説明

電極部材、半導体素子、配線板、及び電気装置

【課題】ファインピッチ化可能な電極部材を提供する。
【解決手段】本発明の電極部材10はストッパー15が設けられるか、接着剤の流れの下流側に位置する第二の開口17が幅狭にされており、通路19内を流れる導電性粒子22は堰き止められて流出せず、通路19の内部に確実に残留する。導電性粒子22はランド11上に確実に配置させることが可能なので、ランド11と他の電気部品の端子との電気的接続が確実に行われる。ランド11の間の距離を狭くしても、導電性粒子22は壁部材16に遮られ、隣接するランド11と接触しないので短絡も起こらない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接着剤を用いて電気部品が接続される電極部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体素子や配線板のような電気部品同士の接続には、バインダー中に導電性粒子が含有された接着剤が用いられている。
近年、機器の小型化や半導体素子のコストダウン化等の理由により、端子のファインピッチ化が進展しており、端子面積の微小化と端子間距離の狭スペース化への対応の要求が高まっている。
【0003】
しかし、電気部品の端子と、他の電気部品の端子の間に導電性粒子を挟み込み、端子同士を確実に電気的に接続するためには、端子の幅を導電性粒子の粒径よりも大幅に広くする必要があり、端子面積の微小化は困難であった。
また、同じ電気部品の隣接する端子同士の間隔を狭くすると、端子同士の間に入り込んだ導電性粒子が隣接する端子の両方に接続し、短絡するという問題もある。従って、隣接する端子同士の間隔を、導電性粒子の粒径よりも大幅に広くする必要があり、ファインピッチ化が困難であった。
【特許文献1】特開2003−273490号公報
【特許文献2】特開昭63−174328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的は端子がファインピッチ化された場合でも、電気部品同士を確実に接続するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明は、導電性粒子が含有された接着剤が配置面上に配置されると、前記接着剤により、電気部品の電極と電気的に接続される電極部材であって、前記配置面上に所定間隔を空けて配置され、互いに分離された複数本の細長の壁部材と、前記各壁部材の間にそれぞれ位置し、前記配置面上に配置された複数のランドとを有し、前記壁部材先端は前記ランド表面の高さよりも高くされ、隣接する前記壁部材の細長の壁面を側面とし、前記壁部材の壁面の端部が開口にされた複数の通路が形成され、前記接着剤が押圧された時に、同一方向に流れる部分に位置する前記電極部材中では、前記各通路は前記接着剤の流れる方向に沿って延設され、前記各通路の一端の前記開口と他端の前記開口は、前記接着剤の流れの上流側と下流側に向けられ、前記各通路の上流側の開口よりも下流側であって、前記通路の内部又は前記通路の延長線上には、先端の高さが前記ランド表面よりも高くされたストッパーがそれぞれ配置された電極部材である。
本発明は電極部材であって、前記各壁部材と前記ストッパーは、前記配置面上に形成された同一の絶縁膜がパターニングされて形成された電極部材である。
本発明は、導電性粒子が含有された接着剤が配置面上に配置されると、前記接着剤により、電気部品の電極と電気的に接続される電極部材であって、前記配置面上に所定間隔を空けて配置され、互いに分離された複数本の細長の壁部材と、前記各壁部材の間にそれぞれ位置し、前記配置面上に配置された複数のランドとを有し、前記壁部材先端は前記ランド表面の高さよりも高くされ、隣接する前記壁部材の細長の壁面を側面とし、前記壁部材の壁面の端部が開口にされた複数の通路が形成され、前記接着剤が押圧された時に、同一方向に流れる部分に位置する前記電極部材中では、前記各通路は前記接着剤の流れる方向に沿って延設され、前記各通路の一端の前記開口と他端の前記開口は、前記接着剤の流れの上流側と下流側に向けられ、前記各通路の下流側の幅は、上流側の幅よりも狭くされた電極部材である。
本発明は電極部材であって、前記各壁部材は配置面上に配置された同一の絶縁膜がパターニングされて形成された電極部材である。
本発明は、素子本体と、前記素子本体の一面に配置された請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の電極部材とを有し、前記各通路は、上流側の開口が前記素子本体の内側に向けられ、下流側の開口が前記素子本体の外側に向けられた状態で、同一直線上に列設された半導体素子である。
