説明

電子銃および電子銃を用いた電子ビーム描画装置

【課題】カソードの寿命を向上させることのできる電子銃およびその電子銃を使用した電子ビーム描画装置を提供する。
【解決手段】電子を放出するエミッタ10を有する電子銃において、エミッタ10を、電子放射特性を有する第1の材料からなる第1の部材11と、第1の材料より仕事関数が大きい第2の材料からなる、第1の部材11を被覆する第2の部材12とを有するように構成し、さらに、第1の部材11と第2の部材12との間に溝15を設ける。溝の長さ(H+W)は50μm以上であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子銃および電子銃を用いた電子ビーム描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)の高集積化および大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路線幅は益々狭く、微細になっている。
半導体素子は、回路パターンが形成された原画パターン(マスクまたはレチクルを指す。以下では、マスクと総称する。)を用い、いわゆるステッパと呼ばれる縮小投影露光装置でウェハ上にパターンを露光転写して回路形成することにより製造される。こうした微細な回路パターンをウェハに転写するためのマスクの製造には、微細パターンを描画可能な電子ビーム描画装置が用いられる。また、レーザビームを用いて描画するレーザビーム描画装置の開発も試みられている。尚、電子ビーム描画装置は、ウェハに直接パターン回路を描画する場合にも用いられる。
【0003】
電子ビームリソグラフィ技術は、利用する電子ビームが荷電粒子ビームであるために、本質的に優れた解像度を有している。このため、ウェハにLSIパターンを転写する際の原版となるマスクまたはレチクルの製造現場においても、電子ビームリソグラフィ技術が広く一般に使われている。さらに、電子ビームリソグラフィ技術を用いて、ウェハ上にパターンを直接描画する電子ビーム描画装置が、DRAMを代表とする最先端デバイスの開発に適用されている。他に、電子ビーム描画装置は、一部ASICの生産にも用いられている。
【0004】
電子ビームリソグラフィ技術を用いる電子ビーム描画装置では電子ビームを発するための電子銃を有する。
電子銃は、電子源であるカソードと、アース電極をもつアノードを備える。また、カソードは、電子を放出するエミッタと、カソードに印加する電圧よりも低い電位を与えられてカソードから出射される電子を収束させるウェネルトを有する。
【0005】
電子ビーム描画装置の描画動作時において、電子銃の周囲は高真空となる。この状態で、カソードとアノードの間に高電圧(加速電圧)を印加するとともにエミッタを加熱する。すると、エミッタから熱電子が出射し、この熱電子が加速電圧により加速されて電子ビームとして放出される。電子ビームは、電子ビーム描画装置内に設けられた各種レンズ、各種偏向器、ビーム成形用アパーチャ等により所要の形状に成形される。成形された電子ビームは、電子ビーム描画装置の下部に配置された試料室内の試料に照射され、これにより試料にパターンが描画される。
【0006】
エミッタを構成する材料としては、電子放射特性を有する六硼化ランタン(LaB)が知られている。この材料は、高い融点と低い仕事関数(2.68eV)を持つ。また、残留ガスに対して比較的安定で、長寿命でもある。さらに、優れたイオン衝撃性を有することから、電子ビーム描画装置だけでなく、電離真空計やオメガトロンのフィラメントなどの熱カソードにも使用されている。
【0007】
ところで、電子銃では、輝度を向上させるために、電子放射特性を有するエミッタ構成材の表面を、その材料より仕事関数の大きい材料からなる被覆材で被覆して、エミッタからの電子の放出面積を制限することが行われる。例えば、非特許文献1には、六硼化ランタン(LaB)をカーボン(C)で被覆することが記載されている。具体的な被覆方法としては、CVD(Chemichal Vapor Deposition)法によりカーボン(C)を六硼化ランタン(LaB)の表面に蒸着したり、この表面にカーボン(C)を含む液を塗布したり、あるいは、この液の中に六硼化ランタン(LaB)を浸漬したりすることが挙げられる。被覆後は、機械加工によってカーボン(C)の一部から六硼化ランタン(LaB)を露出させ、この部分を通じて電子が放出されるようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献1】P.B.Sewell et al.(ピー・ビー・セウェルら)、「微細平面を有する六硼化ランタン単結晶における熱的エミッションの研究」、Electoron Optical Systems,pp.163−170、SEM Inc., AMF O’Hare (Chicago), IL60666−0507,U.S.A.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記エミッタを用いたカソードを組み込んだ電子銃では、一定時間の使用の後、電子銃から放出される電子ビームの電流密度分布の均一性に劣化が見られるという問題があった。
【0010】
図12は、この様子を示したものであり、ビーム成形用アパーチャ上に照射される電子ビームの電流密度分布を模式的に示す図である。図12(a)では、電子銃の使用初期の状態を模式的に示しており、図12(b)では、一定時間経過後の状態を模式的に示している。
