説明

電気光学装置の製造方法、及び電気光学装置の製造装置

【課題】電気光学装置を破壊することなく所望の厚みに形成することができる電気光学装置の製造方法、電気光学装置の製造装置を提供する。
【解決手段】一対の基板を貼り合わせて有機ELパネルを形成する工程(ステップS13)と、有機ELパネルにおけるエッチング処理を施す面の表面積及び有機ELパネルの重量を求める工程(ステップS14)と、一対の基板の少なくとも一方の基板にエッチング処理を施して有機ELパネルの厚みを薄くする工程(ステップS15)と、有機ELパネルを洗浄及び乾燥させる工程(ステップS16)と、エッチング処理後の有機ELパネルの重量を求める工程(ステップS17)と、重量の測定差からエッチング処理後の有機ELパネルの厚みを求める工程(ステップS18)と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置に薄型加工処理を施す電気光学装置の製造方法、及び電気光学装置の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記電気光学装置の一つとして、有機EL(エレクトロルミネッセンス)装置がある。有機EL装置は、陽極と陰極との間に発光材料からなる発光層が挟持された構造を有している。有機EL装置の製造方法としては、例えば、特許文献1や特許文献2に記載のように、有機EL装置を構成する基板の外面(露出している面)にエッチング処理を行い、有機EL装置を薄型化している。
【0003】
エッチング処理を行った後、所望のエッチング量(厚み)に到達したか否かを、有機EL装置の厚みを測定することで行っている。厚みを測定する方法としては、接触式のマイクロメーターを用いている。有機EL装置が所望の厚みに到達しない場合は、再度エッチング処理から厚み測定までを繰り返し行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3741708号公報
【特許文献2】特許第3824626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、接触式のマイクロメーターでの測定は、有機EL装置を挟むことで厚み値が得られる。つまり、有機EL装置とマイクロメーターとが接触するため、有機EL装置を破壊する恐れがあるという課題がある。加えて、マイクロメーターで測定した場合、有機EL装置を挟み込んで測定するため、有機EL装置が変形する恐れがあるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係る電気光学装置の製造方法は、一対の基板を有する電気光学パネルの重量を求める第1測定工程と、前記一対の基板の少なくとも一方の基板に薄型加工処理を施して前記電気光学パネルの厚みを薄くする薄型加工処理工程と、前記薄型加工処理後の前記電気光学パネルの重量を求める第2測定工程と、前記第1測定工程と前記第2測定工程との重量差から前記薄型加工処理後の前記電気光学パネルの厚みを求める演算工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
この方法によれば、薄型加工処理前の電気光学パネルの重量と、薄型加工処理後の電気光学パネルの重量との差分から、薄型加工処理された分の重量を求めることが可能となる。更に、薄型加工処理された分の重量と、基板の密度と、基板(電気光学パネル)の表面積とから薄型加工処理された厚みを求めることができる。よって、薄型加工処理後の電気光学パネルの厚みを正確に求めることができる。加えて、電気光学パネルを接触式の計測器で挟んで厚みを測定する方法と比較して、電気光学パネルが破壊されることを防ぐことができる。更に、電気光学パネルを接触式の計測器で挟んで測定した際の電気光学パネルが変形することを防ぐことができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例に係る電気光学装置の製造方法において、前記電気光学パネルの厚みが所望の厚みになるまで、前記薄型加工処理工程から前記演算工程までを繰り返し行うことが好ましい。
【0010】
この方法によれば、所望の厚みになるまで電気光学パネルに薄型加工処理を施し重量を測定し、その結果、電気光学パネルの厚みを求めるので、品質的にばらつきの少ない電気光学装置を提供することができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例に係る電気光学装置の製造方法において、前記薄型加工処理は、エッチング処理であることが好ましい。
