説明

電気光学装置

【課題】画素ピッチと開口部との比を整数分の1に基づく値にすることによって、画素ずらしによる分割露光時に各露光領域同士が重なることを防止して、画質を向上させる。
【解決手段】 基板に設けた複数の走査線及び複数のデータ線の交差に対応してマトリクス状に配設され、前記走査線及びデータ線によって駆動されて画像信号に応じて光の透過率を変化させる複数の画素と、各画素の光の透過領域を水平及び垂直方向の画素ピッチの夫々整数分の1の領域に制限する遮光手段23と、を具備したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画素ずらしによる分割露光を行うデジタル露光装置に好適な電気光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、写真焼き付けに用いる露光装置として、画像データに応じた光を印画紙に出射して露光するデジタル露光装置が開発されている。このようなデジタル露光装置としては、レーザーを利用した装置及び液晶パネル等の電気光学装置を利用した装置がある。
【0003】
デジタル露光装置は、デジタル化された画像データに応じて露光を行う。画像データはコンピュータによって映像の明るさ調整等の各種画像処理が容易であり、デジタル露光装置を用いることで、撮影した画像に対する画像処理から露光までの作業性が良好となる。
【0004】
レーザーを利用した装置では、画像データに応じてレーザ光をスキャニングすることにより露光が行われる。従って、解像度を上げようとすれば露光に要するトータルの時間が長くなり、逆に時間を短くしようとすると、解像度を下げるか、単位面積あたりの露光時間を下げる必要が生じ、階調表現が犠牲となる。このように、レーザー方式では、スループット(単位時間当たりの処理枚数)と解像度・階調性との両立が困難である。
【0005】
一方、液晶パネルを用いたデジタル露光装置においては、画像信号に基づいて液晶パネルを駆動することで、液晶パネルを通過する光源からの光を映像光に変換し、この映像光を印画紙に露光することで、写真露光を行う。従って、液晶パネルを用いたデジタル露光装置においては、面順次での露光が可能であり、単位面積当たりの露光時間を長くとることができる。このため、液晶パネルを用いたデジタル露光装置は、階調性に優れ、高解像度の画像を得ることができる。
【0006】
更に、近年、印画紙に対する液晶パネルの相対的な位置を面方向にずらしながら露光を行うことで、解像度を向上させる手法が特許文献1において開示されている。特許文献1の技術は、液晶パネルの各画素からの映像光をマイクロレンズを介して印画紙に照射するもので、マイクロレンズの焦点を制御して各画素毎の印画紙上の集光部を小さくする。そして、集光部のサイズに応じて液晶パネルを水平方向、垂直方向にずらすしながら露光を行うことで、全面を露光する。例えば、集光部の大きさが印画紙上の画素の1/4(水平及び垂直方向に夫々1/2)であるものとすると、液晶パネルを半画素分ずつずらしながら4回の露光を行うことで印画紙全面を露光する。このような画素ずらしを利用した分割露光では、各集光部の位置に対応した画像データを用いて露光を行うことで、液晶パネルの画素数の4倍の画素数の解像度での焼き付けが可能となる。
【特許文献1】WO 2004/107733 A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、特許文献1においては、光学系によって印画紙上の集光部のサイズを制御することで、画素ずらしに応じた分割露光を行っており、光学系に極めて高い精度が要求されてしまう。現実的には、集光部のサイズを印画紙上の画素の整数分の1に正確に制御することは困難であり、集光部同士をオーバーラップさせるように光学系が設定されている。
【0008】
このため、特許文献1の装置においては、オーバーラップ部分は異なる2つの画像に基づく露光が行われてしまい、画質が低下してしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、画素ずらしによる1回の露光領域のサイズに応じて画素ピッチに対する開口率を設定することにより、画質低下を防止することができる電気光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る電気光学装置は、基板に設けた複数の走査線及び複数のデータ線の交差に対応してマトリクス状に配設され、前記走査線及びデータ線によって駆動されて画像信号に応じて光の透過率を変化させる複数の画素と、各画素の光の透過領域を水平及び垂直方向の画素ピッチの夫々整数分の1の領域に制限する遮光手段と、を具備したことを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、遮光手段によって、画素の開口率は100%を基準として整数分の1に制限される。従って、透過光を用いて感光材料に露光を行うと、1回の露光で各画素に対応した露光領域の整数分の1の領域が露光される。例えば、画素ずらしにより分割露光を繰返すことで、感光材料の全域への露光が可能となる。画素ずらしによる1回の露光のサイズは、遮光手段によって規定されることとなり、露光領域のサイズを正確に規定することができる。
