説明

電気光学装置及び電子機器

【課題】液晶装置等の電気光学装置において、高品質な画像を表示可能とする。
【解決手段】電気光学装置は、基板(10)上に、画素毎に設けられた画素電極(9a)
と、基板と画素電極との間に、画素電極に対応して設けられたトランジスタ(30)と、
画素電極とトランジスタとの間に設けられており、第1電極(71)、第1電極の下層側
に下側容量絶縁膜(75)を介して対向配置された第2電極(72)、及び第1電極の上
層側に上側容量絶縁膜(76)を介して対向配置された第3電極(73)からなる保持容
量(70)とを備える。下側容量絶縁膜及び上側容量絶縁膜は、それぞれ複数の層を有し
ており、下側容量絶縁膜及び第2電極と、上側容量絶縁膜及び第3電極とは、第1電極か
ら見て対称性を有するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶装置等の電気光学装置、及び該電気光学装置を備えた、例えば液
晶プロジェクター等の電子機器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気光学装置として、例えば基板上に、画素電極、該画素電極の選択的な駆動
を行うための走査線、データ線、及び画素スイッチング用のTFT(Thin Film Transist
or)を備えており、アクティブマトリクス駆動を行うものがある。TFT等のスイッチン
グ素子や各種配線は、基板上に積層構造として形成される。
【0003】
上述したような電気光学装置では、積層構造に保持容量を形成することで、表示画像に
おけるコントラストの向上やフリッカーの低減が図られている。例えば特許文献1では、
複数の保持容量を並列に接続することで、容量増大を実現するという技術が提案されてい
る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−284722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したように複数の保持容量を形成する場合には、それぞれの保持容
量の構成(具体的には、材質や積層構造)の違いに起因して、保持容量に供給される固定
電位の経時変化が大きくなってしまうことが、本願発明者の研究により判明している。固
定電位の経時変化は、例えば表示画像におけるちらつきや焼き付きの原因となる。従って
、上述した技術には、表示画像の品質を低下させてしまうおそれがあるという技術的問題
点がある。
【0006】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、高品質な画像を表示する
ことが可能な電気光学装置及び電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気光学装置は上記課題を解決するために、基板上に、画素毎に設けられた画
素電極と、前記基板と前記画素電極との間に、前記画素電極に対応して設けられたトラン
ジスタと、前記画素電極と前記トランジスタとの間に設けられており、第1電極、前記第
1電極の下層側に下側容量絶縁膜を介して対向配置された第2電極、及び前記第1電極の
上層側に上側容量絶縁膜を介して対向配置された第3電極からなる保持容量とを備え、前
記下側容量絶縁膜及び前記上側容量絶縁膜は、それぞれ複数の層を有しており、前記下側
容量絶縁膜及び前記第2電極と、前記上側容量絶縁膜及び前記第3電極とは、前記第1電
極から見て対称性を有するように形成されている。
【0008】
本発明の電気光学装置は、例えば、画素電極及び該画素電極に電気的に接続された画素
スイッチング用TFT等であるトランジスタが設けられた素子基板と、画素電極に対向す
る対向電極が設けられた対向基板との間に、液晶等の電気光学物質を挟持してなる。当該
電気光学装置の動作時には、画像信号が画素電極へ選択的に供給されることで、複数の画
素電極が配列された画素領域(或いは画像表示領域)における画像表示が行われる。尚、
画像信号は、例えばデータ線及び画素電極間に電気的に接続されたトランジスタがオンオ
フされることによって、所定のタイミングでデータ線から画素電極に供給される。
【0009】
本発明では、画素電極とトランジスタとの間に保持容量が設けられている。保持容量は
、第1電極、第2電極及び第3電極の3つの電極間に容量絶縁膜を挟持してなる。具体的
には、第1電極と第1電極の下層側の第2電極との間には、下側容量絶縁膜が設けられて
いる。また、第1電極と第1電極の上層側の第3電極との間には、上側容量絶縁膜が設け
られている。即ち、保持容量は、下層側から第2電極、下側容量絶縁膜、第1電極、上側
容量絶縁膜、第3電極が順に積層されることで構成されている。
【0010】
下側容量絶縁膜及び上側容量絶縁膜は、それぞれ複数の層を有するように設けられてい
る。即ち、下側容量絶縁膜及び上側容量絶縁膜は、異なる層が積層されることでそれぞれ
構成されている。より具体的には、下側容量絶縁膜及び上側容量絶縁膜は、SiOやS
