説明

電気自動車用空調装置及び電気自動車用空調装置の制御方法。

【課題】車両の運転停止時における除湿剤の再生と車室内暖房を同時に行い、運転初期の暖房負荷を軽減することができる電気自動車用空調装置及び電気自動車用空調装置の制御方法の提供。
【解決手段】車外Sと車室R内とを繋ぐ第1空気経路21および第2空気経路22と、第1空気経路21内に設けられた第1送風機と、第2空気経路内に設けられた第2送風機と、第1空気経路21を通る空気と第2空気経路22を通る空気との間で熱交換する熱交換器24と、第1空気経路において前記熱交換器よりも車室内側に設けられたヒータ手段と、第1空気経路21に配置され、除湿剤を備えた空気除湿手段と、第1送風機と第2送風機及びヒータ手段を制御する制御手段と、を備え、制御手段は、車両の運転停止時に第1送風機と第2送風機及びヒータ手段を作動させ、第1送風機により車室R内の空気を車外Sに送るとともに、第2送風機により車外Sの空気を車室R内に送る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気自動車用空調装置及び電気自動車用空調装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用空調装置としては、例えば、特許文献1に開示された車両用空調装置が存在する。
この種の車両用空調装置は、車外の空気を車室内へ取り入れるための空気導入経路と、車室内の空気を車外へ排出する再生用径路と、空気導入径路と再生用径路とに跨って回転自在に保持される吸湿ロータと、を備えている。
【0003】
空気導入径路には、第1ファン、吸湿ロータの一部、冷却用熱交換器、暖房用熱交換器が順次配設されている。
第1ファンを作動させることにより、車外の空気が空気取入口から空気導入径路内に導入され、空気導入径路内に導入された空気は空気吹出口を通じて車室内に導入される。
空気導入径路内に導入された空気が吸湿ロータを通過するとき、この空気は除湿される。
【0004】
吸湿ロータは、空気が通過できる多数の小孔を有し、空気の通過部分には、吸湿材(例えばシリカゲル)が塗布されている。吸湿ロータは電動モータによって回転駆動される。
【0005】
再生用径路内には、第2ファン、再生用ヒータとしての加熱用熱交換器、吸湿ロータの他の部分が配設されている。
第2ファンを作動させることにより、車室内の空気が、空気取入口から再生用径路内に導入されて、加熱用熱交換器、吸湿ロータを通過した後、空気排出口から車外へと排出される。
この再生用径路では、第2ファンの作動によって、車室内の空気が再生用径路内に導入されて、加熱用熱交換器でもって加熱される。
この加熱された空気は、吸湿ロータを通過するとき、吸湿ロータが空気導入径路でもって吸湿した水分を奪って、最終的に車外へと排出される。
吸湿ロータのうち、再生用径路でもって水分を奪われることにより再生された部分は、その回転により空気導入径路内に変位されて、再び除湿を行うことになる。
この種の車両用空調装置は、利用可能な廃熱が豊富な内燃機関を走行駆動源とする車両に適している。
【0006】
ところで、利用可能な廃熱が乏しい電気自動車では、吸湿材の再生に必要な熱源の確保が難しいという問題がある。
そこで、例えば、特許文献2に開示された電気自動車用除湿方式では、それぞれ中間部に吸着剤と、吸着剤の中に埋設して設けられて燃焼式ヒータの排気ガスが切り換え弁を介して流通される細管とが配置された2本のダクトと、ダクトの両側に配置されてダクトを車室内または車室外へ流通するように切り換える切り換え弁を持ち、3つの切り換え弁を定期的に切り換えることにより連続的に除湿可能となる構成を有している。
また、特許文献2における従来技術の欄には、車室内の湿気を除去する吸着剤が吸着した水分をパージするため、電気自動車に搭載しているバッテリを充電する時に車両外部の電気エネルギーを使用してパージする点が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−240575号公報
【特許文献2】特開平8−142660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、例えば、寒冷時のように車外の温度が低い場合、車両の運転初期に車室内温度を短時間で上昇させる暖房が必要となることが多いが、これは運転初期における暖房負荷を過大とすることが避けられない。
特に、バッテリの電力を暖房に用いる電気自動車の場合、運転初期の暖房負荷によりバッテリの電力消費が増大すると相対的に電気自動車の走行可能距離が低下する。
そこで、電気エネルギー以外のエネルギーを使用するヒータを暖房用として設けることも可能であるが、除湿剤の再生のためのヒータの他に暖房用のヒータを別に設けることは、空調装置の製作コスト増大を招く等の問題がある。
特許文献1、特許文献2に開示されている従来技術には、走行時における吸湿剤の連続再生を意図する技術に過ぎず、電気自動車における運転初期の暖房負荷の軽減について開示はない。
また、特許文献2における従来技術の欄には、吸着剤が吸着した水分をパージするため、電気自動車に搭載しているバッテリを充電する時に車両外部の電気エネルギーを使用してパージする点が開示されている点が記載されているに止まっている。
【0009】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、車両の運転停止時における除湿剤再生と車室内暖房を同時に行い、運転初期の暖房負荷を軽減することができる電気自動車用空調装置及び電気自動車用空調装置の制御方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は、車外と車室内とを繋ぐ第1空気経路と、車外と車室内とを繋ぐ第2空気経路と、前記第1空気経路内に設けられた第1送風機と、前記第2空気経路内に設けられた第2送風機と、前記第1空気経路を通る空気と前記第2空気経路を通る空気との間で熱交換する熱交換器と、前記第1空気経路において前記熱交換器よりも車室内側に設けられたヒータ手段と、前記第1空気経路において前記ヒータ手段と前記熱交換器との間に配置され、除湿剤を備えた空気除湿手段と、前記第1送風機と第2送風機及び前記ヒータ手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、車両の運転停止時に前記第1送風機と第2送風機及び前記ヒータ手段を作動させ、第1送風機により車室内の空気を車外に送るとともに、第2送風機により車外の空気を車室内に送ることを特徴とする。
【0011】
上記の電気自動車用空調装置によれば、車両の運転停止時に車室内の空気が第1送風機の作動により第1空気経路を通じて車外に送られ、第2送風機により車外の空気は第2空気経路を通じて車室内に送られる。