本発明は、請求項5記載の半導体素子と、表面に端子が配置された配線板とを有し、前記半導体素子と前記配線板の間には導電性粒子を含有する接着剤が配置され、前記半導体素子のランドと、前記配線板の端子とで前記導電性粒子が挟み込まれ、前記ランドと前記端子とが電気的に接続された電気装置である。
本発明は、基板と、前記基板の表面に配置され、端部が所定の接続領域に集められた複数本の細長の配線部と、前記接続領域に配置され、前記ランドが前記配線部の端部に接続された請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の電極部材とを有し、前記各通路は、上流側の開口が前記接続領域の内側に向けられ、下流側の開口が前記接続領域の外側に向けられた状態で、同一直線上に列設された配線板である。
本発明は請求項7記載の配線板と、表面に端子が配置された電気部品とを有し、前記電気部品と前記配線板の間には導電性粒子を含有する接着剤が配置され、前記ランドと前記端子は前記導電性粒子を挟み込み、電気的に接続された電気装置である。
【0006】
本発明は上記のように構成されており、通路の幅は導電性粒子の直径と同じかそれ以上であれば良く、従って、端子間隔の最小値は、導電性粒子の直径と壁部材の幅の合計になる。
壁部材の幅は特に制限がなく、狭幅化が可能なので、本発明は従来のように端子間隔を導電性粒子の粒径よりも極端に広くしなくても、隣接する端子同士が導電性粒子で短絡しない。
【発明の効果】
【0007】
端子間の間隔を狭くしても、隣接する端子が導電性粒子で短絡しない。端子面積を狭くしたり、接着剤に含有される導電性粒子の量が少なくても、導電性粒子が通路内に確実に残って、電気部品の接続が確実に行われる。従って、本発明によれば、端子がファインピッチ化された場合でも他の電気部品の端子との電気的接続が確実に行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
先ず、本発明の第一例の電極部材について説明する。
図2(a)、(b)の符号21は電極部材が配置される処理対象物を示している。ここでは、処理対象物21は板状であって、処理対象物21の表面と裏面のうち、後述する接着剤が配置される配置面12に電極部材10が配置されている。
電極部材10は端子部14と、壁部材16と、ストッパー15とを複数ずつ有している。各端子部14は細長に形成され、それぞれ長手方向を平行にして所定間隔を空けて同一直線上に列設されている(図1)。
【0009】
各壁部材16は細長であり、互いに隣接する端子部14の間で、長手方向を端子部14の長手方向に沿って延設され、端子部14の長辺部分は壁部材16で覆われ、壁部材16と壁部材16の間の部分が露出してランド11が形成されている。
各壁部材16は端子部14よりも厚く、配置面12から壁部材16表面までの高さは、配置面12から端子部14表面までの高さよりも高くなっている(図2(a))。従って、ランド11の両側には、壁部材16の壁面が突き出され、壁部材16の壁面を側面とし、底面にランド11が位置する通路19が形成されている。
【0010】
上述したように、端子部14は長手方向が互いに平行にされており、各壁部材16は端子部の長手方向に沿って延設されているから、壁部材16同士も長手方向が互いに平行にされている。従って、壁部材16同士は接触せずに互いに分離され、通路19の両端部には第一、第二の開口17、18が形成されている。ここでは、各壁部材16の長さは同じであり、第一、第二の開口17、18はそれぞれ同一直線上に位置する。
【0011】
通路19の一端側と他端側には、配置面12や後述する配線部13のように、壁部材16よりも配置面12からの高さが低い部材が露出する領域(第一、第二の露出領域7、8)が形成されており、第一、第二の開口17、18はそれぞれ第一、第二の露出領域7、8と面し、第一、第二の露出領域7、8は通路19を介して互いに接続されている。
【0012】
ストッパー15は、第一、第二の露出領域7、8のうち、いずれか一方の露出領域7、8内に配置されている。ストッパー15が配置された領域を第二の露出領域8とすると、ストッパー15は各通路19を第二の露出領域8側に延長した領域にそれぞれ一つずつ位置する(図2(b))。
【0013】
壁部材16とストッパー15とは離間し、ストッパー15同士も互いに分離しており、ストッパー15と壁部材16の間、及び互いに隣接するストッパー15の間にはそれぞれ隙間25a、25bが形成されている。
