説明

電気光学装置、電気光学装置の製造方法、電気光学装置用基板及び投射型表示装置

【課題】 熱による表示不良を抑えることができ、材料の使用量を抑えることができる電気光学装置、当該電気光学装置用基板、当該電気光学装置の製造方法及び当該電気光学装置を搭載した電子機器を提供すること。
【解決手段】 カラーフィルタ層14R、14G、14Bの間を埋めるように平坦化層15を設け、カラーフィルタ層14R、14G、14Bと平坦化層15とを同じ高さにすることで、カラーフィルタ層14R、14G、14Bと平坦化層15とで平坦面18を形成することができる。平坦化層15でカラーフィルタ層14R、14G、14Bを覆う必要は無い。カラーフィルタ層14R、14G、14Bを覆っていた平坦化層15が無くなった分、平坦化層15での発熱量が少なくなり、また発生した熱を伝導層15bにより放熱できるので、液晶装置内の温度上昇を抑えることができ、熱による表示不良を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶装置や、有機EL(Electro-Luminescence)装置、無機EL装置に代表される発光装置等の電気光学装置、電気光学装置の製造方法、電気光学装置用基板及び投射型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶装置等の電気光学装置に用いるカラーフィルタ基板は、ガラス等の透明基板上に設けられる例えば赤、緑、青の3色のカラーフィルタ層と、当該カラーフィルタ層とカラーフィルタ層間との段差を平坦化する平坦化層と、平坦化層により平坦化された面に設けられる共通電極とを有している。平坦化層は、一度所望の厚さよりも厚く形成し、余剰部分を削除して所望の厚さにする。また、カラーフィルタ層の層厚よりも厚く形成し、この平坦化層でカラーフィルタ層を覆いつくすようにするのが一般的である(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平11−160694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、平坦層を構成する樹脂等の材料は一般に熱伝導性が低いため、カラーフィルタを覆いつくすように平坦化層を形成した場合、熱が伝導されずに平坦化層内又はカラーフィルタ内にこもりやすくなる。電気光学装置に照射される光の一部はカラーフィルタや平坦化層で吸収されて熱に変わるため、この熱がこもってしまうと液晶パネル内部で温度が上がり、例えばカラーフィルタ層にクラックが生じ、表示不良等を引き起こす恐れがある。
【0004】
また、製造時には、平坦化層を形成する工程と余剰部分を削除する工程との2工程を要するため作業が煩雑になるし、削除する余剰部分の材料も無駄になってしまう。さらに、所望の厚さになるように余剰部分を削除することは、技術的にも困難である。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、熱による表示不良を抑えることができ、容易に製造することができ、材料の無駄をなくすことができる電気光学装置、当該電気光学装置用基板、当該電気光学装置の製造方法及び当該電気光学装置を搭載した投射型表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る電気光学装置は、基板と、前記基板上に配列され、カラーフィルタを構成する複数のカラーフィルタ層と、前記基板上に前記カラーフィルタ層の間を埋めるように設けられ、前記カラーフィルタ層及び前記カラーフィルタ層の間を前記カラーフィルタ層の高さに平坦化する平坦化層と、少なくとも前記複数のカラーフィルタ層を覆うように、前記カラーフィルタ層上と前記平坦化層上とに亘って設けられた電極とを具備することを特徴とする。
ここで、「高さ」は、基板表面を基準としたときの層(カラーフィルタ層及び平坦化層)の上面までの距離を意味する。
【0007】
本発明によれば、カラーフィルタ層の間を埋めるように平坦化層を設け、カラーフィルタ層と平坦化層とを同じ高さにすることで、カラーフィルタ層と平坦化層とで電極形成面を平坦化できる。平坦化層でカラーフィルタ層を覆う必要は無い。カラーフィルタ層を覆っていた平坦化層が無くなった分、平坦化層で発生した熱がこもらなくなるので、電気光学装置内の温度上昇を抑えることができ、熱による表示不良を抑えることができる。
【0008】
また、前記平坦化層のうち少なくとも前記電極に接する部分が、前記電極よりも電気伝導率が高い材料からなることが好ましい。