【0012】
この方法によれば、エッチング処理を用いて電気光学パネルを薄くするので、機械式の研磨処理方法等と比較して、電気光学パネルに応力がかかることを抑えることができる。よって、電気光学パネルが変形することを抑えることができる。
【0013】
[適用例4]上記適用例に係る電気光学装置の製造方法において、前記エッチング処理は、エッチング液を前記少なくとも一方の基板に吹き付けるようにしてもよい。
【0014】
この方法によれば、少なくとも一方の基板にエッチング液を吹き付けてエッチング処理を行うので、電気光学パネルを薄くすることができる。
【0015】
[適用例5]本適用例に係る電気光学装置の製造装置は、一対の基板を有する電気光学パネルを搬送する搬送機構と、前記電気光学パネルの重量を測定する第1測定部と、前記一対の基板の少なくとも一方の基板に薄型加工処理を施す薄型加工処理部と、前記薄型加工処理が施された前記電気光学パネルの重量を測定する第2測定部と、前記第1測定部と前記第2測定部とにより得られた重量差から前記電気光学パネルの厚みを求める演算部と、を有することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、第1測定部で測定した薄型加工処理前の電気光学パネルの重量と、第2測定部で測定した薄型加工処理後の電気光学パネルの重量とを基に、演算部で電気光学パネルの重量差と、基板の密度と、基板(電気光学パネル)の表面積とから薄型加工処理された電気光学パネルの厚みを求めることが可能となる。よって、電気光学パネルを接触式の計測器で挟んで厚みを測定する方法と比較して、電気光学パネルが破壊されることを防ぐことができる。更に、電気光学パネルを接触式の計測器で挟んで測定した際の電気光学パネルが変形することを防ぐことが可能な製造装置を提供できる。
【0017】
[適用例6]上記適用例に係る電気光学装置の製造装置において、前記搬送機構は、前記薄型加工処理された前記電気光学パネルが所望の厚みになるまで、少なくとも前記薄型加工処理部と前記第2測定部との間において前記電気光学パネルの搬送を繰り返すことが好ましい。
【0018】
この構成によれば、搬送機構によって、複数回の薄型加工処理と電気光学パネルの重量測定を行うことができるので、電気光学パネルの厚みを所望の厚みに近づけることができると共に、電気光学パネルの厚みをばらつきの少ない厚みに形成することができる。
【0019】
[適用例7]上記適用例に係る電気光学装置の製造装置において、前記薄型加工処理部は、前記電気光学パネルにエッチング処理を施すエッチング処理部であることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、エッチング処理部で電気光学パネルにエッチング処理を施すので、機械式の研磨処理等と比較して、電気光学パネルに応力がかかることを抑えることができる。よって、電気光学パネルが変形することを抑えることができる。
【0021】
[適用例8]上記適用例に係る電気光学装置の製造装置において、前記エッチング処理部は、前記少なくとも一方の基板にエッチング液を吹き付けるようにしてもよい。
【0022】
この構成によれば、少なくとも一方の基板にエッチング液を吹き付けてエッチング処理を行うので、電気光学パネルを薄くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】有機EL装置の構成を示す等価回路図。
【図2】有機EL装置の構成を示す模式平面図。
【図3】有機EL装置の構造を示す模式断面図。
【図4】有機EL装置に薄型加工処理を施すエッチング装置の構造を示す模式図。
【図5】エッチング装置のうちエッチング室の構成を模式的に示す斜視図。
【図6】有機EL装置の製造方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<有機EL装置の構成>
図1は、電気光学装置としての有機EL装置の電気的な構成を示す等価回路図である。以下、有機EL装置の構成を、図1を参照しながら説明する。なお、以下参照する各図面において構成をわかりやすく示すため、各構成要素の層厚や寸法の比率、角度等は適宜異ならせてある。また、本実施形態の有機EL装置は、トップエミッション構造でもよいし、ボトムエミッション構造でも適用可能である。
【0025】
