説明

電気二重層コンデンサを適用した電力変換装置および電気二重層コンデンサの充電方法

【課題】電気二重層コンデンサの電圧が0Vあるいは0Vに近い低電圧の状態からでも、リアクトルの通電電流が発散することなく充電を可能とする電気二重層コンデンサを適用した電力変換装置およびその充電方法を提供する。
【解決手段】抵抗3とスイッチ2からなる並列体と、スイッチ2をドライブするスイッチドライブ信号発生器9と、スイッチング素子10をドライブするスイッチング素子ドライブ信号発生器8と、電気二重層コンデンサ1の電圧、主回路電圧、初期充電目標電圧設定値、充電目標電圧設定値に基づいてスイッチング素子10のオン時間、オフ時間の演算、及びスイッチ2のオンオフの判断を行い結果をスイッチング素子ドライブ信号発生器8及びスイッチドライブ信号発生器9に出力する演算装置7と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層コンデンサを適用した電力変換装置および電気二重層コンデンサの充電方法に関し、特に、蓄電装置としての電気二重層コンデンサと充放電装置としての昇降圧チョッパ装置を備えた電力変換装置およびこの電気二重層コンデンサを適用した電力変換装置における電気二重層コンデンサの充電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、従来技術を示す電気二重層コンデンサを適用した電力変換装置の構成図であり、電力変換装置は蓄電装置としての電気二重層コンデンサと充放電装置としての昇降圧チョッパ装置を備えている。
図8において、1は電気二重層コンデンサ、4はコンデンサ、5はリアクトル、6は昇降圧チョッパ装置、10、11はトランジスタなどのスイッチング素子、12、13はダイオードである。また、P、N、BP、BNは端子、Voは電気二重層コンデンサの電圧、Viは高圧側の電圧すなわち主回路電圧である。
以下、図8を用いて従来技術における電気二重層コンデンサ1を適用した電力変換装置の構成を説明する。
昇降圧チョッパ装置6の高圧側すなわち主回路であるP、N端子には発電装置(図示せず)、あるいは交直変換装置(図示せず)の直流側が接続される。また、昇降圧チョッパ装置6はスイッチング素子10、11、ダイオード12、13、リアクトル5、及びリップル電流吸収用コンデンサであるコンデンサ4を内蔵し、低圧側のBP、BN端子には蓄電装置としての電気二重層コンデンサ1が接続されている。
この電力変換装置は、電気二重層コンデンサ1の電圧Voを0Vまで放電することが可能であり、電気二重層コンデンサ1の充電エネルギーを100%利用することが可能とされている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−218653号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、図8に示した構成の電力変換装置において、電気二重層コンデンサ1の電圧が0V、あるいは0Vに近い状態から充電する場合、リアクトル5の通電電流が発散するという問題がある。この問題を以下に説明する。
【0004】
まず、電気二重層コンデンサ1の電圧Voが0V、あるいは0Vに近い状態からではなく、ある程度の電圧を保持している状態から電気二重層コンデンサ1を充電する場合を考える。
図9は、従来の電力変換装置における昇降圧チョッパ装置6のリアクトル5の通電電流波形図である。図9において、ILはリアクトル5の通電電流、t0、t1、t2は時間である。
以下、図9を用いて、ある程度の電圧を保持している状態から電気二重層コンデンサ1を充電する場合の昇降圧チョッパ装置6の動作、及びリアクトル5の通電電流波形について説明する。
スイッチング素子10をオンさせ、一定時間t0経過後、スイッチング素子10をオフさせると、リアクトル5の通電電流ILはダイオード13を通って還流し、一定時間t1経過後、通電電流ILは零となる。さらに一定時間t2経過後、再度スイッチング素子10をオンさせる。
以上のように、スイッチング素子10のオン、オフを繰り返すことにより、電気二重層コンデンサ1が充電される。
ここで、リアクトル5のインダクタンスをL、P端子、N端子間の主回路電圧をViとすると、スイッチング素子10のオン時、オフ時にリアクトル5に流れる電流ILの傾きΔIL/Δtはそれぞれ式1、式2で表される。