電気光学装置を駆動する際に、電極に電圧をかけると発熱する。電気伝導率が高い(電気抵抗値が低い)と発熱は少なくて済む。本発明のように、平坦化層のうち電極に接する部分を電極よりも電気伝導率が高い材料からなるようにすると、電極の電気伝導を補助する働きをするため、電極の電気伝導率を向上させることができる。これにより、電極からの発熱を減少させることができ、熱による表示不良を一層抑制することができる。
【0009】
また、前記平坦化層の少なくとも一部が、前記電極よりも熱伝導率が高い材料からなることが好ましい。
本発明によれば、電極から発生した熱を伝導し、一箇所にこもらせないで拡散することができるので、熱による応力の発生や、カラーフィルタ層のクラックの発生を防ぐことができ、発熱による表示不良を回避することができる。これにより、熱による表示不良を一層抑制することができる。
【0010】
また、前記平坦化層の少なくとも一部が、光反射材料からなることが好ましい。
これにより、平坦化層が遮光層を兼ねることができるので、一の工程で平坦化層と遮光層とを形成することができる。これにより、工数を削減することができる。また、光反射材料からなることとしたので光を反射することができ、平坦化層での光の吸収を減らすことができ、発熱を減らすことができる。
【0011】
また、前記平坦化層が、前記電極に接するように設けられ、電気伝導率及び熱伝導率のうち少なくとも一方が前記電極よりも高い材料からなる伝導層と、前記伝導層と前記基板との間に設けられた反射層とを有することが好ましい。
本発明のように、平坦化層を伝導層と反射層の2層を有するようにしたことで、伝導層では電気伝導を補助すること又は熱を拡散することができ、反射層では光を反射することができるため、熱による表示不良を相乗的に抑えることができる。
【0012】
また、前記電極よりも電気伝導率が高い材料及び前記電極よりも熱伝導率が高い材料が金属であることが好ましい。
通常、平坦化層の上に形成される電極としては、光透過性を有する例えばITO等の透明電極が用いられることが多い。金属は、総じてこのような透明電極よりも電気伝導率及び熱伝導率が高く、本発明の平坦化層として好適に用いることができる。
【0013】
また、前記金属の主成分が、銅であることが好ましい。
銅は、金属の中でも電気伝導率及び熱伝導率の双方において高い値を有しており、コストも低く抑えることができるため、本発明の平坦化層として一層好適に用いることができる。
【0014】
また、前記光反射材料が金属からなることが好ましい。
金属は、総じて光を反射する作用が強く、例えば上述のITO等よりも光の吸収が少ない。したがって、本発明の平坦化層として好適に用いることができる。
【0015】
また、前記金属の主成分が、銀又はアルミニウムであることを特徴とするが好ましい。
銀又はアルミニウムは、金属の中でも特に高い光反射率を有している。これらの金属はある程度薄く形成しても高い割合で光反射するので、例えば光反射率が極めて高いが一般的にコストが高いとされる銀であっても、コスト面で問題なく本発明に好適に用いることができる。
【0016】
また、前記カラーフィルタ層が、無機誘電体多層膜からなる光干渉カラーフィルタを構成することが好ましい。
無機誘電体多層膜からなる光干渉カラーフィルタは、無機材料から構成されるため、光や熱による劣化がほとんど無く、通常よりも強い光や熱にも耐えることができる。一般的に、投射型表示装置は直視型表示装置に比べて光源から射出される光を強くする必要があるため、投射型表示装置のライトバルブに用いられる電気光学装置は、直視型表示装置としての電気光学装置に比べて、より強い光や熱を光源から受ける。したがって、無機誘電体多層膜からなる光干渉カラーフィルタの構成は、例えば投射型表示装置のライトバルブ用の電気光学装置に適している。
【0017】
本発明の電気光学装置は、上記の各構成に加えて、カラーフィルタ自体の耐光熱性に優れた構成により、一層熱による表示不良が起こりにくいため、投射型表示装置のライトバルブとして特に好適に用いることができる。
【0018】
本発明に係る電気光学装置用基板は、基板と、前記基板上に配列された複数のカラーフィルタ層と、前記基板上に前記カラーフィルタ層の間を埋めるように設けられ、前記カラーフィルタ層及び前記カラーフィルタ層の間を前記カラーフィルタ層の高さに平坦化する平坦化層と、少なくとも前記複数のカラーフィルタ層を覆うように、前記カラーフィルタ層上と前記平坦化層上とに亘って設けられた電極とを具備することを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、カラーフィルタ層を覆うだけの平坦化層の材料は必要なく、カラーフィルタ層の間を埋めるだけで済むため、材料の無駄遣いが無い。また、カラーフィルタ層の高さまで調節しながら平坦化層を形成すれば一の工程で済むため、製造工程の簡略化を図ることができる。さらに、カラーフィルタ層の表面を平坦化層で覆いつくすようにはせずに、カラーフィルタ層の間を埋めるように平坦化層を設けることとしたので、本発明に係る電気光学装置用基板を用いて電気光学装置を構成した場合には、平坦化層で光吸収により発生した熱がこもりにくくなり、熱による表示不良を抑えることができる。