第1空気経路を通る空気はヒータ手段により加熱され、加熱された第1空気経路の空気は空気除湿手段を通過する。
除湿剤は空気除湿手段を通過する空気の熱を受けて水分を放出し再生される。
再生に使用された空気の温度が車外の空気と温度よりも高いと、熱交換器において第2空気経路の空気は第1空気経路の空気の熱を受けて加熱される。
熱交換により加熱された第2空気経路の空気は車室内へ送られ、車室内暖房が行なわれる。
その結果、車両の運転停止時に除湿剤再生と車室内暖房が同時に行なわれる。
車両の運転停止時における車室内暖房の熱源は、除湿剤再生のために使用された空気の持つ熱であり、車両の運転停止時における車室内暖房は廃熱利用であるから、車室内暖房の初期の暖房負荷を低減することができる。
例えば、車両運転の直前に除湿剤再生と車室内暖房を同時に行えば、車室内の温度は上昇しているので、車両走行時には車室内の温度を維持する暖房負荷だけで済む。
【0012】
また、本発明では、上記の電気自動車用空調装置において、前記制御手段は、車両に搭載されたバッテリが外部電源に接続されているとき、前記第1送風機と前記第2送風機及び前記ヒータ手段を作動させ、第1送風機により車室内の空気を車外へ送るとともに、第2送風機により車外の空気を車室内に送ってもよい。
【0013】
この場合、車両に搭載されているバッテリと外部電源が接続されているので、電力消費するヒータ手段であっても、バッテリの充電電力を消費することなく、車室内暖房に必要な熱源を提供することができる。
【0014】
また、本発明では、上記の電気自動車用空調装置において、車両運転開始時間を入力する時間入力手段を備え、前記制御手段は、前記車両運転開始時間に基づいて前記第1送風機と前記第2送風機及び前記ヒータ手段を制御してもよい。
【0015】
この場合、時間入力手段に車両運転開始時間を入力することにより、第1送風機と第2送風機及びヒータ手段は車両運転開始時間に基づいて制御される。
その結果、車両運転開始時間に基づいて除湿剤再生と車室内暖房を行うことができる。
【0016】
また、本発明では、上記の電気自動車用空調装置において、前記制御手段は、前記バッテリの充電後であって車両運転開始時間までに前記第1送風機と前記第2送風機及び前記ヒータ手段を作動させ、前記第1送風機により車室内の空気を車外へ送るとともに、前記第2送風機により車外の空気を車室内に送るとともに、第2送風機により車外の空気を車室内に送ってもよい。
【0017】
この場合、車両運転開始時間を入力することにより、車両運転時間直前までに除湿剤再生と車室内暖房が行われ、車両の運転開始時には除湿剤が再生されているほか、車室内が暖められているので、従来と比較して運転開始後の暖房負荷を軽減することができる。
【0018】
また、本発明では、上記の電気自動車用空調装置において、前記制御手段は、前記車両運転開始時間もしくは前記車両運転開始時間の一定時間前に、前記第1送風機と前記第2送風機及び前記ヒータ手段の作動を停止させてもよい。
【0019】
この場合、第1送風機と第2送風機及びヒータ手段は、車両運転開始時間もしくは車両運転開始時間の一定時間前に停止される。
その結果、運転開始時間もしくは運転開始時間の一定時間前に、除湿剤再生と車室内暖房が完了しており、車室内暖房により暖められた車室内の温度が低下する前に運転を開始することができる。
【0020】
また、本発明は、上記の電気自動車用空調装置において、前記空気除湿手段より車外側における前記第1空気経路の空気の湿度を検出する湿度センサを備え、前記湿度センサが所定の湿度以下を検出するとき、前記制御手段は、前記送風機及び前記ヒータ手段の作動を停止してもよい。
【0021】
この場合、空気除湿手段の再生に使用した第1空気経路の空気の湿度が湿度センサにより検出される。
除湿剤再生が終了すると、空気除湿手段より車外側における第1空気経路の空気の湿度が所定の湿度以下になり、湿度センサがこの湿度を検出すると、制御手段は送風機及びヒータ手段の作動を停止する。
除湿剤再生の終了とともに送風機およびヒータ手段を停止するから、無駄なエネルギーの消費を防止することができる。
【0022】
また、本発明は、上記の電気自動車用空調装置において、前記空気除湿手段より車室内側で前記ヒータ手段より車外側における前記第1空気経路における加熱された空気の温度を測定する第1温度センサと、前記空気除湿手段より車外側における前記第1空気経路における空気の温度を測定する第2温度センサとを備え、前記第1温度センサの検出温度と前記第2温度センサの検出温度との差が所定値以下になるとき、前記制御手段は、前記送風機及び前記ヒータ手段の作動を停止してもよい。
【0023】
この場合、除湿剤再生時において、第1温度センサは、空気除湿手段より車室内側で前記ヒータ手段より車外側における第1空気経路における加熱された空気の温度を測定し、第2温度センサは空気除湿手段より車外側における第1空気経路における空気の温度を測定する。
除湿剤の再生開始時には、空気除湿手段より車室内側で前記ヒータ手段より車外側における第1空気経路の空気の温度は、空気除湿手段より車外側における第1空気経路の空気の温度と比較して高いが、除湿剤の再生が進行するにつれて両空気の温度差は小さくなる。
除湿剤再生が終了すると、第1温度センサの検出温度と第2温度センサの検出温度との差が所定値以下になり、このとき、制御手段は、送風機及びヒータ手段の作動を停止する。
除湿剤再生の終了とともに送風機およびヒータ手段を停止するから、無駄なエネルギーの消費を防止することができる。
また、温度センサを用いるだけで湿度センサを用いる必要がない。
【0024】
また、本発明は、車外と車室内とを繋ぐ第1空気経路と、車外と車室内とを繋ぐ第2空気経路と、前記第1空気経路内に設けられた第1送風機と、前記第2空気経路内に設けられた第2送風機と、前記第1空気経路を通る空気と前記第2空気経路を通る空気との間で熱交換する熱交換器と、前記第1空気経路において前記熱交換器よりも車室内側に設けられたヒータ手段と、前記第1空気経路において前記ヒータ手段と前記熱交換器との間に配置され、除湿剤を備えた空気除湿手段と、を備える電気自動車用空調装置の制御方法において、車両の運転停止時に前記第1送風機と第2送風機及び前記ヒータ手段を作動させ、第1送風機により車室内の空気を車外に送るとともに、第2送風機により車外の空気を車室内に送る工程を有することを特徴とする。
【0025】