スイッチング素子10がオン時:ΔIL/Δt=(Vi−Vo)/L・・・(式1)
スイッチング素子10がオフ時:ΔIL/Δt=−Vo/L・・・(式2)
【0005】
次に、電気二重層コンデンサ1の電圧Voが0Vの状態から電気二重層コンデンサ1を充電する場合を考える。
この場合スイッチング素子10のオン時、オフ時のリアクトル5に流れる電流ILの傾きΔIL/Δtは、式1、式2において、Vo=0Vとすることによりそれぞれ式3、式4で表される。
スイッチング素子10がオン時:ΔIL/Δt=Vi/L・・・(式3)
スイッチング素子10がオフ時:ΔIL/Δt=0・・・(式4)
なお、スイッチング素子10がオフ時は、電気二重層コンデンサ1の内部抵抗による逆起電力、及びダイオード13の順方向電圧降下が発生するため、厳密にはΔIL/Δt=0とは言えないが、これらの電圧はせいぜい数Vであるので無視する。また、電気二重層コンデンサ1がわずかに数V程度充電されている場合も同様に無視することとし、以下の説明においてはΔIL/Δt=0と考えることとする。
図10は、従来の電力変換装置における昇降圧チョッパ装置6のリアクトル5の通電電流波形図である。
図10において、IL、IL0はリアクトル5の通電電流、ILOCは過電流保護レベル、t0、t1、t2は時間である。
以下、図10を用いて、電気二重層コンデンサ1の電圧Voが0Vの状態から電気二重層コンデンサ1を充電する場合の昇降圧チョッパ装置6の動作、及びリアクトル5の通電電流波形について説明する。
まず、スイッチング素子10をオンさせ、一定時間t0経過後、オフさせる。図9の場合とP端子、N端子間の主回路電圧Viが同じであるとすると、この場合のスイッチング素子10がオン時のリアクトル5に流れる電流ILの傾きは図9の場合より大きくなる。
リアクトル5に流れる電流ILはダイオード13を通って還流するが、一定時間t1が経過しても、ΔIL/Δt=0のためリアクトル5に流れる電流ILは減少せず、スイッチング素子10がオフした時点の電流値IL0を保持する。
さらに一定時間t2経過後もリアクトル5に流れる電流ILはIL0のままであり、再度スイッチング素子10をオンさせると、この電流値IL0を初期値としてリアクトル5の通電電流が増加し、昇降圧チョッパ装置6のスイッチング素子保護のための過電流保護レベルILOCに到達し、昇降圧チョッパ装置6が停止する。
【0006】
以上のように、従来技術による電気二重層コンデンサを適用した電力変換装置は、電気二重層コンデンサの電圧が0Vあるいは0Vに近い状態から充電する場合、リアクトルの通電電流が発散し、昇降圧チョッパ装置のスイッチング素子を保護するための過電流保護レベルまでリアクトル通電電流が到達し、昇降圧チョッパ装置が停止してしまうという問題があった。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、電気二重層コンデンサの電圧が0Vあるいは0Vに近い低電圧の状態からでも、リアクトルの通電電流が発散することなく充電を可能とする、電気二重層コンデンサを適用した電力変換装置および電気二重層コンデンサの充電方法を提供することを目的とする。加えて、充電時間の短縮を図ることができる電気二重層コンデンサの充電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したのである。
請求項1に記載の発明は、蓄電装置としての電気二重層コンデンサと、リアクトル、スイッチング素子を有し低圧側に接続された前記電気二重層コンデンサの充放電装置としての昇降圧チョッパ装置と、を備えた電力変換装置において、前記昇降圧チョッパ装置と前記電気二重層コンデンサとの間に接続された抵抗とスイッチからなる並列体と、前記スイッチをドライブするスイッチドライブ信号発生器と、前記スイッチング素子をドライブするスイッチング素子ドライブ信号発生器と、前記電気二重層コンデンサの充電時に、前記電気二重層コンデンサの電圧、前記昇降圧チョッパ装置の高圧側主回路電圧、予め設定した初期充電完了の目標電圧である初期充電目標電圧設定値、予め設定した充電完了の目標値である充電目標電圧設定値に基づいて前記スイッチング素子のスイッチングのオン時間、オフ時間を演算して前記スイッチング素子ドライブ信号発生器に出力し、前記スイッチのオンオフの判断を行って前記スイッチドライブ信号発生器に出力する演算装置と、を備えたことを特徴としている。