説明

電気掃除機

【課題】商用電源の供給電源電圧がばらついても確実に電動送風機を起動させることができる電気掃除機を提供すること。
【解決手段】回転式可変抵抗器7(VR7)とコンデンサ(C21)にて決定するパワーコントロール位相制御回路に、電源をON−OFFするシーソー型スイッチ1と回転式可変抵抗器7の軸8を回転させるコントロールつまみ5を備え、コントロールつまみ5と回転式可変抵抗器7との間に回転式可変抵抗器7の軸8と共に回転するピニオン9を設け、ピニオン9の左右両サイドにラック10、11を設けたラックピニオン構造を構成することにより、左右ラック10、11の動作にてシーソー型スイッチをON−OFFさせ、スイッチON時における回転式可変抵抗値の抵抗値とスイッチOFF時における回転式可変抵抗値の抵抗値を異ならすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気掃除機のパワー制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電気掃除機のパワー制御は、双方向性サイリスタ、ダイアック、可変抵抗器、コンデンサで構成した位相制御回路を使用している。また、モータの制御回路として双方向サイリスタにトライアックを使用し、位相角を調節するゲートを付加して構成しているものもある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図8は、従来の電気掃除機の回路図を示すものである。図8に示すように双方向サイリスタ21と、ダイアック22と、可変抵抗器23と、コンデンサ24と、電動送風機25とから構成されている。
【特許文献1】特開昭63−274396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、商用電源の供給電源電圧が低く、位相制御回路の可変抵抗器の抵抗値が大きい場合(低パワー設定状態)は、電源ON時のコンデンサの充電が遅く、双方向性サイリスタのONタイミングが遅くなり、電気掃除機に内蔵されている電動送風機の起動トルクを十分に与えることができない。そのため電動送風機が回転せず、電気掃除機の吸引力が発生しなくなってしまう。
【0005】
電動送風機の起動トルクは回転中のトルクより大きいため、可変抵抗器の最大抵抗値(パワーコントロールの最小値)は起動トルクを確保するためにある程度小さくしておく必要があった。
【0006】
従って、起動さえしてしまえば十分に回転力が維持できる双方向性サイリスタのONタイミングであっても掃除機の確実な起動を優先させることで、パワーコントロールの最小値が制限されてしまうという課題を有していた。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、スイッチON時における双方向性サイリスタのONタイミングをスイッチOFF時における双方向性サイリスタのONタイミングより早くすることで、商用電源の供給電源電圧がばらついても確実に電動送風機を起動させることができ、かつパワーコントロールの最小値をより小さくすることができ、幅広いパワーコントロールができる使用勝手を良くした電気掃除機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明の電気掃除機は、電源をON−OFFするシーソー型スイッチと回転式可変抵抗器の軸を回転させる回転カバーを備え、回転カバーと回転式可変抵抗器との間に回転式可変抵抗器の軸と共に回転するピニオンを設け、ピニオンの左右両サイドにラックを設けたラックピニオンを構成し、左右ラックの動作にてシーソー型スイッチをON−OFFさせ、左右ラックの動作範囲を調整することで、スイッチON時における回転式可変抵抗値の抵抗値とスイッチOFF時における回転式可変抵抗値の抵抗値を異ならすことができ、スイッチON時における前記双方向性サイリスタのONタイミングをスイッチOFF時における前記双方向性サイリスタのONタイミングより早くするようにしたものである。
【0009】
これによって、商用電源の供給電源電圧がばらついても電動送風機の起動トルクを確保できるので確実な起動をおこなうことができ、かつパワーコントロールの最小値をより小さくすることができるので、幅広いパワーコントロールが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電気掃除機は、商用電源の供給電源電圧がばらついても確実に電動送風機を起動させることができ、かつパワーコントロールの最小値をより小さくすることができるので、幅広いパワーコントロールが可能となり、より使用勝手のよい電気掃除機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