iN等の層を含んで構成されている。
【0011】
ここで本発明では特に、上述した保持容量は、第1電極から見て他の部材が対称性を有
するように形成されている。即ち、下側容量絶縁膜及び第2電極と、上側容量絶縁膜及び
第3電極とが、第1電極から見て対称性を有するように形成されている。具体的には、下
側容量絶縁膜及び上側容量絶縁膜における複数の層は、第1電極から見て同じ材質の層が
同じ順番で並ぶように形成されている。より具体的には、下側容量絶縁膜が、下層側から
SiO、SiNの順で積層されている場合、上側容量絶縁膜は、下層側から、SiN、
SiOの順で積層される。更に、第2電極及び第3電極は同じ材料によって構成されて
いる。
【0012】
尚、本発明に係る「対称性」とは、上述したように、各部材を構成する材質に関するも
のであり、各部材の形状や大きさに関しては対称性を有していなくともよい。即ち、第2
電極及び第3電極の形状や大きさ、下側容量絶縁膜及び上側容量絶縁膜の膜厚等は互いに
異なっていても構わない。
【0013】
本発明者の研究によれば、対称性を有するように保持容量を構成することで、保持容量
に供給される固定電位の経時変化を小さくできることが判明している。この固定電位の経
時変化は、表示画像におけるちらつきや焼き付きの原因となる。従って、本発明の保持容
量によれば、このような表示上の不具合を防止することが可能である。
【0014】
以上説明したように、本発明の電気光学装置によれば、対称性を有するように保持容量
を構成することで、高品質な画像を表示することが可能となる。
【0015】
本発明の電気光学装置の一態様では、前記第1電極には、所定の定電位が供給されてお
り、前記第2電極及び前記第3電極は、それぞれ前記画素電極及び前記トランジスタに電
気的に接続されている。
【0016】
この態様によれば、第1電極は、例えば容量線とコンタクトホールによって電気的に接
続され、対向電極に供給される共通電位が所定の定電位として供給される。一方、第2電
極及び第3電極は、例えば画素電極やトランジスタと画素電極の電気的接続を中継する中
継層と、コンタクトホールを介して電気的に接続される。よって、第2電極及び第3電極
は、画素電極と同電位とされる。
【0017】
上述した構成によれば、第1電極及び第2電極間と、第1電極及び第3電極間にそれぞ
れ保持容量を形成でき、それらの保持容量が並列に接続された構成となる。従って、比較
的少ない面積で高密度な保持容量を形成することができる。
【0018】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記第1電極は、前記画素電極及び前記トラン
ジスタに電気的に接続されており、前記第2電極及び前記第3電極には、それぞれ所定の
定電位が供給されている。
【0019】
この態様によれば、第1電極は、例えば画素電極やトランジスタと画素電極の電気的接
続を中継する中継層と、コンタクトホールを介して電気的に接続される。よって、第1電
極は、画素電極と同電位とされる。一方、第2電極及び第3電極は、例えば容量線とコン
タクトホールによって電気的に接続され、対向電極に供給される共通電位が所定の定電位
として供給される。
【0020】
上述した構成によれば、第1電極及び第2電極間と、第1電極及び第3電極間にそれぞ
れ保持容量を形成でき、それらの保持容量が並列に接続された構成となる。従って、比較
的少ない面積で高密度な保持容量を形成することができる。
【0021】
本発明の電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置(但し
、その各種態様も含む)を備える。
【0022】
本発明の電子機器によれば、上述した本発明に係る電気光学装置を具備してなるので、
高品質な表示を行うことが可能な、投射型表示装置、テレビ、携帯電話、電子手帳、ワー
ドプロセッサー、ビューファインダー型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダー、ワ
ークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種電子機器を実現で
きる。また、本発明の電子機器として、例えば電子ペーパーなどの電気泳動装置等も実現
することも可能である。
【0023】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされ
る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態に係る電気光学装置の全体構成を示す平面図である。
【図2】図1のH−H´線断面図である。
【図3】第1実施形態に係る電気光学装置の画像表示領域における各種素子、配線等の等価回路図である。
【図4】第1実施形態に係る電気光学装置の積層構造を示す断面図である。
【図5】第1実施形態に係る電気光学装置の保持容量の具体的構成を示す概念図である。
