説明

電子部品と可撓性基板との実装構造体及びその製造方法

【課題】電子部品を可撓性基板に実装した場合においても、バンプ電極と可撓性基板との接合部分への封止樹脂の充填性を改善することにより、電子部品と可撓性基板との密着性を向上させることができ、その結果、信頼性を向上させることができる電子部品と可撓性基板との実装構造体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の電子部品と可撓性基板との実装構造体1は、コアとなる内部樹脂24の表面の複数箇所が導電膜15で覆われたバンプ電極23を絶縁膜22上に備えた電子部品3と、金属端子12を備えたフレキシブル基板2とを電気的に接続する実装構造体1であり、バンプ電極23の内部樹脂24の底面24aと絶縁膜22との間に隙間27を形成し、この隙間27に封止樹脂4aを充填した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品と基板との実装構造体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ドライバーIC等の電子部品をフレキシブル基板上に実装する、いわゆるCOF(Chip On FPC)構造と称される実装構造が知られている。
このような実装構造に用いられるフレキシブル基板には、配線パターンに接続するAu、Sn等の金属からなるランド(端子)が形成されている。一方、電子部品の表面には、絶縁膜を介してランドと電気的接続を得るためのバンプ電極が形成され、このバンプ電極は、絶縁膜上に露出した電極に導通されることで電子部品の電極としての機能を有する。このバンプ電極としては、コアとなる略蒲鉾形状の樹脂の表面がAuまたはAu合金からなる導電膜で覆われた構造の樹脂コアバンプが多く用いられている。そして、このランドにバンプ電極を接続させた状態で、フレキシブル基板上に電子部品を実装することにより、電子部品の実装構造体が形成されている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
上記の電子部品の実装構造体においては、フレキシブル基板上に電子部品がより強固にかつ確実に接続していることが望まれている。特に、ランドやバンプ電極がそれぞれ複数ずつあり、複数のランド−バンプ電極間をそれぞれ接続させる場合には、全てのランド−バンプ電極間が良好に接続していることが、信頼性を確保するうえで重要となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−186333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の電子部品の実装構造体においては、電子部品を可撓性基板に実装した後、この接合部分に封止樹脂を塗布し、この封止樹脂を硬化させて一体化する際に、バンプ電極の樹脂の底面と絶縁膜との間に空隙が生じる場合がある。このように、樹脂と絶縁膜との間に空隙が生じた場合、この封止樹脂の接合部分への充填性が不十分なものとなり、その結果、電子部品と可撓性基板との接合部分の密着性が劣り、信頼性に欠けるという問題点があった。
【0006】
そこで、この問題点を解消する方法として、特許文献1に開示されているように、電極間の樹脂をプラズマを用いて除去する方法も提案されているが、この方法では、余分な樹脂を全て除去するのに非常に多くの時間が掛かってしまい、製造工程が長くなってしまうという問題点がある。また、樹脂を除去した分、この樹脂の絶縁膜との接触面積が狭くなるので、樹脂が動きやすくなるという問題点もある。さらに、狭ピッチの場合、隣接する導電膜の間隔が金属端子の幅より狭くなっていると、導電膜間の僅かなずれにより可撓性基板の金属端子が隣接する導電膜の双方に接触してショート不良を引き起こす虞があるという問題点がある。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、電子部品を可撓性基板に実装した場合においても、バンプ電極と可撓性基板との接合部分への封止樹脂の充填性を改善することにより、電子部品と可撓性基板との密着性を向上させることができ、その結果、信頼性を向上させることができる電子部品と可撓性基板との実装構造体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するために、次のような電子部品と可撓性基板との実装構造体及びその製造方法を提供した。