【0011】
図12(a)に示すように、ビーム成形用アパーチャ201上に照射される電子ビームは、電流密度の均一性を広い領域で実現している。そして、電流密度の均一性が1%以内である電子ビームの領域202がビーム成形アパーチャ201より大きな円形状を示す。
【0012】
一方、図12(b)に示すように、電子銃の使用開始から一定時間の経過後では、電子ビームの電流密度分布の均一性が劣化している。すなわち、電流密度の均一性が1%以内である電子ビームの領域212は形状が乱れて円形ではなくなり、また、ビーム成形用アパーチャ211より小さくなる。このように電流密度分布の均一性が悪い状態で描画を行うと、ドーズ量分布の均一性が劣化し、描画精度を低下させる。
【0013】
したがって、電子ビームにおいて電流密度の均一性が1%以内である領域が成形アパーチャより小さくなったときにカソードは交換される。このような、カソードの交換が頻繁に行われると、装置のダウンタイムは大きくなる。したがって、改善が急務となっていた。
【0014】
本発明は、こうした点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、カソードの寿命を向上させることのできる電子銃およびその電子銃を使用した電子ビーム描画装置を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様は、電子を放出するエミッタを有する電子銃であって、
エミッタは、電子放射特性を有する第1の材料からなる第1の部材と、
第1の材料より仕事関数が大きい第2の材料からなり、第1の部材を被覆する第2の部材とを有するとともに、
第1の部材と第2の部材との間に形成された溝を有することを特徴とするものである。
【0017】
本発明の第1の態様において、第1の部材は、端面が第2の部材から露出し、
溝は、端面の周縁に形成され、周縁部分から第1の層と前記第2の層とが接する部分までの長さが50μm以上であることが好ましい。
【0018】
本発明の第1の態様において、第1の部材は、溝と接する部分の表面を荒らす処理がなされていることが好ましい。
【0019】
本発明の第1の態様において、第1の部材は、円柱体の先端側に断面積のより小さい円柱体を形成した形状であるか、または、円柱体の先端側を円錐台にした形状であり、
溝は、断面形状が、矩形または三角形であることが好ましい。
【0020】
本発明の第2の態様は、電子ビームを発する電子銃を有する電子ビーム描画装置であって、
電子銃は、電子を放出するエミッタを有し、
エミッタは、電子放射特性を有する第1の材料からなる第1の部材と、
第1の材料より仕事関数が大きい第2の材料からなり、第1の部材を被覆する第2の部材とを有するとともに、
第1の部材と第2の部材との間に形成された溝を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、放出される電子ビームの電流密度の変動を抑え、寿命を長くすることができる電子銃およびそのような電子銃を用いた電子ビーム描画装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】電子銃を一定時間使用した後のエミッタの模式的断面図である。
【図2】電子ビーム描画装置を動作させた後のエミッタの形状変化を説明する図である。
【図3】本実施の形態の電子銃の第1例に組み込まれるエミッタの模式的断面図である。
【図4】本実施の形態の電子銃の第1例に組み込まれるエミッタの製造方法を示すフローチャートである。
【図5】本実施の形態の電子銃の第1例に組み込まれるエミッタの別の例の模式的断面図である。
【図6】本実施の形態の電子銃の第2例に組み込まれるエミッタの模式的断面図である。
【図7】コーン角θと比((溝幅W)/(電子放出面の直径D))との関係を示す図である。
【図8】本実施の形態の電子銃の第3例に組み込まれるエミッタの模式的断面図である。
【図9】本実施の形態の電子ビーム描画装置における熱電子放射陰極型の電子銃の概略構成を示す図である。
【図10】本実施の形態の電子ビーム描画装置の構成図である。
【図11】本実施の形態における電子ビーム描画方法の説明図である。
【図12】(a)および(b)は、ビーム成形用アパーチャ上に照射される電子ビームの電流密度分布を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
電子銃では、輝度を向上させるために、エミッタ構成材の材料に六硼化ランタン(LaB)を選択し、上述のように、この表面をそれより仕事関数の大きい材料、例えばカーボン(C)で被覆する。そして、エミッタの電子放出面を所望の円形状として露出させ、エミッタからの電子の放出面積を制限することが行われる。
こうした電子銃では、一定時間の使用により、放出される電子ビームの電流密度が変動してしまう。
そこで、本発明者は、鋭意検討を続けた結果、以下の現象を見出した。
【0024】
図1は、電子銃を一定時間使用した後のエミッタの模式的断面図である。
電子銃の一定時間の使用の後に、エミッタ構成材である六硼化ランタン(LaB)層1では、被覆材であるカーボン層(C)2との境界付近に脆弱な層3が形成される。この六硼化ランタン(LaB)層1の脆弱な層3は、被覆材であるカーボン(C)が六硼化ランタン(LaB)と反応することにより形成されたと考えられる。脆弱な層3は、カーボン(C)層2から六硼化ランタン(LaB)層1が露出しているエミッタの電子放出面4を侵食する。