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電気二重層コンデンサを適用した電力変換装置において、前記演算装置は、前記電気二重層コンデンサの電圧が0V、あるいは数V以下であると判断した場合は前記抵抗を介して電気二重層コンデンサを充電し、前記電圧が前記初期充電目標電圧設定値まで上昇したと判断した場合は前記抵抗の両端を短絡するように前記スイッチを制御することを特徴としている。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の電気二重層コンデンサを適用した電力変換装置において、前記演算装置は、前記電気二重層コンデンサの電圧が前記初期充電目標電圧設定値以上かつ前記充電目標電圧設定値以下の場合は、前記電気二重層コンデンサの電圧に基づいてオン時間とオフ時間をそれぞれ連続して変化させるよう前記スイッチング素子を制御することを特徴としている。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の電気二重層コンデンサを適用した電力変換装置において、前記演算装置は、前記初期充電目標電圧設定値と前記充電目標電圧設定値の間に予め設定した中間電圧設定値を有し、前記電気二重層コンデンサの電圧が前記中間電圧設定値より低いと判断した場合は、前記スイッチング素子のオン時間を短く、且つオフ時間を長くすることにより前記リアクトルの通電電流が発散しないよう前記スイッチング素子を制御することを特徴としている。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の電気二重層コンデンサを適用した電力変換装置において、前記演算装置は、前記電気二重層コンデンサの電圧が前記中間電圧設定値より高いと判断した場合は、前記スイッチング素子のオン時間を長く、且つオフ時間を短くすることにより前記電気二重層コンデンサの充電電力を大きくして前記電気二重層コンデンサの充電時間を短縮するよう前記スイッチング素子を制御することを特徴としている。
【0013】
また、請求項6に記載の発明は、蓄電装置としての電気二重層コンデンサと、リアクトル、スイッチング素子を有し低圧側に接続された前記電気二重層コンデンサの充放電装置としての昇降圧チョッパ装置と、を備えた電力変換装置における前記電気二重層コンデンサの充電方法において、前記昇降圧チョッパ装置と前記電気二重層コンデンサとの間に抵抗とスイッチからなる並列体を備えた構成とし、前記スイッチング素子を連続してオンさせ前記抵抗を介して前記電気二重層コンデンサを初期充電するステップと、前記電気二重層コンデンサの電圧が予め設定した初期充電目標電圧設定値に達すると前記スイッチング素子を一旦オフし、その後前記スイッチをオンにして前記抵抗の両端を短絡するステップと、前記スイッチング素子のオン時間を前記リアクトルの通電電流が予め設定された過電流保護レベルに達しないよう十分短くし、尚且つ、前記スイッチング素子のオフ時間を前記通電電流が0Aまで下がり発散しないよう十分長くして前記スイッチング素子をスイッチングさせるステップと、前記電圧が前記初期充電目標電圧設定値と前記充電目標電圧設定値の間に予め設定した中間電圧設定値に達すると前記スイッチング素子のオン時間を前記通電電流が前記過電流保護レベルに達しない程度に長くし、尚且つ、前記スイッチング素子のオフ時間を前記通電電流が0Aまで下がり発散しない程度に短くするステップと、前記電圧が予め設定された充電目標電圧設定値に達すると前記スイッチング素子のスイッチングを停止するステップと、を備えたことを特徴としている。
【0014】
