説明

電子部品の半田付け方法および電子部品の半田付け構造

【課題】半田接合性と絶縁性の確保を両立させることができる電子部品の半田付け方法および電子部品の半田付け構造を提供することを目的とする。
【解決手段】電子部品の半田付けに際してバンプと電極との間に介在させて用いるフラックスに、リフロー時において溶融半田を導く効果を目的として混入される金属粉8を、半田バンプを構成する半田の液相温度よりも高い温度で溶融する金属からなるコア部8aと溶融した半田に対する濡れ性が良く且つ溶融したコア部8aに固溶する金属からなる表面部8bとを有する薄片状もしくは樹枝状とし、リフローによる加熱において、半田部に取り込まれずにフラックス中に残留した金属粉を溶融固化させて略球状の金属粒子18にする。これにより、リフロー後に金属粉がマイグレーションを起こしやすい状態でフラックス残渣中に残留することがなく、半田接合性と絶縁性の確保を両立させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を基板に半田付けする電子部品の半田付け方法および電子部品の半田付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品を基板へ実装する方法として、従来より半田付けが広く用いられている。半田付けの形態としては、電子部品に設けられた接合用電極としての金属バンプを半田によって形成する方法や、基板の電極表面に半田層を形成する半田プリコートなど各種の方法が用いられる。近年環境保護の観点から、上述の半田付けにおいて有害な鉛をほとんど含まないいわゆる鉛フリー半田が採用されるようになっている。
【0003】
鉛フリー半田は従来用いられていた鉛系半田とは成分組成が大きく異なるため、半田接合過程において用いられるフラックスについても、従来一般に用いられていたものをそのまま使用することができない。すなわち従来のフラックスでは活性作用が不足し、半田表面の酸化膜除去が不十分で良好な半田濡れ性が確保され難い。このような半田濡れ性が劣る半田を対象として、フラックス成分中に銀など半田濡れ性に優れた金属より成る金属粉を混入した組成のフラックスが提案されている(例えば特許文献1参照)。このようなフラックスを使用することにより、リフロー過程において溶融した半田をフラックス中の金属粉の表面に沿って濡れ拡がらせ、溶融した半田を接合対象の電極まで導くことができる。
【特許文献1】特開2000−31210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記特許文献例に示すフラックスには、金属粉の含有割合によっては以下のような不具合を生じる場合があった。近年は半田接合後にフラックス成分除去のための洗浄を省略した無洗浄工法が主流となっていることから、リフロー後にはフラックス分は半田接合部の周囲に残渣として付着したまま残留し、フラックス中に含有された金属粉も半田接合部の周囲に残留する。
【0005】
このとき、金属粉の残留量が多い場合には、マイグレーションによる絶縁不良を生じるおそれがある。そしてこの絶縁不良を防止するために金属粉の含有量を少なくすると、リフロー時に金属粉によって溶融半田を導く効果が低下し、半田接合性の低下を招く結果となっていた。特に樹脂基板に半導体素子を実装したパッケージ部品を積層して半導体装置を形成するための半田付けにおいては、樹脂基板の反り変形のために半田付け対象のバンプと電極との間に隙間が生じやすく、半田濡れ性に起因する接合不良が高頻度で発生していた。このように、金属粉を含有したフラックスを用いた従来の半田付け方法においては、半田接合性の維持と絶縁性の確保とを両立させることが難しいという問題点があった。
【0006】
そこで本発明は、半田接合性と絶縁性の確保を両立させることができる電子部品の半田付け方法および電子部品の半田付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子部品の半田付け方法は、電子部品に設けられた半田バンプを基板の電極に位置合わせして加熱し、前記半田バンプを溶融させて前記電極に半田接合することにより前記電子部品を基板に半田付けする電子部品の半田付け方法であって、前記半田バンプを構成する半田の液相温度よりも高い温度で溶融する金属からなるコア部と、溶融した前記
