説明

電極

本発明は電極支持体に導電性又は半導電性酸化物の前駆体を含むバインダー分散液を付着し、前記電極支持体に前記前駆体から導電性又は半導電性酸化物被覆物を形成し、電気伝導性酸化チタン及び電極粒子を前記導電性又は半導電性酸化物被覆物に付着し、前記電気伝導性酸化チタン及び電極粒子を形成された導電性又は半導電性酸化物被覆物に接着することを特徴とする電極の製造方法に関する。本発明はまたその方法により得られる電極、及び電解槽中のその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電極、該電極の製造方法、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用の電解、水電解、及びその他の電解方法における使用のための電極、例えば、白金族金属酸化物被覆電極は通常高電流で低い電気抵抗を有する。しかしながら、このような電極は通常短い耐久性を有する。
【0003】
米国特許第4,568,568号は粒子を6000℃までの温度で加熱し、次いでこれを高速で支持体と衝突させ、それにより粒子を部分融解し、支持体上に均等な厚さの層を生じることを伴う電極支持体上の粒子のプラズマ噴霧被覆方法を開示している。これらの粒子は得られた電極に増大された表面積を与えない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は従来技術の欠点を解決し、増大された比表面積、安定性及び性能を有する粒子被覆電極(これは多数の用途がある)を提供することを目的とする。また、本発明は粒子をコスト有効方法で電極に接着する便利かつ信頼できる方法を提供することを目的とする。本発明の更なる目的は粒子の形状を変形しないで粒子を電極に接着することを可能にする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は電極支持体に導電性又は半導電性酸化物の前駆体を含むバインダー分散液を付着し、前記電極支持体に前駆体から導電性又は半導電性酸化物被覆物を形成し、電気伝導性酸化チタン及び電極粒子を前記導電性又は半導電性酸化物被覆物に付着し、前記電気伝導性酸化チタン及び電極粒子を形成された導電性又は半導電性酸化物被覆物に接着することを特徴とする電極の製造方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本明細書に使用される“分散液”という用語は粒子の通常の分散液、懸濁液及びスラリーの他に、また、例えば、酸化物形成前駆体の溶液を含む。
【0007】
一実施態様によれば、前記導電性又は半導電性酸化物は前駆体を分解することにより、好ましくはそれを熱分解することにより接着される。しかしながら、この前駆体はまた沈殿されることがあり、初期の前駆体(これは、例えば、チタン又はその他の好適な金属の水酸化物又は水和酸化物であってもよい)からの酸化物の生成をもたらし得る。
【0008】
前記電極支持体の材料は製造及び、例えば、電解槽中のそのその後の使用中にその物理的保全性を保持することができ、好ましくはアルカリ性電解溶液及び酸性電解溶液に耐性であり得るあらゆる導電性元素のものであってもよい。好適な電極支持体材料として、導電性金属、例えば、銅、ニッケル、バルブ金属、例えば、チタン、タンタル、ジルコニウム又はニオブ、及びこれらの合金又は混合物、好ましくはチタン又はその合金が挙げられる。
【0009】
使用される電極支持体の形態は重要ではない。好適な電極支持体は、例えば、平らなシート又はプレート、湾曲表面、包旋状(convoluted)表面、打ち抜き板、織られたワイヤスクリーン、エキスパンデッドメッシュシート、ロッド、又は管の形態をとってもよい。しかしながら、該電極支持体は好ましくは平面状形状、最も好ましくはシート、メッシュ又はプレートの形態の形状を有する。
【0010】
前記電極支持体はサンドブラスチング、グリットブラスチング、化学エッチング等により粗面化し得る。化学エッチング剤の使用が公知であり、このようなエッチング剤として、最も強い無機酸、例えば、塩酸、硫酸、硝酸及びリン酸が挙げられるが、またシュウ酸の如き有機酸が挙げられる。