ここでは、各壁部材16の幅は略等しく、各壁部材16は等間隔で配置されており、互いに隣接する壁部材16の壁面間の距離、即ち、各通路19の幅は等しくなっている。
【0014】
通路19の幅は、後述する接着剤の導電性粒子22の直径よりも大きくされ、導電性粒子22は第一の開口17を通って通路19内を移動可能に構成されている(図3)。
ストッパー15はランド11を構成する端子部14よりも膜厚であって、その表面の配置面12からの高さは、ランド11表面の配置面12からの高さよりも高く、ストッパー15の表面はランド11から高く突き出されている。
【0015】
壁部材16とストッパー15の間の隙間25aは通路19の幅よりも狭く、導電性粒子22の直径よりも小さくなっており、ストッパー15はランド11、即ち、通路19の底面よりも高く突き出されているから、導電性粒子22は壁部材16とストッパー15との間の隙間25aを通り抜けられず、ストッパー15で堰き止められる。
【0016】
従って、バインダー(ここでは不図示)に導電性粒子22が分散された接着剤が第一の露出領域7から第二の露出領域8に向かって流れる時には、導電性粒子22はバインダーと一緒に通路19内を流れるが第二の開口18からは流出せず、通路19内に留まる。
【0017】
このとき、バインダーはストッパー15で堰き止められず、壁部材16とストッパー15との間の隙間25aと、互いに隣接するストッパー15間の隙間25bを通って第二の露出領域8内で広がるので、第一の露出領域7から第二の露出領域8へ向かう接着剤の流れが止まらない。
【0018】
新たな導電性粒子22がバインダーと一緒に通路19内に流れ込むと、その導電性粒子22は先に通路19内に留まった導電性粒子22と接触し、通路19内に残るが、バインダーは導電性粒子22と壁部材16との間の隙間を通って第二の露出領域8に流出するので接着剤の流れは止まらない。
【0019】
従って、通路19内には導電性粒子22が次々流れ込み、互いに密着した状態で通路19内に留まるので、ランド11上には確実に導電性粒子22が配置される。
以上は、各通路19を延長した領域にストッパー15が一つずつ配置される場合に付いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0020】
図4の符号30は本発明第二例の電極部材を示しており、この電極部材30は各通路39を第二の露出領域側に延長した領域に、それぞれ2つ以上(ここでは3つ)のストッパー35が配置された以外は、上記第一例の電極部材10と同じ構成を有している。
壁部材36とストッパー35との間の隙間32aと、隣接するストッパー35間の隙間32bは、それぞれ導電性粒子22の直径よりも小さく、バインダーは通り抜けても、導電性粒子22がそれらの隙間32a、32bを通り抜けないように構成されている。
【0021】
従って、第一の露出領域から第二の露出領域に向かって接着剤が流れる時には、第一の開口37を通って通路39内に入り込んだ導電性粒子22は、ストッパー35に堰き止められて通路39内に残り、ランド31上に確実に導電性粒子22が配置される。
【0022】
ここでは、各通路39は幅広にされ、その幅は導電性粒子22の直径の2倍以上になっており、各通路39には通路39の延設方向に沿って2列以上の導電性粒子22が配置されるようになっている。
以上はストッパー15、35が通路19、39の外側の領域に配置された場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0023】
図5の符号40は本発明第三例の電極部材を示しており、この電極部材40はストッパー45が第二の露出領域に設けられておらず、通路49の途中に設けられた以外は、上記第一例の電極部材10と同じ構成を有している。
【0024】
このストッパー45の幅は、通路49の幅よりも狭く、通路49とストッパー45との間には隙間42が形成されている。この隙間42は導電性粒子22の直径よりも小さく、導電性粒子22がその隙間42を通り抜けないように構成されており、第一の露出領域から第二の露出領域へ向かって接着剤が流れる時に、導電性粒子22は通路49内でストッパー45に堰き止められて、第二の開口48へは到達せず、第一の開口47とストッパー45との間に留まる。
【0025】
従って、ストッパー45と第一の開口47の間、即ち、ストッパー45よりも通路49の上流側で、通路49の底面にランド41が位置すれば、ランド41上に確実に導電性粒子22が配置されることになる。
以上は、電極部材10、30、40にストッパー15、35、45が設けられた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0026】