半田に対する濡れ性が良く且つ溶融した前記コア部に固溶する金属からなる表面部とを有する薄片状もしくは樹枝状の金属粉を含んだフラックスを、前記半田バンプと電極との間に介在させた状態で前記電子部品の半田バンプを前記基板の電極に位置合わせし、次に前記電子部品と基板とを加熱して前記半田バンプを溶融させ、この溶融した半田を前記金属粉の表面を濡れ伝わらせて前記電極まで到達させ、さらに前記加熱を継続することにより前記溶融した半田に接触せずに残留した金属粉を溶融させてその形状を略球状にし、その後前記基板と電子部品とを冷却して前記溶融した金属粉と前記半田を固化させる。
【0008】
また本発明の半田付け方法は、電子部品に設けられた半田バンプを基板の電極に位置合わせして加熱し、前記半田バンプを溶融させて前記電極に半田接合することにより前記電子部品を基板に半田付けする電子部品の半田付け方法であって、前記半田バンプを構成する半田の液相温度よりも高い温度で溶融する金属からなるコア部と、溶融した半田に対する濡れ性が良く溶融した前記コア部に固溶する金属からなる表面部とを有する薄片状もしくは樹枝状の金属粉を含んだ熱硬化性樹脂を、前記半田バンプと電極との間に介在させた状態で電子部品の半田バンプを基板の電極に位置合わせし、次に前記電子部品と基板とを加熱して前記半田バンプを溶融させ、この溶融した半田を前記金属粉の表面を濡れ伝わらせて前記電極まで到達させ、さらに前記加熱を継続することにより前記溶融した半田に接触せずに残留した金属粉を溶融させてその形状を略球状にし、前記加熱により前記熱硬化性樹脂の硬化反応を促進させ、その後前記基板と電子部品とを冷却して前記溶融した金属粉と前記半田を固化させる。
【0009】
本発明の電子部品の半田付け構造は、請求項1記載の半田付け方法によって前記電子部品を基板に半田付けして成る電子部品の半田付け構造であって、前記電子部品と前記電極とを接続する半田部と、前記半田部の表面ならびに基板の表面に残留したフラックス残渣とを有し、溶融した半田に接触しなかった前記金属粉が溶融して略球状となった金属粒子が前記フラックス残渣に含まれている。
【0010】
また本発明の半田付け構造は、請求項4記載の半田付け方法によって前記電子部品を基板に半田付けして成る電子部品の半田付け構造であって、前記バンプと基板の電極とを接続する半田部と、前記半田部と電極との接合部分を補強する樹脂部とを有し、溶融した半田に接触しなかった前記金属粉が溶融して略球状となった金属粒子が前記樹脂部に含まれている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、リフロー時において溶融半田を導く効果を目的として混入される金属粉を、薄片状もしくは樹枝状の形状で、半田バンプを構成する半田の液相温度よりも高い温度で溶融する金属からなるコア部と溶融した半田に対する濡れ性が良く且つ溶融したコア部に固溶する金属からなる表面部とを有する構成とすることにより、残留した金属粉はリフロー時に溶融してマイグレーションを起こしにくい略球状の状態となり、これにより半田接合性と絶縁性の確保を両立させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(実施の形態1)
図1,図2は本発明の実施の形態1の電子部品の半田付け方法の工程説明図、図3は本発明の実施の形態1の電子部品の半田付け方法に用いられるフラックスに含有される金属粉の形状および構成の説明図、図4は本発明の実施の形態1の電子部品の半田付け方法における半田接合過程の説明図、図5は本発明の実施の形態1の電子部品の半田付け方法に用いられるフラックスに含有される金属粉の断面図、図6は本発明の実施の形態1の電子部品の半田付け構造の断面図、図7は本発明の実施の形態1の電子部品実装における半田接合用ペーストの供給方法の説明図である。
【0013】
まず図1,図2を参照して、電子部品の半田付け方法について説明する。この電子部品の半田付け方法は、電子部品に設けられた半田バンプを基板の電極に位置合わせして加熱し、この半田バンプを溶融させて電極に半田接合することにより、この電子部品を基板に半田付けして実装するものである。
【0014】
図1(a)において、基板1の上面には電極2が形成されている。電子部品4は、上面に部品実装部5が設けられた樹脂基板4aの下面に部品電極4bを設け、さらに部品電極4bに半田バンプ6(以下、単に「バンプ6」と略記する。)を形成した構成となっている。バンプ6は、微細粒状の半田ボールを部品電極4bに半田接合して形成される。なお半田とは、低融点の金属(例えば錫)または複数種類の金属の合金(例えば銀・錫合金)をいい、ここではこれらの金属や合金中に鉛をほとんど含まない鉛フリー半田を半田材質として用いている。