【0020】
本発明に係る電気光学装置の製造方法は、基板上に複数のカラーフィルタ層を配列する工程と、前記基板上に前記カラーフィルタ層の間を埋めるように、前記カラーフィルタ層の高さよりも低い高さに基板側平坦化層を形成する工程と、前記基板側平坦化層上に、前記カラーフィルタ層の間が前記各カラーフィルタ層の高さになるように、電極側平坦化層を形成する工程と、前記複数のカラーフィルタ層を覆うように、前記カラーフィルタ層上と前記電極側平坦化層面とに亘って電極を形成する工程とを具備することを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、カラーフィルタ層の高さまで調節しながら基板側平坦化層及び電極側平坦化層を順に形成することとしたので、不要な部分を除去する工程を行う必要が無く、工程数を削減することができる。これにより、製造工程の簡略化を図ることができる。また、厚めに形成した平坦化層の余剰分を削除することも無いため、材料の無駄を省くことができる。
【0022】
また、前記電極側平坦化層を形成する工程では、前記電極側平坦化層を無電界メッキ法により形成することが好ましい。
無電界メッキ法によれば、フォトリソ法等複雑な工程を経ることなく前記基板側平坦化層の上面だけに化学反応を用いて前記電極側平坦化層を選択的に成膜することができる。また層の厚さの制御を容易に行うことができ、しかも、厚さを均一にすることができる。例えば液晶装置のカラーフィルタ間に電極側平坦化層を形成する場合、電極側平坦化層が形成されるカラーフィルタ間は極めて微細であるため、電極側平坦化層の形成する位置を精度良く選択することや、本発明では電極側平坦化層の上面が均一であることが望まれる。したがって無電界メッキ法を用いる効果は非常に大きい。また、電鋳の時間を制御することで、電極側平坦化層を所望の厚さに均一に形成することが容易となるという利点もある。
【0023】
また、前記基板側平坦化層が、導電性を有する材料からなり、前記電極側平坦化層を形成する工程では、前記電極側平坦化層を電鋳法により形成することが好ましい。
これにより、導電性を有する基板側平坦化層をカソード電極とし、当該基板側平坦化層の上にそのまま電極側平坦化層を成長させることができるので、電極側平坦化層を選択的に形成することが容易となる。例えば液晶装置のカラーフィルタ間に電極側平坦化層を形成する場合、電極側平坦化層が形成されるカラーフィルタ間は極めて微細であるため、電極側平坦化層の形成する位置を精度良く選択することが望まれる。したがって、本発明のように電鋳法を用いる効果は大きい。また、電鋳の時間を制御することで、電極側平坦化層の厚さを制御できるという利点もある。
【0024】
本発明に係る電子機器は、上記の電気光学装置又は上記の電気光学装置の製造方法により製造された電気光学装置を搭載したことを特徴とする。
熱による表示不良を抑えることができ、材料の使用量を減らすことができる電気光学装置を搭載しているので、表示特性が良く安価な、ユーザの需要に応じた投射型表示装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は、本実施形態に係る液晶装置1の全体構成を示す斜視図である。
液晶装置1は、液晶パネル2と、この液晶パネル2に接続され電源等の回路が形成されたフレキシブル基板3とを有し、図示しないバックライト等の照明装置やケース体が必要に応じて取り付けられる。
【0026】
この液晶装置1は、例えばスイッチング素子としてTFT(Thin Film Transistor)が形成されたアクティブマトリクス型構造となっており、当該液晶装置1を駆動する駆動ドライバが直接基板に実装されるCOG方式により構成される。なお、スイッチング素子としてTFD(Thin Film Diode)を用いても良いし、駆動ドライバが例えばフレキシブル基板に実装されたCOF方式により構成しても構わない。
【0027】
液晶パネル2は、配線基板4と、上記基板又は電気光学装置用基板としてのカラーフィルタ基板5とが、シール材6によって貼り合わされると共に、両基板4及び5とシール材によって囲まれた表示領域7に電気光学材料としての液晶8が封入された構成となっている。液晶パネル2の外側、すなわち、配線基板4及びカラーフィルタ基板5の外側表面には、入射光を偏光させる偏光板や、干渉色を補償するための位相差板等が適宜貼着される(図示は省略)。