また、請求項7に記載の発明は、蓄電装置としての電気二重層コンデンサと、リアクトル、スイッチング素子を有し低圧側に接続された前記電気二重層コンデンサの充放電装置としての昇降圧チョッパ装置と、を備えた電力変換装置における前記電気二重層コンデンサの充電方法において、前記昇降圧チョッパ装置と前記電気二重層コンデンサとの間に抵抗とスイッチからなる並列体を備えた構成とし、前記スイッチング素子を連続してオンさせ前記抵抗を介して前記電気二重層コンデンサを初期充電するステップと、前記電気二重層コンデンサの電圧が予め設定した初期充電目標電圧設定値に達すると前記スイッチング素子を一旦オフし、その後前記スイッチをオンにして前記抵抗の両端を短絡するステップと、前記リアクトルの通電電流が過電流保護レベルに達しないように、また前記リアクトルの通電電流が0Aまで下がり発散しないように、前記スイッチング素子のオン時間とオフ時間を前記電気二重層コンデンサの電圧と前記昇降圧チョッパ装置の高圧側主回路電圧の値に基づいてそれぞれ連続して変化させ制御するステップと、前記電圧が予め設定された充電目標電圧設定値に達すると前記スイッチング素子のスイッチングを停止するステップと、を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1乃至5に記載の発明によると、電気二重層コンデンサの電圧が0Vあるいは0Vに近い低電圧の状態からでも、リアクトルの通電電流が発散することなく電気二重層コンデンサへの充電を可能とする電力変換装置が得られる。
【0016】
また、請求項6に記載の発明によると、電気二重層コンデンサの電圧が0Vあるいは0Vに近い低電圧の状態からでも、リアクトルの通電電流が発散することなく電気二重層コンデンサへの充電を可能とする充電方法が得られる。
【0017】
また、請求項7に記載の発明によると、電気二重層コンデンサの電圧が0Vあるいは0Vに近い低電圧の状態からでも、リアクトルの通電電流が発散することなく電気二重層コンデンサへの充電を可能とし、電気二重層コンデンサ電圧に応じて、オン時間、オフ時間を連続して変化させることにより、充電時間の短縮を図ることができる充電方法が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の第1実施例を示す電気二重層コンデンサを適用した電力変換装置の構成図である。
図1において、2はスイッチ、3は抵抗である。尚、従来技術を示す図8と同じ説明符号のものは図8と同じ構成要素を示すものとし、その説明は省略する。
本発明が図8に示す従来技術と異なる点は、昇降圧チョッパ装置6のBP端子と電気二重層コンデンサ1との間に、電気二重層コンデンサ1の初期充電のための抵抗3及び初期充電完了後に抵抗3を短絡するためのスイッチ2を設けるようにしている点、及び以下のステップST1〜5に示す電気二重層コンデンサ1の充電方法を備えるようにしている点である。
【0020】
図2は、本発明の第1実施例における電気二重層コンデンサの電圧波形図である。
図2において、Vo1は電気二重層コンデンサ1の初期充電の目標電圧の設定値である初期充電目標電圧設定値、Vo2は電気二重層コンデンサの初期充電目標電圧設定値と充電目標電圧設定値の間に設けられた中間電圧設定値、Vo3は電気二重層コンデンサの充電目標電圧の設定値である充電目標電圧設定値である。
また、図3は、本発明の第1実施例において電気二重層コンデンサ電圧が低い場合の昇降圧チョッパ装置のリアクトルの通電電流波形図、図4は、本発明の第1実施例において電気二重層コンデンサ電圧が高い場合の昇降圧チョッパ装置のリアクトルの通電電流波形図である。
以下、図1〜4を用いて本実施例を示す電気二重層コンデンサ1の充電方法を以下のステップST1〜5に示す。
先ず、ステップST1で、スイッチ2をオフした状態でスイッチング素子10を連続してオンさせ、電気二重層コンデンサ1を初期充電する。この場合、電気二重層コンデンサ1には抵抗3を介して電流が流れる。
なお、抵抗3の抵抗値が小さいほど初期充電時間が短くなるが、逆に抵抗の容量を大きくしなくてはならなくなり、コストアップにつながる。この抵抗3は初期充電にしか使用しないものであるため、初期充電に時間はかかるが、抵抗3としては抵抗値が大きく容量の小さいものを選定する方が得策である。
次に、ステップST2で、図2に示すように電気二重層コンデンサ1の電圧Voが予め設定された初期充電目標電圧設定値Vo1まで上昇すると、スイッチング素子10を一旦オフする。その後スイッチ2をオンし、抵抗3の両端を短絡する。
次に、ステップST3で、スイッチング素子10がオン時に、リアクトル5の通電電流ILが予め設定された過電流保護レベルILOCに達しないよう、オン時間tonを十分短く、なおかつ、スイッチング素子10がオフ時にリアクトル5の通電電流ILが0Aまで下がり、通電電流ILが発散しないようオフ時間toffを十分長くしてスイッチング素子10をスイッチングさせる。この場合のリアクトル5に流れる電流ILの波形が図3である。