【0025】
図2は、電子ビーム描画装置を動作させた後のエミッタの形状変化を説明する図であり、エミッタの模式的断面図と、これに対応する模式的平面図である。
このような状態のエミッタをカソードに用い、電子ビーム描画装置の電子銃に組み込んだまま、電子ビーム描画装置を動作させてエミッタの加熱を続けると、脆弱な層3から蒸発または離脱が起こると考えられる。すると、図2に示すように、エミッタの電子放出面4aの形状は変化する。そして、図2に示すように、エミッタの電子放出面4aの形状は乱れて円形ではなくなる。このため電子放出面4aから出た電子ビームの電流密度分布の均一な領域の形状も、上述した図12(b)に示すように円形でなくなり、電流密度の均一な領域が狭まる結果となる。
【0026】
そこで、本実施の形態においては、エミッタの形状を改善する。そして、被覆材であるカーボン(C)の作用が、六硼化ランタン(LaB)からなるエミッタの電子放出面におよぶことを制限する。
【0027】
本実施の形態では、エミッタ構成材である六硼化ランタン(LaB)層と、被覆材であるカーボン層との境界付近に溝を設ける。この溝は、エミッタの電子放出面の周縁部分から、六硼化ランタン(LaB)層とカーボン層とが接する部分までの長さが50μm以上となるよう形成されている。
【0028】
すなわち、溝の断面形状が矩形である場合、溝の長さは溝の深さと幅の合計したものとなり、その合計は50μm以上であることが好ましい。また、六硼化ランタン(LaB)層の先端部が円錐台形状である場合、溝は断面形状が三角形となる。そして、六硼化ランタン(LaB)層の円錐台形状のコーン長が溝の長さとなり、それは50μm以上であることが好ましい。
以下、本実施の形態を説明する。
【0029】
図3は、本発明の実施形態の電子銃の第1例に組み込まれるエミッタの模式的断面図である。
【0030】
図3に示すように、エミッタ10は、エミッタ構成材である六硼化ランタン(LaB)層11の表面が、被覆材であるカーボン層(C)12によって被覆され構成されている。LaB層11は、円柱体である。LaB層11とカーボン層12との境界付近には溝15が設けられている。そのため、LaB層11は、円柱体の先端側に、断面積のより小さい円柱体を形成した形状を有する。その端面は、カーボン層12から露出し、エミッタ10の円形状の電子放出面14を構成する。
【0031】
電子放出面14における結晶面はどのような面でもよいが、(100)結晶面や(310)結晶面とすることが好ましい。電子放出面14を(100)面とすることによりエミッタ10の高い安定性が得られる。そして、(310)結晶面とすることにより、高輝度のエミッタ10を提供することができる。
そして、エミッタ10では、LaB層11の先端部分から溝15が形成された形状となっている。溝15はLaB層11の先端部および電子放出面14の周囲を包囲し、断面形状は矩形となっている。
【0032】
溝15の長さは50μm以上とすることが好ましい。具体的には、電子放出面14の周縁の部分から、六硼化ランタン(LaB)層とカーボン層とが接する部分に至るまでの長さが50μm以上であることが好ましい。図3のエミッタ10では、溝15は断面形状が矩形であり、溝15の長さは、溝の深さ(H)と溝の幅(W)を合計した長さとなる。したがって、エミッタ10では、溝の深さ(H)と溝の幅(W)を合計した長さが50μm以上であることが好ましい。
【0033】
このような形状のエミッタ10を組み込んでカソードを構成した電子銃では、長時間使用しても、被覆材であるカーボン(C)の作用が電子放出面14におよぶことは抑えられる。その結果、電子銃では、エミッタ10の電子放出面14の形状が変化することは抑えられ、その形状は円形に保たれる。このため、電子銃では、長時間使用した後でもエミッタ10から放出される電子ビームの電流密度分布の均一な領域の形状は円形になり、カソードの寿命が向上する。そのため、電子ビーム描画装置のダウンタイムを従来に比べて大幅に短縮することができる。
【0034】
次に、本実施の形態の電子銃の第1例に組み込まれるエミッタ10の製造方法について説明する。
【0035】
図4は、本実施の形態の電子銃の第1例に組み込まれるエミッタの製造方法を示すフローチャートである。
【0036】
図4に示すように、まず、エミッタ10の構成材となる六硼化ランタン(LaB)を準備する(S101)。六硼化ランタン(LaB)は円柱状であり、先端部が加工され、円柱体の先端側に断面積のより小さい円柱体を形成した形状を有する。一方、六硼化ランタン(LaB)の被覆材となるカーボン(C)については、所定の筒状形状となるよう予め加工しておく。
【0037】
次に、筒状のカーボン(C)内に、先端部分が加工された円柱状の六硼化ランタン(LaB)を挿入し、これを被覆する(S102)。
【0038】
次に、カーボン(C)の先端側の一部から六硼化ランタン(LaB)の先端を露出させる。次いで、機械研削または機械研磨などによって、露出する六硼化ランタン(LaB)を機械加工する。そして、カーボン(C)の上部端面と露出する六硼化ランタン(LaB)の端面を合わせ、エミッタの電子放出面を形成する(S103)。