【0028】
配線基板4は、ガラスや石英等の透明あるいは光透過性の高い材料から形成される。配線基板4の液晶を保持する面側には、走査線9やデータ線10が引き回されている。走査線9は、配線基板4の表示領域7にY方向に沿って形成される。データ線10は、配線基板4の側端部分を介して表示領域7まで引き回され、表示領域7ではX方向に沿って形成される。走査線9とデータ線10との各交点には、スイッチング素子として、例えば図示しないTFT(Thin Film Transistor)が形成される。
【0029】
配線基板4は、カラーフィルタ基板5から張り出した領域(張出領域)4aを有している。この張出領域4aには、液晶パネル2を駆動するための駆動ドライバ11が、例えば異方性導電膜(以下、「ACF」という。)12を介して実装されている。この実装部品としての駆動ドライバ11は、電源からの入力信号に基づき、液晶パネル2を駆動する駆動信号を出力する。上述した走査線9及びデータ線10は、この駆動ドライバ11の出力側に電気的に接続される。駆動ドライバ11の入力側には、電源からの入力信号を伝える配線13が接続されている。
【0030】
一方、カラーフィルタ基板5は、配線基板4と同様に、ガラスや石英等の透明あるいは光透過性の高い材料から形成される。カラーフィルタ基板5には、表示領域7の各画素(ピクセル)ごとに、カラーフィルタ層として、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)のカラーフィルタ層14(赤:14R、緑:14G、青:14B)がそれぞれ1つずつ形成される。カラーフィルタ層14Rは赤色の色光を、カラーフィルタ層Gは緑色の色光を、カラーフィルタ層14Bは青色の色光を透過可能に構成され、透過可能な波長以外の色光が入射しても反射されるようになっている。各カラーフィルタ層14は、例えば無機材料を主体として構成され、屈折率の異なる複数の誘電体層、例えばTiOとSiOとを積層した構成を具備しており、干渉型カラーフィルタ層として構成されている。カラーフィルタ層R,G,Bの周縁部は例えば裾広がりの形状を有している。
【0031】
図2は、図1におけるA−A断面図であり、特にカラーフィルタ基板5の内面側(液晶層側)の構成を示す図である。なお同図では、配線基板4側については配線基板4、画素電極50及び配向膜51のみ示すものとし、液晶保持面側の構成は図示を省略する。
【0032】
各カラーフィルタ層14(それぞれ基板表面5aからの高さh)の間には、カラーフィルタ層14R、14G、14Bと当該各カラーフィルタ層14の間との段差を平坦化する平坦化層15が形成される。各カラーフィルタ層14と各平坦化層15とで形成された平坦面18上には、各カラーフィルタ層14が形成される範囲を覆うように、例えばITO(Indiumu Tin Oxide)等の透明な導電材料からなる共通電極16が全面に設けられる。
【0033】
ここで、平坦化層15は、カラーフィルタ層14の間を埋めるように形成されており、カラーフィルタ層14と同じ高さhに形成される。この平坦化層15は、ITOよりも反射率の高い材料からなる反射層(基板側平坦化層)15aと、ITOよりも電気伝導率が高く(比抵抗が低く)、熱伝導率が高い材料からなる伝導層(電極側平坦化層)15bとの2層構造になっている。なお、ITOの比抵抗は約100μΩ・cm、熱伝導率は約8.2W/m・Kである。
【0034】
反射層15aは、例えばカラーフィルタ基板5の表面に設けられ、基板側からの光を反射する。光反射率(特に可視光反射率)の高い材料、例えば銀(光反射率:約96%)やアルミニウム(光反射率:約90%)等で構成される。また、例えば他の種類の材料であっても、光反射率が約85%以上であれば、当該反射層15aの材料として好適に用いることができる。
【0035】
伝導層15bは、共通電極16と接しており、共通電極16の電気伝導を補助し、共通電極16が電気伝導により過度に発熱するのを抑えている。また、共通電極16への電圧印加により生じる熱を伝導し、熱が一箇所にこもらないようにしている。ITOよりも電気伝導率及び熱伝導率の高い材料、例えば銅(比抵抗:約1.72μΩ・cm、熱伝導率:約403W/m・K)等で構成される。他の材料としては、例えば金(比抵抗:約2.19μΩ・cm、熱伝導率:約319W/m・K)等が挙げられる。また、反射層15aとして用いる銀(比抵抗:約1.63μΩ・cm、熱伝導率:約428W/m・K)やアルミニウム(比抵抗:約2.81μΩ・cm、熱伝導率:約236W/m・K)を当該伝導層15bとして用いても構わない。銀やアルミニウムは、光反射率が高いと同時に、電気伝導性及び熱伝導性も高いので、伝導層15bとしても好適に用いることができる。また、当該伝導層15bとしては、電気伝導率及び熱伝導率の双方が高い材料が好ましいことはいうまでも無いが、どちらか一方が高い材料であっても、好適に用いることができる。
