説明

電気光学装置及び電気光学装置の製造方法、並びに電子機器

【課題】例えば、画素電極及びコンタクトホールの接触抵抗を増大させることなく、液晶装置における光の透過率を高める。
【解決手段】第2画素電極部分39a2は、画素72gのうち開口領域72aの外側の非開口領域72bに形成され、且つ第1画素電極部分39a1より膜厚が厚い電極部分である。非開口領域72bは、画素72gのうち開口領域72aを除く部分を占める領域である。第1画素電極部分39a1及び第2画素電極部分39a2を含んで構成される画素電極9aによれば、画素電極9a全体の膜厚が第2画素電極部分39a2の膜厚に等しい場合に比べて、画素電極9aを透過する光の透過率を高めることが可能である。したがって、液晶装置1によれば、光源から出射された光のうち第1画素電極部分39a1によって吸収される光の割合を低減でき、同じ光源を用いた場合でも画像の輝度を高めることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、液晶装置等の電気光学装置、及び電気光学装置の製造方法、並びにそのような電気光学装置をライトバルブとして具備してなるプロジェクタ等の電子機器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気光学装置の一例である液晶装置では、表示される画像のコントラストを高めることを目的として、これら画素電極を相互に電気的に絶縁する段差部を備えた液晶表示装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、電極材料の非対称性を一因として発生する内部起電力を低減するために段差部が形成された反射型液晶装置が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−31228号公報
【特許文献2】特開2004−170604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の電気光学装置の一例である透過型の液晶装置では、画素電極における光の反射を抑制し、且つ光の透過率を高めるために、画素電極の下地膜及び画素電極の夫々の屈折率の組み合わせを最適することに加え、画素電極の膜厚を薄くすることによって、画素において実質的に光が透過する開口領域における光の透過率が高まることが本願発明者等の考察により分かっている。
【0005】
しかしながら、画素電極の膜厚を薄くした場合、画素電極及びその下層側の配線部を電気的に接続するコンタクト部の接触抵抗が増大し、画像信号に応じた電位を画素電極に供給することが困難となる問題点が生じる。このような接触抵抗の増大は、画素電極の膜厚を薄くすることに起因してコンタクト部における電極材料の付き回り状態が悪化し、コンタクト部及び画素電極が十分に接続されていないことが一つの原因であると考えられる。また、反射型の液晶装置においても、画素電極が光を反射する反射率を高めることを目的として当該画素電極の膜厚を薄くした場合に、透過型の液晶装置と同様に接触抵抗の増大を招いてしまい、液晶装置の表示性能を低下させてしまう。
【0006】
画素電極に対向するように設けられた対向電極は、相互に物理的に分断された状態で複数の画素の夫々に形成されるのではなく、複数の画素に渡って物理的に連続した一の導電膜として形成される。このような対向電極について、透過率を高めることを目的としてその膜厚を薄くした場合、対向電極のシート抵抗が増大する。このようなシート抵抗の増大によれば、画素電極の電位に対して一定の電位に保持されるべき対向電極の電位が変動し、コントラスト低下等の表示不良を生じさせてしまう問題点が生じる。
【0007】
よって、本発明は上記問題点等に鑑みてなされたものであり、例えば、画素電極及びコンタクト部の接触抵抗を増大させることなく、液晶装置等の電気光学装置の表示性能を高めることができる電気光学装置及びその製造方法を提供することを課題とする。また、光源からの光量を低減させても、表示される画像の輝度を維持し、消費電力の低減に繋がる環境に配慮した電気光学装置及びその製造方法を提供することを課題とする。また、対向電極のシート抵抗が増大することを可能な限り抑制し、且つ表示性能を高めることができる液晶装置等の電気光学装置の製造方法を提供する。加えて、これら電気光学装置を具備してなるプロジェクタ等の電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の発明に係る電気光学装置は上記課題を解決するために、第1基板と、該第1基板上の表示領域を構成する複数の画素の夫々に形成されており、(i)前記画素の開口領域に重なる第1画素電極部分と、(ii)前記画素のうち前記開口領域の外側の非開口領域に形成され、且つ前記第1画素電極部分より膜厚が厚い第2画素電極部分とを有する画素電極とを備える。
【0009】
本発明に係る電気光学装置によれば、第1基板は、例えば、画素スイッチング素子等の半導体素子が形成された素子基板である。素子基板等の基板上の表示領域を構成する複数の画素は、例えばマトリクス状に配列された領域であり、画素電極はこれら画素に形成された画素電極の一つである。
【0010】
開口領域は、画素の一部の領域であって、例えば、液晶装置等の電気光学装置においては、遮光性を有する配線及び遮光膜が光源から出射された光を遮光し、且つ実質的に画像表示に寄与しない領域を除く領域である。したがって、当該電気光学装置が透過型の液晶装置である場合には、第1画素電極部分は、画素のうち実質的に画像表示に寄与する光を透過させる領域に形成された電極部分である。また、当該電気光学装置が反射型の液晶装置である場合には、第1画素電極部分は、画素電極のうち反射すべき光が照射される電極部分である。
【0011】
第2画素電極部分は、前記画素のうち前記開口領域の外側の非開口領域に形成され、且つ前記第1画素電極部分より膜厚が厚い電極部分である。非開口領域は、画素のうち開口領域を除く部分を占める領域である。より具体的には、非開口領域は、例えば、基板上において、相互に隣り合う画素の夫々の開口領域間に位置する領域である。
【0012】
このような第1画素電極部分及び第2画素電極部分から構成される画素電極によれば、透過型の液晶装置等の電気光学装置では、画素電極全体の膜厚が第2画素電極部分の膜厚に等しい場合に比べて、画素電極を透過する光の透過率を高めることが可能である。したがって、例えば、光源から出射された光のうち第1画素電極部分によって吸収される光の割合を低減でき、同じ光源を用いた場合でも画像の輝度を高めることが可能である。したがって、本発明に係る電気光学装置によれば、表示される画像の表示品位を高めることが可能である。
【0013】
加えて、本発明に係る電気光学装置によれば、例えば、表示される画像の輝度を一定に維持しつつ、光源から出射される出射光の光量を低減できるため、光源で消費される電力を低減でき、環境に配慮した電気光学装置を提供できる。
【0014】
