説明

電極構造体、その製造方法及び双極型電池

【課題】サイクル特性などの長期信頼性を向上させ得る電極構造体、電極構造体の製造方法及び電極構造体を用いた双極型電池を提供する。
【解決手段】電極構造体10は、基材11と、表面側が分割された電極活物質層12A、12Bと、電解質より電気抵抗の高い高抵抗部材13とを有する。電極活物質層が、基材の上に形成されている。高抵抗部材が、電極活物質層同士の分割部位の少なくとも一部に形成されている。電極構造体の製造方法は、分割部位を形成するための電解質より電気抵抗の高い高抵抗部材を、転写用基材上に形成する工程(1)と、該転写用基材上に形成された高抵抗部材を、基材上に転写する工程(2)と、電極活物質層形成用スラリーを、該高抵抗部材が転写された基材上の高抵抗部材未転写部位に塗布する工程(3)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極構造体、その製造方法及び双極型電池に関する。
更に詳細には、本発明は、基材と、基材主面上に形成され、表面側が複数に分割された電極活物質層と、分割された電極活物質層同士の間に形成された分割部位に形成され、電解質より電気抵抗の高い高抵抗部材とを有する電極構造体に関する。
また、本発明は、この電極構造体の製造方法及びこの電極構造体を用いた双極型電池に関する。
更に、本発明は、表面側が複数に分割され、多孔質保持材を含む電極活物質層と、分割された電極活物質層同士の間に形成された分割部位に形成され、電解質より電気抵抗が高く、多孔質保持材と結合した高抵抗部材とを有する電極構造体に関する。
更にまた、本発明は、この電極構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電極上の温度分布のバラツキを抑制するために、集電体と、集電体の表面に形成された複数の電極パターンとを有し、この電極のうち放熱性が他の領域よりも低い領域における電極パターンの形成密度が、上記他の領域における電極パターンの形成密度よりも低い蓄電装置用電極が提案されている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−53088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された従来技術においては、例えば電池内部で内部短絡が発生した場合、複数の電極パターンの間に存在する電解質を介して電流が流れることがある。その結果、電解質が発熱して局所的な温度上昇が起こるおそれがある。
【0005】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。
そして、その目的とするところは、局所的な温度上昇が起こることを抑制ないし防止して、サイクル特性などの長期信頼性を向上させ得る電極構造体、電極構造体の製造方法及び電極構造体を用いた双極型電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた。
そして、その結果、まず、基材と、基材主面上に形成され、表面側が複数に分割された電極活物質層と、分割された電極活物質層同士の間に形成された分割部位に形成され、電解質より電気抵抗の高い高抵抗部材とを有する構成とすることにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
また、その結果、次に、表面側が複数に分割され、多孔質保持材を含む電極活物質層と、分割された電極活物質層同士の間に形成された分割部位に形成され、電解質より電気抵抗が高く、多孔質保持材と結合した高抵抗部材とを有する構成とすることにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の電極構造体は、基材と、基材主面上に形成された電極活物質層と、電解質より電気抵抗の高い高抵抗部材とを有する。
そして、上記電極活物質層の表面側は複数に分割されており、上記高抵抗部材は上記分割された電極活物質層同士の間に形成された分割部位に形成されている。
【0008】
また、本発明の他の電極構造体は、多孔質保持材を含む電極活物質層と、電解質より電気抵抗の高い高抵抗部材とを有する。
そして、上記電極活物質層の表面側は複数に分割されており、上記高抵抗部材は上記分割された電極活物質層同士の間に形成された分割部位に形成されており、上記高抵抗部材は上記多孔質保持材と結合している。
【0009】
更に、本発明の電極構造体の製造方法は、分割部位を形成するための電解質より電気抵抗の高い高抵抗部材を、転写用基材上に形成する工程(1)と、該転写用基材上に形成された高抵抗部材を、基材上に転写する工程(2)と、電極活物質層形成用スラリーを、該高抵抗部材が転写された基材上の高抵抗部材未転写部位に塗布する工程(3)とを含む。
【0010】
また、本発明の他の電極構造体の製造方法は、分割部位を形成するための電解質より電気抵抗の高い高抵抗部材を、多孔質保持材の一部を加熱及び/又は圧縮して形成する工程(1’)と、電極活物質層形成用スラリーを、該多孔質保持材の高抵抗部材未形成部位に含浸させる工程(2’)とを含む。
【0011】
更に、本発明の双極型電池は、電解質と、基材、基材の主面の双方の上に形成され、表面側が複数に分割された電極活物質層、及び分割された電極活物質層同士の間に形成された分割部位に形成され、電解質より電気抵抗の高い高抵抗部材を有する電極構造体とを備えている。
そして、上記電極構造体における基材の主面の一方の上に形成された電極活物質層が正極活物質層であり、且つ他方の上に形成された電極活物質層が負極活物質層である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、下記(1)又は(2)の構成としたため、例えば電池内部で内部短絡が発生した場合に、電解質を介して電流が流れることによる局所的な温度上昇がおこることを抑制ないし防止し、サイクル特性などの長期信頼性を向上させ得る電極構造体、電極構造体の製造方法及び電極構造体を用いた双極型電池を提供することができる。
(1)基材と、基材主面上に形成され、表面側が複数に分割された電極活物質層と、分割された電極活物質層同士の間に形成された分割部位に形成され、電解質より電気抵抗の高い高抵抗部材とを有する。
(2)表面側が複数に分割され、多孔質保持材を含む電極活物質層と、分割された電極活物質層同士の間に形成された分割部位に形成され、電解質より電気抵抗が高く、多孔質保持材と結合した高抵抗部材とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る電極構造体の一例の模式的な構成を示す平面図(a)及び断面図(b)である。
【図2】本発明の一実施形態に係る他の電極構造体の若干例の模式的な構成を示す平面図(a)、断面図(b−1)及び(b−2)である。
【図3】本発明の一実施形態に係る電極構造体の製造方法の一例を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る他の電極構造体の製造方法の一例を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る双極型電池の一例の模式的な構成を示す平面図(a)及び断面図(b)である。
【図6】本発明の一実施形態に係る双極型電池の他の例の模式的な構成を示す断面図(a)及び更に他の例の模式的な構成を示す断面図(b)である。
【図7】比較例1−1、比較例1−2及び比較例1−3の双極型電池の模式的な構成を示す断面図(a)、(b)及び(c)である。
【図8】実施例2−1の負極構造体の模式的な構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の電極構造体、電極構造体の製造方法及び電極構造体を用いた双極型電池について詳細に説明する。
【0015】
[電極構造体]
本発明の一実施形態に係る電極構造体は、基材と、基材主面上に形成され、表面側が複数に分割された電極活物質層と、分割された電極活物質層同士の間に形成された分割部位に形成され、電解質より電気抵抗の高い高抵抗部材とを有するものである。
