説明

電気式ウォーターポンプ

【課題】作動性能及び耐久性が向上した電気式ウォーターポンプを提供する。
【解決手段】
外部から印加される制御信号によって磁場を発生させる固定子、固定子で発生する磁場によって回転する回転子、冷却水入口及び加圧された冷却水出口を含むポンプカバー、ポンプカバーとの間に渦室を形成する前面、外周部に形成されて固定子が装着される固定子チャンバー、固定子チャンバーの内周部に形成されて回転子が装着される回転子チャンバーを含むボディー、中心軸を有し回転子と共に回転して回転子チャンバーに装着されているシャフト、シャフトと共に回転し冷却水を加圧して渦室に装着されるインペラを含み、シャフトは前方に配置された第1シャフトと後方に配置された第2シャフトに分割されており、回転子によって第1シャフトと第2シャフトが連結されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気式ウォーターポンプに係り、より詳しくは、作動性能が向上して耐久性が向上した電気式ウォーターポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ウォーターポンプは、エンジンの冷却及び室内の暖房のためにエンジン及びヒーターに冷却水を循環させるための装置である。ウォーターポンプから吐出された冷却水は、エンジン、ヒーター、またはラジエータと熱交換しながら循環した後、ウォーターポンプに再び流入する。このようなウォーターポンプは、大まかに機械式ウォーターポンプ(mechanical water pump)及び電気式ウォーターポンプ(electric water pump)に区分される。
【0003】
機械式ウォーターポンプは、エンジンのクランクシャフトに固定されたプーリに連結されて、クランクシャフトの回転(つまりエンジンの回転)によって駆動される。したがって、機械式ウォーターポンプから吐出される冷却水の流量はエンジンの回転速度によって決定される。しかし、ヒーター及びラジエータで必要とする冷却水の流量はエンジンの回転速度と関係なく決定されている。したがって、エンジン回転数が低い領域ではヒーター及びラジエータが正常に作動することができず、ヒーター及びラジエータを正常に作動させるためにエンジン回転数を高めなければならなかった。これによって、車両の燃費が低下する問題が発生した。
【0004】
電気式ウォーターポンプは、制御装置によって制御されるモータによって駆動される。したがって、電気式ウォーターポンプは、エンジンの回転速度とは関係なく冷却水の流量を決定することができる長所がある。しかし、電気式ウォーターポンプに使用される部品は電気によって作動するので、電気的に作動する部品が十分な防水性能を有するようにすることが重要である。十分な防水性能の確保は電気式ウォーターポンプの性能を向上させて、耐久性を向上させる。
【0005】
現在は、車両に電気式ウォーターポンプの適用が増加する傾向にある。それによって、電気式ウォーターポンプの性能を向上させて、耐久性を向上させるための多様な技術が開発されている。 特許文献1参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−257912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記のような点に鑑みてなされたものであって、本発明の主な目的は、作動性能及び耐久性が向上した電気式ウォーターポンプを提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、シャフトを第1シャフトと第2シャフトに分割し、前記第1シャフトと第2シャフトを回転子で連結させることによって、重量及び原価が減少した電気式ウォーターポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するための本発明の実施例に係る電気式ウォーターポンプは、外部から印加される制御信号によって磁場を発生させる固定子、前記固定子で発生する磁場によって回転する回転子、冷却水が流入する入口及び加圧された冷却水が流出する出口を含むポンプカバー、前記ポンプカバーとの間に渦室を形成する前面、外周部に形成されて、前記固定子が装着される固定子チャンバー、及び前記固定子チャンバーの内周部に形成されて、前記回転子が装着される回転子チャンバーを含むボディー、中心軸を有し、前記回転子に固定されて前記回転子と共に前記中心軸を中心に回転して、前記回転子チャンバーに装着されているシャフト、並びに前記シャフトの前端部に固定されて前記シャフトと共に回転し、前記入口を通じて流入した冷却水を加圧して、前記渦室に装着されるインペラ、を含み、前記シャフトは、前方に配置された第1シャフトと後方に配置された第2シャフトに分割されており、前記回転子によって前記第1シャフトと前記第2シャフトが連結されることを特徴とする。
