説明

電気光学装置、電気光学装置の製造方法および投射型表示装置

【課題】基板に成膜した封止用の膜によって、反射部を構成するための溝の開口部を確実に塞ぐことのできる電気光学装置、該電気光学装置の製造方法、および投射型表示装置を提供すること。
【解決手段】電気光学装置100において、第2基板20に溝260を形成した後、第2基板20に封止膜として金属膜27を形成する。この時点では、金属膜27において溝260の開口部265と重なる領域に開口部275が形成されているが、金属膜27を加熱して溶融させると、金属膜27の開口部275が塞がれ、その結果、溝260の開口部265が金属膜27によって塞がれ、溝260の内部は中空となる。しかる後には、金属膜27のうち、溝260の外部に形成されている部分を除去する一方、溝260の内部で開口部265を塞ぐ部分を残す。従って、溝260の側面261、262を反射面として利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置等の電気光学装置、該電気光学装置の製造方法、および当該電気光学装置を備えた投射型表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の電気光学装置のうち、液晶装置は、複数の画素および該複数の画素電極の各々に対応するスイッチング素子が設けられた第1基板と、第1基板に対向配置された第2基板とを有しており、第1基板と第2基板との間には電気光学物質層としての液晶層が設けられている。また、液晶装置のうち、TN(Twisted Nematic)モードやVA(Vertical Alignment)モードの液晶装置では、第2基板に共通電極が形成されており、共通電極と画素電極との間で液晶層の配向を制御する。かかる液晶装置において、第2基板側から入射した光を画素電極に効率よく導くことを目的に、第2基板の一部を構成する防塵ガラスに、画素電極の間に向けて開口する断面V字状の溝を形成するとともに、防塵ガラスに透光性のカバーガラスを接着剤により貼り付け、空気が充填された中空の溝の側面を反射面として利用する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−215427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、溝を中空にするにあたって、特許文献1に記載の技術のように、防塵ガラスにカバーガラスを接着剤により貼り付けて溝の開口部を塞ぐ構成では、生産性が極めて低いという問題点がある。
【0005】
ここに本願発明者は、第2基板に溝を形成した後、第2基板に封止膜を成膜することによって溝の開口部を塞ぐことにより、溝を中空状態とすることを提案するものである。しかしながら、第2基板に封止膜を成膜しただけでは、封止膜において開口部と重なる領域に開口部が形成されるだけで、溝の開口部を塞ぐことができないという問題点がある。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、基板に成膜した封止用の膜によって、反射部を構成するための溝の開口部を確実に塞ぐことのできる電気光学装置、該電気光学装置の製造方法、および当該電気光学装置を備えた投射型表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る電気光学装置は、複数の画素電極および該複数の画素電極の各々に対応するスイッチング素子が設けられた第1基板と、該第1基板に対向配置された透光性の第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に設けられた電気光学物質層と、を有し、前記第2基板の前記第1基板側の基板面側には、前記複数の画素電極において隣り合う画素電極の間に開口部を向ける溝と、該溝の内部で前記開口部を塞いで当該溝の内部を中空状態にする金属膜と、が設けられていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、複数の画素電極および該複数の画素電極の各々に対応するスイッチング素子が設けられた第1基板と、該第1基板に対向配置された透光性の第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に設けられた電気光学物質層と、を有する電気光学装置の製造方法であって、前記第2基板の前記第1基板側の基板面に、前記複数の画素電極において隣り合う画素電極の間に開口部を向ける溝を形成する溝形成工程と、前記基板面に金属膜を成膜する金属膜成膜工程と、前記金属膜を加熱により溶融させて当該金属膜によって前記溝の開口部を塞いで前記溝の内部を中空とする加熱工程と、前記金属膜のうち、前記溝の外部に形成されている部分を除去する一方、前記溝の内部で前記開口部を塞ぐ部分を残す金属膜除去工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明では、第2基板に溝を形成した後、第2基板に封止膜として金属膜を形成する。この時点では、金属膜においては、溝の開口部と重なる領域に開口部が形成されているが、金属膜を加熱して溶融させると、金属膜の開口部が塞がれ、その結果、溝の開口部が金属膜によって塞がれ、溝は中空となる。その結果、中空の溝の側面は、溝内の媒質(空気や真空)と第2基板の媒質との屈折率の差に起因する反射面となる。従って、第2基板において、画素電極の間に向かおうとする光を溝の側面で反射し、画素電極に向かわせることができるので、表示等に寄与する光の比率が高い。また、溝の開口部を塞ぐにあたって、本発明では、金属膜を利用するため、カバーガラスを接着して開口部を塞ぐ場合と比較して、生産性が高い。また、溝を金属膜で塞いだ後、溝の外部の金属膜を除去するので、第2基板から入射した光は、溝の外部の金属膜によって画素電極に向けて進行するのを妨げられることがない。
【0010】
本発明において、前記金属膜は、反射性金属膜であることが好ましい。かかる構成によれば、金属膜と溝の側面とが接している部分も反射面となるので、金属膜と溝の側面とが接している部分の面積の大小にかかわらず、画素電極の間に向かおうとする光を溝の側面で反射し、画素電極に効率よく向かわせることができる。
【0011】
本発明において、前記反射性金属膜は、アルミニウム系金属膜であることが好ましい。かかる構成によれば、比較的低い温度で金属膜を溶融させることができるという利点がある。
【0012】
本発明において、前記金属膜の前記第1基板側の面は、前記基板面から前記溝の内部に向けて凹んでいる構成を採用することができる。
【0013】
本発明において、前記金属膜の前記第1基板側の面は、前記基板面と連続した平面を形成している構成を採用してもよい。
【0014】
本発明において、前記溝は、側面が前記隣り合う画素電極の間に向けて傾斜した断面V字形状を有していることが好ましい。かかる構成によれば、画素電極の間に向かおうとする光を溝の側面で反射し、画素電極に効率よく向かわせることができる。
【0015】
本発明において、前記溝は、内部が真空状態にあることが好ましい。かかる構成によれば、中空の溝の側面を反射率の高い反射面とすることができる。また、真空雰囲気中で金属膜を溶融させるだけで、溝の内部を真空状態とすることができる。また、空気中で金属膜を加熱した場合と違って、金属膜が酸化して、金属膜と溝の側面とが接している部分の反射率が低下することを防止することができる。
【0016】