【0012】
本発明に係る電気光学装置は、光源からの光を画像信号に基づく映像光に変換し、光学系を介して感光材料上に露光するための電気光学装置であって、基板に設けた複数の走査線及び複数のデータ線の交差に対応してマトリクス状に配設され、前記走査線及びデータ線を通じて供給される信号に応じて光の透過率を変化させる複数の画素と、各画素の光の透過領域及び前記光学系を通過した光が照射される前記感光材料上における各露光領域のサイズが、光学系に基づき計算される前記感光材料上における前記画素ピッチに相当するサイズの整数分の1となるように、各画素の光の透過領域を水平及び垂直方向夫々について制限する遮光手段と、を具備したことを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、映像光が所定の光学系を介して感光材料上に照射されて露光が行われる。遮光手段は、各画素の開口率を制限することによって、1回の露光で各画素に対応した露光領域の整数分の1の領域が露光されるようにする。例えば、画素ずらしによる分割露光を繰返すことで、感光材料の全域への露光が可能となる。画素ずらしによる1回の露光のサイズは、遮光手段によって規定されることとなり、露光領域のサイズを正確に規定することができる。
【0014】
また、本発明に係る電気光学装置は、光源からの光を画像信号に基づく映像光に変換し光学系を介して感光材料上に露光するための電気光学装置であって、基板に設けた複数の走査線及び複数のデータ線の交差に対応してマトリクス状に配設され、前記走査線及びデータ線を通じて供給される信号に応じて光の透過率を変化させる複数の画素と、各画素に夫々対応した前記感光材料上の各露光領域の水平及び垂直サイズが、夫々前記感光材料上における前記画素ピッチに対応した露光領域の水平及び垂直サイズの整数分の1のサイズとなるように、前記各画素の光の透過領域を水平及び垂直方向夫々について画素ピッチの整数分の1の領域に制限する遮光手段と、を具備したことを特徴とする。
【0015】
このような構成によれば、映像光が所定の光学系を介して感光材料上に照射されて露光が行われる。遮光手段は、各画素の開口率を100%を基準として整数分の1に制限する。従って、1回の露光で各画素に対応した露光領域の整数分の1の領域が露光される。例えば、画素ずらしによる分割露光を繰返すことで、感光材料の全域への露光が可能となる。画素ずらしによる1回の露光のサイズは、遮光手段によって規定されることとなり、露光領域のサイズを正確に規定することができる。
【0016】
また、前記遮光手段は、前記所定の光学系による前記映像光の拡がり分だけ、前記各画素の光の透過領域を水平及び垂直方向の画素ピッチの夫々整数分の1よりも小さい領域に制限することを特徴とする。
【0017】
このような構成によれば、遮光手段は、所定の光学系による映像光の拡がり分だけ、整数分の1よりも小さい開口率を設定する。透過領域を制限することによって、例えば、画素ずらしによる分割露光のサイズを制御しており、制御が困難な光学系の調整は不要であり、確実に露光サイズの制御が可能である。
【0018】
また、前記画素は、前記基板と該基板に対向配置される他の基板との間に電気光学物質を挟持させて構成され、前記遮光手段は、前記基板及び他の基板の少なくとも一方に形成された遮光膜によって構成されることを特徴とする。
【0019】
このような構成によれば、液晶装置を用いて正確な露光制御が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る電気光学装置の一部の主要要素を示す平面図である。図2は図1の電気光学装置を組込んだデジタル露光装置を示す概略構成図である。図3は図1の電気光学装置である液晶装置を構成する素子基板をその上に形成された各構成要素と共に対向基板側から見た平面図であり、図4は素子基板と対向基板とを貼り合わせて液晶を封入する組立工程終了後の液晶装置を、図3のH−H'線の位置で切断して示す断面図である。図5は液晶装置の画素領域を構成する複数の画素における各種素子、配線等の等価回路図である。また、図6は液晶装置の画素構造を詳細に示す断面図である。なお、上記各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