【0010】
以下、下記の特徴を有する。
前記第1シャフトの後端部には半径方向に突出した第1突出部が形成されており、前記第1突出部の後方に前記回転子の前端部に嵌合する第1圧入面が延長される。
【0011】
前記第2シャフトの前端部には半径方向に突出した第2突出部が形成されており、前記第2突出部の前方に前記回転子の後端部に嵌合する第2圧入面が延長される。
【0012】
前記回転子チャンバーは前記渦室と流体が流れるように連結されており、前記固定子チャンバーは前記回転子チャンバーに対して流体的に密閉される。
【0013】
前記第1、2シャフトと前記回転子との結合によって前記回転子の内部には空間が形成され、前記空間は前記回転子チャンバーに対して流体的に密閉される。
【0014】
前記シャフトの回転摩擦を減らすために、前記第1シャフトと前記前面との間には第1ベアリングが配置される。
【0015】
前記電気式ウォーターポンプは、前記ボディーの後端に装着されて、その内部にドライバーチャンバーが形成されたドライバーケース、及び前記ドライバーチャンバーに装着されて、前記固定子に制御信号を印加するドライバー、をさらに含む。
【0016】
前記シャフトの摩擦を減らすために、前記第2シャフトの後端部と前記ドライバーケースの前面との間には第2ベアリングが配置される。
【0017】
本発明の実施例によれば、前記固定子は、磁性体の複数の片が積層されて形成される固定子コア、前記固定子コアの片を連結するインシュレータ、前記固定子コアを囲んで磁路を形成するコイル、並びに前記固定子コア、インシュレータ、及びコイルを囲んで密封する固定子ケース、を含む。
【0018】
前記固定子ケースは低収縮材であるカリウム系を含む複合原料で製造される。
【0019】
前記固定子は、回転子の位置を感知するホールセンサー、及び前記ホールセンサで感知された回転子の位置によって固定子に印加する制御信号を制御するホールセンサー基板、をさらに含む。
【0020】
前記ホールセンサーと前記ホールセンサー基板も前記固定子ケースの内部に密封される。
【0021】
前記回転子は、中空の円筒形状で磁性体である回転子コア、前記回転子コアの外周面に装着される永久磁石、前記回転子コア及び前記永久磁石の両端部に装着されて、前記回転子コア及び永久磁石を一次的に固定する回転子カバー、並びに前記回転子コア及び永久磁石が前記回転子カバーに装着された状態で前記回転子コア及び前記永久磁石の外周面を囲んで2次的に固定する回転子ケース、を含む。
【0022】
前記回転子ケースは低収縮材であるカリウム系を含む複合原料で製造される。
【発明の効果】
【0023】
本発明による電気式ウォーターポンプによれば、電気的に作動する固定子及び回転子が防水性能を有する樹脂材のケースで覆われているので、その性能及び耐久性が向上する。
【0024】
また、ホールセンサー及びホールセンサー基板を固定子内に装着し、回転子の初期位置に従って制御信号を変化させることにより初期機動性が高まる。
【0025】
さらに、シャフトを第1シャフト及び第2シャフトに分割し、前記第1シャフトと前記第2シャフトを回転子で連結させることによって、重量及び原価が減少する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例に係る電気式ウォーターポンプの斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施例を添付した図面に基づいて詳細に説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施例に係る電気式ウォーターポンプの斜視図であり、図2は、図1のA−A線に沿った断面図である。
【0029】