【0015】
部品実装部5は、樹脂基板4aの上面に実装された半導体素子(図示省略)を樹脂封止して形成されている。この樹脂封止工程においては、溶融状態の高温の樹脂をモールドキャビティに注入し、樹脂を熱硬化させて樹脂モールドを形成した後、樹脂モールドをモールドキャビティから取り外して大気中で冷却する。この冷却過程においては、樹脂基板4aと樹脂モールドの熱膨張係数の違いにより樹脂基板4aの上面側の部品実装部5が樹脂基板4aよりも大きく収縮するため、電子部品4全体は樹脂基板4aの端部が部品実装部5側に反りを生じる形で変形する。
【0016】
このため、電子部品4の下面側に形成された複数のバンプ6のうち、外縁部に位置するバンプ6*の下端部は、内側に位置するバンプ6の下端部よりも反り変形による変位d1だけ上方に位置している。したがって、各バンプ6の下端部の高さは同一平面上にはなく、後述するように電子部品4を基板1に搭載した状態において、バンプ6*と電極2との間には隙間が生じる傾向にある。
【0017】
バンプ6には、以下に説明するフラックス3が転写により塗布される。すなわち電子部品4をフラックス3の塗膜が形成された転写テーブル7上に対して昇降させることにより、図1(b)に示すようにバンプ6の下端部にはフラックス3が転写塗布される。フラックス3は、電子部品4を以下に説明する基板1へ半田付けするための半田接合において、半田接合性を向上させるためにバンプ6と電極2の間に介在させて用いられるものである。
【0018】
ここでフラックス3の組成について説明する。フラックス3は、ロジンなどの樹脂成分を溶剤に溶解した粘度の高い液状の基剤に、添加成分として活性剤と金属粉8とを混合したものである。活性剤は、バンプ6の表面に生成した半田の酸化膜を除去する目的で添加されるものであり、このような酸化膜除去能力を有する有機酸などが用いられる。なおここでは活性剤として半田接合後の洗浄を必要としない低活性のものが用いられる。
【0019】
金属粉8としては、図3(a)に示すように、微細な粒状の金属を押しつぶすことによって形成された薄片状のものが用いられる。図3(b)は金属粉8のA−A断面を示しており、ここで示すように、金属粉8は中核となるコア部8aとコア部8aの表面を覆う表面部8bを有する構成となっている。そして表面部8bとコア部8aとの境界には、表面部8bを構成する金属がコア部8a中に拡散した拡散層8cが形成されている。この構成においては、コア部8aとして用いられる金属種を、錫(Sn)または錫系の合金から選択する。表面部8bは、電気メッキなどの方法でコア部8aの表面を被覆することによって形成される。
【0020】
錫系の合金としては、錫銀(Sn−Ag)系、錫銀銅(Sn−Ag−Cu)系、錫鉛(Sn−Pb)系、錫鉛銀(Sn−Pb−Ag)系、錫銅(Sn−Cu)系、錫ビスマス(Sn−Bi)系、錫銀ビスマス(Sn−Ag−Bi)系、錫銀ビスマスインジウム(Sn−Ag−Bi−In)系、錫アンチモン(Sn−Sb)系,錫インジウム(Sn−In)系、錫亜鉛(Sn−Zn)系、錫亜鉛ビスマス(Sn−Zn−Bi)系、 錫亜鉛アルミニウム(Sn−Zn−Al)系などを用いることができる。
【0021】
表面部8bの金属種としては、バンプ6に用いられる半田の液相温度よりも高い温度で溶融し、しかも大気中で金属粉8の表面に酸化膜を生成しないものであって、さらにバンプ6を形成する半田に対する濡れ性がよく、バンプ6が溶融した流動状態の半田が表面に沿って濡れ伝わりやすい材質(例えば純度90%以上の金(Au)、銀(Ag)、プラチナ(Pt)などの貴金属)が選定される。そしてフラックス3への添加は、これらの金属粉8を1〜20vol%の範囲の割合で基剤中に混合することにより行われる。
【0022】
ここで、コア部8aと表面部8bに用いられる金属種の組み合わせは、表面部8bから内部のコア部8aへの拡散(図5(b)参照)がリフロー過程における加熱によって容易に生じ、リフロー終了時において表面部8bのコア部8aへの拡散が完了してほとんどコア部8a中に取り込まれるような拡散特性が実現される組み合わせが選択される。すなわちこの構成においては、表面部8bは半田との濡れ性のよい金属にて形成され、コア部8aはリフローによる加熱により表面部8bを固溶して内部に取り込むことが可能な金属にて形成されている。フラックス3に混入される金属粉としてこのような構成を採用することにより、無洗浄方式による半田接合において後述するような優れた効果を得る。
【0023】