【0021】
先ず、図2乃至図5を参照して、液晶装置の構造について説明する。
【0022】
液晶装置は、図3及び図4に示すように、例えば、石英基板、ガラス基板、シリコン基板を用いたTFT基板10と、これに対向配置される、例えばガラス基板や石英基板を用いた対向基板20との間に液晶50を封入して構成される。対向配置されたTFT基板10と対向基板20とは、シール材52によって貼り合わされている。
【0023】
TFT基板10上には画素を構成する画素電極(ITO)9a等がマトリクス状に配置される。また、対向基板20上には全領域に対向電極(ITO)21が設けられる。TFT基板10の画素電極9a上には、配向処理が施された配向膜16が設けられている。一方、対向基板20上の全面に渡って形成された対向電極21上にも、配向処理が施された配向膜22が設けられている。
【0024】
図5は画素を構成するTFT基板10上の素子の等価回路を示している。図5に示すように、画素領域においては、複数本の走査線3aと複数本のデータ線6aとが交差するように配線され、走査線3aとデータ線6aとで区画された領域に画素電極9aがマトリクス状に配置される。そして、走査線3aとデータ線6aの各交差部分に対応してTFT30が設けられ、このTFT30に画素電極9aが接続される。
【0025】
TFT30は走査線3aのON信号によってオンとなり、これにより、データ線6aに供給された画像信号が画素電極9aに供給される。この画素電極9aと対向基板20に設けられた対向電極21との間の電圧が液晶50に印加される。また、画素電極9aと並列に蓄積容量70が設けられており、蓄積容量70によって、画素電極9aの電圧はソース電圧が印加された時間よりも例えば3桁も長い時間の保持が可能となる。蓄積容量70によって、電圧保持特性が改善され、コントラスト比の高い画像表示が可能となる。
【0026】
画素電極9aは、TFT基板10上にマトリクス状に複数設けられており、画素電極9aの縦横の境界に各々沿ってデータ線6a及び走査線3aが設けられている。データ線6aは、後述するように、アルミニウム膜等により構成され、走査線3aは、例えば導電性のポリシリコン膜等からなる。また、走査線3aは、後述するチャネル領域1a’に対向して形成されている。すなわち、走査線3aとデータ線6aとの交差する箇所にはそれぞれ、走査線3aに接続されたゲート電極とチャネル領域1a’とが対向配置されて画素スイッチング用のTFT30が構成されている。
【0027】
対向基板20の縁辺に沿って液晶を封入するシール材52が、素子基板10と対向基板20間に形成されている。シール材52は対向基板20の輪郭形状に略一致するように配置され、素子基板10と対向基板20を相互に固着する。シール材52は、素子基板10の1辺の一部において欠落しており、液晶50を注入するための液晶注入口108が形成される。貼り合わされた素子基板10及び対向基板20相互の間隙には、液晶注入口108より液晶が注入される。液晶注入後に、液晶注入口108を封止材109で封止するようになっている。
【0028】
素子基板10のシール材52の外側の領域には、データ線駆動回路101及び実装端子102が素子基板10の一辺に沿って設けられており、この一辺に隣接する2辺に沿って、走査線駆動回路104が設けられている。素子基板10の残る一辺には、画面表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路104間を接続するための複数の配線105が設けられている。シール材52の外側の4隅において、上下導通材106が配置されている。上下導通材106は下端が上下導通端子107に接触し、上端が共通電極21に接触して、両者を電気的に接続する。これにより、画素領域外に形成された配線105と共通電極21とが電気的に接続される。
【0029】
本実施の形態においては、対向基板20上には、遮光膜23が設けられている。電気光学装置においては、TFTや配線等の要素が映りこまない様、画像表示領域を開口領域と遮光領域とに分け、遮光領域にTFTを設置している。直視型のディスプレイやプロジェクタ用のライトバルブでは、明るい画像が求められることから、開口領域の面積を広げる努力がなされている。
【0030】
これに対し、本実施の形態における遮光膜23は、画素ピッチに対する開口率を制限するように、平面的には、データ線6a及び走査線3aの形成領域だけでなく、画素電極9a上の多くの部分を覆うように構成される。例えば、後述するように、遮光膜23は、開口部35が画素ピッチの整数分の1のサイズなるように形成される。なお、画素電極9aを、開口部35に対向する領域及びその周辺のみに形成するようにしてもよい。