本発明の電子部品と可撓性基板との実装構造体は、コアとなる樹脂の表面の長手方向に沿う複数箇所が金属からなる導電膜で覆われた構造を有するバンプ電極を絶縁膜上に備えた電子部品と、金属端子を備えた可撓性基板とを電気的に接続する電子部品と可撓性基板との実装構造体であって、前記バンプ電極の前記樹脂の底面と前記絶縁膜との間に隙間を形成し、この隙間に封止用樹脂を充填してなることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、バンプ電極の樹脂の底面と絶縁膜との間に隙間を形成したことにより、電子部品を可撓性基板に実装した後、この接合部分に封止樹脂を充填し、この封止樹脂を硬化させて一体化する場合に、この隙間が封止樹脂の流路となり、封止樹脂の充填性を向上させる。これにより、封止樹脂の充填性を向上させることができ、電子部品と可撓性基板との密着性を向上させることができる。その結果、この実装構造体の信頼性を向上させることができる。
【0010】
本発明においては、前記樹脂の底面に剥離層を形成し、この剥離層と前記絶縁膜との間を前記隙間としたことが好ましい。
この構成によれば、樹脂の底面に剥離層を形成したことにより、この剥離層と絶縁膜との間の剥離が容易になり、バンプ電極の樹脂の底面と絶縁膜との間に、封止樹脂の流路となる隙間を確実に形成し、封止樹脂の充填性をさらに向上させる。これにより、封止樹脂の充填性をさらに向上させることができ、電子部品と可撓性基板との密着性をさらに向上させることができる。その結果、この実装構造体の信頼性をさらに向上させることができる。
【0011】
本発明においては、前記剥離層は、フッ素樹脂薄膜、シリコーン樹脂薄膜のいずれか1種または2種であることが好ましい。
これらフッ素樹脂薄膜及びシリコーン樹脂薄膜は、加圧加熱しても絶縁膜と極めて反応し難いものであり、しかも容易に剥離可能であるから、バンプ電極の樹脂の底面と絶縁膜との間に、封止樹脂の流路となる隙間を確実に形成することができ、封止樹脂の充填性をさらに向上させることができる。
【0012】
本発明の電子部品と可撓性基板との実装構造体の製造方法は、コアとなる樹脂の表面の長手方向に沿う複数箇所が金属からなる導電膜で覆われた構造を有するバンプ電極を絶縁膜上に備えた電子部品と、金属端子を備えた可撓性基板とを電気的に接続する電子部品と可撓性基板との実装構造体の製造方法であって、前記バンプ電極と前記金属端子とを対向配置し、前記バンプ電極を前記金属端子に加圧加熱する工程と、前記加圧加熱を停止することにより前記バンプ電極の前記樹脂の底面と前記絶縁膜との間に生じた隙間に封止用樹脂を充填する工程と、を有することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、バンプ電極と金属端子とを対向配置し、バンプ電極を金属端子に加圧加熱する工程と、加圧加熱を解除することによりバンプ電極の樹脂の底面と絶縁膜との間に生じた隙間に封止用樹脂を充填する工程とを有することにより、加圧加熱を解除した際に、バンプ電極の導電膜が有する弾性により、この導電膜が加圧加熱前の形状に復帰するとともに、この復帰に伴う引張力により導電膜に接合している樹脂が絶縁膜から剥離し、この樹脂と絶縁膜との間に隙間が生じる。この隙間は、封止用樹脂を充填する際に、封止用樹脂の流路となるので、封止用樹脂の流動性が向上し、封止樹脂の充填性も向上する。
したがって、電子部品と可撓性基板との密着性を向上させることができ、実装構造体としての信頼性を向上させることができる電子部品と可撓性基板との実装構造体を容易に作製することができる。
【0014】
本発明においては、前記加圧加熱する工程の前に、前記バンプ電極の前記樹脂の底面に剥離層を形成する工程を有し、前記封止用樹脂を充填する工程を、前記加圧加熱を解除することにより前記剥離層と前記絶縁膜との間に生じた隙間に封止用樹脂を充填する工程としたことが好ましい。
【0015】