【0011】
前記導電性又は半導電性酸化物の前駆体(これは溶解された塩又は酸の形態であってもよい)は、酸性の水性又は有機分散液或いはこれらの混合物に溶解し得る。好ましい有機分散液はアルコール、例えば、イソ-プロパノール、n-プロパノール、もしくはブタノール、又はこれらの混合物を含む。該有機塩又は酸は好ましくは有機溶媒、最も好ましくは本明細書に記載されたアルコールに溶解され、一方、無機塩及び無機酸は実質的に水性の分散液に溶解されることが好ましい。
【0012】
前記有機バインダー分散液及び/又は水性バインダー分散液は好ましくは約0.5から約4まで、最も好ましくは約0.5から約2までのpHを有する。該バインダー分散液は好ましくは約10gの金属/lから約200gの金属/lまで、最も好ましくは約20gの金属/lから約30gの金属/lまでの金属濃度を有する。
【0013】
前記前駆体はあらゆる好適な有機塩又は有機酸及び/又は無機塩又は無機酸であってもよい。この前駆体はチタン、タンタル、スズ、アンチモン、インジウム及びスズ塩、好ましくはチタン及びタンタルの少なくとも2種の有機塩又は有機酸及び/又は無機塩又は無機酸の混合物であることが好ましい。ブチルチタネート又はエチルチタネート及びブチルタンタライト又はエチルタンタライトが組み合わせて使用されることが好ましい。一実施態様によれば、ブチルチタネート及びブチルタンタライトが組み合わせて使用される。このチタン対タンタルのモル比は好適には約9:1から約7:3まで、好ましくは約9:1から約8:2までである。有機塩及び/又は有機酸の前駆体が好ましい。何とならば、それらの相当する導電性又は半導電性酸化物が低温で生成し得るからである。これが好ましい。何とならば、低い加熱温度が電気伝導性酸化チタン粒子をそれ程酸化されないようにし、一層高い電気伝導性をもたらすからである。
【0014】
一実施態様によれば、電気伝導性酸化チタンがバインダー分散液中で懸濁される。結果として、均等に分散された電気伝導性酸化チタンを結合する導電性又は半導電性酸化物被覆物が電極支持体上に形成されるであろう。これはその後に付着された電極粒子を一層良く接着するのに有利であるかもしれない。何とならば、この電気伝導性酸化チタン粒子(これらは電極粒子よりも小さいことが好ましい)が、前記電極粒子を包囲し、こうして増大された接触面積のために、電極支持体、電気伝導性酸化チタン粒子及び電極粒子の間の一層良好な接着を与えるからである。
【0015】
一実施態様によれば、前記前駆体は約300℃から約600℃まで、更に好ましくは約450℃から約500℃までの温度で熱分解される。しかしながら、この前駆体がコロイド溶液、例えば、アンモニア中のアルコキシ-チタン及びタンタルのわずかにアルカリ性のアルコール溶液である場合、その分解は約300℃から約450℃までの温度で行ない得る。この低温は、おそらく、コロイドの水酸化物溶液又は水和酸化物溶液が脱水により酸化物に変換し得るという事実のために可能である。
【0016】
一実施態様によれば、水性分散液又は有機分散液、好ましくは水性分散液中に懸濁された電気伝導性酸化チタン及び電極粒子が、形成された導電性又は半導電性酸化物被覆物に付着される。
【0017】
一実施態様によれば、電気伝導性酸化チタン及び電極粒子がバインダー分散液中で懸濁されて、前記前駆体から形成された酸化物被覆物への電極粒子の接着をもたらす。
【0018】
一層厚い導電性又は半導電性酸化物被覆物を得るために、前記付着操作が、好ましくは少なくとも2回、最も好ましくは少なくとも4回反復し得る。この酸化物の厚さは約2μmから約4μmまでであることが好ましい。
【0019】
一実施態様によれば、前記電気伝導性酸化チタンは約0.1μmから約100μmまで、更に好ましくは約1μmから約20μmまで、更に好ましくは約5μmから約20μmまで、最も好ましくは約5μmから約10μmまでの粒子サイズを有する。
【0020】
前記電気伝導性酸化チタンは製造される電極が使用される場所に応じて実質的にマグネリ (magneli) 相(Ti4O7及びTi5O9の如き種々の酸化物を含む)及び/又はTiOであることが好ましい。
【0021】