上記の電気自動車用空調装置の制御方法によれば、車両の運転停止時における車室内暖房の熱源は、除湿剤再生のために使用された空気の持つ熱であり、車両の運転停止時における車室内暖房は廃熱利用であるから、車室内暖房の初期の暖房負荷を低減することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、車両の運転停止時における除湿剤再生と車室内暖房を同時に行い、運転初期の暖房負荷を軽減することができる電気自動車用空調装置及び電気自動車用空調装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施形態に係る電気自動車の概略構成を示す平面図である。
【図2】第1の実施形態に係る電気自動車用空調装置を示す系統図である。
【図3】電気自動車用空調装置の作用説明図であり、(a)は循環モードの状態を示す図であり、(b)は除湿モードの状態を示す図であり、(c)は換気モードの状態を示す図であり、(d)は再生・暖房モードの状態を示す図である。
【図4】充電および再生・暖房モードに必要な時間が不足しない場合のバッテリ充電と再生・暖房モードとの関係を示す図である。
【図5】バッテリ充電および再生・暖房モードのフロー図である。
【図6】充電時間が不足する場合のバッテリ充電と再生・暖房モードとの関係を示す図である。
【図7】第2の実施形態に係る電気自動車用空調装置の要部を示す系統図である。
【図8】第2の実施形態に係る再生に使用される空気の温度の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る電気自動車用空調装置について図面を参照して説明する。
図1に示すように、電気自動車10の車両前部には、走行駆動用の一対のモータ11と、モータ11への供給する電力を電力変換するインバータ12と、インバータ12等車両の各部を制御するECU(Engine Control Unit)13と、電気自動車用空調装置(以下、単に「空調装置」と表記する)20が設置されている。
モータ11、ECU13及び空調装置20はインバータ12と接続され、インバータ12を介して電力の供給を受ける。
車両後部にはバッテリ14が搭載されており、バッテリ14とインバータ12を繋ぐ送電線15が設けられている。
送電線15の途中から分岐された分岐線16の端部には、外部電源18との接続を行う充電器17が設けられている。
【0029】
空調装置20について図2に基づき説明すると、空調装置20は車外Sと車室R内を繋ぐ第1空気経路21および第2空気経路22を備えている。
図2に示すように、第1空気経路21は、車外Sと熱交換器24との間を構成する外端経路部211と、熱交換器24と除湿ユニット25との間を構成する第1中間経路部212と、除湿ユニット25とヒートポンプ23との間を構成する第2中間経路部213と、ヒートポンプ23と車室R内との間を構成する内端経路部214を有する。
第2空気経路22は、車外Sと熱交換器24との間を構成する外側経路部221と、熱交換器24と車室R内との間を構成する内側経路部222を有する。
【0030】
外端経路部211と第1中間経路部212との間には、熱交換器24が設けられており、熱交換器24は第1空気経路21を通る空気と第2空気経路22を通る空気との熱交換を行う。
この実施形態の熱交換器24は、熱の交換のみを行い、湿度の交換を行わない顕熱交換器である。
第1中間経路部212と第2中間経路部213との間には、第1空気経路21の空気の除湿を行う空気除湿手段としての除湿ユニット25が設けられている。
除湿ユニット25は、空気を通す容器(図示せず)内に除湿剤(シリカゲル又はゼオライト)が封入されており、除湿剤は容器内を通過する空気の水分を吸収する。
除湿剤の搭載量は電気自動車10の走行可能時間に対応して車室R内を除湿可能とする相当量に設定されている。
第2中間経路部213と内端経路部214との間にはヒートポンプ23が設置されている。
ヒートポンプ23は電力駆動式のヒートポンプであって、ECU13により制御され、第1空気経路21内を通る空気を加熱したり冷却したりする熱交換部(図示せず)を備えている。
ヒートポンプ23の熱交換部が第1空気経路21内の空気を加熱する状態では、ヒートポンプ23はヒータ手段に相当する。
ヒートポンプ23内において空気が通る通路は2分割されている。
ECU13は空調装置20における制御手段に相当し、ECU13には時間入力手段としての時間入力装置19が接続されている。
【0031】
第2中間経路部213内には、第1送風機としての第1ファン26が備えられている。
第1ファン26は正逆回転可能なモータを駆動源とし、モータにより回転される回転羽根を備えている。
第1ファン26のモータはECU13により制御され、モータの正回転により車外Sの空気は第1空気経路21へ導入され、導入された空気は車室R内へ導入される。
また、モータの逆回転により車室R内の空気を第1空気経路21へ導入し、導入された空気は車外Sへ導出される。
この実施形態では、第1ファン26のモータが車両運転時において作動する場合では、モータの回転は正回転に限定され、このとき、第1空気経路21では熱交換器24側からヒートポンプ23へ向かう空気の流れが生じる。
第1ファン26のモータが車両の運転停止時に作動する場合では、モータの回転は逆回転に限定される。
第1ファン26が逆回転する場合、第1空気経路21ではヒートポンプ23から熱交換器24へ向かう空気の流れが生じる。
【0032】
外端経路部211の車外S側の端部は、車外Sを臨む空気導入口21Aとなっている。
空気導入口21Aは、車両運転時において車外Sの空気を第1空気経路21内へ取り込むための開口である。
内端経路部214の車室R内側の端部は複数の吹出口を有する。
内端経路部214におけるヒートポンプ23の車室R側は複数の経路214A、214Bに分岐されている。
内端経路部214における一方の経路214Aの端部はデフロスト吹出口21Bを備えており、内端経路部214における他方の経路214Bの端部はフェイス吹出口21C及びフット吹出口21Dを備えている。
デフロスト吹出口21Bは、車両が備えるフロントウインドウやサイドウインドウ等の防曇のための乾いた空気を吹き出す吹出口である。
デフロスト吹出口21Bから乾いた空気を吹き出すことによりフロントウインドウやサイドウインドウ等の防曇が図られる。
他方の経路はフェイス吹出口21Cとフット吹出口21Dに接続されるように分岐されている。
フェイス吹出口21Cは、車室R内における運転席及び助手席の上方付近に空気を吹き出すための吹出口であり、フット吹出口21Dは運転席及び助手席の下方付近に空気を吹き出すための吹出口である。
【0033】
第2空気経路22における内側経路部222の車室R内側の端部は空気吸込口22Aであり、第2空気経路22における外側経路部221の車外S側の端部は空気導出口22Bである。