また、本発明に係る電気光学装置によれば、画素電極及びその下層側の回路部等を電気的に相互に接続するコンタクト部を第2画素電極部分に接続することによって、第1画素電極部分にコンタクト部を接続する場合に比べて、コンタクトホール等の付き回り状態、即ち物理的な接続状態を良好な状態にすることができる。したがって、本発明に係る電気光学装置によれば、画素電極全体の膜厚を第1画素電極部分と同じ膜厚にする場合に比べて、画素電極及びコンタクト部相互の接触抵抗を低減できる。よって、本発明に係る電気光学装置は、画素電極の光の透過率を高めるために犠牲にせざるを得なかった接触抵抗の増大を抑制できるため、画像信号に応じた電位に画素電極が設定され、透過率の向上及び画素電極の電位の変動が改善された高い表示性能を有する。
【0015】
尚、本発明に係る電気光学装置によれば、当該電気光学装置が例えば反射型の液晶装置である場合であっても、画素電極の下層側に設けられた絶縁膜等の下地膜の屈折率及びITO等の画素電極の夫々の屈折率の組み合わせに応じて、画素電極による光の反射率が高まるように第1画素電極部分の膜厚を薄くでき、当該電気光学装置の表示性能を高めることが可能である。
【0016】
本発明に係る電気光学装置の一の態様では、前記画素電極は、前記画素電極の縁に形成され、且つ前記第2画素電極部分の中央部より厚みが薄い平坦部を含む段差部を有していてもよい。
【0017】
この態様によれば、段差部は、前記第2画素電極部分の中央部より厚みが薄い平坦部を含んでおり、第2画素電極部分の中央部及び平坦部の高さに応じた段差形状を有している。このような段差部は、例えば、前記画素電極の複数の縁のうち隣の画素電極に向かい合う縁に形成されている。
【0018】
即ち、この態様によれば、画素電極の複数の縁のうち隣の画素電極に向かい合う縁は、第2画素電極部分の中央部の厚みと等しい高さから画素電極の下地に向かって切り立った形状を有する端面から構成されているのではなく、第2画素電極部分の中央部の高さから一旦低くなった部分、即ち、中央部より厚みが薄い平坦部と、中央部との夫々の厚みの違いに応じて形成された段差形状を有している。
【0019】
したがって、本発明に係る電気光学装置によれば、電気光学装置の動作時に、画素電極及び、当該画素電極に隣り合う画素電極の夫々の電位が相互に異なる電位に設定された際に、段差部と、隣り合う画素電極の複数の縁のうち当該段差部に向かい合う縁との間で基板面に沿って生じる横電界が、これら画素電極間に存在する液晶などの電気光学物質の配向状態に及ぼす影響を低減できる。加えて、段差部を設けない場合に比べて、例えば、複数の画素電極に渡って形成された配向膜を平坦に形成できるため、配向膜のラビングむらを低減でき、ラビングむらを一因として生じる光抜け等の表示不良を低減することが可能である。
【0020】
尚、横電界及び配向膜のラビングむらの夫々を低減する観点からみれば、画素電極の縁を断面上テーパ形状に形成することも考えられるが、製造プロセスにおける加工精度のばらつきを考えると、基板の基板面に対して傾斜したテーパ形状の傾斜面を複数の画素電極相互で均一となるように形成することは技術的困難である。しかしながら、本発明に係る電気光学装置によれば、第2画素電極部分の中央部の厚みより薄い平坦部を縁に形成すればよいので、縁の形状をテーパ形状にする場合に比べて、製造プロセスにおける加工条件を制御し易い利点もある。
【0021】
本発明に係る電気光学装置の他の態様では、前記第1基板に対向するように配置された第2基板と、前記第2基板の両面のうち前記第1基板に臨む面の側において前記画素電極に向かい合うように形成され、且つ透明導電材料から構成されており、(i)前記開口領域に重なる重なり領域に形成された第1対向電極部分と、(ii)前記重なり領域の外側に形成され、且つ前記第1対向電極部分より膜厚が厚い第2対向電極部分とを有する対向電極とを更に備えていてもよい。
【0022】
この態様によれば、第2基板は、例えば、画素スイッチング素子等の半導体素子が形成された素子基板である第1基板上に配置された対向基板である。
【0023】
対向電極は、前記第2基板の両面のうち前記第1基板に臨む面の側において前記画素電極に向かい合うように形成され、且つITO等の透明導電材料から構成されている。このような対向電極は、画素毎に相互に分断されることなく、連続的に第1基板に臨む面側に形成された一の透明な電極である。
【0024】
対向電極は、前記開口領域に重なる重なり領域に形成された第1対向電極部分と、前記重なり領域の外側に形成され、且つ前記第1対向電極部分より膜厚が厚い第2対向電極部分とを有している。
【0025】
重なり領域は、開口領域に重なっていればよく、そのサイズが開口領域より大きくてもよい。重なり領域の外側とは、画素のうち当該重なり領域を除く範囲を占める領域をいい、例えば、相互の隣り合う画素の夫々の開口領域の間の領域に相当する。このような重なり領域に形成された第2対向電極部分は、第1対向電極部分の膜厚より厚い。言い換えれば、開口領域において実質的に光が透過する第1対向電極の膜厚が第2対向電極部分の膜厚より薄くなっている。したがって、対向電極全体の膜厚を第2対向電極部分の膜厚と等しい膜厚で一様に形成する場合に比べて、光源から出射された光のうち第1対向電極部分で吸収される光を低減できる。よって、一定の光源を用いた場合であっても、当該電気光学装置の動作時において表示領域に表示される画像の輝度を高めることが可能であり、電気光学装置の表示性能を高めることができる。
【0026】
加えて、この態様によれば、画像の輝度を低下させることなく、光源で消費される電力を低減きるため、環境に配慮した電気光学装置を提供することも可能である。
【0027】
本発明の第2の発明に係る電気光学装置は上記課題を解決するために、第1基板と、該第1基板上の表示領域を構成する複数の画素の夫々に形成された画素電極と、前記第1基板に対向するように前記第1基板上に配置された第2基板と、前記第2基板の両面のうち前記第1基板に臨む面の側において前記画素電極に向かい合うように形成され、且つ透明導電材料から構成されており、(i)前記画素の開口領域に重なる重なり領域に形成された第1対向電極部分と、(ii)前記重なり領域の外側に形成され、且つ前記第1対向電極部分より膜厚が厚い第2対向電極部分とを有する対向電極とを備える。
【0028】
本発明の第2の発明に電気光学装置によれば、上述の電気光学装置と同様に、画像の輝度を高めることが可能であると共に、表示品位を低下させることなく、光源の消費電力を低減できる。
【0029】
本発明の第3の発明に係る電気光学装置の製造方法は上記課題を解決するために、第1基板上の表示領域を構成する複数の画素の夫々の開口領域の外側の非開口領域に第1導電膜を形成する工程と、前記第1基板上から前記開口領域及び前記非開口領域に電極材料を成膜することによって、前記開口領域及び前記非開口領域に重なり、且つ前記第1導電膜を覆う第2導電膜を形成する工程と、前記第2導電膜が前記複数の画素相互で互いに分断されるように前記第2導電膜を所定の形状にパターニングすることによって、該分断された第2導電膜及び前記第1導電膜から各々構成される画素電極を前記画素に形成する工程とを備える。