【図6】第2実施形態に係る電気光学装置の積層構造を示す断面図である。
【図7】第2実施形態に係る電気光学装置の保持容量の具体的構成を示す概念図である。
【図8】電気光学装置を適用した電子機器の一例たるプロジェクターの構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0026】
<電気光学装置>
本実施形態に係る電気光学装置について図1から図8を参照して説明する。尚、以下の
実施形態では、本発明の電気光学装置の一例として駆動回路内蔵型のTFTアクティブマ
トリクス駆動方式の液晶装置を挙げて説明する。
【0027】
<第1実施形態>
先ず、第1実施形態に係る電気光学装置の全体構成について、図1及び図2を参照して
説明する。ここに図1は、第1実施形態に係る電気光学装置の全体構成を示す平面図であ
り、図2は、図1のH−H´線断面図である。
【0028】
図1及び図2において、本実施形態に係る電気光学装置では、TFTアレイ基板10と
対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10は、例えば石英基板、ガラ
ス基板等の透明基板や、シリコン基板等である。対向基板20は、例えば石英基板、ガラ
ス基板等の透明基板である。TFTアレイ基板10と対向基板20との間には、液晶層5
0が封入されている。液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合し
た液晶からなり、一対の配向膜間で所定の配向状態をとる。
【0029】
TFTアレイ基板10と対向基板20とは、複数の画素電極が設けられた画像表示領域
10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により、相互に接着されて
いる。
【0030】
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等
からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、
加熱等により硬化させられたものである。シール材52中には、TFTアレイ基板10と
対向基板20との間隔(即ち、基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバー
或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。尚、ギャップ材を、シール材52
に混入されるものに加えて若しくは代えて、画像表示領域10a又は画像表示領域10a
の周辺に位置する周辺領域に、配置するようにしてもよい。
【0031】
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領
域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。尚、このよ
うな額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設け
られてもよい。
【0032】
周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、デ
ータ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿っ
て設けられている。走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿い、且つ、額
縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。更に、このように画像表示領域10
aの両側に設けられた二つの走査線駆動回路104間をつなぐため、TFTアレイ基板1
0の残る一辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして複数の配線105が設
けられている。
【0033】
TFTアレイ基板10上における対向基板20の4つのコーナー部に対向する領域には
、両基板間を上下導通材で接続するための上下導通端子106が配置されている。これら
により、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる

【0034】
図2において、TFTアレイ基板10上には、駆動素子である画素スイッチング用のT
FTや走査線、データ線等の配線が作り込まれた積層構造が形成される。この積層構造の
詳細な構成については図2では図示を省略してあるが、この積層構造の上に、ITO(In
dium Tin Oxide)等の透明材料からなる画素電極9aが、画素毎に所定のパターンで島状
に形成されている。
【0035】
画素電極9aは、対向電極21に対向するように、TFTアレイ基板10上の画像表示
領域10aに形成されている。TFTアレイ基板10における液晶層50の面する側の表