なお上記実施例においては、単位重量当たりの表面積が極力大きくなるよう、金属粉8として薄片状のものを用いる例を示しているが、微細な棒状金属が3次元的に分枝した樹枝状の金属粉を用いてもよい。このような樹枝状の金属粉によっても、単位重量当たりの表面積を極力大きくすることができる。さらに、薄片状の金属粉と樹枝状の金属粉とを混合して用いるようにすれば、単位重量当たりの表面積を大きくするとともに、フラックス3中に金属粉が混入された状態において両者の形状的特徴が組み合わされ、少ない重量%で金属粉をフラックス3中に極力均一かつ高密度で分布させることができる。
【0024】
すなわち、本実施の形態の半田付け方法において用いられるフラックス3は、半田バンプ6を構成する半田の液相温度よりも高い温度で溶融する金属からなるコア部8aと、溶融した半田に対する濡れ性が良く且つ溶融したコア部8aに固溶する金属からなる表面部8bとを有する薄片状もしくは樹枝状の金属粉8を含んだ構成となっている。
【0025】
次いで図1(c)に示すように、フラックス転写塗布後の電子部品4は基板1に実装される。電子部品4の基板1への実装は、加熱によりバンプ6を溶融させて電極2の上面に半田接合することにより行われ、これにより、それぞれの部品電極4bが対応する電極2に電気的に接続されるとともに、電子部品4は溶融半田が固化して形成された半田部によって基板1に固着される。
【0026】
この実装過程においては、電子部品4を基板1上に位置させ、バンプ6を電極2に位置合わせして、基板1に対して下降させる。そして、フラックス3が塗布されたバンプ6を電極2に着地させ、所定の押圧荷重によって押圧する。これにより、バンプ6のうち下端部が平均的な高さ位置にあるバンプ6は、バンプ高さに多少のばらつきがあっても高めのバンプ6が押圧力によって高さ方向に幾分つぶされることにより、下端部が電極2の上面に接触する。これに対し外縁部に位置するバンプ6*は、他のバンプ6が幾分押しつぶされて電子部品4全体がその分だけ下降しても、なお下端部が電極2の表面に接触せず、バンプ下面と電極2との間に隙間が生じた状態となる。
【0027】
次に、バンプ6を溶融させて電極2に半田接合する半田接合過程について説明する。図1(c)に示す部品搭載後の基板1は、リフロー炉に送られ加熱される。このとき図2(a)に示すように、下端部の高さが平均的な位置にある中央部付近のバンプ6については下端部が電極2に接触した状態で、また外縁部に位置するバンプ6*については、下端部と電極2の間にフラックス3が介在した状態で、加熱が行われる。
【0028】
そしてこの加熱により、バンプ6,6*とも、電極2に半田接合されるが、このときの半田の挙動は、バンプ下端部が電極2に接触しているか否かによって異なったものとなる。すなわち図2(b)に示すように、下端部が電極2に接触しているバンプ6では、バンプ6が加熱によって溶融すると、溶融状態の半田6aは直ちに半田濡れ性のよい材質の電極2の表面に沿って良好に濡れ伝わり、部品電極4bは電極2と半田6aによって連結される。このとき、フラックス3中に含まれる活性剤によってバンプ6表面の酸化膜が除去される。
【0029】
これに対し、電極2との間の隙間にフラックス3が介在しているバンプ6*においては、部品電極4bと電極2の半田6aによる連結は、図4に示すような過程を経て行われる。図4(a)は、リフロー過程における加熱開始時の状態を示している。ここでバンプ6*の下端部と電極2の表面2aとの間に介在するフラックス3中の金属粉8は、フラックス3中に配合された状態のまま、すなわち図5(a)に示すように、薄片状のコア部8aの表面を表面部8bが覆った状態にある。そしてフラックス3中にはランダムな姿勢で金属粉8が多数存在することから、バンプ6*の下端部と電極2の表面2aとを結ぶ金属粉8のブリッジが、高い確率で形成される(図4(a)にて矢印aで示す部分参照)。
【0030】
ここでブリッジとは、金属粉8が相互に近接した状態で連続的に一繋がりとなって存在する状態をいう。そして近接した状態とは、1つの金属粉8の表面を濡らして覆っている流動状態の半田が表面張力によってある厚みを形成するときに、その半田厚みの表面が隣接する他の金属粉8に接触するような間隔で複数の金属粉8が存在する状態をいう。
【0031】
すなわち、多数の金属粉8がこのような近接状態で連続して存在することにより、一繋がりの一方側の金属粉8に接触した半田は、半田濡れ性のよい金属を含む金属粉8の表面を包み込んで濡れ伝わることによって、順次隣接する金属粉8に接触する。そしてこの濡れ伝わりによる半田の流動が一繋がりの他方側まで連続して生じることにより、これらの一繋がりの金属粉8は、図4(b)に示すように、バンプ6*の下端部と電極2の表面2aとを結んで半田を流動させるブリッジとして機能する。
