説明

電気光学装置の駆動回路、電気光学装置、及び電子機器

【課題】安価に高い表示品位を実現することができる電気光学装置の駆動回路及び電気光学装置、並びに当該回路又は装置を備える電子機器を提供する。
【解決手段】電気光学装置1は、複数行の走査線Y1〜Ynを所定の順番で選択して走査信号を印加する走査線主駆動回路40と、走査線Y1〜Ynの各々に設けられて走査線主駆動回路40によって走査線Y1〜Ynのうちの一の走査線が選択される前後に選択される他の走査線に印加される走査信号によって動作し、走査線主駆動回路40によって一の走査線が選択されて走査信号が印加される期間に、走査信号を整形するための補助信号を一の走査線に印加する走査線補助駆動回路50とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置の駆動回路、電気光学装置、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶装置等の電気光学装置は、複数行の走査線と、複数列のデータ線と、これら走査線とデータ線とが交差する位置の各々に対応して設けられた複数の画素とを備えており、選択した走査線に対応する画素の各々に対して各画素の階調に応じたデータ信号をデータ線を介して供給することで各画素の光学的状態を変化させるものである。従来の電気光学装置は、走査線を駆動する走査線駆動回路を走査線の何れか一方の端部にのみ設け、走査線を片側から駆動する片側駆動のものが殆どであった。
【0003】
しかしながら、走査線は少なからず抵抗及び寄生容量を有するため、走査線を片側駆動する場合には、走査線駆動回路が設けられた端部(駆動端)から走査線駆動回路が設けらていない端部(終端)に向けて走査線を介する信号の波形が鈍る。このため、各々の画素の明るさが少しずつ異なり、或いはクロストークが生じて表示品位が低下する。以下の特許文献1には、走査線の両端に走査線駆動回路を設け、走査線を両側から駆動することにより表示品質の向上を図った両側駆動の電気光学装置が開示されている。
【0004】
また、以下の特許文献2には、両側駆動の電気光学装置の低コスト化及び小型化を実現する技術が開示されている。具体的に、この特許文献2では、走査線を駆動する走査線主駆動回路を走査線の一方の端部に設けるとともに、走査線主駆動回路による選択電圧(走査線を選択する電圧)の印加時に走査線を選択電圧の給電線に接続する走査線補助駆動回路を走査線の他方の端部にそれぞれ設けることにより、波形鈍りを整形している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−295696号公報
【特許文献2】特開2006−162828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年においては、電気光学装置のコスト低減が要求されており、電気光学装置を極力安価に製造する必要がある。特に、携帯型の電子機器に搭載される小型の電気光学装置はコストの低減要求が厳しい。電気光学装置の表示品位を全く考慮せずに回路を極力単純化すればコスト低減を図ることはできる。しかしながら、表示品位はある程度高いレベルを維持する必要があるため、単純に回路を単純化すれば良いという訳ではない。
【0007】
上記特許文献2に開示された技術を用いれば、ある程度高いレベルの表示品質を維持しつつ電気光学装置のコス低減を実現することができると考えられる。しかしながら、特許文献2に開示された技術においては、微分回路、論理回路、並びにnチャネル型トランジスター及びpチャネル型トランジスターを用いて走査線補助駆動回路を構成しており、コスト低減を図るための更なる改善の余地があると考えられる。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、安価に高い表示品位を実現することができる電気光学装置の駆動回路及び電気光学装置、並びに当該回路又は装置を備える電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の電気光学装置の駆動回路は、複数行の走査線と、複数列のデータ線と、当該走査線とデータ線との交差位置の各々に対応して設けられた複数の画素とを備える電気光学装置を駆動する電気光学装置の駆動回路であって、前記複数行の走査線の少なくとも一端側に設けられ、前記複数行の走査線を所定の順番で選択して走査信号を印加する走査線主駆動回路と、前記複数行の走査線の一端側及び他端側の少なくとも一方に設けられ、前記走査線主駆動回路によって前記複数行の走査線のうちの一の走査線が選択される前後に選択される他の走査線に印加される走査信号によって動作し、前記走査線主駆動回路によって前記一の走査線が選択されて前記走査信号が印加される期間に、前記走査信号を整形するための補助信号を前記一の走査線に印加する走査線補助駆動回路とを備えることを特徴としている。
この発明によると、走査線主駆動回路によって複数行の走査線のうちの一の走査線に対して走査信号が印加されると、上記の一の走査線が選択される前後に選択される他の走査線に印加される走査信号によって動作する走査線補助駆動回路によって、走査信号を整形するための補助信号が上記の一の走査線に印加される。これにより、画素の明るさのばらつきやクロストークの発生が防止され、高い表示品位を実現することができる。また、走査線補助駆動回路は、一の走査線が選択される前後に選択される他の走査線に印加される走査信号によって動作するため、上記の高い表示品位を安価に実現することができる。