【0016】
また、本発明の一実施形態に係る他の電極構造体は、表面側が複数に分割され、多孔質保持材を含む電極活物質層と、分割された電極活物質層同士の間に形成された分割部位に形成され、電解質より電気抵抗が高く、多孔質保持材と結合した高抵抗部材とを有するものである。
【0017】
本発明の電極構造体においては、電極活物質層同士の分割部位に、電解質より電気抵抗の高い高抵抗部材が形成されているため、例えば電池内部で内部短絡が発生した場合であっても、電解質に電流が流れることが抑制され、局所的な温度上昇が起こることを抑制ないし防止することができる。そして、このような電極構造体を用いると、例えば双極型二次電池のサイクル特性などの長期信頼性を向上させ得る。
【0018】
ここで、電解質及び高抵抗部材の電気抵抗は、上記関係を満足するものであれば特に限定されるものではないが、抵抗値の比が1.5以上であることが好ましく、2.0倍以上であることが更に好ましい。
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る電極構造体を図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の実施形態で引用する図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る電極構造体の一例の模式的な構成を示す平面図(a)及び断面図(b)である。
図1に示すように、電極構造体10は、集電体として機能する基材11と、電極活物質層12として機能する正極活物質層12A及び負極活物質層12Bと、高抵抗部材13とを有する。
正極活物質層12Aは、基材11の主面の一方の上に3つの領域に分割されて形成され、負極活物質層12Bも、他方の上に3つの領域に分割されて形成されている。また、高抵抗部材13は、基材11の主面上であって、且つ正極活物質層12A同士の分割部位に形成され、更に基材11の主面上であって、且つ負極活物質層12B同士の分割部位にも形成されている。更に、分割部位において基材11の一部が露出しており、高抵抗部材13と基材11とが接するように形成されている。
なお、この電極構造体は、集電体として機能する基材の主面の一方に正極が形成され、他方に負極が形成された構造を有しており、一般に、双極型電極と呼ばれるものである。
【0021】
ここで、各構成について詳細に説明する。
【0022】
(基材)
基材11は、集電体として機能するものであれば、特に限定されるものではなく、金属箔や導電性を有する樹脂層を含むフィルムを適用することができる。
金属箔としては、例えば、アルミニウム箔や銅箔、ニッケル箔、ステンレス箔、白金箔などを挙げることができる。
導電性を有する樹脂層を含むフィルムとしては、例えば、バインダーとなる樹脂に無機物質を中心とする導電剤を添加して成る複合導電性プラスチックからなるフィルムを適用することができる。
具体的には、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金などの金属粉末や、グラファイトやハードカーボンなどの炭素粉末等を主成分として、これにバインダーとなる樹脂、溶剤を含む集電体形成用金属ペーストを加熱して成形して成るものであり、金属粉末や炭素粉末と、バインダーとにより形成されてなるものである。また、これら金属粉末や炭素粉末は1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。更に、バインダーとしては、特に制限されるべきものではなく、例えば、ポリエチレンやエポキシ樹脂などの従来公知のバインダー材料を用いることができるが、これらに限定されるものではない。すなわち、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなどの導電性高分子材料を用いてもよい。
更に、基材が、スプレーコートなどの薄膜製造技術により製膜する場合には、製法上の特徴を生かして金属粉末の種類の異なるものを多層に積層したものであってもよい。
なお、導電性を有する樹脂層を含む集電体としては、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなどの導電性高分子材料からなるものを用いてもよい。
【0023】
基材の厚みは、特に限定されないが、通常は1〜100μm程度である。
【0024】
(正極活物質層)
正極活物質層12Aを形成する材料としては、例えば正極活物質、多孔質保持材(詳しくは後述する。)、導電助剤などを挙げることができる。
正極活物質としては、一般的なリチウムイオン電池の構成材料である遷移金属とリチウムとの複合酸化物(リチウム−遷移金属複合酸化物)が好適に使用される。具体的には、LiMnOやLiMnなどのLi−Mn系複合酸化物、LiCoOなどのLi−Co系複合酸化物、LiCrやLiCrOなどのLi−Cr系複合酸化物、LiNiOなどのLi−Ni系複合酸化物、LiFeOやLiFeOなどのLi−Fe系複合酸化物、LiなどのLi−V系複合酸化物、及びこれらの遷移金属の一部を他の元素により置換したもの(例えば、LiNiCo1−x(0<x<1)等)などが使用できる。このようにLi金属酸化物から選択されるが、本発明はこれらの材料に限定されるものではない。リチウム−遷移金属複合酸化物は、反応性やサイクル耐久性に優れ、低コストな材料である。そのため、これらの材料を電極に用いることにより、出力特性に優れた二次電池を形成することができる点で有利である。この他に、LiFePOなどの遷移金属とリチウムのリン酸化合物や酸化物、硫化物(V、MnO、TiS、MoS)や、MoO、PbO、AgO、NiOOHなどの遷移金属酸化物などが挙げられる。
【0025】
特に、正極活物質としてLi−Mn系複合酸化物を用いると、電圧−SOCプロファイルを傾けることができるようになる。これより、電圧を計測することで電池の充電状態(SOC)が判明するため、電池の信頼性を向上させることができる。
【0026】
多孔質保持材としては、例えば内部に複数の空隙が形成された繊維構造体である不織布を挙げることができる。
多孔質保持材は、正極活物質などを内包し、正極活物質層の3次元的な骨格として機能することができる。正極活物質が不織布などの多孔質保持材に内包されることで、正極活物質層のヤング率が高くなり、耐久劣化時の活物質の膨張収縮による電池性能の悪化を抑制でき、電池性能の長寿命化が可能となる。不織布の空孔率は、特に限定されないが、60%〜98%であることが好ましく、90〜98%であることがより好ましい。目付け量は、5〜30g/mであることが好ましい。不織布の繊維径は、特に限定されないが、10〜100μmであることが好ましい。不織布は、三次元的な骨格を担い、不織布自体が直接充放電に寄与しない場合には、繊維の電極層内での占有率を低減することで、高い体積エネルギー密度を実現することができる。もちろん、不織布自体を直接充放電に寄与するものとすることもできる。ここで、空孔率とは、対象部材(ここでは、不織布)に、正極活物質等の他の材料が内包される前の、対象部材の全体積(内部の隙間を含む)に対する、内部の隙間の体積の比率を表している。
【0027】
不織布は、繊維が異方向に重なって形成される。不織布には、導電性樹脂材料を使用することが好ましい。導電性樹脂材料としては、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポエチレンテレフタレート、セルロース、ナイロン等の樹脂製の繊維に、カーボン等の導電材料を、被覆したりフィラーとして含有させることで、導電性を備えたものを挙げることができる。
【0028】
不織布は、基材と接する面側の空孔率が、反対面側(電解質層と接する側)よりも大きいことが好ましい。これにより、不織布は、電解質層と接する側において、繊維の体積占有率を大きくすることができる。
【0029】