図1及び図2に示しているように、本発明の実施例に係る電気式ウォーターポンプ1は、ポンプカバー10、ボディー30、ドライバーケース50、及びドライバーカバー70を含む。ポンプカバー10の後端部にはボディー30が結合されて渦室(volute chamber)16が形成され、ボディー30の後端部にドライバーケース50を結合することによって回転子チャンバー38及び固定子チャンバー42が形成され、前記ドライバーケース50の後端部にドライバーカバー70が結合することによってドライバーチャンバー64が形成される。
【0030】
また、前記渦室16にはインペラが装着され、前記回転子チャンバー38にはシャフト83に固定された回転子(rotor)84、86、88、90が装着されていて、前記固定子チャンバー42には固定子(stator)102、104、108、109が装着され、前記ドライバーチャンバー64にはドライバー80が装着されている。前記シャフト83は中心軸(x)を有し、前記回転子84、86、88、90は前記シャフト83と共に中心軸(x)を中心に回転する。前記固定子102、104、108、109は前記シャフト83の中心軸(x)に同心に配置される。
【0031】
ポンプカバー10は、その前端部に入口12が形成されて、冷却水が前記入口12を通じて電気式ウォーターポンプ1内に流入し、その側面部に出口14が形成されて、加圧された冷却水が前記出口14を通じて流出する。前記ポンプ10の入口12の後端部には傾斜面18が形成され、ポンプカバー10の後端部20は前記傾斜面18から後側に延長されている。前記ポンプカバー10の後端部20は前記ボディー30のカバー装着部44にボルト(B)などの固定手段で結合される。前記傾斜面18は前記シャフト83の中心軸(x)に対して傾いていて、前記傾斜面18の延長線の交差点(P)は前記シャフト83の中心軸(x)上に位置する。
【0032】
前記ポンプカバー10の内部には冷却水が加圧される渦室16が形成され、前記渦室16には前記冷却水を加圧して出口14を通じて流出させるインペラ(impeller)22が装着されている。このインペラ22はシャフト83の前端部に固定されて、シャフト83と共に回転する。図面においては、前記インペラ22の後端部にシャフト溝27を形成し、前記シャフト83が前記シャフト溝27の内周面に圧入されることによって前記インペラ22が前記シャフト83に固定されることを示した。しかし、前記インペラ22は前記シャフト83にボルトなどの固定手段で固定することも可能である。
【0033】
前記インペラ22は、その前端部に前記傾斜面18に対応する対向面26を有している。したがって、前記対向面26の延長線の交差点も前記シャフト83の中心軸(x)上に位置する。ウォーターポンプ1における回転要素であるインペラ22及び回転子84、86、88、90の中心、及びウォーターポンプ1における固定要素である固定子102、104、108、109の中心を中心軸(x)上に配置することによって、ウォーターポンプ1に流入した冷却水が円滑にガイドされて、ウォーターポンプ1の作動性能が向上する。
【0034】
また、インペラ22は、複数の羽24によって複数の空間に区画されている。このような複数の空間に流入した冷却水は、インペラ22の回転によって加圧される。
【0035】
ボディー30は、前記後面が開いている中空の円筒形状で、前記ポンプカバー10の後端部に結合される。前記ボディー30は、前記ポンプカバー10との間に渦室16を形成する前面32と、前記ボディー30の内部の外周部に形成されて、固定子102、104、108、109が装着される固定子チャンバー42と、前記固定子チャンバー42の内周部に形成されて、回転子84、86、88、90が装着される回転子チャンバー38とを含む。
【0036】
前記ボディー30の前面32には外側から中心に向かってカバー装着部44、第1固定子装着面40、第1ベアリング装着面48、及び貫通ホール34が順次に形成されている。
【0037】
カバー装着部44は、前記ポンプカバー10の後端部20に結合される。前記カバー装着部44と前記後端部20との間にはOリング(O)などの密封手段が介在し、渦室16内の冷却水が外部に漏出するのを防止する。
【0038】
第1固定子装着面40は、前記前面32から後方に突出し、固定子チャンバー42と回転子チャンバー38との間の境界を定義する。前記第1固定子装着面40にはOリング(O)などの密封手段を介在した状態で固定子102、104、108、109の前端が装着される。
