説明

電子部品実装装置

【課題】ペーストの転写に必要な荷重と転写ツールの自動交換に必要な荷重を使い分けることができる転写ヘッドを備えた電子部品実装装置を提供する。
【解決手段】電子部品を接着するためのペーストを基板に転写する転写ツール12を保持する転写ツール保持部21の上方にダイアフラム30を配置し、圧縮気体発生装置31から供給される圧縮気体をレギュレータで調圧することでダイアフラム30の内圧を変更し、ツール保持部21に付与する荷重の強弱を調整する。ペーストの転写時には低圧によって弱い荷重を付与し、転写ツールの交換時には高圧によって強い荷重を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写ツールを用いてペースト接着剤を基板に転写する電子部品実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品実装分野において、転写ヘッドで基板にフラックスや接着剤等のペーストを転写し、これに実装ヘッドで電子部品を搭載する実装装置がある(特許文献1参照)。転写ヘッドは、貯留されたペーストと基板の間を移動し、転写ピン(転写ツール)に一旦転写したペーストを基板に再度転写する。転写ツールは基板に搭載する電子部品の種類に応じた大きさや形状のものが用意され、必要に応じて専用のものに交換して使用される。
【特許文献1】特開2002−28568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般的な転写ヘッドは下降動作によって転写ツールに荷重を付与し、転写ツールを基板に押し付けてペーストを転写する。この転写荷重は転写すべきペーストの量や形状に応じて変更することが可能であるが、特に微小部品を取り扱う場合の転写ツールは非常に微細であるため、転写荷重が過大にならないように設計されている。このような転写ヘッドを用いて吸着ノズルの自動交換を行う実装ヘッドと同様に転写ヘッドの自動交換を実現しようとする場合、転写用に調整された荷重では転写ツールの着脱には不十分であるので、そのまま転用することはできない。
【0004】
本発明は、ペーストの転写に必要な荷重と転写ツールの自動交換に必要な荷重を使い分けることができる転写ヘッドを備えた電子部品実装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の電子部品実装装置は、電子部品を接着するためのペーストを基板に転写する転写ツールと、転写ツール保持部を下部に備えた転写ヘッドと、転写ツール保持部の下部に装着する転写ツールを保管する転写ツール保管部を備え、前記転写ヘッドが、下方に向けて作用する荷重を前記転写ツール保持部に付与する手段を備え、ペースト転写時には弱い荷重を付与し、転写ツール交換時には強い荷重を付与する。
【0006】
請求項2に記載の電子部品実装装置は請求項1に記載の電子部品実装装置であって、前記転写ツール保持部の上方にダイアフラムを配置し、前記ダイアフラムの内圧の変更によって前記ツール保持部に付与する荷重の強弱を調整する。
【発明の効果】
【0007】
ペースト転写時には転写ツール保持部に弱い荷重を付与し、転写ツール交換時には強い荷重を付与することで、転写ツールの自動交換を実現するとともに転写ツールおよび基板の変形や破損等の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は電子部品実装装置の斜視図、図2は転写ヘッドの側面図(一部断面図)、図3はダイアフラムに供給する圧縮空気の調圧システムのブロック図、図4は転写ツールの装着方法の説明図である。
【0009】
最初に電子部品実装装置について図1を参照して説明する。電子部品実装装置1は、ウ
ェハシートホルダ2と、ウェハシートホルダ2に保持されたウェハシート3からチップ4(電子部品)を取り出すピックアップヘッド5と、ウェハシート3から取り出したチップ4を仮置きするチップ中継テーブル6と、ウェハシート3から取り出したチップ4をピックアップヘッド5もしくはチップ中継テーブル6から受け取る実装ヘッド7と、基板8を支持する基板支持テーブル9と、ペースト貯留部10と、ペースト貯留部10に貯留されたペースト接着剤を基板8に転写して供給する転写ヘッド11と、転写ヘッド11に装着する転写ツール12を保管する転写ツール保管部13と、ウェハシート3に貼着されたチップ4の位置や向きを確認するための第1カメラ14と、チップ中継テーブル6に仮置きされたチップ4の位置や向きを確認するための第2カメラ15と、基板8に設定されたペースト接着剤の塗布位置を確認するための第3カメラ16と、実装ヘッド7が受け取ったチップ4の位置や向きを確認するための第4カメラ17を備えている。
【0010】
ピックアップヘッド5および実装ヘッド7、転写ヘッド11は、それぞれ独立して鉛直方向および水平方向(第1方向)に移動することができる。これに対しウェハシートホルダ2および基板支持テーブル9は、それぞれ独立して第1方向と、第1方向と水平面内で直交する第2方向に移動することができる。また、チップ中継テーブル6とツール保管部13は第2方向に移動することができる。さらにピックアップヘッド5は水平軸周りに反転し、チップ4を吸着したツール18の姿勢を下向きまたは上向きに変更することができる。
【0011】
次に転写ヘッド11について図2を参照して説明する。転写ヘッド11は本体部20と転写ツール12を着脱可能に保持する転写ツール保持部21とで構成されている。転写ツール保持部21は本体部20の下方に配置されている。転写ツール保持部21の下端部近くには、転写ツール12の上端部近くに形成されている溝22と係合する爪23が軸24によって枢支されている。爪23は転写ツール12を両側から挟んだ位置に対配置されており、弾性部材25によって互いに接近する方向に付勢されている。
【0012】