【0031】
図6は一つの画素に着目した液晶装置の模式的断面図である。なお、図6は図1のA−A’線における断面構造を示している。
【0032】
ガラスや石英等の素子基板10には、TFT30が形成されている。TFT30は、チャネル領域1a’、ソース領域1d、ドレイン領域1eが形成された半導体層に絶縁膜2を介してゲート電極をなす走査線3aが設けられてなる。
【0033】
TFT30上には第1層間絶縁膜4が積層され、第1層間絶縁膜4上にはデータ線6aが積層される。データ線6aは、第1層間絶縁膜4を貫通するコンタクトホール5を介してソース領域1dに電気的に接続される。
【0034】
第1層間絶縁膜4上及びデータ線6a上には、第2層間絶縁膜7が形成されている。第2層間絶縁膜7上には画素電極9aが形成されている。画素電極9aは、第2層間絶縁膜7及び第1層間絶縁膜4を貫通するコンタクトホール8によりドレイン領域1eに電気的に接続される。画素電極9a上及び第2層間絶縁膜7上にはポリイミド系の高分子樹脂からなる配向膜16が積層され、所定方向に配向処理されている。
【0035】
走査線3a(ゲート電極)にON信号が供給されることで、チャネル領域1a’が導通状態となり、ソース領域1dとドレイン領域1eとが接続されて、データ線6aに供給された画像信号が画素電極9aに与えられる。
【0036】
一方、対向基板20には、TFTアレイ基板のデータ線6a、走査線3a及びTFT30の形成領域に対向する領域並びに画素電極9aの一部の領域に対向する領域において遮光膜23が設けられている。遮光膜23は開口部35を除き、対向基板20の全面に形成されている。この遮光膜23によって、対向基板20側からの入射光がTFT30のチャネル領域1a’、ソース領域1d及びドレイン領域1eに入射することが防止されると共に、各画素の開口領域が規定される。
【0037】
。遮光膜23上に、対向電極(共通電極)21が基板20全面に亘って形成されている。対向電極21上にポリイミド系の高分子樹脂からなる配向膜22が積層され、所定方向にラビング処理されている。
【0038】
そして、素子基板10と対向基板20との間に液晶50が封入されている。これにより、TFT30は所定のタイミングでデータ線6aから供給される画像信号を画素電極9aに書き込む。書き込まれた画素電極9aと対向電極21との電位差に応じて液晶50の分子集合の配向状態が変化して、光を変調し、階調表示を可能にする。
【0039】
なお、素子基板10には、図5の蓄積容量70を構成する図示しない導体層及び誘電体層も形成されている。本実施の形態においては、遮光膜23によって開口率が十分に小さく設定されており、遮光領域に形成する必要がある蓄積容量70を十分に広い面積に形成することも可能である。
【0040】
図1において、Y方向に延設されたデータ線6aとX方向に延設された走査線3aとの交点に、TFT30を構成するチャネル領域1a’が形成される。なお、図1は水平及び垂直の2×2=4画素の部分のみを示している。従来の液晶装置においては、データ線6a及び走査線3aの形成領域以外の領域、即ち、データ線6aと走査線3aとによって囲まれた領域が開口領域となる。これに対し、本実施の形態においては、開口部35は、開口領域として設定可能な領域の一部の領域のみに設定される。図1の例では、水平方向の画素ピッチをLh、垂直方向の画素ピッチをLvとして、開口部35のサイズは、水平Lh/2、垂直Lv/2に設定される。
【0041】
なお、図1の例では、データ線6a及び走査線3aを除く領域であって、開口領域として設定可能な領域の略中央に開口部35を設けた例を示しているが、開口領域として設定可能な領域のいずれの位置に開口部35を設けてもよい。
【0042】
また、図1の例では、開口部35のサイズを画素ピッチの1/2に設定した例を示したが、整数分の1のサイズに設定することが可能である。開口部35以外の領域は遮光膜23によって、対向基板20側から入射した光が素子基板10側に通過することが阻止されるようになっている。
【0043】
なお、図6においては対向基板20に設けた遮光膜23によって開口率を制御する例について示したが、対向基板20側だけでなく素子基板10側にも開口率を制御する遮光膜を設けてもよい。更に、対向基板20側にはTFT30への光の入射を阻止する遮光膜のみを設け、素子基板10側に開口率を制御する遮光膜を設けるようにしてもよい。
【0044】