面、即ち画素電極9a上には、配向膜16が画素電極9aを覆うように形成されている。
【0036】
対向基板20におけるTFTアレイ基板10との対向面上には、遮光膜23が形成され
ている。遮光膜23は、例えば対向基板20における対向面上に平面的に見て、格子状に
形成されている。対向基板20において、遮光膜23によって非開口領域が規定され、遮
光膜23によって区切られた領域が、例えばプロジェクター用のランプや直視用のバック
ライトから出射された光を透過させる開口領域となる。尚、遮光膜23をストライプ状に
形成し、該遮光膜23と、TFTアレイ基板10側に設けられたデータ線等の各種構成要
素とによって、非開口領域を規定するようにしてもよい。
【0037】
遮光膜23上には、ITO等の透明材料からなる対向電極21が複数の画素電極9aと
対向するように形成されている。また遮光膜23上には、画像表示領域10aにおいてカ
ラー表示を行うために、開口領域及び非開口領域の一部を含む領域に、図2には図示しな
いカラーフィルターが形成されるようにしてもよい。対向基板20の対向面上における、
対向電極21上には、配向膜22が形成されている。
【0038】
尚、図1及び図2に示したTFTアレイ基板10上には、上述したデータ線駆動回路1
01、走査線駆動回路104等の駆動回路に加えて、画像信号線上の画像信号をサンプリ
ングしてデータ線に供給するサンプリング回路、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリ
チャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の
当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
【0039】
次に、本実施形態に係る電気光学装置の画素部の電気的な構成について、図3を参照し
て説明する。ここに図3は、本実施形態に係る電気光学装置の画像表示領域を構成するマ
トリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路図である。
【0040】
図3において、画像表示領域10aを構成するマトリクス状に形成された複数の画素の
各々には、画素電極9a及びTFT30が形成されている。TFT30は、画素電極9a
に電気的に接続されており、本実施形態に係る電気光学装置の動作時に画素電極9aをス
イッチング制御する。画像信号が供給されるデータ線6aは、TFT30のソースに電気
的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、・・・、Snは、こ
の順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グ
ループ毎に供給するようにしてもよい。
【0041】
TFT30のゲートには、走査線11が電気的に接続されており、本実施形態に係る電
気光学装置は、所定のタイミングで、走査線11にパルス的に走査信号G1、G2、・・
・、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT
30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期
間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S
2、・・・、Snが所定のタイミングで書き込まれる。画素電極9aを介して電気光学物
質の一例としての液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、・・・、Snは
、対向基板に形成された対向電極との間で一定期間保持される。
【0042】
液晶層50(図2参照)を構成する液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配
向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。例えば、ノーマリ
ーホワイトモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過
率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じ
て入射光に対する透過率が増加され、全体として電気光学装置からは画像信号に応じたコ
ントラストをもつ光が出射される。
【0043】
ここで保持された画像信号がリークすることを防ぐために、画素電極9aと対向電極2
1(図2参照)との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70が付加されている。蓄
積容量70は、画像信号の供給に応じて各画素電極9aの電位を一時的に保持する保持容
量として機能する容量素子である。蓄積容量70の具体的な構成については、後に詳述す