本体部20の下端部には軸受け26が装着されている。軸受け26は回転部材27を中心軸28回りに回転自在に軸受けしている。回転部材27には直動部材29が鉛直方向に移動自在に装着されている。転写ツール保持部21は直動部材29の下端に連結されている。従って転写ツール保持部21に装着されている転写ツール12は中心軸28回りに回転自在である。
【0013】
本体部20の内部にはダイアフラム30が装着されている。ダイアフラム30は外部の圧縮気体発生装置31から供給される圧縮気体によって内圧が上昇し、これにより直動部材29を押し下げる役割を担っている。直動部材29が押し下げられることで転写ツール保持部21には鉛直下方に向けて作用する荷重が付与される。
【0014】
図3に示すように、圧縮気体発生装置で発生した圧縮気体は2つのレギュレータ32、33によって減圧されてダイアフラム30に送られる。このうち転写用レギュレータ32は比較的低圧に調圧し、転写ツール装着用レギュレータ33はこれより高い圧力に調圧する。転写ヘッド11の本体部20には圧力切替バルブ34と大気開放バルブ35が内蔵されており、転写時には転写用レギュレータ32で調圧された低圧の圧縮気体をダイアフラム30に供給し、転写ツール装着時には転写ツール装着用レギュレータで調圧され高圧の圧縮気体をダイアフラム30に供給する。転写ヘッド11はダイアフラム30に供給する圧縮気体の圧力を低圧または高圧に切り替えることで転写ツール保持部21に付与する荷重を強弱の2通りに調整することができる。
【0015】
ペースト接着剤の転写時には、直動装置40の駆動によって転写ヘッド11を鉛直下方に移動させ、最下端に装着されている転写ツール12の先端部(下端部)を基板8に当接
させることで転写ツール12の先端部に付着しているペースト接着剤を基板8に転写する。このときダイアフラム30には低圧の圧縮空気が供給されており、転写ツール保持部21には弱い荷重しか付与されていないので、転写ツール12が基板8に接触したときに生じる衝撃荷重は大幅に緩和される。これにより転写ツール12や基板8の変形や破損等の発生を防止することができ、転写ツール12の寿命が延びるとともに転写の品質も向上する。
【0016】
転写ツール12の装着時には、装着しようとする転写ツール12の鉛直上方に転写ツール保持部21を位置合わせし(図4a)、直動装置40の駆動によって転写ヘッド11を鉛直下方に移動させ、転写ツール保持部21の爪23を転写ツール12の溝22に係合させる(図4b)ことで転写ツール12は転写ツール保持部21に自動的に装着される。爪23を溝22に係合させるためには一対の爪23の間を転写ツール12の上端部の径の大きさになるまで広げる必要がある。一対の爪23は転写ツール12の上端部に押し付けられると自ずと間隔が広がるように設計されているが、弾性部材25によって互いに近接する方向に付勢されているので、この付勢力に抗するだけの荷重を転写ツール保持部21に付与しなければならない。この付勢力は転写ヘッド11が高速で動作する際の慣性によって転写ツール12が脱落することなく確実に保持されるように設定されており、これに抗する荷重は転写時に必要な荷重より大きいので、転写ツール装着時には転写時の圧力より高圧の圧縮気体をダイアフラム30に供給しなければならない。
【0017】
通常の転写作業時には転写用レギュレータ32で調圧された圧縮気体がダイアフラム30に供給されているので、転写ツール12を交換する際には転写ツール装着用レギュレータ33で調圧された圧縮気体がダイアフラム30に供給されるように圧力切替バルブ34の切り替えを行う。転写ツール12の交換作業が終了したら、ダイアフラム30内の高圧の圧縮気体を大気開放した後に圧力切替バルブ34の切り替えによって低圧の圧縮気体がダイアフラム30に供給されるようにした後に転写作業を再開する。
【0018】
以上説明したように本実施の形態の電子部品実装装置1は、ダイアフラム30に供給する圧縮気体の圧力の変化によって転写ツール保持部21に作用する荷重の強弱の調整ができるように構成されているので、転写時と転写ツール装着時で異なる荷重の調整を圧力切替バルブ34のみの操作によって簡単かつ確実に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、転写ツールを用いてペースト接着剤を基板に転写する場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】電子部品実装装置の斜視図
【図2】転写ヘッドの側面図(一部断面図)
【図3】ダイアフラムに供給する圧縮空気の調圧システムのブロック図
【図4】転写ツールの装着方法の説明図
【符号の説明】
【0021】
1 電子部品実装装置
4 チップ
11 転写ヘッド
12 転写ツール
13 転写ツール保管部
21 転写ツール保持部
30 ダイアフラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を接着するためのペーストを基板に転写する転写ツールと、転写ツール保持部を下部に備えた転写ヘッドと、転写ツール保持部の下部に装着する転写ツールを保管する転写ツール保管部を備え、
前記転写ヘッドが、下方に向けて作用する荷重を前記転写ツール保持部に付与する手段を備え、ペースト転写時には弱い荷重を付与し、転写ツール交換時には強い荷重を付与することを特徴とする電子部品実装装置。
【請求項2】
前記転写ツール保持部の上方にダイアフラムを配置し、前記ダイアフラムの内圧の変更によって前記ツール保持部に付与する荷重の強弱を調整することを特徴とする請求項1に記載の電子部品実装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−98210(P2010−98210A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269417(P2008−269417)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】