図6の符号50は本発明第四例の電極部材を示している。
第四例の電極部材50は、ストッパーが形成されておらず、壁部材56の形状が異なる以外は、上記第一例の電極部材10と同じ構成を有している。
ここでは、各壁部材56は平面形状が台形であって、台形の上辺を第一の露出領域に、底辺を第二の露出領域に向けた状態で同一直線上に列設されている。従って、各壁部材56は接着剤の流れの下流側程幅広になっている。
【0027】
ここでは、壁部材56は等間隔を空けて配置され、台形の上辺は同一直線上に位置し、台形の底辺が上辺とは異なる同一直線上に位置する。従って、互いに隣接する壁部材56の間の通路59は、壁部材56とは反対に上流側程幅広になり、第一の露出領域に面する上流側の開口(第一の開口)57は、第二の露出領域に面する下流側の開口(第二の開口)58よりも広くなっている。
【0028】
第一の開口57は導電性粒子22の直径よりも広いが、第二の開口58は導電性粒子22の直径よりも狭くなっており、接着剤が第一の露出領域から第二の露出領域に向かって流れる時には、導電性粒子22は第一の開口57を通って通路59内部に入り込んでも、第二の開口58を通り抜けられず、通路59内に留まる。
【0029】
このとき、バインダーは導電性粒子22と壁部材56との間の隙間を通って第二の開口58から第二の露出領域に流出するから、接着剤の流れは止まらず、新たな導電性粒子22が通路59内に流れ込む。このように、導電性粒子22は通路59の内部に留まるから、ランド51上に確実に導電性粒子22が配置される。
【0030】
尚、上記第四例の電極部材50のように、第一の開口57よりも幅狭にされた第二の開口58の近傍に、更にストッパーを設けてもよい。この場合、ストッパーは通路59の内部に設けてもよいし、通路59を第二の露出領域側に延長した領域に配置してもよい。
以上は、ストッパー15、35、45が壁部材16、36、46から分離した場合について説明したが本発明はこれに限定されるものではない。
【0031】
図7の符号60は本発明第五例の電極部材を示している。この電極部材60ではストッパー65が壁部材66の下流側の端部に接続され、壁部材66の側面から通路69の内側に向かって突き出されている。
ストッパー65は通路69の一方の側面から突き出されていても、両方の側面から突き出されていてもよく、ここでは、ストッパー65が通路69の両方の側面から突き出されている。
【0032】
ストッパー65が通路69の一方の側面から突き出されている場合は、該ストッパー65と通路69の他方の側面との間の空間がバインダーが通り抜ける隙間68となり、ストッパー65が通路69の両方の側面から突き出されている場合は、同じ通路69内に突き出されたストッパー65とストッパー65の間の空間がバインダーが通り抜ける隙間68となり、いずれの場合も、隙間68は導電性粒子22の直径よりも狭く、導電性粒子22が通り抜けられないように構成されている。
【0033】
ストッパー65と、該ストッパー65が接続された壁部材66とで一つの壁部材とすると、上述した隙間68が第二の露出領域と面する下流側の開口(第二の開口)となり、壁部材66のストッパー65が接続されていない側の端部の開口が第一の露出領域と面する上流側の開口(第一の開口)67となる。
【0034】
第一の開口67はストッパー65が接続されていないため第二の開口68よりも広く、導電性粒子22の直径よりも広くされている。従って、第一の露出領域から第二の露出領域に向かって接着剤が流れる時には、接着剤中の導電性粒子22は第一の開口67を通って通路69内に入り込むが、上述したように第二の開口68を通り抜けずに通路69内に留まるので、この電極部材60においても、通路69内に露出するランド61上に確実に導電性粒子22が配置される。
【0035】
次に、上述した電極部材を有する本発明の電気部品について説明する。
図8の符号70は本発明の電気部品の一例である半導体素子を示している。この半導体素子70は素子本体71を有しており、素子本体71の一面が配置面となり、その配置面に本発明の電極部材が形成されている。素子本体71に形成される本発明の電極部材は特に限定されないが、ここでは、上記第五例の電極部材60が配置されている。
【0036】
接続対象物にはランド61と同じ間隔で端子が配置されている。この端子が配置された領域を接続領域とすると、接続領域と配置面のいずれか一方又は両方に接着剤を塗布又は貼付し、端子とランド61とを対向するよう位置合わせした後、半導体素子70と接続対象物とで接着剤を押圧する。