【0036】
また、当該共通電極16の内面側には、例えばポリイミド等を主体として構成される有機膜をラビングしてなる配向膜17が形成されている。
また、液晶装置1の各外面側には、当該液晶装置1内に直線偏光を入射させるための偏光板等が設けられる。
【0037】
次に、本発明の液晶装置1の製造工程について説明する。
図3は、液晶装置1の製造工程を示すフローチャートである。本実施形態では、大面積のマザー基板を用いて複数の液晶装置を一括して形成し、切断によって個々の液晶装置1に分離する方法を例に挙げて説明する。
【0038】
ST1からST5までの工程により、カラーフィルタが設けられたカラーフィルタ側マザー基板が形成され、ST11からST13まで工程によって配線や例えばアクティブマトリクス型の液晶装置であればスイッチング素子等が設けられた配線側マザー基板が形成される。なお、配線側マザー基板は、配線基板4となる複数の矩形の表示領域7を含む大判の基板であり、カラーフィルタ側マザー基板は、カラーフィルタ基板5となる複数の矩形の表示領域7を含む大判の基板である。
【0039】
まず、カラーフィルタ側マザー基板の形成工程(ST1〜ST9)について説明する。
【0040】
図4に示すように、ガラス等の透光性材料からなる大判の基材の各表示領域7に液晶装置複数分のカラーフィルタ層14R、14G、14Bを形成する(ST1)。
【0041】
次に、図5に示すように、カラーフィルタ層14R、14G、14Bの間に、平坦化層15のうちの反射層15aを選択的に形成する(ST2)。例えば、一度全面に層を形成してパターニングすることで反射層15aを形成しても良く(フォトリソグラフィ法)、反射層15aを形成したい領域以外の部分、つまりカラーフィルタ層14R、14G、14の間以外の部分をマスクで覆い、スパッタリング等により形成しても良い。
【0042】
次に、図6に示すように、無電界銅メッキ法により伝導層15bを形成する(ST3)。無電界銅メッキ法は、銅錯体と還元剤とを反応させて銅を還元することにより、対象物に銅をメッキする方法である。銅錯体には、例えば、酒石酸カリウム・ナトリウム銅錯体やEDTA(エチレンジアミン四酢酸)銅錯体等が用いられる。還元剤には、例えば、ホルムアルデヒドが用いられる。無電界銅メッキ法の一般的な反応式を[化1]に示す。
【化1】

【0043】
ここでは、容器36内の、例えば上記の銅錯体及び還元剤が混入された電解液37にマザー基板を浸し、対象物となる反射層15a上に成長させてメッキを形成する。伝導層15bの高さは、例えば反応時間を調節することで、各カラーフィルタ層14の高さと同じにする。また、例えば反射層15a上で反応が起こりやすくなるように、予め活性化処理を施しておいても構わない。
【0044】
次に、図7に示すように、カラーフィルタ層14及び平坦化層15により平坦化された平坦面18上に共通電極16を形成する(ST4)。共通電極16は、例えばカラーフィルタ層14が形成された領域に、スパッタリング等の方法により形成される。
【0045】
次に、当該基材の表面にギャップ制御用の図示しないスペーサ及び隔壁を形成する(ST5)。スペーサは、各表示領域7に形成する。
この基材に形成された配線やカラーフィルタを覆うように配向膜を形成し(ST6)、この配向膜に対してラビング処理を実行する(ST7)。配向膜は、例えばポリイミドを塗布又は印刷することによって形成することができる。
【0046】
各表示領域7の周縁部には、当該表示領域7を囲むようにエポキシ樹脂等からなるシール材を矩形枠状に形成する(ST8)。このシール材は、ディスペンサ等を用いて設計された位置に正確に形成する。シール材は表示領域7の角部を開始点として一筆書きで閉環状に形成される。
【0047】
そして、シール材で囲まれた表示領域7に液晶を塗布する(ST9)。例えば液晶滴下装置内にカラーフィルタ側マザー基板を配置させ、液滴吐出ヘッドから液晶を液滴状にして吐出し、これを基板表面に連続的に多数配置することによって所定の広さを持った液膜を形成する。
【0048】
次に、配線側マザー基板の形成工程(ST11〜ST13)について簡単に説明する。
【0049】
カラーフィルタ側マザー基板の場合と同様に、ガラス等の透光性材料からなる大判の基材の各表示領域7に走査線7、データ線8等を形成する(ST11)。これら走査線7やデータ線8については、例えば基材の表面全体にアルミニウム等の金属をスパッタし、これをエッチングすることによって、各表示領域7に対して一括的に形成することができる。