この構成によれば、加圧加熱する工程の前に、バンプ電極の樹脂の底面に剥離層を形成する工程を有し、さらに、封止用樹脂を充填する工程を、加圧加熱を解除することにより剥離層と絶縁膜との間に生じた隙間に封止用樹脂を充填する工程としたので、電子部品と可撓性基板との密着性をさらに向上させることができ、実装構造体としての信頼性をさらに向上させることができる電子部品と可撓性基板との実装構造体を容易に作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態の電子部品と可撓性基板との実装構造体を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の電子部品の要部を示す側面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の電子部品と可撓性基板との実装構造体の製造方法を示す過程図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の電子部品と可撓性基板との実装構造体を示す断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の電子部品の要部を示す側面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の電子部品と可撓性基板との実装構造体の製造方法を示す過程図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
本発明の実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、本発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造とは縮尺や数等が異なっている。
【0018】
「第1の実施形態」
図1は、本発明の第1の実施形態の電子部品と可撓性基板との実装構造体を示す断面図、図2は同電子部品の要部を示す側面図である。
この実装構造体1は、フレキシブル基板(可撓性基板)2上にドライバIC等の半導体装置等からなる電子部品3が接合され、これらフレキシブル基板2及び電子部品3が封止樹脂4により封止され一体化された構成である。
【0019】
このフレキシブル基板2は、プラスチックフィルム基板等の可撓性を有する基板11上に配線パターンに導通してその一部を構成する金属端子12が複数個形成されている。この金属端子12は、金(Au)、金(Au)合金、スズ(Sn)、スズ(Sn)合金、アルミニウム(Al)、アルミニウム(Al)合金、銅(Cu)、銅(Cu)合金等の導電性を有する比較的膜厚が厚いストライプ状の金属膜により形成されており、その横断面の形状は、略台形状になっている。
【0020】
電子部品3は、例えば、ドライバIC等の半導体素子(図示略)が内蔵された絶縁材料からなるパッケージ21の下面21aに、絶縁膜22が形成され、この絶縁膜22上かつこの絶縁膜22から突出するように、半導体素子と導通するバンプ電極23が形成されている。
バンプ電極23は、絶縁膜22から突出するように設けられた断面略蒲鉾状の突条の内部樹脂24がコアとされ、この内部樹脂24の外周面に、その長手方向に向かって所定の間隔をおいて帯状の導電膜25が複数個設けられており、この導電膜25は、周方向の両端部が絶縁膜22上に固定されている。
【0021】
ここで、上記の略蒲鉾状とは、パッケージ21の下面21aにおける底面形状が平面であり、下面21aから突出する部分の断面形状が半円状、半楕円状、略台形状等となっている突条のことをいう。
このバンプ電極23は、後述する加圧加熱により金属端子12に接触する部分の内部樹脂24及び導電膜25が押圧されて断面略台形状に変形している。例えば、内部樹脂24の上面と側面との角部が湾曲しており、これにより、フレキシブル基板2側の導電膜25の角部も湾曲面となっている。
また、金属端子12に接触しない部分は押圧されないので、変形することなく、断面形状が半円状、半楕円状等となっている。
【0022】
これら導電膜25は、それぞれが独立して電子部品3の電極26に電気的に接続されている。
