を示す工程図であり、図5は、図4に続く製造方法を示す工程図であり、これら図4および図5では、各ワークの概略断面を示してある。本実施形態では、上記第1実施形態に比べて、ドレイン配線40と基板20の一面の基板配線21とを接続する構成が相違するものであり、ここでは、その相違点を中心に述べることとする。
【0046】
図5(d)に示されるように、本実施形態は、配線部であるドレイン配線40のはみ出し部と基板配線21との電気的接続を、上記金属バンプ41に替えて、熱伝導性部材50に形成した突起部42により行うようにしたものである。
【0047】
本実施形態においても、ドレイン配線40のうちパワーMOS素子10の他面よりはみ出すはみ出し部は、基板20の一面に対向している。ここで、熱伝導性部材50の貼り付け面のうちはみ出し部に位置する部位が、基板20の一面に向かって突出した突起部42とされている。
【0048】
それによって、図示しないが、この突起部42に位置するドレイン配線40のはみ出し部は、これに対向する基板20の一面の基板配線21に接触して電気的に接続される。この場合も、上記図1と同様に、突起部42に位置するドレイン配線40のはみ出し部と基板配線21とは、突起部42の先端とこれに対向する基板配線21との間に上記接続部材を介在させて接触し、電気的に接続される。
【0049】
本実施形態の電子装置の製造方法について、図4および図5を参照して述べる。まず、シリコンウェハとしての熱伝導性部材50を準備し(図4(a)参照)、突起部42となる部分に通常のホト工程によってレジストK1を成形し(図4(b)参照)、次に、Siの異方性エッチングによって突起部42だけ残してSiを薄くエッチングする(図4(c)参照)。
【0050】
その後、レジストK1を除去し(図4(d)参照)、続いてSiの熱酸化により改質膜51を形成する(図4(e)参照)。そして、改質膜51の上に金属膜としてのドレイン配線40を成膜する(図5(a)参照)。
【0051】
その後、突起部42と突起部42との間のドレイン配線40上に、接続部材30を介して、パワーMOS素子10を搭載し、接続する(図5(b)、(c)参照)。そして、このウェハ状態の完成品を、図5(d)中の破線に示すダイシングラインDLにてダイシングカットすることにより、個片化する。
【0052】
その後は、個片化されたワークを、接続部材30を介して基板20の一面上に搭載し、固定するとともに、熱伝導性部材50の上に放熱シート60を介してヒートシンク70を取り付ける。こうして、本実施形態の電子装置ができあがる。そして、本実施形態の電子装置によっても、改質膜51を有する熱伝導性部材50によって、絶縁部の膜厚が薄くてもピンホールの発生を極力防止できる構成が実現される。
【0053】
(第3実施形態)
図6は、本発明の第3実施形態に係る電子装置の概略断面構成を示す図である。本実施形態は、上記第1実施形態に比べて、配線部であるドレイン配線40と基板20の一面の基板配線21とを接続する構成が相違するものであり、ここでは、その相違点を中心に述べることとする。
【0054】
図6に示されるように、本実施形態では、上記金属バンプや突起部を形成する替わりにパワーMOS素子10の一部に厚さ方向に貫通する貫通電極43を設けておく。この貫通電極43は一般的なものであり、貫通電極43とドレイン配線40および基板配線21との電気的接続は、上記接続部材30を介して行われる。
【0055】
それにより、パワーMOS素子10の他面のドレイン端子13は、ドレイン配線40、貫通電極43を介して基板配線21と電気的に接続された状態となっている。そして、本実施形態によっても、改質膜51を有する熱伝導性部材50によって、絶縁部の膜厚が薄くてもピンホールの発生を極力防止できる構成が実現される。
【0056】
(第4実施形態)
図7は、本発明の第4実施形態に係る電子装置の製造方法におけるダイシングカット前のワークを示す図であり、(a)は概略断面図、(b)は概略平面図である。上記各実施形態の電子装置では、電子素子10は1個であったが、本実施形態の電子装置は、電子素子10、10aを2個備えるものである。
【0057】
具体的には、本実施形態の電子素子10および10aは、パワーMOS素子10とダイオード10aである。電子素子としてのダイオード10aは、一面に第1の電極11a、他面に第2の電極13aを有する。これらの組合せは、たとえばモータを駆動させる回路を構成するものとして使用できる。