【0039】
次に、このエミッタ10を用いて公知の方法によりカソードを製造する(S104)。さらに、このカソードを用いて電子銃を製造し、得られた電子銃を組込んで用いて電子ビーム描画装置を製造することができる(S105)。S105の電子銃および電子ビーム描画装置の製造方法には、それぞれ公知の方法が適用できる。
【0040】
本実施の形態の電子銃の第1例に組み込まれるエミッタのさらに別の例として、六硼化ランタン(LaB)層の溝と接する側面部分を荒らす処理をしたエミッタを用いることも可能である。
図5は、上記別の例となるエミッタの模式的断面図である。
【0041】
図5に示すエミッタ20は、溝25の側面を構成する六硼化ランタン(LaB)層21の表面が荒らされていること以外は、上述のエミッタ10と同様の構造を有する。エミッタ20において、LaB層21の端面には円形状の電子放出面24が形成され、LaB層21とカーボン層22との境界には、断面が矩形状の溝25が設けられている。
【0042】
LaB層21の溝25の一つの側面と底面に接する側面部26は、表面粗さが粗くなるよう処理されており、仕事関数の大きな結晶面が出てくるようになっている。そのため、エミッタ20では、側面部26の仕事関数が他の部分に比べ大きくなり、電子が放出され難くなる。したがって、エミッタ20では、上述のエミッタ10に比べ、電子放出面から放出される電子ビーム電流の、全エミッション電流に対する割合を大きくすることができる。その結果、エミッタ20を用いたカソードを組み込んだ電子銃では輝度が高くなる。
【0043】
エミッタ20において、LaB層21の一部表面を粗くする処理方法としては、化学エッチングなどの方法を用いることができる。
すなわち、上述した図4に示すエミッタ10の製造方法と同様の方法を用い、ステップS101で、LaB層21の表面を化学エッチングにより荒らしておき、その後、ステップS103で表面研磨し、エミッタ20の電子放出面24を形成し、エミッタ20を製造することが可能である。
【0044】
次に、図6を用いて、本実施の形態の電子銃の第2例に組み込まれるエミッタを説明する。
【0045】
図6に示すように、エミッタ130は、エミッタ構成材である六硼化ランタン(LaB)層131の表面が、被覆材であるカーボン(C)層132によって被覆され構成されている。
【0046】
LaB層131とカーボン層132との境界付近には溝135が設けられている。そのため、LaB層131は、円柱体の先端側が円錐台となるよう形成され、端面が平面となる形状を有する。その端面は、カーボン層132から露出し、エミッタ130の円形状の電子放出面134を構成する。
【0047】
電子放出面134における結晶面はどんな面でもよいが、(100)結晶面や(310)結晶面とすることが好ましい。電子放出面134を(100)面とすることによりエミッタ130の高い安定性が得られる。そして、(310)結晶面とすることにより、高輝度のエミッタ130を提供することができる。
【0048】
溝135は、LaB層131の先端部および電子放出面134の周囲を包囲するとともに、断面形状が三角形となっている。
図6に示すように、溝135では、直径(D)の電子放出面134に対し、溝幅Wとコーン長Lとコーン角θとがそれぞれ定義される。
【0049】
溝135の長さは50μm以上とすることが好ましい。具体的には、電子放出面134の周縁の部分から、LaB層131とカーボン層132とが接する部分に至るまでの長さが50μm以上であることが好ましい。図6のエミッタ130では、LaB層131の先端部が円錐台に形成されており、溝135の長さは、コーン長Lとなる。
こうしたエミッタ130の製造方法については、所望の形状に加工された六硼化ランタン(LaB)を用い、上述の電子銃の第1例に組み込まれるエミッタ10と同様とすることが可能である。
【0050】
そして、本実施の形態の電子銃の第2例では、溝幅Wとコーン角θとを様々に変化させた多様な形状のエミッタを準備し、それらカソードに組み込んで電子銃を構成し、その電子銃を電子ビーム描画装置に組み込んで動作させ、高効率なエミッタを構成する溝幅Wとコーン角θとの関係を明らかにした。
【0051】
図7は、高い電子放出効率を実現する、コーン角θと、溝幅Dと電子放出面134の直径Dとの比(W/D)の関係を示す図である。
【0052】
上述の電子ビーム描画装置の動作実験は、設定条件として、加速電圧を50kVとし、エミッタ130の電子放出面134を(100)面、エミッタの温度を1800Kとして行われた。
【0053】
この実験の結果を示す図7は、全エミッション電流(Itotal)対する、エミッタ130の電子放出面134から放出されるビーム電流(Itip)の割合(Itip/Itotal)が、90%となるコーン角θと比(W/D)の組み合わせについて、コーン角θをX軸、比(W/D)をY軸にしてプロットした図となる。
【0054】
図7のプロットから、(Itip/Itotal)が90%以上となるため、以下の関係を近似的に導出することができる。
W/D<−0.0008×2θ+0.17 式(1)
【0055】
したがって、比(W/D)とコーン角θとの関係が、式(1)を満足するようにエミッタ130の溝135の溝幅Wとコーン角θとを選択することにより、高効率のエミッタを構成することができる。