【0039】
第1ベアリング装着面48は、前記前面32から後方に突出している。前記第1ベアリング装着面48と前記シャフト83の前端部との間には第1ベアリング94が介在して、シャフト83の回転を円滑にするだけでなく、シャフト83が傾くのを防止する。
【0040】
前記前面32の中央部には貫通ホール34が形成されて、シャフト83の前端部が前記貫通ホール34を通じて前記渦室16に突出し、前記シャフト83の前端部にインペラ22が固定される。
【0041】
一方、前記第1固定子装着面40と前記第1ベアリング装着面48との間の前面32には連結孔36が形成されている。したがって、回転子チャンバー38は、流体が流れるように渦室16と連結されている。このような連結孔36を通じて冷却水が出入することによって、ウォーターポンプ1の作動によってシャフト83、回転子84、86、88、90、及び固定子102、104、108、109で発生する熱を冷却する。したがって、ウォーターポンプ1の耐久性を向上させることができる。また、冷却水に含まれている浮遊物が回転子チャンバー38に蓄積されるのを防止することができる。
【0042】
前記ボディー30の内部中央部には回転子チャンバー38が形成されている。前記回転子チャンバー38にはシャフト83と回転子84、86、88、90が装着されている。
【0043】
シャフト83は第1シャフト81及び第2シャフト82に分割されており、前記第1シャフト81と前記第2シャフト82は回転子84、86、88、90によって連結される。
【0044】
前記第1シャフト81はシャフト83の前端に配置され、前記第1シャフト81の前端部は前記貫通ホール34を貫いて前記インペラ22と結合する。前記第1シャフト81の後端部には半径方向に突出した第1突出部130が形成されており、前記第1突出部130の後側に第1圧入面132が延長している。第1圧入面132には前記回転子84、86、88、90の前端部が圧入され、前記第1突出部130は前記回転子84、86、88、90の圧入基準となる。
【0045】
前記第2シャフト82はシャフト83の後端に配置される。前記第2シャフト82の前端部には半径方向に突出した第2突出部134が形成されており、前記第2突出部134の前方に第2圧入面136が延長している。第2圧入面136には前記回転子84、86、88、90の後端部が圧入され、前記第2突出部130は前記回転子84、86、88、90の圧入基準となる。
【0046】
また、前記第1シャフト81及び前記第2シャフト82と前記回転子84、86、88、90との結合によって、前記回転子84、86、88、90の内部には空間138が形成される。この空間138は前記回転子チャンバー38と流体的に密閉している。従来の電気式ウォーターポンプに使用されるシャフトは一つの部品で形成されていて、前記空間138がシャフトの材質で満たされていた。
【0047】
しかし、本発明の実施例によれば、シャフト83が第1シャフト81及び第2シャフト82に分割されており、この第1シャフト81及び第2シャフト82が前記回転子84、86、88、90によって連結されることによって空間138が生成される。したがって、シャフト83及びウォーターポンプ1の重量が減少するようになる。
【0048】
回転子84、86、88、90は前記第1シャフト81及び前記第2シャフト82にそれぞれ圧入されることによって前記第1シャフト81及び前記第2シャフト82を連結し、非対称で形成されている。前記回転子84、86、88、90の非対称形状、及び渦室16と回転子チャンバー38間の圧力差によって、前記シャフト83には前面32側で推力が発生する。シャフト83に発生した推力はシャフト83を前面32側に押して、第1シャフト81の第1突出部130と第1ベアリング94との間に干渉及び衝突が発生し得、このために第1ベアリング94が破損し得る。
【0049】
このような第1シャフト81の第1突出部130と第1ベアリング94との間の干渉及び衝突を防止するために、前記第1シャフト81の第1突出部130と前記第1ベアリング94との間にはカップ(図示せず)を装着することができる。このようなカップは弾力性のあるゴム材質からなって、シャフト83の推力が第1ベアリング94に伝達することを緩和する。