【0058】
本実施形態の電子装置の製造方法について、図8を参照して述べる。図8は、本製造方法を示す工程図であり、各ワークの概略断面を示してある。ここでは、パワーMOS素子10およびダイオード10aは予め研磨されて概略同じ厚さとされている。
【0059】
まず、これらパワーMOS素子10およびダイオード10aを、その第1の電極11、12、11a側にて粘着テープK3を介して保持基板K2上に搭載し、粘着テープK3によって固定する(図8(a)参照)。このとき、各電子素子10、10aは、ウェハ状態の熱伝導性部材50に搭載するときの位置に対応する位置に配置する。
【0060】
一方で、表面に改質膜51、ドレイン配線40および金属バンプ41が形成されたシリコンウェハとしての熱伝導性部材50を用意する。このような熱伝導性部材50は、上記図2に示した製造方法と同様の要領により作製される。
【0061】
そして、パワーMOS素子10およびダイオード10aの各第2の電極13、13aに接続部材30を配置し、これに上記熱伝導性部材50を重ね合わせ、パワーMOS素子10およびダイオード10aの各第2の電極13、13aとドレイン配線40とを電気的に接続する(図8(b)、(c)参照)。
【0062】
この接続の際には、接続部材30を多少厚めに供給しておき、接続後には、パワーMOS素子10、ダイオード10aの各第1の電極11、12、11aの表面および金属バンプ41の下面が同一平面に位置して揃うようにする。余った接続部材30は、電子素子10、10aからはみ出るようにしておく。
【0063】
その後は、図8(c)に示されるワークにおいて、粘着テープK3および保持基板K2を除去すると、上記図7に示される状態となる。そして、このものを、図7中の破線に示すダイシングラインDLにてダイシングカットすることにより、個片化する。
【0064】
その後は、個片化されたワークを、接続部材30を介して基板20の一面上に搭載し、固定するとともに、上記同様に、熱伝導性部材50の上に放熱シート60を介してヒートシンク70を取り付ければ、本実施形態の電子装置ができあがる。なお、本実施形態において、上記第2実施形態の突起部や第3実施形態の貫通電極を採用してもよい。
【0065】
(第5実施形態)
図9は、本発明の第5実施形態に係る電子装置の製造方法を示す工程図であり、図10は、図9に続く製造方法を示す工程図である。これら図9、図10では、各ワークの概略断面を示してある。
【0066】
本実施形態は、上記第4実施形態と同様に、2個の電子素子10、10aを備えるものであるが、製造方法が相違するものであり、ここでは、その相違点を中心に述べることとする。
【0067】
まず、パワーMOS素子10およびダイオード10aを、その第1の電極11、12、11a側にて粘着テープK3を介して保持基板K2上に搭載し、粘着テープK3によって固定する(図9(a)参照)。また、柱状に成形された金属バンプ41も同様に、粘着テープK3によって保持基板K2上に固定する。このとき、各電子素子10、10aおよび金属バンプ41は、ウェハ状態の熱伝導性部材50に搭載するときの位置に対応する位置に配置する。
【0068】
次に、パワーMOS素子10、ダイオード10aの他面側および金属バンプ41を研磨し、これらの高さを揃える(図9(b)参照)。その後、研磨されたパワーMOS素子10、ダイオード10aの他面に第2の電極13、13aを形成するとともに、金属バンプ41の研磨された面にアルミニウムなどよりなる電極41aを形成する(図9(c)参照)。これら各電極13、13a、41aは、通常の成膜およびホト、エッチング工程により形成する。
【0069】
一方で、表面に改質膜51およびドレイン配線40が形成されたシリコンウェハとしての熱伝導性部材50を用意する。そして、パワーMOS素子10およびダイオード10aの各第2の電極13、13a、および金属バンプ41の電極41aに接続部材30を配置し、これら電極と熱伝導性部材50のドレイン配線40とを電気的に接続する(図9(d)、図10(a)参照)。
【0070】
その後、粘着テープK3および保持基板K2を除去し(図10(b)参照)、次に、図10(c)中の破線に示すダイシングラインDLにてダイシングカットすることにより、ウェハを個片化する。
【0071】