【0030】
本発明の第3の発明に係る電気光学装置の製造方法によれば、第1基板上の表示領域を構成する複数の画素の夫々の開口領域の外側の非開口領域に第1導電膜を形成する。第1導電膜は、例えば、画素のうち開口領域となるべき領域の外側の領域に形成される。このような第1導電膜は、例えば、液晶装置等の電気光学装置の画素電極の電極材料として汎用されるITO等の透明導電材料をスパッタリング法を用いて成膜する。その後、当該成膜された導電膜をフォトエッチング等のエッチング法を用いて所定の形状にパターニングすることによって形成される。
【0031】
次に、前記第1基板上から前記開口領域及び前記非開口領域に、例えば、第1導電膜と同種のITO等の透明導電材料からなる電極材料を成膜することによって、前記開口領域及び前記非開口領域に重なり、且つ前記第1導電膜を覆う第2導電膜を形成する。
【0032】
これにより、第1導電膜及び第2導電膜が相互に積層された一の電極部分と、当該電極部分より第1導電膜の膜厚分だけ膜厚が薄い第2導電膜から構成された他の電極部分が形成される。
【0033】
次に、前記第2導電膜が前記複数の画素相互で互いに分断されるように前記第2導電膜を所定の形状にパターニングすることによって、該分断された第2導電膜及び前記第1導電膜から各々構成される画素電極を前記画素に形成する。これにより、複数の画素に各々形成され、隣り合う電極と相互に分断された画素電極が形成される。
【0034】
したがって、本発明に係る電気光学装置の製造方法によれば、上述の第1の発明に係る電気光学装置を製造することが可能であり、表示性能が高められた液晶装置等の電気光学装置を提供できる。
【0035】
本発明の第4の発明に係る電気光学装置の製造方法は上記課題を解決するために、第1基板上の表示領域を構成する複数の画素を覆うように導電膜を形成する工程と、(i)前記導電膜のうち前記画素の開口領域に重なる部分を覆う第1レジスト膜部、及び、(ii)前記導電膜のうち前記開口領域の外側の非開口領域に重なり、且つ前記第レジスト膜部より膜厚が厚い第2レジスト膜を有するレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜上から前記導電膜をエッチングすることによって、(i)前記開口領域に重なる第1画素電極部分と、(ii)前記非開口領域に形成され、且つ前記第1画素電極部分より膜厚が厚い第2画素電極部分とを有する画素電極を形成する工程とを備える。
【0036】
本発明に係る電気光学装置の製造方法によれば、第1基板上の表示領域を構成する複数の画素を覆うように、例えば、ITO等の透明導電材料をスパッタリング法等の成膜法を成膜することによって、導電膜を形成する。
【0037】
次に、前記導電膜のうち前記画素の開口領域に重なる部分を覆う第1レジスト膜部、及び、前記導電膜のうち前記開口領域の外側の非開口領域に重なり、且つ前記第1レジスト膜部より膜厚が厚い第2レジスト膜部を有するレジスト膜を形成する。相互に膜厚の異なる第1レジスト膜部及び第2レジスト膜部の夫々は、一旦、第2レジスト膜部と等しい膜厚となるようにレジスト材料を画素全体に成膜した後、フォトエッチングなどの汎用のパターニング法を用いて、当該成膜されたレジスト材料の膜のうち開口領域に重なる部分を除去することによって形成される。
【0038】
次に、前記レジスト膜上から前記導電膜をエッチングすることによって、前記開口領域に重なる第1画素電極部分と、前記非開口領域に形成され、且つ前記第1画素電極部分より膜厚が厚い第2画素電極部分とを有する画素電極を形成する。
【0039】
より具体的には、第1レジスト膜部及び第2レジスト膜部相互の膜厚の違いに応じて、導電膜のうち開口領域及び非開口領域の夫々に重なる部分に対するエッチング量が相互に異なる。このようなエッチング量の違いに応じて、導電膜のうち非開口領域に重なる部分は、導電膜のうち開口領域に重なる部分より膜厚が厚くなるように形成される。ここで、第1レジスト膜部の膜厚を調整しておくことによって、最終的に形成される画素電極のうち開口領域に重なる部分の膜厚をその外側の部分より薄く形成することができ、例えば、光の透過率が高い透過型の液晶装置等の電気光学装置を製造できる。また、開口領域に重なる部分の膜厚を薄くし、光の反射率が高められた反射型の液晶装置等の電気光学装置を製造することも可能である。
【0040】
加えて、導電膜のうち非開口領域に重なる部分は、導電膜のうち開口領域に重なる部分の膜厚より厚くなるため、当該膜厚が厚い部分でコンタクト部との電気的に接続をとれば、開口領域及び非開口領域の夫々に重なる部分から構成される画素電極と、コンタクト部との接触抵抗を低減することも可能である。
【0041】
したがって、本発明の第4の発明に係る電気光学装置の製造方法によれば、上述の本発明の第1の発明に係る電気光学装置を製造でき、表示性能が高められた電気光学装置を提供することが可能である。
【0042】
本発明に係る電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置を具備してなる。
【0043】
本発明に係る電子機器によれば、上述した本発明に係る電気光学装置を具備してなるので、高品位の表示が可能な、プロジェクタ等の投写型表示装置、直視型ディスプレイ装置、携帯電話、カーナビゲーションシステムに適用されるディスプレイ装置、電子手帳、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ等の小型情報機器、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネル等の各種電子機器を実現できる。
【0044】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る電気光学装置及び電気光学装置の製造方法、並びに電子機器の各実施形態を説明する。本実施形態では、電気光学装置の一例としてアクティブマトリクス駆動方式を採用した液晶装置を例に挙げる。
【0046】
<第1実施形態>
図1乃至図17を参照しながら、本発明の第1の発明に係る電気光学装置、並びに、本発明の第3及び第4の発明に係る電気光学装置の各実施形態を説明する。
【0047】
<1:電気光学装置>
図1乃至図9を参照しながら、本実施形態に係る液晶装置1を説明する。図1は、本発明の「第1基板」の一例である素子基板10をその上に形成された各構成要素と共に、本発明の「第2基板」の一例である対向基板20の側から見た液晶装置1の平面図であり、図2は、図1のII−II´断面図である。
【0048】
図1及び図2において、液晶装置1では、素子基板10及び対向基板20が相互に対向配置されている。素子基板10及び対向基板20間に液晶層50が封入されており、素子基板10と対向基板20とは、複数の画素で構成された本発明の「表示領域」の典型例である画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。シール材52中には、素子基板10と対向基板20との間隔(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。