図2はこのような液晶装置を用いたデジタル露光装置を示している。図2において、デジタル露光装置は、光源装置11と印画紙14との間に、電気光学装置である液晶装置12及び焼き付けレンズ13が配設されている。なお、液晶装置12の両側には、偏光板41,42が配設されている。偏光板41,42は夫々所定の偏光軸の光のみを通過させる。偏光板41によって液晶装置12の入射光の偏光軸が規定され、偏光板42によって液晶装置12の出射光の偏光軸が規定される。液晶装置12において、通過光の偏光軸を画像データに応じて変化させることで、偏光板42から映像光を出射させることができる。
【0045】
光源装置11は、例えば、LED(発光ダイオード)アレイによって構成することができる。光源装置11としてのLEDアレイは、発光帯域が異なる複数波長域の色光を夫々発光する複数種類のLEDを備えている。例えば、光源装置11としてのLEDアレイは、赤(R)、緑(G)、青(B)光を出射することができる。光源装置11からの感光材料である印画紙14までの光路上に配設された焼き付けレンズ13は、入射光像を印画紙14に結像させるためのレンズである。
【0046】
なお、光学装置11に代えて、ランプと面順次で切換るフィルタを用いてもよい。
【0047】
画像処理装置43は、露光する画像に対して必要ならば所定の画像処理を施した後、露光のために画像データを駆動装置44に供給する。本実施の形態においては、画像処理装置43は液晶装置12の画素数に対して画素ピッチと開口部35サイズとの比(以下、解像度倍率という)に応じた画素数の画像データを出力する。例えば、図1の例では画素ピッチと開口部35サイズとの比が水平及び垂直方向のいずれにも2:1であるので、水平及び垂直方向の解像度倍率は2であり、液晶装置12の画素数が水平640×垂直480画素の場合には、水平640×2、垂直480×2画素の解像度の画像データを出力する。
【0048】
駆動装置44は、液晶装置12に画像データを供給して駆動する。この場合には、駆動装置44は、1回の露光で、液晶装置12の各画素に対応して画像処理装置43からの1画素分の画像データを出力する。光学系の画像の拡がりを無視すると、液晶装置12からの映像光を印画紙14上に露光すると、1回の露光で、印画紙14上には液晶装置12の各画素サイズに応じた露光面積に対して、水平及び垂直方向に夫々解像度倍率分の1のサイズの面積に露光が行われる。
【0049】
移動制御装置45は、露光毎に、液晶装置12を解像度倍率に応じて移動させる。液晶装置12は、図示しないピエゾ素子やXYステージによって、入出射面に平行な面内を水平及び垂直方向に移動自在に構成されている。駆動装置44は、次の露光で、液晶装置12の各画素に対応して画像処理装置43からの次の1画素分の画像データを出力する。以後、液晶装置12の移動と露光を水平解像度倍率×垂直解像度倍率だけ繰返すことにより、印画紙14の露光範囲の全面に対する露光を行う。
【0050】
次に、このように構成された実施の形態の作用について図7を参照して説明する。図7は図2中の印画紙14上の露光の状態を示す説明図である。図7(a)乃至図7(d)は夫々第1乃至第4回の露光の様子を示している。図7は図1に対応させて水平及び垂直方向の解像度倍率が2の例を示している。なお、カラー露光では、光源装置11からのR,G,B光を用いて露光を行うが、簡略化のために、これらのR,G,B光の切換えについては説明を省略する。
【0051】
本実施の形態は、光源からの光を映像光に変換する液晶装置と感光材料との少なくとも一方を光軸に対して垂直な面内に移動させることにより、感光材料と液晶装置との位置関係を相対的にずらす、所謂画素ずらしを用いた露光を行うものに好適である。以下、画素ずらしによる露光について説明する。
【0052】
画像処理装置43は露光を行う画像について、必要に応じて画像処理を施した後、画像データを駆動装置44に出力する。画像処理装置43からの画像は、少なくとも(液晶装置12の画素数×水平方向の解像度倍率×垂直方向の解像度倍率)の解像度を有する。以下、水平方向の解像度倍率及び垂直方向の解像度倍率はいずれも2であるものとして説明する。
【0053】
駆動装置44は入力された画像データを液晶装置12に与えて液晶装置12を駆動する。この場合には、駆動装置44は、各露光毎に、液晶装置12の各画素毎に画像処理装置43からの画像の1画素分のデータを出力する。即ち、駆動装置44は、画素ずらしによる分割露光によって露光される領域に応じた画像データを液晶装置12に与えて駆動する。例えば、駆動装置44は、1回目の露光時に、液晶装置12の各画素の上左の位置の1/4画素のデータを液晶装置12に供給するものとする。
【0054】
液晶装置12は駆動装置44からの画像データに基づいて駆動されて、光源11からの出射光の透過率を、画像データに基づいて変化させる。これにより、液晶装置12の出射面側の偏光板42からは、画像データに基づく映像光が出射される。この映像光は焼き付けレンズ13を介して印画紙14上に照射されて露光が行われる。