マグネリ相酸化チタンは、腐食環境に耐えるその能力のために、硫酸又は硝酸の如き強い酸性の電解溶液中の使用のための電極を製造するのに使用されることが好ましい。TiOは約1.5以上のpHを有する電解液中の使用のための電極中に使用されることが好ましい。
【0022】
電気伝導性酸化チタンは真空中で1000℃〜1500℃の温度で市販のルチル相又はアナターゼ相の非導電性酸化チタン(TiO2)及びチタン金属の通常の焼結混合物から調製し得る。
【0023】
電気伝導性酸化チタンはまためのう乳鉢でルチル相の微粉砕TiO2を混合し、続いて焼結することにより調製し得る。得られた電気伝導性酸化チタン粉末はTi3O5、Ti4O7及び/又はTi5O9の混合物を含む。
【0024】
本明細書に使用される“電極粒子”という用語は電気伝導性であり、かつ触媒活性を有する。その材料はダイヤモンド、例えば、ホウ素ドーピングしたダイヤモンド、酸化チタン、例えば、マグネリ相の酸化チタン(エボネックスTM)、二酸化スズ、マグネタイト(Fe3O4)、Ni-フェライト、β-二酸化鉛(β-PbO2)、BN、WC、SiC、及び/又はこれらの混合物、好ましくはダイヤモンドであってもよい。これらの電極粒子は好適には約0.5μmから約100μmまで、好ましくは約1μmから約20μmまで、最も好ましくは約5μmから約10μmまでのサイズを有する。
【0025】
ダイヤモンド粒子は高温及び高圧で通常のダイヤモンド合成方法から得られてもよい。
【0026】
一つの好ましい実施態様によれば、二つの異なる層が導電性又は半導電性酸化物被覆物上に塗布されて電気伝導性酸化チタンを好適に含む下層及び電極粒子の上層を得て電極の安定性を増大し、これらの電極粒子を更にしっかりと接着する。
【0027】
好ましい実施態様によれば、粗面化され、ブラスチングされ、ピックリングされた電極支持体が酸化チタンの半導電性酸化物の前駆体を含むバインダー分散液で塗布され、続いてこれが約500℃から約600℃までの温度で分解されて導電性酸化物を生成し、その後にバインダー分散液の金属含量の約3倍から約20倍までのチタン含量を有する電気伝導性酸化チタンのスラリーを付着し、続いて10分間にわたって400〜500℃で熱処理する。続いて、第二工程において、約50重量%の電極粒子及び約50重量%の電気伝導性酸化チタンを含む分散液が酸化物被覆物上に付着され、熱処理されて電気伝導性酸化チタン及び電極粒子を形成された酸化チタン被覆物に接着する。一実施態様によれば、この第二工程が少なくとも2回、好ましくは少なくとも3回繰り返される。
【0028】
得られた電極は真空又は不活性雰囲気中で、例えば、アルゴンガス中で約500℃から約600℃までの温度で更に安定化し得る。
【0029】
更に、本発明は本明細書に記載された方法から得られる電極に関する。
【0030】
更に、本発明は電極支持体、電極支持体に接着された導電性又は半導電性酸化物、及び導電性又は半導電性酸化物被覆物に接着された電極粒子及び電気伝導性酸化チタンを含む電極に関する。この電極支持体、導電性又は半導電性酸化物、電気伝導性酸化チタン、及び電極粒子は本明細書に記載されたとおりであることが好ましい。
【0031】
本発明の一実施態様によれば、前記導電性又は半導電性酸化物は幾つかの酸化物層、好ましくは二つの酸化物層を含んでもよい。
【0032】
一実施態様によれば、酸化物被覆物の第一層は電気伝導性酸化チタン及び電極粒子を含む。この第一層の酸化物被覆物は約10重量%から約70重量%まで、好ましくは約40重量%から約60重量%までの電極粒子を含んでもよい。この第一層は約20重量%から約80重量%まで、好ましくは約30重量%から約60重量%までの電気伝導性酸化チタンを含んでもよい。第二層は好適には約30重量%から約80重量%まで、好ましくは約50重量%から約70重量%までの電極粒子を含むことが好ましい。この第二層の残りの部分は電気伝導性酸化チタンで覆われることが好ましい。一実施態様によれば、電気伝導性酸化チタンの含量は酸化物被覆物の重量を基準として約20重量%から約70重量%まで、好ましくは約30重量%から約50重量%までである。前記電極粒子の付着は電極支持体面積1m2当り約10gから約500gまで、更に好ましくは約50gから約100gまでであることが好ましい。電気伝導性酸化チタンの付着は電極支持体面積1m2当り約5gから約200gまで、更に好ましくは約10gから約100gまでであることが好ましい。