その後は、個片化されたワークを、接続部材30を介して基板20の一面上に搭載し、固定するとともに、上記同様に、熱伝導性部材50の上に放熱シート60を介してヒートシンク70を取り付ければ、本実施形態の電子装置ができあがる。なお、本実施形態においても、上記第2実施形態の突起部や第3実施形態の貫通電極を採用してもよい。
【0072】
(第6実施形態)
図11は、本発明の第6実施形態に係る電子装置の製造方法におけるダイシングカット前のワークを示す図であり、(a)は概略断面図、(b)は概略平面図である。本実施形態では、電子装置に4個の電子素子10を設けたものである。
【0073】
たとえばパワーMOS素子10を4個使用した回路はブリッジ回路と呼ばれ、モータの正逆回転を制御する回路に使用される。その場合には、図11に示されるように、ドレイン配線40をパターニングする必要がある。図11では、1個のパワーMOS素子10毎にドレイン配線40が分離されている。
【0074】
本実施形態の電子装置の製造方法について、図12、図13、図14を参照して述べる。図12(a)〜(e)は本製造方法を示す工程図、図13(a)〜(d)は図13に続く製造方法を示す工程図であり、これら両図においては、各ワークの概略断面を示してある。また、図14は図12、図13における各ワークの平面構成を示す図であり、図14(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)は、それぞれ図12(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、図13(a)、(b)、(c)、(d)に対応している。
【0075】
まず、シリコンウェハとしての熱伝導性部材50を準備し(図12(a)、図14(a)参照)、その表面に熱酸化膜としての改質膜51を形成する(図12(b)、図14(b)参照)。さらに、改質膜51の上に金属膜としてのドレイン配線40を、蒸着やスパッタ、メッキなどにより成膜する(図12(c)、図14(c)参照)。
【0076】
次に、ドレイン配線40として必要な部分にレジストK1を、ホト工程などにより形成する(図12(d)、図14(d)参照)。そして、ドレイン配線40をエッチングし(図12(e)、図14(e)参照)、続いてレジストK1を剥離する(図13(a)、図14(f)参照)。
【0077】
次に、ドレイン配線40のうち金属バンプ41を形成しない場所をレジストK1で覆い(図13(b)、図14(g)参照)、続いて、メッキ法などによって、レジストK1の開口部に金属バンプ41を形成する(図13(c)、図14(h)参照)。そして、レジストK1を除去する(図13(d)、図14(i)参照)。
【0078】
その後は、ドレイン配線40上に、接続部材30を介して、各パワーMOS素子10を搭載し、接続する(図11参照)。そして、このウェハ状態の完成品を、図11中の破線に示すダイシングラインDLにてダイシングカットすることにより、個片化する。
【0079】
その後は、個片化されたワークを、接続部材30を介して基板20の一面上に搭載し、固定するとともに、熱伝導性部材50の上に放熱シート60を介してヒートシンク70を取り付ける。こうして、本実施形態の電子装置ができあがる。なお、本実施形態においても、上記第2実施形態の突起部や第3実施形態の貫通電極を採用してもよい。
【0080】
(第7実施形態)
図15は、本発明の第7実施形態に係る電子装置の製造方法を示す工程図である。本実施形態および以下の第8および第9実施形態の製造方法は、上記各実施形態のうち、ドレイン配線40と基板20の一面の基板配線21とを金属バンプ41を介して接続するものについて、適用されるものであり、ダイシングカットされたワークを基板20の一面に搭載する工程に関するものである。
【0081】
まず、金属バンプ41、ドレイン配線40、熱伝導性部材50およびパワーMOS素子10が一体に組み付けられたダイシング後のワークを用意する。このワークは、たとえば上記第1実施形態の製造方法により作製される。
【0082】
そして、図15に示されるように、基板20の一面にて基板配線21の上に印刷法などによって接続部材30を配置し、その上に、上記ワークを搭載し、固定する。それにより、上記図1に示されるものと同様の電子装置ができあがる。
【0083】
(第8実施形態)
図16は、本発明の第8実施形態に係る電子装置の製造方法を示す工程図である。ここでは、まず、ダイシングカットされたパワーMOS素子10および柱状に成形された金属バンプ41を用意し、これらを、接続部材30を介して基板20の一面上に搭載・固定する(図16(a)参照)。