図1に示すように、有機EL装置11は、複数の走査線12と、走査線12に対して交差する方向に延びる複数の信号線13と、信号線13に並行に延びる複数の電源線14とを有している。そして、格子状に配置された走査線12と信号線13とにより区画された領域が画素領域として構成されている。また、複数の信号線13が接続された信号線駆動回路15と、複数の走査線12が接続された走査線駆動回路16とを有している。
【0026】
各画素領域には、走査線12を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT(Thin Film Transistor)21と、このスイッチング用TFT21を介して信号線13から供給される画素信号を保持する保持容量22と、保持容量22によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT23(以下、「TFT素子23」と称する。)とが設けられている。更に、各画素領域には、TFT素子23を介して電源線14に電気的に接続したときに、電源線14から駆動電流が流れ込む陽極24と、陰極25と、この陽極24と陰極25との間に挟持された機能層26とが設けられている。
【0027】
有機EL装置11は、陽極24と陰極25と機能層26とにより構成される発光素子27を複数備えている。また、有機EL装置11は、複数の発光素子27で構成される表示領域を備えている。
【0028】
この構成によれば、走査線12が駆動されてスイッチング用TFT21がオン状態になると、そのときの信号線13の電位が保持容量22に保持され、保持容量22の状態に応じて、TFT素子23のオン・オフ状態が決まる。そして、TFT素子23のチャネルを介して、電源線14から陽極24に電流が流れ、更に、機能層26を介して陰極25に電流が流れる。機能層26は、ここを流れる電流量に応じた輝度で発光する。
【0029】
図2は、有機EL装置の構成を示す模式平面図である。以下、有機EL装置の構成を、図2を参照しながら説明する。
【0030】
図2に示すように、有機EL装置11は、ガラス等からなる基板31に表示領域32(図中一点鎖線の内側の領域)と非表示領域33(一点鎖線の外側の領域)とを有する構成になっている。表示領域32には、実表示領域32a(二点鎖線の内側の領域)とダミー領域32b(図中二点鎖線の外側の領域)とが設けられている。
【0031】
実表示領域32a内には、光が射出されるサブ画素34(発光領域)がマトリックス状に配列されている。この、サブ画素34は、スイッチング用TFT21及びTFT素子23(図1参照)の動作に伴って、R(赤)、G(緑)、B(青)を発光する構成となっている。
【0032】
ダミー領域32bには、主として各サブ画素34を発光させるための回路が設けられている。例えば、実表示領域32aの図中左辺及び右辺に沿うように走査線駆動回路16が配置されており、実表示領域32aの図中上辺に沿うように検査回路35が配置されている。
【0033】
図2における基板31の下辺には、フレキシブル基板36が設けられている。フレキシブル基板36には、各配線と接続された駆動用IC37が備えられている。また、図示しないが、駆動用IC37は、信号線駆動回路15とも接続されている。
【0034】
図3は、有機EL装置の構造を示す模式断面図である。以下、有機EL装置の構造を、図3を参照しながら説明する。なお、図3は、各構成要素の断面的な位置関係を示すものであり、明示可能な尺度で表されている。
【0035】
図3に示すように、有機EL装置11は、素子基板41と、素子基板41に接着剤57を介して貼り合わされたカラーフィルター基板42とを有している。
【0036】
素子基板41は、基板31上に、反射層43、絶縁層44、陽極24、正孔輸送層46、有機発光層47、電子輸送層48、陰極51、薄膜封止層52がこの順に積層されている。また、カラーフィルター基板42は、基板61と、遮光層53及び色要素54を含むカラーフィルター55とを有する。
【0037】
有機EL装置11は、有機発光層47において発光した光を基板61側から取り出す構成のいわゆるトップエミッション型の発光装置である。観察者は、基板61側から表示を観察する。上記のうち、サブ画素34毎に形成された、反射層43から陰極51までの構成要素からなる素子が、発光素子27に相当する。
【0038】
基板31は、ガラス基板や石英基板等の上に公知の技術を用いてTFT(Thin Film Transistor)素子21,23や各種配線(TFT素子を駆動するための信号線、走査線等)、絶縁膜等が形成された、いわゆるTFT素子基板である。