具体的には、コーン角θを用いて算出される、(−0.0008×2θ+0.17)の値が、溝幅Wと電子放出面134の直径Dとを用いて算出される比(W/D)より大きい場合、(Itip/Itotal)は90%以上となる。
【0056】
このような形状を有するエミッタ130を組み込んでカソードを構成した電子銃では、高い輝度が得られるとともに、長時間使用しても、被覆材であるカーボン(C)の作用が電子放出面134におよぶことは抑えられる。その結果、電子銃では、エミッタ130の電子放出面134の形状が変化することは抑えられ、その形状は円形に保たれる。このため、電子銃では、長時間使用した後でもエミッタ130から放出される電子ビームの電流密度分布の均一な領域の形状は円形になり、カソードの寿命が向上する。そして、電子ビーム描画装置のダウンタイムを従来に比べて大幅に短縮することができる。
【0057】
また、エミッタ130では、電子銃の第1例に組み込まれるエミッタの別の例(図5のエミッタ20)と同様の、別の例を構成することも可能である。すなわち、溝と接する六硼化ランタン(LaB)層の表面を荒らすことが可能である。この別の例では、溝の側面と接する六硼化ランタン(LaB)層の表面が荒らされていること以外は、上述のエミッタ130と同様の構造を有する。
【0058】
エミッタ130の別の例では、LaB層の溝のテーパ面を形成する部分は、表面粗さが粗くなるよう処理されており、仕事関数の大きな結晶面が出てくるようになっている。そのため、このエミッタでは、その部分の仕事関数が他の部分に比べ大きくなり、電子が放出され難くなる。したがって、このエミッタでは、上述のエミッタ130に比べ、電子放出面から放出される電子ビーム電流の、全エミッション電流に対する割合を大きくすることができる。その結果、この例のエミッタを用いたカソードを組み込んだ電子銃では電子ビームの電流密度を高くすることができる。
【0059】
次に、図8を用いて、本実施の形態の電子銃の第3例に組み込まれるエミッタを説明する。
【0060】
図8に示すように、エミッタ140は、エミッタ構成材である六硼化ランタン(LaB)層141の表面が、被覆材であるカーボン層142によって被覆され構成されている。LaB層141は、円柱体である。LaB層141とカーボン層142との境界付近には溝145が設けられている。そして特に、エミッタ140では、カーボン層141の先端部分に溝145が形成されている。溝145は、LaB層141の周囲を包囲する。
【0061】
LaB層141は円柱体である。LaB層141の端面は、カーボン層142から露出し、エミッタ140の円形状の電子放出面144を構成する。
電子放出面144における結晶面はどんな面でもよいが、(100)結晶面や(310)結晶面とすることが好ましい。電子放出面144を(100)面とすることによりエミッタ140の高い安定性が得られる。そして、(310)結晶面とすることにより、高輝度のエミッタ140を提供することができる。
【0062】
溝145はLaB層141の先端部および電子放出面144の周囲を包囲し、断面形状は矩形となっている。
溝145の長さは、50μm以上とすることが好ましい。具体的には、エミッタ140の電子放出面144の周縁部から、カーボン層142とLaB層141との接触点までは、50μm以上とすることが好ましい。図8のエミッタ140では、溝145は断面形状が矩形であり、溝145の長さは、溝145の深さ(H)となる。
尚、溝145の幅(W)については、溝145に包囲されるLaB層141の側面から電子が放出されない程度の幅(W)とすることが好ましい。
【0063】
以上の形状を有するエミッタ140の製造方法については、所望の円柱状に加工された六硼化ランタン(LaB)と、所定の溝が形成できるよう所望の筒状形状に加工されたカーボン(C)とを用い、上述の電子銃の第1例に組み込まれるエミッタ10と同様とすることができる。
また、溝145と接する六硼化ランタン(LaB)層141の表面を、電子銃の第1例に組み込まれるエミッタの別の例(図5のエミッタ20)と同様に、荒らすことも可能である。その場合、六硼化ランタン(LaB)層141の所定部分の表面が荒らされていること以外は、エミッタ140と同様の構造を有することが好ましい。
【0064】
このような形状のエミッタ140を組み込んでカソードを構成した電子銃では、長時間使用しても、被覆材であるカーボン(C)の作用が電子放出面144におよぶことは抑えられる。その結果、電子銃では、エミッタ140の電子放出面144の形状が変化することが抑えられ、その形状は円形に保たれる。このため、電子銃では、長時間使用した後でもエミッタ140から放出される電子ビームの電流密度分布の均一な領域の形状は円形になり、カソードの寿命が向上する。そのため、電子ビーム描画装置のダウンタイムを従来に比べて大幅に短縮することができる。
【0065】
尚、以上で説明した本発明の実施形態の電子銃では、エミッタを構成する材料として六硼化ランタン(LaB)以外のものを用いることができる。エミッタの構成材料には、高い電気伝導、高温における機械的強度と化学的安定性が求められる。ここで、高温における機械的強度と化学的安定性は、高い融点を有することによって実現可能である。尚、高い融点とは、具体的には、電子ビーム描画装置の動作温度より高い融点を言う。こうした特性を満たし、さらに六硼化ランタン(LaB)と同程度に低い仕事関数を有する材料としては、六硼化セリウム(CeB)、六硼化ガドリニウム(GdB)、六硼化イットリウム(YB)などの金属六硼化物が挙げられる。また、タングステン(W)などをエミッタの構成材料として用いることも可能である。タングステン(W)は、六硼化ランタン(LaB)や六硼化セリウム(CeB)に比べて融点が高いので、例えば、2000K程度の温度で加熱処理することも可能である。