不織布の空孔率を部位によって変化させるには、繊維の平均径を部位に応じて異ならせたり、繊維の平均径は変化させずに、単位体積当たりの繊維の量を変化させたりすればよい。このような不織布は、例えばノズルから繊維の樹脂材料を繊維状に吐出させ、吐出量等を調整しながら繊維状の樹脂を層状になるまで重ねて硬化させたり、複数枚の不織布を重ねて結合させたりすることで、容易に作製できる。
【0030】
(負極活物質層)
負極活物質層12Bを形成する材料としては、例えば負極活物質や多孔質保持材があり、結晶性炭素材や非結晶性炭素材が挙げられる。負極活物資としては、具体的には、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、活性炭、カーボンファイバー、コークス、ソフトカーボン、ハードカーボンなどが挙げられる。場合によっては、上記負極活物質の2種以上が併用されてもよい。負極活物質を結晶性炭素材や非結晶性炭素材にすることで、電圧−SOCプロファイルを傾けることができるようになる。これより、電圧を計測することで電池の充電状態(SOC)が判明するため、電池の信頼性を向上させることができる。この効果は非晶質炭素において特に顕著である。なお、多孔質保持材としては、上記したものと同様のものを用いることができる。
【0031】
(高抵抗部材)
高抵抗部材13は、詳しくは後述する電解質より電気抵抗が高いものであれば、特に限定されるものではなく、種々の材料で構成されたものを適用することができる。
例えば、オレフィン系樹脂、イミド系樹脂、アミド系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂、ケイ素系樹脂、セルロース系樹脂などの樹脂を含むもの若しくはこれらの樹脂のみからなるものを挙げることができる。
なお、本発明において、オレフィン系樹脂、ウレンタン系樹脂、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂、ケイ素系樹脂及びセルロース系樹脂の樹脂は、それぞれオレフィン系ゴム状樹脂、ウレンタン系ゴム状樹脂、フッ素系ゴム状樹脂、スチレン系ゴム状樹脂、ケイ素系ゴム状樹脂及びセルロース系ゴム状樹脂を含む意味に解釈しなければならない。
また、本発明においては、高抵抗部材に、上述した正極活物質層や負極活物質層の構成成分、更には詳しくは後述する電解質の構成成分が含まれることを妨げるものではない。
【0032】
更に、高抵抗部材は、詳しくは後述する電解質より熱容量が高いものであることが好ましい。
ここで、「熱容量」は、電解質及び高抵抗部材を構成する各種材料の比熱を求め、それらが電池内に組み込まれたときの質量から算出する。各種材料の比熱はカロリーメーター(例えば、東京理工社製、マルチマイクロカロリーメーター)を用いて測定する。
【0033】
また、高抵抗部材は、電極活物質層より電解質遮断性が高いものであることが好ましい。
ここで、「電解質遮断性」は、電極活物質層(正極活物質層又は負極活物質層)及び高抵抗部材の電解質への浸漬試験による含浸率(質量増加割合)や透気試験による透気度を電解質遮断性の基準として利用することができる。つまり、高抵抗部材は、電極活物質層より含浸率や透気度が高いことが好ましい。
また、含浸率は、例えば電極活物質層及び高抵抗部材をそれぞれ適用する電解質に同条件で浸漬して質量増加を測定し、その割合から算出することができる。更に、透気度は、例えば電極活物質層及び高抵抗部材のそれぞれについて、ガーレー式デンソメーター(例えば、(株)マツボー社製、ガーレー自動透気度計)を使用して測定することができる。
【0034】
更に、分割部位において基材の一部が露出しており、高抵抗部材と基材とが接するように形成されていることが、基材によって放熱が促進され、局所的に高温になりにくくなるという観点から望ましい。
【0035】
更にまた、高抵抗部材が形成される分割部位の一辺の長さは、10〜300mmであることが好ましく、分割部位の幅は、0.1〜1mmであることが好ましい。なお、分割部位が形成する電極活物質層のパターンは、正方形や長方形に限定されるものではなく、三角形や六角形であってもよい。
【0036】
なお、電極構造体の一例として、正極活物質層同士の分割部位及び負極活物質層同士の分割部位の全部に高抵抗部材が形成された場合を図示して説明したが、本発明の電極構造体は、これに限定されるものではない。
【0037】
すなわち、本発明の電極構造体は、基材の主面の少なくとも一方の上に少なくとも表面側が2以上の領域に分割された電極活物質層が形成されており、基材の主面上であって且つ電極活物質層同士の分割部位の少なくとも一部に高抵抗部材が形成されていればよいため、種々の形態を採ることができる。
ここで、「表面側」とは、基材上に形成された電極活物質層の表面を意味する。また、「2以上の領域に分割する」とは、電極活物質層の表面に1条以上の溝や間隙からなる分割部位を形成することを意味する。
【0038】
例えば、基材の主面の双方の上に2以上の領域に分割された正極活物質層又は負極活物質層が形成されており、基材の主面上であって且つ正極活物質層又は負極活物質層同士の分割部位の全部に高抵抗部材が形成されている変形例を挙げることができる。
【0039】
また、例えば、基材の主面の一方の上に2以上の領域に分割された正極活物質層又は負極活物質層が形成されており、基材の主面上であって且つ正極活物質層又は負極活物質層同士の分割部位の全部に高抵抗部材が形成されている変形例を挙げることができる。
かかる変形例においては、基材の主面の他方の上に、分割されていない異種又は同種の電極活物質層が更に形成されている変形例を挙げることもできる。
【0040】
更に、例えば、上述した各形態において、負極活物質層同士や正極活物質層同士の分割部位の一部に高抵抗部材が形成されている変形例を挙げることもできる。
ここで、「分割部位の一部」とは、分割部位の平面方向の一部、又は分割部位の厚み方向の一部を意味し、分割部位の平面方向及び厚み方向の一部をも含む意味に解釈しなければならない。なお、平面方向とは、図1(a)のXY座標で表すことができる方向であり、厚み方向とは、図1(b)のZ座標で表すことができる方向である。
分割部位の平面方向の一部に形成する場合の具体例としては、例えば、X軸に平行な分割部位とY軸に平行な分割部位とがある場合に、X軸に平行な分割部位のみに高抵抗部材が形成されている場合を挙げることができる。
また、分割部位の厚み方向の一部に形成する場合の具体例としては、例えばX軸に平行な分割部位がある場合に、分割部位の全領域に亘って、Z軸方向の分割部位の厚みの半分までの部分に高抵抗部材が形成されている場合を挙げることができる。
【0041】
図2は、本発明の一実施形態に係る電極構造体の他の例の模式的な構成を示す平面図(a)、断面図(b−1)及び(b−2)である。なお、上記の実施形態において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
図2に示すように、電極構造体10は、多孔質保持材12aを含む正極活物質層12Aと、高抵抗部材13とを有する。
正極活物質層12Aは、3つの領域に分割されて形成されている。また、高抵抗部材13は、正極活物質層12A同士の分割部位に形成されている。更に、分割部位において高抵抗部材13と多孔質保持材12aとが結合している。
なお、断面図(b−1)及び(b−2)で示す各電極構造体は後述する作製条件などにより適宜作製することができる。
【0042】
多孔質保持材12aとしては、例えば内部に複数の空隙が形成された繊維構造体である不織布を挙げることができる。