第2空気経路22は、車両運転時の空調装置20作動の際に車室R内の空気を車外Sへ導出する通路である。
第2空気経路22には第1空気経路21の空気との熱交換を行う熱交換器24が設けられている。
第2空気経路22における内側経路部222には、第2送風機としての第2ファン28が備えられており、第2ファン28は第1ファン26と同じようにモータおよび送風羽根を備える。
第2ファン28はECU13により制御され、第2ファン28のモータは正回転および逆回転の作動を可能とする。
【0034】
空調装置20は、第1空気経路21のヒートポンプ23と除湿ユニット25の間と車室R内とを接続する第3空気経路27を備えている。
第3空気経路27の車室R内側の端部は空気吸入口27Aであり、第3空気経路27の接続側の端部は第1空気経路21における第2中間経路部213の途中に接続されている。
第3空気経路27は、車室R内の空気をヒートポンプ23により加熱し、加熱された空気を車室R内へ戻すために設けられている。
第3空気経路27内には、第3送風機としての第3ファン34が備えられており、第3ファン34は第1ファン26と同じようにモータおよび送風羽根を備える。
第3ファン34はECU13により制御されるが、第3ファン34のモータは車両の運転時における正回転の作動に限定される。
【0035】
第1空気経路21と第3空気経路27との接続部には第1ダンパ29が設けられている。
第1ダンパ29は、第1空気経路21における第2中間経路部213および第3空気経路27における接続側の端部のいずれか一方を開放し、他方を遮断する。
また、第1ダンパ29は中間位置に固定することも可能である。
図2に示すように、実線で描かれた第1ダンパ29は、第3空気経路27における接続側の端部を遮断する状態である。
図2において、鎖線で描かれた第1ダンパ29のうち、第2中間経路部213を横断するように描かれた第1ダンパ29は、第2中間経路部213を遮断する状態である。
また、図2において、第2中間経路部213を二分するように鎖線で描かれた第1ダンパ29は、第1ダンパ29が中間位置の状態にあることを示す。
【0036】
第1ダンパ29が中間位置に固定される場合、第1空気経路21における第2中間経路部213は、除湿ユニット25とヒートポンプ23を連通する経路と、第3空気経路27と連通されてヒートポンプ23と連通する経路とに分離される。
第1ダンパ29の駆動源はECU13と接続されており、第1ダンパ29はECU13により開閉制御される。
第1ダンパ29が第3空気経路27を遮断する状態では、第1空気経路21において除湿ユニット25とヒートポンプ23との間が開通する状態となる。
逆に、第1ダンパ29が第1空気経路21を遮断する状態では、第3空気経路27とヒートポンプ23との間が開通する状態となる。
第1ダンパ29が中間位置に位置すると、第2中間経路部213は、除湿ユニット25とヒートポンプ23を連通する経路と、第3空気経路27と連通されてヒートポンプ23と連通する経路とに分離される。
この状態では、第1空気経路21における除湿ユニット25とヒートポンプ23を連通する第2中間経路部213の一方の経路と、ヒートポンプ23の一方の通路と、デフロスト吹出口21Bを端部に有する内端経路部214の一方の経路214Aとが開通する。
また、第3空気経路27とヒートポンプ23を連通する第2中間経路部213の他方の経路と、ヒートポンプ23の他方の通路と、フェイス吹出口21Cおよびフット吹出口21Dを端部に有する内端経路部214の一方の経路214Bとが開通する。
【0037】
空調装置20は、第1空気経路21と第2空気経路22を繋ぐ第4空気経路30を備えている。
第4空気経路30の一方の端部は、第2空気経路22における熱交換器24と空気吸込口22Aとの間となる内側経路部222に接続されている。
第4空気経路30の他方の端部は、第1空気経路21における除湿ユニット25と熱交換器24との間となる第1中間経路部212に接続されている。
第4空気経路30は、車両の運転時において車室R内の空気を除湿する場合に使用される経路である。
第2空気経路22と第4空気経路30の接続部には、内側経路部222(第2ファン28と空気吸込口22Aとの間)および第4空気経路30のいずれか一方を遮断し、他方を開通する第2ダンパ31が設けられている。
第2ダンパ31の駆動源はECU13と接続されており、第2ダンパ31はECU13により開閉制御される。
第2ダンパ31が第4空気経路30を遮断する状態では、第2空気経路22における空気吸込口22Aから空気導出口22Bまでの間が開通される状態となる。
逆に、第2ダンパ31が内側経路部222を遮断する状態では、内側経路部222における空気吸込口22Aと第4空気経路30との間が開通される状態となる。
【0038】
第1空気経路21と第4空気経路30の接続部には、第1中間経路部212および第4空気経路30のいずれか一方を遮断し、他方を開通する第3ダンパ33が設けられている。
第3ダンパ33の駆動源はECU13と接続されており、第3ダンパ33はECU13により開閉制御される。
第3ダンパ33が第4空気経路30を遮断する状態では、第1空気経路21において空気導入口21Aから除湿ユニット25までの間が開通される状態となる。
逆に、第3ダンパ33が第1中間経路部212を遮断する状態では、第4空気経路30と第1中間経路部212の一部が連通し、第4空気経路30と除湿ユニット25との間が開通される状態となる。
【0039】
空調装置20は、除湿ユニット25における熱交換器24側の空気の湿度を検出する湿度センサ32を備えている。
湿度センサ32はECU13と接続されており、ECU13は湿度センサ32の検出信号に基づいて空気の湿度を認識する。
【0040】
次に、空調装置20の制御について説明する。
この実施形態の空調装置20は、運転手の操作や予め設定されたプログラムに基づくECU13の制御を受けて作動される。
ECU13には、車両運転時における空調装置20の複数の作動モードと、車両の運転停止時における空調装置20の作動モードが設定されている。
車両運転時における空調装置20の複数の作動モードとしては、車室R内の空気を加熱して循環させる循環モードと、車室R内の空気の除湿を行う除湿モードと、車外Sの空気を導入するとともに車室R内の空気を排出する換気モードがある。
車両の運転停止時における空調装置20の作動モードは、車室R内の空気を加熱して除湿剤の再生を行うとともに、車外Sの空気を暖めて導入する再生・暖房モードである。
【0041】
図3(a)に示す循環モードでは、第1空気経路21における第2中間経路部213が第1ダンパ29により遮断される。