【0084】
その上に、改質膜51およびドレイン配線40が形成されダイシングカットされた熱伝導性部材50を、ドレイン配線40を下に向けて搭載し、接続部材30を介して固定する(図16(b)参照)。これにより、本実施形態によっても、上記図1に示されるものと同様の電子装置ができあがる。
【0085】
(第9実施形態)
図17は、本発明の第9実施形態に係る電子装置の製造方法を示す工程図である。ここでは、まず、ダイシングカットされたパワーMOS素子10を用意し、これを、接続部材30を介して基板20の一面上に搭載・固定する(図17(a)参照)。
【0086】
その上に、金属バンプ41が接合されるとともに改質膜51およびドレイン配線40が形成されダイシングカットされた熱伝導性部材50を、ドレイン配線40を下に向けて搭載し、接続部材30を介して固定する(図17(b)参照)。これにより、本実施形態によっても、上記図1に示されるものと同様の電子装置ができあがる。
【0087】
なお、個片化されたパワーMOS素子10、改質膜51およびドレイン配線40が形成され個片化された熱伝導性部材50、および、金属バンプの基板20への搭載順序は、上記図15〜図17に示される製造方法に限定するものではなく、それ以外にも適宜変更してもよい。
【0088】
(他の実施形態)
熱伝導性部材50としては、熱伝導性材料自体を改質して上記貼り付け面側に絶縁層としての改質膜51を形成できるものであればよい。たとえば、熱伝導性部材50がシリコン半導体よりなる場合に、アンモニア(NH3)などを用いたSiの窒化膜を改質膜51として活用してもよい。
【0089】
また、Si以外の材料を改質して絶縁膜とし、活用してもよく、たとえば、アルミニウムよりなる熱伝導性部材50を陽極酸化法により酸化して、陽極酸化膜を改質膜51として活用してもよい。
【符号の説明】
【0090】
10 電子素子としてのパワーMOS素子
11 第1の電極としてのゲート端子
12 第1の電極としてのソース端子
13 第2の電極としてのドレイン端子
20 基板
40 配線部としてのドレイン配線
41 金属バンプ
42 突起部
50 熱伝導性部材
51 改質膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に第1の電極(11、12)、前記一面とは反対側の他面に第2の電極(13)を有する電子素子(10)と、一面上に前記電子素子(10)を搭載する基板(20)とを備え、
前記電子素子(10)の前記一面と前記基板(20)の前記一面とが対向した状態で、前記第1の電極(11)が前記基板(20)に電気的に接続されており、
前記電子素子(10)の前記他面上には、当該他面に貼り付けられるとともに前記基板(20)の一面に接続された金属製の配線部(40)が設けられており、
この配線部(40)によって前記第2の電極(13)と前記基板(20)とが電気的に接続されている電子装置において、
前記配線部(40)の上には、熱伝導性且つ電気伝導性を有する板状の熱伝導性部材(50)が貼り付けられており、
前記熱伝導性部材(50)において前記配線部(40)に貼り付けられている貼り付け面には、当該貼り付け面から前記熱伝導性部材(50)の板厚方向の一部を改質することにより形成された電気絶縁性の改質膜(51)が形成されており、
この改質膜(51)が前記配線部(40)に直接接触していることを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記熱伝導性部材(50)は半導体よりなり、前記改質膜(51)は当該半導体を化学反応させて電気絶縁性としたものであることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記半導体はシリコンであり、前記改質膜(51)は熱により酸化されたシリコンの熱酸化膜であることを特徴とする請求項2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記配線部(40)は、前記電子素子(10)の前記他面よりはみ出すとともに、このはみ出し部は、前記基板(20)の一面に対向しており、
前記はみ出し部とこれに対向する前記基板(20)の一面との間には、金属バンプ(41)が介在しており、
前記配線部(40)と前記基板(20)とは前記金属バンプ(41)を介して電気的に接続されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電子装置。