多孔質保持材は、正極活物質などを内包し、正極活物質層の3次元的な骨格として機能することができる。正極活物質が不織布などの多孔質保持材に内包されることで、正極活物質層のヤング率が高くなり、耐久劣化時の活物質の膨張収縮による電池性能の悪化を抑制でき、電池性能の長寿命化が可能となる。不織布の空孔率は、特に限定されないが、60%〜98%であることが好ましく、90〜98%であることがより好ましい。目付け量は、5〜30g/mであることが好ましい。不織布の繊維径は、特に限定されないが、10〜100μmであることが好ましい。不織布は、三次元的な骨格を担い、不織布自体が直接充放電に寄与しない場合には、繊維の電極層内での占有率を低減することで、高い体積エネルギー密度を実現することができる。もちろん、不織布自体を直接充放電に寄与するものとすることもできる。ここで、空孔率とは、対象部材(ここでは、不織布)に、正極活物質等の他の材料が内包される前の、対象部材の全体積(内部の隙間を含む)に対する、内部の隙間の体積の比率を表している。
【0043】
不織布は、繊維が異方向に重なって形成される。不織布には、導電性樹脂材料を使用することが好ましい。導電性樹脂材料としては、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポエチレンテレフタレート、セルロース、ナイロン等の樹脂製の繊維に、カーボン等の導電材料を、被覆したりフィラーとして含有させることで、導電性を備えたものを挙げることができる。
【0044】
不織布は、基材と接する面側の空孔率が、反対面側(電解質層と接する側)よりも大きいことが好ましい。これにより、不織布は、電解質層と接する側において、繊維の体積占有率を大きくすることができる。
【0045】
不織布の空孔率を部位によって変化させるには、繊維の平均径を部位に応じて異ならせたり、繊維の平均径は変化させずに、単位体積当たりの繊維の量を変化させたりすればよい。このような不織布は、例えばノズルから繊維の樹脂材料を繊維状に吐出させ、吐出量等を調整しながら繊維状の樹脂を層状になるまで重ねて硬化させたり、複数枚の不織布を重ねて結合させたりすることで、容易に作製できる。
【0046】
[電極構造体の製造方法]
本発明の一実施形態に係る電極構造体の製造方法は、下記の工程(1)〜(3)を含む。工程(1):分割部位を形成するための電解質より電気抵抗の高い高抵抗部材を、転写用基材上に形成する。
工程(2):転写基材上に形成された高抵抗部材を、基材上に転写する。
工程(3):電極活物質層形成用スラリーを、高抵抗部材が転写された基材上の高抵抗部材未転写部位に塗布する。
【0047】
本発明の電極構造体の製造方法においては、従来の製造方法である間欠塗布による分割部位の形成に比較して、確実に分割部位が形成でき、上述した電極構造体を簡易に作製することができる。そして、得られた構造体は、電極活物質層同士の分割部位の少なくとも一部に、電解質より電気抵抗の高い高抵抗部材が形成されているため、例えば電池内部で内部短絡が発生した場合であっても、電解質に電流が流れることが抑制され、局所的な温度上昇が起こることを抑制ないし防止することができる。したがって、このような電極構造体を用いると、例えば双極型二次電池のサイクル特性などの長期信頼性を向上させ得る。
【0048】
ここで、各工程について詳細に説明する。
【0049】
(工程1)
工程1は、分割部位を形成するための電解質より電気抵抗の高い高抵抗部材を、転写用基材に形成すればよい。
高抵抗部材としては、上述した高抵抗部材を適宜用いることができる。なお、電解質の詳細については後述する。
また、特に限定されるものではないが、例えば、格子状などの分割部位パターンを予め形成したフィルム状の高抵抗部材を用いることが望ましい。
転写用基材としては、高抵抗部材を基材に転写することができれば、特に限定されるものではない。例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどを適宜用いることができる。
【0050】
(工程2)
工程2は、転写用基材上に形成された高抵抗部材を、基材上に転写すればよい。
基材としては、上述した基材を適宜用いることができるが、後述する電極活物質層形成用スラリーが溶媒である水や水系バインダーを含むものである場合には、疎水性樹脂で構成されたものを用いることが望ましい。
ここで、「疎水性樹脂」とは、オレフィン系樹脂、イミド系樹脂、アミド系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂、ケイ素系樹脂などの樹脂であって、溶媒である水にぬれにくいものである。一般的には、アクリル基やエステル基を有する樹脂は疎水性樹脂でない場合が多い。
本発明において、「水にぬれにくい」とは、水の接触角が90°以上であることを言う。
また、転写に際しては、圧力や熱をかけた適宜の転写方法を採用することができる。更に、基材と高抵抗部材とは直接密着ないし融着させてもよく、エポキシ系接着剤、オレフィン系接着剤、ポリイミド系接着剤などの接着剤を介して接着させてもよい。
【0051】
(工程3)
工程3は、電極活物質層形成用スラリーを、高抵抗部材が転写された基材上の高抵抗部材未転写部位に塗布すればよい。
電極活物質層形成スラリーとしては、上述した電極活物質層を形成することができれば、従来公知の材料を用いることができるが、高抵抗部材として疎水性樹脂で構成されたものを用いる場合には、溶媒である水や水系バインダーを含むものを用いることが望ましい。このような電極活物質層形成スラリーを用いると疎水性樹脂で構成された高抵抗部材が電極活物質層形成スラリーをはじくため、間欠塗布によらず全面塗布を行うことができる。これにより、電極活物質層を確実に形成することができる。
【0052】
以下、本発明の一実施形態に係る電極構造体の製造方法を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0053】
図3は、本発明の一実施形態に係る電極構造体の製造方法の一例を示す説明図である。なお、上記の実施形態において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
図3(a)で示す工程1においては、上述した転写用基材200に分割部位パターンを形成したフィルム状の高抵抗部材13を配置する。なお、図示しないが、高抵抗部材の基材に対向する側に接着剤を塗布してもよい。
図3(b)で示す工程2においては、ローラ210などで圧力を付与して、転写用基材200上に形成された高抵抗部材13を、基材11上に転写する。
図3(c)で示す工程3においては、、高抵抗部材13が転写された基材11上の高抵抗部材未転写部位に正極活物質層形成用スラリーを塗布し、乾燥して、正極活物質層12Aを形成する。
このようにして、電極構造体を得ることができる。
【0054】
また、本発明の一実施形態に係る他の電極構造体の製造方法は、下記の工程(1’)及び(2’)を含む。
工程(1’):分割部位を形成するための電解質より電気抵抗の高い高抵抗部材を、多孔質保持材の一部を加熱及び/又は圧縮して形成する。
工程(2’):電極活物質層形成用スラリーを、上記多孔質保持材の高抵抗部材未形成部位に含浸させる。
【0055】
本発明の他の電極構造体の製造方法においては、従来の製造方法である間欠塗布による分割部位の形成に比較して、確実に分割部位が形成でき、上述した電極構造体を簡易に作製することができる。そして、得られた構造体は、電極活物質層同士の分割部位の少なくとも一部に、電解質より電気抵抗の高い高抵抗部材が形成されているため、例えば電池内部で内部短絡が発生した場合であっても、電解質に電流が流れることが抑制され、局所的な温度上昇が起こることを抑制ないし防止することができる。したがって、このような電極構造体を用いると、例えば双極型二次電池のサイクル特性などの長期信頼性を向上させ得る。
【0056】
ここで、各工程について詳細に説明する。
【0057】
(工程1’)
工程1’は、分割部位を形成するための電解質より電気抵抗の高い高抵抗部材を、多孔質保持材の一部に加熱及び圧縮などの処理を施すことによって形成すればよい。
このような工程を経ることにより、高抵抗部材と多孔質保持材とを結合した状態とすることができるため、強度が優れるという副次的な効果が得られる。また、この後に、基材と接合させるに当たっても、強度が優れるため、生産性を向上させることができる。また、このような工程を経る場合には、高抵抗部材と多孔質保持材とが同種の材料からなるものとなる。