【0037】
ここでは、接続対象物の接続領域が設けられた面は、半導体素子70の配置面よりも広くされており、接続領域の周囲には接着剤の流れを遮る遮蔽物が存在しておらず、接着剤は押圧によって半導体素子70と接続対象物との間から、半導体素子70よりも外側に向かって広がる。
接着剤は配置面の中心では四方八方に流れ、配置面の縁ではその縁に対して略垂直な方向に流れる。縁が直線状の場合、その縁の両端を除いた中央付近では接着剤は同じ方向に流れることになる。
【0038】
電極部材60の各通路69は、配置面の直線状の縁の中央付近で、第一の開口67を配置面の内側に、第二の開口68を配置面の外側に向けた状態で、同一直線上に列設されている。従って、各通路69は接着剤が同じ方向に流れる部分で、第一の開口67を上流側、第二の開口68を下流側に向けて配置されたことになる。
【0039】
ここでは、配置面の形状は長方形であって、各通路69の列設場所は配置面の長辺の中央付近であり、その列設方向は配置面の長辺と平行であり、各通路69の長手方向は該長辺と平行な線分と直交している。
接着剤は直線状の縁では、その縁と直交する方向に流れるから、各通路69の長手方向は接着剤の流れと平行であり、接着剤は通路69内に浸入し、第一の開口67から第二の開口68に向かって流れる。
【0040】
上述したように導電性粒子22は通路69内に残るが、バインダーは第二の開口68を通って第二の露出領域に流出する。従って、通路69内には導電性粒子22は確実に残るが、余分なバインダーは残らない。
【0041】
上記第一例〜第五例の電極部材10、30、40、50、60では、ランド11、31、41、51、61から壁部材16、36、46、56、66先端までの高さは、接着剤に用いられる導電性粒子22の直径よりも小さくなっており、ランド11、31、41、51、61上に残った導電性粒子22は、壁部材16、36、46、56、66の先端から突き出される。
【0042】
上述したように、接着剤を押圧する時には、予め接続対象物の端子とランド61とが対向するから、接続対象物の端子はランド61上の導電性粒子と接触し、導電性粒子を介して接続対象物の端子と、ランド61とが電気的に接続される。
【0043】
素子本体71の配置面には、ランド61を構成する端子よりも幅狭の配線部63が配置され、配線部63の一端は該端子に接続され、他端がトランジスタやダイオード等の電気素子が配置された領域(活性領域)75に伸ばされ、電気素子で形成された回路に接続されている。従って、接続対象物の端子が、ランド61に電気的に接続されると、接続対象物が半導体素子70の回路と電気的に接続されたことになる。
【0044】
バインダーが熱硬化性樹脂を含有する場合は、接着剤を押圧するときに加熱し、接着剤を半導体素子70と接続対象物に接触させた状態で硬化させれば、半導体素子70と接続対象物とは接着剤によって機械的にも接続され、半導体素子70と接続対象物とが機械的にも電気的にも接続された電気装置が得られる。
【0045】
この半導体素子70と後述する配線板を用いた電気装置では、導電性粒子22は壁部材66によってランド61上に保持されるので、電気的接続が確実に行われる。また、壁部材66は絶縁性物質で構成されており、互いに隣接するランド61上の導電性粒子22同士は接触せず、絶縁性の壁部材66で絶縁されている。従って、隣接するランド61同士は電気的に接続されず、短絡が生じない。
【0046】
次に、本発明の電気部品の他の例について説明する。
図9の符号80は本発明の電気部品の他の例である配線板を示しており、この配線板80は配線板本体81を有している。
配線板本体81は板状又はフィルム状であって、片面が配置される配置面となる。この配置面に接続される接続対象物は予め決まっており、その接続対象物が接続される場所も予め決まっている。図9の符号85は接続対象物が接続される領域(接続領域)を示しており、電極部材60はこの接続領域85に配置されている。
【0047】
接続対象物にはランド61と同じ間隔で端子が配置されており、接続対象物の端子が配置された面と、配線板80の接続領域85のいずれか一方又は両方に接着剤を塗布又は貼付し、端子とランド61を対向するよう位置合わせ後、配線板80と接続対象物とで接着剤を挟み込む。
ここでは、配線板80の配置面は接続対象物の平面形状よりも広くされ、接続領域85の周囲には接着剤の流れを遮る遮蔽物が存在しておらず、接着剤は押圧によって接続領域85と接続対象物との間から、接続領域85よりも外側に向かって広がる。
【0048】