このとき、第3空気経路27の空気吸入口27A、第2中間経路部213の一部、ヒートポンプ23、デフロスト吹出口21B、フェイス吹出口21C、フット吹出口21Dとを通じる循環モード経路が形成される。
循環モードでは、ヒートポンプ23と第3ファン34が運転され、第1ファン26および第2ファン28は運転されず停止状態にある。
この循環モードでは、第3ファン34の運転により車室R内の空気が第3空気経路27の空気吸入口27Aから導入され、第3空気経路27の空気はヒートポンプ23を通過する際に設定室温に対応するように温度調節される。
ヒートポンプ23により温度調節された空気は、第1空気経路21におけるデフロスト吹出口21B、フェイス吹出口21C、フット吹出口21Dから吹き出される。
因みに、循環モードでは第2ダンパ31は第2空気経路22を遮断しており、第2空気経路22の遮断により車室R内の空気の車外Sへ導出が防止される。
循環モードでは、車両運転中に車室R内の空気が一定の温度になるように空調装置20を通じて循環される。
【0042】
図3(b)に示す除湿モードでは、第1ダンパ29を中間位置に固定し、第2中間経路部213を、除湿ユニット25とヒートポンプ23を連通する経路と、第3空気経路27と連通されてヒートポンプ23と連通する経路とに分離するとともに、内側経路部222が第2ダンパ31により遮断され、第3ダンパ33は第1中間経路部212を遮断する。
従って、除湿モードでは、第2空気経路22の空気吸込口22A、内側経路部222の一部、第4空気経路30、第1中間経路部212の一部、除湿ユニット25、第2中間経路部213の一部と、ヒートポンプ23の一方の通路、デフロスト吹出口21Bを持つ内端経路部214の一方の経路214Aと通じる除湿モード経路が形成される。
除湿モードでは、第1ファン26が正回転で運転され、第2ファン28および第3ファン34は運転されず停止状態である。
【0043】
除湿モードでは、第1ファン26の作動により車室R内の空気が第2空気経路22の空気吸込口22Aから導入され、導入された空気は、第2空気経路22、第4空気経路30及び第1空気経路21を通って除湿ユニット25を通過する。
車室R内の空気が除湿ユニット25を通過するとき、空気中の水分は除湿剤に吸収されて除湿される。
除湿後の乾いた空気はヒートポンプ23を通り、ヒートポンプ23を通過する際に設定室温に対応するように温度調節され、デフロスト吹出口21Bから吹き出される。
除湿モードでは、車室R内の空気が第2空気経路22、第4空気経路30を通じて除湿ユニット25を通過することにより除湿される。
【0044】
図3(c)に示す換気モードでは、第1ダンパ29を中間位置に固定し、第2中間経路部213を、除湿ユニット25とヒートポンプ23を連通する経路と、第3空気経路27と連通されてヒートポンプ23と連通する経路とに分離するとともに、第4空気経路30が第2ダンパ31により遮断され、第3ダンパ33が第4空気経路30を遮断する。
これにより、換気モードでは、第2空気経路の空気吸込口22Aから空気導出口22Bまでが通じるとともに、第1空気経路21の空気導入口21Aから除湿ユニット25と、除湿ユニット25からヒートポンプへ至る第2中間経路部213の一方の経路と、デフロスト吹出口21B持つ内端経路部214の一方の経路214Aと通じる換気モード経路が形成される。
この状態で第1ファン26および第2ファン28が正回転で運転され、第3ファン34は運転されず停止状態である。
【0045】
換気モードでは、第1ファン26の作動により第1空気経路21の空気導入口21Aから車外Sの空気が導入され、第1空気経路21に導入された空気は熱交換器24、除湿ユニット25及びヒートポンプ23を通り、デフロスト吹出口21Bから車外Sの空気が吹き出される。
第1空気経路21からの空気の車室R内への吹き出しに伴い、密閉された車室R内の空気が第2空気経路22内に導入され、第2空気経路22に導入された空気は熱交換器24を通じて車外Sへ導出される。
換気モードでは、ヒートポンプ23が設定室温に対応して通過する空気を温度調節してもよい。
車外Sの空気と車室R内の空気の温度差が大きいときには、熱交換器24において両空気の熱交換が行われ、この場合、ヒートポンプ23による温度調節の負荷が熱交換分だけ軽減される。
車外Sの空気は、第1空気経路21の除湿ユニット25を通るから、除湿剤により除湿され、乾いた空気が車室R内へ導入される。
換気モードでは、第1ファン26の作動により車外Sの空気が第1空気経路21を通じて車室R内へ導入されるとともに、第2ファン28の作動により密閉された車室R内の空気が第2空気経路22を通じて車外Sへ導出される。
【0046】
なお、車両運転時における空調装置20の複数の作動モードは、適宜組み合わせてもよく、例えば、循環モードと除湿モードの組み合わせた循環・除湿モードや、循環モードと換気モードの組み合わせた循環・換気モードにより空調装置20を作動させてもよい。
循環・除湿モードの場合、第1ダンパ29を中間位置に固定するとともに、内側経路部222を第2ダンパ31により遮断し、第3ダンパ33により第1中間経路部212を遮断して第1ファン26と第3ファン34を正回転により作動することで実現する。
循環・換気モードの場合、第1ダンパ29を中間位置に固定するとともに、第3空気経路30を第2ダンパ31、第3ダンパ33により遮断し、第1ファン26、第2ファン28と第3ファン34を正回転により作動することで実現する。
【0047】
次に、運転停止時の再生・暖房モードについて説明する。
図3(d)に示すように、再生・暖房モードでは、第1ダンパ29が第3空気経路27を遮断し、第2ダンパ31が第4空気経路30を遮断するほか、第3ダンパ33が第4空気経路30を遮断する。
これにより、再生・暖房モードでは、第2空気経路22の空気吸込口22Aから空気導出口22Bまでが通じるとともに、第1空気経路21の空気導入口21Aからデフロスト吹出口21B、フェイス吹出口21C、フット吹出口21Dと通じる再生・暖房モード経路が形成される。
再生・暖房モードでは、さらに、ヒートポンプ23が空気を加熱するように作動されるほか、第1ファン26が逆回転で作動され、第3ファン34は運転されず停止状態である。
再生・暖房モードでは、第1ファン26および第2ファン28の逆回転の作動により、車室R内の空気がデフロスト吹出口21B、フェイス吹出口21C、フット吹出口21Dから第1空気経路21に導入される。
第1空気経路21に導入された車室R内の空気はヒートポンプ23により加熱され、加熱された第1空気経路21の空気は除湿ユニット25を通る。
【0048】
再生・暖房モード前の運転の停止状態では、除湿ユニット25の除湿剤には、車両の運転時の除湿による多量の水分が吸収されている場合がある。