【0039】
反射層43は、アルミニウム又は銀等から構成することができる。陽極24は、反射層43上に、反射層43との短絡を防止するためのSiN等からなる絶縁層44を挟んで配置された、ITO(Indium Tin Oxide)からなる透明電極である。
【0040】
陽極24は、各サブ画素34(34R,34G,34B)に一つずつ配置されており、それぞれの陽極24は、基板31に含まれるTFT素子21,23を介して、信号線(図示せず)に接続されている。陰極51は、マグネシウムと銀の合金を薄く形成してハーフミラー状としたものであり、光反射性及び光透過性を兼ね備えている。
【0041】
陽極24と陰極51との間には、正孔輸送層46、有機発光層47、電子輸送層48がこの順に積層されている。有機発光層47は、エレクトロルミネッセンス現象を発現する有機発光物質の層である。陽極24と陰極51との間に電圧を印加することによって、有機発光層47には、正孔輸送層46から正孔が、また、電子輸送層48から電子が注入され、有機発光層47においてこれらが再結合したときに発光が行われる。
【0042】
有機発光層47からの光は、一部は直接陰極51を透過し、一部は反射層43によって反射されてから陰極51を透過する。いずれにせよ、有機発光層47からの光は、陰極51を透過し、その後薄膜封止層52、接着剤57、色要素54、基板61を順に透過する。
【0043】
ここで、反射層43及び陰極51は、いわゆる光共振器を構成している。このため、有機発光層47において発せられた光は、反射層43と陰極51との間を往復し、共振波長の光だけが基板61側から取り出される。よって、ピーク強度が高く幅が狭いスペクトルを有する光を取り出すことができ、有機EL装置11による発光の色再現性を向上させることができる。
【0044】
上記共振波長は、光共振器の長さを変えることによって調整可能である。有機EL装置11においては、陽極24の厚さを変えることによって光共振器の長さを調整している。より詳細には、サブ画素34R,34G,34Bにおいてこの順に陽極24を薄くしていく構成により、光共振器の長さ、及び共振波長がこの順に長くなるようになっている。具体的には、サブ画素34R,34G,34Bにおける陽極24の厚さはそれぞれ90nm,50nm,20nmとなっている。これにより、共振波長は、サブ画素34Rにおいては赤色、サブ画素34Gにおいては緑色、サブ画素34Bにおいては青色に相当する波長に設定される。この結果、陰極51からは、共振波長に応じて赤、緑、または青の光が選択的に射出される。
【0045】
陰極51を覆って形成された薄膜封止層52は、SiON等からなる透光性を有する部材であり、発光素子27を保護するとともに、光共振器の形成のためにできた陰極51の段差を埋めて平滑にする役割を果たす。
【0046】
また、基板61としては、透光性を有するガラス基板等が挙げられる。なお、基板31及び基板61の外面(それぞれ露出している側の面)は、薄型加工処理としてのエッチング処理等が施されている。
【0047】
基板61上に形成された色要素54は、上記したように、入射した光のうちの特定の波長成分を吸収することによって、特定色の透過光を得るための部材である。色要素54を配置することによって、有機EL装置11から取り出される光の色純度が向上するとともに、視野角による色の変化を抑えることができ、かつ外光の反射をある程度抑えることができる。色要素54は、エポキシ樹脂からなる接着剤57を介して薄膜封止層52と対向している。
【0048】
色要素54を区画する遮光層53は、上述したようにカラーフィルター55の一部を構成する。遮光層53は、光をほとんど透過させない樹脂であり、各サブ画素34間の表示の混色を防止する役割を果たす。遮光層53は、色要素54と同様に、フォトリソグラフィー法等によって形成される。
【0049】
カラーフィルター55は、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のそれぞれに対応する色要素54R,54G,54Bと、遮光層53(ブラックマトリックス)とを有する。なお、カラーフィルター55は、遮光層53を含めない構成としてもよい。なお、この後の説明において、有機EL装置11にフレキシブル基板36が備えられていないものを電気光学パネルとしての有機ELパネル11aとして説明する。
【0050】
<有機ELパネルの製造装置>