本発明において、前記画素電極および前記第1基板は、透光性を有していることが好ましい。かかる構成によれば、透過型の電気光学装置を構成することができる。
【0017】
本発明に係る電気光学装置を投射型表示装置に用いることが好ましく、この場合、投射型表示装置は、前記一方の基板から前記電気光学装置に入射する光を出射する光源部と、前記電気光学装置によって変調された光を投射する投射光学系と、を有している。投射型表示装置の場合には特に、入射光の利用効率が高いことが求められることから、本発明を電気光学装置に適用した場合の効果が顕著である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用した投射型表示装置の概略構成図である。
【図2】図1に示した投射型表示装置において液晶ライトバルブ(電気光学装置/液晶装置)に用いた液晶パネルの基本構成を示す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る電気光学装置に用いた液晶パネルの具体的構成例を示す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る電気光学装置の画素の説明図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る電気光学装置の第2基板に形成した反射部の説明図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る電気光学装置の製造方法を示す説明図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る電気光学装置の第2基板に形成した反射部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照して、本発明を適用した電気光学装置(液晶装置)を用いた投射型表示装置、電気光学装置、および電気光学装置の製造方法を説明する。なお、以下の説明で参照する図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
【0020】
[実施の形態1]
(投射型表示装置の構成)
図1を参照して、本発明の実施の形態1に係る電気光学装置をライトバルブとして用いた投射型表示装置を説明する。図1は、本発明を適用した投射型表示装置の概略構成図である。
【0021】
図1において、投射型表示装置110は、観察者側に設けられたスクリーン111に光を照射し、このスクリーン111で反射した光を観察する、いわゆる投影型の投射型表示装置である。投射型表示装置110は、光源112を備えた光源部130と、ダイクロイックミラー113、114と、液晶ライトバルブ115〜117(電気光学装置100/液晶装置)と、投射光学系118と、クロスダイクロイックプリズム119と、リレー系120とを備えている。
【0022】
光源112は、赤色光、緑色光及び青色光を含む光を供給する超高圧水銀ランプで構成されている。ダイクロイックミラー113は、光源112からの赤色光を透過させると共に緑色光及び青色光を反射する構成となっている。また、ダイクロイックミラー114は、ダイクロイックミラー113で反射された緑色光及び青色光のうち青色光を透過させると共に緑色光を反射する構成となっている。このように、ダイクロイックミラー113、114は、光源112から出射した光を赤色光と緑色光と青色光とに分離する色分離光学系を構成する。
【0023】
ここで、ダイクロイックミラー113と光源112との間には、インテグレーター121及び偏光変換素子122が光源112から順に配置されている。インテグレーター121は、光源112から照射された光の照度分布を均一化する構成となっている。また、偏光変換素子122は、光源112からの光を例えばs偏光のような特定の振動方向を有する偏光にする構成となっている。
【0024】
液晶ライトバルブ115は、ダイクロイックミラー113を透過して反射ミラー123で反射した赤色光を画像信号に応じて変調する透過型の電気光学装置100である。液晶ライトバルブ115は、λ/2位相差板115a、第1偏光板115b、液晶パネル115c及び第2偏光板115dを備えている。ここで、液晶ライトバルブ115に入射する赤色光は、ダイクロイックミラー113を透過しても光の偏光は変化しないことから、s偏光のままである。
【0025】
λ/2位相差板115aは、液晶ライトバルブ115に入射したs偏光をp偏光に変換する光学素子である。また、第1偏光板115bは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。そして、液晶パネル115cは、p偏光を画像信号に応じた変調によってs偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。さらに、第2偏光板115dは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板である。したがって、液晶ライトバルブ115は、画像信号に応じて赤色光を変調し、変調した赤色光をクロスダイクロイックプリズム119に向けて出射する構成となっている。
【0026】
なお、λ/2位相差板115a及び第1偏光板115bは、偏光を変換させない透光性のガラス板115eに接した状態で配置されており、λ/2位相差板115a及び第1偏光板115bが発熱によって歪むのを回避することができる。
【0027】
液晶ライトバルブ116は、ダイクロイックミラー113で反射した後にダイクロイックミラー114で反射した緑色光を画像信号に応じて変調する透過型の電気光学装置100である。そして、液晶ライトバルブ116は、液晶ライトバルブ115と同様に、第1偏光板116b、液晶パネル116c及び第2偏光板116dを備えている。液晶ライトバルブ116に入射する緑色光は、ダイクロイックミラー113、114で反射されて入射するs偏光である。第1偏光板116bは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板である。また、液晶パネル116cは、s偏光を画像信号に応じた変調によってp偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。そして、第2偏光板116dは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。したがって、液晶ライトバルブ116は、画像信号に応じて緑色光を変調し、変調した緑色光をクロスダイクロイックプリズム119に向けて出射する構成となっている。
【0028】
液晶ライトバルブ117は、ダイクロイックミラー113で反射し、ダイクロイックミラー114を透過した後でリレー系120を経た青色光を画像信号に応じて変調する透過型の電気光学装置100である。そして、液晶ライトバルブ117は、液晶ライトバルブ115、116と同様に、λ/2位相差板117a、第1偏光板117b、液晶パネル117c及び第2偏光板117dを備えている。ここで、液晶ライトバルブ117に入射する青色光は、ダイクロイックミラー113で反射してダイクロイックミラー114を透過した後にリレー系120の後述する2つの反射ミラー125a、125bで反射することから、s偏光となっている。
【0029】