【0033】
このようにして得られた電極はNHEに対し2Vより大きい高電位及び高電流下で腐食雰囲気中でさえも安定に留まり得ることがわかった。これはバインダー分散液から生成された酸化物が電気伝導性酸化チタンの粒子を接着し、これが順に、おそらくバインダー分散液から形成された酸化物被覆物と組み合わせて、電極粒子を接着するという事実のためであるかもしれない。
【0034】
一実施態様によれば、前記電極はダイヤモンド、二酸化スズ、マグネタイト(Fe3O4)、ニッケルフェライト、β-二酸化鉛、酸化チタン、BN、WC、SiC、Si3N4又はこれらの混合物、好ましくは酸化チタン及び/又はダイヤモンド、最も好ましくはダイヤモンドの電気伝導性電極粒子を含む第二層を有する。
【0035】
前記電極はあらゆる形状をとることができる。しかしながら、平面状電極が殆どの適用に好ましいであろう。この電極はその層のいずれかでバイメタルスピネルを含まないことが好ましい。電極はあらゆる白金族金属又はこれらの酸化物を含まないことが好ましい。何となれば、これは不動態問題をもたらすかもしれないからである。
【0036】
本発明はまた水処理、二次電池、例えば、酸化還元フロー電池における二次電池、及び電解的オゾン生成における電解方法のための、電解槽中の電極の使用に関する。
【0037】
特に、ホウ素ドーピングしたダイヤモンドの電極粒子を備えた電極はp型半導体としてのその良好な電気伝導性のために酸素、オゾン、過酸化水素、ヒドロキシルラジカルの生成のため;水電気分解、水処理、及び電気有機合成におけるアノードとして使用し得る。カソードとして、前記電極が電気有機合成、OHラジカルの生成、種々の酸化方法、電力貯蔵のための酸化還元フロー電池、及び電力消費の標準化に使用されることが好ましい。
【0038】
本発明がこうして記載されたので、本発明が多くの方法で変化されてもよいことが明らかであろう。このような変化は本発明の骨子及び範囲からの逸脱と見なされるべきではなく、当業者に自明であるような全ての改良は本発明の範囲内に含まれることが意図されている。下記の実施例は本発明の範囲を限定しないで記載された発明が実施し得る方法を更に説明する。
【実施例1】
【0039】
電極支持体を調製するために厚さ1mmのチタンプレートをRa=5μmの表面粗さにグリットブラスチングし、硫酸でピックリングした。10重量%のHCl溶液に溶解された、TiCl4及びTaCl5を含むバインダー溶液を、前記電極支持体に塗布し、10分間にわたって540℃で加熱した。その被覆工程及び加熱工程を4回繰り返して1:9のTa対Tiのモル比の酸化タンタル及び酸化チタンの電極支持体上に0.2μmの酸化物フィルムを得た。電気伝導性酸化チタン粉末を8:2のTi対Taのモル比を有するペンタ-ブチルタンタライト及びテトラ-ブチルチタネートのHCl溶液中で懸濁させることによりスラリーを調製した。そのバインダー分散液中の電気伝導性酸化チタン対合計のTi及びTa金属含量の重量比は20:1であった。その分散液を撹拌し、酸化物フィルムに塗布した。乾燥後、前記電極を最初に60℃で10分間加熱し、次いで450℃で10分間加熱した。突出した支持体面積1m2当り10m2の比表面積を有する60g/m2の多孔性酸化物の被覆物を得た。その多孔性酸化物の被覆物に、50重量%の電気伝導性酸化チタン及び50重量%の7〜10μmの平均粒子サイズを有するホウ素ドーピングした電気伝導性ダイヤモンド粉末から調製したスラリーを塗布した。続いてこのスラリーを乾燥させ、450℃で10分間加熱した。このスラリーの付着を1回繰り返し、続いて同じ熱処理を行なった。得られた電極は1A/dm2の電流密度で連続電解方法で良く作動することを示した。
【実施例2】
【0040】