再生・暖房モードでは、加熱された第1空気経路21の空気からの受熱により除湿剤が吸収した水分が空気中に放出される。
除湿剤に吸収されている水分が空気中に放出されることにより、除湿剤の再生が行われる。
除湿剤の再生のために使用した空気は、除湿剤から放出された水分を含み、水分を含んだ空気は引き続き第1空気経路21を通り熱交換器24に達する。
ところで、車室R内の空気が第1ファン26の逆回転の作動により第1空気経路21を通じて車外Sへ送られ、第2空気経路では第2ファン28の逆回転により車外Sの空気が空気導出口22Bから車室R内に送られる。
第2空気経路22に導入された空気は熱交換器24を通り、熱交換器24において第1空気経路21の空気と熱交換を行う。
熱交換器24に達する第1空気経路21の空気は、除湿剤の再生に熱を消費しているものの、車外Sの空気と比較して依然として高温である。
特に、寒冷時の場合には、車外Sの空気は熱交換器24における第1空気経路21の空気と比較して著しく低温である。
【0049】
熱交換器24において第1空気経路21の空気と第2空気経路22の空気が熱交換されることにより、第2空気経路22の空気が加熱され、加熱された空気は第2空気経路22の空気吸込口22Aから車室R内へ吹き出される。
一方、熱交換を終えた第1空気経路21の空気は空気導入口21Aから車外Sへ送られる。
第2空気経路22に導入された車外Sの空気が第1空気経路21の空気との熱交換により加熱され、加熱された空気が第2空気経路22を通じて車室R内へ送られることにより、車両の運転停止時に車室R内の暖房が行われる。
つまり、車室内暖房の熱源は、除湿剤再生のために使用した空気が持つ熱であり、車両の運転停止時に車室R内の暖房は廃熱利用による暖房である。
なお、熱交換器24における第1空気経路21の空気と第2空気経路22の空気との熱交換は、湿度の交換のない熱だけの交換による顕熱交換である。
【0050】
再生・暖房モードは、車両の駐車等による運転停止時に除湿剤の再生と、車室R内の暖房を行うことから、バッテリ14の充電後の予め設定された時間に行われる。
図4に示すように、再生・暖房モードは、車両の運転停止直後のバッテリ14の充電後であって予定される運転開始予定時刻の直前に完了することが好ましい。
図5は、バッテリ充電、除湿剤再生、車室内暖房の手順を示すフロー図であり、車両停止後に運転者等が時刻設定を行うことにより一連の処理が行われる。
一連の処理はプログラムの実行によりECU13が充電器17や空調装置20を制御する。
【0051】
図5のフロー図について説明する。
図5では、バッテリ充電および再生・暖房モードに係る工程(STEP)が示されている。
車両の運転停止後に次回の車両運転開始時間と見込まれる運転開始予定時刻を設定する(図5のSTEP1を参照)。
運転開始予定時刻は、運転者が時間入力装置19に時間入力することにより設定される。
このとき、運転開始予定時刻までの時間が、バッテリ14の充電時間と再生・暖房モードに必要な時間に満たない場合、ECU13は、バッテリ充電を開始し、バッテリ充電中に空調装置20を再生・暖房モードで作動開始する制御を行うように設定する。
バッテリ14の充電に必要な時間は、バッテリ14の残容量や劣化状態により異なるが、ECU13はバッテリ14の条件に応じて充電時間を設定する。
ECU13は、次回の運転開始予定時刻に基づいて充電終了予定時刻や再生・暖房モード開始予定時刻を設定する。
【0052】
運転開始予定時刻を設定した後、充電器17を外部電源18と接続する(図5のSTEP2を参照)。
ECU13は、バッテリ充電時間の不足がない場合には、通常のバッテリ充電を行う(STEP3、4を参照)。
バッテリ14の充電が完了すると、再生・暖房モード開始予定時刻まで待機する(図5のSTEP5、6を参照)。
なお、ECU13が運転開始予定時刻に基づき除湿ユニット25の再生に必要な時間を予め計算することにより、再生・暖房モード開始予定時刻は設定される。
再生・暖房モード開始予定時刻になると、ECU13は空調装置20を制御し、第1〜第3ダンパ29、31、33、第1ファン26およびヒートポンプ23を再生・暖房モードに対応させて作動させる(図5のSTEP7を参照)。
【0053】
再生・暖房モードが開始されると、除湿剤の再生と車室R内の暖房が同時に行われる。
再生・暖房モードでは第1ファン26およびヒートポンプ23の作動のために電力を消費するが、第1ファン26およびヒートポンプ23は、バッテリ14の充電電力を消費することなく、外部電源18から供給される電力により作動される。
再生・暖房モードでは、ECU13は湿度センサ32の湿度検出値を監視し、湿度検出値が所定湿度以下となると、除湿剤再生が終了したと判断し、第1ファン26およびヒートポンプ23の作動を停止する(図5のSTEP8、9を参照)。
第1ファン26およびヒートポンプ23の作動停止により再生・暖房モードは終了する(図5のSTEP10を参照)。
再生・暖房モードの終了後は、充電器17の外部電源18との接続を解除する(図5のSTEP11を参照)。
車両運転開始時間直前であるこの時点では、除湿剤再生と車室内暖房が図られているほか、バッテリ14の充電も完了した状態にあり、車両は直ちに運転できる状態であるほか、車室内が快適な室温に設定されている状態にある。
【0054】
ところで、運転開始予定時刻までの時間がバッテリ14の充電時間と再生・暖房モードに必要な時間に満たず、バッテリ充電時間が不足する場合がある。
図6に示すように、運転開始予定時刻までに、バッテリ14の充電に必要な時間が不足している場合、バッテリ充電を開始するものの、バッテリの充電後でなくバッテリ充電中に再生・暖房モードを開始する(図5のSTEP12、13を参照)
充電開始後、再生・暖房モード開始予定時刻に達すると、空調装置20が再生・暖房モードにより作動開始する。
バッテリ充電中に空調装置20を再生・暖房モードにより作動開始することから、ECU13は、外部電源から供給される電力のバッテリ充電のための電力比率を低下させる。
つまり、供給される電力を所定の比率で二分し、二分された一方の電力をバッテリ充電のため電力とし、残りの電力を空調装置20の作動のため電力とする。
運転開始予定時刻直前の充電および再生・暖房モード予定終了時刻に達したとき、ECU13はバッテリ充電と再生・暖房モードを終了するように機器に対して指示する(図5のSTEP14を参照)。
バッテリ充電と再生・暖房モードを終了しても、バッテリは満充電ではない充電状態であるが、除湿剤再生と車室内暖房が図られている。
【0055】
この実施形態では以下の効果を奏する。