λ/2位相差板117aは、液晶ライトバルブ117に入射したs偏光をp偏光に変換する光学素子である。また、第1偏光板117bは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。そして、液晶パネル117cは、p偏光を画像信号に応じた変調によってs偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。さらに、第2偏光板117dは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板である。したがって、液晶ライトバルブ117は、画像信号に応じて青色光を変調し、変調した青色光をクロスダイクロイックプリズム119に向けて出射する構成となっている。なお、λ/2位相差板117a及び第1偏光板117bは、ガラス板117eに接した状態で配置されている。
【0030】
リレー系120は、リレーレンズ124a、124bと反射ミラー125a、125bとを備えている。リレーレンズ124a、124bは、青色光の光路が長いことによる光損失を防止するために設けられている。ここで、リレーレンズ124aは、ダイクロイックミラー114と反射ミラー125aとの間に配置されている。また、リレーレンズ124bは、反射ミラー125a、125bの間に配置されている。反射ミラー125aは、ダイクロイックミラー114を透過してリレーレンズ124aから出射した青色光をリレーレンズ124bに向けて反射するように配置されている。また、反射ミラー125bは、リレーレンズ124bから出射した青色光を液晶ライトバルブ117に向けて反射するように配置されている。
【0031】
クロスダイクロイックプリズム119は、2つのダイクロイック膜119a、119bをX字型に直交配置した色合成光学系である。ダイクロイック膜119aは青色光を反射して緑色光を透過する膜であり、ダイクロイック膜119bは赤色光を反射して緑色光を透過する膜である。したがって、クロスダイクロイックプリズム119は、液晶ライトバルブ115〜117のそれぞれで変調された赤色光と緑色光と青色光とを合成し、投射光学系118に向けて出射するように構成されている。
【0032】
なお、液晶ライトバルブ115、117からクロスダイクロイックプリズム119に入射する光はs偏光であり、液晶ライトバルブ116からクロスダイクロイックプリズム119に入射する光はp偏光である。このようにクロスダイクロイックプリズム119に入射する光を異なる種類の偏光としていることで、クロスダイクロイックプリズム119において各液晶ライトバルブ115〜117から入射する光を合成できる。ここで、一般に、ダイクロイック膜119a、119bはs偏光の反射トランジスター特性に優れている。このため、ダイクロイック膜119a、119bで反射される赤色光及び青色光をs偏光とし、ダイクロイック膜119a、119bを透過する緑色光をp偏光としている。投射光学系118は、投影レンズ(図示略)を有しており、クロスダイクロイックプリズム119で合成された光をスクリーン111に投射するように構成されている。
【0033】
このように構成した投射型表示装置110においては、光源112から出射された光の利用効率が高いことが求められることから、液晶ライトバルブ115〜117としての電気光学装置100については以下に説明する構成が採用されている。
【0034】
(電気光学装置100の全体構成)
図2は、図1に示した投射型表示装置において液晶ライトバルブ(電気光学装置100/液晶装置)に用いた液晶パネルの基本構成を示す説明図であり、図2(a)、(b)は、液晶パネルの基本的な構造を模式的に示す説明図、および電気光学装置100の電気的構成を示すブロック図である。なお、図1に示す液晶ライトバルブ115〜117および液晶パネル115c〜117cは、変調する光の波長領域が異なるだけであり、基本的構成が共通するので、液晶ライトバルブ115〜117を電気光学装置100とし、液晶パネル115c〜117cを液晶パネル100pとして説明する。
【0035】
図2(a)に示すように、電気光学装置100は、TN(Twisted Nematic)モードやVA(Vertical Alignment)モードの液晶パネル100pを有している。液晶パネル100pは、第1基板10と、この第1基板10に対向する第2基板20とを備えており、第2基板20の側から入射した光を変調して第1基板10の側から出射する透過型の液晶パネルである。第1基板10と第2基板20とは、シール材(図示せず)を介して貼り合わされて対向しており、シール材の内側領域には液晶層50(電気光学物質層)が保持されている。詳しくは後述するが、第1基板10において第2基板20と対向する面側には島状の画素電極9a等が形成され、第2基板20において第1基板10と対向する面側には、その略全面に共通電極21が形成されている。また、第2基板20には、後述する溝260を利用した反射部26が構成されている。
【0036】
図2(b)に示すように、本形態の電気光学装置100において、液晶パネル100pは、その中央領域に複数の画素100aがマトリクス状に配列された画像表示領域10a(画素領域)を備えている。液晶パネル100pにおいて、第1基板10(図2等を参照)では、画像表示領域10aの内側で複数本のデータ線6aおよび複数本の走査線3aが縦横に延びており、それらの交点に対応する位置に画素100aが構成されている。複数の画素100aの各々には、電界効果型トランジスターからなる画素トランジスター30(スイッチング素子)、および画素電極9a(図2等を参照)が形成されている。画素トランジスター30のソースにはデータ線6aが電気的に接続され、画素トランジスター30のゲートには走査線3aが電気的に接続され、画素トランジスター30のドレインには、画素電極9aが電気的に接続されている。
【0037】
第1基板10において、画像表示領域10aより外周側には走査線駆動回路104やデータ線駆動回路101が設けられている。データ線駆動回路101は各データ線6aに電気的に接続しており、画像処理回路から供給される画像信号を各データ線6aに順次供給する。走査線駆動回路104は、各走査線3aに電気的に接続しており、走査信号を各走査線3aに順次供給する。
【0038】
各画素100aにおいて、画素電極9aは、第2基板20に形成された共通電極21(図2等を参照)と液晶層50を介して対向し、液晶容量50aを構成している。また、各画素100aには、液晶容量50aで保持される画像信号の変動を防ぐために、液晶容量50aと並列に蓄積容量55が付加されている。本形態では、蓄積容量55を構成するために、複数の画素100aに跨る第1電極層5aが容量電極層として形成されている。本形態において、第1電極層5aは、共通電位Vcomが印加された共通電位線5cに導通している。
【0039】
(電気光学装置100の具体的構成例)
図3は、本発明の実施の形態1に係る電気光学装置100に用いた液晶パネル100pの具体的構成例を示す説明図であり、図3(a)、(b)は各々、液晶パネル100pを各構成要素と共に第2基板の側から見た平面図、およびそのH−H′断面図である。なお、図3(b)には、後述する反射部26の図示を省略してある。
【0040】
図3(a)、(b)に示すように、液晶パネル100pでは、第1基板10と第2基板20とが所定の隙間を介してシール材107によって貼り合わされており、シール材107は第2基板20の外縁に沿うように枠状に設けられている。シール材107は、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂等からなる接着剤であり、両基板間の距離を所定値とするためのグラスファイバー、あるいはガラスビーズ等のギャップ材が配合されている。