【0066】
一方、六硼化ランタン(LaB)などの電子を放出する材料は、カーボン(C)以外の材料によって被覆されてもよい。但し、電子ビーム描画装置の動作時において機械的にも化学的にも安定であって、六硼化ランタン(LaB)などの電子を放出する材料に比べて仕事関数の大きいもの、例えば、1.5〜2倍程度の大きさの仕事関数を有する材料を用いる。
【0067】
また、以上で説明した本発明の実施形態における電子銃に組み込まれるエミッタでは、溝の断面形状が矩形または三角形となっている。すなわち、溝の断面は、電子放出面の周縁部からカーボン層とLaB層との接触点までの間に、2つまたは1つの辺を有して構成される形状とされている。
【0068】
しかしながら、本実施の形態の電子銃のエミッタでは、溝について、そのような形状に限られるわけではない。溝の断面は、電子放出面の周縁部からカーボン層とLaB層との接触点までの間に3つ以上の辺を有して構成される多角形状とすることが可能である。
【0069】
また、溝を、その断面において、電子放出面の周縁部からカーボン層とLaB層との接触点までの間が1つの辺である形状とするが、その辺が内側または外側に向かって丸みを帯びるように形状を選択することも可能である。その場合、LaB層は、溝と接する側面部分が内側または外側に向かって丸みを帯びた形状を有することになる。
【0070】
また、エミッタの電子放出面について、円形状の平面を有する例について説明したが、本発明の実施形態の電子銃ではそのような形状に限るわけではない。
エミッタの電子放出面を楕円形状とするなど、円でない形状を選択することが可能である。また、球面等の平面ではない形状を選択することも可能である。
【0071】
次に、図9は、本実施の形態の電子ビーム描画装置における熱電子放射陰極型の電子銃の概略構成を示す図である。この図に示すように、本発明の実施形態の電子銃は、電子源であるカソード101と、アース電極をもつアノード106とを備える。また、カソード101は、図3に示した上述のエミッタ10と、エミッタ10に印加する電圧よりも低い電位を与えられてエミッタ10から出射される電子を収束させるウェネルト105と、支持電極107、108を支持するベース112とを有する。ウェネルト105はエミッタ10から射出される電子ビームが通過する開口部分を具備し、この開口部分は電子ビームを収束させるのに適当なように径が選択されている。そして、エミッタ10は、支持電極107と支持電極108に支持され、ヒータ109およびヒータ110によって加熱可能な構成となっている。
【0072】
尚、本発明の実施形態の電子銃は、上述のように、電子を放出するエミッタ10に代えてその別の例を用いることができる。また、エミッタ10に代え、図6に示すエミッタ130およびその別の例、並びに、図8に示すエミッタ140を用いることも可能である。
【0073】
電子ビーム描画装置の描画動作時において、第1実施形態の電子銃の周囲は高真空となる。この状態で、カソード101とアノード106の間に、例えば50kV程度の高電圧(加速電圧)を、加速電源111を用いて印加する。また、加熱電源103を用いて支持電極107、108の間に加熱電圧を印加することにより、ヒータ109、110を通電加熱してエミッタ10を加熱する。すると、エミッタ10から熱電子が出射し、この熱電子が加速電圧により加速されて電子ビームとして放出される。電子ビームは、後述するように、電子ビーム描画装置内に設けられた各種レンズ、各種偏向器、ビーム成形用アパーチャ等により所要の形状に成形される。成形された電子ビームは、電子ビーム描画装置の下部に配置された試料室内の試料に照射され、これにより試料にパターンが描画される。
【0074】
このとき、アノード106は上述のように接地されているので、エミッタ10には支持電極107、108を介して負の高電圧が印加されていることになる。そして、ウェネルト105の電位は、バイアス電源102の作用によりカソード電位よりもさらに100V〜1000V程度低い。これにより、エミッタ10から放出される電子ビームが制限されると同時に、収束作用を有するレンズとして動作し、ウェネルト105の開口部分を通過する電子ビームにおいては、焦点、すなわち、クロスオーバが形成される。
【0075】
尚、従来の電子銃では、描画動作時の加熱によりエミッタの構成材料が徐々に蒸発すると、これに伴って電子ビームの電流密度分布も徐々に劣化する。そして、電流密度の均一性が所定のレベル以下になったとき、カソードは交換が必要となる。このような、カソードの交換が頻繁に行われると、電子ビーム描画装置のダウンタイムは大きくなる。
本実施の形態の電子銃では、上述のエミッタ10を使用し、カソード101の寿命が向上されている。したがって、装置のダウンタイムは小さい。
【0076】
次に、本実施の形態の電子銃を用いた電子ビーム描画装置について説明する。
【0077】