る。
【0044】
次に、上述の動作を実現する画素部の具体的な構成について、図4及び図5を参照して
説明する。ここに図4は、第1実施形態に係る電気光学装置の積層構造を示す断面図であ
る。また図5は、第1実施形態に係る電気光学装置の保持容量の具体的構成を示す概念図
である。尚、図4では、各層・各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、該
各層・各部材ごとに縮尺を異ならしめてある。
【0045】
図4において、TFT30は、半導体層1aと、ゲート電極3bとを含んで構成されて
いる。
【0046】
半導体層1aは、例えばポリシリコンからなり、チャネル領域1a’、データ線側LD
D領域1b及び画素電極側LDD領域1c並びにデータ線側ソースドレイン領域1d及び
画素電極側ソースドレイン領域1eを有している。即ち、TFT30はLDD構造を有し
ている。
【0047】
データ線側ソースドレイン領域1d及び画素電極側ソースドレイン領域1eは、チャネ
ル領域1a’を基準として、Y方向に沿ってほぼミラー対称に形成されている。データ線
側LDD領域1bは、チャネル領域1a’及びデータ線側ソースドレイン領域1d間に形
成されている。画素電極側LDD領域1cは、チャネル領域1a’及び画素電極側ソース
ドレイン領域1e間に形成されている。
【0048】
データ線側LDD領域1b、画素電極側LDD領域1c、データ線側ソースドレイン領
域1d及び画素電極側ソースドレイン領域1eは、例えばイオンインプランテーション法
等の不純物打ち込みによって半導体層1aに不純物を打ち込んでなる不純物領域である。
データ線側LDD領域1b及び画素電極側LDD領域1cはそれぞれ、データ線側ソース
ドレイン領域1d及び画素電極側ソースドレイン領域1eよりも不純物の少ない低濃度な
不純物領域として形成されている。このような不純物領域によれば、TFT30の非動作
時において、ソース領域及びドレイン領域間に流れるオフ電流を低減し、且つTFT30
の動作時に流れるオン電流の低下を抑制できる。
【0049】
尚、TFT30は、LDD構造を有することが好ましいが、データ線側LDD領域1b
、画素電極側LDD領域1cに不純物打ち込みを行わないオフセット構造であってもよい
し、ゲート電極をマスクとして不純物を高濃度に打ち込んでデータ線側ソースドレイン領
域及び画素電極側ソースドレイン領域を形成する自己整合型であってもよい。
【0050】
ゲート電極3bは、例えば導電性ポリシリコンから形成されており、部分的に半導体層
1aのチャネル領域1a’と対向するように形成されている。ゲート電極3b及び半導体
層1a間は、ゲート絶縁膜2によって絶縁されている。また、ゲート電極3bと同層には
、第1中継層91が形成されている。
【0051】
TFTアレイ基板10上のTFT30よりも下地絶縁膜12を介して下層側には、走査
線11が設けられている。走査線11は、例えば、Ti(チタン)、Cr(クロム)、W
(タングステン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)、Pd(パラジウム)等の高
融点金属のうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサ
イド、これらを積層したもの等の遮光性材料からなる。走査線11は、TFTアレイ基板
10における裏面反射や、複板式のプロジェクター等で他の液晶装置から発せられ合成光
学系を突き抜けてくる光などである、TFTアレイ基板10側から装置内に入射する戻り
光から、TFT30のチャネル領域1a’及びその周辺を遮光する下側遮光膜としても機
能する。
【0052】
下地絶縁膜12は、走査線11からTFT30を層間絶縁する機能の他、TFTアレイ
基板10の全面に形成されることにより、TFTアレイ基板10の表面の研磨時における
荒れや、洗浄後に残る汚れ等で画素スイッチング用TFT30の特性の劣化を防止する機
能を有する。
【0053】
TFTアレイ基板10上のTFT30よりも第1層間絶縁膜41を介して上層側には、
蓄積容量70が設けられている。蓄積容量70は、本発明の「保持容量」の一例であり、
第1電極71及び第2電極72が下側容量絶縁膜75を介して対向配置されると共に、第
1電極71及び第3電極73が上側容量絶縁膜76を介して対向配置されることにより形
成されている。
【0054】
第1電極71は、容量線300及び容量中継層200を介して定電位源と電気的に接続
され、固定電位に維持された固定電位側容量電極である。第1電極71は、例えばAl(
アルミニウム)、Ag(銀)等の金属又は合金を含んだ非透明な金属膜から形成されてお
り、TFT30を遮光する上側遮光膜(内蔵遮光膜)としても機能する。尚、第1電極7
1は、例えば、Ti、Cr、W、Ta、Mo、Pd等の高融点金属のうちの少なくとも一
つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したもの等