第1の発明は、双方向性サイリスタと前記双方向性サイリスタのゲートに配されたダイアックのONタイミングを前記ダイアックに配される抵抗値が回転角度によりAからB(A<B)まで変化する回転式可変抵抗器とコンデンサにて決定し、吸引力を発生する電動送風機をパワーコントロールする位相制御回路において、電源をON−OFFするシーソー型スイッチと回転式可変抵抗器の軸を回転させる回転カバーを備え、回転カバーと回転式可変抵抗器との間に回転式可変抵抗器の軸と共に回転するピニオンを設け、ピニオンの左右両サイドにラックを設けたラックピニオンを構成し、左右ラックの動作にてシーソー型スイッチをON−OFFさせ、左右ラックの動作範囲を調整することで、シーソー型スイッチON時における回転式可変抵抗値の抵抗値とシーソー型スイッチOFF時における回転式可変抵抗値の抵抗値を異ならすことができ、スイッチON時における双方向性サイリスタのONタイミングをスイッチOFF時における双方向性サイリスタのONタイミングより早くすることにより、商用電源の供給電源電圧がばらついても確実に起動させることができ、かつパワーコントロールの最小値をより小さくすることができ、幅広いパワーコントロールができる。
【0012】
第2の発明は、特に、第1の発明の左右ラックの先端はシーソー型スイッチの動作先端部にのみ接触しやすい凸形状とすることにより、ラックの動作を正確にシーソー型スイッチの押し込みたい部分に接触させることができるので、シーソー型スイッチのON−OFF動作を安定させることができる。
【0013】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の回転カバーとピニオンは一体部品で構成したものであり、一体にすることにより、部品点数を削減できるため、より安価に同構成を実現することができる。
【0014】
第4の発明は、特に、第1または第2の発明のラックピニオン構造部を磨耗の少ない金属部品にて構成することにより、回転によるラックピニオンの磨耗を低減できるため、ラックピニオンによる動作の信頼性をより長く確保することができる。
【0015】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つの発明のシーソー型スイッチON時における回転式可変抵抗器の角度は、電源ON時に過大な突入電流が流れることを防止できる抵抗値C以上になるようにすることにより、誘導負荷である電動送風機に電源ON時に過大な突入電流が発生することを防止することができ、商用電源の供給電源に過大な負荷をかけることを防止できる。
【0016】
第6の発明は、特に、第1〜5のいずれか1つの発明のシーソー型スイッチOFF時における回転式可変抵抗器の角度は、可変抵抗器の最大抵抗値B以下になるようにしている。
【0017】
電動送風機の動特性によっては抵抗値Bで決まる双方向性サイリスタのONタイミングでは十分に回転トルクが維持できない場合がある。そのためシーソー型スイッチOFF時における回転式可変抵抗器の抵抗値をB以下にすることで特性の劣る種類の電動送風機であっても回転トルクを確保することができる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
本発明の第1の実施の形態における電気掃除機について、図1〜5を用いて説明する。
【0020】
図1は、本発明の第1の実施の形態における電気掃除機の全体斜視図、図2は、本発明の第1の実施の形態における電気掃除機のパワーコントロール部の外観図、図3は、本発明の第1の実施の形態における電気掃除機のパワーコントロール部の構造図を示すものである。
【0021】
図3において、コントロールつまみ5の下には回転式可変抵抗器7(VR7)が配されている。回転式可変抵抗器7の軸8には、ピニオン9が配されており、コントロールつまみ5と回転式可変抵抗器7との間に位置する。
【0022】
また、ピニオン9および回転式可変抵抗器7の軸8、コントロールつまみ5は連動して回転するようになっている。つまり、コントロールつまみ5を右に30°回転させると、ピニオン9も回転式可変抵抗器7の軸8も右に30°回転する(図4はラックピニオン構造図である)。
【0023】