次に、各表示領域7内にポリイミド等からなる配向膜を形成し(ST12)、この配向膜に対してラビング処理を実行する(ST13)。
【0050】
次に、上記の各工程で形成したカラーフィルタ側マザー基板と配線側マザー基板とを貼り合わせる(ST21)。両基板を近接させ、配線側マザー基板がカラーフィルタ側マザー基板上のシール材23に接着させるようにする。その後、配線基板4及びカラーフィルタ基板5にスクライブ線を形成し、当該スクライブ線に沿って液晶パネルを切断し(ST22)、各液晶パネルの洗浄を行い(ST23)、各液晶パネルの外側表面に偏光板を貼着(ST24)する。
【0051】
そして、各液晶パネル2にACF12を介して駆動ドライバ11を実装し(ST25)、各液晶パネル2にACF10を介してフレキシブル基板3を実装して(ST26)、液晶装置1が完成する。
【0052】
このように、本実施形態によれば、カラーフィルタ層14の間を埋めるように平坦化層15を設け、カラーフィルタ層14と平坦化層15とを同じ高さにすることで、カラーフィルタ層14と平坦化層15とで平坦面18を形成することができる。平坦化層15でカラーフィルタ層14を覆う必要は無い。カラーフィルタ層14を覆っていた平坦化層15が無くなった分、平坦化層15での発熱量が少なくなり、また発生した熱を伝導層15bにより放熱することで熱がこもらなくなるので、液晶装置1内の温度上昇を抑えることができ、熱による表示不良を抑えることができる。
【0053】
また、カラーフィルタ層14の高さまで調節しながら反射層15a及び伝導層15bを順に形成することとしたので、不要な部分を除去する工程を行う必要が無く、工程数を削減することができる。これにより、製造工程の簡略化を図ることができる。また、厚めに形成した平坦化層15の余剰分を削除することも無いため、材料の無駄を省くことができる。無電界メッキ法によれば、形成する層の位置と厚さの制御を容易に行うことができ、しかも、その厚さを均一にすることができる。このため、均一な伝導層15bを所望の厚さに形成することが容易となる。本発明では、伝導層15bの上面が均一であることが特に望まれるため、無電界銅メッキ法を用いる効果は非常に大きい。
【0054】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態を説明する。第1実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。本実施形態では、伝導層15bを形成する方法が、第1実施形態の無電界銅メッキ法とは異なっているため、この点を中心に説明する。
【0055】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、大面積のマザー基板を用いて複数の液晶装置を一括して形成し、切断によって個々の液晶装置1に分離する方法を例に挙げて説明する。
まず、マザー基板の各表示領域7に液晶装置複数分のカラーフィルタ層14を形成し(ST1)、例えばスパッタリング等の方法により基板上のカラーフィルタ層14の間に、例えば銀からなる反射層15aを形成する(ST2)。
【0056】
次に、電鋳法により伝導層15bを形成する(ST3)。電鋳法では、まず、図8に示すように例えば容器40内の電解液41に反射層15aが形成されたマザー基板を浸す。電解液41は、例えば硫酸銅水溶液を用いることができる。電圧源42及びアノード側電極43、カソード側接続部44を用意し、アノード側電極43を電解液に浸す。カソード側接続部44を各反射層15aに接続し、銀からなる反射層15aをカソード電極とする。この状態で電圧源42を駆動させると、電解液中の銅イオンが、カソード電極である反射層15aに集まり、当該反射層15aに付着し、時間と共に成長して、伝導層15bを形成する。
【0057】
カラーフィルタ層14及び平坦化層15により平坦化された平坦面18上には、共通電極16を形成する(ST4)。共通電極16は、例えばカラーフィルタ層14が形成された領域に、スパッタリング等の方法により形成される。
この後の工程は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0058】
このように、本実施形態によれば、導電性を有する反射層15aをカソード電極とし、当該反射層15aの上にそのまま伝導層15bを成長させることができるので、伝導層15bを選択的に形成することが容易となる。例えば、液晶装置1のカラーフィルタ層14の間は極めて微細であるため、伝導層15bの形成する位置を精度良く特定することが望まれる。したがって、電柱法を用いる効果は大きい。また、電鋳の時間を制御することで、伝導層15bの厚さを制御できるという利点もある。