また、本発明の電気光学装置の駆動回路は、前記走査線補助駆動回路が、前記補助信号を供給する補助信号供給線と、前記一の走査線と前記補助信号供給線とを接続又は開放する第1トランジスターと、前記第1トランジスターのオン状態を維持するための容量成分と、前記一の走査線が選択される前に選択される他の走査線に印加される走査信号に基づいて、前記第1トランジスターをオン状態に設定するとともに前記容量成分を充電する電圧を供給するための第2トランジスターと、前記一の走査線が選択された後に選択される他の走査線に印加される走査信号に基づいて前記容量成分を放電して前記第1トランジスターをオフ状態にするための第3トランジスターとを備えることを特徴としている。
この発明によると、走査線補助駆動回路が第1〜第3トランジスター及び容量成分からなる単純な構成であり、微分回路や論理回路等の回路が不要であるため、電気光学装置をより安価に提供することができる。
ここで、本発明の電気光学装置の駆動回路は、前記容量成分が、前記第1トランジスターとは別に設けられたコンデンサー素子で実現されることを特徴としている。
或いは、本発明の電気光学装置の駆動回路は、前記容量成分が、前記第1トランジスターが有する寄生容量で実現されることを特徴としている。
これらの発明によると、走査線補助駆動回路に設けられる容量成分が第1トランジスターとは別に設けられたコンデンサー素子、又は1トランジスターが有する寄生容量で実現されるため、必要に応じてコンデンサー素子を形成するか否かを選択することができる。コンデンサー素子を形成しない場合には、走査線補助駆動回路は第1〜第3トランジスターのみで実現されるため、例えば画素にTFT等のトランジスター素子が設けられる場合には、これらを同じプロセスで形成することができ、電気光学装置の製造コストを低減することができる。
また、本発明の電気光学装置の駆動回路は、前記第1,第2,第3トランジスター及び前記容量成分が、前記複数行の走査線に対してそれぞれ設けられることを特徴としている。
また、本発明の電気光学装置の駆動回路は、前記補助信号供給線が、前記第1トランジスターを介して前記複数行の走査線のうちの奇数番目の走査線に接続され、前記複数行の走査線が選択される周期の2倍の周期で電圧が変動する第1補助信号を供給する第1補助信号供給線と、前記第1トランジスターを介して前記複数行の走査線のうちの偶数番目の走査線に接続され、電圧が前記第1補助信号とは相補的に変動する第2補助信号を供給する第2補助信号供給線とからなることを特徴としている。
また、本発明の電気光学装置の駆動回路は、前記第2トランジスターが、ダイオード接続されたトランジスターであることを特徴としている。
また、本発明の電気光学装置の駆動回路は、前記第3トランジスターが、前記容量成分の電極間を短絡又は開放するように前記容量成分に対して接続されていることを特徴としている。
また、本発明の電気光学装置の駆動回路は、前記第2トランジスターに接続されて、前記第1トランジスターをオン状態に設定するとともに前記容量成分を充電するための電圧を供給する第1電圧供給線と、前記第3トランジスターに接続されて、前記容量成分を放電して前記第1トランジスターをオフ状態にするための電圧を供給する第2電圧供給線とを備えることを特徴としている。
また、本発明の電気光学装置の駆動回路は、前記第1,第2,第3トランジスター及び前記容量成分は、前記電気光学装置に形成されていることを特徴としている。
本発明の電気光学装置は、複数行の走査線と、複数列のデータ線と、当該走査線とデータ線との交差位置の各々に対応して設けられた複数の画素とを備える電気光学装置において、前記複数行の走査線の少なくとも一端側に設けられ、前記複数行の走査線を所定の順番で選択して走査信号を印加する走査線主駆動回路と、前記複数行の走査線の一端側及び他端側の少なくとも一方に設けられ、前記走査線主駆動回路によって前記複数行の走査線のうちの一の走査線が選択される前後に選択される他の走査線に印加される走査信号によって動作し、前記走査線主駆動回路によって前記一の走査線が選択されて前記走査信号が印加される期間に、前記走査信号を整形するための補助信号を前記一の走査線に印加する走査線補助駆動回路とを備えることを特徴としている。
この発明によると、走査線主駆動回路によって複数行の走査線のうちの一の走査線に対して走査信号が印加されると、上記の一の走査線が選択される前後に選択される他の走査線に印加される走査信号によって動作する走査線補助駆動回路によって、走査信号を整形するための補助信号が上記の一の走査線に印加される。これにより、画素の明るさのばらつきやクロストークの発生が防止され、高い表示品位を実現することができる。また、走査線補助駆動回路は、一の走査線が選択される前後に選択される他の走査線に印加される走査信号によって動作するため、上記の高い表示品位を安価に実現することができる。
本発明の電子機器は、上記の電気光学装置を備えることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態による電気光学装置及びその駆動回路の要部構成を示すブロック図である。
【図2】走査線補助駆動回路50の要部構成を示す回路図である。
【図3】走査線補助駆動回路50の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】走査線補助駆動回路50の第1変形例を示す回路図である。
【図5】走査線補助駆動回路50の第2変形例を示す回路図である。
【図6】電気光学装置の第1変形例を示すブロック図である。
【図7】電気光学装置の第2変形例を示すブロック図である。