【0049】
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。但し、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、素子基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。尚、画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域が存在する。より具体的には、本実施形態では、素子基板10の中心から見て、額縁遮光膜53より外側の領域が周辺領域として規定されている。
【0050】
液晶装置1は、データ線駆動回路101、及び走査線駆動回路104を備えている。周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域において、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102が素子基板10の一辺に沿って設けられている。走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。走査線駆動回路104は、額縁遮光膜53に覆われるように形成された複数の配線105によって相互に電気的に接続されている。対向基板20の4つのコーナー部には、素子基板10及び対向基板20間の上下導通端子として機能する上下導通材106が配置されている。
【0051】
図2において、素子基板10上には、画素スイッチング用のトランジスタの一例であるTFT、走査線、データ線等の配線が形成された後の画素電極9a上に、配向膜が形成されている。他方、対向基板20上には、対向電極21の他、格子状又はストライプ状の遮光膜23、更には最上層部分に配向膜が形成されている。液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間で、液晶装置1の動作時に所定の配向状態をとる。
【0052】
次に、図3を参照しながら、画像表示領域10aにおける回路構成を説明する。図3は、本実施形態に係る液晶装置の画像表示領域における回路構成を示した回路図である。
【0053】
図3において、液晶装置1の画像表示領域10aを構成するマトリクス状に形成された複数の画素部72の夫々は、画素電極9a、TFT30、及び液晶素子50aを備えている。TFT30は、画素電極9aに電気的に接続されており、液晶装置1の動作時に画素電極9aをスイッチング制御し、当該制御に応じて液晶素子50aを駆動する。画像信号が供給されるデータ線6aは、TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、・・・、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
【0054】
TFT30のゲートに走査線3aが電気的に接続されており、液晶装置1は、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、・・・、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけオン状態にすることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、・・・、Snが所定のタイミングで書き込まれる。画素電極9aを介して液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、・・・、Snは、対向基板に形成された対向電極との間で一定期間保持される。
【0055】
液晶層50に含まれる液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。ノーマリーホワイトモードであれば、各画素部の単位で印加された電圧に応じて入射光或いは反射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素部の単位で印加された電圧に応じて入射光或いは反射光に対する透過率が増加され、全体として液晶装置1からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が出射される。保持容量70は、画像信号がリークすることを防ぐために、画素電極9aと対向電極との間に形成される液晶素子50aと電気的に並列に接続されており、固定電位線300を介して一方の容量電極に固定電位が供給される。
【0056】
次に、図4乃至図9を参照しながら、液晶装置1の具体的な構成を詳細に説明する。図4は、液晶装置1における複数の画素電極9aの配列状態を図式的に示した液晶装置1の図式的平面図である。図5は、液晶装置1の画像表示領域10aの一部を拡大して示した素子基板10の拡大平面図である。図6は、図5に対応する対向基板20の拡大平面図である。尚、図5及び図7では、相互に隣り合う画素電極9a1及び9a2を区別するために便宜上相互に異なる参照符号を付している。図7は、図5及び図6のVII−VII’線断面図である。図8は、比較例と共に、液晶装置1の液晶に加わる電界強度を図式的に示した図式的断面図である。図9は、画素電極を透過する光の透過率を光の波長に対して測定した測定値を示すグラフであり、画素電極の膜厚及び反射防止膜(AR膜)の各種条件をパラメータとして示している。
【0057】
図4において、複数の画素電極9aの夫々は、素子基板10上の画像表示領域10aを構成するように、図中X方向及びY方向に沿って規定された複数の画素72gに形成されている。
【0058】
図5において、複数の画素電極9aの夫々は、上述したTFT30(図3参照)と共に、複数の画素部72の夫々を構成している。画素電極9aは、第1画素電極部分39a1、第2画素電極部分39a2及び平坦部39a3を含んで構成されている。コンタクトホール83は、下層側に形成された配線層と第2画素電極部分39a2とを電気的に接続している。後述するように、コンタクトホール83は、画素電極9aのうち相対的に膜厚が厚い電極部分に対応して設けられており、下層側に形成された配線層と電気的に接続されている。したがって、画素電極9aと下層側に形成された配線層との接触抵抗は、膜厚が薄い部分に接続される場合に比べて低減されている。
【0059】
図6において、対向電極21は、X方向及びY方向に沿って複数の画素72gに渡って連続した一の電極膜として形成され、画像表示領域10a全体に重なっている。対向電極21は、各画素72gにおいて、第1対向電極部分21a1及び第2対向電極部分21a2を含んで構成されている。
【0060】
次に、図7を参照しながら、画素電極9a及び対向電極21をより詳細に説明する。
【0061】