から構成されていてもよい。この場合には、第1電極71の内臓遮光膜としての機能を高
めることができる。
【0055】
第2電極72は、TFT30の画素電極側ソースドレイン領域1e及び画素電極9aに
電気的に接続された画素電位側容量電極である。より具体的には、第2電極72は、コン
タクトホール83を介して画素電極側ソースドレイン領域1eと電気的に接続されると共
に、コンタクトホール84を介して第1中継層91に電気的に接続されている。第1中継
層91は、コンタクトホール85を介して第2中継層92に電気的に接続されている。第
2中継層92は、コンタクトホール86を介して第3中継層93に電気的に接続されてい
る。第3中継層93は、コンタクトホール87を介して画素電極9aに電気的に接続され
ている。即ち、第2電極72は、第1中継層91、第2中継層92及び第3中継層93と
共に、画素電極側ソースドレイン領域1e及び画素電極9a間の電気的な接続を中継する

【0056】
第3電極73は、コンタクトホール88を介して、第2中継層92と電気的に接続され
ている。これにより、第3電極73は、第2電極72と同じ電位(言い換えれば、画素電
極9aと同電位)とされている。
【0057】
下側容量絶縁膜75及び上側容量絶縁膜76の各々は、例えばHTO(High Temperatu
re Oxide)膜、LTO(Low Temperature Oxide)膜等の酸化シリコン(SiO2)膜、
或いは窒化シリコン(SiN)膜等から構成された多層構造を有している。
【0058】
ここで特に、本実施形態に係る蓄積容量70は、並列に接続された2つの容量が対称性
を有するように構成されている。以下では、蓄積容量70のより具体的な構成について、
説明する。
【0059】
図5において、下側容量絶縁膜75は、第1電極71側から順に、SiNからなる第1
層75aと、SiOからなる第2層75bを有している。一方で、上側容量絶縁膜76
は、第1電極71側から順に、SiNからなる第3層76aと、SiOからなる第4層
76bを有している。更に、第2電極72及び第3電極73は、互いに同一の材料を含ん
で形成されている。
【0060】
上述した構成によれば、第1電極71及び第2電極72間で形成される容量と、第1電
極71及び第3電極73間で形成される容量とは、第1電極71から見て対称性を有する
ものとなる。即ち、第1電極71から見て下層側には、SiNからなる第1層75a、S
iOからなる第2層75b、第2電極72が順に配置される。他方で、第1電極71か
ら見て上層側には、SiNからなる第3層76a、SiOからなる第4層76b、第3
電極73が順に配置される。よって、第1電極の下層側及び上層側で夫々形成される容量
は、その材質が対称性を有するように構成される。
【0061】
本発明者の研究によれば、並列に接続された蓄積容量70が対称性を有することで、供
給される固定電位(即ち、LCCOM)の経時変化を小さくできることが判明している。
この固定電位の経時変化は、表示画像におけるちらつきや焼き付きの原因となる。従って
、本実施形態に係る蓄積容量70によれば、このような表示上の不具合を防止することが
可能である。
【0062】
尚、蓄積容量70を形成する各部材は、材質について対称性を有していれば、形状や大
きさについては対称性を有していなくともよい。よって、形状や大きさの異なる部材で蓄
積容量70が構成されている場合でも、上述した効果は十分に発揮される。
【0063】
図4に戻り、TFTアレイ基板10上の遮光膜200よりも第2層間絶縁膜42を介し
て上層側には、データ線6a、容量中継層200及び第2中継層92が設けられている。
【0064】
データ線6aは、半導体層1aのデータ線側ソースドレイン領域1dに、第1層間絶縁
膜41及び第2層間絶縁膜42を貫通するコンタクトホール81を介して電気的に接続さ
れている。データ線6a及びコンタクトホール81内部は、例えば、Al−Si−Cu、
Al−Cu等のAl(アルミニウム)含有材料、又はAl単体、若しくはAl層とTiN
層等との多層膜からなる。データ線6aは、TFT30を遮光する機能も有している。
【0065】
容量中継層200及び第2中継層92は、第2層間絶縁膜42上においてデータ線6a
と同層に形成されている。データ線6a、容量中継層200及び第2中継層92は、例え
ば金属膜等の導電材料で構成される薄膜を、第2層間絶縁膜42上に薄膜形成法を用いて
形成しておき、当該薄膜を部分的に除去、即ちパターニングすることによって相互に離間
させた状態で形成される。このように、データ線6a、容量中継層200及び第2中継層
92を同一工程で形成すれば、装置の製造プロセスを簡便にできる。
【0066】
TFTアレイ基板10上のデータ線6aよりも第3層間絶縁膜43を介して上層側には
、容量線300及び第3中継層93が設けられている。
【0067】
容量線300は、例えばアルミニウム等の金属を含んで構成されており、上述したよう