【0050】
一方、カップが第1ベアリング94と直接接触する場合、シャフト83の推力が第1ベアリング94に伝達するのを緩和させることができるが、第1ベアリング94とゴム材質のカップとの間で回転摩擦が発生して、ウォーターポンプ1の性能を悪化させる。したがって、前記カップ第1ベアリング94との間にはスラストリング(thrust ring)(図示せず)を装着して、第1ベアリング94とカップとの間の回転摩擦を減少させることができる。つまり、カップはシャフト83の推力を減少させ、スラストリング98はシャフト83の回転摩擦を減少させる。
【0051】
前記回転子84、86、88、90は、回転子コア86、永久磁石88、回転子カバー84、及び回転子ケース90を含む。前記回転子84、86、88、90は中空の円筒形状である。
【0052】
磁性体である回転子コア86は円筒形状であり、前記回転子コア86の外周面に複数の溝(図示せず)が長さ方向に形成されて、各溝に永久磁石88が挿入して装着される。
【0053】
永久磁石88は回転子コア86の外周面に装着される。
【0054】
一対の回転子カバー84は、回転子コア86及び永久磁石88の前端部と後端部にそれぞれ装着される。前記回転子カバー84は、前記回転子コア86及び永久磁石88を一次的に固定して、比重の高い銅やサス(ステンレス鋼)で製造される。また、前記一対の回転子カバー84は、それぞれ前記第1シャフト81の第1圧入面132と前記第2シャフト82の第2圧入面136に圧入される。
【0055】
回転子ケース90は、前記回転子コア86及び永久磁石88が前記回転子カバー84に装着された状態で前記回転子コア86及び前記永久磁石88の外周面を囲んで2次的に固定する。前記回転子ケース90は、低収縮材であるカリウム系を含む複合原料(Bulk Mold Compound;BMC)で製造される。このような回転子ケース90の製造過程に対して簡略に説明する。
【0056】
回転子コア86及び永久磁石88を回転子カバー84に装着して、金型(図示せず)に前記回転子コア86及び永久磁石88が装着された回転子カバー84を入れる。その後、カリウム系を含む複合原料を溶解して、高温(150℃)、高圧の状態で前記金型に挿入した後で冷却する。このように低収縮材で回転子ケース90を製造すれば、回転子ケース90の精密な製造が可能になる。通常の樹脂の収縮率は4/1000〜5/1000であるのに対し、低収縮材樹脂の収縮率は5/10000程度である。
【0057】
高温の樹脂を金型に挿入して回転子ケース90の形状を形成した後で冷却すると、回転子ケース90が収縮して、所望の形状を形成することができない。したがって、低収縮率のカリウム系を含む複合原料で回転子ケース90を製造すれば、冷却による回転子ケース90の収縮が減少して、回転子ケース90を精密に製造することができる。また、カリウム系を含む複合原料は、放熱性能が優れていて、回転子の熱を自ら冷却することができる。したがって、高熱によるウォーターポンプの性能低下を防止する。
【0058】
また、従来の回転子の製造方法によれば、永久磁石を回転子コアの外周面に接着剤を利用して接着した。しかし、回転子が回転することによって回転子に高温、高圧が発生し、接着剤が溶解したり、永久磁石が離脱する問題が発生した。しかし、本発明の実施例によれば、回転子コア86に装着された永久磁石88が回転子カバー84及び回転子ケース90によって二重に固定されるので、永久磁石88が回転子コア86から離脱する問題を予防することができる。さらに、回転子チャンバー38に冷却水が流入するので、回転子84、86、88、90を持続的に冷却するようになる。
【0059】
前記ボディー30の内部の前記回転子チャンバー38の半径方向の外側には固定子チャンバー42が形成されている。前記固定子チャンバー42には固定子102、104、108、109が装着されている。
【0060】
固定子102、104、108、109は、前記ボディー30に直接または間接的に固定されていて、固定子コア102、インシュレータ104、コイル108、及び固定子ケース109からなる。
【0061】
固定子コア102は、磁性体である複数の片が積層され形成される。つまり、厚さが薄い複数の片を積んで、所望の厚さの固定子コア102を形成する。
【0062】