【0058】
(工程2’)
工程2’は、電極活物質層形成用スラリーを、多孔質保持材の高抵抗部材未形成部位に含浸させればよい。なお、含浸後においては、余剰のスラリーを掻き落とし、乾燥すればよい。
このような工程を経ることにより、両面から乾燥した後に基材を接合することができるため、より簡易に電極構造体を作製することができる。
【0059】
以下、本発明の一実施形態に係る他の電極構造体の製造方法を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0060】
図4は、本発明の一実施形態に係る他の電極構造体の製造方法の一例を示す説明図である。なお、上記の実施形態において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
図4(a)で示す工程1’においては、高温のパターン付きローラ210により圧力を付与することにより、多孔質保持材12aの一例である不織布の一部に、分割部位を形成するための電解質より電気抵抗の高い高抵抗部材13を形成する。
図4(b)で示す工程2’においては、高抵抗部材未形成部位に正極活物質層形成用スラリーを塗布し、乾燥して、正極活物質層12Aを形成する。これにより、他の電極構造体を得ることができる。
なお、図4(c)で示すように、工程3’において電極構造体と基材11とにローラ210などで圧力を付与してこれらを接合することにより、図4(d)で示すような電極構造体10を得ることができる。
【0061】
[双極型電池]
本発明の一実施形態に係る双極型電池は、電解質と、基材、基材の主面の双方の上に形成され、表面側が複数に分割された電極活物質層、及び分割された電極活物質層同士の間に形成された分割部位に形成され、電解質より電気抵抗の高い高抵抗部材を有する電極構造体とを備えている。
そして、上記電極構造体における基材の主面の一方の上に形成された電極活物質層が正極活物質層であり、且つ他方の上に形成された電極活物質層が負極活物質層である。
【0062】
本発明の双極型電池においては、電極活物質層同士の分割部位に、電解質より電気抵抗の高い高抵抗部材が形成されているため、例えば電池内部で内部短絡が発生した場合であっても、電解質に電流が流れることが抑制され、局所的な温度上昇が起こることを抑制ないし防止することができる。したがって、例えば双極型二次電池のサイクル特性などの長期信頼性を向上させることができる。
【0063】
以下、本発明の一実施形態に係る双極型電池を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0064】
図5は、本発明の一実施形態に係る双極型電池の一例の模式的な構成を示す平面図(a)及び断面図(b)である。なお、上記の実施形態において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
図5に示すように、双極型電池100は、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極タブ40A、負極タブ40Bが引き出されている。発電要素は双極型電池100の外装材(例えばラミネートフィルムなど。)50によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素は正極タブ40A及び負極タブ40Bを引き出した状態で密封されている。
【0065】
発電要素は、セパレータ20を介して、上記電極構造体10が積層された構造を有している。更に、電極構造体10の各正極活物質層12Aと他の電極構造体10の各負極活物質層12Bとが、それぞれ対向するように配置され、電極構造体10の各分割部位と他の電極構造体10の各分割部位とが、それぞれ対向するように配置された構造を有している。また、各分割部位には高抵抗部材13が形成されている。更に、セパレータや電極活物質に含まれる電解質を保持するシール部材30が形成されている。
なお、図示しないが、セパレータ20や正極活物質層12A及び負極活物質層12Bには、電解質が含まれている。
【0066】
このような構成とすることにより、例えば電池内部で内部短絡が発生した場合であっても、電解質に電流が流れることが抑制され、局所的な温度上昇が起こることを抑制ないし防止することができる。したがって、例えば双極型二次電池のサイクル特性などの長期信頼性を向上させることができる。
【0067】
(電解質)
電解質としては、電解液、固体高分子電解質、高分子ゲル電解質、更には、固体高分子電解質や高分子ゲル電解質を積層したものなどが利用できる。
電解液(電解質塩及び可塑剤)としては、通常リチウムイオン電池で用いられるものであればよく、たとえば、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiTaF、LiAlCl、Li10Cl10等の無機酸陰イオン塩、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CSON等の有機酸陰イオン塩の中から選ばれる、少なくとも1種類のリチウム塩(電解質塩)を含み、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等の環状カーボネート類;ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等のエーテル類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトニトリル等のニトリル類;プロピオン酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;酢酸メチル、蟻酸メチルの中から選ばれる少なくともから1種類又は2種以上を混合した、非プロトン性溶媒等の有機溶媒(可塑剤)を用いたものなどが使用できる。
高分子ゲル電解質としては、特に限定されるものではないが、好ましくは、高分子ゲル電解質を構成するポリマーと電解液との比率(質量比) が、20:80〜98:2とする。
高分子ゲル電解質は、イオン導伝性を有する固体高分子電解質に、通常リチウムイオン電池で用いられる電解液を含んだものであるが、更に、リチウムイオン導伝性を持たない高分子の骨格中に、同様の電解液を保持させたものも含まれる。
高分子ゲル電解質に用いられるリチウムイオン導伝性を持たない高分子としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。なお、PAN、PMMAなどは、どちらかと言うとイオン伝導性がほとんどない部類に入るものであるため、上記イオン伝導性を有する高分子とすることもできるが、ここでは高分子ゲル電解質に用いられるリチウムイオン導伝性を持たない高分子として例示したものである。
【0068】
(セパレータ)
セパレータ20は、主に、多孔質の樹脂や、樹脂繊維を絡めた不織布のように細孔が多く設けられてなる材料により形成されている。
【0069】
(シール部材)
シール部材30は、セパレータや電極活物質に含まれる電解質を保持し、シール部材の外周に、電解質の液漏れを防止する材料により形成されている。具体的には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE): ポリウレタン、ポリアミド系樹脂(例えばナイロン6ナイロン66(ナイロンは登録商標、以下同じ)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン、ポリスチレン、などの汎用プラスチックや熱可塑オレフィンゴムなどを使用することができる。また、シリコーンゴムを使用することもできる。
【0070】
図6(a)は、本発明の一実施形態に係る双極型電池の他の例の模式的な構成を示す断面図である。また、上記実施形態において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
【0071】
図6(a)に示すように、本例の双極型電池は、高抵抗部材の構成が、上述した一例の双極型電池と相違している。