に、第1電極71に対して固定電位を供給する。一方で、容量線300と同層に形成され
た第3中継層93は、半導体層1aにおける画素電極側ソースドレイン領域1eと画素電
極9aとの電気的導通を中継している。
【0068】
画素電極9aは、容量線300よりも第4層間絶縁膜44を介して上層側に形成されて
いる。画素電極9aは、第3中継層93,第2中継層92,第1中継層、及び第2電極7
2を介して半導体層1aの画素電極側ソースドレイン領域1eに電気的に接続されている
。画素電極9aと第3中継層93とを電気的に接続するコンタクトホール87は、第4層
間絶縁層44を貫通するように形成された孔部の内壁にITO等の画素電極9aを構成す
る導電材料が成膜されることによって形成されている。画素電極9aの上側表面には、ラ
ビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜が設けられている。
【0069】
上述した画素部の構成は各画素部に共通であり、画像表示領域10a(図1参照)には
、かかる画素部が周期的に形成されている。
【0070】
以上説明したように、本発明の電気光学装置によれば、TFT30と画素電極9aとの
間に設けられた蓄積容量70が、対称性を有するように構成されている。従って、表示上
の不具合を防止することができ、結果的に高品質な画像を表示することが可能となる。
【0071】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る電気光学装置について、図6及び図7を参照して説明する。
ここに図6は、第2実施形態に係る電気光学装置の積層構造を示す断面図である。また図
7は、第2実施形態に係る電気光学装置の保持容量の具体的構成を示す概念図である。尚
、図6では、各層・各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、該各層・各部
材ごとに縮尺を異ならしめてある。
【0072】
以下に説明する第2実施形態は、上述の第1実施形態と比べて、一部の積層構造が異な
り、その他の構成については概ね同様である。このため第2実施形態では、第1実施形態
と異なる部分について詳細に説明し、その他の重複する部分については適宜説明を省略す
る。
【0073】
図6において、第2実施形態に係る電気光学装置では、第1電極71が、TFT30及
び画素電極9a間に電気的に接続されている。具体的には、第1電極71は、コンタクト
ホール83を介して半導体層1aの画素電極側ソースドレイン領域1eに電気的に接続さ
れると共に、コンタクトホール85を介して第2中継層92に電気的に接続されている。
【0074】
他方、第2電極72及び第3電極73は、容量線300と電気的に接続されている。具
体的には、第2電極はコンタクトホール201、第3電極73はコンタクトホール202
を介して、容量中継層200にそれぞれ電気的に接続されている。
【0075】
以上のように、第2実施形態に係る電気光学装置では、蓄積容量70を構成する各電極
の電気的関係が、第1実施形態に係る電気光学装置とは逆になっている。このような場合
でも、第1電極71の上層側及び下層側の各々において、並列に接続された2つの容量を
実現できる。
【0076】
図7において、下側容量絶縁膜75は、第1電極71側から順に、SiNからなる第1
層75aと、SiOからなる第2層75bを有している。一方で、上側容量絶縁膜76
は、第1電極71側から順に、SiNからなる第3層76aと、SiOからなる第4層
76bを有している。更に、第2電極72及び第3電極73は、互いに同一の材料を含ん
で形成されている。
【0077】
上述した構成によれば、第1電極71及び第2電極72間で形成される容量と、第1電
極71及び第3電極73間で形成される容量とは、第1電極71から見て対称性を有する
ものとなる。よって、第1実施形態と同様に、第1電極の下層側及び上層側で夫々形成さ
れる容量は、その材質が対称性を有するように構成される。
【0078】
以上説明したように、第2実施形態に係る電気光学装置によれば、TFT30と画素電
極9aとの間に設けられた蓄積容量70が、対称性を有するように構成されている。従っ
て、表示上の不具合を防止することができ、結果的に高品質な画像を表示することが可能
となる。
【0079】
<電子機器>
次に、上述した電気光学装置である液晶装置を各種の電子機器に適用する場合について
説明する。ここに図8は、プロジェクターの構成例を示す平面図である。以下では、この
液晶装置をライトバルブとして用いたプロジェクターについて説明する。
【0080】
図8に示されるように、プロジェクター1100内部には、ハロゲンランプ等の白色光
源からなるランプユニット1102が設けられている。このランプユニット1102から
射出された投射光は、ライトガイド1104内に配置された4枚のミラー1106及び2