電気伝導性酸化チタンを実施例1と同じ方法で調製されたチタン電極支持体に付着することにより電極を調製した。電気伝導性酸化チタン粉末を9:1のチタン対タンタルのモル比を有する三塩化チタン及びペンタ-ブチルタンタライトを含むバインダー分散液中で懸濁させた。そのバインダー分散液中の電気伝導性酸化チタン対合計のTi及びTa金属含量の重量比は20:1であった。そのバインダー分散液を電極支持体に塗布し、続いてそれを空気中で室温で乾燥させ、続いて60℃で乾燥させ、500℃で熱処理した。このバインダー溶液の適用を3回繰り返した。電気伝導性酸化チタン層(実質的にTi4O7)を実施例1と同じ条件下で形成し、その被覆量は支持体面積1m2当り60gであった。次いで、電気伝導性酸化チタン層を5〜10μmのサイズを有するマグネリ相酸化チタン粒子から形成し、これらをスラリー中で懸濁させ、次いで実施例1と同様に被覆し、450℃で10分間熱処理した。この操作を3回繰り返して支持体面積1m2当り合計50gのチタン金属の付着を得た。電極の電気伝導性は電極材料のために実施例1の電極よりも若干高かった。この活性表面積は電極支持体面積1m2当り20m2に増大された。次いで、連続電解を2A/dm2の電流密度で行なった。
【実施例3】
【0041】
その電極粒子が9:1のスズ対アンチモンのモル比のルチル相の酸化スズ及び酸化アンチモンの粒子であった以外は、実施例2の電極を調製した。この電極を100ppmのフェノールを含む硫酸電解液中で試験し、作動することが示された。何とならば、フェノールの分解を観察することができたからである。
【実施例4】
【0042】
TiO粒子により置換されたダイヤモンド粒子以外は、電極を実施例1に従って調製した。連続電解をH2SO4溶液中で3A/dm2の電流密度で行なった。
【実施例5】
【0043】
電極支持体を実施例1に示されたように調製した。8:2のモル比のテトラブトキシ-チタネート及びペンタブトキシタンタライトの酸性溶液を混合し、次いでそれをアンモニアで中和することによりバインダー分散液を調製した。その溶液は白濁色に変化し、コロイド沈殿を検出した。次いで、ブチルアルコールを水和チタン-タンタル共酸化物を含む濁った液体に添加してその液体の合計金属含量を15g/lに調節した。得られた液体は10〜20センチポイズの粘度を有していた。次いで、電気伝導性酸化チタンをその分散液に混合し、続いてそれを電極支持体にブラシで塗布した。乾燥後、この支持体を空気雰囲気中で300℃で熱処理して支持体面積1m2当り50gの電気伝導性酸化チタンの付着を得た。次いで70重量%の電気伝導性酸化チタン及び30重量%のβ-PbO2粒子(その平均粒子サイズは10〜12μmであった)を前記酸化物被覆支持体上に塗布した。次いで支持体を乾燥させ、熱処理した。次いで、1m2当り20gのβ-二酸化鉛を付着した。得られた電極は電極支持体1m2当り8m2の表面積を有し、10A/dm2の電流密度で連続電解におけるアノードとして使用することができた。
【実施例6】
【0044】
二酸化スズ粒子電極を実施例5と同じ方法により調製したが、β-二酸化鉛を二酸化スズにより置換した。この二酸化スズをアンモニアによる中和によりエチルアルコール中の90モル%の四塩化スズ(SnCl4)及び五塩化アンチモンの共沈により得た。次いで約1モル%の塩化イリジウムをその分散液に添加した。次いで、その分散液を乾燥させ、続いて空気中で30分間にわたって400℃で熱処理した。黒色の電気伝導性二酸化スズを得た。次いで、この二酸化スズを圧潰し、めのう乳ばちで粉砕した。得られた二酸化スズ粉末を電極支持体上で電気伝導性二酸化チタンと同時付着した。この電極の表面積は電極支持体1m2当り7〜8m2であった。次いでこの電極を2A/m2の電流密度で使用し、良く作動することが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極支持体に導電性又は半導電性酸化物の前駆体を含むバインダー分散液を付着し、前記電極支持体に前記前駆体から導電性又は半導電性酸化物被覆物を形成し、電気伝導性酸化チタン及び電極粒子を前記導電性又は半導電性酸化物被覆物に付着し、前記電気伝導性酸化チタン及び電極粒子を形成された導電性又は半導電性酸化物に接着することを特徴とする電極の製造方法。
【請求項2】