図4は、有機ELパネルに薄型加工処理(エッチング処理)を施す電気光学装置の製造装置としてのエッチング装置の構造を示す模式図である。図5は、エッチング装置のうちエッチング室の構成を模式的に示す斜視図である。以下、エッチング装置の構造を、図4及び図5を参照しながら説明する。
【0051】
エッチング装置71は、第1測定部としての第1測定室72と、薄型加工処理部(エッチング処理部)としてのエッチング室73と、洗浄室74と、乾燥室75と、第2測定部としての第2測定室76とが互いに隣接して直線的に配置されている。
【0052】
第1測定室72は、有機ELパネル11aの外形寸法測定及び重量測定が行われる。具体的には、外形寸法は、有機ELパネル11a(基板31,61)エッチング面の縦寸法、横寸法を計測する。つまり、エッチング面の表面積を測定する。外形寸法を測定する方法としては、例えば、非接触式の外形測定器等を用いることができる。ガラス基板(基板31,61)の密度は、2.5g/cm3で計算するものとする。
【0053】
重量測定は、有機ELパネル11a全体の重量を測定する。重量を測定する方法としては、例えば、電子天秤等が挙げられる。これにより、有機ELパネル11a(基板31,61)の重量を求めることが可能となり、重量変化を確認することにより、ガラス基板のエッチング量を求めることができる。
【0054】
なお、第1測定室72には、外部からエッチング装置71の中に有機ELパネル11aを搬入するための搬入口72aが設けられている。また、エッチング装置71には、有機ELパネル11aを、外部からエッチング装置71の中に搬入したり、エッチング装置71内を搬送したりするための搬送機構77が備えられている。また、有機ELパネル11aは、例えば、立てられて搬送されている。つまり、有機ELパネル11aにおけるエッチング面と、エッチング装置71内の側面とが向き合うようにして搬送されている。
【0055】
エッチング室73は、有機ELパネル11aを構成する一対のガラス基板(基板31、基板61)の厚みを薄くするためにエッチング処理が行われる。具体的には、上記したように、基板31及び基板61の外面(露出している側の面)にエッチング処理を施すことによって有機ELパネル11aの厚みを所望の厚みにする。処理後の有機ELパネル11aの厚みとしては、例えば、80μm程度である。
【0056】
より詳述すると、図5に示すように、エッチング室73には、エッチング室73に搬送された有機ELパネル11aを構成する基板31及び基板61に向けてエッチング処理液81を吹きつける吐出部82が設けられている。吐出部82には、基板の面全体に亘って均一に吐出できるように、例えば、複数のノズル83が設けられている。ノズル83には、エッチング処理液81を噴射する複数の噴射孔84が設けられている。エッチング処理液81としては、例えば、フッ酸等が挙げられる。
【0057】
基板31及び基板61の外面は、吐出部に対して有機ELパネル11aが相対的に移動することによりエッチング処理が行われる。このエッチング処理は、例えば、化学的な作用と物理的な作用とを行うことが可能となっている。化学的な作用としては、ガラス基板の外面の材料をフッ酸により溶出する。物理的な作用としては、フッ酸をガラス基板の外面に対し吹き付ける衝撃を利用している。
【0058】
洗浄室74は、エッチング処理が終了した有機ELパネル11aを洗浄するために用いられる。洗浄液は、例えば水である。洗浄する対象物としては、エッチング処理液(フッ酸)等である。
【0059】
乾燥室75は、洗浄が終了した有機ELパネル11aから洗浄液などを除去して有機ELパネル11aを乾燥させるために用いられる。乾燥方法は、例えば、エアーシャワーである。
【0060】
第2測定室76は、エッチング処理後の有機ELパネル11aの重量が測定される。有機ELパネル11aの重量を測定する方法としては、例えば、前述した電子天秤等が挙げられる。なお、第2測定室76には、エッチング装置71から外部に有機ELパネル11aを搬出するための搬出口76aが設けられている。
【0061】
また、第2測定室76には、演算部78が備えられている。演算部78は、第1測定室72で計測された有機ELパネル11aの重量と、第2測定室76で計測された有機ELパネル11aの重量とから、重量の変化を求めることが可能となっている。つまり、エッチング処理前の有機ELパネル11aの重量からエッチング処理後の有機ELパネル11aの重量を引いた重量が、エッチングされた重量となる。
【0062】