【請求項5】
前記配線部(40)は、前記電子素子(10)の前記他面よりはみ出すとともに、このはみ出し部は、前記基板(20)の一面に対向しており、
前記熱伝導性部材(50)の前記貼り付け面のうち前記はみ出し部に位置する部位が、前記基板(20)の一面に向かって突出した突起部(42)とされることによって、前記はみ出し部とこれに対向する前記基板(20)の一面とが接触して電気的に接続されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電子装置。
【請求項6】
前記配線部(40)は、前記改質膜(51)の表面に成膜されたものであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の電子装置。
【請求項1】
一面に第1の電極(11、12)、前記一面とは反対側の他面に第2の電極(13)を有する電子素子(10)と、一面上に前記電子素子(10)を搭載する基板(20)とを備え、
前記電子素子(10)の前記一面と前記基板(20)の前記一面とが対向した状態で、前記第1の電極(11)が前記基板(20)に電気的に接続されており、
前記電子素子(10)の前記他面上には、当該他面に貼り付けられるとともに前記基板(20)の一面に接続された金属製の配線部(40)が設けられており、
この配線部(40)によって前記第2の電極(13)と前記基板(20)とが電気的に接続されている電子装置において、
前記配線部(40)の上には、熱伝導性且つ電気伝導性を有する板状の熱伝導性部材(50)が貼り付けられており、
前記熱伝導性部材(50)において前記配線部(40)に貼り付けられている貼り付け面には、当該貼り付け面から前記熱伝導性部材(50)の板厚方向の一部を改質することにより形成された電気絶縁性の改質膜(51)が形成されており、
この改質膜(51)が前記配線部(40)に直接接触していることを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記熱伝導性部材(50)は半導体よりなり、前記改質膜(51)は当該半導体を化学反応させて電気絶縁性としたものであることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記半導体はシリコンであり、前記改質膜(51)は熱により酸化されたシリコンの熱酸化膜であることを特徴とする請求項2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記配線部(40)は、前記電子素子(10)の前記他面よりはみ出すとともに、このはみ出し部は、前記基板(20)の一面に対向しており、
前記はみ出し部とこれに対向する前記基板(20)の一面との間には、金属バンプ(41)が介在しており、
前記配線部(40)と前記基板(20)とは前記金属バンプ(41)を介して電気的に接続されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電子装置。
【請求項5】
前記配線部(40)は、前記電子素子(10)の前記他面よりはみ出すとともに、このはみ出し部は、前記基板(20)の一面に対向しており、
前記熱伝導性部材(50)の前記貼り付け面のうち前記はみ出し部に位置する部位が、前記基板(20)の一面に向かって突出した突起部(42)とされることによって、前記はみ出し部とこれに対向する前記基板(20)の一面とが接触して電気的に接続されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電子装置。
【請求項6】
前記配線部(40)は、前記改質膜(51)の表面に成膜されたものであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の電子装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−161265(P2010−161265A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3296(P2009−3296)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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