そして、この内部樹脂24の底面24aは絶縁膜22の上面22aと平行とされ、この内部樹脂24の底面24aと絶縁膜22の上面22aとの間には、封止樹脂を流動させるための隙間27が形成され、この隙間27には封止樹脂4と同一組成の封止樹脂4aが充填されている。
【0023】
この隙間27の間隔は、封止樹脂を流動させることができればよく、特に限定するものではないが、内部樹脂24の機械的強度等を考慮すると、内部樹脂24の底面24aから頂部24bまでの高さの1/2〜1/10程度が好ましい。
【0024】
内部樹脂24は、絶縁性を有する感光性樹脂や熱硬化性樹脂からなるもので、具体的には、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
このような樹脂からなる内部樹脂24は、公知のリソグラーフィー技術やエッチング技術により上述した略蒲鉾状に形成されている。なお、樹脂の材質(硬度)や略蒲鉾状についての細部における形状(高さや幅)等については、フレキシブル基板2の金属端子12の形状や大きさ等により適宜、選択・設計される。
【0025】
導電膜25は、内蔵された半導体素子(図示略)に接続・導通されるとともに、内部樹脂24の外周面に、その長手方向の複数箇所に帯状に形成されて半導体素子の端子となるものであり、したがって実質的に電子部品3の電極としての機能を有するものとなっている。
本実施形態では、内部樹脂24の表面に、帯状の導電膜25が複数設けられており、これら導電膜25はそれぞれ独立してパッケージ21に内蔵された半導体素子(図示略)の各端子に接続・導通している。したがって、これら導電膜25は、その内側に位置する内部樹脂24とともに、それぞれが独立してバンプ電極として機能するようになっている。
【0026】
これらの導電膜25は、導電性を有する金属あるいは合金により構成され、例えば、金属としては、Au、Cu、Cr、Ni、Ti、W、Al、Pd等が挙げられ、また、合金としては、TiW、NiV等の上記の金属を成分とする合金の他、鉛フリーハンダ等が挙げられる。
これらの導電膜25は、単層であっても、複数種を積層した積層膜であってもよい。また、これらの導電膜25は、スパッタ法等の公知の成膜法で成膜し、その後帯状にパターニングしたものであってもよく、無電解メッキにより選択的に形成したものであってもよい。また、スパッタ法や無電解メッキにより下地膜を形成し、その後電解メッキにより下地膜上に上層膜を形成し、これら下地膜と上層膜とからなる積層膜により導電膜25を形成してもよい。
【0027】
これらの導電膜25における金属あるいは合金の種類、層構造、膜厚、幅等については、上述した内部樹脂24と同様に、フレキシブル基板2の金属端子12の形状や大きさ等により適宜、選択・設計される。
ただし、後述するように、導電膜25は、加圧加熱時に金属端子12の形状に倣って弾性変形するので、展延性に優れた金属であることが好ましく、特に展延性に優れているAuが好ましい。また、積層膜とした場合、その最外層にAuを用いるのが好ましい。さらに、導電膜25の幅については、接合する金属端子12の幅よりも十分に広いことが好ましい。
【0028】
封止樹脂層4、4aは、フレキシブル基板2と電子部品3との導電接触部分の周囲を覆うように充填されて硬化されることにより、フレキシブル基板2と電子部品3とを接着固定し、一体化している。この封止樹脂層4、4aとしては、封止機能と接着機能を備えた樹脂であればよく、樹脂の種類は特に制限はしないが、絶縁特性、取り扱いの容易性、等を考慮すると、接着性を有する樹脂であることが好ましい。
【0029】
次に、本実施形態の電子部品と可撓性基板との実装構造体の製造方法について、図3に基づき説明する。
まず、フレキシブル基板2と、電子部品3と、未硬化の封止樹脂を準備する。
この電子部品4は、図3(a)に示すように、バンプ電極23が加圧加熱されていないので、内部樹脂24及び導電膜25の金属端子12に対応する部分も変形しておらず、断面形状が半円状あるいは半楕円状の突条であり、しかも、内部樹脂24の底面24aは絶縁膜22上に接触している。
次いで、このフレキシブル基板2上に電子部品3を配置して、フレキシブル基板2の金属端子12と電子部品3のバンプ電極23との位置合わせを行う。
【0030】