【0032】
このとき、金属粉8を構成する表面部8bの材質として通常用いられる半田の液層温度よりも融点が高い金や銀などの貴金属を用いていることから、半田の液層温度よりもさらに高温に加熱された場合においても、表面部8bは確実に固体状態で存在する。すなわち、フラックス3中に半田粒子を含有させたクリーム半田を用いる半田接合方法では、リフロー時の加熱によってクリーム半田中の半田粒子も同時に溶融してしまい、隙間内で溶融半田を橋渡しするブリッジ機能が得られないのに対し、本実施の形態のフラックス3では、上述のブリッジ機能を確実に果たすことができる。
【0033】
そして、フラックス3に用いられる金属粉8は、高価な金や銀などの貴金属を安価なコア部8aの表面を覆う表面部8bとして用いるようにしていることから、従来の金属粉入りフラックスにおいて高価な貴金属をそのまま粉体で用いる方法と比較して、大幅なコスト低減が可能となっている。なお、コア部8aとして選択可能な金属種と銀との合金より成る半田(例えばSn−Ag系半田)が既に存在するが、このような半田と本実施の形態における金属粉8とは、金属粉8によって奏される作用効果の面から明確に区別されるべ
きである。
【0034】
ここで、金属粉8の形状として、前述の金属を薄片状に加工したものを用いることにより、薄片形状の長手方向を隙間の橋渡し方向に向けた姿勢で存在する金属粉8によってブリッジを形成し易くなり、比較的低い含有率で効率よくブリッジを形成することができる。そしてこのようなブリッジを伝って半田6aが電極表面2aに一旦到達すると、流動状態の半田6aは半田濡れ性の良好な電極表面2aにそって濡れ拡がる。この半田6aの濡れ拡がりにより、電極表面2a近傍のフラックス3は外側に押しのけられ、当初電極2との間に隙間を生じていたバンプ6*においても、部品電極4bは半田6aによって電極2と全面的に連結される。
【0035】
この場合においても、フラックス3中に含まれる活性剤によって接合性が向上するが、前述のブリッジ形成効果により、バンプ表面の酸化膜が部分的にのみ除去されている場合においても良好な半田接合性が確保されるため、フラックス3中に含まれる活性剤には強い活性作用は要求されない。換言すれば金属粉8の添加により、活性作用が弱い低活性フラックスの使用が可能となっており、半田接合後にフラックス3が残留した状態においても電極2が活性成分によって腐食される度合が低い。したがって後述する金属粉8の特性による絶縁性向上効果と相俟って、半田接合後にフラックス除去のための洗浄を行わない無洗浄工法においても、十分な信頼性を確保することができる。
【0036】
上述のリフロー過程において図5(a)に示す個片の金属粉8は、加熱が継続されることにより、図5(b)に示すように、表面部8bがコア部8a中に拡散により徐々に取り込まれる。なおコア部8aの金属種および加熱温度によっては、表面部8bは液相のコア部8aに拡散する場合と、固相のコア部8aに拡散する場合とが存在するが、いずれの場合も表面部8bは徐々にコア部8a中に取り込まれる。
【0037】
そしてコア部8aを構成する金属の融点より高い温度まで加熱されることにより、表面部8bを固溶して取り込んだコア部8aは溶融し、溶融したコア部8aは表面張力によって凝集する。その後冷却固化することにより、図5(c)に示すように、その形状が略球状の金属粒子18となる。すなわち表面部8bをコア部8aに固溶して取り込むことにより、融点が高い銀などの貴金属が表面部8bとして用いられている金属粉8を、リフロー時の加熱によって金属粒子18に形状変化させることができる。この形状変化とともに、表面部8bが完全に取り込まれコア部8aの表面が露呈されることにより、金属粒子18の表面にはコア部8aが加熱により酸化した酸化膜8dが形成される。そしてこの酸化膜8dは、後述するように半田接合後の絶縁性を向上させるという効果を有する。
【0038】
図4(c)は、リフロー工程における所定の加熱サイクルを終了して、電子部品4と基板1とを冷却することにより、半田6aと金属粒子18とを固化させた状態を示している。半田6aが固化することにより、部品電極4bと電極2とを半田付けにより接続する半田部16が形成される。この半田部16の電極表面2a近傍には、半田付け過程において半田中に取り込まれた金属粉8が合金状態あるいは固溶状態で存在している。そして電極表面2aや電極2の周囲には、フラックス3から溶剤成分が蒸発した後のフラックス残渣(樹脂成分や活性剤)3aが、半田部16中に取り込まれなかった金属粉8が溶融固化した略球状の金属粒子18とともに残留する。