また、演算部78は、エッチングされた重量から、エッチングされた基板31(61)の厚みを求めることが可能となっている。一方の基板31のみをエッチングする場合、求める演算式としては、「重量変化量÷基板31の密度(2.5g/cm3)÷基板31の表面積」で求めることができる。これにより、有機ELパネル11aが所望の厚みにエッチングされたか否かを求めることができる。なお、大きさの異なる基板31,61を同時にエッチングする場合、エッチングされた厚みを求める計算式としては、「重量変化量÷密度÷((基板31の表面積)+(基板61の表面積))÷2」で求めることができる。
【0063】
更に、演算部78は、エッチング処理後の有機ELパネル11aの厚みが所望の値でなかった場合、有機ELパネル11aの厚みが所望の厚みになるためのエッチング時間を求めることが可能となっている。そして、搬送機構77によって有機ELパネル11aがエッチング室73に戻され、再度、エッチング処理が施される。そして、洗浄室74、乾燥室75、第2測定室76での処理を繰り返すことにより、有機ELパネル11aを所望の厚みに仕上げる。
【0064】
<有機EL装置の製造方法>
図6は、有機ELパネルの製造方法を示すフローチャートである。以下、有機EL装置の製造方法を、図6を参照しながら説明する。なお、各種配線や電極、駆動用TFT等を形成する製造工程については、周知の工程と同様なので、ここではそれらの説明を省略又は簡略化し、これ以降の工程について詳しく説明する。
【0065】
まず、ステップS11では、素子基板41を形成する。具体的には、基板31上に、公知の成膜技術を用いて、反射層43、絶縁層44、陽極24、正孔輸送層46、有機発光層47、電子輸送層48、陰極51、薄膜封止層52を順に形成する。
【0066】
ステップS12では、カラーフィルター基板42を形成する。具体的には、基板61上に、公知の成膜技術を用いて、遮光層53及び色要素54(54R,54G,54B)を含むカラーフィルター55を形成する。
【0067】
ステップS13(電気光学パネル形成工程)では、素子基板41とカラーフィルター基板42とを貼り合わせて、有機ELパネル11aを完成させる。具体的には、大気を遮断した窒素雰囲気内において、接着剤57を用いて貼り合わせ、有機ELパネル11aを完成させる。以下、有機ELパネル11aを構成する基板31及び基板61にエッチング処理を施して、有機ELパネル11aを薄くする方法について説明する。
【0068】
ステップS14(第1測定工程)では、有機ELパネル11aの外形寸法測定と重量測定を行う。具体的には、有機ELパネル11aを構成する一対の基板(基板31、基板61)の外面(露出面)をエッチングによって薄くするために、基板の縦寸法、横寸法を測定する。なお、有機ELパネル11aの形状は、矩形状である。つまり、ここでは有機ELパネル11a(基板31、基板61)の表面積を求めている。
【0069】
縦寸法、横寸法を測定する方法としては、上記したように、例えば、非接触式の外形測定器が挙げられる。また、有機ELパネル11aの総重量も測定する。総重量を求める方法としては、例えば、電子天秤等が挙げられる。一対の基板を構成するガラス基板の重量は、2.5g/1cm3である。これにより、一対の基板31,61(有機ELパネル11a)の重量を求めることができる。一対の基板(基板31、基板61)の総厚みは、例えば、1mmである。
【0070】
ステップS15(薄型加工処理工程)では、有機ELパネル11aにエッチング処理を施す。具体的には、エッチング装置71の吐出部(図示せず)を通過させることにより、一対の基板31,61の外面にエッチング液が吹き付けられる。エッチング液としては、例えば、フッ酸などが挙げられる。一対の基板31,61にエッチング液を吹き付ける時間は、エッチング量に応じて変わる。所望の有機ELパネル11aの厚みは、例えば、80μmである。よって、最初の厚みの狙い値としては、例えば、100μmである。
【0071】
ステップS16(洗浄乾燥工程)では、有機ELパネル11aを洗浄及び乾燥させる。具体的には、エッチング等で汚れた有機ELパネル11aを洗浄及び乾燥させる。洗浄液としては、例えば、水が挙げられる。乾燥方法としては、例えば、エアーシャワーが用いられる。
【0072】
ステップS17(第2測定工程)では、エッチング処理後の有機ELパネル11aの重量がいくつになったか求める。具体的には、まず、有機ELパネル11aの重量を測定する。ここで、有機ELパネル11aの重量は、電子天秤を用いて求める。これにより、有機ELパネル11aの重量減少分がわかる。