(1)車両の運転停止時に除湿剤再生と車室内暖房が同時に行うことができる。車両の運転停止時における車室内暖房の熱源は除湿剤再生のために使用した空気が持つ熱であるから、車室内暖房の初期の暖房負荷を低減することができる。除湿剤再生のために発生させた熱を車室内暖房に利用することができ、熱の有効利用を図ることができる。例えば、車両運転の直前に再生・暖房モードで空調装置20を作動させて、除湿剤再生と車室内暖房を行えば、車室R内の温度は上昇しているので、再生・暖房モード終了直後に運転する場合、車両走行時には車室R内の温度を維持する暖房負荷だけで済む。
(2)車両に搭載されているバッテリ14が充電器17を介して外部電源18に接続されているので、ヒートポンプ23が電力駆動式で電力を消費するヒートポンプであっても、バッテリ14の充電電力を消費することなく、外部電源18から供給される電力により車室内暖房に必要な熱源を提供することができる。
【0056】
(3)車両運転開始時間直前である運転開始予定時刻までには、空調装置20による除湿剤再生と車室内暖房が行われているから、車両の運転開始時には除湿剤が再生されているほか、車室R内は暖められている。これにより、従来と比較して運転開始後の暖房負荷を軽減することができる。
(4)除湿剤再生に使用した第1空気経路21の空気の湿度が湿度センサ32により検出され、除湿剤再生が終了すると、除湿ユニット25通過後の第1空気経路21の空気の湿度が所定湿度以下になり、湿度センサ32がこの湿度を検出すると、ECU13は第1ファン26、第2ファン28及びヒートポンプ23の作動を停止する。その結果、除湿剤再生の終了とともに第1ファン26、第2ファン28およびヒートポンプ23を停止するから、無駄なエネルギーの消費を防止することができる。
【0057】
(5)車両の運転停止時における再生・暖房モードでは、第1ファン26および第2ファン28を逆回転させることにより、第1空気経路21に車室R内の空気を導入し、第1空気経路21に導入された空気を加熱して除湿ユニット25へ供給するから、除湿剤再生の専用の空気経路やヒータ手段を別に設ける必要がない。また、車両の運転停止時に除湿剤再生を行うから、車両の運転時に除湿剤を再生する必要がない。
(6)バッテリ14の充電と除湿ユニット25の再生を時間差をおいて行うことにより、電力消費の集中を回避することができる。その結果、電源回路の負荷を軽減され、電源回路の小型化を図ることができる。
(7)車両停止時に外部電源の電力を使用してヒータ手段を加熱して除湿剤の再生を行うようにしたので、ロータ式除湿剤を用いて走行中に除湿剤の再生を行う必要が無く、簡単な構造の除湿剤を用いることができる。
【0058】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る空調装置について説明する。
図7に示すように、第2の実施形態に係る空調装置40は、第1の実施形態で用いた湿度センサ32に代えて第1温度センサ35および第2温度センサ36を用いて、除湿剤の再生完了を判断するようにしている。
第1温度センサ35および第2温度センサ36を除く空調装置40の構成は、第1の実施形態の空調装置20と同一であり、同一の要素については第1の実施形態の説明を援用して共通の符号を用いる。
【0059】
第1空気経路21内の除湿ユニット25における第1ファン26寄りに第1温度センサ35が設けられている。
第1温度センサ35は、除湿ユニット25における第1ファン26寄りの空気の温度を検出する。
除湿ユニット25における第3ダンパ33寄りに第2温度センサ36が設けられている。
第2温度センサ36は、除湿ユニット25における第3ダンパ33寄りの空気の温度を検出する。
第1温度センサ35及び第2温度センサ36はECU13と接続されており、ECU13は、再生・暖気モードの際に両センサ35、36の検出値に基づいて除湿剤の再生完了を判断する。
【0060】
図8は、空気経路における両温度センサ35、36の位置と除湿剤再生に使用される空気の温度変化との関係を示すグラフ図である。
図8では、再生・暖房モードにおいて、除湿ユニット25の上流寄りとなる第1温度センサ35の位置を測定点D1とし、下流寄りとなる第2温度センサ36の測定点D2としている。
除湿剤に水分が吸収されていない場合には、測定点D1、D2の間の距離に比例して、測定点D2の温度T2が測定点D1の温度T1よりも僅かに低く、測定点D1、D2の温度差は大きくない。
除湿剤に十分な水分が吸着されている場合、除湿剤の再生時の反応が吸熱反応であることから、下流側である測定点D2の温度T2が測定点D1の温度T1に比較して著しく低くなる。
つまり、除湿ユニット25の通過前の空気の温度T1は、除湿ユニット25の通過後の空気の温度T2と比較して高い。
除湿剤の再生が進むにつれて、測定点D2の温度T2が上昇して、測定点D1、D2の温度差(T1−T2)が小さくなる。
第1温度センサ35の検出温度と第2温度センサ36の検出温度との差が所定値以下になると、ECU13は除湿剤再生が完了されたと判断して、第1ファン26、第2ファン28およびヒートポンプ23を停止する。
【0061】
第2の実施形態によれば、除湿剤再生の終了とともに第1ファン26、第2ファン28およびヒートポンプ23を停止するから、無駄なエネルギーの消費を防止することができる。
また、第1温度センサ35、第2温度センサ36を用いるだけで湿度センサを用いる必要がなく、第1空気経路21内が結露する環境下であっても、ECU13は正確に除湿剤の再生完了を判断することができる。
【0062】
なお、第1、第2の実施形態に係る空調装置は、本発明の一実施形態を示すものであり、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、下記のように発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能である。
○ 第1、第2の実施形態では、第1空気経路を通る空気を加熱するために、ヒータ手段としてヒートポンプを用いたが、ヒータ手段はヒートポンプに限定されない。例えば、電気式ヒータや燃焼式ヒータ、あるいは蓄熱器を用いてもよい。
○ 第1、第2の実施形態では、再生・暖房モードに必要な電力は充電器と接続される外部電源としたが、再生・暖房モードに必要な電力を供給する外部電源は、例えば、太陽電池であってもよく、外部電源の種類・形式は問われない。また、外部電源との接続方法としては、非接触充電のような形式であってもよい。
○ 第1、第2の実施形態では、湿度センサ又は2個の温度センサを用いて、空気除湿手段の通過後の空気湿度あるいは空気温度を測定することにより、ECUが除湿剤の再生完了を判断するようにしたが、再生・暖房モードの時間を充分に設定することで除湿剤再生を行うようにしてもよい。この場合、除湿剤の状態に関わらず常に同じ時間の再生・暖房モードとなり、湿度センサや温度センサが不要になる。