【図8】本発明の実施形態による電気光学装置を萎える携帯電話機100の外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による電気光学装置の駆動回路、電気光学装置、及び電子機器について詳細に説明する。尚、以下に説明する実施形態は、本発明の一部の態様を示すものであり、本発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態による電気光学装置及びその駆動回路の要部構成を示すブロック図である。尚、以下では、電気光学装置として液晶装置を例に挙げて説明を進める。図1に示す通り、本実施形態の電気光学装置1は、液晶パネル10、制御回路20、データ線駆動回路30、走査線主駆動回路40、及び走査線補助駆動回路50を備えており、制御回路20の制御の下でデータ線駆動回路30、走査線主駆動回路40、及び走査線補助駆動回路50が液晶パネル10を駆動する。
【0013】
液晶パネル10には、Y方向に延びる複数のデータ線X1〜Xm(mは2以上の整数)がX方向に配列されているとともに、X方向に延びる複数の走査線Y1〜Yn(nは2以上の整数)がY方向に配列されている。これらデータ線X1〜Xmと走査線Y1〜Ynとが交差する交差位置の各々に対応して、複数の画素Gが形成されている。ここで、画素Gの各々には、液晶容量11とスイッチング素子の一例であるTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスター)12とが設けられている。
【0014】
液晶容量11は、TFT12のドレイン電極が接続される矩形状の画素電極と対向電極との間に、電気光学物質の一例たる液晶を挟持した構造である。TFT12は、ゲート電極が走査線に接続されるとともにソース電極がデータ線に接続され、ドレイン電極が液晶容量11の画素電極に接続されている。走査線に印加される選択電圧によってTFT12がオン状態になり、データ線から供給されるデータ信号がTFT12を介して画素電極に供給され、これにより画素Gの光学的状態が変化する。尚、液晶パネル10は電圧無印加状態において白表示をするノーマリーホワイトモードであるとする。
【0015】
制御回路20は、データ線駆動回路30及び走査線主駆動回路40を制御して液晶パネル10を駆動する。具体的には、データ線駆動回路30に対してラッチパルスLP、極性指示信号PL、及びデータクロック信号XCLKを出力してデータ線駆動回路30によるデータ線X1〜Xmの駆動を制御するとともに、走査線主駆動回路40に対してスタートパルスST及び走査クロック信号YCLKを出力して線駆動回路30による走査線Y1〜Ynの駆動(走査)を制御する。
【0016】
ここで、上記のラッチパルスLPは、1水平走査期間の開始時を規定するパルス信号である。また、上記の極性指示信号PLは、液晶容量11の画素電極の極性を指示する信号である。つまり、極性指示信号PLは、液晶容量11の画素電極の電位を対向電極の電位よりも高くするか、又は低くするかを指示する信号である。この極性指示信号PLは、液晶容量11に直流成分が印加されることによる劣化を防止するための信号であって、例えば1水平走査期間毎に極性を反転すべき旨を指示する。また、上記のスタートパルスSTは、走査線Y1〜Ynの走査を開始すべき旨を示す信号であって、垂直走査期間の最初に制御回路20から出力される信号である。更に、上記の走査クロック信号YCLKは、走査線Y1〜Ynの走査タイミングの基準となる信号であって、1周期が1水平走査期間である信号である。
【0017】
データ線駆動回路30は、制御回路20から出力されるラッチパルスLP、極性指示信号PL、及びデータクロック信号XCLKに加えて上位のコントローラ(図示省略)から出力される階調データDを入力としており、データ線X1〜Xmに対して階調データDに応じたデータ信号を出力する。尚、上記の階調データDは、液晶パネル10に設けられた各画素Gの階調値(明るさ)を指定するデータである。
【0018】
この階調データDは、例えば6ビットのデータであり、画素Gの階調値を十進値の「0」から「63」までの64段階で指定可能である。この階調データDは、例えば、値が「0」(二進値で“000000”)である場合に最も暗い黒色の表示が指定され、階調データDの値が増加するにつれて徐々に明るくなるように階調が指定され、値が「63」(2進値で“111111”)である場合に最も明るい白色の表示が指定される。
【0019】
具体的に、データ線駆動回路30は、データ線X1〜Xmの数に応じた1行分の階調データDを一時的に記憶する記憶領域(図示省略)を備えている。そして、走査線主駆動回路40によってi番目(iは1≦i≦nを満たす整数、i=n+1の場合はi=1)の走査線Yiが選択されるとき、i番目の走査線に対応して設けられたm個の画素G分の階調データDを読み出し、極性指示信号PLで指示される極性を有する信号に変換してデータ線X1〜Xmにデータ信号として、ラッチパルスLPに同期して、一斉に供給する。これとともにラッチパルスLPとデータクロック信号XCLKに同期して、i+1番目の行の階調データDをデータ線駆動回路30内部の記憶領域に取り込み、次に走査線Yi+1が選択される時に備える。
【0020】
走査線主駆動回路40は、制御回路20から出力されるスタートパルスST及び走査クロック信号YCLKを入力としており、これらに基づいて走査線Y1〜Ynを所定の順番で選択して走査信号を順次出力する。尚、走査線Y1〜Ynを選択する順番は任意であり、例えば走査線Y1から走査線Ynに向けて順次選択しても良く、逆に走査線Ynから走査線Y1に向けて順次選択しても良い。本実施形態では、説明を簡単にするために、走査線Y1から走査線Ynに向けて順次選択されるとする。
【0021】
具体的に、走査線主駆動回路40は、垂直走査期間の最初に制御回路20から供給されるスタートパルスST(例えば「H(ハイ)」状態)を走査線Y1〜Ynに対応させたシフトレジスタ(図示省略)に走査クロック信号YCLKに同期して取り込み、順次シフトしていく。この時、「H」状態となっているレジスタに対応する走査線を選択された走査線といい、残りの走査線を非選択の走査線といい、選択された走査線には、当該行の画素のTFT12をオン状態にする選択電圧を出力し、非選択の走査線には、当該行の画素のTFT12をオフ状態にする非選択電圧を出力する。