図7において、画素電極9a1、及び画素電極9a2の夫々は、素子基板10に順次形成された絶縁膜41、42及び43上に形成されている。素子基板10には、ソース1s、チャネル1c、及びドレイン1dを含む半導体層1aを備えたTFT30が絶縁膜41及び42に埋め込まれるように形成されている。絶縁膜42上における画素電極9a1及び9a2間の領域には、TFT30に入射する光を遮光すると共に、画素72gを規定する遮光膜80が形成されている。遮光膜80は、例えば、アルミニウム等の金属材料で構成されており、画素電極9a及びその下層側の回路部を電気的に接続する配線層として兼用されている。
【0062】
開口領域72aは、画素72gの一部を占める領域であって、画素72gのうち遮光膜80が重なっておらず、実質的に画像表示に寄与する領域である。したがって、透過型液晶装置である液晶装置1においては、第1画素電極部分39a1は、画素72gのうち実質的に画像表示に寄与する光を透過させる領域に形成された電極部分である。また、液晶装置1が対向基板20側から入射光を画素電極9aによって反射する反射型の液晶装置である場合には、第1画素電極部分39a1は、画素電極9aのうち反射すべき光が照射される電極部分である。第2画素電極部分39a2は、画素72gのうち開口領域72aの外側の非開口領域72bに形成されている。また、第2画素電極部分39a2は、第1画素電極部分39a1より膜厚が厚く形成されている。なお、第2画素電極部分39a2を開口領域72a及び非開口領域72bにそれぞれ重なるように形成してもよい。
【0063】
第1画素電極部分39a1及び第2画素電極部分39a2を含んで構成される画素電極9aによれば、画素電極9a全体の膜厚が第2画素電極部分39a2の膜厚に等しい場合に比べて、画素電極9aを透過する光の透過率を高めることが可能である。したがって、液晶装置1によれば、光源から出射された光のうち第1画素電極部分39a1によって吸収される光の割合を低減でき、同じ光源を用いた場合でも画像の輝度を高めることが可能である。したがって、液晶装置1によれば、表示される画像の表示品位を高めることが可能である。
【0064】
加えて、液晶装置1によれば、第1画素電極部分39a1による光の吸収率が低いため、表示される画像の輝度を一定に維持しつつ、光源から出射される出射光の光量を低減できる。よって、液晶装置1は、光源で消費される電力を低減でき、環境に配慮した装置構成を有している。
【0065】
液晶装置1によれば、画素電極9a1及びその下層側の回路部等を電気的に相互に接続する、本発明の「コンタクト部」の一例であるコンタクトホール83が第2画素電極部分39a2に対応して設けられているため、第1画素電極部分39a1にコンタクトホール83を接続する場合に比べて、コンタクトホール83における導電材料の付き回り状態、即ち画素電極9a及びコンタクトホール83相互の物理的な接続状態を良好な状態にすることができる。
【0066】
したがって、液晶装置1によれば、画素電極9a全体の膜厚を第1画素電極部分39a1と同じ膜厚にする場合に比べて、画素電極9a及びコンタクトホール83相互の接触抵抗を低減できる。よって、液晶装置1は、画素電極9aの光の透過率を高めるために犠牲にせざるを得なかった接触抵抗の増大を抑制できるため、その動作時に、画像信号に応じた電位に画素電極9aの電位を設定でき、透過率を向上させることができ、且つ画素電極9aの電位の変動が改善された高い表示性能を有する。
【0067】
尚、液晶装置1によれば、液晶装置1が例えば反射型の液晶装置である場合でも、画素電極9aの下層側に設けられた絶縁膜等の下地膜の屈折率及びITO等の画素電極9aの夫々の屈折率の組み合わせに応じて、画素電極9aによる光の反射率が高まるように第1画素電極部分39a1の膜厚を薄くでき、当該液晶装置1の表示性能を高めることが可能である。
【0068】
対向電極21は、対向基板20の両面のうち素子基板10に臨む面の側において画素電極9aに向かい合うように形成され、且つITO等の透明導電材料から構成されている。対向電極21は、画素72g毎に相互に分断されることなく、複数の画素72gに渡って連続的に形成された一の透明な電極である。
【0069】
対向電極21は、開口領域72aに重なる重なり領域72cに形成された第1対向電極部分21a1と、重なり領域72cの外側に形成され、且つ第1対向電極部分21a1より膜厚が厚い第2対向電極部分21a2とを有している。本実施形態では、重なり領域72cは、開口領域72aに一致しているが、少なくとも開口領域72aに重なっていればよく、そのサイズが開口領域72aより大きくても、若干小さくても同様の効果が得られる。第2対向電極部分21a2は、画素72gのうち当該重なり領域72cを除く範囲を占める領域である非開口領域72bに形成されている。
【0070】
第2対向電極部分21a2の膜厚は、第1対向電極部分の膜厚より厚い。言い換えれば、開口領域72aにおいて実質的に光が透過する第1対向電極21a1の膜厚が第2対向電極部分21a2の膜厚より薄くなっている。したがって、対向電極21全体の膜厚を第2対向電極部分21a1の膜厚と等しい膜厚で一様に形成する場合に比べて、光源から出射された光のうち第1対向電極部分21a1で吸収される光を低減できる。よって、一定の光源を用いた場合であっても、液晶装置1の動作時において画像表示領域10aに表示される画像の輝度を高めることが可能であり、液晶装置1の表示性能を高めることができる。
【0071】
加えて、このような対向電極21によれば、画像の輝度を低下させることなく、光源で消費される電力を低減きるため、液晶装置1は環境に配慮した装置構成を有している。
【0072】
また、第1対向電極21a1のみで対向電極を形成した場合、膜厚が薄い為にシート抵抗が高くなり、対向基板側の一様な電極としての機能が果たせなくなるといった不具合を生じる。それに対し、本形態によると、膜厚の厚い第2対向電極21a2が主に非開口領域72bに形成されることで、シート抵抗の上昇を抑え、対向電極としての機能を維持する事が可能となる。
【0073】
画素電極9a1は、画素電極9a1の縁に形成され、且つ第2画素電極部分39a2の中央部より厚みが薄い平坦部39a3を含む段差部27を有している。
【0074】
段差部27は、第2画素電極部分39a2の中央部及び平坦部39a3の膜厚の差に応じた段差形状を有している。段差部は、画素電極9a1の複数の縁のうち隣の画素電極9a2に向かい合う縁に形成されている。
【0075】
したがって、画素電極9a1の複数の縁のうち隣の画素電極9a2に向かい合う縁は、第2画素電極部分39a2の中央部の厚みと等しい高さから画素電極9a1の下地に向かって切り立った形状を有する端面から構成されているのではなく、第2画素電極部分39a2の中央部の高さから一旦低くなった部分、即ち、当該中央部より厚みが薄い平坦部39a3と、当該中央部との夫々の厚みの違いに応じて形成された段差形状を有している。本実施形態では、画素電極9a1と同様に、画素電極9a2も段差部28を有している。
【0076】
次に、図8を参照しながら、画素電極9aの特有の形状に応じて得られる液晶装置1の効果を説明する。尚、以下で参照する比較例に係る液晶装置、及び液晶装置の製造方法では、本実施形態に係る液晶装置1と共通する部分に共通の参照符号を付している。