また、ピニオン9の左右両サイドには右ラック10と左ラック11が配されておりピニオン9および回転式可変抵抗器7の軸8、コントロールつまみ5が左右に回転することにより右ラック10と左ラック11は上下の直線運動をする。
【0024】
ピニオン9と左右ラック10、11を金属で構成すればより磨耗が少なくてすむ。コントロールつまみ5を右に回転させると、回転させた角度に応じて右ラック10は下に動作し、左ラック11は上に動作する。
【0025】
コントロールつまみ5を左に回転させると逆に右ラック10は上に動作し、左ラック11は下に動作する。左右ラックの下には電源をON−OFFするシーソー型スイッチ1が配されている。左右ラック10、11の先端はシーソー型スイッチ1をON−OFFしやすいように凸部形状12を形成している。
【0026】
シーソー型スイッチ1は右側が押された場合ONとなり左側が押された場合OFFとなる。また、シーソー型スイッチ1は一般的なシーソースイッチでありバネ性があり、スイッチ先端位置aからb位置まで押し込んだときに自動的にON−OFFの位置cになる。
【0027】
たとえばシーソー型スイッチ1の右側が位置bまで右ラック10により押し込まれた場合、シーソー型スイッチ1の右側の先端はバネ性により自動的に位置cまで動く。
【0028】
位置bと位置c間はラックはシーソー型スイッチ1に干渉することなく動作することができる。シーソー型スイッチ1のOFF側も同様である。また、シーソー型スイッチ1および回転式可変抵抗器7は制御回路13に接続されている。
【0029】
また、コントロールつまみ5とピニオン9を一体で構成することで部品点数を削減する
ことも可能である。
【0030】
以上のように構成された電気掃除機について、以下その動作、作用を説明する。
【0031】
図5は、本発明の第1の実施の形態における回路図である。図6は、本発明の第1の実施の形態における各状態でのパワーコントロール部の構造図、図7は、本発明の第1の実施の形態における各状態での位相を示した図である。
【0032】
まず、コントロールつまみ5と連動しているピニオン9および回転式可変抵抗器7の軸8が角度0°の位置で回転式可変抵抗器7の抵抗値Bである。そのとき、左ラック11の先端がb位置でシーソー型スイッチ1の左側先端がc位置にありシーソー型スイッチ1はOFFになっている。コントロールつまみ5を右まわし、60°回転させる(角度60°の位置)と左ラック11は上に右ラック10は下に移動する。
【0033】
このとき右ラック10はb位置まで移動し、シーソー型スイッチ1の右側先端はb位置まで押し込まれ、バネ性によりシーソー型スイッチ1の右側先端はc位置まで移動し電源がONされる。また、左ラック11は位置dまで上に移動している。
【0034】
このときの回転式可変抵抗器7の抵抗値Cであり、この抵抗値CとコンデンサC21の定数によってDIAC22がON状態になる電圧に達するまでの時間が決まり、双方向性サイリスタTR23がONする位相が決定され電動送風機4に電流が供給される。
【0035】
このとき、VR7の抵抗値Cは商用電源の供給電源がばらついても電動送風機4が十分起動できるような電流IAが供給できる、例えば500Wを供給できる位相である。この抵抗値Cは誘導負荷である電動送風機4に電源ON時に過大な突入電流が発生しないように配慮してある。
【0036】
さらに、コントロールつまみ5を右に90°回すと回転式可変抵抗器7は角度150°まで回転し、抵抗値はAまで小さくなる。このとき、右ラック10はc位置まで移動する。抵抗値Aは十分小さいため双方向性サイリスタTR23は、ほぼフル導通の状態で電動送風機4は最大の回転数で回転し、たとえば1800Wの電力を消費し吸い込み力が最大となる。
【0037】
その後、コントロールつまみ5を左に90°回す、つまり角度60°の位置にすると回転式可変抵抗器7の抵抗値はCになる。このとき左ラック11は位置dにあるためシーソー型スイッチ1の左側先端は押し込まれることなく電源はOFFにならない。
【0038】
抵抗値はCであるため入力は500Wである。さらに左に回すと回転式可変抵抗器7の軸8の角度は0°近くになる。このときの抵抗値はBである。抵抗値Bは抵抗値Cより大きいため双方向性サイリスタTR23は、角度60°の位置の時よりもON状態になるのが遅くなる。そのため入力は500Wよりも低い電力、たとえば200Wとなる。抵抗値Bになる時は電動送風機4は回転中であり、200Wを供給できる位相であれば十分電動送風機の回転を維持できる電流IBを供給することができる。
【0039】