インシュレータ104は、前記固定子コア102を構成する各片を互いに連結するもので、樹脂をモールディングすることによって形成される。つまり、複数の片が積層された固定子コア102を金型(図示せず)に挿入し、溶融した樹脂を前記金型に注入することによって、インシュレータ104が装着された固定子コア102を製造する。この時、固定子コア102及びインシュレータ104の前後端部にはコイル装着溝106が形成されている。
【0063】
コイル108は、前記固定子コア102の外周面を囲んで磁路を形成する。
固定子ケース109は、前記固定子コア102、インシュレータ104、及びコイル108を囲んで密封する。このような固定子ケース109は、前記回転子ケース90と同様に、低収縮材であるカリウム系を含む複合原料(BMC)でインサートモールディングによって製造される。固定子ケース109の後端外周側には複数の固定溝105が形成されている。
【0064】
また、固定子ケース109のインサートモールディング時に、ホールセンサー112及びホールセンサー基板110を共にインサートモールディングすることができる。つまり、固定子102、104、108、109、ホールセンサー112、及びホールセンサー基板110が一つの部品に製造される。
【0065】
ホールセンサー112は、回転子84、86、88、90の位置を感知する。前記回転子84、86、88、90には位置を検出するための表示(図示せず)が形成されていて、ホールセンサー112が前記表示を読み取って回転子84、86、88、90の位置を検出する。
【0066】
ホールセンサー基板110は、前記ホールセンサで感知した回転子84、86、88、90の位置によって固定子102、104、108、109に印加する制御信号を制御する。つまり、回転子84、86、88、90の位置によって固定子102、104、108、109の特定の部分には磁場の強さを強くし、他の部分には磁場の強さを弱くする。これによって、ウォーターポンプ1の初期機動性が高まる。
【0067】
前記ボディー30の後端外周面にはケース装着部46が形成されている。
【0068】
ドライバーケース50は、前記ボディー30の後端部に結合されるもので、その前端部にケース面52が形成されている。前記ドライバーケース50が前記ボディー30の後端部に結合されることによって、前記ボディー30内に回転子チャンバー38及び固定子チャンバー42が形成される。前記ドライバーケース50の前端外周側にボディー装着部60が形成されて、前記ケース装着部46にボルト(B)などの固定手段で結合される。
【0069】
前記ケース面52は、外側から中心に挿入部54、第2固定子装着面56、及び第2ベアリング装着面58が順次に形成されている。
【0070】
挿入部54は、ケース面52の外周部に形成されていて、前方に突出している。このような挿入部54は、前記ボディー30の後端部に挿入されて密着する。前記挿入部54と前記ボディー30の後端部との間にはOリング(O)などの密封手段が介在し、固定子チャンバー42を密封する。また、前記挿入部54は固定子ケース109に形成された固定溝105に挿入されて、回転子84、86、88、90の回転による固定子102、104、108、109の回転及び軸方向の動きを制限する。
【0071】
このような固定溝105は、別途の工程や装置が必要なく、固定子ケース109のインサートモールディング時に形成できるので、製造工程が増加しない。また、固定子102、104、108、109を接着剤でボディー30に接着したり、固定子102、104、108、109をボディーに圧入する方式で固定子102、104、108、109を固定するのではないので、固定子102、104、108、109の分離が容易である。したがって、固定子102、104、108、109が故障しても容易に交換することができる。
【0072】
第2固定子装着面56は、前記ケース面52から前方に突出し、固定子チャンバー42と回転子チャンバー38との間の境界を定義する。前記第2固定子装着面56にはOリング(O)などの密封手段を介在した状態で固定子102、104、108、109の後端が装着される。前記第1固定子装着面40と前記固定子102、104、108、109の前端との間に介在されたOリング(O)、及び前記第2固定子装着面56と前記固定子102、104、108、109の後端との間に介在されたOリング(O)によって、前記固定子チャンバー42は前記回転子チャンバー38と連通しない。したがって、回転子チャンバー38に流入した冷却水は固定子チャンバー42に流入しない。