すなわち、本例においては、分割部位の一部に高抵抗部材が形成されており、分割部位の一部に形成された空間に電解質14が満たされている。
【0072】
このような構成とすることによっても、例えば電池内部で内部短絡が発生した場合であっても、電解質に電流が流れることが抑制され、局所的な温度上昇が起こることを抑制ないし防止することができる。したがって、例えば双極型二次電池のサイクル特性などの長期信頼性を向上させることができる。
【0073】
図6(b)は、本発明の一実施形態に係る双極型電池の更に他の例の模式的な構成を示す断面図である。また、上記実施形態において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
【0074】
図6(b)に示すように、本例の双極型電池は、高抵抗部材の構成が、上述した一例の双極型電池と相違している。
すなわち、本例においては、各負極活物質層12Bの表面における面積が、各正極活物質層12Aの表面における面積より大きいという関係を満たしている。
【0075】
このような構成とすることによっても、例えば電池内部で内部短絡が発生した場合であっても、電解質に電流が流れることが抑制され、局所的な温度上昇が起こることを抑制ないし防止することができる。したがって、例えば双極型二次電池のサイクル特性などの長期信頼性を向上させることができる。
また、正極側からのリチウムイオンを効率的に吸蔵することができるため、充放電効率を向上させることができる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0077】
(実施例1−1)
<集電体の作製>
ポリエチレンにカーボン材料を分散させ、厚み100μmに延伸し、フィルム状に成形して、導電性を有する樹脂層を含む集電体を作製した。なお、後の工程において、集電体を縦90mm×横140mmの大きさに切断し、周辺部に10mmのシールしろを設けた。
【0078】
<双極型電極の作製>
正極活物質としてのリチウムマンガン酸化物(LiMn)85質量部と、導電剤としてのアセチレンブラック5質量部と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)10質量部と、スラリー粘度調整溶媒としてのN−メチル−ピロリドン(NMP)とを混合して、正極活物質層形成用スラリーを作製した。
次いで、上記集電体の片面に、ドクターブレード方式で間欠塗布により、上記正極活物質層形成用スラリーを塗布した。
更に、正極活物質層形成用スラリーの塗布部分をポリエチレンテレフタレートフィルムでマスキングして、その上から正極活物質層形成用スラリーの未塗布部分に、高抵抗部材形成用PVdF含有NMP(PVdF濃度:10質量%)を塗布した。
しかる後、乾燥し、プレスして、図1に示すような正極活物質層(縦70mm×横36mm×厚み60μm、3箇所)と高抵抗部材(縦70mm×横6mm×厚み60μm、2箇所)とを形成した。
【0079】
負極活物質としてのハードカーボン90質量部と、結着剤としてのPVdF10質量部と、スラリー粘度調整溶媒としてのNMPとを混合して、負極活物質層形成用スラリーを作製した。
次いで、正極が形成された集電体の反対面に、ドクターブレード方式で間欠塗布により、上記負極活物質層形成用スラリーを塗布した。
更に、負極活物質層形成用スラリーの塗布部分をポリエチレンテレフタレートフィルムでマスキングして、その上から負極活物質層形成用スラリーの未塗布部分に、高抵抗部材形成用PVdF含有NMP(PVdF濃度:10質量%)を塗布した。
しかる後、乾燥し、プレスして、図1に示すような負極活物質層(縦70mm×横36mm×厚み50μm、3箇所)と高抵抗部材(PVdF、縦70mm×横6mm×厚み50μm、2箇所)とを形成した。
これにより、図1に示す双極型の電極構造体を作製した。
【0080】
なお、双極型の電極構造体の作製と同様の操作により、集電体の片面に正極活物質層(縦70mm×横36mm×厚み60μm、3箇所)と高抵抗部材(PVdF、縦70mm×横6mm×厚み60μm、2箇所)とを形成した。これにより、正極構造体を作製した。また、片面に正極構造体を形成していないこと以外は、双極型の電極構造体の作製と同様の操作により、集電体の片面に負極活物質層(縦70mm×横36mm×厚み60μm、3箇所)と高抵抗部材(PVdF、縦70mm×横6mm×厚み60μm、2箇所)とを形成した。これにより、負極構造体を作製した。
【0081】
<電解質の作製>
エチレンカーボネート(EC)及びジエチルカーボネート(DEC)を、EC:DEC=1:1(体積比)の割合で混合した非水溶媒に、電解質塩としての六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を濃度が1mol/lとなるように溶解させて、非水電解液を作製した。
【0082】
<双極型電池の作製>
上記得られた3つの双極型の電極構造体、正極構造体及び負極構造体の正極活物質層及び負極活物質層の周囲にポリエチレン製のシール用フィルムからなるシール部材を配置し、更に電極構造体の各正極活物質層と他の電極構造体の各負極活物質層とが、それぞれ対向するように且つ電極構造体の各分割部位と他の電極構造体の各分割部位とが、それぞれ対向するように配置して積層した。
次いで、各層の注液部以外のシール部3辺を上下からプレス(プレス圧力:0.2MPa、プレス温度:140℃、プレス時間:5秒間)し、各層のシール部材を融着し、各層をシールして、各層の注液部のみが開口された袋状とした。
更に、各層の注液部のみが開口された部位に、作製した非水電解液を注液し、シール部材を真空密封した。
しかる後、発電要素の投影面全体を覆うことのできる縦80mm×横130mm×厚み100μmのアルミニウム板の一部が発電要素投影面外部まで伸びている部分がある強電端子で発電要素を挟み込み、これらを覆うようにアルミニウムラミネートフィルムで真空密封し、両面から発電要素全体を大気圧で押すことにより、強電端子と発電要素間の接触を高めた。これにより、図5に示すような、本例の双極型電池が得られた。
【0083】
(実施例1−2)
正極活物質層形成用スラリー及び負極活物質層形成用スラリーの未塗布部分に、高抵抗部材形成用ポリプロピレン(PP)フィルム(厚み20μm)を配置して、図1に示すような正極活物質層(縦70mm×横36mm×厚み60μm、3箇所)と高抵抗部材(PP、縦70mm×横6mm×厚み20μm、2箇所)とを形成し、更に負極活物質層(縦70mm×横36mm×厚み50μm、3箇所)と高抵抗部材(PP、縦70mm×横6mm×厚み20μm、2箇所)とを形成したこと以外は、実施例1−1と同様の操作を繰り返して、図6(a)に示すような、本例の双極型電池を作製した。
【0084】
(実施例1−3)
正極活物質層形成用スラリー及び負極活物質層形成用スラリーの未塗布部分に、高抵抗部材形成用ポリプロピレン(PP)フィルム(厚み60μm又は50μm)を配置して、図1に示すような正極活物質層(縦70mm×横36mm×厚み60μm、3箇所)と高抵抗部材(PP、縦70mm×横6mm×厚み60μm、2箇所)とを形成し、更に負極活物質層(縦70mm×横36mm×厚み50μm、3箇所)と高抵抗部材(PP、縦70mm×横6mm×厚み50μm、2箇所)とを形成したこと以外は、実施例1−1と同様の操作を繰り返して、図5に示すような、本例の双極型電池を作製した。
【0085】
(実施例1−4)
正極活物質層形成用スラリー及び負極活物質層形成用スラリーの未塗布部分に、高抵抗部材形成用ポリプロピレン(PP)フィルム(厚み60μm又は50μm)を配置して、図1に示すような正極活物質層(縦70mm×横34mm×厚み60μm、3箇所)と高抵抗部材(PP、縦70mm×横9mm×厚み60μm、2箇所)とを形成し、更に負極活物質層(縦70mm×横36mm×厚み50μm、3箇所)と高抵抗部材(PP、縦70mm×横6mm×厚み50μm、2箇所)とを形成したこと以外は、実施例1−1と同様の操作を繰り返して、図6(b)に示すような、本例の双極型電池を作製した。