前記バインダー分散液が酸化チタン又は酸化タンタルの前駆体を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記バインダー分散液が酸化チタン及び酸化タンタルの前駆体を含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記前駆体を約300℃から約600℃までの温度で熱分解する、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記電気伝導性酸化チタンが実質的にTiOである、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記電極粒子が電気伝導性酸化チタンを含む、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記電極粒子が電気伝導性ダイヤモンドを含む、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに従って得られる電極。
【請求項9】
電極支持体、前記電極支持体に接着された導電性又は半導電性酸化物被覆物、並びに前記導電性又は半導電性酸化物被覆物に接着された電極粒子及び電気伝導性酸化チタンを含むことを特徴とする電極。
【請求項10】
前記電極粒子が電気伝導性ダイヤモンドを含む、請求項9記載の電極。
【請求項11】
前記電極粒子が電気伝導性酸化チタンを含む、請求項9又は10記載の電極。
【請求項12】
電解槽中の請求項8から11のいずれかに記載の電極の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極支持体に導電性又は半導電性酸化物の前駆体を含むバインダー分散液を付着し、前記電極支持体に前記前駆体から導電性又は半導電性酸化物被覆物を形成し、電気伝導性酸化チタン及び電極粒子を前記導電性又は半導電性酸化物被覆物に付着し、前記電気伝導性酸化チタン及び電極粒子を形成された導電性又は半導電性酸化物に接着することを特徴とする電極の製造方法。
【請求項2】
前記バインダー分散液が酸化チタン又は酸化タンタルの前駆体を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記バインダー分散液が酸化チタン及び酸化タンタルの前駆体を含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記前駆体を約300℃から約600℃までの温度で熱分解する、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記電気伝導性酸化チタンが実質的にTiOである、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記電極粒子が電気伝導性酸化チタンを含む、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記電極粒子が電気伝導性ダイヤモンドを含む、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項
電極支持体、前記電極支持体に接着された導電性又は半導電性酸化物被覆物、並びに前記導電性又は半導電性酸化物被覆物に接着された電極粒子及び電気伝導性酸化チタンを含むことを特徴とする電極。
【請求項
前記電極粒子が電気伝導性ダイヤモンドを含む、請求項記載の電極。
【請求項10
前記電極粒子が電気伝導性酸化チタンを含む、請求項又は記載の電極。

【公表番号】特表2006−527794(P2006−527794A)
【公表日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517022(P2006−517022)
【出願日】平成16年6月7日(2004.6.7)
【国際出願番号】PCT/SE2004/000885
【国際公開番号】WO2004/111310
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(595024087)アクゾ ノーベル エヌ.ブイ. (38)
【Fターム(参考)】