【0022】
走査線補助駆動回路50は、走査線Y1〜Ynに印加される走査信号を整形するための補助信号を走査線Y1〜Ynに印加することで、画素Gの明るさのばらつきやクロストークの発生を防止し、電気光学装置1の高い表示品位を実現するための回路である。具体的には、走査線主駆動回路40によってi番目の走査線Yiが選択される前後に選択される他の走査線(i−1番目の走査線Yi−1及びi+1番目の走査線Yi+1)に印加される走査信号によって動作し、i番目の走査線Yiが選択されて走査信号が印加される1水平走査期間内に補助信号を選択されたi番目の走査線Yiに印加する。
【0023】
この走査線補助駆動回路50は、走査線Y1〜Ynを挟んで走査線主駆動回路40とは反対側に設けられている。つまり、走査線Y1〜Ynの一端側に走査線主駆動回路40が設けられ、走査線Y1〜Ynの他端側に走査線補助駆動回路50が設けられている。また、走査線補助駆動回路50の各々は、隣接する走査線と電気的に接続されている。例えば、i番目の走査線Yiに設けられた走査線補助駆動回路50は、i−1番目の走査線Yi−1とi+1番目の走査線Yi+1とに接続されている。尚、図1においては図示を省略しているが、1番目の走査線Y1に設けられた走査線補助駆動回路50をn番目の走査線Ynに接続し、n番目の走査線Ynに設けられた走査線補助駆動回路50を1番目の走査線Y1に接続しても良い。また、1番目の上、n番目の下に画素を伴わないダミーの走査線(図示省略)を設けて、各々を1番目の走査線Y1に設けられた走査線補助駆動回路50、n番目の走査線Ynに設けられた走査線補助駆動回路50に接続しても良い。
【0024】
図2は、走査線補助駆動回路50の要部構成を示す回路図である。図2に示す通り、走査線補助駆動回路50は、トランジスター51(第1トランジスター)、コンデンサー52(容量成分)、トランジスター53(第2トランジスター)、及びトランジスター54(第3トランジスター)を備える。尚、図1においては図示を省略しているが、図2に示す通り、電気光学装置1には、走査線Y1〜Ynに印加される走査信号を整形するための補助信号を供給する補助信号供給線L11,L12及びトランジスター51をオン状態又はオフ状態にするための電圧を供給する電圧供給線L21,L22が設けられる。
【0025】
上記の補助信号供給線L11(第1補助信号供給線)は奇数番目の走査線(例えば、i−1番目の走査線Yi−1及びi+1番目の走査線Yi+1)に設けられた走査線補助駆動回路50に接続されており、上記の補助信号供給線L12(第2補助信号供給線)は偶数番目の走査線(例えば、i番目の走査線Yi及びi+2番目の走査線Yi+2)に設けられた走査線補助駆動回路50に接続されている。また、走査線補助駆動回路50の各々は、電圧供給線L21(第1電圧供給線)及び電圧供給線L22(第2電圧供給線)の双方が接続されている。
【0026】
補助信号供給線L11を介して供給される補助信号φ1(第1補助信号:図3参照)は、走査線Y1〜Ynが選択される周期(1水平走査期間)の2倍の周期で電圧が変動する信号である。また、補助信号供給線L12を介して供給される補助信号φ2(第2補助信号:図3参照)は、電圧が上記の補助信号供給線L11を介して供給される補助信号φ1と相補的に変動する信号である。つまり、補助信号供給線L11,L12を介して供給される補助信号φ1,φ2は、レベルが互いに逆になる信号である。
【0027】
尚、各走査線に設けられる走査線補助駆動回路50は同様の構成であるため、ここではi番目の走査線に設けられる走査線補助駆動回路50を例に挙げて説明する。トランジスター51は、ソース電極が補助信号供給線L12に、ドレイン電極が走査線Yiにそれぞれ接続されており、オン状態又はオフ状態になって走査線Yiと補助信号供給線L12とを接続又は開放する。トランジスター51によって走査線Yiと補助信号供給線L12とが接続されることによって補助信号供給線L12を介して供給される補助信号φ2が走査線Yiに印加され、走査線Yiと補助信号供給線L12とが開放されると走査線Yiに対する補助信号φ2の印加が停止される。
【0028】
トランジスター51のゲート電極とソース電極との間にはコンデンサー52が接続されている。このコンデンサー52は、トランジスター51のオン状態を維持するために設けられる。つまり、コンデンサー52が充電されると、トランジスター51のゲート電極に印加される電圧がゲート閾値電圧以上に維持され、これによりトランジスター51のオン状態が維持される。このコンデンサー52は、トランジスター51とは別に形成される素子(コンデンサー素子)によって実現される。尚、トランジスター51のオン状態を維持することができる程度の寄生容量がトランジスター51に存在する場合には、トランジスター51とは別にコンデンサー素子を形成しなくとも、トランジスター51の寄生容量でコンデンサー52を実現することが可能である。
【0029】
トランジスター53は、ソース電極が電圧供給線L21に、ドレイン電極がトランジスター51のゲート電極及びコンデンサー52の一方の電極に、ゲート電極がi−1番目の走査線Yi−1にそれぞれ接続されている。このトランジスター53は、i−1番目の走査線Yi−1に印加される走査信号によってオン状態になり、電圧供給線L21を介して供給される電圧V1(トランジスター51をオン状態にするための電圧)をトランジスター51のゲート電極及びコンデンサー52に供給する。尚、電圧供給線L21を介して供給される電圧V1がコンデンサー52に供給されることによって、トランジスター51のオン状態が維持される。
【0030】