次いで、図3(b)に示すように、電子部品3を降下させてフレキシブル基板2に密着させる。
次いで、加圧加熱工具を用いて、電子部品3の上面からフレキシブル基板2に向かって加圧加熱31する。この加圧加熱31により、電子部品3のバンプ電極23のうち金属端子12に接触する部分の内部樹脂24及び導電膜25が金属端子12に押圧され、内部樹脂24が変形するとともに、導電膜25も内部樹脂24の変形形状に沿って変形し、断面略台形状となる。
この加圧加熱31の過程で、電子部品3のバンプ電極23の導電膜25と、フレキシブル基板2の金属端子12とが、金属−金属間接合により接合されて電気的に接続される。
【0031】
次いで、図3(c)に示すように、加圧加熱31を解除する。
この加圧加熱31を解除すると、バンプ電極23の導電膜25は、それ自体が有する弾性により加圧加熱前の形状に復帰するが、この形状が復帰する際に、この復帰に伴う導電膜25の引張力により、この導電膜25に接合された内部樹脂24が絶縁膜22から剥離し、この内部樹脂24と絶縁膜22との間に隙間27が生じる。
【0032】
次いで、電子部品3のバンプ電極23とフレキシブル基板2の金属端子12との接合部分を覆うように未硬化の封止樹脂32を充填する。
この未硬化の封止樹脂32の充填量は、少なくとも電子部品3のバンプ電極23とフレキシブル基板2の金属端子12との接合部分の周囲を覆うのに十分な量を考慮して設定される。
この充填の際に、内部樹脂24と絶縁膜22との間の隙間27が未硬化の封止樹脂32の流路となるので、この未硬化の封止樹脂32の流動性が向上し、未硬化の封止樹脂32の充填性も向上する。この過程で、未硬化の封止樹脂32は、隙間27を経由してフレキシブル基板2の金属端子12及び電子部品3のバンプ電極23の周囲に回り込み、金属端子12及びバンプ電極23の周囲に充填される。
【0033】
このように、未硬化の封止樹脂32が、金属−金属間接合により接合されたフレキシブル基板2の金属端子12と電子部品3のバンプ電極23との接合部の周囲に充填された後、未硬化の封止樹脂32及びフレキシブル基板2を所定の温度に加熱することで、未硬化の封止樹脂32を硬化させる。これにより、未硬化の封止樹脂32は、図1に示す封止樹脂4となる。
この加熱の際の温度及び保持時間は、未硬化の封止樹脂32が十分硬化するように、それぞれが設定される。
【0034】
以上により、電子部品3のバンプ電極23の導電膜25がフレキシブル基板2の金属端子12に金属−金属間接合により電気的に接続され、かつ、この電子部品3とフレキシブル基板2とが封止樹脂4により封止された電子部品3と可撓性基板2との実装構造体1を作製することができる。
【0035】
本実施形態の実装構造体1によれば、内部樹脂24の底面24aと絶縁膜22の上面22aとの間に隙間27を形成し、この隙間27に封止樹脂4aを充填したので、電子部品3をフレキシブル基板2に実装した後、この接合部分に封止樹脂32を充填する際に、この隙間27が封止樹脂32の流路となり、封止樹脂32の充填性を向上させることができる。したがって、電子部品3のバンプ電極23の導電膜25とフレキシブル基板2の金属端子12との接合部分における封止樹脂32の充填性を向上させることができ、電子部品3とフレキシブル基板2との密着性を向上させることができる。その結果、この実装構造体1の信頼性を向上させることができる。
【0036】
本実施形態の実装構造体1の製造方法によれば、電子部品3のバンプ電極23とフレキシブル基板2の金属端子12とを密着させた状態で加圧加熱31し、次いで、この加圧加熱31を解除したことによりバンプ電極23の内部樹脂24の底面24aと絶縁膜22との間に生じた隙間27に封止樹脂32を充填するので、隙間27が封止樹脂32を充填する際の流路となることにより、封止樹脂32の流動性を向上させることができ、その結果、封止樹脂32の充填性も向上さえることができる。
したがって、電子部品3とフレキシブル基板2との密着性を向上させることができ、実装構造体としての信頼性を向上させることができる電子部品3とフレキシブル基板2との実装構造体1を容易に作製することができる。
【0037】
[第2の実施形態]
図4は、本発明の第2の実施形態の電子部品と可撓性基板との実装構造体を示す断面図、図5は同電子部品の要部を示す側面図である。