図10は、本実施の形態の電子ビーム描画装置の構成図である。この図において、電子ビーム描画装置30の試料室31内には、試料であるマスク基板32が設置されたステージ33が設けられている。ステージ33は、ステージ駆動回路34によりX方向(紙面における左右方向)とY方向(紙面における垂直方向)に駆動される。ステージ33の移動位置は、レーザ測長計等を用いた位置回路35により測定される。
【0078】
試料室31の上方には、電子ビーム光学系40が設置されている。この光学系40は、上述のエミッタ10が組み込まれた本発明の実施形態の電子銃100、各種レンズ37、38、39、41、42、ブランキング用偏向器43、成形偏向器44、ビーム走査用の主偏向器45、ビーム走査用の副偏向器46、および、2個のビーム成形用アパーチャ47、48等から構成されている。
尚、本実施の形態の電子ビーム描画装置30においては、エミッタ10を用いた電子銃100以外に、エミッタ10の別の例、図6に示すエミッタ130およびその別の例、ならびに図8に示すエミッタ140の中から適宜選択されたエミッタを用いた電子銃を使用することが可能である。
【0079】
本実施の形態の電子銃100では、図3に示したエミッタ10(図10中では図示されない)を使用し、カソード101(図10中では図示されない)の寿命が向上されている。したがって、電子ビーム描画装置30の動作時において、エミッタ10から放出される電子ビームの電流密度分布の均一性が大きく劣化することはない。したがって、カソードの交換頻度を少なくすることができ、電子ビーム描画装置30のダウンタイムを従来に比べて大幅に短縮することができる。
【0080】
図11は、本実施の形態における電子ビーム描画方法の説明図である。この描画方法は、本実施の形態の電子ビーム描画装置30を使用することにより実現される。すなわち、図11に示す電子ビーム84は、本実施の形態の電子ビーム描画装置30の電子銃100によって放出された電子ビームである。
【0081】
図11に示すように、マスク基板32上に描画されるパターン81は、短冊状のフレーム領域82に分割されている。電子ビーム描画装置30の電子銃100によって放出される電子ビーム84による描画は、ステージ33が一方向(例えば、X方向)に連続移動しながら、フレーム領域82毎に行われる。フレーム領域82は、さらに副偏向領域83に分割されており、電子ビーム84は、副偏向領域83内の必要な部分のみを描画する。尚、フレーム領域82は、主偏向器45の偏向幅で決まる短冊状の描画領域であり、副偏向領域83は、副偏向器46の偏向幅で決まる単位描画領域である。
【0082】
副偏向領域83内での電子ビーム84の位置決めは、副偏向器46で行われる。副偏向領域83の位置制御は、主偏向器45によってなされる。すなわち、主偏向器45によって、副偏向領域83の位置決めがされ、副偏向器46によって、副偏向領域83内でのビーム位置が決められる。さらに、成形偏向器44とビーム成形用アパーチャ47、48によって、電子ビーム84の形状と寸法が決められる。そして、ステージ33を一方向に連続移動させながら、副偏向領域83内を描画し、1つの副偏向領域83の描画が終了したら、次の副偏向領域83を描画する。フレーム領域82内の全ての副偏向領域83の描画が終了したら、ステージ33を連続移動させる方向と直交する方向(例えば、Y方向)にステップ移動させる。その後、同様の処理を繰り返して、フレーム領域82を順次描画して行く。
【0083】
電子ビームによる描画を行う際には、まず、CADシステムを用いて設計された半導体集積回路などのパターンデータ(CADデータ)が、電子ビーム描画装置30に入力することのできる形式のデータ(レイアウトデータ)に変換される。次いで、レイアウトデータが変換されて描画データが作成された後、描画データは実際に電子ビーム84がショットされるサイズに分割された後、ショットサイズ毎に描画が行われる。
【0084】
レイアウトデータから変換された描画データは、記憶媒体である入力部51に記録された後、制御計算機50によって読み出され、フレーム領域82毎にパターンメモリ52に一時的に格納される。パターンメモリ52に格納されたフレーム領域82毎のパターンデータ、すなわち、描画位置や描画図形データ等で構成されるフレーム情報は、データ解析部であるパターンデータデコーダ53と描画データデコーダ54に送られる。次いで、これらを介して、副偏向領域偏向量算出部60、ブランキング回路55、ビーム成形器ドライバ56、主偏向器ドライバ57、副偏向器ドライバ58に送られる。
【0085】
また、制御計算機50には、偏向制御部62が接続している。偏向制御部62は、セトリング時間決定部61に接続し、セトリング時間決定部61は、副偏向領域偏向量算出部60に接続し、副偏向領域偏向量算出部60は、パターンデータデコーダ53に接続している。また、偏向制御部62は、ブランキング回路55と、ビーム成形器ドライバ56と、主偏向器ドライバ57と、副偏向器ドライバ58とに接続している。
【0086】
パターンデータデコーダ53からの情報は、ブランキング回路55とビーム成形器ドライバ56に送られる。具体的には、パターンデータデコーダ53で描画データに基づいてブランキングデータが作成され、ブランキング回路55に送られる。また、描画データに基づいて所望とするビーム寸法データも作成されて、副偏向領域偏向量算出部60とビーム成形器ドライバ56に送られる。そして、ビーム成形器ドライバ56から、電子ビーム光学系40の成形偏向器44に所定の偏向信号が印加されて、電子ビーム84の形状と寸法が制御される。