【0059】
(投射型表示装置)
次に、各実施形態の液晶装置を光変調装置として用いた投射型表示装置の実施形態を説明する。
【0060】
図9は本発明に係る投射型表示装置の概略構成を示す図である。上記の液晶装置1は、入射した直線偏光を液晶層の駆動により変調可能で、同図に示すように、投射型液晶装置20の光変調手段(ライトバルブ)として好適に用いることができる。
【0061】
投射型液晶装置20は、白色光を射出する光源21と、当該光源21から射出された白色光の輝度分布を均一にするロッドインテグレータ22と、輝度分布を均一にされた白色光を平行光に変換するコンデンサレンズ系23と、平行光に変換された白色光をRGBの色光に分光し、分光された各色光を変調する液晶装置1と、変調された各色光をスクリーンSに投射する投射レンズ27とを有する。
【0062】
光源21には、白色光を射出するメタルハライド等のランプ31と、射出された白色光を反射するリフレクタ32とが備えられている。
ロッドインテグレータ22には、透光性の棒状の導光体(例えば、ガラス棒)、もしくは内面が反射面とされた管状の導光体などが用いられている。
【0063】
コンデンサレンズ系23には、ロッドインテグレータ22から入射した光が液晶装置1に平行光となって入射するように、コンデンサレンズ35aおよびコンデンサレンズ35bが備えられている。
液晶装置1は光変調装置であって、ここでは図1に示したものを用いている。
【0064】
光源21からの光は、ロッドインテグレータ22によりコンデンサレンズ系23に導光され、ここで平行光(直線偏光)に変換される。変換された平行光(直線偏光)は、液晶装置1により変調され、変調された各色光は投射レンズ27によりスクリーンS上に投射される。
【0065】
液晶装置を駆動中に、液晶装置内で熱が発生してカラーフィルタ層等にクラックが形成されたりすると、スクリーンS上に大きく現れ表示不良となる。上記の液晶装置1では、発熱量が少なく、また発生した熱が液晶装置内にこもらないので、液晶装置1内の温度上昇を抑えることができ、熱による表示不良を抑えることができる。
【0066】
また、上記液晶装置1では、当該液晶装置1を構成する材料の使用量を抑えることができるので、コストを低く抑えることができる。
【0067】
また、液晶装置1のカラーフィルタ層14が、無機誘電体多層膜からなる光干渉カラーフィルタを構成するので、光や熱による劣化がほとんど無く、通常よりも強い光や熱にも耐えることができる。
【0068】
一般的に、投射型表示装置は直視型表示装置に比べて光源からより強い光を射出する必要があるため、投射型表示装置のライトバルブに用いられる液晶装置は、直視型表示装置としての液晶装置に比べて、より強い光や熱を光源から受ける。このため、無機誘電体多層膜からなる光干渉カラーフィルタの構成は、ライトバルブ用の液晶装置の構成として好んで用いることができる。
【0069】
したがって、液晶装置1は、上記の各構成に加えて各カラーフィルタ層14自体が耐光熱性に優れた構成を有しており、一層熱による表示不良が起こりにくいため、投射型液晶装置20のライトバルブとして特に好適に用いることができる。
【0070】
このように、熱による表示不良を抑えることができ、材料の使用量を減らすことができる液晶装置1を搭載しているので、表示特性が良く安価な、ユーザの需要に応じた投射型液晶装置20を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1実施形態に係る液晶装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1におけるA−A断面図である。
【図3】本実施形態に係る液晶装置の製造工程を示すフローチャートである。
【図4】液晶装置の製造の様子(その1)を示す図である。
【図5】液晶装置の製造の様子(その2)を示す図である。
【図6】液晶装置の製造の様子(その3)を示す図である。
【図7】液晶装置の製造の様子(その4)を示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る液晶装置の製造の様子を示す図である。
【図9】本発明に係る投射型表示装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
1…液晶装置 2…液晶パネル 5…カラーフィルタ基板 7…走査線 8…液晶 14(14R、14G、14B)…カラーフィルタ層 15…平坦化層 15a…反射層 15b…伝導層 16…共通電極 18…平坦面 20…投射型液晶装置 37、41…電解液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配列された複数のカラーフィルタ層と、