トランジスター54は、ソース電極が電圧供給線L22に、ドレイン電極がトランジスター51のゲート電極、トランジスター53のドレイン電極、及びコンデンサー52の一方の電極に、ゲート電極がi+1番目の走査線Yi+1にそれぞれ接続されている。このトランジスター54は、i+1番目の走査線Yi+1に印加される走査信号によってオン状態になり、電圧供給線L22を介して供給される電圧V2(トランジスター51をオフ状態にするための電圧)をトランジスター51のゲート電極及びコンデンサー52に供給する。尚、電圧供給線L22を介して供給される電圧V2が供給されることによって、トランジスター51がオフ状態になるとともにコンデンサー52が放電される。
【0031】
尚、i番目の走査線Yiは偶数番目の走査線であるため、上述した通り、トランジスター51のソース電極は補助信号供給線L12に接続されていた。これは、偶数番目の走査線である他の走査線(i+2番目の走査線Yi+2)についても同様である。これに対し、奇数番目の走査線(例えば、i−1番目の走査線Yi−1及びi+1番目の走査線Yi+1)に設けられた走査線補助駆動回路50が備えるトランジスター51のソース電極は、補助信号供給線L11に接続されている。
【0032】
以上説明した走査線補助駆動回路50に設けられるトランジスター51,53,54は、液晶パネル10に設けられるTFT12と同様の構造にすることができる。また、トランジスター51の寄生容量によってコンデンサー52を実現する場合には、コンデンサー51の形成が不要である。このため、走査線補助駆動回路50を形成するための新たな工程を設けることなく、TFT12等とともに走査線補助駆動回路50を液晶パネル10に形成することができる。これにより、液晶パネル10の外部に走査線補助駆動回路50を設ける必要がなくなるため、電気光学装置を安価に製造することができる。
【0033】
次に、上記構成における電気光学装置1の液晶パネル10の駆動時における動作について説明する。不図示の上位のコントローラから階調データDが出力されるとともに、制御回路20からラッチパルスLP、極性指示信号PL、スタートパルスST、走査クロック信号YCLK、及びデータクロック信号XCLKが出力されることにより、液晶パネル10の駆動が開始される。不図示の上位のコントローラから出力された階調データDは、データ線駆動回路30に設けられた記憶領域に一時的に記憶される。
【0034】
制御回路20から出力されたスタートパルスST及び走査クロック信号YCLKは、走査線主駆動回路40に入力される。走査線主駆動回路40は、制御回路20から出力されるスタートパルスSTを走査クロック信号YCLKの立ち上がりにて取り込んで順次シフトし、走査線Y1〜Yの各選択に対応させる。すると、まず走査線Y1が選択されて選択電圧が印加される。これにより、走査線Y1に接続されたm個のTFT12がオン状態になる。
【0035】
また、制御回路20から出力されたラッチパルスLP、極性指示信号PL、及びデータクロック信号XCLKは、データ線駆動回路30に入力される。データ線駆動回路30は、入力されたラッチパルスLPに基づいて、1番目の走査線Y1に対応して設けられたm個の画素G分の階調データDを不図示の記憶領域から読み出し、極性指示信号PLで指示される極性を有する信号に変換してデータ線X1〜Xmにデータ信号として一斉に供給する。すると、データ線X1〜Xmを介して供給されるデータ信号が、走査線Y1に接続されたm個のTFT12の各々を介して、走査線Y1に対応して設けられたm個の画素電極に供給される。これにより、走査線Y1に対応して設けられたm個の画素の光学的状態が供給されるデータ信号に応じて変化する。
【0036】
以上の動作が終了すると、走査線主駆動回路40によって次の走査線Y2が選択されるとともに、データ線駆動回路30によって2番目の走査線Y2に対応して設けられたm個の画素G分の階調データDが読み出されてデータ信号が作成されてデータ線X1〜Xmにデータ信号として一斉に供給される。これにより、走査線Y2に対応して設けられたm個の画素の光学的状態が供給されるデータ信号に応じて変化する。以上の動作と同様の動作が繰り返し行われ、他の走査線Y3〜Ynについても順次選択されるとともにデータ信号の供給が行われ、これにより1画面分の階調データDに応じた画像が液晶パネル10に表示される。走査線Ynが選択されている間に、上位のコントローラから次の画面分の第1行分の階調データDが出力された後に、走査線Y1から走査線Ynまでの選択が再度順次行われて、次の画像が液晶パネル10に表示される。
【0037】
ここで、以上の動作が行われている間における走査線補助駆動回路50の動作について詳細に説明する。図3は、走査線補助駆動回路50の動作を説明するためのタイミングチャートである。尚、ここでは、理解を容易にするために、i番目の走査線Yiに設けられた走査線補助駆動回路50に着目して説明する。以上の通り、走査線Y1〜Ynが走査線Y1から走査線Ynまで順に選択される場合には、図3に示す通り、期間Ti−1においてi−1番目の走査線Yi−1に対して走査信号が印加され、続く期間Tiにおいてi番目の走査線Yiに対して走査信号が印加され、続く期間Ti+1においてi+1番目の走査線Yi+1に対して走査信号が印加される。
【0038】
期間Ti−1において走査線Yi−1に走査信号が印加されると、走査線Yiに設けられた走査線補助駆動回路50が備えるトランジスター53がオン状態になり、電圧供給線L21を介して供給される電圧V1がトランジスター51のゲート電極及びコンデンサー52に供給される。すると、走査線Yiに設けられた走査線補助駆動回路50が備えるトランジスター51のゲート電極の電圧(図3中のゲート電圧Vg)が電圧V1になり、トランジスター51がオン状態になる。また、走査線Yiに設けられた走査線補助駆動回路50が備えるコンデンサー52が電圧V1に充電されてトランジスター51のオン状態が維持される。