○ 第1、第2の実施形態では、車両の運転停止時に除湿剤の再生と車室内の暖房を同時に行うようにしたが、夏季の時期等、除湿剤の再生時に車室内の暖房を行う必要がない場合、第2ダンパにより第2空気経路を遮断するようにして車室内の暖房を行わないようにすることも可能である。あるいは、除湿剤再生時に暖房を行うか行わないかを切り替える切替スイッチを設けてもよい。
○ 時間入力手段は車両運転開始時間を入力するタイプに限定されず、例えば、タイマーを用いて、何時間後に車両運転開始するというように入力するタイプでもよい。その場合も同様に、タイマーでセットした車両運転開始時の直前に再生・暖房モードを終了するようにすることで、効率よく車室内の暖房を行うことができる。また、車両運転開始時の一定時間前に再生・暖房モードを終了するようにしてもよく、この場合、車室内の温度が著しく低下しない程度の一定時間が好ましい。
○ 湿度センサは除湿ユニット内に設けることに限定されず、除湿ユニットよりも車外側における第1空気経路に設けてもよい。また、温度センサも同様に、第1温度センサを除湿ユニットよりも車室内側のおける第1空気経路に設けたり、第2温度センサを除湿ユニットよりも車外側における第1空気経路に設けたりしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 電気自動車
13 ECU
14 バッテリ
18 外部電源
19 時間入力装置
20 電気自動車用空調装置
21 第1空気経路
22 第2空気経路
23 ヒートポンプ(ヒータ手段としての)
24 熱交換器
25 除湿ユニット(空気除湿手段)
26 第1ファン(第1送風機としての)
27 第3空気経路
28 第2ファン(第2送風機としての)
29 第1ダンパ
30 第4空気通路
31 第2ダンパ
32 湿度センサ
33 第3ダンパ
34 第3ファン
35 第1温度センサ
36 第2温度センサ
R 車室
S 車外

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車外と車室内とを繋ぐ第1空気経路と、
車外と車室内とを繋ぐ第2空気経路と、
前記第1空気経路内に設けられた第1送風機と、
前記第2空気経路内に設けられた第2送風機と、
前記第1空気経路を通る空気と前記第2空気経路を通る空気との間で熱交換する熱交換器と、
前記第1空気経路において前記熱交換器よりも車室内側に設けられたヒータ手段と、
前記第1空気経路において前記ヒータ手段と前記熱交換器との間に配置され、除湿剤を備えた空気除湿手段と、
前記第1送風機と第2送風機及び前記ヒータ手段を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、車両の運転停止時に前記第1送風機と第2送風機及び前記ヒータ手段を作動させ、
第1送風機により車室内の空気を車外に送るとともに、第2送風機により車外の空気を車室内に送ることを特徴とする電気自動車用空調装置。
【請求項2】
前記制御手段は、車両に搭載されたバッテリが外部電源に接続されているとき、前記第1送風機と前記第2送風機及び前記ヒータ手段を作動させ、第1送風機により車室内の空気を車外へ送るとともに、第2送風機により車外の空気を車室内に送ることを特徴とする請求項1記載の電気自動車用空調装置。
【請求項3】
車両運転開始時間を入力する時間入力手段を備え、
前記制御手段は、前記車両運転開始時間に基づいて前記第1送風機と前記第2送風機及び前記ヒータ手段を制御することを特徴とする請求項2記載の電気自動車用空調装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記バッテリの充電後であって車両運転開始時間までに前記第1送風機と前記第2送風機及び前記ヒータ手段を作動させ、前記第1送風機により車室内の空気を車外へ送るとともに、前記第2送風機により車外の空気を車室内に送るとともに、第2送風機により車外の空気を車室内に送ることを特徴とする請求項3記載の電気自動車用空調装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記車両運転開始時間もしくは前記車両運転開始時間の一定時間前に、前記第1送風機と前記第2送風機及び前記ヒータ手段の作動を停止させることを特徴とする請求項3記載の電気自動車用空調装置。
【請求項6】
前記空気除湿手段より車外側における前記第1空気経路の空気の湿度を検出する湿度センサを備え、
前記湿度センサが所定の湿度以下を検出するとき、
前記制御手段は、前記送風機及び前記ヒータ手段の作動を停止することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の電気自動車用空調装置。
【請求項7】
前記空気除湿手段より車室内側で前記ヒータ手段より車外側における前記第1空気経路における加熱された空気の温度を測定する第1温度センサと、
前記空気除湿手段より車外側における前記第1空気経路における空気の温度を測定する第2温度センサとを備え、
前記第1温度センサの検出温度と前記第2温度センサの検出温度との差が所定値以下になるとき、
前記制御手段は、前記送風機及び前記ヒータ手段の作動を停止することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の電気自動車用空調装置。
【請求項8】
車外と車室内とを繋ぐ第1空気経路と、
車外と車室内とを繋ぐ第2空気経路と、
前記第1空気経路内に設けられた第1送風機と、
前記第2空気経路内に設けられた第2送風機と、
前記第1空気経路を通る空気と前記第2空気経路を通る空気との間で熱交換する熱交換器と、
前記第1空気経路において前記熱交換器よりも車室内側に設けられたヒータ手段と、
前記第1空気経路において前記ヒータ手段と前記熱交換器との間に配置され、除湿剤を備えた空気除湿手段と、を備える電気自動車用空調装置の制御方法において、
車両の運転停止時に前記第1送風機と第2送風機及び前記ヒータ手段を作動させ、第1送風機により車室内の空気を車外に送るとともに、第2送風機により車外の空気を車室内に送る工程を有することを特徴とする電気自動車用空調装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−260474(P2010−260474A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113677(P2009−113677)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】