【0087】
副偏向領域偏向量算出部60は、パターンデータデコーダ53で作成したビーム形状データから、副偏向領域83における、1ショット毎の電子ビームの偏向量(移動距離)を算出する。算出された情報は、セトリング時間決定部61に送られ、副偏向による移動距離に対応したセトリング時間が決定される。
【0088】
セトリング時間決定部61で決定されたセトリング時間は、偏向制御部62へ送られた後、パターンの描画のタイミングを計りながら、偏向制御部62より、ブランキング回路55、ビーム成形器ドライバ56、主偏向器ドライバ57、副偏向器ドライバ58のいずれかに適宜送られる。
【0089】
描画データデコーダ54では、描画データに基づいて副偏向領域83の位置決めデータが作成され、このデータは、主偏向器ドライバ57と副偏向器ドライバ58に送られる。そして、主偏向器ドライバ57から、電子光学系40の主偏向器45に所定の偏向信号が印加されて、電子ビーム84が所定の主偏向位置に偏向走査される。また、副偏向器ドライバ58から、副偏向器46に所定の副偏向信号が印加されて、副偏向領域83内での描画が行われる。この描画は、具体的には、設定されたセトリング時間が経過した後、電子ビーム84を繰り返し照射することによって行われる。
【0090】
尚、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々変形して実施することができる。
【0091】
また、本実施の形態の電子銃に組み込むよう構成されたエミッタの適用例は、電子ビーム描画装置の電子銃に限られるものではなく、電子顕微鏡なども好適である。
【符号の説明】
【0092】
1、11、21、131、141 六硼化ランタン(LaB)層
2、12、22、132、142 カーボン(C)層
3 脆弱な層
4、4a、14、24、134、144 電子放出面
10、20、130、140 エミッタ
15、25、135、145 溝
26 側面部
30 電子ビーム描画装置
31 試料室
32 マスク基板
33 ステージ
34 ステージ駆動回路
35 位置回路
37、38、39、41、42 各種レンズ
40 光学系
43 ブランキング用偏向器
44 成形偏向器
45 主偏向器
46 副偏向器
47 第1のアパーチャ
48 第2のアパーチャ
50 制御計算機
51 入力部
52 パターンメモリ
53 パターンデータデコーダ
54 描画データデコーダ
55 ブランキング回路
56 ビーム成形器ドライバ
57 主偏向器ドライバ
58 副偏向器ドライバ
60 副偏向領域偏向量算出部
61 セトリング時間決定部
62 偏向制御部
81 描画されるパターン
82 フレーム領域
83 副偏向領域
84 電子ビーム
100 電子銃
101 カソード
102 バイアス電源
103 加熱電源
105 ウェネルト
106 アノード
107、108 支持電極
109、110 ヒータ
111 加速電源
112 ベース
201、211 ビーム成形用アパーチャ
202、212 電子ビーム領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子を放出するエミッタを有する電子銃であって、
前記エミッタは、電子放射特性を有する第1の材料からなる第1の部材と、
前記第1の材料より仕事関数が大きい第2の材料からなり、前記第1の部材を被覆する第2の部材とを有するとともに、
前記第1の部材と前記第2の部材との間に形成された溝を有することを特徴とする電子銃。
【請求項2】
前記第1の部材は、端面が前記第2の部材から露出し、
前記溝は、前記端面の周縁に形成され、前記周縁から前記第1の層と前記第2の層とが接する部分までの長さが50μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の電子銃。
【請求項3】
前記第1の部材には、前記溝と接する部分の表面を荒らす処理がなされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子銃。
【請求項4】
前記第1の部材は、円柱体の先端側に断面積のより小さい円柱体を形成した形状、または、円柱体の先端側を円錐台にした形状であり、
前記溝の断面形状が矩形または三角形であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子銃。
【請求項5】
電子ビームを発する電子銃を有する電子ビーム描画装置であって、
前記電子銃は、電子を放出するエミッタを有し、
前記エミッタは、電子放射特性を有する第1の材料からなる第1の部材と、
前記第1の材料より仕事関数が大きい第2の材料からなり、前記第1の部材を被覆する第2の部材とを有するとともに、
前記第1の部材と前記第2の部材との間に形成された溝を有することを特徴とする電子ビーム描画装置。

【図4】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−69364(P2012−69364A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212923(P2010−212923)
【出願日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】