そのためカーテンなどの吸い付きやすいものをより低い吸い込み力で掃除できるためパワーコントロールの幅を広くすることができ、使い勝手のよいものとなる。
【0040】
さらに、少し左に回すと左ラック11はシーソー型スイッチ1の左側先端を押し込み電源がOFFとなる。
【0041】
また、電動送風機4の種類が異なると電動送風機4の動トルク特性も異なってくるため電源OFF時の可変抵抗器7の抵抗値Bで決まる位相(200Wを供給できる位相)でも回転を維持できない場合もある。
【0042】
よって、動特性の悪い電動送風機であれば、例えば300Wを供給できる位相になるような抵抗値Bよりやや小さい抵抗値B+になるように回転式可変抵抗器7を調整して固定するようにすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上のように、本発明にかかる電気掃除機は、商用電源の供給電源電圧がばらついても確実に起動させることができ、かつパワーコントロールの最小値をより小さくすることができ、幅広いパワーコントロールができるので換気扇、ミキサー、などにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態1における電気掃除機の全体斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における電気掃除機のパワーコントロール部の外観図
【図3】本発明の実施の形態1における電気掃除機のパワーコントロール部の構造図
【図4】本発明の実施の形態1におけるラックピニオン構造図
【図5】本発明の実施の形態1における回路図
【図6】本発明の実施の形態1における各状態でのパワーコントロール部の構造図
【図7】本発明の実施の形態1における各状態での位相を示した図
【図8】従来の電気掃除機の回路図
【符号の説明】
【0045】
TR23 双方向性サイリスタ
DIAC22 ダイアック
C21 コンデンサ
1 シーソー型スイッチ
4 電動送風機
5 コントロールつまみ(回転カバー)
7 回転式可変抵抗器
8 回転式可変抵抗器の軸
9 ピニオン
10 右ラック
11 左ラック
12 凸部形状(凸形状)
13 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
双方向性サイリスタと前記双方向性サイリスタのゲートに配されたダイアックのONタイミングを前記ダイアックに配される抵抗値が回転角度によりAからB(A<B)まで変化する回転式可変抵抗器とコンデンサにて決定し、吸引力を発生する電動送風機をパワーコントロールする位相制御回路において、電源をON−OFFするシーソー型スイッチと前記回転式可変抵抗器の軸を回転させる回転カバーを備え、前記回転カバーと前記回転式可変抵抗器との間に前記回転式可変抵抗器の軸と共に回転するピニオンを設け、前記ピニオンの左右両サイドにラックを設けたラックピニオンを構成し、前記左右ラックの動作にて前記シーソー型スイッチをON−OFFさせ、前記シーソー型スイッチON時における前記双方向性サイリスタのONタイミングを前記シーソー型スイッチOFF時における前記双方向性サイリスタのONタイミングより早くした電気掃除機。
【請求項2】
前記左右ラックの先端は前記シーソー型スイッチの動作先端部にのみ接触しやすい凸形状とした請求項1に記載の電気掃除機。
【請求項3】
前記回転カバーと前記ピニオンは一体部品で構成した請求項1または2に記載の電気掃除機。
【請求項4】
ラックピニオン構造部は磨耗の少ない金属部品にて構成した請求項1または2に記載の電気掃除機。
【請求項5】
シーソー型スイッチON時における前記回転式可変抵抗器の角度は、電源ON時に過大な突入電流が流れることを防止できる抵抗値C以上になるようにした請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気掃除機。
【請求項6】
シーソー型スイッチOFF時における前記回転式可変抵抗器の角度は、前記可変抵抗器の最大抵抗値B以下になるようにした請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−29257(P2010−29257A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191936(P2008−191936)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】