ここで、電気二重層コンデンサ1を充電するのはスイッチング素子10がオン時のリアクトル5に流れる電流ILであり、スイッチング素子10のオン時間tonが長いほど、またスイッチング周期が短いほど充電電力が大きくなる。前述の式1、式2より、電気二重層コンデンサ1の電圧Voの上昇に伴い、オン時のリアクトル5の通電電流ILの傾きが小さくなっていき、同時にオフ時のリアクトル5の通電電流ILの傾きが大きくなっていくと言える。よって、電気二重層コンデンサ1の電圧Voが大きい程、オン時間tonを長く、オフ時間toffを短くすることができる。
したがって、ステップST4では、図2に示すように電気二重層コンデンサ1の電圧Voが予め設定された中間電圧設定値Vo2まで上昇すると、スイッチング素子10がオン時にリアクトル5の通電電流ILが過電流保護レベルILOCに達しない程度にオン時間tonを長くし、なおかつ、オフ時にリアクトル5の通電電流ILが0Aまで下がり、通電電流ILが発散しない程度にオフ時間toffを短くする。
こうすることは、スイッチング素子10のオン時間を長く、かつスイッチング周期を短くすることであり、電気二重層コンデンサ1の充電電力を大きくし、充電時間を短縮することができる。この場合のリアクトル5に流れる電流ILの波形が図4である。
次に、ステップST5では、図2に示すように予め設定された電気二重層コンデンサ1の充電目標電圧設定値Vo3に達すると、スイッチング素子10のスイッチングを停止する。電気二重層コンデンサ1の電圧Voは充電目標電圧設定値Vo3に保持される。
【実施例2】
【0021】
以下に示す第2実施例は、第1実施例を示す図1と同じ構成であるが、電気二重層コンデンサ1の電圧に応じて、スイッチング素子10のオン時間、オフ時間を連続して変化させることにより、第1実施例よりも充電時間の短縮を図るものである。
図5は、本発明の電気二重層コンデンサを適用した電力変換装置における制御ブロック図である。
図5において、7は演算装置、8はスイッチング素子ドライブ信号発生器、9はスイッチドライブ信号発生器である。尚、本実施例において、第1実施例における用語や説明符号と同じものは第1実施例と同じ構成要素および意味を示すものであるとし、その説明は省略する。
以下、図5を用いて、本発明における制御ブロックの構成を説明する。
演算装置7には、電気二重層コンデンサ1の電圧Vo、主回路電圧Viが入力される。
演算装置7は、電気二重層コンデンサ1の電圧Voの値に応じてスイッチング素子10のスイッチングのオン時間ton、オフ時間toffを演算して演算結果をスイッチング素子ドライブ信号発生器8に出力し、また、スイッチ2のオンオフの判断を行いスイッチドライブ信号発生器9に出力する。スイッチング素子ドライブ信号発生器8は演算装置7から入力した演算結果に基づいてスイッチング素子10のドライブ信号を出力する。
また、スイッチドライブ信号発生器9は演算装置7から入力した判断結果に基づいて、スイッチ2のドライブ信号を出力する。
【0022】
以下、図5を用いて、電気二重層コンデンサ1の電圧Voの上昇に伴う本実施例の制御ブロックの具体的な動作を以下に説明する。
先ず、電気二重層コンデンサ1の電圧Vo<初期充電目標電圧設定値Vo1の場合は、電気二重層コンデンサ1を初期充電する。このため、スイッチ2はオフのままでスイッチング素子10は連続してオンさせる。すなわち下記信号を出力する。
ton、toffの演算結果:ton=∞、toff=0
スイッチ2のオンオフ判断結果:オフ
次に、初期充電目標電圧設定値Vo1≦電気二重層コンデンサ1の電圧Vo<充電目標電圧設定値Vo3 の場合は、電気二重層コンデンサ1の初期充電が完了したため、スイッチング素子10を一旦オフし、スイッチ2をオンさせ抵抗3を短絡する。すなわち下記信号を出力する。
ton、toffの演算結果:ton=0、toff=∞
スイッチ2オンオフ判断結果:オン
スイッチ2がオンした後は、後で詳細に述べる式5、式7より決定されるton、toffで、スイッチング素子10をスイッチングさせ、電気二重層コンデンサ1を充電する。すなわち下記信号を出力する。
ton、toffの演算結果:
ton=(L×Imax)/(Vi−Vo)・・・(式5)
toff=(L×Imax)/Vo+α・・・(式7)
スイッチ2オンオフ判断結果:オン
次に、充電目標電圧設定値Vo3≦電気二重層コンデンサ1の電圧Voの場合は、電気二重層コンデンサ1の電圧が充電目標電圧に達したため、スイッチング素子10をオフする。すなわち下記信号を出力する。
ton、toffの演算結果:ton=0、toff=∞
スイッチ2オンオフ判断結果:オン
【0023】
図6は、本発明の第2実施例における電気二重層コンデンサの電圧波形図、図7は、本発明の第2実施例のステップST31におけるリアクトル電流波形図である。
以下、図6、7を参照しながら本実施例を示す電気二重層コンデンサの充電方法を説明する。
本実施例の電気二重層コンデンサ1の充電方法はステップST1〜2までは第1実施例と同じであるので省略する。
ステップST3のかわりに本実施例ではステップST31で、電気二重層コンデンサ1の電圧Voの値に応じて、オン時間ton、オフ時間toffの値を以下に示す式5、式6のように制御する。
先ず、リアクトル電流ILに通電する最大電流をImaxとする。このImaxは過電流保護レベルILOCより小さい値に予め設定する。すなわち、Imax<ILOCとする。
式1において、ΔIL=Imax、Δt=tonとすると、tonは式5で表される。
ton=(L×Imax)/(Vi−Vo)・・・(式5)
また、式2において、ΔIL=−Imax、Δt=toffとすると、toffは式6で表される。
toff=(L×Imax)/Vo・・・(式6)
電気二重層コンデンサ1の電圧Voの値に応じて、オン時間ton、オフ時間toffの値を式5、式6のように制御することにより、電気二重層コンデンサ1の電圧Voの値に対する最適なスイッチング時間、すなわち最大オン時間、最小スイッチング周期に設定することができる。よって、電気二重層コンデンサ1の充電を効率よく行うことができ、電気二重層コンデンサ1の充電時間を実施例1の場合よりも短縮できる。
なお、オフ時間toffに関しては、式6のぎりぎりの値だと、リアクトル5の通電電流ILが零にならず発散する可能性があるので、式7のように、若干余裕を持たせることが望ましい。
toff=(L×Imax)/Vo+α・・・(式7)
ここで、αはマージンである。
次にステップST32で、電気二重層コンデンサ1の電圧Voが電気二重層コンデンサ1の充電目標電圧設定値Vo3に達すると、スイッチング素子10のスイッチングを停止する。電気二重層コンデンサ1の電圧Voは充電目標電圧設定値Vo3に保持される。
【0024】
以上述べたように、本実施例に係わる電気二重層コンデンサ1を適用した電力変換装置および電気二重層コンデンサ1の充電方法は、充電回路として抵抗3とスイッチ2からなる並列回路を追加し、最初は抵抗3を通じて電気二重層コンデンサ1を充電し、ある程度電気二重層コンデンサ1の電圧Voが上昇すると抵抗3の両端をスイッチ2で短絡し、次に、リアクトル5の通電電流ILが発散しないようオン時間tonを十分短く、オフ時間toffを十分長くして昇降圧チョッパ6のスイッチング素子10を動作させて電気二重層コンデンサ1を充電し、電気二重層コンデンサ1の電圧Voの上昇に伴いオン時間tonを長く、オフ時間toffを短くしていくようにしているので、電気二重層コンデンサ1の電圧Voが0Vからの充電においてもリアクトル5の通電電流ILが発散してしまうのを防ぐことができ、電気二重層コンデンサ1の充電電力を大きくして充電時間を短縮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、電気二重層コンデンサを電源バックアップ用途、電力平準化用途等に使用するあらゆる用途の装置に適用でき、電気二重層コンデンサの充放電装置として昇降圧チョッパ装置を備えた無停電源電源装置、太陽光発電システム、風力発電システム等の電力変換装置、あるいは、大きなイナーシャを有するスピンドル設備や射出成形設備等、あるいは停電や復帰時の安全を要求されるロボット設備や搬送設備等に使用されるインバータ装置およびサーボドライブ装置の主回路装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施例を示す電気二重層コンデンサを適用した電力変換装置の構成図