【0077】
図8(a)に示すように、比較例に係る液晶装置によれば、相互に隣り合う画素電極19a1及び19a2の夫々に縁のうち相互に向かい合う縁の端面形状は、画素電極19a1及び19a2の夫々の表面から絶縁膜43の表面に向かって切り立った形状である。このような画素電極19a1及び19a2の夫々の電位が、液晶装置の動作時に相互に異なる電位に設定された場合、切り立った端面形状に起因して、画素電極19a1及び19a2間の領域に存在する液晶に加わる電界に乱れが生じる。即ち、画素電極19a1及び19a2間で基板面に沿って生じる横電界がこれら画素電極間に存在する液晶の配向状態に及ぼす影響が大きくなり、液晶の配向に乱れを生じさせる。このような液晶の配向の乱れが発生することによって、画素電極19a1及び19a2間の領域で光抜け等の表示不良が発生してしまう。
【0078】
加えて、画素電極19a1及び19a2間に、これら画素電極の夫々の表面の位置と、絶縁膜43の表面の位置との差、即ち画素電極19a1及び19a2の夫々の厚みに起因して溝部79が形成されてしまうため、画素電極19a1及び19a2に渡って形成された配向膜16のうち溝部79に重なる部分は、その他より窪んだ凹部なる。したがって、配向膜16aは平坦に形成されないことになる。このような配向膜16aによれば、配向膜16aをラビングするラビング処理を均一に行うことが困難となり、ラビングむらに起因した表示不良が発生してしまう。また、画素電極19a1及び19a2の夫々の肩部において、配向膜16aの膜厚が薄くなるため、液晶が安定して配向することができなくなり、この部分において表示不良が発生してしまう。
【0079】
また、横電界によって発生する液晶の配向乱れを低減すること及び配向膜のラビングむらを低減することの夫々の観点からみれば、画素電極19aの縁を断面上テーパ形状に形成することも考えられるが、製造プロセスにおける加工精度のばらつきを考えると、素子基板10の基板面に対して傾斜したテーパ形状を構成する傾斜面を複数の画素電極相互で均一となるように形成することは技術的困難である。
【0080】
そこで、図8(b)に示すように、液晶装置1によれば、画素電極9a1に段差部27が形成されているため、液晶装置1の動作時に画素電極9a1及び9a2の夫々の電位が相互に異なる電位に設定された場合でも、画素電極9a1及び9a2間で基板面に沿って生じる横電界がこれら画素電極間に存在する液晶の配向状態に及ぼす影響を低減できる。より具体的には、段差部27が設けられていることによって、これら画素電極間における電界によって液晶の配向状態が乱される範囲を比較例に係る液晶装置に比べて小さくできる。特に、本実施形態では、画素電極9a2にも段差部28が設けられているため、液晶の配向の乱れをより効果的に低減できる。
【0081】
加えて、これら段差部27及び28によれば、画素電極9a1及び9a2に渡って形成された配向膜16を平坦に形成できるため、配向膜のラビングむらを低減でき、ラビングむらを一因として生じる光抜け等の表示不良を低減することが可能である。また、画素電極9a1及び9a2の夫々の段差部において、本実施形態に係る配向膜16の膜厚が上記の比較例に係る配向膜16aよりも厚く形成されるため、液晶の配向が安定し、表示不良を防止できる。
【0082】
また、液晶装置1によれば、第2画素電極部分39a2の中央部より膜厚が薄い平坦部39a3を形成すればよいので、画素電極の縁の形状をテーパ形状にする場合に比べて、製造プロセスにおける加工条件を制御し易い利点もある。
【0083】
次に、図9を参照しながら、画素電極9aの膜厚を薄くした場合における光の透過率の変化を説明する。図9では、画素電極を構成するITOの屈折率は、1.4であり、その下地であるSiO2からなる絶縁膜の屈折率は1.96であり、反射防止膜(AR膜)の屈折率は1.66である。
【0084】
図9において、透過率特性線L1は、ITOから構成された画素電極9aの膜厚が1400Åであり、反射防止膜(AR膜)が形成されていない場合の光の透過率を示している。透過率特性線L2は、ITOから構成された画素電極9aの膜厚が200Åであり、反射防止膜(AR膜)が形成されていない場合の透過率を示している。透過率特性線L3は、ITOから構成された画素電極の膜厚が200Åであり、反射防止膜の膜厚が1400Åである場合の透過率を示している。
【0085】
図9によれば、ITOからなる画素電極の膜厚が薄いほうが、透過率が高く、且つ波長による透過率の低下も発生していないことわかる。したがって、本実施形態に液晶装置1のように、画素電極9aのうち開口領域72aに重なる部分である第1画素電極部分39a1、及び第1対向電極部分21a1の膜厚がその周囲の部分より薄くすることによって、高い表示品位で、より具体的には高い輝度で画像を表示可能になることがわかる。
【0086】
<2:電気光学装置の製造方法>
次に、図10乃至図17を参照しながら、本発明の第3及び第4の発明の夫々に係る電気光学装置の製造方法の各実施形態を説明する。
【0087】
先ず、図10乃至図13を参照しながら、本発明の第3の発明に係る電気光学装置の製造方法の実施形態を説明する。図10及び図11は、本実施形態に係る電気光学装置の製造方法の主要な工程を順に示した工程平面図である。図12及び図13は、図10及び図11に対応した工程断面図である。尚、以下では、液晶装置1を製造する場合を例に挙げている。
【0088】
図10(a)及び図12(a)に示すように、TTFアレイ基板10上の画像表示領域10aを構成する複数の画素72gの夫々の開口領域72aの外側の非開口領域72bに第1導電膜91を形成する。第1導電膜91は、画素電極の電極材料として汎用されるITO等の透明導電材料をスパッタリング法を用いて成膜された導電膜をフォトエッチング等のエッチング法を用いて所定の形状にパターニングすることによって形成される。
【0089】
次に、図10(b)及び図12(b)に示すように、素子基板10上から開口領域72a及び非開口領域72bに、第1導電膜91と同種のITO等の透明導電材料からなる電極材料をスパッタリング法を用いて成膜することによって、開口領域72a及び非開口領域72bに重なり、且つ第1導電膜91を覆う第2導電膜92を形成する。
【0090】
次に、図11(c)及び図13(c)に示すように、第2導電膜92が複数の画素72g相互で互いに分断されるように第2導電膜92を所定の形状にパターニングすることによって、第1画素電極部分39a1及び第2画素電極部分39a2を含んで構成される画素電極9aを形成する。本実施形態に係る電気光学装置の製造方法によれば、第1導電膜91及び第2導電膜92が相互に積層された電極部分である第1画素電極部分39a1と、第1画素電極部分29a1より第1導電膜91の膜厚分だけ膜厚が薄い第2画素電極部分39a2とを形成可能である。
【0091】