【0041】
かかる構成の液晶パネル100pにおいて、第1基板10および第2基板20はいずれも四角形であり、液晶パネル100pの略中央には、図2を参照して説明した画像表示領域10aが四角形の領域として設けられている。かかる形状に対応して、シール材107も略四角形に設けられ、シール材107の内周縁と画像表示領域10aの外周縁との間には、略四角形の周辺領域10bが額縁状に設けられている。第1基板10において、画像表示領域10aの外側では、第1基板10の一辺に沿ってデータ線駆動回路101および複数の端子102が形成されており、この一辺に隣接する他の辺に沿って走査線駆動回路104が形成されている。なお、端子102には、フレキシブル配線基板(図示せず)が接続されており、第1基板10には、フレキシブル配線基板を介して各種電位や各種信号が入力される。
【0042】
詳しくは後述するが、第1基板10の一方面10sおよび他方面10tのうち、一方面10s側では、画像表示領域10aに、図2(b)を参照して説明した画素トランジスター30、および画素トランジスター30に電気的に接続する画素電極9aがマトリクス状に形成されており、かかる画素電極9aの上層側には配向膜19が形成されている。
【0043】
また、第1基板10の一方面10s側において、周辺領域10bには、画素電極9aと同時形成されたダミー画素電極9b(図3(b)参照)が形成されている。ダミー画素電極9bについては、ダミーの画素トランジスターと電気的に接続された構成、ダミーの画素トランジスターが設けられずに配線に直接、電気的に接続された構成、あるいは電位が印加されていないフロート状態にある構成が採用される。かかるダミー画素電極9bは、第1基板10において配向膜19が形成される面を研磨により平坦化する際、画像表示領域10aと周辺領域10bとの高さ位置を圧縮し、配向膜19が形成される面を平坦面にするのに寄与する。また、ダミー画素電極9bを所定の電位に設定すれば、画像表示領域10aの外周側端部での液晶分子の配向の乱れを防止することができる。
【0044】
第2基板20の一方面20sおよび他方面20tのうち、第1基板10と対向する一方面20s側には共通電極21が形成されており、共通電極21の上層には配向膜29が形成されている。共通電極21は、第2基板20の略全面あるいは複数の帯状電極として複数の画素100aに跨って形成されている。本形態において、共通電極21は、第2基板20の略全面に形成されている。また、第2基板20の一方面20s側には、画像表示領域10aの外周縁に沿って額縁状の遮光層108が形成されており、かかる遮光層108は、見切りとして機能する。ここで、遮光層108の外周縁は、シール材107の内周縁との間に隙間を隔てた位置にあり、遮光層108とシール材107とは重なっていない。
【0045】
このように構成した液晶パネル100pにおいて、第1基板10には、シール材107より外側において第2基板20の角部分と重なる領域に、第1基板10と第2基板20との間で電気的導通をとるための基板間導通用電極109が形成されている。かかる基板間導通用電極109には、導電粒子を含んだ基板間導通材109aが配置されており、第2基板20の共通電極21は、基板間導通材109aおよび基板間導通用電極109を介して、第1基板10側に電気的に接続されている。このため、共通電極21は、第1基板10の側から共通電位Vcomが印加されている。シール材107は、略同一の幅寸法をもって第2基板20の外周縁に沿って設けられている。このため、シール材107は、略四角形である。但し、シール材107は、第2基板20の角部分と重なる領域では基板間導通用電極109を避けて内側を通るように設けられており、シール材107の角部分は略円弧状である。
【0046】
かかる構成の電気光学装置100において、画素電極9aおよび共通電極21をITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)等の透光性の導電膜により形成すると、透過型の液晶装置を構成することができる。これに対して、共通電極21をITOやIZO等の透光性導電膜により形成し、画素電極9aをアルミニウム等の反射性導電膜により形成すると、反射型の液晶装置を構成することができる。電気光学装置100が反射型である場合、第2基板20の側から入射した光が第1基板10の側の基板で反射して出射される間に変調されて画像を表示する。電気光学装置100が透過型である場合、第1基板10および第2基板20のうち、一方側の基板から入射した光が他方側の基板を透過して出射される間に変調されて画像を表示する。
【0047】
電気光学装置100は、モバイルコンピューター、携帯電話機等といった電子機器のカラー表示装置として用いることができ、この場合、第2基板20には、カラーフィルター(図示せず)や保護膜が形成される。また、電気光学装置100では、使用する液晶層50の種類や、ノーマリホワイトモード/ノーマリブラックモードの別に応じて、位相差フィルムや偏光板等が液晶パネル100pに対して所定の向きに配置される。
【0048】
本形態において、電気光学装置100は、図1を参照して説明した投射型表示装置(液晶プロジェクター)において、RGB用のライトバルブとして用いられている。この場合、RGB用の各電気光学装置100の各々には、RGB色分解用のダイクロイックミラーを介して分解された各色の光が投射光として各々入射されるので、カラーフィルターは形成されない。
【0049】
以下、電気光学装置100が透過型の液晶装置であって、第2基板20から入射した光が第1基板10を透過して出射される場合を中心に説明する。また、本形態において、電気光学装置100は、液晶層50として、誘電異方性が負のネマチック液晶化合物を用いたVAモードの液晶パネル100pを備えている場合を中心に説明する。
【0050】
(画素の具体的構成)
図4は、本発明の実施の形態1に係る電気光学装置100の画素の説明図であり、図4(a)、(b)は各々、第1基板10において隣り合う画素の平面図、および図4(a)のF−F′線に相当する位置で電気光学装置100を切断したときの断面図である。なお、図4(a)では、各領域を以下の線で表してある。
走査線3a=太い実線
半導体層1a=細くて短い点線
データ線6aおよびドレイン電極6b=一点鎖線
第1電極層5aおよび中継電極5b=細くて長い破線
第2電極層7a=二点鎖線
画素電極9a=太くて短い破線
【0051】
図4(a)に示すように、第1基板10には、複数の画素100aの各々に矩形状の画素電極9aが形成されており、隣り合う画素電極9aにより挟まれた縦横の画素間領域10fと重なる領域に沿ってデータ線6aおよび走査線3aが形成されている。より具体的には、画素間領域10fのうち、走査線3aに沿って延在する第1画素間領域10gと重なる領域に沿って走査線3aが延在し、データ線6aに沿って延在する第2画素間領域10hと重なる領域に沿ってデータ線6aが延在している。データ線6aおよび走査線3aは各々、直線的に延びており、データ線6aと走査線3aとが交差する領域に画素トランジスター30が形成されている。第1基板10には、データ線6aと重なるように、図2(b)を参照して説明した第1電極層5a(容量電極層)が形成されている。
【0052】