本実施形態の実装構造体41が第1の実施形態の実装構造体1と異なる点は、第1の実施形態の実装構造体1では、内部樹脂24の底面24aと絶縁膜22の上面22aとの間に隙間27を形成し、この隙間27に封止樹脂4と同一組成の封止樹脂4aを充填したのに対し、本実施形態の実装構造体41では、内部樹脂24の底面24aに剥離層42を形成し、この剥離層42と絶縁膜22の上面22aとの間を隙間43とし、この隙間43に封止樹脂4と同一組成の封止樹脂4aを充填した点であり、その他の点については、第1の実施形態の実装構造体1と全く同様である。
【0038】
剥離層42としては、内部樹脂24の底面24aに密着して容易に剥離せず、かつ絶縁膜22からは容易に剥離することが必要であり、この様な材料としては、フッ素樹脂薄膜、シリコーン樹脂薄膜のいずれか1種または2種であることが好ましい。
これらフッ素樹脂薄膜やシリコーン樹脂薄膜は、内部樹脂24と密着性が良く、かつ、絶縁膜22との間の密着性を低下させるので、好適な材料である。
【0039】
これらフッ素樹脂薄膜やシリコーン樹脂薄膜は、加圧加熱しても、内部樹脂24からは剥離する虞がなく、絶縁膜22とは極めて反応し難くかつ容易に剥離するものであるから、剥離層42と絶縁膜22との間に、封止樹脂4の流路となる隙間43を確実に形成することができ、封止樹脂4の充填性をさらに向上させることができる。
【0040】
次に、本実施形態の電子部品と可撓性基板との実装構造体の製造方法について、図6に基づき説明する。
まず、フレキシブル基板2と、電子部品3と、未硬化の封止樹脂を準備する。
この電子部品4は、図6(a)に示すように、内部樹脂24の底面24aに剥離層42が形成され、この剥離層42は絶縁膜22の上面22aに接触している。
剥離層42は、インクジェットあるいはマスクを介してのスパッタ等により形成されている。
【0041】
この電子部品4は、バンプ電極23が加圧加熱されていないので、内部樹脂24及び導電膜25の金属端子12に対応する部分も変形しておらず、断面形状が半円状あるいは半楕円状の突条であり、しかも、内部樹脂24の底面24aに形成された剥離層42は絶縁膜22上に接触している。
次いで、このフレキシブル基板2上に電子部品3を配置して、フレキシブル基板2の金属端子12と電子部品3のバンプ電極23との位置合わせを行う。
【0042】
次いで、図6(b)に示すように、電子部品3を降下させてフレキシブル基板2に密着させ、加圧加熱工具を用いて、電子部品3の上面からフレキシブル基板2に向かって加圧加熱31する。
この加圧加熱31における作用等は、第1の実施形態の加圧加熱31と全く同様である。
【0043】
次いで、図6(c)に示すように、加圧加熱31を解除する。
この加圧加熱31を解除すると、バンプ電極23の導電膜25は、それ自体が有する弾性により加圧加熱前の形状に復帰するが、この形状が復帰する際に、この復帰に伴う導電膜25の引張力により、この導電膜25に接合された内部樹脂24及び剥離層42が絶縁膜22から剥離し、この剥離層42と絶縁膜22との間に隙間43が生じる。
【0044】
次いで、電子部品3のバンプ電極23とフレキシブル基板2の金属端子12との接合部分を覆うように未硬化の封止樹脂32を充填する。
この未硬化の封止樹脂32の充填量は、少なくとも電子部品3のバンプ電極23とフレキシブル基板2の金属端子12との接合部分の周囲を覆うのに十分な量を考慮して設定される。
この充填の際に、剥離層42と絶縁膜22との間の隙間43が未硬化の封止樹脂32の流路となるので、この未硬化の封止樹脂32の流動性が向上し、未硬化の封止樹脂32の充填性も向上する。この過程で、未硬化の封止樹脂32は、隙間43を経由してフレキシブル基板2の金属端子12及び電子部品3のバンプ電極23の周囲に回り込み、金属端子12及びバンプ電極23の周囲に充填される。
【0045】
このように、未硬化の封止樹脂32が、金属−金属間接合により接合されたフレキシブル基板2の金属端子12と電子部品3のバンプ電極23との接合部の周囲に充填された後、未硬化の封止樹脂32及びフレキシブル基板2を所定の温度に加熱することで、未硬化の封止樹脂32を硬化させる。これにより、未硬化の封止樹脂32は、図4に示す封止樹脂4となる。
