説明

電気回路検査用プローブ装置

【課題】 コネクタを有している被検査物の回路動作の検査を行う時に、コネクタとテスタの端子の接続が容易に行える電気回路検査用プローブ装置の実現。
【解決手段】 回路及び回路に接続されるコネクタ104を有する被検査物100のコネクタと、被検査物の回路の動作を検査するテスタの端子と、を接続するプローブ装置であって、コネクタに接触するスプリングプローブ31を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路モジュールなどのボード(基板)状被検査物と電気回路の検査を行うテスタの端子を接続する電気回路検査用プローブ装置に関し、特にコネクタを有するボード状被検査物の電気回路検査用プローブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気(電子)回路を含む装置が広く使用されており、そこで使用される電気回路は、製造の各段階で各種の動作検査が行われる。例えば、半導体集積回路(IC)は、ウエハ上に形成された段階で動作試験が行われ、ICモジュールに組み立てられた段階でも動作検査が行われる。これに加えて、ICモジュールなどを搭載した回路基板を有する電気回路モジュールなども動作検査が行われる。
【0003】
図1は、液晶表示装置(LCD)回路モジュールの動作検査を説明する図である。図1の(A)に示すように、LCDモジュール100は、液晶パネル101と、パネルに搭載されたIC102、パネルに接続され各種の電気・電子部品を有するフレキシブルプリント回路基板(FPC)103と、FPC基板103に接続された雌型コネクタ104とを有する。このLCDモジュール100を動作させるには、駆動モジュールに接続された雄型コネクタを雌型コネクタ104に接続し、駆動モジュールから電源及び駆動信号を供給する。また、LCDモジュール100からの信号は、雌型コネクタ104及び雄型コネクタを介して駆動モジュールへ送られる。なお、ここではLCDモジュール100が雌型コネクタ104を有する例を説明するが、雄型コネクタを有する場合もある。
【0004】
上記のようなLCDモジュール100の動作検査を行う時には、図1の(A)及び(B)に示すように、テスタ110から伸びるFPC基板111に設けられた雄型コネクタを雌型コネクタ104に接続し、テスタ110から電源及びテスト信号を供給し、LCDモジュール100の動作を確認すると共に、LCDモジュール100からの信号をテスタ110で確認する。
【0005】
図1の(C)はLCDモジュール100の雌型コネクタ104の詳細を示す図であり、(D)は雌型コネクタ104に雄型コネクタ112を接続した状態を示す。
【0006】
図1のLCDモジュール100は、電源及び信号の送受のためのコネクタを有しており、このコネクタを介して動作検査のための電源及びテスト信号を供給できるので、コネクタを利用してLCDモジュール100とテスタ110を接続する。コネクタを利用しない場合には、LCDモジュール100にテスタ110と接続するための端子を余分に設ける必要が生じる。また、コネクタを利用しないと、動作検査でコネクタにおける故障を発見することはできない。
【0007】
以上のような理由で、被検査物(図1ではLCDモジュール)が電源及び信号の送受のためのコネクタを有している場合には、コネクタを介してテスタとの接続を行っている。
【0008】
しかし、雌型コネクタに雄型コネクタを接続するのは、着脱が容易でなく、特に取り外す時にコネクタのコンタクトピンが損傷しやすいという問題がある。
【0009】
特許文献1は、雄型コネクタの代わりにコンタクトピンを配列したプリント配線板を設け、コンタクトピンを雌型コネクタに勘合させる検査時具を記載している。しかし、コンタクトピンが雌型コネクタに勘合するため、雌型コネクタと雄型コネクタを接続する場合と同様に、着脱が容易でなく、コンタクトピンが損傷しやすいという問題がある。
【0010】
また、特許文献2は、半導体ウエハ上に形成された半導体素子の電極パッドとテスタの端子を接続するため、スプリングプローブを使用する構成を記載している。しかし、特許文献2が記載しているのは、半導体ウエハ上に形成された半導体素子の電極パッドとテスタの端子を接続する場合であり、コネクタを有するようなモジュール化された被検査物については何ら記載していない。
【0011】
【特許文献1】特開2003−14806
【特許文献2】特開2001−183421