【0039】
図2(c)は、このようにして部品電極4bと電極2を連結する半田部16が全ての部品電極4bと電極2について形成され、電子部品4の基板1への半田付けが完了した状態を示している。これにより、図6に示す電子部品の半田付け構造が形成される。図6に示すように、部品電極4bと電極2とは半田部16によって接続されており、電極2の周囲には半田部16の下部を部分的に覆い基板1の表面まで拡がったフラックス残渣3aが付
着した状態で残留している。そしてフラックス残渣3a中には、リフロー過程において溶融半田6aに接触せず半田部16に取り込まれないまま残留した金属粒子18が点在している。
【0040】
すなわちこの電子部品の半田付け構造は、電子部品4の部品電極4bと電極2とを接続する半田部16と、半田部16の表面ならびに基板1の表面に残留したフラックス残渣3aとを有し、溶融した半田6aに接触しなかった金属粉8が溶融して略球状となり、表面に酸化膜8dを有する金属粒子18がフラックス残渣3aに含まれた形態となっている。このような半田付け構造により、電極間の絶縁性を確保する上で、次のような優れた効果を得る。
【0041】
半田接合工程後にフラックス除去のための洗浄を行わない無洗浄工法においては、フラックス残渣3aはそのまま電極2の周囲に残留する。金や銀などの金属をそのままフラックスに混入する金属粉として用いた場合には、残留量によっては電極間を電気的に腐食させて絶縁性を低下させるマイグレーションが発生するおそれがある。このため、従来は絶縁性の確保を勘案して金属粉の配合割合を低く抑える必要があり、この結果リフロー工程において溶融半田を導く半田濡れ性向上効果が十分に実現されない事態が生じていた。
【0042】
これに対し、上記構成の金属粉8を用いることにより、半田接合工程後に金属粉8が電極2の周囲に相当量残留した場合にあっても、金属粉8はリフロー時の加熱によって溶融して略球状の金属粒子18となっており、粒子相互が接触して連結した状態となる確率は極めて低い。さらに金属粒子18の表面は電気的に安定な酸化膜8dに覆われていることと相俟って、マイグレーションの発生が有効に防止され、良好な絶縁性が確保される。したがって上記構成の金属粉8を用いることにより、フラックス中に半田濡れ性確保に十分な量の金属粉を混入することによって半田接合性を向上させるとともに、半田接合後の絶縁性を確保して実装信頼性を向上させることが可能となっている。
【0043】
換言すれば、上述構成の金属粉8を用いることにより、半田接合性と絶縁性のいずれにも優れた無洗浄タイプのフラックス3が実現される。すなわち硬度が高くてバンプがつぶれにくい鉛フリー半田によってバンプが形成された電子部品を対象とする場合において、電子部品のそり変形やバンプサイズのばらつきなどによってバンプと基板の回路電極との間に隙間が生じている状態においても、バンプが回路電極と正常に半田付けされない実装不良の発生を有効に防止することができるとともに、半田付け後のフラックス除去のための洗浄を省略した無洗浄工法を採用する場合にあっても、良好な絶縁性を確保することができる。
【0044】
なお上記実施の形態においては、リフロー後においてフラックス除去のための洗浄を行わない無洗浄方式の例を示したが、より高い信頼性が求められる場合には、固化して球状になった金属粒子18とフラックス残渣3aを洗浄水で洗浄して、基板1上から除去する。この洗浄工程において、残留した金属粉はフラックス残渣3a中に除去が容易な金属粒子18の形で存在していることから、簡便な洗浄方法によって良好な洗浄品質を確保することができる。
【0045】
上述の電子部品の半田付け方法は、前述構成のフラックス3を半田バンプ6と電極2との間に介在させた状態で半田バンプ6を基板1の電極2に位置合わせし、次に電子部品4と基板1とを加熱して半田バンプ6を溶融させ、この溶融した半田を金属粉8の表面を濡れ伝わらせて電極2まで到達させ、さらに加熱を継続することにより溶融した半田に接触せずに残留した金属粉8を溶融させてその形状を略球状にし、その後基板1と電子部品4とを冷却して溶融した金属粉8と半田を固化させる形態となっている。
【0046】