この加熱の際の温度及び保持時間は、未硬化の封止樹脂32が十分硬化するように、それぞれが設定される。
【0046】
以上により、電子部品3のバンプ電極23の導電膜25がフレキシブル基板2の金属端子12に金属−金属間接合により電気的に接続され、かつ、この電子部品3とフレキシブル基板2とが封止樹脂4により封止された電子部品3と可撓性基板2との実装構造体41を作製することができる。
【0047】
本実施形態の実装構造体41においても、第1の実施形態の実装構造体1と同様の効果を奏することができる。
しかも、内部樹脂24の底面24aに剥離層42を形成し、この剥離層42と絶縁膜22の上面22aとの間を隙間43とし、この隙間43に封止樹脂4と同一組成の封止樹脂4aを充填したので、剥離層42と絶縁膜22との間の密着性を低下させることができ、封止樹脂32の充填性をさらに向上させることができる。
【0048】
本実施形態の実装構造体41の製造方法においても、第1の実施形態の実装構造体1の製造方法と同様の効果を奏することができる。
しかも、内部樹脂24の底面24aに剥離層42を形成し、この剥離層42と絶縁膜22の上面22aとの間の隙間43に封止樹脂32を充填するので、電子部品3とフレキシブル基板2との密着性を向上させることができ、実装構造体としての信頼性を向上させることができる電子部品3とフレキシブル基板2との実装構造体41を容易に作製することができる。
【符号の説明】
【0049】
1…実装構造体、2…フレキシブル基板(可撓性基板)、3…電子部品、4、4a…封止樹脂、11…基板、12…金属端子、21…パッケージ、21a…下面、22…絶縁膜、22a…上面、23…バンプ電極、24…内部樹脂、24a…底面、24b…頂部、25…導電膜、26…電極、27…隙間、31…加圧加熱、32…未硬化の封止樹脂、41…実装構造体、42…剥離層、43…隙間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアとなる樹脂の表面の長手方向に沿う複数箇所が金属からなる導電膜で覆われた構造を有するバンプ電極を絶縁膜上に備えた電子部品と、金属端子を備えた可撓性基板とを電気的に接続する電子部品と可撓性基板との実装構造体であって、
前記バンプ電極の前記樹脂の底面と前記絶縁膜との間に隙間を形成し、この隙間に封止用樹脂を充填してなることを特徴とする電子部品と可撓性基板との実装構造体。
【請求項2】
前記樹脂の底面に剥離層を形成し、この剥離層と前記絶縁膜との間を前記隙間としたことを特徴とする請求項1記載の電子部品と可撓性基板との実装構造体。
【請求項3】
前記剥離層は、フッ素樹脂薄膜、シリコーン樹脂薄膜のいずれか1種または2種であることを特徴とする請求項2記載の電子部品と可撓性基板との実装構造体。
【請求項4】
コアとなる樹脂の表面の長手方向に沿う複数箇所が金属からなる導電膜で覆われた構造を有するバンプ電極を絶縁膜上に備えた電子部品と、金属端子を備えた可撓性基板とを電気的に接続する電子部品と可撓性基板との実装構造体の製造方法であって、
前記バンプ電極と前記金属端子とを対向配置し、前記バンプ電極を前記金属端子に加圧加熱する工程と、
前記加圧加熱を解除することにより前記バンプ電極の前記樹脂の底面と前記絶縁膜との間に生じた隙間に封止用樹脂を充填する工程と、
を有することを特徴とする電子部品と可撓性基板との実装構造体の製造方法。
【請求項5】
前記加圧加熱する工程の前に、前記バンプ電極の前記樹脂の底面に剥離層を形成する工程を有し、
前記封止用樹脂を充填する工程を、前記加圧加熱を解除することにより前記剥離層と前記絶縁膜との間に生じた隙間に封止用樹脂を充填する工程とした、
ことを特徴とする請求項4記載の電子部品と可撓性基板との実装構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−219474(P2010−219474A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67547(P2009−67547)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】