【0073】
第2ベアリング装着面58は、前記ケース面52から前方に突出している。前記第2ベアリング装着面58と前記第2シャフト82の後端部との間には第2ベアリング96が介在し、シャフト83の回転を円滑にするだけでなく、シャフト83が傾くのを防止する。
【0074】
前記ドライバーケース50の後端は開いている。このように開口された後端にディスク形状のドライバーカバー70がボルト(B)などの結合手段で結合されることによって、ドライバーケース50とドライバーカバー70との間にドライバーチャンバー64が形成される。このために、ドライバーカバー70の外周面には前方に突出された突出部72が形成され、前記突出部72が前記ドライバーケース50の後端外周面62に挿入され密着する。前記突出部72と前記外周面62との間にはOリング(O)などの密封手段が介在されて、埃などがドライバーチャンバー64に入るのを防止する。
【0075】
ドライバーチャンバー64にはウォーターポンプ1の作動を制御するドライバー80が装着されている。前記ドライバー80は、マイクロプロセッサー及び印刷回路基板(Printed Circuit Board;PCB)を含み、外部の制御器(図示せず)にコネクタ74を通じて電気的に連結されることによって、制御器の制御信号の印加を受ける。また、前記ドライバー80は、前記ホールセンサー基板110に電気的に連結されて、制御器から印加された制御信号を前記ホールセンサー基板110に印加する。
【0076】
一方、前記ドライバーチャンバー64は、前記ケース面52によって前記回転子チャンバー38から遮られている。したがって、回転子チャンバー38の冷却水はドライバーチャンバー64に流入しない。
【0077】
上述のように、本発明による電気式ウォーターポンプによれば、電気的に作動する固定子及び回転子が防水性能を有する樹脂材のケースで覆われているので、その性能及び耐久性が向上する。
【0078】
また、ホールセンサー及びホールセンサー基板を固定子内に装着し、回転子の初期位置によって制御信号を変化させることによって、初期機動性が高まる。
【0079】
さらに、シャフトを第1シャフト及び第2シャフトに分割し、前記第1シャフトと前記第2シャフトを回転子で連結させることによって、重量及び原価が減少する。
【0080】
以上で、本発明に関する好ましい実施例を説明したが、本発明は前記実施例に限定されない。当該発明が属する技術分野で通常の知識を有する者は、本発明の実施例から技術的範囲内において容易に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、作動性能が向上して耐久性が向上した電気式ウォーターポンプの分野に適用できる。
【符号の説明】
【0082】
22 インペラ
30 ボディー
38 回転子チャンバー
64 ドライバーチャンバー
80 ドライバー
81、82 第1、2シャフト
83 シャフト
84、86、88、90 回転子
102、104、108、109 固定子
110 ホールセンサー基板
112 ホールセンサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から印加される制御信号によって磁場を発生させる固定子、
前記固定子で発生する磁場によって回転する回転子、
冷却水が流入する入口及び加圧された冷却水が流出する出口を含むポンプカバー、
前記ポンプカバーとの間に渦室を形成する前面、外周部に形成されて、前記固定子が装着される固定子チャンバー、及び前記固定子チャンバーの内周部に形成されて、前記回転子が装着される回転子チャンバーを含むボディー、
中心軸を有し、前記回転子に固定されて前記回転子と共に前記中心軸を中心に回転して、前記回転子チャンバーに装着されているシャフト、並びに
前記シャフトの前端部に固定されて前記シャフトと共に回転し、前記入口を通じて流入した冷却水を加圧して、前記渦室に装着されるインペラ、
を含み、
前記シャフトは、前方に配置された第1シャフトと後方に配置された第2シャフトに分割されており、前記回転子によって前記第1シャフトと前記第2シャフトが連結されることを特徴とする、電気式ウォーターポンプ。
【請求項2】