【0055】
図7(a)はこの場合において、印画紙14上の一部の領域における露光を示している。図7(a)の左下り斜め斜線は露光が行われた領域を示している。図7において水平線及び垂直線によって囲まれた領域は、液晶装置12の各画素に対応した露光領域である。上述したように、液晶装置12の開口部35の水平及び垂直サイズが水平及び垂直方向の画素ピッチの夫々1/2であるので、1回の露光によって、印画紙14上には図7の枠で囲った各露光領域の1/4(水平1/2、垂直1/2)の領域しか露光されない。
【0056】
次に、移動制御装置45は、液晶装置12を入出射面に対して平行な面内で、例えば水平の一方向に1/2画素ピッチ分移動させる。即ち、この状態で露光を行うと、印画紙14上では、図7(b)の左下り斜め斜線に示すように、右下り斜め斜線で示す1回目の露光領域の水平隣の位置に露光が行われる。この2回目の露光時には、駆動装置14は、2回目の露光領域に対応した画像データを液晶装置12の各画素に供給する。
【0057】
同様に、3回目の露光時には、移動制御装置45は、液晶装置12を入出射面に対して平行な面内で、例えば垂直方向に1/2画素ピッチ分移動させる。この状態で露光を行うと、印画紙14上では、図7(c)の左下り斜め斜線に示すように、右下り斜め斜線で示す1,2回目の露光領域のうちの2回目の露光領域の垂直下方の位置に露光が行われる。更に、4回目の露光時には、移動制御装置45は、液晶装置12を入出射面に対して平行な面内で、例えば水平の他方向に1/2画素ピッチ分移動させる。この状態で露光を行うと、印画紙14上では、図7(d)の左下り斜め斜線に示すように、右下り斜め斜線で示す1〜3回目の露光領域のうちの1回目の露光領域の垂直下方の位置に露光が行われる。
【0058】
こうして、4回の画素ずらしによる分割露光によって、液晶装置12の画素数の4倍の画素数での露光が可能となる。この場合には、各露光時の露光領域が、液晶装置12の開口部35のサイズで厳密に規定されており、各露光において露光領域同士が重なることはなく、画質の劣化が生じることはない。
【0059】
このように本実施の形態においては、液晶装置12の開口部を画素ピッチの整数分の1に設定していることから、画素ずらしによる分割露光を行う場合でも、各露光時の露光領域同士が重なることはなく、画質が劣化することを防止することができる。
【0060】
なお、上記実施の形態においては、画素ピッチと開口部のサイズとの比である水平方向の解像度倍率と垂直方向の解像度倍率が2の例を示したが、3以上であってもよいことは明らかである。また、水平方向の解像度倍率と垂直方向の解像度倍率とが異なる値であってもよい。
【0061】
図8は本発明の第2の実施の形態に係る電気光学装置の一部の主要要素を示す平面図である。図8において図1と同一の構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0062】
本実施の形態は開口部のサイズが図1と異なるのみである。第1の実施の形態においては、光学系の影響を無視した例について説明した。しかし、実際には、光学系の影響によって、画素ずらしの各露光による印画紙上の露光領域は、画素ピッチと開口部サイズとの比によって与えられる解像度倍率に基づく領域よりも若干大きくなり、各露光の露光領域同士は一部重なってしまう。
【0063】
そこで、光学系の影響を考慮して、開口部サイズを小さくすることで、画素ずらしの各露光による露光領域同士が重なることを防止するようにしている。
【0064】
本実施の形態においては、開口部35’の水平サイズKh及び垂直サイズKvは、夫々水平画素ピッチLh及び垂直画素ピッチLvの整数分の1(図8の例は1/2)よりも若干小さい。例えば、水平及び垂直画素ピッチが20.5μmの場合に、開口部35’の水平及び垂直サイズKh=Kvとして8μmを採用する。なお、この数値は光学系の影響を考慮したものであり、光学系が異なれば異なる数値を採用する必要がある。
【0065】
開口部35’を形成するために、第2の実施の形態の液晶装置には、遮光膜23’が設けられている。即ち、本実施の形態の液晶装置は遮光膜23’の平面形状が遮光膜23と異なるのみである。
【0066】
本実施の形態における液晶装置の画素ピッチに対応した感光材料上の露光領域に対して、画素ずらしの各露光による露光領域を整数分の1にするためには、液晶装置の画素ピッチと各画素の開口部との比を、光学系の影響を考慮した分だけ整数分の1よりも若干小さくすればよい。
【0067】
これにより、図7と同様に、画素ずらしの各露光による露光領域同士が重なることはなく、画質を劣化させることなく解像度を向上させることができる。
【0068】