前記基板上に前記カラーフィルタ層の間を埋めるように設けられ、前記カラーフィルタ層及び前記カラーフィルタ層の間を前記カラーフィルタ層の高さに平坦化する平坦化層と、
少なくとも前記複数のカラーフィルタ層を覆うように、前記カラーフィルタ層上と前記平坦化層上とに亘って設けられた電極と
を具備することを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記平坦化層のうち少なくとも前記電極に接する部分が、前記電極よりも電気伝導率が高い材料からなることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記平坦化層の少なくとも一部が、前記電極よりも熱伝導率が高い材料からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記平坦化層の少なくとも一部が、光反射材料からなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記平坦化層が、
前記電極に接するように設けられ、電気伝導率及び熱伝導率のうち少なくとも一方が前記電極よりも高い材料からなる伝導層と、
前記伝導層と前記基板との間に設けられた反射層と
を有することを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記電極よりも電気伝導率が高い材料及び前記電極よりも熱伝導率が高い材料が金属であることを特徴とする請求項2乃至請求項5のうちいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記金属の主成分が、銅であることを特徴とする請求項6に記載の電気光学装置。
【請求項8】
前記光反射材料が金属からなることを特徴とする請求項4又は請求項5のうちいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項9】
前記金属の主成分が、銀又はアルミニウムであることを特徴とする請求項8に記載の電気光学装置。
【請求項10】
前記カラーフィルタ層が、無機誘電体多層膜からなる光干渉カラーフィルタを構成することを特徴とする請求項1乃至請求項9に記載の電気光学装置。
【請求項11】
基板と、
前記基板上に配列された複数のカラーフィルタ層と、
前記基板上に前記カラーフィルタ層の間を埋めるように設けられ、前記カラーフィルタ層及び前記カラーフィルタ層の間を前記カラーフィルタ層の高さに平坦化する平坦化層と、
少なくとも前記複数のカラーフィルタ層を覆うように、前記カラーフィルタ層上と前記平坦化層上とに亘って設けられた電極と
を具備することを特徴とする電気光学装置用基板。
【請求項12】
基板上に複数のカラーフィルタ層を配列する工程と、
前記基板上に前記カラーフィルタ層の間を埋めるように、前記カラーフィルタ層の高さよりも低い高さに基板側平坦化層を形成する工程と、
前記基板側平坦化層上に、前記カラーフィルタ層の間が前記各カラーフィルタ層の高さになるように、電極側平坦化層を形成する工程と、
前記複数のカラーフィルタ層を覆うように、前記カラーフィルタ層上と前記電極側平坦化層面とに亘って電極を形成する工程と
を具備することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項13】
前記電極側平坦化層を形成する工程では、前記電極側平坦化層を無電界メッキ法により形成することを特徴とする請求項12に記載の電気光学装置。
【請求項14】
前記基板側平坦化層が、導電性を有する材料からなり、
前記電極側平坦化層を形成する工程では、前記電極側平坦化層を電鋳法により形成することを特徴とする請求項12に記載の電気光学装置。
【請求項15】
請求項1乃至請求項10のうちいずれか一項に記載の電気光学装置又は請求項12乃至請求項14のうちいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法により製造された電気光学装置を搭載したことを特徴とする投射型表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−84519(P2006−84519A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266597(P2004−266597)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】