前記第1シャフトの後端部には半径方向に突出した第1突出部が形成されており、前記第1突出部の後方に前記回転子の前端部に嵌合される第1圧入面が延長されることを特徴とする、請求項1に記載の電気式ウォーターポンプ。
【請求項3】
前記第2シャフトの前端部には半径方向に突出した第2突出部が形成されており、前記第2突出部の前方に前記回転子の後端部に嵌合される第2圧入面が延長されることを特徴とする、請求項2に記載の電気式ウォーターポンプ。
【請求項4】
前記回転子チャンバーは前記渦室と流体が流れるように連結されており、前記固定子チャンバーは前記回転子チャンバーに対して流体的に密閉されることを特徴とする、請求項1に記載の電気式ウォーターポンプ。
【請求項5】
前記第1、2シャフトと前記回転子との結合によって前記回転子の内部には空間が形成され、前記空間は前記回転子チャンバーに対して流体的に密閉されることを特徴とする、請求項4に記載の電気式ウォーターポンプ。
【請求項6】
前記シャフトの回転摩擦を減らすために、前記第1シャフトと前記前面との間には第1ベアリングが配置されることを特徴とする、請求項1に記載の電気式ウォーターポンプ。
【請求項7】
前記ボディーの後端に装着されて、その内部にドライバーチャンバーが形成されたドライバーケース、及び
前記ドライバーチャンバーに装着されて、前記固定子に制御信号を印加するドライバー、をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の電気式ウォーターポンプ。
【請求項8】
前記シャフトの摩擦を減らすために、前記第2シャフトの後端部と前記ドライバーケースの前面との間には第2ベアリングが配置されることを特徴とする、請求項7に記載の電気式ウォーターポンプ。
【請求項9】
前記固定子は、
磁性体の複数の片が積層されて形成される固定子コア、
前記固定子コアの片を連結するインシュレータ、
前記固定子コアを囲んで磁路を形成するコイル、並びに
前記固定子コア、インシュレータ、及びコイルを囲んで密封する固定子ケース、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の電気式ウォーターポンプ。
【請求項10】
前記固定子ケースは、低収縮材であるカリウム系を含む複合原料で製造されることを特徴とする、請求項9に記載の電気式ウォーターポンプ。
【請求項11】
前記固定子は、
回転子の位置を感知するホールセンサー、及び
前記ホールセンサーで感知した回転子の位置によって固定子に印加する制御信号を制御するホールセンサー基板、をさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載の電気式ウォーターポンプ。
【請求項12】
前記ホールセンサーと前記ホールセンサー基板も前記固定子ケースの内部に密封されることを特徴とする、請求項11に記載の電気式ウォーターポンプ。
【請求項13】
前記回転子は、
中空の円筒形状で磁性体である回転子コア、
前記回転子コアの外周面に装着される永久磁石、
前記回転子コア及び前記永久磁石の両端部に装着されて、前記回転子コア及び永久磁石を一次的に固定する回転子カバー、並びに
前記回転子コア及び永久磁石が前記回転子カバーに装着された状態で前記回転子コア及び前記永久磁石の外周面を囲んで2次的に固定する回転子ケース、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の電気式ウォーターポンプ。
【請求項14】
前記回転子ケースは、低収縮材であるカリウム系を含む複合原料で製造されることを特徴とする、請求項13に記載の電気式ウォーターポンプ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−106443(P2011−106443A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179268(P2010−179268)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【出願人】(500518050)起亞自動車株式会社 (449)
【出願人】(510145439)明和工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】