このように、本実施の形態においては、光学系の影響がある場合でも、画素ずらしの各露光による露光領域同士が重なることを確実に防止することができ、画質を向上させることができる。なお、制御が困難な光学系を調整するのではなく、確実な制御が可能な開口部サイズを調整しており、確実に光学系の影響を無くして、高画質化を図ることができる。
【0069】
また、本発明の電気光学装置は、TFT(薄膜トランジスタ)をスイッチング素子として備えた液晶表示パネルだけでなく、他のアクティブマトリックス型の液晶パネル(例えば、TFD(薄膜ダイオード)をスイッチング素子として備えた液晶パネル)や、パッシブマトリックス型の液晶パネルにも同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電気光学装置の一部の主要要素を示す平面図。
【図2】図1の電気光学装置を組込んだデジタル露光装置を示す概略構成図。
【図3】図1の電気光学装置である液晶装置を構成する素子基板をその上に形成された各構成要素と共に対向基板側から見た平面図。
【図4】素子基板と対向基板とを貼り合わせて液晶を封入する組立工程終了後の液晶装置を、図3のH−H'線の位置で切断して示す断面図。
【図5】液晶装置の画素領域を構成する複数の画素における各種素子、配線等の等価回路図。
【図6】液晶装置の画素構造を詳細に示す断面図。
【図7】図2中の印画紙14上の露光の状態を示す説明図。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る電気光学装置の一部の主要要素を示す平面図。
【符号の説明】
【0071】
3a…走査線、6a…データ線、23…遮光膜、35…開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に設けた複数の走査線及び複数のデータ線の交差に対応してマトリクス状に配設され、前記走査線及びデータ線を通じて供給される信号に応じて光の透過率を変化させる複数の画素と、
各画素の光の透過領域を、水平方向及び垂直方向夫々について、画素ピッチの整数分の1の領域に制限する遮光手段と、
を具備したことを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
光源からの光を画像信号に基づく映像光に変換し、光学系を介して感光材料上に露光するための電気光学装置であって、
基板に設けた複数の走査線及び複数のデータ線の交差に対応してマトリクス状に配設され、前記走査線及びデータ線を通じて供給される信号に応じて光の透過率を変化させる複数の画素と、
各画素の光の透過領域及び前記光学系を通過した光が照射される前記感光材料上における各露光領域のサイズが、光学系に基づき計算される前記感光材料上における前記画素ピッチに相当するサイズの整数分の1となるように、各画素の光の透過領域を水平及び垂直方向夫々について制限する遮光手段と、
を具備したことを特徴とする電気光学装置。
【請求項3】
光源からの光を画像信号に基づく映像光に変換し光学系を介して感光材料上に露光するための電気光学装置であって、
基板に設けた複数の走査線及び複数のデータ線の交差に対応してマトリクス状に配設され、前記走査線及びデータ線を通じて供給される信号に応じて光の透過率を変化させる複数の画素と、
各画素に夫々対応した前記感光材料上の各露光領域の水平及び垂直サイズが、夫々前記感光材料上における前記画素ピッチに対応した露光領域の水平及び垂直サイズの整数分の1のサイズとなるように、前記各画素の光の透過領域を水平及び垂直方向夫々について画素ピッチの整数分の1の領域に制限する遮光手段と、
を具備したことを特徴とする電気光学装置。
【請求項4】
前記遮光手段は、前記所定の光学系による前記映像光の拡がり分だけ、前記各画素の光の透過領域を水平及び垂直方向の画素ピッチの夫々整数分の1よりも小さい領域に制限することを特徴とする請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記画素は、前記基板と該基板に対向配置される他の基板との間に電気光学物質を挟持させて構成され、
前記遮光手段は、前記基板及び他の基板の少なくとも一方に形成された遮光膜によって構成されることを特徴とする請求項1又は2のいずれか一方に記載の電気光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−233594(P2008−233594A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74134(P2007−74134)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】