図4(a)、(b)に示すように、第1基板10は、石英基板やガラス基板等の透光性の基板本体10w、基板本体10wの液晶層50側の表面(一方面10s側)に形成された画素電極9a、画素スイッチング用の画素トランジスター30、および配向膜19を主体として構成されている。第2基板20は、石英基板やガラス基板等の透光性の基板本体20w、その液晶層50側の表面(第1基板10と対向する一方面20s側)に形成された共通電極21、および配向膜29を主体として構成されている。
【0053】
第1基板10において、基板本体10wの一方面10s側には、導電性のポリシリコン膜、金属シリサイド膜、金属膜あるいは金属膜化合物等の導電膜からなる走査線3aが形成されている。本形態において、走査線3aは、タングステンシリサイド(WSi)等の遮光性導電膜から構成されており、画素トランジスター30に対する遮光膜としても機能している。本形態において、走査線3aは、厚さが200nm程度のタングステンシリサイドからなる。なお、基板本体10wと走査線3aとの間には、シリコン酸化膜等の絶縁膜が設けられることもある。
【0054】
基板本体10wの一方面10s側において、走査線3aの上層側には、シリコン酸化膜等の絶縁膜12が形成されており、かかる絶縁膜12の表面に、半導体層1aを備えた画素トランジスター30が形成されている。本形態において、絶縁膜12は、例えば、テトラエトキシシラン(Si(OC254)を用いた減圧CVD法やテトラエトキシシランと酸素ガスとを用いたプラズマCVD法等により形成したシリコン酸化膜と、高温CVD法により形成したシリコン酸化膜(HTO(High Temperature Oxide)膜)との2層構造を有している。
【0055】
画素トランジスター30は、走査線3aとデータ線6aとの交差領域において走査線3aの延在方向に長辺方向を向けた半導体層1aと、半導体層1aの長さ方向と直交する方向に延在して半導体層1aの長さ方向の中央部分に重なるゲート電極3cとを備えている。また、画素トランジスター30は、半導体層1aとゲート電極3cとの間に透光性のゲート絶縁層2を有している。半導体層1aは、ゲート電極3cに対してゲート絶縁層2を介して対向するチャネル領域1gを備えているとともに、チャネル領域1gの両側にソース領域1bおよびドレイン領域1cを備えている。本形態において、画素トランジスター30は、LDD構造を有している。従って、ソース領域1bおよびドレイン領域1cは各々、チャネル領域1gの両側に低濃度領域1b1、1c1を備え、低濃度領域1b1、1c1に対してチャネル領域1gとは反対側で隣接する領域に高濃度領域1b2、1c2を備えている。
【0056】
半導体層1aは、多結晶シリコン膜等によって構成されている。ゲート絶縁層2は、半導体層1aを熱酸化したシリコン酸化膜からなる第1ゲート絶縁層2aと、CVD法等により形成されたシリコン酸化膜等からなる第2ゲート絶縁層2bとの2層構造からなる。ゲート電極3cは、導電性のポリシリコン膜、金属シリサイド膜、金属膜あるいは金属膜化合物等の導電膜からなり、半導体層1aの両側において、第2ゲート絶縁層2bおよび絶縁膜12を貫通するコンタクトホール12a、12bを介して走査線3aに導通している。本形態において、ゲート電極3cは、膜厚が100nm程度の導電性のポリシリコン膜と、膜厚が100nm程度のタングステンシリサイド膜との2層構造を有している。
【0057】
なお、本形態では、電気光学装置100を透過した後の光が他の部材で反射した際、かかる反射光が半導体層1aに入射して画素トランジスター30で光電流に起因する誤動作が発生することを防止することを目的に、走査線3aを遮光膜により形成してある。但し、走査線をゲート絶縁層2の上層に形成し、その一部をゲート電極3cとしてもよい。この場合、図4に示す走査線3aは、遮光のみを目的として形成されることになる。
【0058】
ゲート電極3cの上層側にはシリコン酸化膜等からなる透光性の層間絶縁膜41が形成されており、層間絶縁膜41の上層には、データ線6aおよびドレイン電極6bが同一の導電膜によって形成されている。層間絶縁膜41は、例えば、シランガス(SH4)と亜酸化窒素(N2O)とを用いたプラズマCVD法等により形成したシリコン酸化膜等からなる。
【0059】
データ線6aおよびドレイン電極6bは、導電性のポリシリコン膜、金属シリサイド膜、金属膜あるいは金属膜化合物等の導電膜からなる。本形態において、データ線6aおよびドレイン電極6bは、膜厚が20nmのチタン(Ti)膜、膜厚が50nmの窒化チタン(TiN)膜、膜厚が350nmのアルミニウム(Al)膜、膜厚が150nmのTiN膜をこの順に積層してなる4層構造を有している。データ線6aは、層間絶縁膜41および第2ゲート絶縁層2bを貫通するコンタクトホール41aを介してソース領域1b(データ線側ソースドレイン領域)に導通している。ドレイン電極6bは、第1画素間領域10gと重なる領域において、半導体層1aのドレイン領域1c(画素電極側ソースドレイン領域)と一部が重なるように形成されており、層間絶縁膜41および第2ゲート絶縁層2bを貫通するコンタクトホール41bを介してドレイン領域1cに導通している。
【0060】
データ線6aおよびドレイン電極6bの上層側にはシリコン酸化膜等からなる透光性の層間絶縁膜42が形成されている。層間絶縁膜42は、例えば、テトラエトキシシランと酸素ガスとを用いたプラズマCVD法等により形成したシリコン酸化膜等からなる。
【0061】
層間絶縁膜42の上層側には、第1電極層5aおよび中継電極5bが同一の導電膜によって形成されている。第1電極層5aおよび中継電極5bは、導電性のポリシリコン膜、金属シリサイド膜、金属膜あるいは金属膜化合物等の導電膜からなる。本形態において、第1電極層5aおよび中継電極5bは、膜厚が200nm程度のAl膜と、膜厚が100nm程度のTiN膜との2層構造を有している。第1電極層5aは、データ線6aと同様、第2画素間領域10hと重なる領域に沿って延在している。中継電極5bは、第1画素間領域10gと重なる領域において、ドレイン電極6bと一部が重なるように形成されており、層間絶縁膜42を貫通するコンタクトホール42aを介してドレイン電極6bに導通している。
【0062】
第1電極層5aおよび中継電極5bの上層側にはシリコン酸化膜等の層間絶縁膜44がエッチングストッパー層として形成されており、かかる層間絶縁膜44には、第1電極層5aと重なる領域に開口部44bが形成されている。本形態において、層間絶縁膜44は、テトラエトキシシランと酸素ガスとを用いたプラズマCVD法等により形成したシリコン酸化膜等からなる。ここで、開口部44bは、図4(a)では図示を省略するが、データ線6aと走査線3aとの交差領域を起点として第1画素間領域10gと重なる領域に沿って延在する部分と、データ線6aと走査線3aとの交差領域を起点として第2画素間領域10hと重なる領域に沿って延在する部分とを備えたL字形状に形成されている。
【0063】
層間絶縁膜44の上層側には透光性の誘電体層40が形成されており、かかる誘電体層40の上層側には第2電極層7aが形成されている。第2電極層7aは、導電性のポリシリコン膜、金属シリサイド膜、金属膜あるいは金属膜化合物等の導電膜からなる。本形態において、第2電極層7aは、膜厚が100nm程度のTiN膜からなる。誘電体層40としては、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜等のシリコン化合物を用いることができる他、アルミニウム酸化膜、チタン酸化膜、タンタル酸化膜、ニオブ酸化膜、ハフニウム酸化膜、ランタン酸化膜、ジルコニウム酸化膜等の高誘電率の誘電体層を用いることができる。第2電極層7aは、データ線6aと走査線3aとの交差領域を起点として第1画素間領域10gと重なる領域に沿って延在する部分と、データ線6aと走査線3aとの交差領域を起点として第2画素間領域10hと重なる領域に沿って延在する部分とを備えたL字形状に形成されている。従って、第2電極層7aのうち、第2画素間領域10hと重なる領域に沿って延在する部分は、層間絶縁膜44の開口部44bにおいて、誘電体層40を介して第1電極層5aに重なっている。このようにして、本形態では、第1電極層5a、誘電体層40、および第2電極層7aは、第1画素間領域10gと重なる領域に蓄積容量55を構成している。