枚のダイクロイックミラー1108によってRGBの3原色に分離され、各原色に対応す
るライトバルブとしての液晶パネル1110R、1110B及び1110Gに入射される

【0081】
液晶パネル1110R、1110B及び1110Gの構成は、上述した液晶装置と同等
であり、画像信号処理回路から供給されるR、G、Bの原色信号でそれぞれ駆動されるも
のである。そして、これらの液晶パネルによって変調された光は、ダイクロイックプリズ
ム1112に3方向から入射される。このダイクロイックプリズム1112においては、
R及びBの光が90度に屈折する一方、Gの光が直進する。従って、各色の画像が合成さ
れる結果、投射レンズ1114を介して、スクリーン等にカラー画像が投写されることと
なる。
【0082】
ここで、各液晶パネル1110R、1110B及び1110Gによる表示像について着
目すると、液晶パネル1110Gによる表示像は、液晶パネル1110R、1110Bに
よる表示像に対して左右反転することが必要となる。
【0083】
尚、液晶パネル1110R、1110B及び1110Gには、ダイクロイックミラー1
108によって、R、G、Bの各原色に対応する光が入射するので、カラーフィルターを
設ける必要はない。
【0084】
尚、図8を参照して説明した電子機器の他にも、モバイル型のパーソナルコンピュータ
や、携帯電話、液晶テレビや、ビューファインダー型、モニタ直視型のビデオテープレコ
ーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、
ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等が挙げられ
る。そして、これらの各種電子機器に適用可能なのは言うまでもない。
【0085】
また、本発明は上述の各実施形態で説明した液晶装置以外にも反射型液晶装置(LCO
S)、プラズマディスプレイ(PDP)、電界放出型ディスプレイ(FED、SED)、
有機ELディスプレイ、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、電気泳動装置等に
も適用可能である。
【0086】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体
から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような
変更を伴う電気光学装置、及び該電気光学装置を備えた電子機器もまた本発明の技術的範
囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0087】
6a…データ線、9a…画素電極、10…TFTアレイ基板、10a…画像表示領域、
11…走査線、20…対向基板、30…TFT、50…液晶層、70…蓄積容量、71…
第1電極、72…第2電極、73…第3電極、75…下側容量絶縁膜、75a…第1層、
75b…第2層、76…上側容量絶縁膜、76a…第3層、76b…第4層、300…容
量線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、画素毎に設けられた画素電極と、
前記基板と前記画素電極との間に、前記画素電極に対応して設けられたトランジスタと

前記画素電極と前記トランジスタとの間に設けられており、第1電極、前記第1電極の
下層側に下側容量絶縁膜を介して対向配置された第2電極、及び前記第1電極の上層側に
上側容量絶縁膜を介して対向配置された第3電極からなる保持容量と
を備え、
前記下側容量絶縁膜及び前記上側容量絶縁膜は、それぞれ複数の層を有しており、
前記下側容量絶縁膜及び前記第2電極と、前記上側容量絶縁膜及び前記第3電極とは、
前記第1電極から見て対称性を有するように形成されている
ことを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記第1電極には、所定の定電位が供給されており、
前記第2電極及び前記第3電極は、それぞれ前記画素電極及び前記トランジスタに電気
的に接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記第1電極は、前記画素電極及び前記トランジスタに電気的に接続されており、
前記第2電極及び前記第3電極には、それぞれ所定の定電位が供給されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の電気光学装置を具備してなることを特徴とする
電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−221071(P2011−221071A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86764(P2010−86764)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】