加えて、画素電極9aは、第2導電膜92がパターニングされる際に、第2画素電極部分39a1の外側に延びる平坦部39a3が形成されるため、段差部27も有している。尚、本実施形態では、複数の画素72gの夫々において同様の処理がなされるため、画素電極9a1に隣り合う画素電極9a2にも段差部28が形成される。その後、素子基板10上に対向基板20を配置し、これら基板間に液晶を封止することによって液晶装置1が組み上がる。
【0092】
したがって、本実施形態に係る電気光学装置の製造方法によれば、上述の液晶装置1を製造することが可能であり、表示性能が高められた液晶装置を提供できる。
【0093】
次に、図14乃至図17を参照しながら、本発明の第4の発明に係る電気光学装置の製造方法の実施形態を説明する。図14及び図15は、本実施形態に係る電気光学装置の製造方法の主要な工程を順に示した工程平面図である。図16及び図17は、図14及び図15に対応した工程断面図である。
【0094】
図14(a)及び図16(a)に示すように、素子基板10上の画像表示領域10aを覆うように、複数の画素72gに渡ってITO等の透明導電材料を成膜し、導電膜47を形成する。
【0095】
次に、図14(b)及び図16(b)に示すように、導電膜47上に複数の画素72gに渡ってレジスト材料からなるレジスト膜57を形成する。
【0096】
次に、図15(c)及び図17(c)に示すように、開口領域72aに重なる部分を覆う第1レジスト膜部58a1、非開口領域72bに重なり、且つ第1レジスト膜部58a1より膜厚が厚い第2レジスト膜部58a2、及び第2レジスト膜部58a2より膜厚が薄い平坦部58a3を備える、本発明の「レジスト膜」の一例であるレジスト膜58を形成する。相互に膜厚の異なる第1レジスト膜部58a1及び第2レジスト膜部58a2の夫々は、一旦、上述の工程において、第2レジスト膜部58a2と等しい膜厚となるようにレジスト材料を画素72g全体に成膜した後、フォトエッチングなどの汎用のパターニング法を用いて、当該成膜されたレジスト膜のうち開口領域72aに重なる部分を除去することによって形成される。平坦部58a3も、第1レジスト膜部58a1を形成する方法と同様に方法で形成される。
【0097】
図15(d)及び図17(d)に示すように、レジスト膜58上から導電膜47をエッチングすることによって、開口領域72aに重なる第1画素電極部分39a1と、非開口領域72bに形成され、且つ第1画素電極部分39a1より膜厚が厚い第2画素電極部分39a2と、第2画素電極部分39a2及び平坦部39a3の膜厚の差に応じて形成された段差部27とからなる画素電極9aを形成する。
【0098】
より具体的には、第1レジスト膜部58a1及び第2レジスト膜部58a2相互の膜厚の違いに応じて、導電膜47のうち開口領域72a及び非開口領域72bの夫々に重なる部分に対するエッチング量が相互に異なる。このようなエッチング量の違いに応じて、導電膜47のうち非開口領域72bに重なる部分は、導電膜47のうち開口領域72aに重なる部分より膜厚が厚くなるように形成される。ここで、第1レジスト膜部58a1の膜厚を調整しておくことによって、最終的に形成される第1画素電極部分39a1の膜厚をその外側の部分である第2画素電極部分39a2より薄く形成することができ、光の透過率が高い透過型の液晶装置1を製造できる。なお、同様にして、開口領域72aに重なる部分の膜厚を薄く形成された画素電極を備え、光の反射率が高められた反射型の液晶装置等の電気光学装置を製造することも可能である。
【0099】
したがって、本実施形態に係る電気光学装置の製造方法によれば、表示性能が高められた液晶装置1を製造できる。
【0100】
<第2実施形態>
次に、図18を参照しながら、本発明の第2の発明に係る電気光学装置の実施形態を説明する。図18は、本実施形態に係る液晶装置201の断面の一部を示した部分断面図である。尚、以下では、液晶装置1と共通する部分に共通の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0101】
図18において、液晶装置201は、対向基板20の両面のうち素子基板10に臨む面の側において画素電極9aに向かい合うように形成され、且つITO等の透明導電材料から構成された対向電極221を備えている。特に、対向電極221は、画素72gの開口領域72aに重なる重なり領域72cに形成された第1対向電極部分221a1と、重なり領域72cの外側に形成され、且つ第1対向電極部分221a1より膜厚が厚い第2対向電極部分221a2とを有する点に特徴がある。
【0102】
このような対向電極221を備えた液晶装置201によれば、第1対向電極部分221a1の膜厚を第2対向電極部分221a2の膜厚より薄くできることによって、対向電極221によって吸収される光を低減でき、第2対向電極部分221a2と同じ膜厚を有する一様な対向電極が形成された液晶装置に比べて、開口領域72aにおける光の透過率を高めることが可能である。
【0103】
加えて、第2対向電極部分221a2の膜厚は、第1対向電極部分221a1の膜厚より厚いため、対向電極221全体を第1対向電極221a1の膜厚まで薄くする場合に比べて対向電極221のシート抵抗を低減することが可能である。したがって、対向電極221によれば、液晶装置201の動作時に、画素電極9aの電位に対して一定の電位に保持されるべき対向電極221の電位が変動することを低減でき、コントラスト低下等の表示不良が生じることを低減することが可能である。
【0104】
したがって、本実施形態に係る液晶装置201によれば、上述の液晶装置1と同様に、表示される画像の画質を高めることが可能であると共に、表示品位を低下させることなく、光源の消費電力を低減できる利点がある。
【0105】
<電子機器>
次に、図19を参照しながら、上述した液晶装置を用いた電子機器の一例を説明する。本実施形態に係る電子機器は、上述した液晶装置をライトバルブに用いたプロジェクタである。図19は、本実施形態に係るプロジェクタの構成例を示す平面図である。
【0106】
図19に示すように、プロジェクタ1100内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット1102が設けられている。このランプユニット1102から射出された投射光は、ライトガイド1104内に配置された4枚のミラー1106および2枚のダイクロイックミラー1108によってRGBの3原色に分離され、各原色に対応するライトバルブとしての液晶パネル1110R、1110Bおよび1110Gに入射される。
【0107】
液晶パネル1110R、1110Bおよび1110Gの構成は、上述した液晶装置と同等であり、画像信号処理回路から供給されるR、G、Bの原色信号でそれぞれ駆動されるものである。液晶パネル及び位相差板を含む光学系から出射された光は、ダイクロイックプリズム1112に3方向から入射される。このダイクロイックプリズム1112においては、RおよびBの光が90度に屈折する一方、Gの光が直進する。したがって、各色の画像が合成される結果、投射レンズ1114を介して、スクリーン等にカラー画像が投写されることとなる。
【0108】