【0064】
また、第2電極層7aにおいて、第1画素間領域10gと重なる領域に沿って延在する部分は、中継電極5bと部分的に重なっており、誘電体層40および層間絶縁膜44を貫通するコンタクトホール44aを介して中継電極5bに導通している。
【0065】
第2電極層7aの上層側には透光性の層間絶縁膜45が形成されており、層間絶縁膜45の上層側には、厚さが140nm程度のITO膜等の透光性導電膜からなる画素電極9aが形成されている。画素電極9aは、データ線6aと走査線3aとの交差領域の近傍で第2電極層7aと部分的に重なっており、層間絶縁膜45を貫通するコンタクトホール45aを介して第2電極層7aに導通している。
【0066】
画素電極9aの表面には配向膜19が形成されている。配向膜19は、ポリイミド等の樹脂膜、あるいはシリコン酸化膜等の斜方蒸着膜からなる。本形態において、配向膜19は、SiOX(x<2)、SiO2、TiO2、MgO、Al23、In23、Sb23、Ta25等の斜方蒸着膜からなる無機配向膜(垂直配向膜)である。
【0067】
第2基板20では、石英基板やガラス基板等の透光性の基板本体20wの液晶層50側の表面(第1基板10に対向する側の面)に、ITO膜等の透光性導電膜からなる共通電極21が形成されており、かかる共通電極21を覆うように配向膜29が形成されている。配向膜29は、配向膜19と同様、ポリイミド等の樹脂膜、あるいはシリコン酸化膜等の斜方蒸着膜からなる。本形態において、配向膜29は、SiOX(x<2)、SiO2、TiO2、MgO、Al23、In23、Sb23、Ta25等の斜方蒸着膜からなる無機配向膜(垂直配向膜)である。かかる配向膜19、29は、液晶層50に用いた誘電異方性が負のネマチック液晶化合物を垂直配向させ、液晶パネル100pは、ノーマリブラックのVAモードとして動作する。
【0068】
ここで、第2基板20の基板本体20wには、図5等を参照して以下に説明する溝260を備えた反射部26が構成されており、かかる反射部26に対して第1基板10の側に共通電極21や配向膜29が形成されている。
【0069】
(第2基板20の詳細構成)
図5は、本発明の実施の形態1に係る電気光学装置100の第2基板20に形成した反射部の説明図であり、図5(a)、(b)は、第2基板20の断面図、および反射部の平面構成を示す説明図である。なお、図5(a)では、第1基板10側の配向膜19等の図示を省略してある。
【0070】
図5(a)、(b)に示すように、本形態の電気光学装置100においては、第2基板20の側から入射した光を液晶層50によって画素毎に光変調した後、第1基板10から出射する。このため、入射光を効率よく利用するには、入射光を画素電極9aに向けて効率よく導く必要がある。そこで、本形態では、第2基板20の側から入射した光のうち、画素電極9aの間(画素間領域10f)に向かおうとする光を画素電極9aに向けて反射する反射部26が形成されている。
【0071】
本形態において、反射部26は、第2基板20の基板本体20w(透光性基板)の一方面20s側に、画素電極9aの間(画素間領域10f)に平面視で重なる領域に沿って溝260が格子状に形成されれており、溝260は、画素間領域10fに向けて開口している。本形態において、溝260の相対向する側面261、262は、画素間領域10fに向けて傾斜しており、溝260は断面V字形状を有している。より具体的には、溝260は、側面261、262を一辺とする略二等辺三角形形状の断面を有しており、三角形形状の頂点は、画素間領域10fの幅方向の中心に位置している。また、溝260の幅寸法(三角形形状の底辺の長さ)は、画素間領域10fの幅寸法と略同一寸法、あるいはやや幅広に設定されている。
【0072】
本形態において、溝260の開口部265は、基板本体20wの一方面20s側に形成された金属膜27で塞がれている。このため、溝260は中空になっており、溝260の内部は真空あるいは空気層になっている。本形態において、溝260の内部は真空になっている。本形態において、金属膜27は、アルミニウムやアルミニウム合金等のアルミニウム系金属膜であり、かかるアルミニウム系金属膜は、融点が比較的、低いとともに、反射性を有している。
【0073】
本形態において、金属膜27は、溝260の開口部265側で溝260の一部を埋めるようにして開口部265を塞いでいるが、溝260の外部には形成されていない。また、金属膜27の表面270(第1基板10が位置する側の面)は、基板本体20wの一方面20sより溝260の側に凹んだ凹面になっている。
【0074】
また、金属膜27の表面270の側には、基板本体20wの一方面20sの全体にわたって、シリコン酸化膜からなる絶縁膜28が形成されており、本形態では、絶縁膜28の表面280は平坦面である。このため、共通電極21および配向膜29は、絶縁膜28の平坦な面に形成されている。
【0075】
このように構成した溝260において、金属膜27は、溝260の開口部265側で溝260の一部を埋めるようにして開口部265を塞いでいるが、溝260の内部深くまでは形成されていない。このため、溝260の内部は中空状態(真空状態)にある。従って、溝260の内部の媒質(真空)の屈折率と、基板本体20wの媒質(ガラス等)の屈折率とを比較すると、以下の関係
溝260内部の屈折率<基板本体20wの屈折率
にある。このため、溝260の側面261、262は反射面として機能する。また、基板本体20wの屈折率をn11とし、溝260内部の屈折率をn12とし、側面261、262の法線に対する光の入射角度をθ1とした場合、n11>n12であって、かつ、n11、n12、θ1が以下の式
sinθ1>n12/n11
を満たせば、側面261、262では全反射が起こる。ここで、溝260の内部は真空状態であるため、n12が極めて小さい。それ故、側面261、262では広い角度範囲にわたって全反射が起こる。
【0076】
また、本形態では、金属膜27は、溝260の開口部265側で溝260の一部を埋めており、側面261、262の一部は金属膜27と接している。それでも、本形態では、金属膜27が反射性金属膜からなるため、側面261、262のうち、金属膜27と接している部分でも全反射が起こる。それ故、本形態によれば、反射部26での反射効率が高い。
【0077】
(反射部26の作用効果)
このように構成した電気光学装置100では、図1を参照して説明した光源部130からは様々な入射角度の光が入射し、かかる入射光のうち、画素電極9aに向かう光は、矢印L1で示すように、そのまま進行する。また、矢印L2で示すように、画素電極9aから外れた方向(画素間領域10fに向かう方向)に向かう光については、矢印L3で示すように、溝260の側面261、262で反射させ、画素電極9aに向かわせる。
【0078】