【0073】
ステップS18(演算工程)では、重量減少分からエッチングした厚みを求める。具体的には、重量減少分÷ガラスの密度(2.5g/cm3)÷基板31,61の表面積で求めることができる。
【0074】
ステップS19では、有機ELパネル11aの厚みが所望の厚みになったか否かを判定する。具体的には、有機ELパネル11aの所望の厚みに対して、エッチング処理後にいくつの厚みになったかを比較する。例えば、エッチング処理前に1mmあった有機ELパネル11aの厚みが、エッチング処理後に110μmになったとする。有機ELパネル11aの厚みの最初の狙い値としては、上記したように、例えば100μmである。よって、狙い値に対して足りなかった分のエッチング量に加えて、更にエッチング処理を行うことになる。なお、複数回エッチング処理を繰り返し、有機ELパネル11aの厚みが80μmになっていれば、処理を終了する。
【0075】
ステップS20では、有機ELパネル11aの厚みが所望の値にならなかった場合に、あと、どれ位エッチングすれば所望の値になるかを演算して求める。ここで求めたエッチング時間を基に、再度ステップS15でエッチング処理を行う。そして、所望の有機ELパネル11aの厚みになるまでステップS15からステップS19までの処理を繰り返し行う。
【0076】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
【0077】
(1)本実施形態によれば、第1測定室72、第2測定室76、演算部78によって、エッチング処理前の有機ELパネル11aの重量と、エッチング処理後の有機ELパネル11aの重量と、その差分からエッチング処理された分の重量を求めることが可能となる。更に、演算部78によって、エッチング処理された分の重量と、基板31,61の密度と、基板31,61(有機ELパネル11a)の表面積とからエッチング処理された厚みを求めることができる。よって、エッチング処理後の有機ELパネル11aの厚みを正確に求めることができる。
【0078】
(2)本実施形態によれば、有機ELパネル11aの厚みを重量変化分で管理するので、接触式の計測器で挟んで測定する方法と比較して、有機ELパネル11aが破壊されることを防ぐことができる。更に、有機ELパネル11aを接触式の計測器で挟んで測定した際の有機ELパネル11aが変形することを防ぐことができる。
【0079】
なお、実施形態は上記に限定されず、以下のような形態で実施することもできる。
【0080】
(変形例1)
上記したように、薄型加工処理はエッチング処理に限定されず、例えば、ディップや、機械式の研磨加工処理でもよい。機械式の研磨処理としては、例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)等が挙げられる。この場合においても、重量変化分から研磨処理後の有機ELパネル11aの厚みを求めることができる。
【0081】
(変形例2)
上記したように、エッチング処理の方法として、有機ELパネル11aにエッチング処理液を吹きつける方法に限定されず、エッチング処理液の中に入れて行う方法でもよい。
【0082】
(変形例3)
上記したように、エッチング処理は、基板31と基板61との両方に行うことに限定されず、例えば、どちらか一方の基板31(基板61)のみにエッチング処理を施して、有機ELパネル11aを薄型化するようにしてもよい。
【0083】
(変形例4)
上記したように、有機ELパネル11aの重量を測定するのに電子天秤を用いることに限定されず、例えば、エッチング装置71内を搬送するときの様に有機ELパネル11aが立てられて配置されており、この有機ELパネル11aが重量を測定する重量測定機器にぶら下がっていて、常に有機ELパネル11aの重量が測定できるような機構を用いるようにしてもよい。
【0084】
(変形例5)
上記したように、第1測定室72において基板31,61のエッチング面の表面積を測定することに限定されず、例えば測定せずに、基板31,61における外形寸法の設計情報を流用するようにしてもよい。従って、第1測定室72では、有機ELパネル11aの重量のみを測定するようにしてもよい。
【0085】
(変形例6)
上記した実施形態は、電気光学装置としての有機EL装置11に限定されず、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどに適用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0086】