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のように、被検査物(図1ではLCDモジュール)が電源及び信号の送受のためのコネクタを有している場合には、コネクタを介してテスタとの接続を行っているが、これにはコネクタの着脱が容易でなく、コンタクトピンが損傷しやすいという問題がある。
【0013】
また、特許文献1に記載されているような雄型コネクタの代わりにプリント配線板に配列したコンタクトピンを使用する場合も同様の問題がある。
【0014】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、電源及び信号の送受のためのコネクタを有している被検査物の回路動作の検査を行う時に、コネクタとテスタの端子の接続が容易に行える電気回路検査用プローブ装置の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を実現するため、本発明の電気回路検査用プローブ装置は、コネクタに接触するコンタクトにスプリングプローブを使用する。
【0016】
すなわち、本発明の電気回路検査用プローブ装置は、回路及び前記回路に接続されるコネクタを有する被検査物の前記コネクタと、前記被検査物の前記回路の動作を検査するテスタの端子と、を接続するプローブ装置であって、前記コネクタに接触するスプリングプローブを備えることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、スプリングプローブをコネクタに接触させるため、プローブの先端がコネクタに勘合しなくても確実に導通させることができる。
【0018】
通常、コネクタは複数の端子を有するので、プローブ装置は複数のスプリングプローブを有する必要があり、複数のスプリングプローブはコネクタの複数の端子の配置に対応して正確に配置される必要がある。そこで、コネクタの複数の端子の配置に対応して正確に配置された複数のスプリングプローブを保持するプローブ保持部材を設ける。そして、コネクタが配置される載置台と、プローブ保持部材と載置台の位置関係を変化させて、複数のスプリングプローブをコネクタの複数の端子に接触させる移動機構とを設ける。
【0019】
載置台はコネクタの配置される位置を規定する位置決め手段を有し、コネクタの複数の端子と複数のスプリングプローブとの位置関係を正確に規定できるようにする。
【0020】
更に、コネクタの端子に対応し、複数のスプリングプローブとコネクタの複数の端子が接触するように案内する案内手段を、載置台に設けることが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、電源及び信号の送受のためのコネクタを有している被検査物の回路動作の検査を行う時に、コネクタとテスタの端子の接続が容易に且つ確実に行える。これにより、検査効率が向上し、コネクタや検査装置の損傷が低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図2は、本発明の第1実施例の回路動作検査システムの構成を示す図である。第1実施例の回路動作検査システムは、図1に示したLCDモジュール100を検査するシステムである。
【0023】
図2に示すように、この検査システムは、底板11と脚部材12と上板13で構成される筐体に設けられる。筐体の上には、被検査物であるLCDモジュール100が載置される載置台16が設けられる。載置台16は、上板13に設けられた摺動機構14により上下移動可能な支柱15により支持されており、上下方向に移動可能である。載置台16は、図示していない付勢手段により上方へ付勢されており、上から押し付けることにより下側に移動し、上板13に接触する。上板13には、プローブ保持部材30が設けられ、載置台16が下側に移動すると、プローブ保持部材30に保持された複数のスプリングプローブが、LCDモジュール100のコネクタ104に接触する。プローブ保持部材30の複数のスプリングプローブは、ケーブル29を介して、図示していないテスタに接続される。プローブ保持部材30の部分の詳細は、後述する。
【0024】
上板13の上には、回転軸18を支持する台17が設けられている。回転軸18には、回転部材19が取り付けられており、回転部材19の一方の端にはプレス部材21が設けられており、回転部材19の他方の端に設けられたハンドル20を押し上げることにより、プレス部材21に設けられた押し付け部材22が、載置台16及び載置台16に配置されたコネクタ104を下方に押し付け、載置台16を下方に移動させる。