【0086】
(比較例1−1)
正極活物質層形成用スラリー及び負極活物質層形成用スラリーを全面塗布し、正極活物質層(縦70mm×横108mm×厚み60μm)を形成し、更に負極活物質層(縦70mm×横108mm×厚み50μm)を形成したこと以外は、実施例1−1と同様の操作を繰り返して、図7(a)に示すような、本例の双極型電池を作製した。
【0087】
(比較例1−2)
正極活物質層形成用スラリー及び負極活物質層形成用スラリーの未塗布部分に、高抵抗部材形成用PVdF含有NMP(PVdF濃度:10質量%)を塗布しなかったこと以外は、実施例1−1と同様の操作を繰り返して、図7(b)に示すような、本例の双極型電池を作製した。
【0088】
(比較例1−3)
正極活物質層形成用スラリー及び負極活物質層形成用スラリーの塗布部分をポリエチレンテレフタレートフィルムでマスキングして、その上から正極活物質層形成用スラリー及び負極活物質層形成用スラリーの未塗布部分に、正極活物質層形成用スラリー及び負極活物質層形成用スラリーを更に塗布し、乾燥し、プレスして、正極活物質層(縦70mm×横36mm×厚み60μm、3箇所)と正極活物質層(縦70mm×横6mm×厚み20μm、2箇所)とを形成し、更に負極活物質層(縦70mm×横36mm×厚み60μm、3箇所)と負極活物質層(縦70mm×横6mm×厚み20μm、2箇所)とを形成したこと以外は、実施例1−1と同様の操作を繰り返して、図7(c)に示すような、本例の双極型電池を作製した。
【0089】
[性能評価]
上記各実施例及び比較例の双極型電池について、0.5Cで5時間初回充電放電を行った(各層の上限電圧4.2V)。次いで、45℃にて、100サイクルの充放電サイクル試験を行い、保存後の容量測定を0.5Cの充放電測定で測定した。得られた結果を表1に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
表1から、電解質より電気抵抗の高い高抵抗部材を所定の位置に配置した本発明の範囲に属する実施例1−1〜実施例1−4は、電解質より電気抵抗の高い高抵抗部材を所定の位置に配置していない本発明外の比較例1−1〜比較例1−3と比較して、サイクル特性が優れており、長期信頼性が向上していることが分かる。
【0092】
また、表1において、実施例1−1と実施例1−3とを比較すると、PVdF溶液を塗布して形成した高抵抗部材を適用するよりも、ポリプロピレンフィルムを配置して形成した高抵抗部材を適用した方が、サイクル特性が優れており、長期信頼性が向上していることが分かる。これは、ポリプロピレンフィルムを配置して形成した高抵抗部材の方が電解質遮断性が高いためであると考えられる。
【0093】
また、表1において、実施例1−2と実施例1−3とを比較すると、分割部位に電解質が含まれにくい実施例1−3の方がサイクル特性が優れており、長期信頼性が向上していることが分かる。これは、ポリプロピレンフィルムを分割部位の全部に配置して形成した高抵抗部材の方が電解質が浸透し難く、熱容量が高いためであると考えられる。
【0094】
更に、表1において、実施例1−3と実施例1−4とを比較すると、各負極活物質層の表面における面積が、各正極活物質層の表面における面積より大きい方が、サイクル特性が優れており、長期信頼性が向上していることが分かる。これは、正極側からのリチウムイオンを効率的に吸蔵することができるため、充放電効率を向上しているためと考えられる。
【0095】
(実施例2−1)
<集電体の作製>
ポリエチレンにカーボン材料を分散させ、厚み100μmに延伸し、フィルム状に成形して、導電性を有する樹脂層を含む集電体を作製した。なお、後の工程において、集電体を縦100mm×横100mmの大きさに切断した。
【0096】
<負極構造体の作製>
ポリプロピレンからなる転写用基材上に格子状の分割パターンが形成されたオレフィン系樹脂フィルムからなる高抵抗部材(なお、シール部材も一体となっている。)を配置し、更にその上にエポキシ系接着剤を塗布した。エポキシ系接着剤が上記集電体に対向するようにして、転写法によって、格子状の分割パターンが形成されたオレフィン系樹脂フィルムからなる高抵抗部材を転写した。
【0097】
負極活物質としてのハードカーボン90質量部と、結着剤としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)10質量部と、スラリー粘度調整溶媒としての水とを混合して、負極活物質層形成用スラリーを作製した。
次いで、格子状の分割パターンが形成されたオレフィン系樹脂フィルムからなる高抵抗部材が形成された集電体に、ドクターブレード方式で全面塗布により、上記負極活物質層形成用スラリーを塗布した。
しかる後、乾燥し、プレスして、図8に示すような、本例の負極構造体(負極活物質層:縦100mm×横100mm×厚み50μm、4箇所)を得た。
得られた負極構造体と同様に作製した分割されていない負極構造体の抵抗をロレスタEP−MCPT360(4端子法)により測定したところ、得られた負極構造体は、分割されていない負極構造体よりも50%高い0.6Ωcmの体積抵抗値を示した。
【0098】
(実施例2−2)
エポキシ系接着剤に代えてオレフィン系接着剤を用いたこと以外は、実施例2−1と同様の操作を繰り返して、本例の負極構造体を得た。
【0099】
(実施例2−3)
ポリオレフィン系樹脂フィルムからなる高抵抗部材に代えてポリイミド系樹脂フィルムからなる高抵抗部材を用い、また、エポキシ系接着剤に代えてポリイミド系接着剤を用い、更に転写法に代えて熱転写法を利用したこと以外は、実施例2−1と同様の操作を繰り返して、本例の負極構造体を得た。
【0100】
(実施例2−4)
ポリオレフィン系樹脂フィルムからなる高抵抗部材に代えてポリイミド系樹脂フィルムからなる高抵抗部材を用い、また、エポキシ系接着剤を用いず、更に転写法に代えて熱転写法を利用したこと以外は、実施例2−1と同様の操作を繰り返して、本例の負極構造体を得た。
【0101】
(実施例2−5)
導電性を有する樹脂層を含む集電体に代えて銅箔からなる集電体を用いたこと以外は、実施例2−1と同様の操作を繰り返して、本例の負極構造体を得た。
【0102】
(実施例2−6)
導電性を有する樹脂層を含む集電体に代えて銅箔からなる集電体を用いたこと以外は、実施例2−2と同様の操作を繰り返して、本例の負極構造体を得た。
【0103】
(実施例2−7)
導電性を有する樹脂層を含む集電体に代えて銅箔からなる集電体を用いたこと以外は、実施例2−3と同様の操作を繰り返して、本例の負極構造体を得た。
【0104】
(実施例2−8)
導電性を有する樹脂層を含む集電体に代えて銅箔からなる集電体を用いたこと以外は、実施例2−4と同様の操作を繰り返して、本例の負極構造体を得た。
【0105】
得られた負極構造体の体積抵抗値や、集電体と負極活物質若しくは高抵抗部材との密着性が優れているという観点から、実施例2−1や実施例2−1で適用した高抵抗部材及び接着剤の組合せが望ましい。
【0106】
(実施例3−1)
<集電体の作製>
ポリエチレンにカーボン材料を分散させ、厚み100μmに延伸し、フィルム状に成形して、導電性を有する樹脂層を含む集電体を作製した。なお、後の工程において、集電体を縦90mm×横140mmの大きさに切断し、周辺部に10mmのシールしろを設けた。
【0107】
<双極型電極の作製>
まず、空孔率95%のポリプロピレン樹脂製の不織布(繊維径:約20μm、目付け:20g/m)に対して、微細な無数の凸部を有するヒートロールプレスを用いて、不織布の一部に高抵抗部材を形成したものを得た(図3(a)参照。)。
次に、正極活物質としてのリチウムマンガン酸化物(LiMn)85質量部と、導電剤としてのアセチレンブラック5質量部と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)10質量部と、スラリー粘度調整溶媒としてのN−メチル−ピロリドン(NMP)とを混合して、正極活物質層形成用スラリーを作製した。