11…電気光学装置としての有機EL装置、11a…電気光学パネルとしての有機ELパネル、12…走査線、13…信号線、14…電源線、15…信号線駆動回路、16…走査線駆動回路、21…スイッチング用TFT、22…保持容量、23…TFT素子(駆動用TFT)、24…陽極、25…陰極、26…機能層、27…発光素子、31,61…一対の基板を構成する基板、32…表示領域、32a…実表示領域、32b…ダミー領域、33…非表示領域、34(34R,34G,34B)…サブ画素、35…検査回路、36…フレキシブル基板、37…駆動用IC、41…素子基板、42…カラーフィルター基板、43…反射層、44…絶縁層、46…正孔輸送層、47…有機発光層、48…電子輸送層、51…陰極、52…薄膜封止層、53…遮光層、54(54R,54G,54B)…色要素、55…カラーフィルター、57…接着剤、71…エッチング装置、72…第1測定室、72a…搬入口、73…エッチング室、74…洗浄室、75…乾燥室、76…第2測定室、76a…搬出口、77…搬送機構、78…演算部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板を有する電気光学パネルの重量を求める第1測定工程と、
前記一対の基板の少なくとも一方の基板に薄型加工処理を施して前記電気光学パネルの厚みを薄くする薄型加工処理工程と、
前記薄型加工処理後の前記電気光学パネルの重量を求める第2測定工程と、
前記第1測定工程と前記第2測定工程との重量差から前記薄型加工処理後の前記電気光学パネルの厚みを求める演算工程と、
を有することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電気光学装置の製造方法であって、
前記電気光学パネルの厚みが所望の厚みになるまで、前記薄型加工処理工程から前記演算工程までを繰り返し行うことを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電気光学装置の製造方法であって、
前記薄型加工処理は、エッチング処理であることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の電気光学装置の製造方法であって、
前記エッチング処理は、エッチング液を前記少なくとも一方の基板に吹き付けることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項5】
一対の基板を有する電気光学パネルを搬送する搬送機構と、
前記電気光学パネルの重量を測定する第1測定部と、
前記一対の基板の少なくとも一方の基板に薄型加工処理を施す薄型加工処理部と、
前記薄型加工処理が施された前記電気光学パネルの重量を測定する第2測定部と、
前記第1測定部と前記第2測定部とにより得られた重量差から前記電気光学パネルの厚みを求める演算部と、
を有することを特徴とする電気光学装置の製造装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電気光学装置の製造装置であって、
前記搬送機構は、前記薄型加工処理された前記電気光学パネルが所望の厚みになるまで、少なくとも前記薄型加工処理部と前記第2測定部との間において前記電気光学パネルの搬送を繰り返すことを特徴とする電気光学装置の製造装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の電気光学装置の製造装置であって、
前記薄型加工処理部は、前記電気光学パネルにエッチング処理を施すエッチング処理部であることを特徴とする電気光学装置の製造装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電気光学装置の製造装置であって、
前記エッチング処理部は、前記少なくとも一方の基板にエッチング液を吹き付けることを特徴とする電気光学装置の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−191138(P2010−191138A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34903(P2009−34903)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】