【図2】本発明の第1実施例における電気二重層コンデンサの電圧波形図
【図3】本発明の第1実施例において電気二重層コンデンサ電圧が低い場合の昇降圧チョッパ装置のリアクトルの通電電流波形図
【図4】本発明の第1実施例において電気二重層コンデンサ電圧が高い場合の昇降圧チョッパ装置のリアクトルの通電電流波形図
【図5】本発明の電気二重層コンデンサを適用した電力変換装置における制御ブロック図
【図6】本発明の第2実施例における電気二重層コンデンサの電圧波形図
【図7】本発明の第2実施例のステップST31におけるリアクトル電流波形図
【図8】従来技術を示す電気二重層コンデンサを適用した電力変換装置の構成図
【図9】従来の電力変換装置における昇降圧チョッパ装置のリアクトルの通電電流波形図
【図10】従来の電力変換装置における昇降圧チョッパ装置のリアクトル5の通電電流波形図
【符号の説明】
【0027】
1 電気二重層コンデンサ
2 スイッチ
3 抵抗
4 コンデンサ
5 リアクトル
6 昇降圧チョッパ装置
7 演算装置
8 スイッチング素子ドライブ信号発生器
9 スイッチドライブ信号発生器
10、11 スイッチング素子
12、13 ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置としての電気二重層コンデンサ(1)と、
リアクトル(5)、スイッチング素子(10)を有し低圧側に接続された前記電気二重層コンデンサ(1)の充放電装置としての昇降圧チョッパ装置(6)と、
を備えた電力変換装置において、
前記昇降圧チョッパ装置(6)と前記電気二重層コンデンサ(1)との間に接続された抵抗(3)とスイッチ(2)からなる並列体と、
前記スイッチ(2)をドライブするスイッチドライブ信号発生器(9)と、
前記スイッチング素子(10)をドライブするスイッチング素子ドライブ信号発生器(8)と、
前記電気二重層コンデンサ(1)の充電時に、前記電気二重層コンデンサ(1)の電圧(Vo)、前記昇降圧チョッパ装置(6)の高圧側主回路電圧(Vi)、予め設定した初期充電完了の目標電圧である初期充電目標電圧設定値(Vo1)、予め設定した充電完了の目標値である充電目標電圧設定値(Vo3)に基づいて前記スイッチング素子(10)のスイッチングのオン時間(ton)、オフ時間(toff)を演算して前記スイッチング素子ドライブ信号発生器(8)に出力し、前記スイッチ(2)のオンオフの判断を行って前記スイッチドライブ信号発生器(9)に出力する演算装置(7)と、を備えたことを特徴とする電気二重層コンデンサを適用した電力変換装置。
【請求項2】
前記演算装置(7)は、
前記電気二重層コンデンサ(1)の電圧(Vo)が0V、あるいは数V以下であると判断した場合は前記抵抗(3)を介して電気二重層コンデンサ(1)を充電し、前記電圧(Vo)が前記初期充電目標電圧設定値(Vo1)まで上昇したと判断した場合は前記抵抗(3)の両端を短絡するように前記スイッチ(2)を制御することを特徴とする請求項1に記載の電気二重層コンデンサを適用した電力変換装置。
【請求項3】
前記演算装置(7)は、
前記電気二重層コンデンサ(1)の電圧(Vo)が前記初期充電目標電圧設定値(Vo1)以上かつ前記充電目標電圧設定値(Vo3)以下の場合は、前記電気二重層コンデンサ(1)の電圧(Vo)に基づいてオン時間(ton)とオフ時間(toff)をそれぞれ連続して変化させるよう前記スイッチング素子(10)を制御することを特徴とする請求項1に記載の電気二重層コンデンサを適用した電力変換装置。
【請求項4】
前記演算装置(7)は、
前記初期充電目標電圧設定値(Vo1)と前記充電目標電圧設定値(Vo3)の間に予め設定した中間電圧設定値(Vo2)を有し、
前記電気二重層コンデンサ(1)の電圧(Vo)が前記中間電圧設定値(Vo2)より低いと判断した場合は、前記スイッチング素子(10)のオン時間(ton)を短く、且つオフ時間(toff)を長くすることにより前記リアクトル(5)の通電電流(IL)が発散しないよう前記スイッチング素子(10)を制御することを特徴とする請求項1に記載の電気二重層コンデンサを適用した電力変換装置。
【請求項5】
前記演算装置(7)は、