【0025】
図3は、プローブ保持部材30の構造を示す図であり、1本のスプリングプローブ31を保持する構造を示しており、実際にはLCDモジュール100のコネクタ104の端子の配列に対応して多数のスプリングプローブ31が保持されている。また、図4は、スプリングプローブ31の詳細な構造を示す図である。図3のプローブ保持部材30は、図2では、上下逆に配置される。
【0026】
図3に示すように、プローブ保持部材30は、スプリングプローブ31及び端子部材33が配置される穴を有し、一方の側の保持板に端子部材33が抜けないように配置される。スプリングプローブ31を穴に配置して他方の側の保持板を組み立てた後は、スプリングプローブ31はプローブ保持部材30から抜けなくなり、コンタクト32のみがプローブ保持部材30から突き出る。
【0027】
図4に示すように、スプリングプローブ31は、導電性のパイプにバネを介して2本のプランジャを挿入したものであり、パイプの途中をかしめて2本のプランジャは抜けないようになっている。2本のプランジャは、パイプ内を摺動可能であり、バネによりそれぞれ外側に付勢されている。プランジャの先端のコンタクト32を押すと、プランジャはパイプに押し込まれる。
【0028】
従って、図3のプローブ保持部材30では、上方のプランジャが端子部材33に接触しており、下方のプランジャの先端のコンタクト32がプローブ保持部材30から突き出ており、コンタクト32を上方に押すと、コンタクト32は上方に移動する。パイプ、プランジャ、バネ及び端子部材33は導電性であるので、端子部材33に接続される導電性線材34をテスタの端子に接続すると、コンタクト32とテスタの端子が電気的に接続された状態になる。図2のケーブル29は、複数本の線材34を、相互に絶縁してまとめたものである。
【0029】
図5は、図2における、LCDモジュール100のコネクタ104が配置される載置台16の部分と、プローブ保持部材30の部分の構成を示す図である。載置台16には、コネクタ104を配置する部分が設けられており、その部分には、コネクタ104を突き当てて配置することにより、コネクタ104が載置台16の所定位置に配置される位置決め面が設けられている。載置台16には、位置決めして配置したコネクタ104の端子に対応して穴25が設けられている。穴25の下側は漏斗状に広がっている。
【0030】
載置台16のコネクタ104が配置される部分の下には、プローブ保持部材30が設けられており、図5に示すように、コンタクト32が突き出ている。前述のように、押し付け部材22で載置台16及びコネクタ104を押し下げると、コンタクト32が穴25に入り、コネクタ104の端子表面に接触する。コンタクト32は上下移動可能であるので、コンタクト32はコネクタ104の端子に接触した状態で、若干下方に変位する。このようにして、すべてのコンタクト32はコネクタ104の端子に同じ圧力で接触し、コネクタ104の端子がテスタの端子に電気的に接続された状態になる。
【0031】
図5の構成では、コネクタ104の下に設けられた穴25が漏斗状に広がっているので、コンタクト32の位置に誤差があっても、コンタクト32がコネクタ104の端子に接触するように案内される。
【0032】
なお、図5の構成で、載置台16で穴25が設けられる部分のみを別部品にして、穴の配置を変更できるようにしてもよい。これにより、端子の配置が異なる各種のコネクタに対応できる。
【0033】
なお、コンタクト32は、先端形状やストロークの異なる複数の種類が用意されており、プローブ保持部材30は、異なるピッチで複数のスプリングプローブを配列した複数の種類が用意されており、コネクタの端子の形状や配列に応じてそれぞれ選択できるようになっている。また前述のようにコネクタは雌型の場合も、雄型の場合もあり、本発明はいずれにも適用可能である。
【0034】
図6は、コネクタ104が配置される載置台16の部分と、プローブ保持部材30の部分の変形例の構成を示す図である。図6の構成は、コンタクト32の先端が常に穴25内に位置している点が、図5の構成とは異なる。この構成により、コンタクト32はより確実に対応するコネクタ104の端子に接触する。
【0035】
図7は、本発明の第2実施例の回路動作検査システムの構成を示す図である。第2実施例の回路動作検査システムも、図1に示したLCDモジュール100を検査するシステムである。