接着剤は接続領域の中心では四方八方に流れ、接続領域85の縁ではその縁に対して垂直な方向に流れる。電極部材60の各通路69は接続領域85の直線状の縁の両端を除いた中央付近で、第一の開口67を接続領域85の内側に、第二の開口68を接続領域85の外側に向けた状態で、その縁と平行な同一直線上で列設されている。
上述したように、直線状の縁の中央付近では接着剤が同一方向に流れ、その流れの方向は縁と直交するから、通路69は接着剤が同一方向に流れる部分で、その流れの方向に沿って配置されている。
【0049】
従って、接着剤は通路69内に浸入し、第一の開口67から第二の開口68に向かって流れる。上述したように接着剤中の導電性粒子22は通路69内に残るが、バインダーは第二の開口68を通って第二の露出領域に流出するので、通路69内には導電性粒子22は確実に残るが、余分なバインダーは残らない。
【0050】
接続対象物と配線板80とで接着剤を挟み込む前には、予め接続対象物の端子とランド61とが対向するよう配置されるから、押圧によって余分なバインダーが押し退けられると、接続対象物の端子とランド61とで導電性粒子が挟み込まれ、端子とランド61とが電気的に接続される。
【0051】
この配線板80の配置面には、ランド61を構成する端子よりも幅狭の配線部63が形成され、配線部63の一端は端子に接続され、他端は接続領域85外部で他の回路や他の電気部品と接続されるようになっている。従って、接続対象物は電極部材60と配線部63を介して、他の回路や他の電気部品に接続される。
【0052】
この配線板80においても、バインダーに熱硬化性樹脂を含有させ、接着剤を押圧する時に加熱し、接着剤を配線板80と接続対象物に接触させた状態で硬化させれば、配線板80と接続対象物とが機械的にも接続され、配線板80と接続対象物とが機械的にも電気的にも接続された電気装置が得られる。
【0053】
以上は、ランド11、31、41、51、61表面から壁部材16、36、46、56、66先端までの高さが導電性粒子の直径よりも小さく、ランド11、31、41、51、61上の導電性粒子が壁部材16、36、46、56、66の先端から突き出る場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0054】
接続対象物の端子が突起状であり、該端子の先端部分の幅が通路19の幅よりも狭い場合には、壁部材16、36、46、56、66の先端が導電性粒子よりも高く突き出されていても、突起状の端子の先端が通路19内に入り込んで導電性粒子と接触するので、接続対象物の端子を電極部材10、30、40、50、60のランド11、31、41、51、61に電気的に接続することができる。
【0055】
以上は半導体素子70の配置面が長方形の場合について説明したが本発明はこれに限定されるものではなく、配置面は正方形であっても、多角形であってもよい。例えば、配置面が正方形や多角形の場合、配置面の縁を構成する辺の中央部分では、接着剤が同一方向に流れるので、電極部材を辺の中央部分に設ければ、接着剤が同じ方向に流れる部分に配置されたことになる。
【0056】
同様に、本発明の配線板80に接続する接続対象物は平面形状が正方形や多角形であってもよく、その場合、接続領域85は正方形や多角形になり、電極部材60は接続領域85の縁を構成する辺の両端部を除く中央部分に設ければ、電極部材は接着剤が同じ方向に流れる部分に配置されたことになる。
【0057】
各通路が接着剤の流れる方向に沿って延設され、第一の開口が接着剤の流れの上流側、第二の開口(又はストッパーが配置された側)が接着剤の流れの下流側に向けられていれば、配置面や接続領域の縁の角部分に電極部材を設けてもよい。
【0058】
接着剤の配置方法は特に限定されないが、具体的にはペースト状の接着剤を配置面に塗布する方法、フィルム状に成形した接着剤(接着フィルム)を配置面に貼付する方法がある。
接着剤に用いるバインダーは特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂を含有し、必要に応じて熱硬化性樹脂の硬化剤、熱可塑性樹脂、フィラー、カップリング剤等の添加剤が添加されたものである。
【0059】
導電性粒子の種類は特に限定されず、金属粒子、樹脂粒子の表面に金属メッキ層等の導電層が形成された導電性被覆粒子、金属粒子や導電性被覆粒子の表面が樹脂膜で覆われた樹脂被膜粒子等を用いることができる。
【0060】
第一〜第五例の電極部材10、30、40、50、60の端子部14の形成方法は特に限定されないが、例えば、配置面12に金属層を形成し、該金属層をパターニングすることで形成される。この際、上述した配線部13を端子部14と一緒に同じ金属層からパターニングによって形成することができる。