なお上述の例では、フラックス3を塗布する工程において、バンプ6にフラックス3を転写して塗布する例を示しているが、これ以外にも各種の方法を用いることができる。例えば図7(a)に示すように、ディスペンサ9によってフラックス3を吐出させることにより、電極2へ供給するようにしてもよい。また、図7(b)に示すように、転写ピン10によってフラックス3を電極2上に転写により供給するようにしてもよい。
【0047】
さらには、図7(c)に示すように、スクリーン印刷によって電極2上にフラックス3を印刷するようにしてもよい。すなわち基板1上に電極2に対応したパターン孔11aが設けられたマスクプレート11を装着し、スキージ12によってパターン孔11a内にフラックス3を充填して電極2の表面に印刷する。
【0048】
(実施の形態2)
図8は本発明の実施の形態2の電子部品の半田付け構造の断面図である。本実施の形態2は、実施の形態1と同様の電子部品4を基板1に半田付けするに際し、バンプ6と電極2との半田接合性を向上させる半田接合助剤として、フラックス3の替わりに活性作用を有する熱硬化性樹脂を用いるようにしたものである。
【0049】
図6に示すように、実施の形態1と同様に、部品電極4bと電極2とは半田部16によって接続されており、電極2の周囲には半田部16の下部を部分的に覆い基板1の表面まで拡がった形状の樹脂部13が形成されている。樹脂部13は、半田接合助剤として用いられた熱硬化性樹脂がリフロー時の加熱で熱硬化することによって形成され、半田部16と電極2との接合部を補強する機能を有している。そして樹脂部13中には、リフロー過程において溶融した半田に接触せず半田部16に取り込まれないまま残留した金属粒子18が点在している。
【0050】
すなわちこの電子部品の半田付け構造は、電子部品4の部品電極4bと電極2とを接続する半田部16と、半田部16と電極2との接合部分を補強する樹脂部とを有し、溶融した半田に接触しなかった金属粉8が溶融して略球状となり、表面に酸化膜8dを有する金属粒子18が樹脂部に含まれた形態となっている。このような半田付け構造により、実施の形態1と同様に電極間の絶縁性が確保されるとともに、半田部16と電極2との接合部分が有効に補強され、実装信頼性を更に向上させることが可能となっている。
【0051】
この半田付け構造は、実施の形態1に示す電子部品の半田付け方法(図1,図2参照)において、フラックス3を活性作用を有する熱硬化性樹脂によって置き換えることにより実現される。すなわち、本実施の形態2に示す電子部品の半田付け方法においては、実施の形態1と同様の金属粉8を含んだ熱硬化性樹脂をバンプ6と電極2との間に介在させた状態で、電子部品1のバンプ6を基板1の電極2に位置合わせし、次に電子部品4と基板1とを加熱してバンプ6を溶融させ、この溶融した半田を金属粉8の表面を濡れ伝わらせて電極2まで到達させる。
【0052】
そしてさらに加熱を継続することにより、溶融した半田に接触せずに残留した金属粉8を溶融させてその形状を略球状にし、加熱により熱硬化性樹脂の硬化反応を促進させ、その後基板1と電子部品4とを冷却して溶融した金属粉8と半田6aを固化させる形態となっている。この半田付け方法においても、実施の形態1と同様に、半田接合性の向上と絶縁性の確保を両立させる効果を得る。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の電子部品の半田付け方法および電子部品の半田付け構造は、半田接合性と絶縁性の確保を両立させることができるという効果を有し、パッケージ部品を積層して半導体装置を形成するための半田付けなど、バンプと電極との間に隙間が生じやすい半田付け用
途に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態1の電子部品実装の工程説明図
【図2】本発明の実施の形態1の電子部品実装の工程説明図
【図3】本発明の実施の形態1の電子部品の半田付け方法に用いられるフラックスに含有される金属粉の形状および構成の説明図
【図4】本発明の実施の形態1の電子部品の半田付け方法における半田接合過程の説明図
【図5】本発明の実施の形態1の電子部品の半田付け方法に用いられるフラックスに含有される金属粉の断面図
【図6】本発明の実施の形態1の電子部品の半田付け構造の断面図
【図7】本発明の実施の形態1の電子部品実装における半田接合用ペーストの供給方法の説明図
【図8】本発明の実施の形態2の電子部品の半田付け構造の断面図
【符号の説明】
【0055】
1 基板
2 電極
3 フラックス
4 電子部品
4b 部品電極