前記電気二重層コンデンサ(1)の電圧(Vo)が前記中間電圧設定値(Vo2)より高いと判断した場合は、前記スイッチング素子(10)のオン時間(ton)を長く、且つオフ時間(toff)を短くすることにより前記電気二重層コンデンサ(1)の充電電力を大きくして前記電気二重層コンデンサ(1)の充電時間を短縮するよう前記スイッチング素子(10)を制御することを特徴とする請求項4に記載の電気二重層コンデンサを適用した電力変換装置。
【請求項6】
蓄電装置としての電気二重層コンデンサ(1)と、
リアクトル(5)、スイッチング素子(10)を有し低圧側に接続された前記電気二重層コンデンサ(1)の充放電装置としての昇降圧チョッパ装置(6)と、
を備えた電力変換装置における前記電気二重層コンデンサ(1)の充電方法において、
前記昇降圧チョッパ装置(6)と前記電気二重層コンデンサ(1)との間に抵抗(3)とスイッチ(2)からなる並列体を備えた構成とし、
前記スイッチング素子(10)を連続してオンさせ前記抵抗(3)を介して前記電気二重層コンデンサ(1)を初期充電するステップ(ST1)と、
前記電気二重層コンデンサ(1)の電圧(Vo)が予め設定した初期充電目標電圧設定値(Vo1)に達すると前記スイッチング素子(10)を一旦オフし、その後前記スイッチ(2)をオンにして前記抵抗(3)の両端を短絡するステップ(ST2)と、
前記スイッチング素子(10)のオン時間(ton)を前記リアクトル(5)の通電電流(IL)が予め設定された過電流保護レベル(ILOC)に達しないよう十分短くし、尚且つ、前記スイッチング素子(10)のオフ時間(toff)を前記通電電流(IL)が0Aまで下がり発散しないよう十分長くして前記スイッチング素子(10)をスイッチングさせるステップ(ST3)と、
前記電圧(Vo)が前記初期充電目標電圧設定値(Vo1)と前記充電目標電圧設定値(Vo3)の間に予め設定した中間電圧設定値(Vo2)に達すると前記スイッチング素子(10)のオン時間(ton)を前記通電電流(IL)が前記過電流保護レベル(ILOC)に達しない程度に長くし、尚且つ、前記スイッチング素子(10)のオフ時間(toff)を前記通電電流(IL)が0Aまで下がり発散しない程度に短くするステップ(ST4)と、
前記電圧(Vo)が予め設定された充電目標電圧設定値(Vo3)に達すると前記スイッチング素子(10)のスイッチングを停止するステップ(ST5)と、を備えたことを特徴とする電気二重層コンデンサの充電方法。
【請求項7】
蓄電装置としての電気二重層コンデンサ(1)と、
リアクトル(5)、スイッチング素子(10)を有し低圧側に接続された前記電気二重層コンデンサ(1)の充放電装置としての昇降圧チョッパ装置(6)と、
を備えた電力変換装置における前記電気二重層コンデンサ(1)の充電方法において、
前記昇降圧チョッパ装置(6)と前記電気二重層コンデンサ(1)との間に抵抗(3)とスイッチ(2)からなる並列体を備えた構成とし、
前記スイッチング素子(10)を連続してオンさせ前記抵抗(3)を介して前記電気二重層コンデンサ(1)を初期充電するステップ(ST1)と、
前記電気二重層コンデンサ(1)の電圧(Vo)が予め設定した初期充電目標電圧設定値(Vo1)に達すると前記スイッチング素子(10)を一旦オフし、その後前記スイッチ(2)をオンにして前記抵抗(3)の両端を短絡するステップ(ST2)と、
前記リアクトル(5)の通電電流(IL)が過電流保護レベル(ILOC)に達しないように、また前記リアクトル(5)の通電電流(IL)が0Aまで下がり発散しないように、前記スイッチング素子(10)のオン時間(ton)とオフ時間(toff)を前記電気二重層コンデンサ(1)の電圧(Vo)と前記昇降圧チョッパ装置(6)の高圧側主回路電圧(Vi)の値に基づいてそれぞれ連続して変化させ制御するステップ(ST31)と、
前記電圧(Vo)が予め設定された充電目標電圧設定値(Vo3)に達すると前記スイッチング素子(10)のスイッチングを停止するステップ(ST32)と、を備えたことを特徴とする電気二重層コンデンサの充電方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−99503(P2008−99503A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−281034(P2006−281034)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】