【0036】
図7に示すように、この検査システムは、脚部材12で支持された上板13の上に、被検査物であるLCDモジュール100が載置される。LCDモジュール100のコネクタ104は、位置きめ部材22に突き当てて配置することにより、所定位置に配置される。
【0037】
上板13の上には、移動部材42を上下方向に摺動可能に支持する摺動機構41が設けられている。移動部材42からはアーム43が伸び、アーム43にはプローブ保持部材30が取り付けられる。プローブ保持部材30は、第1実施例と同じものであり、下側からは複数のコンタクト32が突き出ており、上側にはテスタの端子に接続されるケーブル29が接続されている。移動部材42には、移動部材42に対して上下に移動可能な部材43が設けられ、部材43には、プローブ保持部材30の上側を押す押し付け部材44が設けられている。部材43を上から押し付けることにより、プローブ保持部材30は移動部材42と一緒に下側に移動し、コンタクト32がコネクタ104の端子に接触する。コンタクト32は上下移動可能であるので、コンタクト32はコネクタ104の端子に接触した状態で、若干上方に変位する。このようにして、すべてのコンタクト32はコネクタ104の端子に同じ圧力で接触し、コネクタ104の端子がテスタの端子に電気的に接続された状態になる。
【0038】
第2実施例では、コネクタ104を案内する穴が設けられていないので、第1実施例に比べて、コンタクト32の位置ずれが小さく、プローブ保持部材30の移動精度が高いことが要求されるが、案内用の穴を設ける必要がないので、構成が簡単である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、コネクタを有する各種回路モジュールの動作検査に適用でき、特に狭ピッチのコネクタを有する各種回路モジュールの動作検査に適している。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】検査対象の例であるLCDモジュールと、それを検査する従来の構成を示す図である。
【図2】本発明の第1実施例の回路動作検査システムの構成を示す図である。
【図3】プローブ保持部材の構成を示す図である。
【図4】スプリングプローブの構成を示す図である。
【図5】第1実施例においてコネクタとコンタクトが接触する部分の詳細構成を示す図である。
【図6】コネクタとコンタクトが接触する部分の変形例の構成を示す図である。
【図7】本発明の第2実施例の回路動作検査システムの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
16 載置台
30 プローブ保持部材
31 スプリングプローブ
100 LCDモジュール
104 コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路及び前記回路に接続されるコネクタを有する被検査物の前記コネクタと、前記被検査物の前記回路の動作を検査するテスタの端子と、を接続するプローブ装置であって、
前記コネクタに接触するスプリングプローブを備えることを特徴とする電気回路検査用プローブ装置。
【請求項2】
複数の前記スプリングプローブを保持するプローブ保持部材と、
前記コネクタが配置される載置台と、
前記プローブ保持部材と前記載置台の位置関係を相対的に変化させ、前記複数のスプリングプローブを前記コネクタの複数の端子に接触させる移動機構とを備える請求項1に記載の電気回路検査用プローブ装置。
【請求項3】
前記載置台は、前記コネクタの配置される位置を規定する位置決め手段を有する請求項2に記載の電気回路検査用プローブ装置。
【請求項4】
前記載置台は、前記コネクタの端子に対応し、前記複数のスプリングプローブと前記コネクタの複数の端子が接触するように案内する案内手段を有する請求項2または3に記載の電気回路検査用プローブ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−234639(P2006−234639A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−50916(P2005−50916)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(390026859)理化電子株式会社 (8)
【Fターム(参考)】