【0061】
配線部13の厚さも特に限定されないが、配置面12から表面までの高さが壁部材16よりも高い端子部14に接続させると、接着剤やバインダーの流れを妨げる恐れがあるので、壁部材よりも薄膜とし、配置面12から表面までの高さを壁部材16よりも低くして、接着剤やバインダーが配線部13の表面上を流れるようにすることが望ましい。
【0062】
上記壁部材16、36、46、56、66やストッパー15、35、45、65の形成方法も特に限定されないが、その一例を述べると、端子部14が形成された状態の配置面12に絶縁膜を形成した後、該絶縁膜をパターニングして、壁部材16、36、46、56、66とストッパー15、35、45、65を同時に形成する。
壁部材16、36、46、56、66やストッパー15、35、45、65を形成する際には、上記絶縁膜をパターニングする際に、配線部13の一部又は全部を覆うように絶縁膜を残し、壁部材やストッパーを形成するのと同時に、配線部13や活性領域を覆う保護膜(パッシベーション膜)を形成してもよい。
【0063】
このような保護膜の形成場所や形状は特に限定されないが、第一の開口17、37、47、57、67の近傍に設けると接着剤の流れが防止され、第二の開口18、38、48、58、68の近傍に設けるとバインダーの流れが防止されるので、第一の開口17、37、47、57、67から、少なくとも導電性粒子の直径よりも離間させて接着剤(導電性粒子を含む)を移動可能な第一の露出領域を設け、第二の開口18、38、48、58、68から離間させてバインダーが移動可能な第二の露出領域を設ける必要がある。
【0064】
壁部材16、36、46、56、66とストッパー15、35、45、65を構成する絶縁膜は、絶縁性のものであれば特に限定されないが、一例を述べると、ポリイミド樹脂膜やアクリル樹脂膜のような樹脂膜、SiO2膜、SiN膜のような無機絶縁膜を用いることができる。
【0065】
本発明の電極部材10、30、40、50、60が形成される電気部品は配線板に限定されず、抵抗素子等種々の電気部品に本発明の電極部材を形成することができる。接続対象物も特に限定されるものではなく、例えば本発明の配線板80には、電極部材を介して半導体素子の他にも、抵抗素子や、他の配線板等を接続することができる。
【0066】
接続対象物に壁部材やストッパーを形成して電極部材を設けておき、本発明の電極部材のランド同士を接着剤で接続してもよいし、壁部材やストッパーが形成されていない接続対象物を用い、その接続対象物の端子を本発明の電極部材のランドと接続してもよい。本発明の電極部材同士を接続する場合には、いずれの電気部品においても、隣接する端子間で短絡が起こらない。
【実施例】
【0067】
本発明の半導体素子70と下記の配線板とを接着剤を用いて貼りあわせて電気装置を作製した。接着剤の組成と、配線板の詳細と、半導体素子70の詳細と、接着条件とを下位に記載する。
【0068】
<接着剤>
バインダ組成:エポキシ樹脂(液状エポキシ樹脂を含む)、アミン系硬化剤
導電性粒子22:樹脂粒子表面にNi、Auを順番に積層、平均直径10μm
接着剤膜厚(配置面上塗布時):15μm
<配線板>
基板本体:厚さ0.7mm、平面形状28mm×64mmの長方形
配線部:抵抗10Ω□、ITOパターン
<半導体素子70>
平面形状(配置面):1.8×20mmの長方形
端子部64:Al、窒化膜開口10×120μm
壁部材66:ポリイミド樹脂製、膜厚7μm、130μm×10μmの長方形
通路69:幅10μm
第二の開口68(ストッパー65の間の距離):7μm
<配線板と半導体素子70の接着条件>
加熱温度200℃、押圧力20MPa、5秒間
作製された電気装置について、配線板の端子と半導体素子70の端子部64の銅通抵抗を四端子法で測定したところ、その導通抵抗は0.6Ωと低く、配線板と半導体素子70とが電気的に接続されていることが分かった。
また、半導体素子70の隣接する端子部64間の絶縁抵抗を二端子法で測定したところ、その絶縁抵抗は3.3×1012Ωと高く、隣接する端子部64同士が短絡していないことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明第一例の電極部材の平面図
【図2】(a):図1のA−A切断線断面図、(b)図1のB−B切断線断面図
【図3】接着剤を配置した状態を模式的に示す平面図
【図4】本発明第二例の電極部材の平面図
【図5】本発明第三例の電極部材の平面図
【図6】本発明第四例の電極部材の平面図