次いで、上記不織布に、上記正極活物質層形成用スラリーを含浸させ、乾燥させた(図3(b)参照。)。
【0108】
負極活物質としてのハードカーボン90質量部と、結着剤としてのPVdF10質量部と、スラリー粘度調整溶媒としてのNMPとを混合して、負極活物質層形成用スラリーを作製した。
次いで、上記別個の不織布に、上記負極活物質層形成用スラリーを同様に含浸させ、乾燥させた(図3(b)参照。)。
しかる後、これらを共にプレスして、双極型の電極構造体を作製した。
【0109】
なお、双極型の電極構造体の作製と同様の操作により、集電体の片面に正極活物質層(縦70mm×横36mm×厚み60μm、3箇所)と高抵抗部材(ポリプロピレン、縦70mm×横6mm×厚み60μm、2箇所)とを形成した。これにより、正極構造体を作製した。また、片面に正極構造体を形成していないこと以外は、双極型の電極構造体の作製と同様の操作により、集電体の片面に負極活物質層(縦70mm×横36mm×厚み60μm、3箇所)と高抵抗部材(ポリプロピレン、縦70mm×横6mm×厚み60μm、2箇所)とを形成した。これにより、負極構造体を作製した。
【0110】
<電解質の作製>
エチレンカーボネート(EC)及びジエチルカーボネート(DEC)を、EC:DEC=1:1(体積比)の割合で混合した非水溶媒に、電解質塩としての六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を濃度が1mol/lとなるように溶解させて、非水電解液を作製した。
【0111】
<双極型電池の作製>
上記得られた3つの双極型の電極構造体、正極構造体及び負極構造体の正極活物質層及び負極活物質層の周囲にポリエチレン製のシール用フィルムからなるシール部材を配置し、更に電極構造体の各正極活物質層と他の電極構造体の各負極活物質層とが、それぞれ対向するように且つ電極構造体の各分割部位と他の電極構造体の各分割部位とが、それぞれ対向するように配置して積層した。
次いで、各層の注液部以外のシール部3辺を上下からプレス(プレス圧力:0.2MPa、プレス温度:140℃、プレス時間:5秒間)し、各層のシール部材を融着し、各層をシールして、各層の注液部のみが開口された袋状とした。
更に、各層の注液部のみが開口された部位に、作製した非水電解液を注液し、シール部材を真空密封した。
しかる後、発電要素の投影面全体を覆うことのできる縦80mm×横130mm×厚み100μmのアルミニウム板の一部が発電要素投影面外部まで伸びている部分がある強電端子で発電要素を挟み込み、これらを覆うようにアルミニウムラミネートフィルムで真空密封し、両面から発電要素全体を大気圧で押すことにより、強電端子と発電要素間の接触を高めた。これにより、図6(a)に示すような、本例の双極型電池が得られた。
【0112】
実施例3−1においても、実施例1−2と同様の体積抵抗値を得ることができた。また、多孔質保持材の一種である不織布の存在により、電極の強度が向上しているものと解される。
【0113】
以上、本発明を若干の実施形態によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0114】
10 電極構造体
11 基材
12 電極活物質層
12A 正極活物質層
12a 多孔質保持材
12B 負極活物質層
13 高抵抗部材
14 電解質
20 セパレータ
30 シール部材
40A 正極タブ
40B 負極タブ
50 外装材
100 双極型電池
200 転写用基材
210 ローラ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
上記基材主面上に形成された電極活物質層と、
電解質より電気抵抗の高い高抵抗部材と、を有し、
上記電極活物質層の表面側は複数に分割されており、上記高抵抗部材は上記分割された電極活物質層同士の間に形成された分割部位に形成されていることを特徴とする電極構造体。
【請求項2】
上記高抵抗部材の熱容量が、上記電解質の熱容量より高いことを特徴とする請求項1に記載の電極構造体。
【請求項3】
上記高抵抗部材の電解質遮断性が、上記電極活物質層の電解質遮断性より高いことを特徴とする請求項1又は2に記載の電極構造体。
【請求項4】
上記電極活物質層が、上記高抵抗部材と結合した多孔質保持材を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか2つの項に記載の電極構造体。
【請求項5】
上記高抵抗部材が、オレフィン系樹脂、イミド系樹脂、アミド系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂、ケイ素系樹脂及びセルロース系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の電極構造体。
【請求項6】
上記分割部位において上記基材の一部が露出しており、上記高抵抗部材が上記基材と接するように形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の電極構造体。
【請求項7】
上記基材が、導電性を有する樹脂層を含む集電体であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つの項に記載の電極構造体。
【請求項8】
電解質と、
請求項1〜7のいずれか1つの項に記載の電極構造体と、を備え、
上記電極活物質層が、上記基材の主面の双方の上に形成されており、
上記基材の主面の一方の上に形成された電極活物質層が正極活物質層であり、且つ他方の上に形成された電極活物質層が負極活物質層であることを特徴とする双極型電池。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1つの項に記載の他の電極構造体を更に備え、
上記電極構造体の各正極活物質層又は各負極活物質層と上記他の電極構造体の各負極活物質層又は各正極活物質層とが、それぞれ対向するように配置されており、
上記電極構造体の各分割部位と上記他の電極構造体の各分割部位とが、それぞれ対向するように配置されており、
上記各負極活物質層の表面における面積が、上記各正極活物質層の表面における面積より大きいことを特徴とする請求項8に記載の双極型電池。
【請求項10】
分割部位を形成するための電解質より電気抵抗の高い高抵抗部材を、転写用基材上に形成する工程(1)と、
上記転写用基材上に形成された高抵抗部材を、基材上に転写する工程(2)と、
電極活物質層形成用スラリーを、上記高抵抗部材が転写された基材上の高抵抗部材未転写部位に塗布する工程(3)と、
を含むことを特徴とする電極構造体の製造方法。
【請求項11】
上記高抵抗部材として疎水性樹脂を用い、
上記電極活物質層形成スラリーとして水系バインダーを含むものを用いることを特徴とする請求項10に記載の電極構造体の製造方法。
【請求項12】
多孔質保持材を含む電極活物質層と、
電解質より電気抵抗の高い高抵抗部材と、を有し、
上記電極活物質層の表面側は複数に分割されており、上記高抵抗部材は上記分割された電極活物質層同士の間に形成された分割部位に形成されており、上記高抵抗部材が上記多孔質保持材と結合していることを特徴とする電極構造体。
【請求項13】
分割部位を形成するための電解質より電気抵抗の高い高抵抗部材を、多孔質保持材の一部を加熱及び/又は圧縮して形成する工程(1’)と、
電極活物質層形成用スラリーを、上記多孔質保持材の高抵抗部材未形成部位に含浸させる工程(2’)と、
を含むことを特徴とする電極構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−253804(P2011−253804A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93063(P2011−93063)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】