ここで、溝260は、側面261、262を一辺とする略二等辺三角形形状の断面を有しており、三角形形状の頂点は、画素間領域10fの幅方向の中心に位置している。また、溝260の幅寸法は、画素間領域10fの幅寸法と略同一寸法、あるいはやや幅広に設定されている。このため、画素電極9aから大きく外れた方向に向かう光についても画素電極9aに向けて反射し、有効に利用することができる。なお、側面261、262の傾きについては、例えば、基板本体20wの基板面に対する法線となす角度が10°以下、さらには3°以下になるように設定される。かかる構成によれば、側面261、262で光を反射した際、光線角度の増大を低減しながら入射光を偏向することができるとともに、入射光を、例えば、Fナンバーが2.5である投射光学系(図1参照)で十分取り込むことが可能な光線角度の光に変換することができる。それ故、コントラストの向上および投射画像の明るさの向上を図ることができる。
【0079】
(第2基板20の製造方法)
図6を参照して、電気光学装置100の製造工程のうち、反射部26を製造する工程を説明する。図6は、本発明の実施の形態1に係る電気光学装置100の製造方法を示す説明図である。なお、図6では、図5とは反対に第2基板20の一方面20sを上向きに表してある。また、以下に説明する工程以外の工程、例えば、第1基板10の製造工程や第1基板10と第2基板20との貼り合わせ工程等については周知の方法を採用することができるので、それらの説明を省略する。
【0080】
本形態の第2基板20を製造するには、図6(a)に示す溝形成工程において、まず、基板本体20wの一方面20sに、フォトリソグラフィ技術を利用して、厚さが5〜10μmのマスク269を形成する。本形態において、マスク269は、チタンやチタン化合物の金属材料からなるハードマスクである。
【0081】
次に、基板本体20wに対してドライエッチングを行なう。かかるドライエッチングには、高密度プラズマを形成可能なICP(ICP-RIE/Inductive Coupled Plasma-RIE)ドライエッチング装置を用い、基板本体20wとマスクとのエッチング選択比を例えば4以上:1とする。その結果、マスク269の厚みに対して4倍以上の深さを有する断面V字形状の溝260が形成される。本形態において、溝260の深さは25μm程度である。かかる溝260において、側面261、262は斜面になっている。かかる工程では、エッチングガスとして、フッ素系ガスに酸素や一酸化炭素等を混合したガスを用いる。
【0082】
次に、図6(b)に示す金属膜成膜工程において、スパッタ法等により、基板本体20wの一方面20sの全面に金属膜27を成膜する。本形態では、金属膜27としてアルミニウム系金属膜を形成する。かかる成膜の際、金属膜27は、基板本体20wの一方面20s上に堆積していく一方、溝260と重なる領域では、溝260の開口縁から内側に張り出すように金属膜27が形成される。このため、金属膜27は、溝260の内部の奥深くまでは形成されない。また、金属膜27が溝260の開口縁から内側に張り出すように形成されたとしても、金属膜27において、溝260の開口部265と重なる領域には開口部275が発生する。従って、金属膜27を形成しただけでは、溝260の開口部265を塞いだ状態には至らない。
【0083】
次に、図6(c)に示す加熱工程では、金属膜27を加熱により溶融させて金属膜27の開口部275(図6(b)参照)を塞ぐ。その結果、溝260の開口部265は金属膜27によって塞がれた状態となり、溝260の内部は中空とする。本形態では、金属膜27がアルミニウム系金属膜からなるため、加熱温度は、650〜700℃である。
【0084】
ここで、加熱工程を空気中で行えば、溝260の内部は空気層となる。これに対して、加熱工程を真空雰囲気中で行えば、溝260の内部は真空状態となる。本形態では、加熱工程を真空雰囲気中で行う。
【0085】
次に、図6(d)に示す金属膜除去工程では、金属膜27のうち、溝260の外部に形成されている部分を除去する一方、溝260の内部で開口部265を塞ぐ部分を残す。従って、溝260の開口部265は金属膜27によって塞がれた状態のままであり、溝260の内部は中空状態にある。本形態では、塩素を含むエッチングガスを用いて反応性イオンエッチングを行う。その結果、金属膜27の表面270は、基板本体20wの一方面20sより溝260の側に凹んだ凹面になる。
【0086】
しかる後には、図5(a)に示すように、金属膜27の表面270の側にシリコン酸化膜からなる絶縁膜28、共通電極21および配向膜29を順次形成し、第2基板20を得る。その際、絶縁膜28の表面280を平坦化すれば、共通電極21および配向膜29を平坦面上に形成することができる。かかる平坦化には、化学機械研磨を利用することができる。この化学機械研磨では、研磨液に含まれる化学成分の作用と、研磨剤と第2基板20(基板本体20w)との相対移動によって、高速で平滑な研磨面を得ることができる。より具体的には、研磨装置において、不織布、発泡ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂等からなる研磨布(パッド)を貼り付けた定盤と、第2基板20を保持するホルダとを相対回転させながら、研磨を行なう。その際、例えば、平均粒径が0.01〜20μmの酸化セリウム粒子、分散剤としてのアクリル酸エステル誘導体、および水を含む研磨剤を研磨布と第2基板20との間に供給する。
【0087】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の電気光学装置100では、第2基板20に溝260を形成した後、第2基板20に封止膜として金属膜27を形成する。この時点では、金属膜27において溝260の開口部265と重なる領域に開口部275が形成されているが、金属膜27を加熱して溶融させると、金属膜27の開口部275が塞がれ、その結果、溝260の開口部265が金属膜27によって塞がれ、溝は260の内部は中空となる。その結果、中空の溝260の側面261、262は、溝260内の媒質(空気や真空)と第2基板20の媒質との屈折率の差に起因する反射面となる。従って、第2基板20において、画素電極9aの間(画素間領域10f)に向かおうとする光を溝260の側面261、262で反射し、画素電極9aに向かわせることができるので、表示等に寄与する光の比率が高い。また、溝260の開口部265を塞ぐにあたって、本形態では、金属膜27を利用するため、カバーガラスを接着して開口部を塞ぐ場合と比較して、生産性が高い。また、溝260の開口部265を金属膜27で塞いだ後、溝260の外部の金属膜27を除去するので、第2基板20から入射した光は、溝260の外部の金属膜27によって画素電極9aに向けて進行するのを妨げられることがない。
【0088】
また、本形態において、金属膜27は反射性金属膜である。このため、金属膜27と溝260の側面261、262とが接している部分も反射面となるので、金属膜27と溝260の側面261、262とが接している部分の面積の大小にかかわらず、画素間領域10fに向かおうとする光を溝260の側面261、262で反射し、画素電極9aに効率よく向かわせることができる。また、金属膜27は、アルミニウム系金属膜であり、アルミニウム系金属膜であれば、比較的、低い温度で溶融させることができるという利点がある。
【0089】