【図7】本発明第五例の電極部材の平面図
【図8】本発明の電気装置の一例を説明する平面図
【図9】本発明の電気装置の他の例を説明する平面図
【符号の説明】
【0070】
10、30、40、50、60……電極部材 11、31、41、51、61……ランド 16、36、46、56、66……壁部材 15、35、45、65……ストッパー 19、39、49、59、69……通路 22……導電性粒子 70……半導体素子 80……配線板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粒子が含有された接着剤が配置面上に配置されると、前記接着剤により、電気部品の電極と電気的に接続される電極部材であって、
前記配置面上に所定間隔を空けて配置され、互いに分離された複数本の細長の壁部材と、
前記各壁部材の間にそれぞれ位置し、前記配置面上に配置された複数のランドとを有し、
前記壁部材先端は前記ランド表面の高さよりも高くされ、
隣接する前記壁部材の細長の壁面を側面とし、前記壁部材の壁面の端部が開口にされた複数の通路が形成され、
前記接着剤が押圧された時に、同一方向に流れる部分に位置する前記電極部材中では、前記各通路は前記接着剤の流れる方向に沿って延設され、
前記各通路の一端の前記開口と他端の前記開口は、前記接着剤の流れの上流側と下流側に向けられ、
前記各通路の上流側の開口よりも下流側であって、前記通路の内部又は前記通路の延長線上には、先端の高さが前記ランド表面よりも高くされたストッパーがそれぞれ配置された電極部材。
【請求項2】
前記各壁部材と前記ストッパーは、前記配置面上に形成された同一の絶縁膜がパターニングされて形成された請求項1記載の電極部材。
【請求項3】
導電性粒子が含有された接着剤が配置面上に配置されると、前記接着剤により、電気部品の電極と電気的に接続される電極部材であって、
前記配置面上に所定間隔を空けて配置され、互いに分離された複数本の細長の壁部材と、
前記各壁部材の間にそれぞれ位置し、前記配置面上に配置された複数のランドとを有し、
前記壁部材先端は前記ランド表面の高さよりも高くされ、
隣接する前記壁部材の細長の壁面を側面とし、前記壁部材の壁面の端部が開口にされた複数の通路が形成され、
前記接着剤が押圧された時に、同一方向に流れる部分に位置する前記電極部材中では、前記各通路は前記接着剤の流れる方向に沿って延設され、
前記各通路の一端の前記開口と他端の前記開口は、前記接着剤の流れの上流側と下流側に向けられ、
前記各通路の下流側の幅は、上流側の幅よりも狭くされた電極部材。
【請求項4】
前記各壁部材は配置面上に配置された同一の絶縁膜がパターニングされて形成された請求項3記載の電極部材。
【請求項5】
素子本体と、前記素子本体の一面に配置された請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の電極部材とを有し、
前記各通路は、上流側の開口が前記素子本体の内側に向けられ、下流側の開口が前記素子本体の外側に向けられた状態で、同一直線上に列設された半導体素子。
【請求項6】
請求項5記載の半導体素子と、表面に端子が配置された配線板とを有し、
前記半導体素子と前記配線板の間には導電性粒子を含有する接着剤が配置され、
前記半導体素子のランドと、前記配線板の端子とで前記導電性粒子が挟み込まれ、前記ランドと前記端子とが電気的に接続された電気装置。
【請求項7】
基板と、
前記基板の表面に配置され、端部が所定の接続領域に集められた複数本の細長の配線部と、
前記接続領域に配置され、前記ランドが前記配線部の端部に接続された請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の電極部材とを有し、
前記各通路は、上流側の開口が前記接続領域の内側に向けられ、下流側の開口が前記接続領域の外側に向けられた状態で、同一直線上に列設された配線板。
【請求項8】
請求項7記載の配線板と、表面に端子が配置された電気部品とを有し、
前記電気部品と前記配線板の間には導電性粒子を含有する接着剤が配置され、
前記ランドと前記端子は前記導電性粒子を挟み込み、電気的に接続された電気装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−108820(P2008−108820A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288623(P2006−288623)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】