【0039】
トランジスター51がオン状態になると、走査線Yiと補助信号供給線L12とが電気的に接続された状態になり、補助信号供給線L12を介して供給される補助信号φ2が走査線Yiに印加される。ここで、図3に示す通り、期間Ti−1において補助信号供給線L12を介して供給される補助信号φ2は「L(ロー)」レベルであるため、走査線Yi−1と走査線Yiとが同時に選択されるといった不具合は生じない。
【0040】
期間Ti−1が終了して期間Tiに移行すると、走査線Yiに設けられた走査線補助駆動回路50が備えるトランジスター53はオフ状態になるが、トランジスター51のオン状態は維持される。また、期間Tiに移行すると、走査線Yiに走査信号が印加されると同時に、補助信号供給線L12を介して供給される補助信号φ2が「H」レベルになる。すると、「H」レベルの補助信号φ2がトランジスター51のドレイン電極から出力されて走査線Yiに印加されることになる(図3中の出力電圧Vd参照)。これにより、走査線主駆動回路40によって走査線Yiに印加された走査信号の波形に鈍りが生じていたとしても、その鈍りを整形することができる。尚、図3に示す通り、トランジスター51のゲート電圧Vgは、補助信号φ2が「H」レベルになった分だけ電圧V1よりも上昇する。
【0041】
期間Tiが終了して期間Ti+1に移行すると、走査線Yi+1に走査信号が走査信号が印加され、走査線Yiに設けられた走査線補助駆動回路50が備えるトランジスター54がオン状態になり、電圧供給線L22を介して供給される電圧V2がトランジスター51のゲート電極及びコンデンサー52に供給される。すると、走査線Yiに設けられた走査線補助駆動回路50が備えるトランジスター51のゲート電圧Vgが図3に示す通り電圧V2になり、図3に示す通り、トランジスター51はオフ状態になってハイインピーダンス状態になる。これと同時に、走査線Yiに設けられた走査線補助駆動回路50が備えるコンデンサー52は放電される。これにより、走査線Yiと補助信号供給線L12との接続が開放され、走査線Yiに対する補助信号φ2の印加が停止される。
【0042】
走査線Yiに設けられた走査線補助駆動回路50以外の他の走査線に設けられた走査線補助駆動回路50においても、以上の動作と同様の動作がそれぞれ行われる。このため、走査線主駆動回路40によって走査線Y1〜Ynに印加された走査信号の鈍りを整形することができ、これにより高い表示品位を実現することができる。
【0043】
以上説明した通り、本実施形態では、ある走査線(例えば、走査線Yi)が選択される前後に選択される走査線(例えば、走査線Yi−1,Yi+1)に印加される走査信号によって動作し、その走査線(例えば、走査線Yi)に走査信号が印加される期間に走査信号を整形するための補助信号をその走査線(例えば、走査線Yi)に印加する走査線補助駆動回路50を走査線毎に設けている。これにより、従来の電気光学装置のように微分回路や論理回路等を備える必要が無いため、安価に高い表示品位を実現することができる。
【0044】
図4は、走査線補助駆動回路50の第1変形例を示す回路図である。図4に示す通り、本変形例の走査線補助駆動回路50は、ダイオード接続されたトランジスター53を備える構成である。かかる構成にすることで、トランジスター51をオン状態にするための電圧V1を供給する電圧供給線L21が省略されている。走査線補助駆動回路50の各々に設けられたトランジスター53は、ソース電極とゲート電極とが短絡されてダイオード接続とされている。
【0045】
走査線補助駆動回路50が図2に示す構成である場合には、電圧供給線L21,L22によって供給する電圧V1,V2の電圧を変えることによって、走査線主駆動回路40による走査線Y1〜Ynの走査方向が走査線Y1から走査線Ynに向かう方向、及び走査線Ynから走査線Y1に向かう方向の何れであっても対応することができる。これに対し、走査線補助駆動回路50が図4に示す構成である場合には、走査線Y1〜Ynの走査方向が何れか一方の方向に制限されるものの、電圧供給線L21を省略することができる。
【0046】
図5は、走査線補助駆動回路50の第2変形例を示す回路図である。図5に示す通り、本変形例の走査線補助駆動回路50は、上記の第1変形例と同様にダイオード接続されたトランジスター53を備え、トランジスター54のソース電極をコンデンサー52の他方の電極に接続した構成である。かかる構成にすることで、トランジスター51をオフ状態にするための電圧V2を供給する電圧供給線L22も省略されている。尚、トランジスター54のドレイン電極はコンデンサー52の一方の電極に接続されているため、トランジスター54をオン状態又はオフ状態にすることで、コンデンサー52の電極間は短絡又は開放される。
【0047】
本変形例においても、上述した第1変形例と同様に、走査線Y1〜Ynの走査方向が走査線Y1から走査線Ynに向かう方向、及び走査線Ynから走査線Y1に向かう方向の何れか一方の方向に制限される。しかしながら、本変形例では、上位の電圧供給線L21に加えて電圧供給線L22も省略することができる。尚、以上説明した第1,第2変形例においても、TFT12等とともに走査線補助駆動回路50を液晶パネル10に形成することが可能である。
【0048】
図6は、電気光学装置の第1変形例を示すブロック図である。図6に示す通り、本変形例の電気光学装置2は、走査線Y1〜Ynの一端側に配置されて奇数番目の走査線(Y1、Y3,…)に接続された走査線主駆動回路40aと、走査線Y1〜Ynの他端側に配置されて偶数番目の走査線(Y2,Y4,…)に接続された走査線主駆動回路40bとを備える。尚、図6においては、図示を簡単化するために、制御回路20及びデータ線駆動回路30、及び補助信号供給線L11,L12等の図示を省略している。