6、6* バンプ
8 金属粉
8a コア部
8b 表面部
8d 酸化膜
13 樹脂部
18 金属粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品に設けられた半田バンプを基板の電極に位置合わせして加熱し、前記半田バンプを溶融させて前記電極に半田接合することにより前記電子部品を基板に半田付けする電子部品の半田付け方法であって、
前記半田バンプを構成する半田の液相温度よりも高い温度で溶融する金属からなるコア部と、溶融した前記半田に対する濡れ性が良く且つ溶融した前記コア部に固溶する金属からなる表面部とを有する薄片状もしくは樹枝状の金属粉を含んだフラックスを、前記半田バンプと電極との間に介在させた状態で前記電子部品の半田バンプを前記基板の電極に位置合わせし、
次に前記電子部品と基板とを加熱して前記半田バンプを溶融させ、この溶融した半田を前記金属粉の表面を濡れ伝わらせて前記電極まで到達させ、
さらに前記加熱を継続することにより前記溶融した半田に接触せずに残留した金属粉を溶融させてその形状を略球状にし、
その後前記基板と電子部品とを冷却して前記溶融した金属粉と前記半田を固化させることを特徴とする電子部品の半田付け方法。
【請求項2】
前記表面部を構成する金属は、金(Au)、銀(Ag)もしくはプラチナ(Pt)のいずれかであり、前記コア部を構成する金属は、錫(Sn)もしくは錫系の合金であることを特徴とする請求項1記載の電子部品の半田付け方法。
【請求項3】
さらに、固化して球状となった金属粉と前記フラックスの残渣とを洗浄水で洗浄して基板から除去することを特徴とする請求項1記載の電子部品の半田付け方法。
【請求項4】
電子部品に設けられた半田バンプを基板の電極に位置合わせして加熱し、前記半田バンプを溶融させて前記電極に半田接合することにより前記電子部品を基板に半田付けする電子部品の半田付け方法であって、
前記半田バンプを構成する半田の液相温度よりも高い温度で溶融する金属からなるコア部と、溶融した半田に対する濡れ性が良く溶融した前記コア部に固溶する金属からなる表面部とを有する薄片状もしくは樹枝状の金属粉を含んだ熱硬化性樹脂を、前記半田バンプと電極との間に介在させた状態で電子部品の半田バンプを基板の電極に位置合わせし、
次に前記電子部品と基板とを加熱して前記半田バンプを溶融させ、この溶融した半田を前記金属粉の表面を濡れ伝わらせて前記電極まで到達させ、
さらに前記加熱を継続することにより前記溶融した半田に接触せずに残留した金属粉を溶融させてその形状を略球状にし、
前記加熱により前記熱硬化性樹脂の硬化反応を促進させ、
その後前記基板と電子部品とを冷却して前記溶融した金属粉と前記半田を固化させることを特徴とする電子部品の半田付け方法。
【請求項5】
前記表面部を構成する金属は、金(Au)、銀(Ag)もしくはプラチナ(Pt)のいずれかであり、前記コア部を構成する金属は、錫(Sn)もしくは錫系の合金であることを特徴とする請求項4記載の電子部品の半田付け方法。
【請求項6】
請求項1記載の半田付け方法によって前記電子部品を基板に半田付けして成る電子部品の半田付け構造であって、
前記電子部品と前記電極とを接続する半田部と、前記半田部の表面ならびに基板の表面に残留したフラックス残渣とを有し、溶融した半田に接触しなかった前記金属粉が溶融して略球状となった金属粒子が前記フラックス残渣に含まれていることを特徴とする電子部品の半田付け構造。
【請求項7】
前記金属粒子が表面に酸化膜を有することを特徴とする請求項6記載の電子部品の半田付け構造。
【請求項8】
請求項4記載の半田付け方法によって前記電子部品を基板に半田付けして成る電子部品の半田付け構造であって、
前記バンプと基板の電極とを接続する半田部と、前記半田部と電極との接合部分を補強する樹脂部とを有し、溶融した半田に接触しなかった前記金属粉が溶融して略球状となった金属粒子が前記樹脂部に含まれていることを特徴とする電子部品の半田付け構造。
【請求項9】
前記金属粒子が表面に酸化膜を有することを特徴とする請求項8記載の電子部品の半田付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−134476(P2007−134476A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−325707(P2005−325707)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】