ここで、各液晶パネル1110R、1110Bおよび1110Gによる表示像について着目すると、液晶パネル1110Gによる表示像は、液晶パネル1110R、1110Bによる表示像に対して左右反転することが必要となる。
【0109】
尚、液晶パネル1110R、1110Bおよび1110Gには、ダイクロイックミラー1108によって、R、G、Bの各原色に対応する光が入射するので、カラーフィルタを設ける必要はない。
【0110】
このようなプロジェクタは、ライトバルブとして上述の液晶装置を具備してなるので、スクリーン等の投写面に投写される投写画像の画質が高められており、高品位の画像を表示可能である。加えて、プロジェクタ1100によれば、ランプユニット1102で消費される電力を低減でき、環境に配慮した装置構成が実現可能となっている。
【0111】
尚、本実施形態に係る液晶装置は、上述したプロジェクタに適用される場合に限定されるものではなく、直視型の液晶表示装置の一部を構成することも可能である。また、LCOS型の反射型の表示装置を構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の第1の発明に係る電気光学装置の実施形態である液晶装置の平面図である。
【図2】図1のII−II´線断面図である。
【図3】本実施形態に係る液晶装置の画像表示領域における回路構成を示した回路図である。
【図4】本実施形態に係る液晶装置における複数の画素電極の配列状態を図式的に示した液晶装置の図式的平面図である。
【図5】本実施形態に係る液晶装置の素子基板における画像表示領域の一部を拡大して示した拡大平面図である。
【図6】本実施形態に係る液晶装置の対向基板における画像表示領域の一部を拡大して示した拡大平面図である。
【図7】図5及び図6のVII−VII´線断面図である。
【図8】本実施形態に係る液晶装置の液晶に加わる電界強度を比較例と共に図式的に示した図式的断面図である。
【図9】画素電極を透過する光の透過率を光の波長に対して測定した測定値を示すグラフである。
【図10】本発明の第3の発明に係る電気光学装置の製造方法における一実施形態の主要な工程を順に示した工程平面図(その1)である。
【図11】本発明の第3の発明に係る電気光学装置の製造方法における一実施形態の主要な工程を順に示した工程平面図(その2)である。
【図12】図10に対応した工程断面図である。
【図13】図11に対応した工程断面図である。
【図14】本発明の第4の発明に係る電気光学装置の製造方法における一実施形態の主要な工程を順に示した工程平面図(その1)である。
【図15】本発明の第4の発明に係る電気光学装置の製造方法における一実施形態の主要な工程を順に示した工程平面図(その2)である。
【図16】図14に対応した工程断面図である。
【図17】図15に対応した工程断面図である。
【図18】本発明の第2の発明に係る電気光学装置の実施形態である液晶装置の断面の一部示した断面図である。
【図19】本実施形態に係る電子機器の一例を示した平面図である。
【符号の説明】
【0113】
1・・・液晶装置、10・・・素子基板、20・・・対向基板、27,28・・・段差部、50・・・液晶層、50a・・・液晶素子、72・・・画素部、47・・・導電膜、57・・・レジスト膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
該第1基板上の表示領域を構成する複数の画素の夫々に形成されており、(i)前記画素の開口領域に重なる第1画素電極部分と、(ii)前記開口領域の外側の非開口領域に形成され、前記第1画素電極部分より膜厚が厚い第2画素電極部分とを有する画素電極と
を備えたことを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記画素電極は、前記画素電極の縁に形成され、前記第2画素電極部分の中央部より厚みが薄い平坦部を含む段差部を有すること
を特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記第1基板に対向するように配置された第2基板と、
前記第2基板上に前記画素電極に向かい合うように形成され、(i)前記開口領域に重なる重なり領域に形成された第1対向電極部分と、(ii)前記重なり領域の外側に形成され、前記第1対向電極部分より膜厚が厚い第2対向電極部分とを有する対向電極と
を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
第1基板と、
該第1基板上の表示領域を構成する複数の画素の夫々に形成された画素電極と、
前記第1基板に対向するように配置された第2基板と、
前記第2基板上に前記画素電極に向かい合うように形成され、(i)前記画素の開口領域に重なる重なり領域に形成された第1対向電極部分と、(ii)前記重なり領域の外側に形成され、前記第1対向電極部分より膜厚が厚い第2対向電極部分とを有する対向電極と
を備えたことを特徴とする電気光学装置。
【請求項5】
第1基板上の表示領域を構成する複数の画素の夫々の開口領域の外側の非開口領域に第1導電膜を形成する工程と、
前記第1基板上から前記開口領域及び前記非開口領域に渡って電極材料を成膜することによって、前記開口領域及び前記非開口領域に重なるように前記第1導電膜を覆う第2導電膜を形成する工程と、
前記第2導電膜が前記複数の画素相互で互いに分断されるように前記第2導電膜を所定の形状にパターニングすることによって、該分断された第2導電膜及び前記第1導電膜から各々構成される画素電極を前記画素に形成する工程と
を備えたことを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項6】
第1基板上に導電膜を形成する工程と、
(i)前記導電膜のうち前記第1基板上の表示領域を構成する複数の画素の開口領域に重なる部分を覆う第1レジスト膜部、及び、(ii)前記導電膜のうち前記開口領域の外側の非開口領域に重なり、且つ前記1第レジスト膜部より膜厚が厚い第2レジスト膜部を有するレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜上から前記導電膜をエッチングすることによって、(i)前記開口領域に重なる第1画素電極部分と、(ii)前記非開口領域に形成され、且つ前記第1画素電極部分より膜厚が厚い第2画素電極部分とを有する画素電極を形成する工程と
を備えたことを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1から4の何れか一項に記載の電気光学装置を具備してなること
を特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−192829(P2009−192829A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33545(P2008−33545)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】