【0049】
また、本変形例の電気光学装置2は、図1に示す電気光学装置1と同様に、走査線Y1〜Ynの各々に走査線補助駆動回路50を備えるものの、奇数番目の走査線に設けられた走査線補助駆動回路50は走査線の他端側に配置され、偶数番目の走査線に設けられた走査線補助駆動回路50は走査線の一端側に配置されている。尚、図2に示す補助信号供給線L11,L12、更には電圧供給線L21,L22は、走査線Y1〜Ynの一端側及び他端側にそれぞれ設けられている。
【0050】
以上の構成の電気光学装置2の動作は、走査線Y1〜Ynが2つの走査線主駆動回路40a,40bによって選択される点を除いては、基本的には図1に示す電気光学装置1の動作と同様であり、走査線Y1〜Ynの各々において走査線補助駆動回路50によって補助信号が印加される。本変形例の電気光学装置2は、走査線Y1〜Ynの間隔が狭く、図1に示す電気光学装置1のように、走査線Y1〜Ynの他端側にのみ走査線補助駆動回路50を形成するのが困難な場合に好適である。
【0051】
図7は、電気光学装置の第2変形例を示すブロック図である。図7(a)に示す電気光学装置3は、走査線Y1〜Ynの各々について、他端側のみならず一端側にも走査線補助駆動回路50が設けられている点が図1に示す電気光学装置1とは相違する。この電気光学装置3は、図6に示す電気光学装置2と同様に、図2に示す補助信号供給線L11,L12、更には電圧供給線L21,L22が、走査線Y1〜Ynの一端側及び他端側にそれぞれ設けられている。
【0052】
尚、図7においては、図示を簡単化するために、制御回路20及びデータ線駆動回路30、補助信号供給線L11,L12等、及び走査線補助駆動回路50と隣接する走査線とを接続する接続線の図示を省略している。以上の構成にすることで、走査線主駆動回路40の出力抵抗が高くても良くなるため、走査線主駆動回路40の回路規模を小さくすることができる。走査線主駆動回路40の回路規模を小さくするだけであれば、図7(b)に示す電気光学装置4のように、走査線Y1〜Ynの他端側における走査線補助駆動回路50及び電圧供給線L21,L22等が省略された構成にすることも可能である。
【0053】
以上、本発明の実施形態による電気光学装置及びその駆動回路について説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、液晶パネル10が電圧無印加状態において白表示をするノーマリーホワイトモードであるとしたが、電圧無印加状態において黒色を表示するノーマリーブラックモードであっても良い。尚、階調数は「64」に限らず、これによりも低階調表示としても良いし、これよりも高階調表示としても良い。更に、R(赤)、G(緑)、B(青)の3画素で1ドットを構成して、カラー表示を行うとしても良い。
【0054】
液晶パネル10は透過型に限られず、反射型や、両者の中間的な半透過半反射型であっても良い。また、本実施形態では、TFT12のようなスイッチング素子で画素電極を駆動するアクティブマトリクス方式として説明したが、パッシブマトリクス方式のものでも走査信号の波形鈍りが同様に生ずるため、パッシブマトリクス方式のものにも適用可能である。また、TFT12は、スイッチング素子の一例であって、ZnO(酸化亜鉛)バリスタや、MSI(Metal Semi-Insulator)等を用いた素子のほか、これら素子を2つ逆向きに直列接続又は並列接続したもの、或いはTFD(Thin Film Diode:薄膜ダイオード)等の二端子型スイッチング素子をTFT12に代えて用いても良い。
【0055】
また、液晶パネル10の液晶としては、TN型の液晶、STN型の液晶、或いは分子の長軸方向と短軸方向とで可視光の吸収に異方性を有する染料(ゲスト)を一定の分子配列の液晶(ホスト)に溶解して染料分子を液晶分子と平行に配列させたゲストホスト型等の液晶を用いても良い。加えて、電圧無印加時には液晶分子が両基板に対して垂直方向に配列する一方、電圧印加時には液晶分子が両基板に対して水平方向に配列する、という垂直配向(ホメオトロピック配向)の構成としても良いし、電圧無印加時には液晶分子が両基板に対して水平方向に配列する一方、電圧印加時には液晶分子が両基板に対して垂直方向に配列する、という平行(水平)配向(ホモジニアス配向)の構成としても良い。
【0056】
更に、本発明の電気光学装置は、液晶装置に限られるものではなく、他の電気光学装置、例えば有機EL装置、無機EL装置、プラズマディスプレイ装置、電気泳動ディスプレイ装置、フィールド・エミッション・ディスプレイ装置、LED、電子ペーパー(代表的には電気泳動素子を用いたものがある)等に適用することができる。このように、本発明の駆動方法に適合するものであれば、様々な電気光学素子を用いることが可能である。また、アクテイブマトリクスで構成された2次元のセンサにも用いることができる。
【0057】
次に、上述した実施形態に係る電気光学装置を表示装置として備える電子機器について説明する。図8は、本発明の実施形態による電気光学装置を萎える携帯電話機100の外観を示す斜視図である。図8に示す通り、携帯電話機100は、複数の操作ボタン101のほか、受話口102、送話口103とともに、上述した液晶パネル10を表示装置104として備える。尚、電気光学装置のうち、液晶パネル10以外の構成要素については携帯電話機100に内蔵されるため、携帯電話機100の外観には現れない。
【0058】
尚、電気光学装置が適用される電子機器としては、図8に示す携帯電話機100以外に、デジタルスチルカメラ、ノートパソコン、液晶テレビ、ビューファインダ型(またはモニタ直視型)のビデオレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。そして、これらの各種電子機器の表示装置として、上述した電気光学装置が適用可能であることは言うまでもない。そして、何れの電子機器においても、走査信号の波形鈍りを整形することによって、表示品位の低下を抑えて高品位の表示が簡易な構成によって実現されることになる。