また、本形態において、溝260は、側面261、262が画素間領域10fに向けて傾斜した断面V字形状を有している。このため、画素間領域10fに向かおうとする光を溝260の側面261、262で反射し、画素電極9aに効率よく向かわせることができる。また、溝260は、内部が真空状態にあるため、側面261、262を反射率の高い反射面とすることができる。それ故、表示光の光量が大であるので、明るい画像を表示することができる。さらに、溝260の内部が真空状態にある構成であれば、金属膜27の溶融を真空雰囲気中で行えば実現できるという利点がある。また、本形態では、金属膜27の溶融を真空雰囲気中で行うため、金属膜27としてのアルミニウム系金属膜が酸化することを防止できる。それ故、溝260の側面261、262のうち、金属膜27と接している部分の反射率が酸化によって低下することを防止することができる。
【0090】
[実施の形態2]
図7は、本発明の実施の形態2に係る電気光学装置100の第2基板20に形成した反射部の説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示し、それらの説明を省略する。
【0091】
実施の形態1では、金属膜27の表面270は、基板本体20wの一方面20sより溝260の側に凹んだ凹面になっていたが、本形態では、図7に示すように、金属膜27の表面270は、基板本体10wの一方面10sと連続した平面を形成している。このため、絶縁膜28の表面280は、平坦化の処理を行わなくても平坦面になっている。従って、共通電極21および配向膜29を平坦面上に形成することができる。また、絶縁膜28を形成せずに、金属膜27の表面270と基板本体20wの一方面20sとが形成する連続した平面に対して直接、共通電極21および配向膜29を形成してもよい。
【0092】
かかる構成は、図6(d)を参照して説明した金属膜除去工程において、金属膜27のうち、溝260の外部に形成されている部分を除去する一方、溝260の内部で開口部265を塞ぐ部分を残す際、金属膜27に化学機械研磨等の研磨を行うことによって実現することができる。
【0093】
[他の実施の形態]
上記実施の形態1、2では、第1基板10および画素電極9aが透光性を有している場合であったが、画素電極9aを反射性金属膜から構成した反射型の電気光学装置100に本発明を適用してもよい。
【0094】
上記実施の形態1、2では、溝260の内部が真空であったが、空気等が充填されている構成であってもよい。
【0095】
図1には、ライトバルブを3枚用いた投射型表示装置110を例示したが、電気光学装置100がカラーフィルターを内蔵している場合や、各色の光が順次、一枚の電気光学装置100に入射するような投射型表示装置に用いる電気光学装置100に本発明を適用してもよい。
【0096】
また、上記形態では、電気光学装置として、投射型表示装置に用いる透過型の電気光学装置100を例示したが、バックライト装置から出射された光を入射光として画像を表示する直視型の電気光学装置100に本発明を適用してもよい。
【0097】
さらに、上記形態では、電気光学装置100として液晶装置を例に説明したが、電気泳動型表示装置において、表示光量の増大を図ることを目的に反射部26(溝260)を形成する場合に本発明を適用してもよい。また、有機エレクトロルミネッセンス装置のように、自発光素子から出射された変調光によって画像表示面で画像を表示する電気光学装置において混色等を防止することを目的に反射部26を形成する場合に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0098】
9a・・画素電極、10・・第1基板、10f・・画素間領域(画素電極の間)、20・・第2基板、20w・・基板本体(透光性基板)、26・・反射部、27・・金属膜、30・・画素トランジスター(スイッチング素子)、50・・液晶層(電気光学物質層)、100・・電気光学装置、260・・溝、261、262・・側面、265・・溝の開口部、275・・金属膜の開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素電極および該複数の画素電極の各々に対応するスイッチング素子が設けられた第1基板と、
該第1基板に対向配置された透光性の第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に設けられた電気光学物質層と、
を有し、
前記第2基板の前記第1基板側の基板面側には、前記複数の画素電極において隣り合う画素電極の間に開口部を向ける溝と、該溝の内部で前記開口部を塞いで当該溝の内部を中空状態にする金属膜と、が設けられていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記金属膜は、反射性金属膜であることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記反射性金属膜は、アルミニウム系金属膜であることを特徴とする請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記金属膜の前記第1基板側の面は、前記基板面から前記溝の内部に向けて凹んでいることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記金属膜の前記第1基板側の面は、前記基板面と連続した平面を形成していることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記溝は、側面が前記隣り合う画素電極の間に向けて傾斜した断面V字形状を有していることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記溝は、内部が真空であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の電気光学装置。
【請求項8】
前記画素電極および前記第1基板は、透光性を有していることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の電気光学装置。
【請求項9】
複数の画素電極および該複数の画素電極の各々に対応するスイッチング素子が設けられた第1基板と、該第1基板に対向配置された透光性の第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に設けられた電気光学物質層と、を有する電気光学装置の製造方法であって、
前記第2基板の前記第1基板側の基板面に、前記複数の画素電極において隣り合う画素電極の間に開口部を向ける溝を形成する溝形成工程と、
前記基板面に金属膜を成膜する金属膜成膜工程と、
前記金属膜を加熱により溶融させて当該金属膜によって前記溝の開口部を塞いで前記溝の内部を中空とする加熱工程と、
前記金属膜のうち、前記溝の外部に形成されている部分を除去する一方、前記溝の内部で前記開口部を塞ぐ部分を残す金属膜除去工程と、
を有することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の電気光学装置を用いた投射型表示装置であって、
前記第1基板の側から前記電気光学装置に入射する光を出射する光源部と、前記電気光学装置によって変調された光を投射する投射光学系と、を有していることを特徴とする投射型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−25073(P2013−25073A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159623(P2011−159623)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】