【符号の説明】
【0059】
1〜4…電気光学装置、40…走査線主駆動回路、50…走査線補助駆動回路、51…トランジスター、52…コンデンサー、53,54…トランジスター、L11,L12…補助信号供給線、L21,L22…電圧供給線、G…画素、V1,V2…電圧、X1〜Xm…データ線、Y1〜Yn…走査線、φ1,φ2…補助信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数行の走査線と、複数列のデータ線と、当該走査線とデータ線との交差位置の各々に対応して設けられた複数の画素とを備える電気光学装置を駆動する電気光学装置の駆動回路であって、
前記複数行の走査線の少なくとも一端側に設けられ、前記複数行の走査線を所定の順番で選択して走査信号を印加する走査線主駆動回路と、
前記複数行の走査線の一端側及び他端側の少なくとも一方に設けられ、前記走査線主駆動回路によって前記複数行の走査線のうちの一の走査線が選択される前後に選択される他の走査線に印加される走査信号によって動作し、前記走査線主駆動回路によって前記一の走査線が選択されて前記走査信号が印加される期間に、前記走査信号を整形するための補助信号を前記一の走査線に印加する走査線補助駆動回路と
を備えることを特徴とする電気光学装置の駆動回路。
【請求項2】
前記走査線補助駆動回路は、前記補助信号を供給する補助信号供給線と、
前記一の走査線と前記補助信号供給線とを接続又は開放する第1トランジスターと、
前記第1トランジスターのオン状態を維持するための容量成分と、
前記一の走査線が選択される前に選択される他の走査線に印加される走査信号に基づいて、前記第1トランジスターをオン状態に設定するとともに前記容量成分を充電する電圧を供給するための第2トランジスターと、
前記一の走査線が選択された後に選択される他の走査線に印加される走査信号に基づいて前記容量成分を放電して前記第1トランジスターをオフ状態にするための第3トランジスターと
を備えることを特徴とする請求項1記載の電気光学装置の駆動回路。
【請求項3】
前記容量成分は、前記第1トランジスターとは別に設けられたコンデンサー素子で実現されることを特徴とする請求項2記載の電気光学装置の駆動回路。
【請求項4】
前記容量成分は、前記第1トランジスターが有する寄生容量で実現されることを特徴とする請求項2記載の電気光学装置の駆動回路。
【請求項5】
前記第1,第2,第3トランジスター及び前記容量成分は、前記複数行の走査線に対してそれぞれ設けられることを特徴とする請求項2から請求項4の何れか一項に記載の電気光学装置の駆動回路。
【請求項6】
前記補助信号供給線は、前記第1トランジスターを介して前記複数行の走査線のうちの奇数番目の走査線に接続され、前記複数行の走査線が選択される周期の2倍の周期で電圧が変動する第1補助信号を供給する第1補助信号供給線と、
前記第1トランジスターを介して前記複数行の走査線のうちの偶数番目の走査線に接続され、電圧が前記第1補助信号とは相補的に変動する第2補助信号を供給する第2補助信号供給線と
からなることを特徴とする請求項5記載の電気光学装置の駆動回路。
【請求項7】
前記第2トランジスターは、ダイオード接続されたトランジスターであることを特徴とする請求項2から請求項6の何れか一項に記載の電気光学装置の駆動回路。
【請求項8】
前記第3トランジスターは、前記容量成分の電極間を短絡又は開放するように前記容量成分に対して接続されていることを特徴とする請求項2から請求項7の何れか一項に記載の電気光学装置の駆動回路。
【請求項9】
前記第2トランジスターに接続されて、前記第1トランジスターをオン状態に設定するとともに前記容量成分を充電するための電圧を供給する第1電圧供給線と、
前記第3トランジスターに接続されて、前記容量成分を放電して前記第1トランジスターをオフ状態にするための電圧を供給する第2電圧供給線と
を備えることを特徴とする請求項6記載の電気光学装置の駆動回路。
【請求項10】
前記第1,第2,第3トランジスター及び前記容量成分は、前記電気光学装置に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項9の何れか一項に記載の電気光学装置の駆動回路。
【請求項11】
複数行の走査線と、複数列のデータ線と、当該走査線とデータ線との交差位置の各々に対応して設けられた複数の画素とを備える電気光学装置において、
前記複数行の走査線の少なくとも一端側に設けられ、前記複数行の走査線を所定の順番で選択して走査信号を印加する走査線主駆動回路と、
前記複数行の走査線の一端側及び他端側の少なくとも一方に設けられ、前記走査線主駆動回路によって前記複数行の走査線のうちの一の走査線が選択される前後に選択される他の走査線に印加される走査信号によって動作し、前記走査線主駆動回路によって前記一の走査線が選択されて前記走査信号が印加される期間に、前記走査信号を整形するための補助信号を前記一の走査線に印加する走査線補助駆動回路と
を備えることを特徴とする電気光学装置。
【請求項12】
請求項11記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−224438(P2010−224438A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74179(P2009−74179)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】